2016年

2016/1/1 真言宗智山派宗務総長に芙蓉良英氏当選

 小宮一雄宗務総長の任期満了に伴う真言宗智山派(京都市東山区)の一宗公選制による初めての宗務総長選挙で、次期宗務総長に前総務部長の芙蓉良英氏(59)の当選が12月9日までに決まった。8日の締め切りまでに立候補したのが芙蓉氏だけだったため、無投票で当選した。任期は来年3月28日から4年間。

 芙蓉氏は規定により総務部長を辞任して立候補。12月5日から細川大憲教学部長が総務部長を兼務している。同27日までに新しい内局を決める予定。

 芙蓉氏は1956年12月生まれ。東京・港区の大聖院住職。79年に大正大学を卒業後、同年に宗務出張所に入庁。総務部総務課長などを歴任し、小林照宥内局で財務部長、岡部快圓内局で同部長、小宮一雄内局で総務部長を務めた。

2016/1/1 真宗大谷派、本願寺維持財団との訴訟で逆転敗訴

京都市下京区の宗務所で会見した里雄総長(右)と千森秀郎弁護士 真宗大谷派(京都市下京区)が、運営目的や財産に関わる規定を変更した本願寺維持財団(現・本願寺文化興隆財団、同市山科区)に、変更の無効確認などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)は12月8日、変更を無効とした二審大阪高裁の判決を破棄し、財団の規定変更を認めた。維持財団の一般財団法人への移行認可取り消しを国に求めた訴訟でも、同法廷は同日、上告を受理しないと決定。訴えを棄却した二審大阪高裁判決が確定した。これにより維持財団との一連の裁判は、主張がすべて退けられた大谷派の敗訴で決着した。

 争点の一つだった規定変更を無効とする判決が最高裁でひっくり返った。大谷派の助成を運営目的から外し、解散時の財産帰属先を大谷派以外にも広げるなどの規定変更をした維持財団に対し、大谷派は変更の無効を求めていた。一審京都地裁は2012年、変更は無効として大谷派の主張を認める判決を出した。13年の二審大阪高裁でも一審判決は支持された。

 また、JR京都駅前の土地売却益200億円の返還を維持財団に同時に求めた訴えも退けられた。幕末に焼失した堂宇を再建する作業場だったこの土地は、1920年に当時の故大谷光瑩法主が譲渡。維持財団は92年、譲渡された土地の一部約9700平方㍍を売却した。

 大谷派は、土地の運用益を宗派に交付する信託契約を結んでいたと主張。売却益相当200億円の返還を求めたが、「信託とする明確な合意を認める証拠はない」として一審、二審とも棄却された。上告は今年9月に不受理となった。

 新公益法人制度の実施により、維持財団は2011年に一般財団法人に移行。大谷派は移行の認可取り消しを求めて提訴したが、13年に一審大阪地裁判決で棄却、翌年の控訴審でも訴えは退けられた。

 この裁判でも規定変更の有効性が争点となった。設立当初の目的を根本的に変え、法人の「同一性が失われるような変更も可能」などとして、一般財団法人への移行が認められた。しかし、規定変更の無効確認を求めた訴訟では二審まで逆の判決が出ていたため、最高裁の判決が注目されていた。

 判決を受け会見した里雄康意宗務総長は、「ご門徒の願いや仏法領としての財産であることが理解されなかった」として、維持財団設立に関わった「ご先達に大変申し訳なく、誠に残念」と無念の表情を浮かべた。財団側は「財団の目的を認められたことに感謝」するとした上で、「今後もさらなる公益事業に邁進する」との談話を出した。

2016/1/1 半田孝淳天台座主が死去 98歳、世界平和に貢献

比叡山宗教サミットで平和祈願文を奏上する半田座主(昨年8月4日) 第256世天台座主の半田孝淳(はんだ・こうじゅん)氏が12月14日、心不全のため大津市の病院で死去した。98歳だった。自坊は長野県上田市の常楽寺。延暦寺葬通夜は16日、同密葬は17日、滋賀県大津市坂本4―6―1の滋賀院門跡で営まれた。喪主・葬儀委員長は小堀光實延暦寺執行。遺弟代表は子息の半田孝章常楽寺住職。本葬にあたる天台宗葬は1月29日午後1時から大津市坂本4―6―2の天台宗務庁で営まれる。喪主・葬儀委員長は木ノ下寂俊宗務総長。

 大正6年(1917)、長野県常楽市の常楽寺生まれ。大正大学卒。昭和36年常楽寺住職、平成16年に京都の曼殊院門跡門主に。座主への登竜門とされる戸津説法師は昭和58年に務めた。第255世渡辺恵進座主の退任に伴い平成19年(2007)2月、座主に就任した。この間、全日本仏教会会長、全国青少年教化協議会(全青協)会長、釈尊成道の地であるインド・ブッダガヤの印度山日本寺竺主など宗内外の役職を歴任した。

 1200年の歴史の中で天台座主として初めて高野山を参拝(2009)。それが契機となり、2012年には半田座主、松長有慶高野山真言宗管長、田中恆清神社本庁総長の3者署名の「自然環境を守る共同提言」に到った。開創1200年記念として昨年5月には高野山で初の天台宗法要が執り行われ、半田座主が導師を務めた。

次期座主に次席探題の森川宏映氏

 半田孝淳天台座主の逝去に伴い、天台宗と総本山延暦寺は14日、第257世天台座主に次席探題の森川宏映氏(90)の就任を発表した。

  森川氏は大正14年(1925)愛知県生まれ。京都大農学部卒。延暦寺副執行、天台宗宗議会議員のほか比叡山中・高校長を16年勤めた。また比叡山の山林育成にも力を注いだ。平成6年(1994)に戸津説法師。京都・毘沙門堂門跡門主を1期(7年)務めた。自坊は比叡山一山の真蔵院(大津市坂本5丁目)。

2016/1/1 福島原発事故から間もなく5年 復興はどこまで進んでいるか

 東京電力福島第1原子力発電所事故から5年が経とうとしている。福島県内各自治体の避難指示は段階的に解除されつつあり、政府は2017年3月をめどに帰還困難区域を除きすべての指示を解除する方向だ。しかし生活基盤が不安定なままで解除されても復興がどこまで進むのか疑問だ。現地を取材すると、復興への足どりと、困難さの両面が目に見えて迫ってきた。

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「有志の会」事務局長の早川光明住職 事故直後から活動を続けてきた「原発事故被災寺院有志の会」(約130カ寺)による東電との交渉が大詰めを迎えている。いわき市内に避難しながら事務局長を務める双葉郡富岡町浄土宗浄林寺住職の早川光明氏(65)によると、境内地をはじめとする土地・伽藍の賠償は交渉が成立し、現在は仏像や仏具、一般備品の賠償の交渉を進めている。請求書面の原案はまとまりつつあり、協議を経て1月の早い段階で有志の会の正式な了解を得て交渉に移る。

「土地や伽藍の賠償については、復興もしくは移転して新しい活動をするにとりあえずは満足いくものとなりました。これも1カ寺1カ寺バラバラではなく集団として、粘り強く交渉をしてきたことがあったと思います。今後、寺院の歴代住職の墓や永代供養墓をどうするかといった問題も残ってはいます」と話す。

 建物に関しては本堂以外の庫裡、位牌堂など各種堂宇も本堂と同じ条件で賠償を受けられることが大きかったという。宗教法人の境内地は非課税のため算定に時間もかかったが、最終的には周囲の土地との比較で定められた。(続きは紙面でご覧ください)江川辰三管長が揮毫した震災物故者供養塔と矢内大丘住職

元々過疎の村が原発事故で人口1割減

 原発から約30キロ圏内に村の大半が入る双葉郡川内村。事故直後は自治体ごと村外に避難したが、翌年「帰村宣言」を発表、以後、避難指示区域も段階的に解除されている。除染も完了した。来年春には県東部に一部残っている避難指示も解除され、全村に「帰村」できる状況になる見通しだ。

 順調に見える復興で、フロントランナーと呼ばれている川内村。しかし、曹洞宗長福寺の矢内大丘住職(37)はそう呼ばれることに若干の困惑の表情を浮かべながら話す。「村を歩かれて気づいたと思いますが、子どもがいなかったでしょう」(続きは紙面でご覧ください)

2016/1/1 山形県・過疎地寺院レポート 「町民の3人に1人が65歳以上に」

 加速する都市部への人口集中と地方の過疎化。人口減少による消滅寺院の増加が懸念されている。地方寺院は現在、どのような問題に直面し、どのような活動に取り組んでいるのか。そしてそこから、どのような将来像を描いているのか。そのモデルケースとなる寺院を求め、山形県内の3カ寺を取材した。
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豪雨による土砂崩れで倒壊したままの圓光寺(兼務寺院)本堂。被災状況を説明する佐藤住職 県中部、西置賜郡白鷹町にある真言宗豊山派相応院。佐藤眞隆住職(66)は、「お寺は自然淘汰され、大きなお寺しか残らなくなると思う。(都市部の)大寺の住職が(過疎地の)空き寺を兼務する形になるのではないか」と見通す。

 佐藤住職は町役場の元職員。「私が役場に勤めた昭和47年の町の人口は1万9500人。今は1万4500人。43年間で5千人減ったが、20歳以上の人口はそんなに変わっていません。つまり、20歳以下の若い人たちがいなくなったのです。町の高齢化率は33%。町民の3人に1人が65歳以上になります」と話す。

 若い世代は、県外や県内の都市部で就職。町内には高齢者だけの世帯が増え、やがて息子らが暮らす都市部に引き取られていく。町外の檀家が増えれば、「お盆の棚経やお彼岸の檀家回りもできなくなる」。町内の檀家も高齢化に加え、「(未婚の)独身世帯も相当数あります。あと20~30年もすれば大きな影響が出てくるでしょう」。

 地方の菩提寺から離檀し、都市部に墓を移す「改葬」も増えている。「この前は、関西の街に墓を移した人がいました。改葬を機に離檀する人、両親が亡くなってお墓を全部移す人など様々です」

 檀家の減少に伴い、寺院の収入は減る。他の仕事と兼職しなければ、地方寺院の運営は難しい。だが佐藤住職は、「私が役場に入った当時、僧侶職員が8人いた。初代と3代目の町長はお坊さん。私が最後の僧侶職員。だんだん役場職員や教員に、葬儀の度に臨時休暇をとらねばならない僧侶は採用しないという流れになってきた。民間企業ならなおさら」と指摘する。(続きは紙面でご覧ください)

2016/1/1 新春エッセイ 世界仏教徒の一員として(東海林良昌)


ネパール大地震で被災した子どもたちを支援する全日仏青。左側で合掌するのが東海林良昌理事長「お弁当を持ってくることのできない子どもがいます」

 昨年11月に、全日本仏教青年会(全日仏青)第一次ネパール地震支援隊として、私たちが訪れたカトマンズ市にある仏教系小学校の校長先生の言葉です。この小学校には、孤児院や経済的な状況が良好ではない家庭からの子どもたちが通っています。校長先生の言葉から、毎日昼食をとらずに、学習している子どもがいることを初めて知りました。

 帰国してから一カ月。義援金や物資を現地の寺院や学校に手渡して、少しでも日本の皆様のお気持ちをお伝えできたかなという気持ちがある一方、あの子どもたちを取り巻く困難な状況を、今すぐに解決することなどできないではないかというもどかしい気持ちとが、私の中で日々交錯しています。

 この活動は、私たち全日仏青が加盟する「世界仏教徒青年連盟」(WFBY)による、ネパールで行った炊き出し活動を出発点とした、「ワールド・ブッディスト・キッチン」(世界仏教徒の台所)という支援の趣旨に賛同して行った活動です。

 ここ最近、役員として、WFBYの活動や会議に参加いたしております。ある時WFBYのメンバーから、「仏教徒はマイノリティ(少数派)である。だから連携する必要がある」との発言を聞いたことがあります。たしかに、世界の宗教人口を見れば、仏教は世界三大宗教といわれるものの、トップ3には入っていません。

 その状況の中で、近年WFBYのメンバーは、「世界仏教徒共同体 World Buddhist Community」と、連携を呼びかけています。少数派であるからこそ連携をし、この現実の世界に関わっていこうという積極的な意思表明です。

 私たちが世界仏教徒としての意識を持ち続けることにどんな意味があるのでしょうか。そう思って周りを見まわした時、ネパールなどの海外の事例だけでなく、私たちのすぐ身近にも格差・憎しみ・偏見などによる問題を見つけることができます。それらをすぐに解決することは困難です。

 しかし、私たち仏教徒は、御仏の教えによることで、その根幹に、苦へのとらわれがあり、それらの問題の渦中にある人々も、迷いの中に生きる私自身も結局同じなのだということに気づくのです。そして、その苦から解放されるため、信ずる教えに基づいた不断の取り組みを行い、簡単には解決することができない問題に根気強く関わり続けること、やさしさを向け続けていくことが大切であると思っています。それこそが私たち一人一人が継続的にたもち得ることのできる意識であり、今日の世界仏教徒の一員としての私たちの生の意味ではないでしょうか。今年も、私たち一人一人が、身近なお方にも、遠く離れたお方にも、やさしさを向け続けていく活動を行ってまいりましょう。

 ※ネパール地震支援の取り組みや募金については、全日仏青公式ウェブサイト、公式フェイスブックをご覧ください。

しょうじ・りょうしょう/昭和45年(1970)宮城県生まれ。雲上寺副住職。佛教大学文学部仏教学科卒業。同文学研究科修士課程修了。東北大学文学研究科博士課程後期単位取得退学。佛教大学非常勤講師、浄土宗総合研究所研究員。

2016/1/14 立正佼成会新年御親教 「温習」の心で日常生活を

庭野会長の書き初めを掲げて行われた新年御親教 立正佼成会(庭野日鑛会長)は7日、新年恒例の「御親教」を東京都杉並区の大聖堂で行った。約3400人が参加。庭野日敬開祖生誕110周年、青梅練成道場創建50周年の節目の今年、躍進の意気込みを固くした。

 東京西支教区女子部員16人が晴れ着姿で本尊に供物を奉献。庭野光祥次代会長が導師となり読経供養が勤められた。川端健之理事長は年頭の挨拶で、開祖の「悲しみや絶望を通してこそつかめる宝物がある」という言葉を座右の銘としていると紹介した。

 浦和教会少年部長の秋山佳代さんが決意の言葉を発表。スローガン「ありがとうが飛び交う浦和教会、さあ出かけよう布教に」を宣言し、少年少女の育成に一層の奮起を誓った。

 庭野日鑛会長は「燈明」「温習」の書き初めを掲げて御親教。「温習」は法華経の言葉ではないが、かつて習ったことを繰り返しおさらいするという意味。「私たちが今日まで色々なことで御法の修行をさせて頂きましたが、自分はいったい何によって救われたのか。これを学び、気づいたことを繰り返し習熟する」ということを日常生活で心掛ける指針として示した。

「新年になって良いことをしたいという気持ちが誰しもあると思います。年頭新たに一善事を発願するということを私は考えています。他人と関係なく、自分自身が具体的に良いと思ったことに志を立て実行していこうと前向きに考えていくことが大切」と語りかけた。その例として「年頭新たに一佳書を読む」ということを挙げ、心を清新にすることを促した。

2015/1/14 WCRP日本委員会が北朝鮮の核実験を非難 世界の非核化にも言及


 1月6日に実施された朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核実験に対して公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(杉谷義純理事長)は9日、声明を発表し、核実験を非難すると共に各国政府にも非核化を進めるよう促した。

 今回の核実験は国際社会への挑戦であり、「核廃絶を願う世界の多くの人々の良心を裏切る行為」と非難。同時に核保有国に対しても核廃絶への行動を要請し、非核化に努めるよう呼びかけている。

京都5団体も抗議声明

 京都宗教者連絡会や京都宗教者平和協議会など京都5団体は連名で9日、北朝鮮の水爆実験に対し、「『いのち』に対する計り知れない冒涜であるこの暴挙に、心の底から深い嘆きと満身の憤りをもって、強く抗議します」とする声明を発表。日本の被爆者の体験談などを紹介し、「『核のない、平和で持続可能な世界』の実現に全力で奮闘することを、ここに表明します」とも述べている。

2016/1/14 チベット亡命政府首相が会見 法王後継問題「亡命の地で生まれ変わる」

来日したセンゲ首相。会見で「私たちが求めているのは真の自治」と語った(9日、東京・護国寺) 就任後2度目の来日を果たしたチベット亡命政府(インド北部ダラムサラ)のロブサン・センゲ首相(47)が9日、東京都文京区の真言宗豊山派大本山護国寺で会見し、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ法王14世(80)の後継者を選ぶ「輪廻転生」に言及した。後継問題への介入を強める中国共産党に対し、「どこに生まれ変わるかは(法王)本人が決めることで共産党が決めることはできない」と反論。「今の法王が亡命の身のまま亡くなったとしたら、亡命の地にまだ成し遂げていないことをもう一度するために生まれてくる。宗教の自由がない現在の中国に、(法王が)生まれ変わることはありえない」と強調した。

「今、法王は非常に健康で、当分その心配はない。法王の90歳の誕生日を、(チベットの)ラサでお祝いしたい」とも話し、「伝統的な方法ではないが、法王が存命中に後継者を指名して育ててほしい」と持論を述べた。
さらに「チベットは元々独立国家なので、独立する権利がある。ただ私たちが求めているのは真の自治だ」と明言。中断している中国政府との対話を再開し、「平和的に問題を解決したい。私たちには、いつでもどこでも話し合う用意がある」と呼びかけた。

新たな脅威は「水をめぐる戦争」

 会見前にはセンゲ首相の講演会「融けゆくチベット氷河、アジアの新たな脅威」を開催(主催=チベットハウス・ジャパン)。在日チベット人や日本人支援者、他国の亡命者ら約150人が参加した。 

 センゲ首相は、世界で最も人口が多い中国・インド2大国に挟まれたチベット高原には多くの氷河があり、アジア大陸を貫流する数々の大河の源流になっていると指摘。各国で人口増大から水不足が起こっていると憂慮し、「中国はチベットのすべての川を中国側に流れるようにすることもできる。中国も近隣国も水不足。水が豊富なチベットを中国が管理している」と強い懸念を示した。

 その上で、「水不足が深刻になれば、アジア全体の危機に発展する。水に関する戦争が起こるのではないか」と危惧。中国がチベットのブラマプトラ川に建設したダム(発電所)の影響で、インド側に流れる水量が減っている事例を挙げた。

 温暖化や開発、鉱物資源の採掘等の影響で、チベットの氷河が融け、土壌汚染が進行。チベット高原の環境破壊が、世界の異常気象にも繋がっていると警鐘を鳴らした。

2016/1/14 展望2016 戦後70年をこえて―二つの意味と一つの意義(保阪正康)

昨年8月30日に国会前で行われた安保法制反対デモ 戦後70年はメディアが大騒ぎするなかで終わり、戦後71年がスタートした。戦後というのは、太平洋戦争の終結からとの意味だが、70年というのは確かにひと区切りがつく節目であった。

 私見になるが、戦後70年は二つの意味と一つの意義をもっていた。二つの意味のひとつは、史実の解釈・理解が好むと好まざるとにかかわらず〈同時代史から歴史へ〉と変わっていくことだ。太平洋戦争を直接に肌で知る世代が少なくなり、その解釈は歴史の見方へと転換する。

 一例を挙げると、1945年5月8日にナチスドイツが降伏し、枢軸陣営で第二次大戦を戦っている国は日本だけになった。世界60カ国近くと日本は戦争状態になったわけである。同時代史の解釈では、日本の軍事・政治指導者たちの冒険主義にあきれはてるといったところだが、歴史的解釈として、「日本はすごい国だ。一カ国で世界を相手に戦った」などという歴史修正主義的な見方とて出てくるかもしれない。それが〈同時代史から歴史へ〉の移行の特徴ともいえる。

 二つの意味のうちのもうひとつは、太平洋戦争世代から数えて三代目、四代目の世代に入っていることだ。そのために歴史的事件を論じるのに肉親を意識しないですむといえる。二・二六事件をはじめ戦争に至るプロセスを論じるのに、当事者の妻や子どもたちの感情から離れることができるようになる。それゆえに遠慮のない見方で、本質がわかってくるといっていい。

 古来、中国では70年を経てやっと歴史は客観化できると言われたそうだが、それは当たっていると私には思える。

 そしてこのほかに、一つの意義が戦後70年という語には重ねあわされていた。 

 具体的にいうと、日本はこの70年間、戦間期の思想をもたなかったのである。戦間期とは、たとえば第一次世界大戦の終結の年(1918)から第二次世界大戦の勃発の年(1939)の間の21年間を指す。第一次世界大戦で敗れたドイツは、失った領土や過大な賠償などを取り戻すためにこの21年間にヒトラーを生み、復讐戦を行った。戦間期の思想とはこのような復讐戦(軍事で失ったものを軍事で取り戻す)を指す。

 日本はこのような戦間期の思想をもたなかった。そのことが誇りの国であった。戦後70年とは、その誇りの蓄積の時間といってもよかった。もとより憲法がその裏づけになっていたのだが、とにかくこの誇りを守ることは、日々人類史上で新記録を打ちたてているといってもよかったのである。私はこの点を、日本は国際社会にさらに発信すべきだと思うが、全体にまだまだ弱いといっていいのではないかと思う。

 このように戦後70年を総括したうえで、さて日本はこれからの戦後71年目の道をどのように歩むべきだろうか。あるいはどういった姿勢を堅持すべきか、を考えるべきであろう。

 皮肉なことに、といっていいのだが、戦後70年の昨年は安倍内閣による集団的自衛権の容認、さらには安保関連法案の可決など、これまでの日本の政治姿勢が大きく変わってきている。私のもとにもときに、アメリカのメディアの記者が取材にくるが、そんな折りに「安倍首相は戦間期の思想をもっているのか」と尋ねられたりもする。いくらなんでもそんなことはないと思う、と私は答えるのだが、確かにそういう不安を与える言動が目につく。

「侵略に学問上の定義はない」と言ったのを聞いて、私もこうした論はあまりにも雑駁だと驚いた。アメリカの通信社の記者が、「議会の共和党の保守派が、では真珠湾は何だったのかと怒っている」と洩らしていた。

 私たちに今必要なのは、太平洋戦争の中にひそんでいる教訓を自覚して、それを守り抜くという覚悟ではないかと思う。あえて一点だけ説明しておくが、大日本帝国の軍人たちによる戦争指導は、「国家は国民の生命と財産を守る」という当たりまえの約束ごとを根本から裏切ったことだ。むしろ国民の生命と財産を次から次へとつぎこんで、まるで博打のような戦争を行った。

 特攻作戦、玉砕という戦術などがその典型である。さらに沖縄に続く本土決戦まで想定していた。

 国の指導者の発想の根源にあるのは、いかなるときでも国民の生命と財産を守ることではないか。その心構えがない者は、指導者になってはいけない。太平洋戦争はそのことを私たちに教えている。いやあの戦争で亡くなった人たちは、そういう思いを後世の私たちに託していると考えるべきであろう。

 この教訓を守るために、宗教人に課せられた役割は大きい。その自覚こそが今もっとも必要とされていると、私は考えている。

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 ほさか・まさやす/1939年北海道生まれ。同志社大学文学部社会学科卒業。ノンフィクション作家、評論家。昭和史の実証的研究を志し、のべ4000人もの関係者を取材し、肉声を記録してきた。個人誌「昭和史講座」を主宰。『昭和陸軍の研究』『東条英機と天皇の時代』『昭和史 7つの謎』『あの戦争は何だったのか』『昭和天皇実録 その表と裏』『昭和史のかたち』など著者多数。

2016/1/21 阪神・淡路大震災から21年 神戸市仏教連合会、21年ぶりに再建した会長自坊の本堂で追悼

4月の落慶を前に、再建した海泉寺本堂で初めて法要を営んだ 神戸市仏教連合会は17日、阪神淡路大震災で全壊した本堂を21年ぶりに再建した神戸市長田区の染川眞澄会長の自坊・海泉寺(臨済宗南禅寺派)で追悼法要を執り行った。4月の落慶を前にして、この日に合わせて初めて本堂で営んだ法要に、約250人が参拝した。

 導師の染川会長が挨拶し、「震災法要に使っていただくのが、亡くなった人の一番の供養になるのではないか」と述べた。震災で失ったものは多かったが、助け合いの心や人との絆など得たこともあったとして、「前向きに諸行無常という言葉を捉えるようになった。震災が教えてくれたものは本当にたくさんある」と語った。

 金井孝顕副会長は、「追悼法要は昨年に比べ半分に減ったそうだ。来年は23回忌にあたるため、ぜひお参りいただきたい」と呼びかけた上で、「私の子ども、孫までこの法要は続けていく」と話した。

地域の人すべてがお参りできる寺に

震災で倒壊した本堂(海泉寺提供、1995年1月17日撮影) 地震発生時、海泉寺の染川住職(69)は庫裏でお勤めの準備をしていた。表に出ると、いつもと様子が違った。潰れた本堂越しに向こうの景色が見えていた。

 震災の翌年、避難所暮らしなどで近所付き合いが難しくなっていた。本堂跡地にプレハブ2階建ての仮本堂を建設。地域の人に寺で交流してもらおうと、水かけ地蔵を造立し、お堂も一緒に建てた。縁日をはじめ、毎月約150人が集まった。

「再建は復興を待ってから」と思っていたが、檀家からの後押しもあり、2012年に着工。鉄筋コンクリートの新しい本堂は、地下1階地上2階建て延べ800平方㍍で、耐震用の鉄骨も入れた。1階には、滋賀県米原市の仏師・中川大幹氏が龍の天井画を描いた。水を司る龍に、火災などから地域を守ってもらえるようにと願いを込めた。

 長田区の人口は昭和40年(1965)、20万人を超えていたが、現在は半数以下に落ち込んでいる。檀家制度が崩壊する中、染川住職は「地域の人すべてがお参りしやすいお寺にしなくてはいけない」と話した。

 落慶法要は4月18日に執り行う予定。

2016/1/21 阪神・淡路大震災から21年 本願寺派神戸別院でナムナムガールズが公演

劇を初披露したナムナムガールズ 神戸市中央区の浄土真宗本願寺派神戸別院で17日、阪神淡路大震災の追悼法要が営まれ、約220人が参拝した。法要後に、東九州龍谷高校(大分県中津市)の女子生徒でつくる仏教伝道グループ「NUM―NUM GIRLS(ナムナムガールズ)」が劇を演じた。

 導師の杉本正信輪番が、「あらゆる災害は、いつどのような形で起こるかまったく予測がつかない。『1・17』を常に忘れず、備えなければならない」と挨拶。「人生には『まさか』という坂もある。どういただいていくのかが念仏者の生き方につながる」と話した。

 最光寺(兵庫県伊丹市)の杉本照顕住職が法話で、震災を経験していない人もいるかもしれないが、法要を通して「私自身の課題として学ぶことが、いのちを考える出発点になる」と語った。

 発生から21年になり神戸別院は、震災を経験していない世代に震災の記憶や教訓を伝えていくために、若い人に関心を持ってもらおうと、ナムナムガールズに公演を依頼。昨春の結成からアイドルとしての活動を休止するまでの半年間を描いた劇を初披露した。

 キャプテンの東陽香穂さん(16)ら8人が出演。劇中で生と死がテーマの曲など3曲を踊りながら歌った。顧問の紅楳聖教諭(41)は、「追悼法要に向けて練習に励み、生徒たちの震災への意識が強くなった」と話した。

2016/1/21 生長の家、福島県西郷村で2基目の大規模ソーラー発電所を稼働 220世帯分の使用量

西郷村に完成した大規模ソーラー発電所。原野だった土地に設置された(生長の家提供) 生長の家(谷口雅宣総裁、国際本部・山梨県北杜市)は京都府城陽市に設置したメガ・ソーラーに続く大規模ソーラー発電所を福島県西郷村に建設し、12月24日から発電を開始した。想定年間発電量は79万4636キロワットアワー(kwh)。一般家庭220世帯分の年間使用量に相当する。

 もともと福島県内にソーラー発電所の第1基目を計画していたが、土地探しが難航したため、城陽市が最初となった。その後、森林破壊にならない土地が見つかった。白河市の西隣に位置する西郷村の小田倉馬場坂地区で、敷地は約3万9千平方㍍(約1万2千坪)。昨年7月30日に着工し、12月1日に完成した。太陽光パネルは3024枚となった。

 1基目のように1メガワット以上を示すメガ・ソーラーとはいかないものの、「東日本大震災と東電福島第一原子力発電所の事故により、多大な被害を受けた福島県の震災復興と脱原発の実現を目指して設置」(広報課)したという。

 教団では信徒や賛同者から一口1万円の寄付を募る“自然エネルギー拡大運動”を推進中。2基目の建設資金もこれを原資としている。売電などによる収入は、次のソーラー発電所建設の原資となる。

 教団では、「今後も、私ども生長の家は、原子力や石油や石炭などの環境負荷の大きい地下資源に依存した社会ではなく、再生可能な自然エネルギーを積極的に利用し、自然と調和した社会を実現するため、さまざまな取り組みを行ってまいります」(同)としている。

2016/1/21 展望2016 エンディング産業展を見て―死をめぐる文化の創造(鈴木岩弓・東北大学教授)

骨壷や棺桶など様々な業者が出展 新年を迎えた元旦の新聞に、厚生労働省が公表した人口動態統計の、2015年の年間推計結果が掲載された。それによると出生数は100万8千人、死亡数は130万2千人で、昨年の日本の総人口は過去最多の29万4千人の自然減となった。

 かかる人口減の直接的原因ともなる「少産多死」傾向は今後もさらに続き、死亡数がピークを迎える2040年には年間166万人の死者が生じるとされる。さらに言えば、65歳以上人口が総人口に占める割合を示す「高齢化率」は、2015年に26・7%であったものが、来る2040年には36・1%に及ぶと予想されている。現代の日本は、これからさらに「超高齢多死社会」の道を歩むことになるのである。

 そうした人口動態を見据えたかたちで、昨年の12月8日から10日の3日間、東京ビッグサイトでは「エンディング産業展2015」が開催され総計2万2067人の参加者があった。展示会場には、人が死を迎える前の看取りや終活関連サービスから、葬儀・埋葬・供養など死後の商品・サービスまで、総計200社余りの企業がブースを開いて待機し、来場者との商談機会が用意された。来場者には、病院や介護関係者、自治体、僧侶や神職などの宗教関係者、葬祭サービス事業者、霊園・墓園管理者、墓石・仏壇販売事業者の他、隣接業界などからこうした業界に新規参入を考えている企業や、個人の問題として終活を考えている一般の人々まで幅広く想定された。

 参加者として、すでにエンディング産業として稼働している業界のみならず、その周辺業界や一般にも幅広く網を打とうという目論見が含まれている点には、さまざまに試行錯誤しながら近年の社会変化に対応してきた流れの先、今後もさらに大きな変化の波に対応しなければならないと認識しているこの業界の覚悟が窺える。

アマゾンのインパクト

 またフロアの一角にはイベント会場一カ所と、五カ所のセミナー会場が用意され、会期中に50余りのセミナーやセッションが開催された。それらは45分から3時間まで長短さまざまの企画で、有料のものと無料のものとがあった。扱われた内容もさまざまで、納棺士コンテストや美坊主コンテストのような集客を意図したイベント企画の他、セミナーでは終末期介護、グリーフサポート、相続、終活、寺院や葬祭業、散骨、ペットなど、多様なテーマが取り上げられていた。それらの発表内容では具体的な商品紹介のみならず、発表者の経験に根差した個別テーマのあり方を巡る提言も多かった。そうした発表には荒削りのものも見られたが、エンディング産業の現場で志向しかつ試行している現代の最先端の動向を知ることができ大変興味深かった。

 奇しくも産業展初日の8日は「Amazonのお坊さん便 僧侶手配サービス」が発表された日であったわけだが、たまたま参加したセミナーでは、このことを受けての話題に触れられており、Amazonの発表が「イオンのお葬式」の時と同様、仏教寺院や葬祭業にとってかなり大きなインパクトがあったことを肌で感じた次第である。

 人はいつでもどこでも死ぬ運命にあって、死者に対する対応策はそれぞれの文化背景に応じて採られてきたのが、これまでの人類の葬送文化であった。少し前までの日本においては、死者は血縁を中心とした家族・親族と、地縁の関係者によって遺体処理をされ、また儀礼が執行されることで、死者のみならず遺族の魂の救済も図られてきた。

 しかしそうした体制は、戦後になってイエが民法から消えて制度ではなくなり、さらに戦後70年を経て意識として残っていたイエも希薄化したことで、タガが外れかかっているのが現状である。孤独死や送骨といった言葉が登場してきた背景には、イエの崩壊が大きく作用している。また世の中の変動の波を受け、人々の価値観も変わり、生業形態や家族形態も大きく変化してきたことから、直接的に死者に対峙してきた血縁・地縁が、その役割を従前通りに果たすことは難しくなっている。

 エンディング産業は、まさにそうした状況を補完する中で展開してきたのであるが、当然のことながら歴史も浅く、また現在進行形で常に変化している社会の動きを見据えて対応しているので、試行錯誤の連続の中にいるのは確かである。とはいえ、そうした最先端の試みを一堂に集めた今回の企画は、今後の日本人の死生観のあり方を考えていく上で、宗教民俗学を専攻している筆者にとっては良い資料収集の場でもあった。今年の8月22~24日に、同じ東京ビッグサイトで開催される予定の「エンディング産業展2016」も楽しみである。

 最後に、イエ崩壊後の日本人の葬送墓制の今後に関心をもつ筆者も、2月20、21日の2日間にわたり、東京都青山葬儀所におき、主宰してきた研究会の成果発表として、公開シンポジウム「イエ亡き時代の死者のゆくえ」を開催する。ご参加いただければ幸いである。

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すずき・いわゆみ/1951年8月東京生まれ。東北大学文学部卒業後、同大学院博士課程を経て島根大学助手。同講師・助教授を経て、東北大学文学部助教授に。現在、東北大学大学院文学研究科教授。専門は宗教民俗学。死生観・民間信仰概念の展開・流行神の形成過程などに関心をもつ。臨床宗教師の養成講座開設に尽力し、東北大学実践宗教学寄附講座教授も務める。

2016/1/28 全日本仏教会理事会 Amazonお坊さん便対策で要望提出と協議会設置へ

 公益財団法人全日本仏教会(全日仏、齋藤明聖理事長)は26日、東京・芝公園の明照会館で理事会を開き、来年が正当となる財団創立60周年記念事業のテーマを「ご縁をかたちに、絆を行動に―私からはじまる」とした。全理事が賛同し承認した。全日本仏教徒会議が東日本大震災被災地である福島での開催が決まっており、被災地へのメッセージも含まれるという。またネット通信大手のアマゾン(Amazon)が発表した「お坊さん便」(僧侶手配サービス)に対して、アマゾン本社ならびに日本法人に販売中止を要望すると共に、4月から始まる次期体制に「法務執行相談に関する協議会(仮称)」を設置することも決まった。

 60周年事業テーマは、50周年テーマ「地域の縁・アジアの縁」のコンセプトを継承して検討されてきた。理事からテーマにある「行動」について質問が出された。事務総局側は60周年事業の一環である仏教徒会議が福島で開催されることから、「震災で亡くなられた方々への追悼と復興をめざすということで、各教団管長、門主等にも出席いただき思いを表していただきたいと考えている。同時に被災各県の方々が共に参加できる内容にということで設定した」と説明した。

 齋藤理事長は50周年事業が仏教の社会実践の方向で行われたとして、「こうした流れを(60周年でも)受け止めたいという流れがある」と補足し理解を求めた。全理事が挙手して承認した。このテーマは、60周年事業である記念式典や仏教徒会議福島大会、WFB世界仏教徒会議日本大会を視野においている。

 アマゾンのお坊さん便については齋藤理事長が経緯を報告。賛否両論があることを紹介しつつ、「アマゾンは若い世代の利用者が多く、その影響力を看過することはできないと考え、12月24日に理事長談話を発表した。骨子は、全日仏は一貫してお布施の定額化に反対してきた、世界の宗教事情に鑑みても商品とすることはあってはならない、というものだ」と説明した。

 さらに「広く社会で共に考えるきっかけになったことはありがたいことだと思う。一方で仏教界の課題も明確になった。一つは菩提寺を持たない人に働きかけができていたのか、もう一つは僧侶の姿勢が問われていることだ。お布施にまつわる疑問や不満が寺院への不信感となっている」と危機感を募らせた。

 その対策として、アマゾン本社ならびに日本法人に販売中止の要望を提出することと、4月から始まる第32期体制に広く一般の声に応えるため「法務執行相談に関する協議会(仮称)」を設置することを提案した。

 イオンの葬儀参入の際に全日仏はお布施の明示化に抗議したものの、その流れを止められなかったという苦い経験がある。そのため「アマゾンが扱うことで(金額が)一つの基準になる怖れがある」(戸松義晴理事)。「コストパーフォンマンスで捉えられ、利便性を求めることはモノとして扱われることになる」(山口正純理事)という意見が出された。

 また「内にある問題に踏み込む必要がある。僧侶・住職の資質の低下に対して各宗派が対応していくべき」(千葉省三理事)と教団や僧侶側の対策も要請された。理事長の提案を承認し、協議会は4月以降に正式に発足する予定だ。

2016/1/28 京都府と龍谷大学が連携 自死対策に臨床宗教師

  京都府は自死対策に、臨床宗教師を活用する。中丹地域など2カ所で3月、傾聴喫茶「京風カフェ・デ・モンク『きょうのモンク』」を開き、龍谷大が派遣する臨床宗教師が自死遺族などの心のケアに当たる。行政機関が自死対策として臨床宗教師と連携するのは初めてという。

 府は、臨床宗教師の養成を始めた龍谷大と2014年春から検討を進めてきた。4月に都道府県としては初めて、自殺対策条例を施行するなど防止策を推進している。

 府によると、昨年の府内自殺者数は419人で、最も多かった2000年の696人から約40%減少。しかし、中丹地域(福知山市、舞鶴市、綾部市)では、減少傾向がみられなかった。このため、若い人の自死が多い乙訓地域(向日市、長岡京市、大山崎町)との2カ所で「カフェ」を開催する。

 「カフェ」は、龍谷大が協力を求めたNPO法人京都自死・自殺相談センター(竹本了悟代表=浄土真宗本願寺派僧侶)が運営。10人の臨床宗教師が、同センターの研修を受けた上で参加する。

 政教分離の原則について、府福祉・援護課の担当者は、「特定の宗教・宗派を超えて活動し、布教をしない臨床宗教師は宗教活動に当たらない」と判断した。来年度以降も継続したいとの意向を示している。

 「カフェ」は初回が3月4日午後2時から、長岡京市中央生涯学習センター6階和室(長岡京市神足2―3―1)。第2回が3月7日午後2時から、古民家カフェしおん(福知山市榎原1379)。定員は各回15人。申し込みは京都自死・自殺相談センター(電話075―365―1600)まで。

2016/1/28 高野山真言宗 前総長らを提訴、損害賠償額は8億7500万円


 高野山真言宗(添田隆昭宗務総長)と総本山金剛峯寺(同執行長)、学校法人高野山学園(同理事長)は21日、放漫財政で宗派と宗門校の高野山大学に莫大な損害を負わせたとして、庄野光昭前宗務総長(前執行長・前学園理事長)と森寛勝前財務部長(前執行・前学園理事〈法人本部長〉)を和歌山地裁に提訴した。末寺などから預かった宗派資産を適切に管理しなかった「善管注意義務違反」で、損害賠償請求額は8億7500万円超。訴状は21日付で、同日郵送した。

 昨年9月の秋季宗会(安藤尊仁議長)で、全会一致で前総長・前財務部長の責任追及を承認。これを受けて開かれた参事会(宗派の監査機関)で、訴訟提起を決議した。

 その時の損害賠償請求額は約7億5千万円で、野村證券から宗規に違反して購入したハイリスク債券から出た損失約4億円と、「報酬に見合う業務提供の実体があったとは言えない」経営コンサルタント有限会社三木清事務所に支払ったアドバイザリー契約料約3億円、巨額損失とその「粉飾」の責任を回避する目的で行った2度の外部調査費用約4400万円などだった。

 今回の提訴では、新たにコンサルタント契約に絡んで㈲高野(社長=森前財務部長・当時)から高野山東京事務所(所長=同)の運営委託を通じて三木事務所に支払われた約1億2千万円余も計上。こうした不可解な業務委託によって生じた損害も合わせ、請求額は合計8億7564万7934円となった。

 前内局の財政全般を調査した第三者委員会(代表=釘宮正徳・公認会計士)が最終報告書で、「背任・横領の疑いがある」と指摘した簿外のハワイ口座「使途不明金」問題をめぐる刑事告訴は見送られた。最初の口頭弁論は、早くて3~4月になる見通しだ。

 添田総長は提訴にあたり、巨額損失など放漫財政の実態を「秘匿」「隠蔽」するなどし「自己正当化を図った」 前総長らの姿勢を厳しく批判。「損害を賠償する責任がある」と断じた。

新年会で裁判に言及

 提訴の日、添田総長は東京別院での初大師法会に出仕。宗制改革に取り組む現内局にとって、関東での最初の法会が弘法大師に宗団・本山の正常化を誓う日となった。

 法会後、新年会が開かれ、大勢の檀信徒が出席。挨拶に立った吉井惠貫総務部長は、「ご存知の方もそうでない方もおられるかもしれないが、現在、宗派はいくつかの裁判を抱えている」と報告。「仏教者、宗団としてあるまじき状況で情けないと思う」と率直に吐露した。

 宗規を無視した前内局の放漫財政や興正寺の住職罷免問題を念頭に置いた上で、「裁判になるということは、宗規違反を故意にやっているとしか考えられないから」と明言。宗団・本山の正常化と信頼回復に全力で取り組む考えを表明した。

2016/1/28 展望2016 地球温暖化対策1.5℃ターゲット パリ協定どう実現するか(山本良一)

 2016年、波乱の幕開けである。中国に端を発する世界的な株安、水爆実験などを脇においてもスーパーエルニーニョによる異常気象が世界中で起きている。日本は暖冬で正月が終わった頃には熱海や北野天満宮の梅林は見頃を迎えていた。年末の12月30日には北極圏を襲った異常低気圧により、北極点の気温が一時平年値を20℃上回って零度に達したという衝撃的ニュースが報道された。この異常低気圧が北米には記録的暖かさを、英国には暴風雨や洪水をもたらしたのである。

 世界の海洋に吸収されている地球温暖化に伴う熱エネルギーは、毎日広島型原爆40万発分の爆発エネルギーに匹敵すると計算されている。これが最近顕著な世界の異常気象の遠因なのである。もちろん、個々の極端な気象と地球温暖化との因果関係については科学的に断定できないが、その様な異常気象の発生リスクが地球温暖化によって高まることは多くの研究によって示されている。2013年11月にはスーパー台風「ハイエン」がフィリピンを襲い、7300名が犠牲となった。2014年2月にはロンドンのテムズ川が過去248年間の歴史になかったような大氾濫に、2015年にはアメリカのカリフォルニア州が歴史的大旱魃に見舞われている。2014年にはEUの人工衛星を用いたグリーンランド、南極大陸での氷床損失の観測結果が公表され、年間4500億トンもの氷が失われて、世界の海面水位の上昇に寄与していることが明らかにされた。

 最近の研究成果によれば今世紀中の世界の平均海面水位の上昇は1メートルを超えることが確実視されている。1メートル海面が上昇すると海岸線は水没によって約20メートル後退し、侵食によって全体で100メートルも後退する。日本の海岸線でシミュレーションすると、海面が1メートル上がると90%以上の砂浜はなくなると言われている。

 人類は古今未曾有の危機に直面していると言わざるを得ない。これら非可逆的な加速する地球温暖化、資源の枯渇化、生物種の大量絶滅などの危機の原因は、世界人口の増大、科学技術の発展による生活水準の向上、人類活動の地球表面全体への拡大なのである。

 このような情勢の中で2015年末、地球温暖化対策として歴史的なパリ協定が締結された。これには世界の196カ国・地域が参加している。その骨子は①世界の温室効果ガス排出量が速やかに減り始めるようにして、今世紀後半には実質的にゼロにする。②地球の平均気温の上昇を2℃よりかなり低く抑え、1・5℃未満にするための取り組みを推進する。③2023年から5年ごとに進展を点検する。④温暖化被害軽減のための世界全体の目標を設定する。⑤先進国に途上国支援の資金拠出を義務付けるが他国にも自発的に拠出することを勧める―などである。

水没の危機
 パリ協定については様々な評価がなされているが、筆者はこれは文字通り、人類史上の歴史的なマイルストーンとなるべき重要決定であると考える。地球環境と共存・共栄することを人類が今度こそ本当に決意し、実行することを誓約したものと捉えたい。それというのも今日一日に全世界で放出される二酸化炭素の量は9000万トンもの巨大な量に達しており、このままの生活を続ければ、あと30年程の間に2℃ターゲットを突破する条件が満たされてしまうのである。

 各国政府が表明している削減目標では2℃ターゲットを守るには不十分で、今世紀末に2・7℃上昇してしまうという予測もある。そのような中で努力目標として1・5℃ターゲットがパリ協定に書き込まれた意義はきわめて大きい。20カ国よりなる気候脆弱フォーラム、39カ国よりなる小島嶼国連合などが1・5℃ターゲットを強硬に要求した。オバマ大統領は“私は島の少年だ”と言って、これを支持したと伝えられている。

 世界の平均気温は産業化前と比較して既に0・85℃上昇している。明日から世界の温室効果ガスの排出量をたとえ零に削減したとしても、気候システムの慣性(環境影響が温室効果ガスの排出より遅れて表れる)により0・6℃程平均気温は上昇してしまうと考えられている。すなわち1・5℃ターゲットは既に達成不能である。排出量をゼロにし、空気中の温室効果ガスを回収でもしない限り、1・5℃ターゲットの実現は困難と考えられるのである。水没して消滅の危機にさらされる島嶼国は次の15年以内に温室効果ガスの50%削減と空気中より温室効果ガスを除去する技術の開発を求めている。

 各国政府が2℃ターゲットを守ることもできないような削減目標しか提示できていないのに、1・5℃ターゲットを努力目標として掲げるというのは無責任というそしりはあるが、人類全体が死にもの狂いで地球温暖化などの地球環境問題に取り組むという決意を表明したものと積極的に考えるべきであると思う。さらに気候正義の観点から、地球温暖化の悪影響を先進国より、より強く受ける途上国の支援の強化がパリ協定に盛り込まれていることも評価される。

 では一体どのようにして、この古今未曾有の危機を突破するのか。危険性の高い原子力、二酸化炭素の回収貯留技術、ジオエンジニアリングによる地球寒冷化技術などに頼るのか、それとも将来世代にツケを残さぬ倫理的技術と仏教の説く少欲知足と利他行に頼るのか。筆者には今こそ仏教の出番であるように思われるのであるが、いかがであろうか。
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やまもと・りょういち/1946年茨城県生まれ。東京大学工学部冶金学科卒業。工学博士。東大名誉教授。環境問題に積極的に発言。近年は仏教の視点から提言している。近著『地球環境問題を仏教に問う―温暖化地獄を仏教・密教は救えるか』(未踏科学技術協会)は、密教学者の松長有慶氏と仏教学者の竹村牧男氏との鼎談。

2016/2/4 全日本仏教青年会、諸宗教対話僧を養成 カトリック司祭と意見交換

大聖堂内を見学し、神田神父から説明を受ける全日仏青の受講者ら 全日本仏教青年会(全日仏青、東海林良昌理事長)諸宗教対話委員会(伊東政浩委員長)は1月26日、大阪市中央区の大阪カテドラル聖マリア大聖堂で第1回目となる宗教間対話僧養成講座を開催した。約30人の僧侶が参加し、カトリック司祭との交流から宗教間対話の意義を学んだ。

 最初にカトリック大阪大司教区の松村繁彦神父が「キリスト教の水面」と題して講義。キリスト教の歴史や系譜、信仰者の生活、祭儀である「ミサ」の意味などについて理解を深めた後、同司教区の神田裕神父の案内で大聖堂内を見学した。

 意見交換では、僧侶側から「死後の世界をどう説明しているか」「キリスト教での戒律は何か」などを質問。「お盆のお参りをしている神父がいたがなぜか」との問いには神田神父が「お盆だけでなく成人式や七五三もやっている」とし、松村神父は「家族全員が信者であることが少ないため、対象を信者に絞ると家族を分離してしまう形になる。みんなで参加できるように日本文化に合わせたお祝いや祝福もしている」と話した。

 キリスト教を名乗るカルト団体の見分け方も話題にのぼり、松村神父は「基本的に急を要するような恐怖を煽るものはキリスト教ではないと考えていい」と意見。神田神父も「キリスト教は福音を伝える。福音とは歓び。恐怖を煽るものではない」とした。

 東海林理事長が先輩宗教者としての助言や宗教間対話の意義について意見を求めると、神田神父が阪神淡路大震災での僧侶や神職との交流を回顧。「最初は他の宗教の人と交流するのが怖かったが、親しくなって思ったことがある。それは〝もっとちゃんと神父をやろう〟ということ。自分がこだわっている生き方を互いに磨いていく。交流した宮司も僧侶も同じ思いだった」と述べた。

 松村神父は「みんなが違うということは豊かさなのだということに、かつては気付いていなかった。我々は〝多様性の一致〟と言っているが、多様性の豊かさをどう引き出すのかが今の自分の課題。宗教者は『言う』ことが多いが、よく『見る』こと、よく『聞く』ことが大事。これを皆さんと共有し、一緒に学んでいきたい」と語った。

 伊東委員長は「ありがたい経験させて頂いた。教えは違っても、今後も世界平和のために宗教が生活に息づく社会つくりにお互い精進していきたい」と話し、講座を継続していく意向を述べた。

 同委員会は2年前に発足。これまでにキリスト教やイスラム教とのシンポなどを開催してきた。今回は養成講座として初の開催となり、参加者には東海林理事長から修了証が手渡された。

2016/2/4 日本臨床宗教師会が発足 継続研修で資格更新制へ

 医療・福祉施設に従事する修了生が増えてきた臨床宗教師に、継続研修による資格認定を行う「日本臨床宗教師会」が2月末に発足する。事務局を置く東北大など8大学が共通の基準を設けるなどの目的で連携するほか、臨床宗教師の地方部会とも協力しながら修了後の力量水準の保持につなげる。


 会長には、島薗進・上智大教授が就任する。東北大の谷山洋三准教授が事務局長を務める。すでに養成を始めている龍谷大、鶴見大、高野山大、今年開講する種智院大、武蔵野大のほか、上智大、愛知学院大と連携する。


 2012年4月に養成講座を開講した東北大は、126人の臨床宗教師を輩出。約3分の1が医療・福祉施設に従事している。14年4月に養成を始めた龍谷大では、25人を認定している。


 臨床宗教師を養成する動きが広がり、修了生も増加する見通しのため、大学間で共通の教育プラン策定を計画する。大学の養成プログラムを終えた修了生は、日本臨床宗教師会に入会。継続研修を受け、5年ごとの資格更新が検討されている。資格認定により倫理綱領の順守も徹底させる。


 全国に6つある臨床宗教師地方部会(北海道東北、関東、中部、関西、中国、九州)では、勉強会やフォローアップ研修が行われている。修了後の各地域での学びの場であり、実践のためのネットワークとしての役割を担う。


 谷山准教授は、「医療や福祉の現場でニーズが高まっている。修了生が150人を超え、共通の基準も必要になってきた。修了後に学びの機会を持つことが最も大切。大学間でも情報共有を進め、お互いにブラッシュアップしていかなくてはいけない」と話した。


 日本臨床宗教師会の設立を記念して、京都市下京区の龍谷大大宮学舎で2月28日、シンポジウムが開かれる。テーマは「臨床宗教教育の可能性」。

2016/2/4 半田孝淳座座主の天台宗葬に1200人参列 半田スマイルに最後の別れ

半田座主の遺影のもとで弔辞を読み上げる松長有慶・前高野山真言宗管長 昨年12月14日に遷化した半田孝淳天台座主(世寿99)の天台宗葬が1月29日、滋賀県大津市坂本の宗務庁で執り行われた。国内および海外の宗教者をはじめ政財界、出身地の長野県上田市の関係者ら約1200人が参列し、核兵器廃絶を訴え続けた半田座主に最後の別れを告げた。

 大導師の森川宏映第257世天台座主は、法要の中で和顔愛語の姿や核兵器廃絶活動、東日本大震災における被災者への支援の言葉などを奏上し、「まさに誰からも愛され、そこに居られるだけでその場を和めます」と人柄を讃えた。

 各界代表の5人が弔辞を奉読。天台宗を代表して小川晃豊宗議会議長が「常に微笑みを絶やさず、大無量寿経にある和顔愛語そのものの生き方をなされた」と追悼した。

 仏教界を代表して前高野山真言宗管長の松長有慶氏(前総本山金剛峯寺座主)が平成21年(2009)6月の高野山正式参拝の思い出を披露し、「天台座主の高野山訪問により、天台・真言両宗の1200年来の疎遠関係が解消され、天台・真言の祈りが一つになったとマスコミが大々的に報道し、仏教界の斬新な息吹として、世間からも温かく迎え入れられました」と述懐。さらにさまざまな場面での協力に感謝しながら、「半田座主猊下は、宗祖伝教大師の衆生教化の御意志を具現化した忘己利他の精神を不断に実践する求道者であると同時に、仏教発生の原点であるブッダガヤ印度山日本寺の竺主として世界平和と民衆の福祉と安寧のために獅子吼される伝道者」と偲んだ。

 海外から寄せられたお悔やみメッセージ(代表4通)も紹介され、それぞれ世界の平和構築への尽力を賞賛した。

 読経の中を指名焼香と一般焼香が並行して実施され、半田座主の遺影に向かって合掌し、頭を垂れた。半田座主に名誉博士号を授与したタイ王国立マハチュラロンコン仏教大学のプラ・ソーポン・ワチラポーン学長代理(上座部僧)も焼香した。

 宗葬の最後に葬儀委員長の木ノ下寂俊宗務総長が挨拶。会葬者に謝辞を述べると共に、「(半田座主は)常に和顔愛語をモットーとされ、その素晴らしい笑顔は地位・国籍・人種を超えてあらゆる人々を虜にするものであり、半田スマイルと称された。心から世界平和を願われ、世界中の宗教者と交流を深められた」と報告、さらに、12月初旬の住職任命辞令親授式での発言を紹介。「『住職は、寺という家族の中心であり、長であります。だから天台宗と総本山は本末一如となって、その方々を大事に温かく見守ってください』と仰せになった。今後はそのお言葉を拳拳服膺しつつ、今後の宗務に精励してまいりたい」と決意を述べた。

2016/2/4 WCRP日本委員会 4月にミャンマーの宗教指導者招き対話 平和実現へ

 公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(杉谷義純理事長)は1月27日、東京・杉並区の立正佼成会法輪閣で第16回理事会・第11回評議員会を開催した。民族・宗教間対立が続くミャンマーの諸宗教指導者を招聘。4月6日にシンポジウム「ミャンマーの民主化と諸宗教協力」(仮題、会場=東京・代々木、妙智會教団)を開催する計画で、同国社会の融和実現に向けた働きかけを行うことが決まった。

 4月4日~8日、仏教・キリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教から成るミャンマーの諸宗教指導者代表団が来日。代表団の中には特別ゲストとして、仏教過激主義政治グループ民族宗教保護協会(通称「マバタ」)の会長も入る予定で、ミャンマー国内における反イスラム主義の阻止、宗教を理由とした差別・暴力の予防などの対話を集中的に進める方針だ。

 ミャンマーでは民政移管後に民主化が進む一方、イスラム教徒ロヒンギャ族と仏教徒アラカン族との対立が激化。ビルマ民族仏教至上主義の台頭や反イスラム主義に基づくヘイトスピーチなど、民族・宗教間対立が顕在化している。国を追われたロヒンギャ族が難民となり、その一部は日本にも避難。難民船の漂流が、アジアにおける人道危機を招いている。WCRP日本委員会は同ミャンマー委員会と共に、諸民族・諸宗教の共存に基づいた平和国家建設に貢献したい考えだ。

 難民問題TFを新設

 紛争が続く中東シリアをはじめとして深刻化している難民問題に集中的に取り組むタスクフォース(TF)を、平成28年度事業として新設。「宗教組織が難民受け入れを実施する場合の必要な準備を研究する」ことなどを柱に、国連や行政、専門家、NGOなどとの連携を深めていくことになった。

 今年5月にトルコ・イスタンブールで開催される「世界人道サミット」でも難民問題が中心課題の一つとなる予定で、WCRP日本委員会では難民をめぐる国内外の宗教界の動向を注視。「シリア、ミャンマー等、国際的な難民問題の現状を学ぶ」ことや「国内における難民受け入れの課題点を研究し、国際的な宗教ネットワークと連携して調査する」ことなどを活動方針に挙げた。

 今年は アジア宗教者平和会議(ACRP)創設40周年。10月には京都で、「宗教の名を騙る暴力的過激主義」をテーマに記念シンポジウムを開催する。

 5年計画で取り組んできた東日本大震災の復興支援を、さらに3年間延長。東北3県の中でも原発事故からの復興課題が表面化している福島県に注力する。「地域コミュニティの再構築」や「放射能被害への取り組み」「被災者への心のケア」を主軸に、3月16日には相馬市で「追悼と鎮魂のための祈りの集会」、9月28日には郡山市で「フクシマコミュニティづくりの集い」を予定している。

 昨年同様に3月から5月まで、「東日本大震災をけっして忘れない」キャンペーンを実施。「祈り、募金、ボランティア」などを広く日本社会に呼びかける活動を行う。

2016/2/11 節分会スケッチ 真言宗豊山派福蔵院では鬼と住職のかけあいが人気

鬼たちと星野住職のかけあいで盛り上がった 東京都中野区白鷺の真言宗豊山派福蔵院(星野英紀住職)で1月30日午後、「招福豆まき会」が営まれた。境内には子どもから高齢者まで、大勢が参集。鬼たちが繰り広げる寸劇と、豪快な豆まきで盛り上がった。

 本堂前特設ステージに赤鬼と青鬼が姿を現わすと、子どもたちから「来たよ、来たよー!」の歓声が。鬼たちは境内を見渡し、「腹減ったなあ~。U(うまそうな)K(子どもが)I(いっぱいいる)」と凄んだ。

 そこにとっくりとおちょこを持った星野住職が登場。「これからは心を入れかえてちゃんと働くから、一杯くれよ~」と哀願する鬼に、酒を振る舞った。ほろ酔い気分の鬼たちは、「安心してください。穿いてます」や五郎丸ポーズなどギャグを連発。鬼たちが寝入ったところで、盛大に豆まきを開始した。

 参拝者に「福」と「豆」が行き渡るように、前列と後列を3回交代。「いっぱいとれたよ~」と喜ぶ女の子もいた。

 同寺では毎年、「平日は学校がある子どもたちやお父さん、お母さんにも来てもらおう」と、2月3日直前の土曜日に豆まき会を開催している。

2016/2/11 東大寺 次期別当に狹川普文氏

 華厳宗大本山東大寺(奈良市)は8日、筒井寛昭別当(69)、平岡昇修執事長(67)の任期満了に伴い、第222世別当に塔頭北林院住職の狹川普文氏(64)、次期執事長に塔頭正観院住職の橋村公英氏(59)を選んだ。塔頭住職の互選により選出した。狹川氏は華厳宗管長、橋村氏は同宗務長を兼任する。任期はいずれも5月1日から3年間。

 狹川氏は1951年3月生まれ。奈良市出身。龍谷大大学院修了。1978年上院副主任、2010年宗務長などを経て、2013年から上院院主、東大寺福祉事業団理事長を務めている。

 橋村氏は1956年10月生まれ。奈良県出身。大阪市立大卒、龍谷大大学院修了。2005年財務部長、2010年教学部長などを歴任し、2013年から庶務部長を務めている。

2016/2/11 織田家の菩提寺である名古屋・萬松寺が単立化 曹洞宗と被包括関係を廃止

 織田家の菩提寺として知られる名古屋の萬松寺(伊藤元裕住職)は1月23日、曹洞宗との被包括関係を廃止する旨の文書を境内に公告した。曹洞宗宗務庁にも文書を送達。宗務庁側は通知があったことを認めた。曹洞宗の中でも大規模寺院である同寺が単立宗教法人となることは、波紋を呼びそうだ。

 萬松寺の伊藤住職は仏教タイムスの取材に「単立になりたくなかったけれども、単立にして事業を進めるべきだと判断した。苦渋の判断だった」と心境を打ち明けた。

 一昨年、縁があって都内新宿区の浄土真宗系単立寺院の住職を兼務することとなった。それが宗務庁に伝わり、昨年11月曹洞宗に帰属させるよう念書の提出を求められた。年明けにも再度、念書提出を求められ、「これが(被包括関係廃止の)主たる原因となった」と簡単な経緯を説明した。

 宗務庁側は、通知があったことは認めたが、宗教法人法に基づく行為であるため、コメントはしないという。(伊藤住職への一問一答は紙面でご覧下さい)

2016/2/11 茨城県仏教会・研修会 お寺の未来はどうなる?「400年ぶり布教の時代」に


寺院消滅の現場を語る鵜飼氏(右)と葬式仏教の価値を説く薄井氏 茨城県仏教会(松本一浩会長)は5日、水戸市内のホテルで研修会を開催した。『寺院消滅』を上梓し過疎地寺院のルポを続ける日経BP記者で浄土宗の僧籍も持つ鵜飼秀徳氏と、葬式仏教の価値向上に取り組んでいる株式会社寺院デザイン代表のコンサルタント薄井秀夫氏が講演。異なる角度から未来の寺院のありかたを示した。約50人が参加した。

 鵜飼氏は国学院大学の石井研士教授の分析を基に、人口減少と過疎化の影響で現在およそ17万7千ある宗教法人が2040年には6万3千(35%)減少し11万4千になる危険性があると指摘。それを踏まえ、実際に過疎地寺院の現状をレポート。

 島根県石見地方の、地図にもカーナビにも載らない上に住職は遠隔地に住んでいるが、「年に1回、白装束の集団が怪しい宗教儀式を行う」という異様な状況になった浄土宗寺院や、長崎県五島列島にある「先々代住職が逃げてしまい、在家出身の若い住職を檀家が迎えた」日蓮宗寺院の様子を、参加者は他人事とは思えない表情で聞き入った。

 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市のある寺院では、檀家の状況を配慮し葬儀の布施を一律5千円にしたという。「震災から4年経って、布施はそのまま5千円で定着してしまった。一度下げたお布施の金額を上げることは難しい」と、檀家も寺も苦しい中での再興がうまくいかない事実も語った。

 送骨サービスや都市開教などで、こうした状況を打開しようとする住職の取り組みも紹介。また北方領土の墓地をルポしたところ、「先祖を思う心はどこでも同じだ」という結論に達したといい、墓じまいやお寺離れなどが取りざたされる中でも、その基本を守ることが一つの生命線だとも提示した。

 質疑で仏教界興隆の秘訣を尋ねられた鵜飼氏は「長老主義をやめることが必要」とし、執行部が70歳代を超えている宗門行政や“青年会”と称しながら中年層が活動の中心にいる現状に苦言。「一般企業だと平均年齢30代くらいでなければ硬直化してしまう」と述べ、若手の自由な発想や意見に期待をかけた。

 薄井氏は未曽有の多死社会の中でもそれぞれのお寺で葬儀が増えない理由を「地方から都市部に出て、菩提寺を持たない人が大半」だからと分析。地方に出た檀家のために出張法要や、複数の寺院が協力し合って「○○県出身○○宗檀徒の大法要」を行うなど、縁をつなぎとめる工夫を提案。「大切なことは墓が遠くにあっても不都合がないような状態にしてあげること。先祖を供養する気持ちが強いからこそ、お参りがなかなかできない遠方の菩提寺の墓じまいをしてしまう」と逆説的な論を説いた。

 その上で、菩提寺を持たない人が増えた現代日本では、400年ぶりの「布教の時代」が来ると予見。永代供養墓や終活講座などの新たな取り組みをする意識の高い僧侶が増え、「葬式仏教の価値に気付くこと」が必須だとした。

2016/2/18 本願寺派伝灯奉告法要スローガン決まる「うけつぐ伝灯 伝えるよろこび」

 浄土真宗本願寺派の大谷光淳・第25代門主の伝灯奉告法要のスローガンが決まった。本願寺派職員が応募した187点から、北豊教区(福岡県北九州市)嘱託職員の高岡宏信さん(38)の「うけつぐ伝灯 伝えるよろこび」が選ばれた。このスローガンのもとで、法要期間中に記念行事を実施。国宝・阿弥陀堂で、歴代門主以外で初めてとなる公募による結婚式などが行われる。

 京都市下京区の宗務所で10日、スローガンと合わせてロゴマークが披露された。漢字「伝」の成り立ちである「1つの中心を巡る」との意味から、人へと伝わっていく様子を表した。

 高岡さんは、「お念仏のみ教えを自ら喜び、その素晴らしさを一人でも多くの方々に伝え広めていく喜びを私なりの言葉で表現した」と語った。

 伝灯奉告法要は10月から来年5月まで、1期8日の計10期、80日にわたって営まれる。1日1座午後から勤められ、午前中に記念行事を執り行う。法要期間中の日曜日には結婚式を行い、10組限定で挙式するカップルを募集する。僧侶や門徒以外に一般の人も応募できる。

 これまで阿弥陀堂で式を挙げたのは23~25代門主のみで、大谷家以外では初めてとなる。式では念珠の贈呈のほか、記念撮影が行われる。式は無料。衣装などは申込者が手配する。本尊の阿弥陀如来像を安置する阿弥陀堂は1760年の再建で、2014年に国宝に指定された。3月10日に同派ホームページで応募方法を公開し、受付を開始する。

 同じく日曜日に御影堂で初参式を開く。門主との記念撮影がある。月曜から土曜日には、住職の就退任、還暦や七五三など人生の節目を祝う儀式に応じた参拝式を御影堂で行う。特別公開する国宝・飛雲閣や、西本願寺の名宝を展示する龍谷ミュージアムの観覧などを含めたツアーを計画している。いずれも寺院関係者以外の一般の人も応募可能。

 法要・行事本部長の高橋篤法副総務は、「記念行事によって私たちの思いを伝え、宗門外の人の思いも受け止めていきたい」と話した。

 記念行事の問い合わせは同派行事部(電話075―371―5181)まで。

2016/2/18 真如苑立教80年祭を執行 開祖・霊祖・両童子を本尊に護摩法要

開祖・霊祖・両童子を本尊として営まれた立教80年祭。導師は伊藤真聰苑主(8日 応現院) 2・26事件に先立つ昭和11年(1936)2月8日、伊藤真乗開祖と霊祖・友司夫人が揃って宗教専従の道を歩み出してから80年。真如苑(伊藤真聰苑主)は8日、東京都立川市泉町の応現院で「立教80年 真如立教祭」を執行。ご宝前には開祖と霊祖の双親、夭逝した長男の教導院(智文)と次男の真導院(友一)両童子の尊像を安置。教団確立の祖である4師を本尊として護摩供が営まれた。真聰苑主は、「(4師を)お祀りさせていただいての法要は初めてです。うれしいです」と言葉を詰まらせながら挨拶した。


 法要に先立ち、真乗開祖がエンジニア(航空設計技術者)として勤務していた石川島飛行機製作所(後に立川飛行機)に辞表を提出して、衆生済度の道を選択するまでの様子が映像で紹介された。逡巡する真乗開祖に仏さまの言葉を伝える友司夫人。迷いを振り切って会社に辞表を提出したのが2月8日だった。その意義を確認しながら法要が勤められた。


 教徒を代表して2人が誓いの言葉を発表。前教務長の片山英一氏は昭和23年(1948)に教えに触れ、昭和28年から事務局に奉職し、翌年発足した青年会の初代副会長を務めたことに言及。「教主さま、摂受心院さまから直々にご教導たまわり、実の親以上に育んでいただいた一日一日は、生涯の私の宝でございます」と感謝。そして「真如の教えをどこまでも護持し、世のため人のため真如を語り続ける菩薩行に邁進し続けることをここに堅くお誓い申し上げます」と93歳という年齢を感じさせない、力強い宣言をした。


 青年会を代表して仁禮一成氏も感謝の言葉を述べつつ、「青年はこころ一つに、諸先輩方の信心をしっかりと受け継ぎ、真如を語る利他実践に精進してまいることをご尊前にお誓い申し上げます」と発表した。


 伊藤真聰苑主は「真如の教えが立教された今日、真如開祖教主さま、霊祖摂受心院さま、そして教導院さま、真導院さま、私たちの真如の帰依としてお祀りさせていただいての法要は初めてです。うれしいです。ありがとうございます」と言葉を詰まらせながら挨拶した。


 また法要前の映像を振り返りながら、「真如開祖さまは世界の先端を行く航空エンジニアでした。伊藤家の『病筮鈔』(易学)と摂受心院さまの霊能による霊示に添い、双親さまは仏さまと祈りの中で対話しながらこの立教を決めたのです。80年前の2月8日。この時の双親さまの出発がないと今の真如苑はどうでしょう。みなさん、ここにいらっしゃいますか。いないですね」と問いかけ教えの源流をたどった。


 立教祭の模様は衛星回線などを通じて国内外の支部や会館105カ所に中継された。応現院にはこの日、午後の録画法要を含めて1万3千人が参座した。

2016/2/18 身延山大学創立20周年祝う 浜島学長、改革に意欲

記念講演で対談した森本元防衛大臣(左)と武見参議院議員 日蓮宗の宗門校・身延山大学(浜島典彦学長)の創立20周年を祝う記念式典が13日、山梨県甲府市内のホテルで挙行された。浜島学長は「日本一の小さな大学」の自負と共に「さらなる特化、改革を推し進め、魅力ある大学として地域社会、国際貢献、そして身延山発展に寄与する大学として進化していきたい」と意欲を語った。


 式典では学園総裁の内野日総・総本山身延山久遠寺法主のお言葉を学園理事長の井上瑞雄・同総務が代読。近年の大都市一極集中、少子化の流れの中にあって、「大学淘汰とも言える時代に、身延山大学が学術研究、法器養成、社会貢献の大学として発展を遂げていきますように切望しています」と時代の荒波にも負けない大学運営を念願した。


 当日は、望月義仁・日蓮宗宗会議長や立正大学学長、理事長など宗門関係者の他、甲府市長、身延町長など150人以上が参席。記念講演会として参議院議員の武見敬三氏と森本敏元防衛大臣が登壇し、中東のISIL、中国の南シナ海進出、北朝鮮問題など最新の世界情勢についての対談も行われた。


 身延山大学学園は、弘治2(1556)年に善学院として開創以来、門弟教育の伝統を受け継ぎ、西谷檀林、祖山学院、身延山短期大学へと移行。


 平成7年に4年制大学に移行し、17年には介護士を養成する仏教福祉学科(現福祉学科)を開設。今年で4年制移行から20年周年を迎えた。

2016/2/25 鎮魂・復興・平和願い、京都駆ける

スタート直前に手をつないでインターフェイス駅伝をアピールする第一走者(京都市西京極)京都マラソン2016に併設された「インターフェイス(InterFaith、IF)駅伝」が21日、早春の京都市内で開催された。3回目の今年は海外参加者はなかったものの、国内在住の外国籍イスラーム教徒3人が出走したほか、日本人女性では初めて2人が参加した。異なる宗教者からなる10チーム40人が世界平和と東日本大震災の犠牲者への鎮魂、復興を願ってタスキをつないだ。前日の20日には中京区の法華宗大本山本能寺で祈りが捧げられた。主催は全日本仏教会を中核としたインターフェイス日本実行委員会。


日本人女性として初参加の山下和代さん(右)と中村ひとみさん。手にしているのは記念メダル 前日の雨がすっかり止んで青空がのぞいたスタート地点の西京極総合運動公園。午前9時、マラソンを走る1万6千人がスタート。約15分遅れでインターフェイス駅伝の第一走者10人が横並びに手をつないで登場。墨染めの僧衣姿も。日本人女性最初となる山下和代さん(神道扶桑教)は、ハーフマラソン体験者だ。「完走したい」と決意を口にした。


 約10キロごとに中継点がある。第一中継点は総本山仁和寺前で、今年も僧侶らが山門で「想いだそう!復興支援の灯」という横断幕を掲げて激励した。第2中継点(北山ふれあいセンター前)と鴨川河川敷の第3中継点(聖ドミニコ女子修道院前)でもスタッフらが声援をおくった。


 ゴールは平安神宮前。完走が目的でタイムレースではないが、最高タイムはEチームの4時間4分13秒だった。4区を走ったもう一人の女性ランナー、中村ひとみさん(浄土宗)も無事にゴールし笑顔をみせた。


 同日夕、ホテル本能寺で表彰式が行われた。主催者を代表して倉澤豊明実行委員長(全日仏事務総長)は、「前回は大会本部にいたが、今回は責任者だから各中継点に挨拶に行くように、ということで参らせていただいた。第一中継点には朝早くからお集まりいただき、仁和寺においては朝の法要を早めに済まされ、大声援をおくったくださった。ほかの中継点、沿道でも声援を送って下さり、たいへん素晴らしいなかでできたと思っている」とランナーやサポーターをねぎらった。


 多忙なスケジュールの中を門川大作市長も参席して挨拶。「祈りの駅伝、大成功でございます。走った方、お支えいただいた方、応援して頂いた方、また成功裏にむけて祈り続けていただいた方に御礼申し上げますと感謝。さらに「京都は宗教都市であり、祈りの都市である。世界を見た時、宗教の違いで対立が起きているなかで、京都に伝わっている寛容の精神、多文化共生の精神をしっかり再認識し、世界の人々の平和のために祈り、行動することの大事さを改めて実感している」と述べ、諸宗教者によるタスキリレーを歓迎した。


 今回の駅伝には海外からの参加はなかったが、日本在住のトルコ国籍2人、エジプト国籍1人(いずれもイスラーム)がエントリー。日本人ムスリム1人も出走した。

2016/2/25 第33回庭野平和賞 和解と平和構築センター(CPBR)が受賞



2015年6月に開催された国民フォーラムにおいて、和解のプロセスについて諸宗教対話センターでの対話活動で集められたコミュニティーの人々からの提言を発表する諸宗教活動の執行委員 公益財団法人庭野平和財団(庭野浩士理事長)は23日、第33回庭野平和賞を内戦とインド洋大津波の被害から復興に向けた対話を草の根レベルで実践しているスリランカの民間団体「和解と平和構築センター」(CPBR、Centre for Peace Building and Reconciliation )に贈ると発表した。贈呈式は5月12日(木)午前、東京・国際文化会館で挙行される予定。顕彰メダルと賞金2千万円が贈られる。


 CPBRは2002年、元弁護士で法律家のディシャーニ・ジャヤウイーラさん(47)と彼女のパートナーで紛争解決の専門家である大学教員のジャヤンタ・セネヴィラトネ氏(65)によって創設された(2人が共同創設者)。両者ともシンハラ人仏教徒だ。


CPBR共同創設者のディシャーニ・ジャヤウィーラさん(左)とジャヤンタ・セネヴィラトネ氏 スリランカでは1980年代から政府軍とLTTE(タミル・イーラム解放の虎)の内戦が繰り広げられた。09年にLTTE議長が死亡し、政府側は26年にわたった内戦終結を宣言。内戦下の04年のインド洋大津波ではさらに事態を悪化させた。


 この間、CPBRはスリランカ社会を形成するシンハラ人、タミル人、イスラーム教徒、カトリック教徒の間の対話を実施し、相互和解に努めてきた。国内には5カ所の諸宗教対話センターを有し、スタッフ29人とボランティア約100人が活動している。


 紛争和解においては宗教指導者、女性、若者といった社会への影響力が大きく、変容が期待できる人々に焦点を当てている。ジャヤンタ氏はビデオを通じて「対話、若者、女性という三つの柱が、スリランカの未来もそして世界の未来を握っているとCPBRでは考えている」とのメッセージを発している。同時に対話のプロセス(過程)を重要視している点にも特色がある。

 スリランカからの受賞は、仏教精神を基盤とした農村開発運動を展開したアリヤラトネ博士(第9回)以来、24年ぶりとなる。


2016/2/25 伝統教団が宗議会シーズン 各宗派で論戦開始



曹洞宗 
 第124回曹洞宗通常宗議会が22日、東京都港区芝の宗務庁に招集された。注目は、前内局時代に推薦された一部の理事らが辞任せず、現内局の推薦者と交代しないことで緊張状態にある学校法人愛知学院と学校法人駒澤大学の問題。釜田隆文宗務総長は施政方針演説で「宗門と宗門関係校には、その創設に由来する深い関係があり…法人格が異なることによって関係が絶たれるものではなく、さらに強固な関係をもって、宗門と宗門関係学校がともに発展していくことが、最も望ましい」と述べ、強くけん制し、対決姿勢を鮮明にした。 (詳しくは紙面をご覧ください)




高野山真言宗
 高野山真言宗(添田隆昭宗務総長)の第153次春季宗会(安藤尊仁議長)が23日から27日までの会期で、和歌山県高野町の総本山金剛峯寺内宗務所に招集された。添田総長は、宗規違反の放漫財政に陥った前内局2氏を1月21日付で提訴したと報告。提訴は「昨年9月の秋季宗会での全会一致による責任追及決議」を重視したものだとして、理解と協力を求めた。一方、前内局2氏側は15日付の答弁書で、提訴の「却下」(門前払い)を主張。一切の責任を認めず、全面的に争う姿勢を見せていることがわかった。 (詳しくは紙面をご覧ください)




臨済宗妙心寺派
 臨済宗妙心寺派は23日、京都市右京区の宗務本所に第130次定期宗議会(河合宗哲議長)を招集。栗原正雄宗務総長は、平成29年度に正当となる臨済宗中興の祖、白隠禅師250年遠諱の一環として静岡県沼津市にある誕生地および長野県飯山市にある修行地の保存・整備事業を推進することを表明した。また教化センター規程を見直し、とくに東京禅センターの拡充を掲げた。 (詳しくは紙面をご覧ください)




天台宗
 天台宗(木ノ下寂俊宗務総長)の第135回通常宗議会(小川晃豊議長)が23日、滋賀県大津市坂本の宗務庁に招集された。木ノ下総長は執務方針演説で、昨年4月からスタートした祖師先徳鑚仰大法会の第2期推進事業を説明。具体的になった諸事業に今後も積極的に取り組んでいく決意を示した。 (詳しくは紙面をご覧ください)




真言宗智山派
 真言宗智山派(小宮一雄宗務総長)の第122次定期教区代表会が23日、京都市東山区の宗務庁に招集され、約9億4200万円とする2016年度智山派予算案など24議案が上程された。任期中最後の代表会となる小宮一雄宗務総長は総長演説で、4年間の小宮内局の施策を振り返った。 (詳しくは紙面をご覧ください)

2016/3/3 各宗宗議会シーズン 過疎や人権問題に取り組む

真言宗豊山派 「人権擁護」前面に
 真言宗豊山派(坂井智宏宗務総長)の第141次宗会通常会(加藤章雄議長)が1日から3日まで、東京・大塚の宗務所に招集された。4月から現行の「同和推進委員会」を「同和推進・人権擁護委員会」(委員20人)に改称し、設置目的に「人権」を組み入れると発表。同和問題だけでなく、人権問題全般を扱う機関として再出発することになった。

浄土真宗本願寺派 寺院53%が消滅可能性都市に
 浄土真宗本願寺派(石上智康総長)の第310回定期宗会(竹田空尊議長)は2月24日、京都市下京区の宗務所で始まった。石上総長は2年目に入る宗門総合振興計画(総合計画)を軸に執務方針を演説し、10月から開幕する伝統奉告法要について、「歴代宗主のもとに受け継がれてきたお念仏のみ教えが一人でも多くの方に伝わる機縁」となるようにと期待を込めた。12月には任期満了に伴う選挙が行われるため、現議員での定期宗会は最後となる。

高野山真言宗 過疎対策と都市開教に重点
 高野山真言宗(添田隆昭宗務総長)の第153次春季宗会(安藤尊仁議長、和歌山県高野町・総本山金剛峯寺内宗務所、2月23~25日)で、添田総長は4月から人口減少・過疎対策と首都圏開教など現代的な緊急課題を検討する4つの小委員会を設置すると発表した。

真言宗智山派 真福寺の土地一部売却
 真言宗智山派(小宮一雄宗務総長)の第122次定期教区代表会は2月25日、別院真福寺(東京・港区)の土地一部を売却する議案など全24議案を原案通り可決し閉会した。約4億5200万円とした2016年度総本山智積院一般会計には、建て替えを計画する智積院会館の設計費や、宝物館建設に向けての調査費などが計上された。

天台宗 寺院存続へ改革望む声
 2月23日から始まった天台宗宗議会(小川晃豊議長)は木ノ下寂俊宗務総長による執務方針演説を受けて代表・通告質問、各種委員会等が行われ、25日、提出議案すべてを承認した。代表質問では、2040年に天台宗寺院の35・8%が消滅する試算から、道興会、新成会とも「寺院の存続」や機構改革について質問がなされた。

曹洞宗 「催告書」撤回求め請願
 第124回曹洞宗通常宗議会は2月25日に全議案を可決して閉会した。昨年3月に内局が、旧多々良学園問題をめぐる金銭的損失への内部責任として善管注意義務違反や道義的責任の観点から、事件当時の宗門推薦学園理事・監事、内局員、宗議会議員に合計約1億円の金銭的負担を求めて出した「催告書」の件についても議論が活発に交わされた。
(各記事の詳報は紙面でご覧下さい)

2016/3/3 浄土宗総合研究所シンポ 祖師をめぐる教科書記述を検証

 浄土宗総合研究所は2月22日、東京・港区の大本山増上寺で法然上人と親鸞聖人の教科書記述問題に関する調査の成果報告となる公開シンポジウム「公教育と宗教」を開いた。宗門僧侶や教科書の出版関係者など約100人が参加。同研究所研究主任の戸松義晴氏は、教科書など公教育で宗教を取り上げる際に公平性や公正性を担保していくためには「幅広く社会一般に投げかけて、多くの人と意見を交換していくことが重要」と話した。


「倫理」教科書の改訂・執筆に関わる東京大学大学院の藤原聖子准教授(比較宗教学)の基調講演では、中学校で「宗教科」が必須科目となっている英国の事例を紹介した。 


 英国では、宗教について地域の諸宗教団体の声が教科書に反映されているが、日本では宗教宗派に関する記述や分量に偏りがあり、「教えたいことが先にあって、それに合わせて都合よく宗教を利用している。現実の宗教とはほど遠いのではないか」と指摘。教科書作成者やそれを使用する教員が、多様な信仰をもつ人々と暮らすことについて想像力や関心をもつべきだと提案した。


「法然上人の教科書記述研究プロジェクト」研究主務の林田康順・大正大学教授は、同研究に前後して教科書を出版する6社のうち、3社が自主的に記述を改めたことを報告。「教育基本法の精神を遵法した姿勢の表れ」と評価した。


 質疑応答では、林田教授が教科書記述問題を提起する上で教学論争に陥らないように、あくまで教義の優劣に立ち入らない姿勢を貫いたことを述べると、戸松氏も「浄土宗から直接教科書出版関係者に働きかけはしていない。第三者で学識の深い方から広く意見を聞くところから始めた。私たちがこう書いてほしいということは、本来すべきではないと思っている」と述べた。


 浄土宗の宗門関係校である東海中学・高校の近藤辰巳学監は、教科書の記述の追加や変更は、センター試験など入試問題から強い影響を受けていると指摘しつつ、記述を変えてもらうには「効果的な声の上げ方がその時々で違う。今回、林田先生や浄土宗の対応は的確だったと思う」と語り、取扱いの難しい問題であったことも示唆した。

2016/3/3日本臨床宗教師会が発足 宗派を超えた新しい宗教改革

 東日本大震災を機に超宗教・超宗派の活動を目指して誕生し、布教を目的とせずに医療現場や福祉施設など公共の場で心のケアに当たる宗教者・臨床宗教師の組織「日本臨床宗教師会」が2月28日、設立され、京都市下京区の龍谷大大宮学舎で発足を記念するシンポジウムが開かれた。カトリック援助修道会シスターの高木慶子・上智大グリーフケア研究所特任所長が講演し、「宗派を超えて統合へと向かう新しい宗教改革であり、現代人が宗教に求める姿だ。宗教に対する偏見を是正し、信頼を取り戻す機会としなければならない」と期待を寄せた。

 臨床宗教師は2012年に東北大で養成が始まり、これまでに仏教やキリスト教、神道などの宗教者ら126人が修了。14年に開始した龍谷大は25人を輩出している。今年から武蔵野大、種智院大、来年には愛知学院大で養成講座が開かれる。

 会は、臨床宗教師の養成などに関わる大学の研究者や、全国に6つある臨床宗教師地方部会(北海道東北、関東、中部、関西、中国、九州)の代表者などでつくる。養成の動きが広がり、医療や福祉施設などに従事する修了生が増えてきたため、共通の基盤を設けようと設立した。事務局は東北大に置く(事務局長=谷山洋三・東北大准教授)。

 会の定める倫理綱領を各大学などと共有する。修了生の質を保つために、継続研修を実施。将来的に「認定臨床宗教師(仮称)」の資格を導入する。地方自治体や公立病院の関心も高いという。すでに京都府が自死対策に臨床宗教師を活用している。

 シンポには約250人が参加。東日本大震災から5年を迎え、開会前に全員で犠牲者を追悼した。森清範・清水寺貫主などが祝辞を述べた後、設立の経緯を説明した理事の鈴木岩弓・東北大教授は、「高齢多死社会を迎える日本の今後に向けた社会運動となっている」と力を込めた。

 会長に就任した島薗進・上智大グリーフケア研究所長は、「宗教が多元的な日本社会では、諸宗教が協力することで、行政や医療機関に受け入れられやすい。困難が起こっている世界の宗教にも、相互協力する動きへの手掛かりを提供できるかもしれない」と語った。

 シンポに参加した県西総合病院(茨城県桜川市)の近藤福次・泌尿器科医長は、「心のケアの新しい流れに期待したい」と話していた。

2016/3/10 森川宏映天台座主が記者会見

一つひとつ質問に丁寧に答える森川座主 半田孝淳・第256世天台座主の逝去に伴い、第257世となった森川宏映座主(90)の記者会見が2日午後、滋賀県大津市の天台宗務庁で開かれた。

 大学は林業を学び、比叡山では長く山林保護に携わってきた森川座主は、地球温暖化や生態系の変化に懸念を示しながら、「人類存続の危機につながる環境破壊の問題を解決するのは、『草木国土悉皆成仏』ではないか。これは人間と自然とが共生して生きる考えだ」と訴えた。(続きは紙面でご覧ください)

2016/3/10 各宗宗会シーズン 平和問題や少子高齢化社会に焦点

日蓮宗 降誕事業実働に向け3方針提示
 日蓮宗(小林順光宗務総長)の第110定期宗会が8日、東京・大田区の宗務院に招集された。3年目となる小林内局は先の内局改造で同心会単独内局として初の宗議会を迎えた。平成33年の宗祖御降誕800年度慶讃事業実働に向け、「宗門のブランド化」などの3つの方針を提示した。日蓮宗では慣例的に任期半ばの2年で内局や正副議長の交代が行われることが多く、初日に行われた正副議長選挙では、新宗会議長に吉田見悠議員(同心会)、副議長に中臣泰斎議員(明和会)が選出された。

浄土宗 光照院門跡を特別寺院へ
 浄土宗(豊岡鐐尓宗務総長)の第114次定期宗議会(木村弘文議長)が7日、京都市東山区の宗務庁に招集され、昨年浄土宗に復帰した光照院門跡(京都市上京区)を、再び特別寺院に定める議案が提出された。これに合わせて、宗費などを負担しないと浄土宗規則に明記するなどして、特別寺院の位置づけを明確にする議案も上程された。離脱した寺格の高い寺院が復帰するのは、1962年、77年の一連の宗派合流以降初めて。

真言宗豊山派  宗派と地方寺院の連携を
 真言宗豊山派(坂井智宏宗務総長)の第141次宗会通常会(加藤章雄議長、1~3日、東京都文京区・宗務所)で、少子高齢化による檀家減少や家族形態の変化による先祖供養の希薄化などの諸問題にどう対応すべきか、質問や提案がなされた。
 宮内敦夫議員(群馬・清浄院)は、「少子高齢化や個人主義の時代に即応した寺院活動」について質問。「葬儀や法事の簡素化が進み、家族葬・直葬や安直な永代供養、墓終いなどの言葉が頻繁に聞かれるようになった。人口減少による檀家の自然減少に直面する今、寺院の存在意義が問われている」と提起し、「私の町(板倉町)でも結婚適齢期の男女の3分の1が未婚、後継者がいない世帯などが4分の1あり、親子・孫までいる世帯が少なくなってきている。先祖供養の意識が希薄になっている」と危機感を示した。


浄土真宗本願寺派 平和問題に声明を要請
 浄土真宗本願寺派(石上智康総長)の定期宗会は4日、平成28年度予算案をはじめ提出議案をすべて可決して閉会した。10月からの伝灯奉告法要にむけてより実働的な体制となる。
 総長演説をうけての通告質問(2月24・25日)では、主に門徒議員が人口減社会に対しての宗門の取り組みを質し、僧侶議員は戦後70年や憲法改正などに関する平和論を提起した。

高野山真言宗 16年ぶりに宗費値上げ
 高野山真言宗(添田隆昭宗務総長)の第153次春季宗会(安藤尊仁議長、2月23~25日、和歌山県高野町・総本山金剛峯寺内宗務所)で、赤字予算を補填するための暫定的な宗費値上げ案が承認された。平成29年度から、末寺がそれぞれの収入規模に応じて納める宗費の額を算出する基礎数値「指数」の単価を改定。現行の1指数750円を800円に増額し、約2千万円の赤字予算となっている宗務部((宗)高野山真言宗)で約1700万円の増収を図る。添田総長は「それでも赤字だが、残りは他を節約して捻出したい」として理解を求めた。宗費賦課金課額の増額は平成12年以来となる。
(各記事の詳細は紙面でご覧ください)

2016/3/10 妙智會 福岡ヤフオクドーム大会に3万人が参集 超宗派で信仰心輝かそう

九州一円を中心に3万人が参集した。スクリーン中央は大恩師、会主、大導師の尊影 妙智會教団(宮本惠司法嗣)は2月28日、福岡市で「これからの信仰」をテーマに福岡ヤフオクドーム大会を開催。宮本孝平大恩師、宮本ミツ会主、宮本丈靖大導師と継承されてきた教えを再確認する一方で、宮本法嗣は信仰の尊さを力説し「信仰を持つ人を増やしましょう」と訴えた。

 ドーム大会を準備してきた九州教会の松枝飛支子教会長は、大導師から贈られた会主の念珠を宮本法嗣に手渡し、願いと志のこもった念珠に感謝した。大会には九州一円と県外を合わせ3万人近くが参集した。

 球場のバックスクリーン方向に白を基調としたシンプルなステージ。照明が落とされ、玄題三唱に続いてスポットライトを浴びて御旗が入場して大会が幕を開けた。

 女子青年部員60人が舞台中央に安置された御旗に向かい灯と華を献じて荘厳したのに続いて、宮本法嗣を導師に大会が開式された。そのご祈願では、地震や台風など自然災害に見舞われる九州地方の人たちに心を痛めていた会主の思いを披露。さらに昭和37年(1962)の大導師による鹿児島布教、翌年の会主による北九州巡錫といった歴史を掘り起こしながら、「大導師さまが初めてご布教をなされてから、半世紀の歳月が流れて、今では275の支部、6万世帯を有する大輪の花を咲かせることができました」と言葉を詰まらながら奏上した。

 法要後、松枝教会長が挨拶し大導師からの“遺命”を披露しながらドーム大会を決意した経緯を報告。また会主ゆかりの菩提樹の念珠を大導師から贈られ、手にした途端涙が止まらなかったエピソードを紹介。「お念珠を頂戴して喜びました。同時に使命と会主さまのお志を感じました」と当時の心境を語った。

会主と大導師ゆかりの念珠が松枝教会長から宮本法嗣に手渡された 松枝教会長は「お念珠をお守りしてきたが、いまここに宮本惠司先生にお返しでき、本当に嬉しい。大導師さまも会主さまも喜んでいらっしゃると思います」と法の継承者である宮本法嗣のもとに返せることを喜んだ。

 宮本法嗣は「このような慈悲深き式典の中で大導師さまのお心こもった会主さまのお念珠を頂戴した。会主さま、大導師さまが、しっかりとやりなさいということだと信じております」と感謝と決意を述べた。

 宮本法嗣は、テーマに即して信仰の大切さを強調。諸外国に比して日本人の信仰割合の低さを示しながら、「今日の状況を一人の信仰者として、大変憂いております。なんとか宗教界をあげて信仰心を持っていると言えるような人が増えてほしいという強い願いを持っています」と主張した。

 妙智會の教えと信仰についても言及した上で、「色んな宗教・宗派が一つになって、信仰心を輝かせる人を作っていこうというのがわれわれの大事な使命なのです」と、かつて新宗連(新日本宗教団体連合会)が掲げた「国民皆信仰」につながる信仰心の覚醒を繰り返し訴えた。

2016/3/17 各宗派宗会 質問戦で課題を討議


日蓮宗 明和会が宗会改革訴える
 日蓮宗(小林順光宗務総長)の第110定期宗会(吉田見悠議長)が8日から11日まで、東京・大田区の宗務院に招集され、予算案ほか信行道場入場考査講習会の廃止や加行所入行資格の厳格化など定めた総長提出の議案をすべて原案可決した。内局から離脱し、完全野党となった明和会の代表質問では、厳しい寺院環境への危機感から、宗会改革や宗務全般への明和会の主張が終始強調され、各施策についての認識を問う従来のやり方とは異なる、これまでにない代表質問となった。

浄土宗 増えるペット供養への見解問う
 浄土宗の第114次定期宗議会は11日、提出された全33議案を原案通り可決し閉会した。2024年に迎える開宗850年の記念事業を行うための基金や、災害に備えた特別課金の新設が決まった。通告質問では、ペットは極楽往生できるのかを問う質問があり、浄土宗総合研究所(浄総研)の藤本淨彦所長は、阿弥陀仏の光に照らされれば、「迷いの世界を離れ往生できる」と見解を述べた。

真言宗豊山派 他宗派教師受け入れも
 真言宗豊山派(坂井智宏宗務総長)の第141次宗会通常会(加藤章雄議長、1~3日、東京都文京区・宗務所)で、兼務・無住職寺院の増加と後継者不足への懸念から他派教師の受け入れに関する提案が出された。原発事故避難寺院への新たな支援策についての具体的な提言もなされた。

新義真言宗 千葉1・2教区の統合案
 新義真言宗(妹川敬弘宗務総長)の第57次定期宗議会(五十嵐敬司議長)が9日、東京・湯島の宗務出張所に招集された。千葉県の市原市と袖ヶ浦市に混在して設置されている千葉第1教区(正住職5人)と千葉第2教区(同7人)の合併統合案を討議。各教区内での話し合いを経た後、両教区の理解が得られれば6月の次期宗議会に議案として上程する方針を固めた。合併した場合、全10教区となるため、議員定数も1議席減り10となる。

真言宗醍醐派 「御影」代金の半額を支給
 真言宗醍醐派の第68次定期宗会(麻生章雄議長)が10、11の両日、京都市伏見区の総本山醍醐寺で開かれた。壁瀬宥雅宗務総長は施政方針演説で、来年4月に予定される消費税率の10%への引き上げからくる収入減の解決策として、五大力尊仁王会で配布するお札「御影」を末寺が授与した場合、本山が代金の半額を末寺に支給する案を打ち出した。議案は前年度同額の8355万円とした2016年度醍醐派予算案のみで、原案通り可決された。(各記事の詳細は紙面でご覧ください)

2016/3/17 總持寺祈りの夕べ 震災七回忌に向け梵鐘鋳造



塩田中学と安積黎明高校による「花は咲く」 曹洞宗大本山總持寺では12日、東日本大震災復興支援「祈りの夕べ」を開催。江川辰三貫首親修による慰霊法要が行われ、震災発生時刻には被災者・避難者・地域住民が黙祷し心を一つにした。


 横浜市立潮田中学校のマーチングバンド部が「上を向いて歩こう」などの演奏で被災者を勇気づけた。続いて原発事故で甚大な被害を受けほぼ全村が避難している飯舘村からのビデオメッセージが寄せられた。


 全日本合唱コンクール等で入賞の常連でもある郡山市の安積黎明高校合唱団が混声合唱曲「こころようたえ」や唱歌メドレーなどを披露。「どんなに辛い状況でも夜明けがあること、明るい未来があることを信じていきます。明るく元気で活動している福島県民の姿をお見せできて本当に幸せです」と笑顔で会場の声援に応えた。


 被災地への「祈りのメッセージ」を語ったのは鶴見大学附属高校の山崎美波さん。今なお帰還できない人々に胸を痛めながらも、「震災から5年が経ち、私が小学生から高校生になったように、新しい次代の担い手が育ってきていることも確かな事実です。私もボランティアなどで復興を支援していきたい」とエールを贈った。


 プログラムにはなかったが、潮田中学と安積黎明高校の生徒が共に復興支援ソング「花は咲く」を合唱するサプライズもあった。


 閉式の辞で石田征史副監院が、七回忌に当たる来年の「祈りの夕べ」には梵鐘を鋳造し、平成救世観音像の隣で誰でも追悼の鐘を鳴らせるようにしたいと今から準備を進めていることを明かした。


 夜には境内一面を、復興への願いを書いたロウソクの光が照らした。

2016/3/17 被災地に地蔵尊2万1千体を奉安 高幡不動が呼びかけ


津波で伽藍流出の被害があった観音寺に再建された北釜地蔵堂。多くの支援に感謝する川澄貫主 東日本大震災から5年となる11日、甚大な被害を受けた宮城県名取市の真言宗智山派観音寺に震災犠牲者を慰霊する約2万1千体の地蔵尊像を安置する「北釜地蔵堂」が完成し、入仏開眼と落成慶讃大法要が営まれた。地蔵尊奉安は東京都昭島市在住の陶芸家・渋谷太郎氏が発願、縁ある同日野市の別格本山高幡不動尊金剛寺(川澄祐勝貫主)が協力して実現した。震災犠牲者を慰霊すると共に、その記憶を後世に語り継ぐ。


 仙台空港からほど近い観音寺は津波によって本堂と共に「千体地蔵堂」が流出。平成25年に檀信徒の協力で仮本堂が再建されたのに次いで地蔵堂が再建された。


一体一体表情が違う地蔵尊。お堂には約2万1千体の尊像と、ご本尊の子安地蔵尊が奉安された 奉安された地蔵尊は陶製で高さ12センチ。震災犠牲者と行方不明者、震災関連死で亡くなった一人ひとりを慰霊するため、渋谷氏とボランティアが制作した。被災地への奉安を願う渋谷氏の依頼を受けた川澄貫主は、各方面に打診し、宮城教区の協力で観音寺への奉安が決まった。地蔵堂再建に向けては、高幡不動の壇信徒や参詣者のほか、多摩教区寺院や関係寺院へ、一体2千円の供養料を呼び掛け、1万6千人超の浄財が寄せられた。寄進者の名前などを記した供養文が地蔵尊胎内に納入されている。


 大法要は川澄貫主を大導師、観音寺の惠美周典住職を副導師に厳修。小宮一雄・宗務総長、杉田広仁宮城教区長、名取市の佐々木一十郎市長ら、多数の来賓と高幡不動や観音寺の檀信徒が参列し、震災犠牲者を追悼するとともに、復興を祈願した。


 犠牲者の慰霊と、震災の記憶を伝える地蔵堂の完成に、川澄貫主は「大勢の方々のお力添えで、立派なお地蔵さまをお祀りすることができました。地域、檀信徒、教区のお力で是非活かしていただきたい」と期待を込めた。宮城教区長の杉田氏は「地域社会の一層の連帯を深め、美しい郷土の復興をめざしたい」と新たな決意を示した。


 観音寺総代長の鈴木英二さんは北釜地区にかつて110戸の住居があったコミュニティの再生を憂慮していると言い、「そのためにはお寺を再建することが一番だと思う」と本堂再建に込めた思いを披瀝。地域を支える農業の再開など、復興の歩みを力強く語った。

2016/3/24・31 大谷大学 仏典写本「大谷貝葉」公開 タイから日本への来歴に新事実

三蔵のうち『論書』の貝葉写本。一葉の大きさは縦約5.1~5.5センチ横約53~60センチ 大谷大学(京都市北区)は17日、ヤシの葉に記された仏典写本「貝葉写本」(大谷貝葉)の一部を報道関係者に公開した。南伝上座部仏教のパーリ語で書写されたもので、今回、タイから真宗大谷派に寄贈された年代などについて、新たな事実が見つかった。

 タイで現存する貝葉写本は1800~1900年代初頭のものがほとんどで、同大はタイ王室から寄贈された1600年代のものを含む64点(大谷貝葉)を所蔵。パーリ語の貝葉写本としては世界でも有数のコレクション。未公刊の仏典も多く仏教研究にとって貴重な資料という。

 これまで大谷貝葉は、1900年にタイ国王のラーマ5世から大谷光演・東本願寺第23代法主に贈られたものとされてきた。しかし最近の研究で、タイに留学していた大谷派の学僧・生田(織田)得能が帰国の際に、タイの貴族から大谷光瑩・同寺第22代法主へ受け渡しを託された可能性があることが分かった。

 日本とタイは来年、修好130周年を迎える。清水洋平・大谷大真宗総合研究所特別研究員は、「19世紀末から20世紀初期にかけ、仏教を通じて日本とタイの間にいかに人的交流があったのかが見えてくる。大谷貝葉はそのことを証明する資料になる」と話した。

2016/3/24・31 本門佛立宗次期講有に高須日良氏

 本門佛立宗(京都市上京区)は9日、次期講有に髙須日良・長薫寺前住職(75)を指名したと発表した。7月2日に遺嘱伝承の儀式、9月8日に講有晋位及び本山晋山の式典が本山宥清寺で執り行われる。

 同宗宗制では、現職講有が次期講有を指名することから、現在の第25世山内日開講有が次期講有の第26世を指名した。山内講有は7月1日で4年間の任期を満了する。

 高須次期講有は昭和15年(1940)10月台湾・髙雄市生まれ。刈茅日鏡師を師僧として長薫寺(熊本市)で得度。立正大学卒。昭和45年(1970)に長薫寺、同57年(1982)に菊池寺、平成4年(1992)に信薫寺の、各住職に就任。平成17年(2005)長薫寺住職を退き後進の教導に専心。
宗門では、教学講師、企画室室員、弘通局教養部長等を経て教務局長、出版局長、弘通局長の要職を歴任した。

2016/3/24・31 WCRP 相馬市で震災復興合同祈願式 9宗教宗派が慰霊の祈り



午後2時46分、458人の名前が刻まれた相馬市慰霊碑前で、海に向かい祈りを捧げる宗教者ら(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会は16日、福島県相馬市で5回目の「東日本大震災の追悼と鎮魂ならびに復興合同祈願式」を執り行った。宗教者や住民ら約60人が参加。津波で甚大な被害を受けた原釜地区の相馬市慰霊碑の前で、立正佼成会・プロテスタント・真言宗豊山派・浄土真宗本願寺派・黒住教・カトリック・円応教・一燈園・イスラームの9宗教宗派の代表がそれぞれ祈りを捧げた。地震発生時刻の午後2時46分には、全員で海に向かい黙祷。慰霊碑の前に進み、一人ずつ白菊を手向けた。

 相馬市では、458人が亡くなった。大津波の爪痕は、今も沿岸部各所に残っている。復興合同祈願式の開式にあたり、WCRP震災復興タスクフォース責任者の前島宗甫(むねとし)氏(元日本キリスト教協議会総幹事)が挨拶。「私たちには、被災地とそこに暮らす人々とどう関わっていくのかが問われている。祈りによって、私たちの心をお届けする」と表明した。

 地元の宗教者として、慰霊碑に近い高台にある真言宗豊山派摂取院の鈴木弘隆住職と俊隆副住職、南相馬市・立正佼成会原町教会の久保木伸浩教会長と会員らが参加した。

 鈴木住職は、宗教の垣根を越えた祈願式に感謝。「5年前の震災直後、遺体があがらない方、身元不明の方がたくさんいた。宗旨宗派を問わず、震災で亡くなった全ての方々の供養をしようと四十九日追悼法要を相馬で、僧侶約200人で営んだ」と振り返り、「そして今回、いろいろな宗教の方々にお祈りいただいたことで、5年前の四十九日法要と今日の供養が一本につながった。亡くなった全ての方々のご供養ができた」と感慨を述べた。

 5年前、大津波は摂取院本堂の2~3メートル手前まで迫ってきた。その猛威で檀家約200人が亡くなり、8割が自宅を失った。鈴木住職は復興について、「まだまだ大変な状況だが、みんなの表情もだんだん明るくなってきた。復旧が終わり、これから復興が始まる」と語った。

 地元住民を代表して、熊谷秀治・中村東部第一行政区区長が謝辞。「(被災地区の)住民の心の拠り所にしようと、毎年お祭りや盆踊りなどの集落の行事をもう一度再現することに取り組んでいる。今年で4回目、千人規模で4月17日に開催する」と発表し、「一番残念なのは震災で人が少なくなったこと。住民はそれぞれ(沿岸部の旧居住区が災害危険区域に指定されて住めないため)高台の復興住宅に転居したが、元の集落の人たちが再び集まれる場所と機会が必要だ」と話した。

 復興合同祈願式は、震災翌年から「『東日本大震災をけっして忘れない』ための祈りと行動」をテーマに開始。これまで岩手県大槌町、同山田町、福島県南相馬市、宮城県名取市で執り行われた。

2016/4/7 グローバル仏教研究会が発足 アジアや欧米からヒント探る


若手研究者や実践者が登壇した発足シンポ世界各地で多様な広がりをみせる「現代」の仏教を研究する「グローバル仏教研究会」の発足シンポジウムが3月29日、東京・西東京市の武蔵野大学で開催された。発起人の田中ケネス・同大教授は「グローバルな仏教研究が日本の仏教団体の国際伝道にも活かされるのでは」と展望した。今後、定期的に研究会などを開いていく。

 田中氏はグローバル仏教の一例としてロシア・モスクワでの仏教の広がりを紹介。この働きの中心が「西洋で仏教に出会い、西洋でトレーニングを受けた人」であるとし、西洋の壁を超えた新たな仏教の広がりを示した。

 欧米の研究者はすでに「グローバル仏教」を研究対象としており、その特性として「在家者の実践(特に瞑想)と参加」「女性参加」「民主的・平等的」「西洋の心理学との連携」「社会参加的」「超宗派的」に整理。仏教伝播の歴史の中では、政治・文化の伝播という側面もあったが、現在の欧米が受容する仏教では「仏教の本質である悟り・精神性が求められている」と指摘した。

 一方で、近年の日本仏教の展開としてマインドフルネス瞑想の人気、西洋のチャプレンをもとにした「臨床宗教師」の広がりなど、グローバル仏教の影響があることを指摘したうえで「日本の伝統仏教がグローバル仏教と出会い、どう関係性を築くのか。臨床宗教師の動き、女性のリーダーシップなどにどう対応するのか」と提起した。

同研究会で「現代」「日本以外のアジア・欧米」に重点を置いた仏教研究によって、日本仏教の国際伝道の情報提供の一助になると示唆。「若い研究者が中心となって推進してほしい」とも期待した。

 発起人の一人、本多彩氏(兵庫大学准教授)はグローバル仏教研究について、宗教組織や教義から、就寝前などに個々で瞑想などをする「ナイトスタンド・ブディスト」のような「組織化されていない仏教の在り方」まで多様な研究対象があるとその広がりを指摘した。

 パネルディスカッションでは、NHKの「こころの時代」を担当する平位敦氏(チーフディレクター)をはじめ、ステフェン・グレース氏(大正大学)、岩田真美氏(龍谷大学)、小野常寛氏(天台宗普賢寺・株式会社結縁企画)、本多氏など、若手の研究者や実践者が登壇。日本仏教の国際化の一面として近代仏教史の検証や、個人主義がすすむなかで「サンガ」の価値の提示など、活発な意見を交換した。

2016/4/7 比叡山延暦寺の根本中堂修復へ 10カ年計画、修復の様子は見学可能に

根本中堂で営まれた工事安全祈願法要(1日) 天台宗総本山・比叡山延暦寺(大津市坂本)で1日、根本中堂(国宝)の大改修工事の安全を祈願する四箇法要が森川宏映座主を導師に執り行われた。昭和の「半解体修理」以来、約60年ぶりで、10カ年、50億円を費やす大規模改修となる。天台宗と延暦寺の両内局はじめ役職者ら100人余が出仕した。

 濃霧が漂う根本中堂に出仕者に続いて森川座主が入堂し、法要が営まれた。森川座主は法則(ほっそく)で根本中堂の歴史を紐解きながら、「工事安全、無事完成をなしたまえ」と平成の大改修工事の無事を祈った。

 木ノ下寂俊宗務総長は、現在進行中の祖師先徳鑽仰大法会の概要を説明し、「8月17、18日には伝教大師ご生誕1250年を慶讃しての諸行事が生源寺を中心に執り行われ、翌19日には根本中堂で四箇法要の執行が予定されている」と着工後の法要を報告した。

 延暦寺の小堀光實執行は約60年前の大改修にあたった先人たちを紹介するなかで、「営林技師として、300日回峰行を満じられた森川座主が就かれた。その任、大変な重役であられたと心するものである」と気を引き締めた。また地元大津市や滋賀県の理解と協力にも謝意を示し、「私に与えられたその職と6名の責任役員が精いっぱい努め、この大事業に取り組む所存である」と力強く宣言した。

 滋賀県教育委員会事務局文化財保護課の太田喜之課長は、根本中堂と回廊を素屋根で覆うことや、工期10年と事業費50億円など修復概要を報告したうえで、「延暦寺さまにもご協力いただき、可能な限り工事現場の公開に努め、この機会を利用して普段は見ることのできない文化財建造物の修理の様子をご覧いただける配慮も可能な限り行ってまいりたいと考えている」と着工中の見学計画を明かした。

 根本中堂は織田信長による焼失後の寛永19年(1642)徳川家光公によって再建された。昭和30年(1955)に半解体修理を実施。今回は屋根の全面葺替えや内部の塗り替え、老朽化した木の取り替えなどが行われる予定。まずは根本中堂と回廊を覆う素屋根工事からとなる。

2016/4/7 高野山復興千年 高野山高校生らが祈親上人報恩行脚


 千年前の平安時代中期に長谷観音の導きで荒廃の極にあった高野山を再興し、奥之院に「不滅の聖燈」をともした祈親上人(958~1047)。高野山を廃絶の危機から救った上人の事績を顕彰する報恩行「高野山復興壱千年記念行事」が3月17日から21日まで高野山高等学校と同大学(共に和歌山県高野町)の主催で行われた。高野山学園創立130周年記念事業の一環で、高校・大学生僧侶ら13人が高野山から奈良・長谷寺まで約80キロの道程を行脚。一歩々々踏みしめながら、祈親上人の足跡をたどった。

 17日午前、弘法大師御廟・奥之院燈籠堂で出発式。「不滅の聖燈」として千年間輝き続けている「祈親燈」が分灯され、青年僧侶らに託された。
高野山高校宗教科主任で行脚の引率責任者である富田向真教諭は、「高野山を心配してくださっている長谷寺の観音様に、高野山の青年僧が健気に頑張っている姿をお見せし、感謝の誠をお捧げしたい」と決意を表明した。

祈親上人が歩いた約80キロの道を行脚する高野山高校・大学生ら 一行は「祈親燈」の分灯を奉持しながら、4日間をかけて弘法大師と祈親上人に縁のある古刹などを巡拝。上人開基の高野山塔頭釈迦文院から町石道を通り高野山麓・九度山の慈尊院を経て、善名称院(真田庵)へ。応其寺、轉法輪寺、栄山寺から上人が修行したと伝わる子嶋寺に参り、久米寺、観音寺(おふさ観音)、安倍文殊院を巡った。

 20日に奈良県桜井市の真言宗豊山派総本山長谷寺門前に到着。 21日に長谷寺を参拝し、本尊十一面観世音菩薩の宝前に「祈親燈」を奉納した。

 祈親上人は「弘法大師御入定」からそれほど時を経ていない長和5年(1016)、高野山に登嶺。大火で灰燼に帰した壇上伽藍など、廃絶の危機に瀕した山上の様子を目の当たりにした。

 奥之院の御廟の前で切り火を打ち、復興を誓った上人は、現在の極楽橋駅周辺で檜(ひのき)の植林に着手。弘法大師が真言密教の根本道場とした高野山の信仰環境を再興した。

 上人の植林は大規模な造林記録としては日本最古級。その復興の精神は現在も「森厳護持」の言葉と共に、高野山で脈々と受け継がれている。

2016/4/7 臨済宗東福寺派・原田融道新管長が入山 開山聖一国師に奉告

総茶礼に臨んだ原田氏(右)と遠藤氏臨済宗東福寺派の管長に就任が決まった原田融道氏(56)の入山式が3月30日、京都市東山区の大本山東福寺で執り行われ、塔頭住職や宗議会正副議長、山内職員ら約100人が参列した。3月末で任期満了となった遠藤礎石管長(71)の退山式も同日、営まれた。

 退山式を終えた遠藤管長に原田氏が方丈で挨拶。総茶礼が行われた後、法堂に入った。本尊の釈迦如来像に就任を奉告し、堂内の土地堂、祖堂で大悲心陀羅尼を読誦した。この後、通天橋を渡って開山堂に進み、開山の聖一国師に入寺を奉告した。

 入山式後、亀山琢道宗務総長が遠藤管長に「これまで本山や宗派のために尽力くださり、教導を賜りましたことを深く感謝しています」と述べた。原田氏に、「福島慶道・元管長のもとで培われた道力を思う存分発揮し、高く法灯を掲げていただきたい」と語った。

 原田氏は、「法をしっかりと守りながら、新しく変えるところは変え、よりよい東福寺をつくっていきたい」と抱負を述べた。遠藤管長は、「新管長を迎え、東福寺がより隆盛を極めることを祈っている」と話した。

 原田氏は1954年9月生まれ。山口県下松市出身。29歳で東福寺塔頭光明院で得度。89年に東福僧堂に掛搭。塔頭栗棘庵住職を経て、2009年から塔頭龍吟庵住職。同年に東福僧堂師家に就任した。任期は4月1日から5年。

 晋山式は10月12日に執り行う予定。

新宗務総長に沖泰隆氏

 亀山総長の任期満了に伴い、次期宗務総長に沖泰隆氏が就任した。任期は4月1日から3年。1946年生まれ69歳。金沢大卒。京都府舞鶴市の常楽寺住職。宗議会議員、宗務所長、布教師会事務局長などを歴任した。

 新内局も決定。総務部長に稲場隆道氏(58)、教学部長に蘆田貴道氏(60)、法務部長に爾英晃氏(45)、財務部長に松浦道博氏(50)が就いた。

 また、平住仰山氏が寺務長に就任した。任期は4月1日から3年。1956年生まれ59歳。花園大卒。塔頭善慧院住職。

2016/4/7 ねりまこども食堂 真宗会館で地域の人と団らん


バイキング形式の食事は大人気東京都練馬区谷原の真宗大谷派真宗会館で行われている「ねりまこども食堂」は昨年4月に始まった。月に2回の食卓は毎回親子で20~30人が集まる大賑わい。金子よしえ代表は「ただのおせっかいなんですよ」と謙遜しながら、お寺で団らんを作る活動が全国に広がっている縁の素晴らしさに感謝する。2日の花まつりでもこども食堂を実施した。

 金子さんと真宗会館を結んだのが実は葬儀だった。金子さんの母親は生前、「死んだら大谷祖廟に入りたい」と常々語っていたほど篤信の真宗門徒。練馬在住の金子さんは様々な縁で真宗会館で葬儀を執り行った。そのため、金子さんからの依頼を会館側も快諾。会館としても地域住民との交流には積極的だったので「場所代も光熱費も一切無料ということでやっていただいて、本当にありがたいことです」と金子さんは深く感謝する。


 毎回十数人のボランティアが集まり、時には都外からも駆け付ける。ボランティアは口コミでどんどん集まったということで、その点に関して苦労はなかったようだ。


 ねりまこども食堂は、全国から多数の物品支援で成り立っている。区民農園の生産者や農家から規格外品の寄附なども受けている。一度のこども食堂でかかる費用は支援物資の状況によるため「数千円で済む場合もあれば数万円になる場合もあります」(金子さん)という。子どもは無料、大人は実費ということで300円を受け取っているが、もちろん営利事業ではない。


 会館としてはあくまでも場所を貸している立場で主催ではないので、食前の法話など宗教教育は行っていないという。ただ、本尊や仏具に興味を示したり僧侶に話しかけてくるようなことはしょっちゅうだ。「まずはそういうところから入って縁になっていければいいのだと思っています」と、大谷派首都圏教化推進本部推進要員で真宗会館ども食堂担当の藤井晃世さんは語る。(南蔵院こども会・椎名町こども食堂・ぞんみょうじこども食堂・長坂子ども食堂の記事は紙面をご覧ください)

2016/4/7 花まつりに寄せて 辻村泰範・社会福祉法人宝山寺福祉事業団理事長


 お釈迦さまの誕生をお祝いし、仏伝にちなんで甘茶を誕生仏に注ぐお花まつりの行事は、灌仏会、仏生会などとも言いますが、仏教徒にとっては最も馴染みの深い行事の一つです。


滝寺境内に設置された花御堂の誕生仏に甘茶をそそぐお稚児さん(昨年の花まつり)。今年は4月24日(日)に行われる 灌仏会の起源については諸説があるようですが、古くは推古天皇14年(606)4月8日に聖徳太子が35歳の時元興寺で灌仏会を行ったと伝えられています。また続日本後紀によれば承和7年(840)4月8日、元興寺の僧静安が初めて清涼殿で灌仏を修したと記録されており、これが灌仏会の初見だとも言われています。いずれにしても、お花祭りが奈良の元興寺、日本で最も古い歴史をつたえる寺にその起源があることは間違いありません。

 たまたま私の父(故人)は、その元興寺の復興を命ぜられて昭和18年に特命住職として国宝の本堂や禅室(僧坊)の解体修理という大事業に携わることになりました。戦争を挟んでの事業は困難を極めたようですが、終戦後ようやく工事が軌道に乗り出した頃、寺の復興と町の子どもたちの支援を目標に寺の庫裏を改築して保育園をはじめることになりました。昭和24年に創設されたこの極楽坊保育園は奈良市内でも最も古い保育所の一つです。

 昭和20年9月2日連合軍に無条件降伏をして以来、昭和27年4月28日の講和条約が発効されるまで、我が国は米軍を中心とする連合軍の占領下に置かれていました。この占領下の時代に日本の文化、風習は大きな変質を遂げていくことになったのですが、イエス・キリストの誕生をお祝いするクリスマスが一気に広まったのもこの時代であったと思います。占領軍の駐屯地が全国各地に置かれ、社会福祉事業にも占領軍即ち連合軍最高司令部(GHQ)の指示が色濃く反映されることになっていきました。

 この指示の具体的な中身や政策は措くとして、福祉施設には進駐軍の将兵が頻繁に慰問に訪れるようになりました。奈良市内にも広大な敷地の進駐軍キャンプが何カ所も設けられました。児童養護施設に入所している子どもたちは、その駐留キャンプのクリスマスへの招待などがあり、サンタクロースからのプレゼントに大喜びしたのでした。

 父は、クリスマスの行事を積極的に受け容れると同時に、一方ではこうした傾向に危惧を抱いていたのでしょう。親友で同じように幼稚園を始めて寺院経営に工夫を凝らしていた徳田明本師(故人・いさがわ幼稚園園長、伝香寺住職、律宗唐招提寺宗務長)等とともに市内の仏教系の幼稚園、保育園に呼びかけて花まつりの合同行事として市内パレードを開催しました。

 白象を引き、お稚児さんたちがお母さんの手に引かれて市内を練り歩きました。残念なことにこのパレードは交通規制の問題などもあったのでしょう、その後定着することはありませんでした。しかしこうした取り組みがその後、仏教系の幼稚園や保育園での花まつりの行事が恒例化することになったきっかけであったと思います。元興寺では今も5月8日(旧暦の4月8日)に本堂正面の廊下に花御堂をお飾りし、極楽坊保育園の子どもたちが揃ってお詣りにやってきます。昨年の花まつり。奧の伽藍が滝寺本堂
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 父は元興寺の復興とともに、終戦直後の荒廃した巷にあふれる親をなくした子どもたちや、外地から親とはぐれて帰ってくる子どもたちをなんとかしなくては、という思いにかられた師匠の駒岡乗円和上(宝山寺住職、真言律宗長老西大寺住職)の命を受けて宝山寺社会事業部を昭和21年に発足させました。聖天さんの信仰で有名な生駒山宝山寺の宗教的社会実践の役割を担っていたのでしょう。当時は、孤児院という言い方に馴染みがあったかもしれませんが、今の児童養護施設です。宝山寺を少し下った生駒山の中腹にある滝寺に、その庫裏を利用して養護施設愛染寮が設けられました。

 前述のように、愛染寮にもよく進駐軍の兵隊さんがやってきました。野球をしたり、キャンプファイアをして英語の歌をうたったりしました。愛染寮では創設直後からクリスマスの行事をやっていたように思います。進駐軍の影響はそれほど強かったのです。

 しかしやっぱりお寺の施設ですから、4月8日の花まつりが行われるようになりました。占領が解けてからということになるのでしょうね。施設の庭に花御堂をお飾りし、お客さんを招いて園遊会的な行事として定着していきました。これは、逆に日本的なクリスマスの影響をうけたのかもしれません。

 滝寺の愛染寮からスタートした社会福祉事業は、社会福祉法人宝山寺福祉事業団としてその後大きく発展していくことになりました。今では、生駒市、奈良市を中心に児童養護施設、乳児院、保育所、児童発達支援センター、特別養護老人ホーム、在宅老人福祉サービス、地域包括支援センターなど20を超える施設、事業所を抱えています。法人傘下の各施設がそれぞれ花まつりの行事をお祝いするのはもちろんのことですが、ゴールデンウィークの前に、法人合同行事としての花まつりは職員が一堂に会し、日頃ご協力をいただいているボランティアや支援者の方々に感謝の気持ちを表す好機でもあるのです。

 滝寺本堂にお祀りした誕生仏を手作りの大きな白象に先導され、稚児行列とともに手作りの屋台が並ぶ園遊会の会場近くの花御堂に遷座していただきます。若い職員や、保護者、ボランティアの中には仏教に疎遠な人たちが多くなってきました。灌仏のあとの拙い法話であっても、この行事の真意が伝わってくれたらなあといつも願っています。(談)
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 宝山寺社会事業団/昭和21年(1946)、真言律宗大本山宝山寺に宝山寺社会事業部を創設。同27年、社会福祉事業法による社会福祉法人宝山寺福祉事業団へ移行。乳幼児から子ども、障害者、高齢者にいたるまで20余の福祉事業を奈良県内で展開している。

 つじむら・たいはん/昭和22年(1947)奈良県生まれ。京都大学卒。昭和52年(1977)真言律宗大乗瀧寺住職。翌年、師父の逝去により元興寺住職を兼務(現在は実弟の泰善氏が住職)。平成11年(1999)宝山寺福祉事業団理事長に就任。奈良県社会福祉協議会副会長、近畿老人福祉施設協議会会長など複数の社会福祉関連団体の役職に就いている。

2016/4/14 浄土宗研修会館落慶 教師の資質向上拠点に

伊藤唯眞・浄土門主を導師に営まれた落慶式 総本山知恩院山内の源光院を改修し、教師の研修施設として建て替えた「浄土宗教化研修会館」が完成し、京都市東山区の現地で8日、落慶式が執り行われた。山内職員や大本山執事長、宗議会議員ら約80人が、教師の資質向上を目指す拠点の完成を祝い、実社会に対応できる僧侶育成への決意を固めた。

 源光院で祀られていた阿弥陀三尊像を修理し、研修会館に安置。落慶式で開眼作法を執り行った導師の伊藤唯眞門主が表白を奏上し、「立教改宗の精神に則り、社会に教師を遍く広め、実践に資するための教師の教化研修を行う」と会館設立の趣意を述べた。退堂前の挨拶で、「伝統仏教教団というカテゴリーの中に沈滞しがちになる空気を打ち破り、接心なる気持ちで法然上人の念仏の心をすべての人に説いていかねばならぬ決意を新たにしよう」と呼びかけた。

 この後、宗務庁(東山区)で祝賀会を開いた。豊岡鐐尓宗務総長は「教師の資質向上を目指しながら内局は進んでいるが、まさに本当のスタート。必ずや研修会館を軌道に乗せ、存在感ある光り輝く浄土宗を目標にがんばっていく」と意欲を示した。

 北川一有・知恩院執事長が祝辞を述べ、「浄土宗は宗団ではなく、教団として残さなければいけない。そのためには、僧侶の研修が第一だ」と話した。寺井孝嗣・宗議会副議長が乾杯の発声をした。

 会館は、地上3階地下1階建て延べ約1580平方メートル。佛教大学別館の総合研究所分室などを移設し、人権センターも置く。収容人数100人のホールや約70畳の道場などがあるほか、宿泊用個室4部屋も備える。地階は図書室とした。総工費は約5億5000万円。

 全国の教師約1万人を対象に、教化伝道の講義に加えて寺院運営やボランティア活動など実践的な科目も盛り込んだ研修を計画。3日間の日程で10月から実施する予定だ。

2016/4/14 WCRPミャンマーシンポに10人の宗教指導者来日 貧困対策・民族融和が急務

宗教の枠を超えた国造りについて提起されたミャンマーシンポ。10人の宗教指導者が登壇した ミャンマーの宗教指導者ら10人を迎えての公開シンポジウム「Welcoming the Other(他者と共に生きる歓び)に向けた実践と課題」が6日、東京・代々木の妙智會教団本部で開催された。昨年の選挙を経て3月30日に発足した政権は民主化促進の使命を背負うが、宗教指導者たちは貧困対策と136に及ぶ少数民族との融和が急務の課題だと提起した。またスー・チー氏が率いるNLD(国民民主連盟)を核とした新政権に期待感も示した。シンポには約200人が参集した。主催は(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会。

 開会にあたり主催者を代表して杉谷義純理事長が趣旨説明を兼ねて挨拶。その中で同国における仏教とイスラム教の対立報道が強調されていることに「単なる宗教問題のみならず、他者に対する配慮がなかったり、いろいろな問題が複雑に絡み合って表面化している。他者をどのように受け止めるのか。結局はそこにいくのではないか」とテーマに即して話した。

 続いてミャンマー委員会の3氏が発題。最初に同委員会最高指導者であるカトリックのチャールズ・ボー枢機卿が、キリスト教における他者の概念を説明。貧困率60%という大多数の貧しい人たちへの支援や宗教者間の対話を主張し、「この60年、政府と民族社会との間の対立は慢性的な戦闘となってきた。政府は民族固有の権利や資源の平等な利用を受け入れなかった。少数民族の文化と宗教を抑圧してきたことが、わが国に流血を生んできた」と過去を振った。対話の必要性を強調すると共に日本委員会に協力を要請した。

民族を超えた融和組織である民族宗教保護協会(通称マバタ)のリーダーである仏教僧のダーマビヤ大僧正は、“誤解”をキーワードに展開。「ミャンマーでは宗教的紛争が起こっているが、これは仏教の誤ったイデオロギーのゆえだという人もいる。しかし私自身は誤解から生じていると考えている」と誤解の解消を訴えた。その誤解は、ソーシャルネットワークを通した情報によって生じているとした。アウトサイダー(部外者)とインサイダー(部内者)では、政治的・宗教的問題に対する視点に違いがあることも指摘した。

 ミャンマーイスラームセンター理事長のアル・ハッジ・ウ・エ・ルウィン氏は、かつて多民族多宗教社会が同国の中にあった歴史を掘り起こしながら、「1962年にクーデターが起こり、以降、宗教が政治によってハイジャックされた」と説明。「イスラームが世界をイスラーム化しようとしている」という考えについても「誤解」だとし、イスラームにおいて宗教の強要はないと明言。聖戦と訳されるジハードについても「心の中の悪と闘うこと」とし、貧困に対するジハードや不正義に対するジハードという視座を提供した。

 各氏とも民主主義の定着の観点から、新政権に期待感を表明。「新政権は民族を代表する人を要職に任命することで良い事例を示している」(ボー枢機卿)、「民主主義は我々の希望である」(アル・ハッジ氏)

 引き続き、日本側からのコメントがなされ、参加者を交えての討論が展開された。

2016/4/14 第40回正力松太郎賞決定 本賞に五位堂安養日曜学校、袴田俊英氏

約70年続く五位堂安養日曜の花まつりの様子 全国青少年教化協議会(全青協)が主催する、仏教精神に基づく青少幼年の教化活動や文化・社会活動を通じて社会教化に長年尽力してきた個人・団体に贈られる「第40回正力松太郎賞」の本賞に五位堂安養日曜学校(中村勝胤代表・浄土宗寳樹寺住職/奈良県香芝市)と袴田俊英氏(曹洞宗月宗寺住職/秋田県藤里町)が3月29日に選出された。青年奨励賞には久間泰弘氏(曹洞宗龍徳寺住職/福島県伊達市)が選ばれた。表彰式は5月31日、東京グランドホテル(港区芝)で行われる。

 五位堂安養日曜学校は、先々代住職によって1947年に設立されて以来、3代にわたって地域の子どもたちの成長を助けてきた。花まつりやお地蔵さんの縁日など仏教行事の集いを月に一度行うほか、毎週水曜日に本堂を開放し自由に本が読め、貸し出しもできる「子ども文庫」を開催。中村住職自ら輪の中に入り子どもたちと遊び、楽しくのびのびと過ごせる場所を提供している。これらの活動に加え、近隣寺院や県内の浄土宗児童教化連盟と協力しての地域一丸となった教化の実践が評価された。

 袴田俊英氏は、自坊のある藤里町で自死者が多いことに心を痛め、2000年に地域住民や関係団体と自死防止活動団体「心といのちを考える会」を設立し初代会長に就任した。自死の根底にある孤立を止めるためコーヒーサロン「よってたもれ」を開設。「よっていってください」という意味の通り、若年層から高齢者まで様々な人が訪れ、気軽な茶飲み話から深刻な打ち明け話までをするという。県はこの取り組みを評価しモデルとして県内市町村に波及させ、県内の自死者を半減させた。青少年に対しても自死予防の「いのちの授業」などを行っている。

 久間泰弘氏は全青協主催「青少年電話相談講座」の第1期修了生であり、全国曹洞宗青年会会長時代には宗内で電話相談・傾聴講座を積極的に開講。青年僧侶による電話相談「観世ふぉん」の設立者でもある。東日本大震災後は被災地の子どもたちの心のケアを目的に「チャイルドラインふくしま」の設立メンバーとして奔走、現在は事務局長としてトラウマを抱える子どもたちの苦しみや悲しみに寄り添う。曹洞宗東日本大震災災害対策本部復興支援室主事。(受賞者のコメントは紙面でご覧ください)

2016/4/21 日蓮宗・横川定光院 遊学の聖地で春期法要


総勢約130もの団体参拝者に語りかける導師の森本所長 日蓮聖人遊学の聖地である比叡山横川の定光院(滋賀県大津市、橋本一妙主監)で13日、春季彼岸法要が営まれた。当日は雨が降る悪天候であったが、当番管区の奈良県宗務所からは団参約130人が参拝し、僧俗合わせ約170人が参列した。導師の森本竜静・奈良県宗務所長(近畿教区長)は「お題目を今も保ち、次につないでいくことが私どもの勤め」と報恩の誠を尽くすことを誓った。

 比叡山横川は、日蓮聖人が20歳から32歳までの12年間住坊し、諸宗遊学の拠点とした聖地。現在の定光院は日蓮宗の立教開宗750年慶讃事業により2005年に落慶。比叡山の管轄地だが、日蓮宗が管理し、毎年法要を執行している。当日は、京都本山の各貫首や近畿教区の各宗務所長、全国檀信徒協議会の武田家治副会長などが参列した。

 法要に先立ち、柘植海潮教務部長が助成金と導師を任ずる委嘱状を森本所長に手渡した。柘植教務部長は、日本仏教の母山と言われる比叡山で聖人が修行に励んだ足跡を語り、「当時に思いを馳せた時、凛とした空気の中に法華経の行者としての使命を堅固にされたことがひしひしと感じられます。皆様にとっても、その信仰の息吹を感じ、日常生活での糧にしていただきたい」と語った。

 延暦寺の獅子王圓明副執行は「いつもこの法要に随喜させていただくと、元気をいただけます」と挨拶。法要中に雨脚が強まったことから、「雨が強くなり残念に思う方もいるかもしれませんが、比叡山では谷の水などをろ過して使っています。我々にとっては恵みの雨。日蓮聖人の御加護で雨が降ったものと考え、それを胸に無事お帰り頂ければと思います」と述べた。

 導師の森本所長は、「比叡山は非常に厳しいところ。その中で聖人はご修行なされた。今雨が降っており、足元が濡れるかもしれませんが、聖人の艱難辛苦を思えば、いい思い出になる。印象深い法要になりました」と降りしきる雨に宗祖への報恩の思いを新たにした。

2016/4/21 真言宗豊山派総本山長谷寺 境内防災整備など完了、落慶奉告法要営む


修復成った本堂外舞台から整備事業を終えた境内に向かって洒水加持をする加藤化主 奈良県桜井市の真言宗豊山派総本山長谷寺は12日、平成22年度から27年度末まで続けられてきた「境内防災整備事業」をはじめ「国宝・本堂舞台建造物保存修理事業」「県指定有形文化財・一切経蔵建造物保存修理事業」「本願院再建事業」が完了したのを受け、加藤精一化主(同派管長)を大導師に落慶奉告法要を厳修した。加藤化主は表白で長谷寺1300年の歴史に言及し、今般の大事業の成満を祝福。これからも長谷寺が、人々の心の支えとして繁栄し続けることを祈念した。

 6年に及んだ「境内防災整備事業」は、「派内寺院協力金」勧募や全国檀信徒支援金「平成萬霊回向」勧進で寄せられた浄財などによって完遂。参拝者の安全確保のために山内全域を工事対象とし、斜面防災・雨水や汚水の排水対策・石積補強・石段補修・参道拡張・手摺設置など内容は多岐にわたっている。

 雨ざらしの本堂外舞台は、約18年周期で保存修理を実施。今回は国・県・市の補助を得て平成26年11月に着工し、床板(檜)の取り替えと舞台支柱の修理・交換を行った。仁王門(重要文化財)の修復工事は継続中で、29年3月に完了する予定。

 老朽化で傾き、雨漏りまでしていた一切経蔵は、平成24年5月から県の補助を得て解体修理事業を開始。基壇と土間を整備し、古材と建具を補修して組み立てた。

参拝の安全性を高めた参道。6年をかけて山内全域で防災工事を行った 長谷寺開山の徳道上人が居住したと伝わり、中世には法要執行や加持祈祷の中心だった本願院は、老朽化と地滑りの危険性に直面。坊舎再建と防災工事を行った。旧坊舎を撤去し、平成22年から24年にかけて斜面の補強と石積の再構築を実施。今年3月に新坊舎が完成した。

 落慶奉告法要には宗派最高長老職の集議、菩提院結衆をはじめ前・現宗会議員、前・現宗務支所長、本山特派布教師、政界・行政・文化財関係者、篤信檀信徒、門前町代表ら177人が参列。地元選出の田野瀬太道・衆院議員は祝辞で、「豊山という名の通り、これからも豊かな心を発信し続ける山であっていただきたい」と期待した。偶然、法要に居合わせた一般参拝者も、修復・防災工事を終えた本堂や境内を感激した様子で眺めていた。

 長谷寺では今後、本堂を中心とする境内各伽藍を中長期にわたって修復する大事業「伽藍整備計画」に移る。

2016/4/21 日本香堂「母の日参り」 高島礼子さん、母への想い語る

「母の日参り」のイベントで母への想いを語った高島礼子さん 株式会社日本香堂(小仲正克社長)は12日、東京・千代田区の有楽町朝日ホールで女優の高島礼子さんをゲストに迎えた一般招待イベント「母の日参りハートフルタイム」を開催した。今年は5月8日が母の日で、高島さんの母親の命日にもあたる。高島さんは「私にとって母の日は、自分の誕生日よりも、クリスマスよりも大事な日」と語った。

 ゴールデンウィークから母の日にかけて、亡き母の墓前を訪ねる「母の日参り」。新たな祈りの習慣を分かち合おうと開催されたイベントで、日本香堂の新作テレビCMにも起用されている高島さんが想いを語った。

 20歳で母が亡くなり、「人生観がコロッと変わった。それほど大きい存在でした」と述懐。仕事を持つ母の影響で「早く自立したいと思ったし、母もそれを応援してくれた」と感謝した。

 胸に付けた形見のブローチに話題が及ぶと、「外で働き、帰ってからは家のことばかりの母がこういうものを持っているのは意外でした。きっと自分へのご褒美だったと思う」と偲んだ。

「子どもが幸せになることで母も成仏してくれる。だから普段はしっかりと頑張っているけれど、年に1回は母に会える日、思い出しても良い日。それが『母の日』なので、大切にしています」と高島さん。ミニライブでは母が好きだった山口百恵さんの『いい日旅立ち』をリクエスト。その演奏には涙する一幕もあった。

 イベント後の取材では「祈り」について聞かれると「私にとって祈りは日常。朝元気に起きれて感謝、一日を無事に過ごせて感謝。特別なものではなく日常です」とも話した。

2016/4/21 熊本地震、寺院被害大きく 避難所開設や炊き出しも

本堂が全壊し納骨堂や庫裡も大打撃を受けた益城町の専寿寺 14日に熊本県熊本地方を震源とした最大震度7の地震が起きたのを皮切りに、数日間震度6クラスの地震が連続して発生。16日午前1時に発生したマグニチュード7・3の本震をピークに今でも余震が続いている。死者48人、関連死11人、避難者はおよそ10万人を数える甚大な災害となっている(21日現在)。寺院も本堂倒壊や門信徒の犠牲などに直面した。震源地の益城町と熊本市を取材した。(越高陽介)紙面に関連記事


 17日夕方に熊本市に到着。まず中央区の浄土真宗本願寺派熊本教区教務所(熊本別院)を訪ねた。瓦が落下し、本堂裏の墓地は墓石数基が倒れている。本尊は遷座されていた。中津海智州主事によると、教区内の被害状況は速やかに把握しており、被害の大きかった寺院の情報を教えてくれた。熊本県は本願寺派の寺院が多く(468カ寺)、災害対応はスピーディーだ。

 取材中にちょうど、本山からの救援トラックが到着。満載された水や食糧、ブルーシートなどを職員総出で搬入した。これらはここを拠点に教区内寺院に配送されていく。とりわけ断水が続いている状況では水の需要が大きいという。

 翌18日、教務所からの情報を頼りに東区の本願寺派光輪寺を訪ねた。完全に潰れてしまった本堂と半壊した庫裡を前に、山田敬史住職は「最初の地震で御本尊を移して、安心していたら本震でしょう。30分くらい揺れていたんじゃないかな…」と語る。幸い、最近建てた納骨堂は無事だった。

熊本市東区の光輪寺も本堂が全壊 光輪寺は被害を免れた保育園を避難所にし、70人ほどの住民を受け入れている。印象深いのは、かけっこやボール遊びなどをする子どもたちの元気な姿だ。山田住職は「子どもらは何も関係ないからね。この笑顔があることが唯一の救いだわ」と口にし、安堵の表情を浮かべた。3日ぶりに温かいお茶を淹れることができたというので、ありがたく頂戴した。

 その光輪寺に、親しい真宗大谷派光顕寺(南区)の尺一(かねかず)聡住職が駆け付けた。自坊も被害を受けたが、そんな中でも被災者のために働こうと炊き出しに動き回っているという。福島や滋賀など全国からも大谷派僧侶有志が救援に訪れている。

 尺一住職の車に同乗させてもらい、避難所になっている益城町の特別養護老人ホーム「ひろやす荘」へ。尺一住職ら大谷派有志は、東日本大震災のボランティアで培ったスキルを活かしさっそく炊き出しを開始。温かいご飯と福島名物わかめスープが完成し、入居者や避難者にふるまわれた。職員も「あったかい食事なんて久しぶりです、本当にうれしい!」と感激の様子だった。

復興は20年がかり

 益城町木山の本願寺派専寿寺の前では重機がせわしなく動き、がれきを撤去していた。本堂は木っ端みじんと言っていいほどに壊れ、納骨堂も庫裡も大破していた。ヘルメットを被り、憔悴した表情で門徒の骨壷を運び出していたのが、高千穂智広副住職。「家族はめいめいに避難しています。少しずつ運び出したり、できることからやっていかなければならないと思っていますが、正直、どうなるかわからない」と肩を落とした。一方で、「別院からは発電機や水、食料などさっそく支援していただきました。他に足りないものがあれば何でも言ってくれと。お寺同士に助けてもらうことも多く、ありがたいですね…」と感謝の言葉も。

 益城町の中でも特に被害が大きかった木山周辺は、数多くの民家が倒壊。地面はひび割れ、橋に激しい段差ができるなど、歩いて移動することも難しいほどだ。それでも福原地区の大谷派皆乗寺を訪れると、折しも粟津信也住職のもとに本山から派遣された職員が物資を届けた後だった。

「最初の地震では御本尊はビクともしなかったんですけどね、やはり2回目の本震が大変だった」と粟津住職。築200年ほどだという本堂は倒壊こそ免れたものの全体が歪んでしまい危険な状態で、ロープを張って立ち入り禁止にしている。鐘楼堂の柱も斜めになり、墓石も倒れた。納骨堂は建物は持ちこたえたが、中は仏具や骨壷が散乱しているありさまだ。

「自分一人で直せるものならすぐに直しますが、お寺の復旧は門徒さんに協力を仰がなければならない。しかし門徒さんだってこの地震ですから元通りの生活になるのは20年がかりでしょう」と、復興の長期化を予測する。皆乗寺の門徒も3人が犠牲になった。粟津住職によると、寺院周辺はちょうど日奈久活断層が始まる部分。住職はかろうじて助かったことに胸をなで下ろした。

 未曽有の災害の中で寺院同士の助け合いや宗派からの速やかな支援といった、縦横の繋がりによる緊急支援が見られた。これこそが、お寺の強みなのだろう。

2016/4/28 高野山大学・全国の宗務支所行脚し要望収集 脱定員割れの鍵は就職力

 定員割れが続く高野山真言宗の宗門校・高野山大学(和歌山県高野町、藤田光寛学長)では、学生増加への取り組みの一環として、全国の各宗務支所を訪問して宗門子弟の入学を直接呼びかける活動を4月から始めた。24日には山梨支所(小野芳幸支所長)に出向き、大学の現状を説明。参加者から「就職に必要な資格が取得できず、就職先もない」など厳しい指摘が相次いだが、積極的に意見交換をして改革に活かそうとする大学側の姿勢を評価する声も聞かれた。

 同大は文学部1学部体制で、定員は密教学科30人・人間学科20人の計50人。今年の入学者数は昨年より4人増えたものの、28人にとどまった。大学を運営する(学)高野山学園(理事長=添田隆昭宗務総長)は、来年度の定員充足を絶対達成目標に掲げて〝全国支所行脚〟を開始。今回の山梨支所(正住職12カ寺)で、4カ所目の訪問となった。

 藤田学長と岡本正志・法人本部長、飛鷹全法・東京サテライト室長が市川三郷町の薬王寺(住職=小野支所長)を訪問。支所からは同大卒業生複数を含む10人が出席した。

 卒業生で現在は地元の県立高校で教員をしている参加者は、「人間学科で取得できる資格で、まともなのは国語の教員免許だけ。(現在力を入れている)臨床宗教師の資格では厳しいと思う。高校生がこの資格を取りたいとは思わない。卒業しても就職できない現状では、生徒や保護者に入学をすすめられない」と直言。「山梨県内の(日蓮宗の宗門校)身延山大学では幼稚園や保育園、社会福祉系、学芸員などの資格も取れるので、一般の生徒も志望する。県内のキリスト教系の大学では、センター試験で2科目7割以上取れれば入学金と授業料が4年間免除になる制度がある。それで学生を集め、経営も成り立っている。高野山大学も、それくらいの改革をしないとだめだ」

 小野支所長も、「山梨は昔から高野山大学に多くの入学生を送り出してきたが、ほとんどが兼業。学校や県庁・市役所・町役場などで働きながらお寺を護持してきた」と説明。現在の同大の就職力では、「宗門子弟でも安心して入学させられない」と訴えた。

 岡本法人本部長は、「本学もかつては複数の学科で魅力的な資格が取れたが、縮小過程で捨てざるをえなかった」と指摘。「今後は可能な限り、様々な資格が取得できるようにしたい」と回答した。

 小野支所長は、「私が県立高校の教員として進路指導をしていた時、九州の大学担当者も高校訪問で来ていた」と回想。「高野山大学の担当者も、靴を何足も履きつぶして全国を回る努力をしないといけない」と提言した。

 全国行脚はまだ始まったばかり。藤田学長は、「各支所の皆様と対話しながら意見や要望をお聞きし、大学改革に反映させていきたい」と語った。

2016/4/28 熊本地震 九州一円で625カ寺が被害に 熊本の臨床宗教師は傾聴カフェ開設を準備

 熊本地震発生から2週間余りを迎え、地震による寺院被害は熊本県や大分県内のみならず佐賀や長崎、鹿児島などにも及んでいる。各教団の報告を再集計すると625カ寺が被災。その半分以上が本願寺派寺院であることがわかった。雨による土砂災害などが予測されており、被災寺院はさらに注意が必要だ。(各宗派の被害と救援はこちらをご覧ください)。

  地元在住の臨床宗教師、吉尾天声氏(熊本市南区、大谷派浄玄寺)は、「東日本大震災で行った傾聴カフェを熊本でも実践しようと考え、その準備を進めています」「ケーキやコーヒーを提供して被災者の声を聴くのですが、それを受け入れていただける避難所の情報を収集しています」と語る。

 九州で18人、熊本県内では9人の臨床宗教師がいるが、被災した人もいる。吉尾氏の自坊も大きな被害には到らなかったが随所にひびやずれが見つかっている。「義援金口座を開設し、各地の臨床宗教師にも色々な形で動いていただけるようにする予定です」と吉尾氏。東日本大震災から5年にわたって培われた経験とネットワークが熊本地震で活かされる。

2016/4/28 真言宗豊山派 次期管長に田代弘興氏を選出

 真言宗豊山派では加藤精一管長が6月13日に任期満了を迎えるのを受け、管長推戴委員会を26日、東京都文京区の宗務所で開き、次期管長に田代弘興氏(76)を選出した。任期は6月14日から4年間。総本山長谷寺(奈良県桜井市)への入山式を6月15日に営む。宗務所での管長就任式を9月中、総本山長谷寺での晋山式を11月中に予定している。

 田代氏は昭和14年11月生まれ。東京都杉並区・光明院住職。大正大学卒。青少年教化委員、総本山長谷寺顧問、教化センター長など宗内要職を歴任。宗外では全日本仏教会組織部長、同国際部長、府中刑務所教誨師、全真言宗教誨師連盟会長など。平成26年に密教教化賞受賞。大学卒業後に劇団太郎座に入団。人形劇団ピッコロを創設し、布教活動に邁進した。

2016/5/12 東京・親鸞仏教センターが湯島に移転 大谷大学分室も設置

  真宗大谷派の首都圏における学事開教拠点、親鸞仏教センターが文京区湯島に移転し、4月27日に開所式が営まれた。6階建ての新施設の中には大谷大学真宗総合研究所東京分室も入り、より充実した態勢で活動がスタートする。




竣工なった6階建ての新施設本多弘之所長を導師に勤行を務めた後、里雄康意宗務総長が挨拶。「私たちの教団にとって大切なことは教学研鑽、学術研究を通して親鸞仏教の精神に生きる人を生み出し育てていくこと」と語り、その役割を十分に果たしてほしいと期待した。


 本多所長はこの地域一帯が元々江戸時代以来、隣接する霊雲寺(真言宗霊雲寺派総本山)のものだったエピソードを披瀝。阿弥陀仏の「光雲」と「霊雲」の不思議な因縁にも感謝しつつ、親鸞聖人750回遠忌の時節により都心に近い所に恵まれたことでより一層研鑽すると喜びを語った。


 大谷大学学長の木越康氏は宗門からの助成を受けて東京大学・上智大学などで学んだ青春時代を回想。その頃にできた人脈が今の大きな力になっているとし、ずっとここに座っているのではなく色々な所に出かけ人と出会い、斬新な論文を書くことを研究者に期待した。分室長の池上哲司教授は「現代に生きる人にとって真宗がどのような意味を持つかだけでなく、ここで研究する自分にとって真宗、仏教、宗教がどのような意味を持つのか。それを簡単な言葉で表現できる研究者を育てたい」と抱負を語った。分室に所属する研究員は現在3人。新施設でより研究が深まることを喜ぶ本多所長


 工事を担当した㈱早野組東京支店長の鶴田栄光氏には、里雄総長から感謝状が手渡された。


 親鸞仏教センターは2001年に神田のマンションの一室からスタート。02年に文京区向丘に施設ができたが業務の拡大・多角化に伴い今回の移転となった。地上6階建で敷地面積は約174平方㍍。3階の仏間に本尊を安置し、4階には大谷大学分室、1階に東本願寺出版部が置かれている。

2016/5/12 法華宗大本山本能寺 桃井日英氏が晋山「前貫首の遺志継ぎ力尽くす」

  京都市中京区の法華宗本門流大本山本能寺で6日、第140世貫首に就任した桃井日英氏(78)の晋山式が執り行われた。桃井貫首は、「門末寺院や檀信徒、いろいろな人の力を借りながら、菅原日桑猊下の遺志を受け継ぎ本能寺のために力を尽くしたい」と決意を語った。同宗管長の小西日遶・大本山本興寺貫首や宗会議員、教区所長ら約500人が祝った。

 団扇太鼓に合わせて唱題が始まり、自坊の本勝寺(福井県敦賀市)檀信徒ら約120人が列をなして境内を出発。行列とともに御池通を歩き、表門をくぐった桃井貫首は、本堂で法脈相承の儀式を営んだ。


晋山式で祝福の言葉を受け謝辞を述べる桃井貫首 本尊の曼荼羅前で奉告文を読み上げ、三宝尊と日蓮聖人、開山の日隆聖人をはじめ歴代先師に晋山を奉告。「寺地を変ずること4度、兵乱災禍に遭うこと6度、寺塔を再建すること7度なり」と本能寺の罹災と再興の歴史、先師の苦労を振り返った上で、「当山140世の法燈を継承し、晋山の式典を挙ぐ。実に恐懼の至り感銘の極みなり」と述べ、「増上の信心を励まし本末師檀異体同心して広宣流布の祖献に参ぜんと欲す」と語った。

 この日、法華経を千回読経する「法華千部会大法会」、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の犠牲者追弔法要などを合わせて執行。題目が唱えられる中、僧侶に続いて参列した檀信徒全員が焼香して回向した。

 法要後、二瓶海照・同宗宗務総長が祝辞を述べ、北陸教区参与や本能寺の宗会にあたる門末会の議長などを歴任した功績を讃え、「本山の法灯を継承されたことは、一山の喜びにあらず宗門にとっても一大慶事。穏やかで道心堅固のお人柄で広くご教導いただきたい。本山、宗門のため活躍されることを祈願します」と期待を寄せた。

 簗瀬城諒・本能寺執事長が挨拶し、「先代の菅原日桑・第139世貫首が亡くなってから3カ月の節目にお迎えすることができた。全末寺が御前さまを待っていた」と喜びを語った。斉藤舜駘・本興寺執事長が祝いの言葉を述べ、久保木学洋・大本山光長寺執事長、渡辺明博・大本山鷲山寺執事長が祝辞を宝前に奉呈した。

 桃井氏は1937年11月生まれ。立命館大在学中に唱玄院(京都市)住職に就任。妙光教会(大阪市)担任などを兼務し、83年に本勝寺住職に就いた。本末会副議長、同議長などを歴任した。前貫首の菅原氏の死去に伴い、貫首に選ばれた。4月22日付。任期は5年。四大本山の貫首が輪番で就任する同宗管長に、来年5月13日に就く予定。

2016/5/12 全日仏青 熊本地震で情報交換会開く 宗派を超えて寺院を救済



 全日本仏教青年会(全日仏青、東海林良昌理事長)は4月26日、奈良市内のホテルで熊本地震の支援活動についての情報交換会を開催した。現地で全国浄土宗青年会(全浄青)から全国日蓮宗青年会(全日青)への支援物資の提供が行われたことなど、宗派を超えた支援や現地の状況が報告され、行政・民間との連携を視野に入れた今後の方針も示された。

 全国曹洞宗青年会や全浄青、全日青など、熊本地震発生直後から現地に入っていた加盟各団体が被災地の様子や支援状況を報告。東日本大震災での支援経験から、メーリングリストやインターネットを使った情報共有、被災地のニーズを考慮した物資搬送など、青年僧のフットワークを生かした支援活動が展開されていることが報告された。

 報告の中には、宗派を超えて寺院の救済が行われるケースもあった。全日青と全浄青では、物流の回復にともない物資が過剰気味になったが、支援活動中に連絡を取り、支援物資を融通し合い、協力していくことを確認。現地では瓦が落ちた寺院が多く、天候の悪化により急きょ雨漏り被害を防ぐブルーシートが不足したが、物資を必要とした日蓮宗寺院のすぐ近くに全浄青の物資が余っている浄土宗寺院があることが分かり、ブルーシート等が提供された。

 全日青の松森孝雄会長は「物資を受け取ったご住職は非常に感謝していた。日蓮宗だけでは対応できなかったので、宗派間の連携というものは非常にありがたいネットワークだと強く感じた」と話した。

 全日仏青では、吉水岳彦救援委員長(全浄青)と米澤智秀顧問(埼玉県仏教青年会)が現地入りし、救援活動とともに情報収集やコーディネートに従事。現場からの情報を基に全日仏青が窓口となって、加盟会員個人でも支援活動に参加できる体制を構築した。

 東海林理事長は「公的なところや民間のところともつながりを持てるのが、超宗派で活動する全日仏青の強み。特色を生かして活動を展開していきたい」と語った。今後は、社会福祉協議会を通じての公的ボランティアやボーイスカウトとの協働、現地のNPO・企業・生協が連携する民間ネットワークへの支援等を進めていく方針だ。

2016/5/19 築地本願寺「GINZAサロン」開設 講座や仏事相談に活用


門主を筆頭に宗門要職らが集まって営まれた法要 浄土真宗本願寺派築地本願寺(安永雄玄宗務長)は首都圏開教の一環として、東京・銀座二丁目の竹中銀座ビル5階にサテライトテンプル「GINZAサロン」を開設した。今後は仏教講座やカルチャーセミナー、僧侶への仏事・人生相談などに用いられる。

 9日の開所式には大谷光淳門主、石上智康総長をはじめとする宗門関係者約50人が集まり開所式の法要が営まれた。大谷門主は「私たち浄土真宗本願寺派は日本に10204カ寺の寺院がありますが、東京教区1都8県には454カ寺しかなく全体のわずか4%です。日本の人口の約3分の1の方が住む首都圏で、浄土真宗のみ教えを多くの方に伝えきれていないことを意味します」と述べ、悩みや苦しみを持つ現代の人々に生きるよりどころを示す縁をつなぐことを期待した。

 石上総長は昨年策定された宗門長期振興計画と築地本願寺首都圏特区基本計画に基づいた試みだと述べ、ここで培うノウハウを広く宗門内で共有することで宗門全体の益になることを強調した。安永宗務長は「こうした地道な活動を街の中で息長く行うことで、仏教に自然になじみ、死んだらおしまいではない心豊かな信仰のある生活を多くの方に広めていきたい」と抱負を述べた。

 すでに講座申し込みは400人超、僧侶への相談は800人超と予約が多数ある模様。

2016/5/19 臨済禅師1150遠諱記念 初の『臨済録』国際学会 アジアや欧米から約50人が参加

臨済禅師1150遠諱を記念して花園大学で開催された国際学会 臨済宗黄檗宗連合各派合議所(蓮沼良直理事長)は13・14の両日、臨済禅師1150年遠諱を記念して『臨済録』国際学会を京都市中京区の花園大学で開催した。日本、中国、台湾、韓国、マレーシア、アメリカ、フランスの研究者約50人が参加し、18本の研究発表が行われた。

 開会式では、臨済宗南禅寺派宗務総長の蓮沼理事長が挨拶。禅文化の現代社会への影響に触れ、「大河に支流があるように、臨済禅師はまさに日本文化の上流の役割を果たした一人」と述べ、現代では「欧米をはじめ世界各地で心の拠り所とされている。今後ますます『臨済録』が普及し、研究されることを願っています」と期待した。

 初日の基調講演では、中国の葛兆光氏(復旦大学文史研究院院長)が中国を中心に禅宗史研究の状況について発表。これを受けて、国際日本文化研究所名誉教授の末木文美士氏が対論を行った。

 葛氏は禅宗史研究における中国と日本・欧米の研究者を比較。中国禅宗史研究の確立者、胡適に代表される歴史学・文献学が研究の主流である中国に対して、日本では歴史や文献の研究が発達しただけでなく、西田幾多郎や鈴木大拙らのような禅思想の現代的解釈も発達したことを挙げ、それらは「中国の学者があまり得意ではないもの」だと指摘した。

 一方で、近年海外での禅宗史研究について「歴史の系譜学とか、知の考古学とか、ポスト構造主義といったポスト・モダン理論を借りて、禅宗の歴史研究や文献考証に関する一般原則を覆そうとしている」との懸念を示し、「歴史学と文献学を結合して禅宗史を検討する、それこそが中国の学界の気風と長所」と語った。

 末木氏は、「歴史と文献資料に基づくことは当然のように見えるが、実際には常に常識を疑い、それを反転させる作業も必要になる」との見方を提示。さらに、研究のさらなる開拓には「ポスト・モダンに代わる大きな視点、禅宗のみならず仏教史、中国思想史の視点が必要だ」と提案した。

 葛氏は、日中両国の禅宗とその研究者が置かれた環境の違いを俯瞰しながら、互いの持つ禅宗のイメージに違いがあることを指摘し、「お互いにイメージを入れ替えて考えることが必要。互いを紹介し合い、違いを知ることが相互理解の第一歩。このような学会は非常に意義のある機会だ」と応答した。

2016/5/19 森川宏映・第257世天台座主の傳燈相承式を執行 “忘己利他で人類共生を”

歴代座主の名が記された傳燈相承譜に自身の名を記帳する森川座主(延暦寺根本中堂) 森川宏映・第257世天台座主(90)の傳燈相承式が11日、滋賀県大津市の天台宗総本山延暦寺根本中堂で営まれた。森川座主は「報恩の誠を尽くし、もって人類の幸福に寄与せんとする決意を新たにする」と誓った。

 白い探題帽と紫色の衣を身にまとった森川座主は書院から殿上輿に乗り、根本中堂に移動。堂前で輿を降り、煙霧の中で凛然と浮かび上がる堂へと歩みを進めた。本尊薬師瑠璃光如来の宝前に登壇し、古式に則り歴代座主の名が記された傳燈相承譜に自身の名を記帳した。

 法要後の諭示では、自然破壊や核拡散、飢餓、テロリズムの蔓延など、人類の行末を危惧。「このような負の連鎖を打破し、世界平和を実現するためには、仏教が説いているようにお互いの価値観を認め、共生する姿勢が必要」と呼び掛け、「今こそ、宗祖大師の示された〝己を忘れて他を利する〟という慈悲の精神が強く求められています。仏天の加護と宗祖の冥助を仰ぎ、人類の幸福に寄与せん」と誓った。

 続いて、宗門を代表して木ノ下寂俊宗務総長が挨拶を述べ、「時あたかも、祖師先徳鑽仰大法会の聖諱を迎え、宗を挙げて〝一隅を照らす〟道心を全国に浸透させようといたしております。このような重大な時にあたり、森川座主猊下のご教導を賜りまして大法会を執行できますことは、まことに無上の喜びです」と祝った。

 当日は比叡山での傳燈相承式に約250人が参列。京都市内のホテルでの傳燈相承披露の集いに天台宗関係者をはじめ宗教界、政財界から約750人が参加し、森川座主の上任を祝した。

 森川座主は大正14年(1925)10月生まれ。京都大学農学部に進み、卒業後は比叡山の山林保護に努めた。延暦寺副執行、宗議会議員、叡山高校・中学校校長などを歴任。昨年12月14日、第257世天台座主に上任した。

2016/5/26 タイ・バンコクで国連ウェーサク祝典 平和への仏教の道を検討


 第13回国連ウェーサクの日祝賀式典が22・23の両日、タイの首都バンコクで開かれた。「世界平和への仏教の道」のテーマのもと85カ国・地域から2千人超が参加。平和教育や気候変動などに対する仏教の役割について討議したほか、各国・各種団体代表がスピーチし、平和実現を訴えた。MCUアユタヤキャンパスで行われたウェーサク祝典の開会式に参加した日本参加者。前列左から叡南覚範・玉川覚祥・西郊良光各氏(5月22日)

 初日はバンコク郊外のマハチュラロンコン仏教大学(MCU)アユタヤキャンパスで開会式やシンポジウムが開かれた。

 2日目はバンコク市内の国連会議センターでの記念式典。各代表メッセージでは3番目に世界連邦日本仏教徒協議会(世連仏)の玉川覚祥副会長(日蓮宗本山妙本寺)が登壇。依拠する法華経がガンダーラ地域で編纂された歴史を紐解きながら、「ガンダーラは現在のパキスタンとアフガニスタンにまたがる地域。当時は大変平和な場所で、異なる民族が共存していた」とし、仏教の思想や哲学が平和に貢献できると主張した。

 祝典には日本から世連仏の叡南覚範会長(天台宗毘沙門堂門跡門主)をはじめITRI(インナートリップ霊友会インターナショナル)の松本廣代表と会員ら約80人が出席した。

2016/5/26 鑑真像 中国から壬生寺へ ゆかりの唐招提寺で対面も

 奈良時代に律宗を開いた鑑真和上(688~763)の像が16日、中国から到着し、京都市中京区の同宗大本山壬生寺に安置された。鑑真和上が渡ってきたように船で運ばれた像は、途中に立ち寄った総本山唐招提寺(奈良市)でモデルとなった鑑真和上坐像(国宝)の模像「お身代わり像」と“対面”を果たした。


 唐招提寺の像(像高約80㌢)と比べて小ぶりの像高約60㌢で、朱色の衣に黄色の袈裟をまとっている。中国・福建省の仏像工房で2体作られた。鑑真和上の遺徳を讃えようと、日中文化交流協会の60周年を記念して制作。日本に向かって出航したとされる運河近くの中国・揚州市の文峰寺(壬生寺の提携寺院)に1体が奉安された。


 もう1体は、鑑真和上が住職を務めていた大明寺(揚州市)に安置されている鑑真和上坐像との対面の儀式を執り行った上で、14日、フェリー「新鑑真」で上海港を出発。16日朝、大阪港に着き、唐招提寺を経て壬生寺へ向かった。


 到着した鑑真和上坐像を輿に乗せ、朱傘を差し掛けて表門から本堂へ進んだ。参道で壬生保育園の園児らが日中両国の国旗を振って迎えた。本尊の地蔵菩薩立像の脇に据えられた壬生寺中興の祖・円覚上人像に対置され、法要が営まれた。大明寺の僧侶ら約50人を含む参列者約200人が、両国の友好と平和を願った。輿に乗せられ壬生寺の参道を進む鑑真像


 法要では茶道裏千家の前家元、千玄室大宗匠が献茶。「鑑真大和上和讃」が唱えられ、大明寺の僧侶らが中国語でも読経した。宮城泰年・総本山聖護院門跡門主ら参列者が焼香した後、門川大作市長が挨拶し、「国同士の関係は時に難しい問題があるが、宗教や文化を通じて交流し、両国の平和と人々の幸せに貢献する努力に敬意を表したい」と述べた。


 中国から像を運んだ松浦俊海・壬生寺貫主は、「鑑真和上は命がけで日本に渡った。日中友好の先駆的精神を受け継いでいきたい」と話した。一般公開は来年の予定。


 鑑真は、日本の要請を受け戒律を伝えるために来日。周囲の反対を押し切り、5度の渡航を試みるも失敗。苦難を乗り越え、753年に6度目の航行で到着した。東大寺に戒壇を設け、唐招提寺を創建した。

2016/5/26 全日本仏教会 課題は僧侶派遣か資質向上か?協議会設置、見切り発車

 (公財)全日本仏教会(全日仏、齋藤明聖理事長)は19日、東京・芝公園の増上寺会館で理事会を開いた。ネット販売大手のアマゾン(Amazon)がサービスを開始した「お坊さん便」(僧侶手配サービス)に対応するために1月の理事会で協議機関の設置を決めていたが、この日、「法務執行に関する協議会」の設置が承認された。しかし、僧侶派遣なのか僧侶の資質向上なのかはっきりしないままの見切り発車となった。

 1月理事会では、アマゾンに販売中止の要望書を提出することと、仮称「法務執行相談に関する協議会」を4月からの第32期体制に設置することを決めた。要望書は3月4日に齋藤理事長名で提出した。これを受けて今理事会に協議会設置案を上程。齋藤理事長は僧侶派遣サービスが生み出される背景に仏教界が対応できていなかったことを自省しながら、「各加盟団体が個々の判断で対応していけるよう協議していただく。そういう場を提供していこうというもの」と協議会を問題点共有の場と位置づけた。

 しかし理事側からは、規程の議決事項に加盟教団はどこまで拘束されるのか、理事会との関係と整合性、議決のあり方などで意見や疑問が続出した。1月理事会では僧侶の派遣は“宗教行為の商品化”だとして批判が強くあり、新協議会の設置を認めていた。今回の規程案では、僧侶派遣をしている「みんれび」やアマゾンへの対応なのか、それとも要望書に記されている「僧侶としてのあり方を足下から見つめ直」すための資質向上を目指すのかがはっきりしていない。

 第1条の目的で「この規程は、公益財団法人全日本仏教会に設置された法務執行に関する協議会を円滑に運営することを目的とする」と規定しているが、法務の範囲が広すぎるのではという指摘もあった。

 全日仏の会合では珍しく議論が沸騰し、休憩後も続いた。最終的に議決事項の一部を修正し、全会一致で承認。「理事長の熱意」(理事の一人)を尊重して設置が決まったが、協議会の運営は来月以降となる。6月9日に評議員会が開かれた後に新理事長・新事務総長が決まる予定で、協議会の行く末は次期執行部がカギを握ることになる。

 そのほかの平成27年度事業報告および同決算についての承認を求める件などは、全会一致で承認した。また熊本地震に対し約600万円の浄財が寄せられていると報告された。

2016/5/26 オバマ大統領の広島訪問に宗教界の意見は…

  核なき世界を訴えたオバマ米大統領のプラハ演説。これが評価され大統領はノーベル平和賞を受賞した。それから7年。今月行われるG7伊勢志摩サミット後の27日、オバマ大統領は被爆地広島を訪問し、原爆慰霊碑に献花する。今回の広島訪問を宗教者はどう捉えているのか。核軍縮や平和問題などに取り組む3氏にコメントをいただいた。


 リーダーシップに期待

 杉谷義純・世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会理事長


 この度の現職米国大統領の広島訪問を心から歓迎したい。
 昨年8月6日広島において、WCRPは原爆投下70年のシンポジウムを開き、私は核廃絶とオバマ大統領の広島訪問を強く訴えたからだ。米国は原爆投下を謝罪すべきであるとか、日本こそ真珠湾攻撃を先に謝罪しろなどとそれぞれの国でいわれているが、これらの議論は全く不毛な結果を招くだけである。
 それよりもオバマ大統領が広島を訪れ、被爆の実相を肌に感じてもらうことが最も肝要なことなのである。そして人権を常に高く標榜してきた国の大統領として、核兵器はどう言い繕っても非人道的であることを、米国民が認識するよう働きかけてもらいたい。
それは現在、国連は非核保有国を中心に、核兵器禁止条約締結への動きが活発になっている。この条約が成立するためには、原爆を投下した米国が、核が非人道的兵器であることを受け入れなくてはならないからだ。
 特に今年は国際司法裁判所が、核兵器は非人道的であるとの勧告を出して20年の節目に当たる。オバマ大統領の核なき世界実現へ向けて、新たな地平を開くリーダーシップに期待するものである。


 一人でも多く被爆地へ
 近藤栄祐・全真言宗青年連盟副理事長(長野・智山派法船寺住職)

 全真言宗青年連盟として昨年6月に4日間、戦後70年の平和祈念修行を行い、最終日に広島平和記念公園・原爆供養塔前で慰霊法要を厳修いたしました。その折に体験講話をしていただいた被爆者の方と先日お話しいたしましたが、戦後70年の節目を機に忘れられてしまうことを一番恐れておられました。
 これからも広島と長崎、そして戦争の悲惨さを忘れないことが一番重要です。今、オバマ大統領の訪問によって広島が話題になっていますが、それ以降は〝もうこれでよし〟ということになって、世界の人々の関心が薄れてしまわないか心配です。戦争と原爆投下によってもたらされた惨状、今なお苦しんでいる方がおられるという現実を、国内外の全ての方に知ってほしい。それが私の願いです。一国の大統領であったとしても同じです。
 今回のオバマ大統領の訪問を契機に、一人でも多くの方に広島や長崎に足を運んでいただき、何かを感じてもらいたい。犠牲になられた方に対し供養の誠を捧げ、二度と戦争をしてはいけないと思っていただけたらと切に願っています。

 何が変わるのか…
 渡部公友さん(被爆体験伝承者 広島市・日蓮宗本覚寺修徒)

 表面的には、現職大統領が初めて広島に来られることの意義は大きいと思います。当寺も爆心地に近い被爆寺院ですが、正直に言えば複雑な思いがあります。訪れたとして何も変わらないのではないだろうか、現実問題として政治的パフォーマンスなのではないかという感じもし、私としては手を叩いて大騒ぎする気にはあまりなれません。原爆投下への謝罪の言葉が予定されていないとも伝えられていますが、謝罪にこだわりすぎるとアメリカ国民の世論もありますし、かえって混乱があるのではないでしょうか。
 今年から、高齢の被爆者から体験談を学び、本人に代わってその体験を語り継ぐ「被爆体験伝承者」(広島市認定)になりました。そうなって、被爆者の話を伺い、語る中でつくづく思うのは、戦争というのはどちらが良いとか悪いとかいうことはない、どちらも悪いということです。民間人も軍人も男も女も老人も若者も、みな差別なく被害を受け犠牲になります。そういった、そもそも戦争を行ってはいけない本質的な理由をオバマ大統領の広島訪問をきっかけに、われわれ日本人全員が考えてほしいと思っています。

2016/6/9 駒澤学園新理事長に光田督良学長が就任

 学校法人駒澤学園(東京都稲城市)は葛城天快理事長の退任に伴い、1日から新理事長に光田督良氏が就任した。任期は3年。

 光田新理事長は63歳。中央大学大学院法学研究科博士後期課程退学後、中央大学非常勤講師などを経て1989年から駒沢女子大学に勤務、98年に教授(人間関係学科)。2011年から現在まで駒沢女子大学・駒沢女子短期大学学長を務めている。専門は憲法学で著書『憲法裁判の国際的発展』ほか多数。僧籍は持たない。

 就任挨拶で建学の精神である道元禅師の禅の教えを基盤にした「正念」「行学一如」を強調。「日進月歩の社会の変化に対応できる人材養成」を掲げた。

2016/6/9 日蓮宗本山妙成寺に駒野日高貫首が晋山 重文10棟の国宝化目指す


晋山式に臨み、本堂へと歩む駒野貫首 日蓮宗本山妙成寺(石川県羽咋市)で5月30日、駒野日高・第69世貫首の晋山式が執り行われた。駕籠に乗った駒野貫首は勇壮な奴行列と団扇太鼓を手にした檀信徒を伴い、参道をお練り。参道、境内は大勢の参拝客で賑わった。同寺は重要文化財10棟を有する北陸の名刹。地元市民の要望で石川県初の国宝建築物指定を目指しており、駒野貫首は「地域の熱い思いに応え、石川県の文化をこの妙成寺から発信していきたい」と抱負を語った。

 当日朝は、小雨が降るあいにくの天気だったが、多くの住民が奴行列を参道で出迎え、入山を見守った。仁王門の石段前で駒野貫首が駕籠を降りると、晴れ間が差し込み、大勢の参拝者を前に鑑開きが行われた。

 法要には、総本山身延山久遠寺の内野日総法主名代の井上日修総務、小林順光宗務総長、全国の本山各貫首、宗会議員など宗門要路が随喜。法縁の僧侶や同寺檀信徒らとともに晋山を祝った。

 駒野貫首は奉告文で正法弘通を誓うとともに、地域の悲願である伽藍の国宝昇格に向け「仰ぎ願わくは上来勧請の諸尊、当山歴代の先師先哲、我が微衷を哀愍納受せられ、国宝昇格を成就円満ならしめ給わんことを」と誓願した。

 井上総務は駒野貫首がこれまでの業績と今年2月に馳浩文部科学大臣が妙成寺を視察したことに触れ、「妙成寺のいよいよご隆昌、国宝に向けた活動と合わせてさらなるご活躍を」とその手腕に期待。小林総長は宗門を代表し、「駒野猊下は現在、大きな目標に向かい、全檀挙げ、地域の方々の協力を頂きながら、その成就にご精進のこと、所願成就を心よりお祈り申し上げます」と挨拶した。

 晋山式後は、金沢市内のホテルで祝賀会を開き、宗門関係者や地元宗教界、政財界から来賓約300人が参集。晋山を祝した。

 駒野貫首は昭和26(1951)年11月生まれ。64歳。東京都世田谷区常在寺住職。立正大学仏教学部宗学科卒。平成12年から宗会議員に選出され、小松内局で財務部長、渡辺内局で総務局長を歴任。東日本大震災発生時には災害対策副本部長を務め、震災対応に尽力した。平成24年から2年間、宗会議長の要職を務めた。

2016/6/16 生長の家、参院選で「与党候補者支持せず」の方針発表 政治活動再開は否定

 7月の参院選を前に生長の家(国際本部・山梨県北杜市)は9日、「与党とその候補者を支持しない」方針を発表した。安倍政権の立憲主義軽視、原発再稼働の強行と原発の技術輸出などが「私たちの信仰や信念と相容れない」とその理由を説明している。

 安倍政権を支える日本会議について最近、『日本会議の研究』(菅野完著)が発刊され、同会議が元生長の家信者たちによって創設・運営されていることが明らかにされた。方針では「日本会議の主張する政治路線は、生長の家の現在の信念と方法とはまったく異質のものであり、はっきり言えば時代錯誤的」と批判している。

 生長の家はかつて政治組織(生政連)を有し、政治家を輩出してきたが、1983年に生政連活動を停止し、宗教本来の活動に傾注。近年は環境問題に熱心な教団として周知されてきている。

 今回の方針は政治性を帯びているが、「会員・信徒への周知は、今夏の参議院選挙に限って行うものであり、これを機に当教団が、かつての生政連の活動や政治活動を再開するということではありません」(広報・クロスメディア部広報課)と政治活動再開は否定した。

2016/6/30 本願寺派東京教区 寺族女性連盟20周年大会開く 全国組織化を要望

 浄土真宗本願寺派東京教区寺族女性連盟(菅原和美会長)は20日、築地本願寺で結成20周年記念大会を開催した。大会テーマ「つながる ひろがる お寺の未来」のもと185人が参集し、将来の宗門、寺院における役割を探った。菅原会長は「全国の坊守、寺族女性と連携がとれれば今以上に宗門の発展に寄与できる」として全国組織化を要望した。

 記念式典は女性僧侶が出仕し、十二礼拝作法をお勤めした。挨拶に立った石上智康総長は昨年策定された「宗門総合振興計画」がスタートしたことから、「このような時期であればこそ、坊守、寺族女性の皆様のご活動を抜きにして成果は得られない。宗門の最先端のご活躍であり、宗門は皆様のご尽力があればこそ成り立っていると申しても過言ではない」と述べ、現場を担う女性の活躍を念じた。女性僧侶の出仕で営まれた十二礼拝作法

 菅原会長は振興計画に「坊守の研修内容とネットワークの充実を図る」と謳われていることから、「坊守、寺族女性の組織が宗門の組織の中に何らかの形で位置づけられ、全国の坊守、寺族女性と連携がとれる全国組織となれば、今以上に宗門の発展に寄与できる」と力を込め、「重要なことであり、近い将来実現できますよう願ってやみません」と熱い思いを口にした。

 式典に続いて釈徹宗氏(相愛大学教授・如来寺住職)が「日本のお寺について考える」と題し記念講演し、将来の寺院の方向性を展望した。
釈氏は日本の仏教寺院の特徴に「家族で運営する寺院という形態」があり、「寺院として評価されなければいけない一方、家族として暮らしていかないといけない。この2つをどう両立させるか」を課題にあげたうえで、「最重要ポイントは寺族のモチベーション」とその重要性を強調した。

 持続的な寺院運営のためには「社会的に高い評価を受ける活動が収入に結び付くことが望ましい」として、成熟期の社会に対応した自然環境問題、貧困、高齢者、子育て支援といった公共性の高い活動への視点を提供。活動の手順を1「これまでの自坊の点検」2「特性の把握」3「モデルになる寺院と出会う」と示し、「寺族こそお寺に行かなければいけない。具体的な事例に出会えば問題も整理される」と行動を促した。

2016/6/30 大谷派保護司会を設立 業縁存在として共に歩む

 真宗大谷派の僧侶や寺族でつくる保護司会の全国組織が設立され、京都市下京区のしんらん交流館で16日、結成大会が開かれた。全国各教区の代表者約110人が、「人間をいかなる振る舞いもする業縁存在として見出された宗祖の眼に常に問い返され、対象者と共に歩んでいく」と掲げた設立理念を胸に刻み、真宗の教えに基づく更生保護活動への決意を新たにした。

 2010年に北陸連区の保護司会によって全国組織の設立が提案され、12年に全国代表者会議を開催。設立理念や会則などが検討され、14年に役員を選出するなどして「真宗大谷派保護司会」が発足。活動者の名簿を作成するなど準備を進め、この日、結成大会が開かれた。

 会長に幸村明氏(金沢)、副会長に光林忠明氏(東京)、藤木諭氏(大阪)が就任。事務局は大谷派教育部に置く。現時点での名簿の人数は約450人。

 幸村会長は、宗祖の教えに基づく保護司活動のあり方を学び、相互の連携による活動の充実を目指してきたと同会設立の道のりを述べ、「親鸞聖人の教えを聞いて、更生保護活動の足元を照らすことがこの会の特徴だ」と話した。

 里雄康意宗務総長は、かつて寺が担ってきた学びや安らぎの場という役割が公共機関に置き換えられ、寺は社会から必要とされない存在になりつつあるのではないかとの認識を述べた上で、「寺という場の存在意義をもう一度確かめる機縁になるのが、社会復帰支援に向けた居場所の確保ではないか。罪悪深重の御同朋として接する人と場が必要だ」と語った。

 川端英樹・京都保護観察所長が「全国の保護司をつなぐ組織。活躍に期待したい」と挨拶した。結成大会の司会を務めた巖城孝明氏(北海道)は、「親鸞聖人の教えと社会との接点教えに基づいた保護司活動について述べる幸村会長 を見出す具体的行動が、保護司の活動ではないか」と述べた。

 岐阜聖徳学園大教授で臨床心理士の譲西賢・慶円寺(岐阜県神戸町)住職が「悪人正機の自覚と感情受容」と題し記念講演し、すべての人が過ちを起こしても不思議でないとし、「更生保護の手を差し伸べる自身の危うさを十分に自覚するべき」との考えを示した。

 こうした視点から、期待に応えてくれそうもない人を見放しがちだったり、マイナスの先入観をぬぐいきれなかったりなど現場で陥りやすい危うさに注意を促した。その上で、抑圧によって追い詰められ悪循環を繰り返す人にとって、無条件に感情が受容されることが大切だと指摘。「如来の働きがあるからこそ、相手の感情を受容できる。如来の代わりに苦悩を受け止める保護司は如来の代官だ」と訴えた。

2016/6/30 真言宗豊山派 新総長に星野英紀氏 異例の学長経験者の就任

 真言宗豊山派(坂井智宏宗務総長)の次期宗務総長候補者を選出する第142次宗会臨時会(加藤章雄議長)が28日、東京・大塚の宗務所で開かれ、大正大学元学長(現・同大常務理事)の星野英紀氏(菩提院結衆、東京都中野区白鷺・福蔵院住職)を選出した。大学学長経験者の宗務総長就任は極めて異例。星野氏は7月5日に就任、新内局を発足させる。任期は4年間。星野新総長

 同派の宗務総長職は、興正系・一新系から交互に選任するのが慣例。7月4日に任期満了を迎える坂井総長が興正系であるため、今回は一新系からの選出となった。

 増澤秀丸総務部長は次期宗務総長候補者を決める議案第1号の補足説明で、「豊山派をさらに一層躍進させ、輝ける宗団に導くことのできる候補者を選出いただきたい」と要請。議案は全宗会議員から成る特別委員会(島根太真委員長)に付託され、審議された。議会再開後、委員長報告を行った島根議員(千葉・不動院)から、星野氏の名前が高らかに発表された。

 次いで岩﨑榮勝議員(茨城・安穏寺)が宗会議員を代表して、星野氏を推薦する演説を行った。

 その中で、葬儀の多様化と企業の参入、寺離れなど激変する寺院環境を指摘。厳しい社会情勢に向かって宗派行政の舵取りを担う宗務総長職の重要性を強調し、「学徳兼備にして識見豊富なる星野僧正が最適任者であると考える」と述べた。

 さらに災害対策や危機管理、布教教化の推進、子弟教育の充実と後継者育成、宗派財政の安定化と総本山長谷寺の護持整備の推進など、重要な課題を列挙。「星野僧正によって構成される内局であれば、必ずや適切な決断、果敢な行動力で推進されるものと確信している」と期待感を表明した。加藤議長も「学山豊山にふさわしい総長」と祝した。

 宗務総長に選出された星野氏は報道陣の質問に、「重責を担うことになった。4年間、頑張りたい」と抱負を語った。

原発被災寺院の復興策 研究進める行動派学者

 星野氏は昭和18年(1943)12月生まれ。72歳。大正大学卒。シカゴ大学修士課程、大正大学大学院博士課程修了。文学博士。第31代大正大学学長(平成15~19年)。宗内の学階は最高位の勧学。宗外では日本宗教学会会長・財団法人国際宗教研究所所長・理事長等を歴任。専門は宗教社会学で、第16回日本宗教学会賞受賞(昭和55年)。聖地・巡礼研究で顕著な業績を上げ、著書に『巡礼―聖と俗の現象学』『四国遍路の宗教学的研究―その構造と近現代の展開』等。

 東日本大震災発生後は大津波と原発事故で被災した福島県沿岸部の相馬・双葉地域に度々赴き、実地踏査を実施。被災寺院を中心とする地域の復興過程や現状・課題の研究を続けている。避難生活をおくる住職や檀信徒、地域住民への綿密な聞き取り調査を行い、共に原発事故からの復興策を模索するなど、行動派の学者としても知られている。

2016/6/2 東大寺に狹川普文別当が晋山 静かなワクワク感目指す

轅に乗って大仏殿へと入堂する狹川別当 華厳宗大本山東大寺(奈良市)で5月30日、狹川普文・第222世東大寺別当(65)の晋山式が営まれた。仏教者・宗教者、信徒など約900人が参列するなか、狹川別当は本尊廬舎那大仏に晋山を奉告すると共に、次世代を担う子どものいのちを守り、自然環境の浄化を図ることを誓った。


 心配された雨もあがり、轅(えん)に乗った狹川別当の行列は本坊を出て南大門をくぐり中門へと進んだ。中門からは轅を降り、静かに歩を進め大仏殿へ入堂した。須弥壇に上がり本尊廬舎那大仏に伝燈奉告文で晋山を奉告。現代の世相を「宗教思想 民族文化相異の争い未だ消えず 大国の武装強化 其の果てを知らず」と表すと共に、東大寺開基・聖武天皇の大願「動植ことごとく共に栄えんと欲す」を顧みて、次世代を担う子どものいのちを守り、自然環境の浄化を図ることを表明。「人類の智慧再び輝きて滅罪生善の心 生ぜんことを祈り奉る」と奏上した。


 晋山披露宴では親交のある音楽家の渡辺貞夫さんが、チベットの旅を経て創った「河の唄」など3曲を披露し祝福した。


 狹川別当は仏教に深く帰依した聖武天皇・光明皇后が、障がい者や高齢者にも心を向けた姿にならい「人に寄り添うという一番大事な部分、これこそ宗教者に求められている」と姿勢を示し、「天気予報を見ながらハラハラドキドキの今日でしたが、これからは静かなワクワク感を目指したい。1300年の歴史からなる確実な考え方と思い。これを踏まえたうえでワクワク感のあることを、長老や塔頭、内局のみなと意見を交換しながら進みたい」と決意を述べた。


 祝辞では隣山代表として興福寺の多川俊映貫首が親しみを込めて「普文さん」と呼びかけ、天性の明るさとユーモアある人柄、書や絵をたしなむ一面などを紹介。現在の混濁する世相に華厳経の教えを広める意義を示し、「お得意の饒舌と深い沈黙でもって、華厳の教えを世に紹介し、同時に、瀟洒な書と絵でもって華厳の世界を表現し、世の中を善導していただきたい」と期待を寄せた。


 狹川別当の任期は5月1日から3年で、華厳宗管長を兼任する。この4月まで東大寺福祉事業団理事長、上院院主を歴任した。

2016/6/2 東京佼成ウインドオーケストラが東北被災地へ 南相馬でチャリティ公演



約50人の楽団員の全力の演奏が被災者を励ました日本有数のプロ吹奏楽団である東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO、岡原良之楽団長)は26日、佼成文化協会との共同主催で福島県南相馬市の市民文化会館ゆめはっとにおいてチャリティコンサート(無料)を開催した。立正佼成会(庭野日鑛会長)が東日本大震災からの生活と心の復興に取り組む「こころひとつに」プロジェクトの一環。市民約850人が楽団員の熱い演奏に耳を傾けた。

 指揮は正指揮者の大井剛史氏が振り、軽妙な曲解説も交えた。冒頭は熊本地震を受けエルガー「エニグマ変奏曲」から「ニムロッド」を演奏。あえて拍手は控え、被災地から被災地へとホール一同が祈りを捧げた。続く本編第1部では、今年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲をすべて演奏。清冽さがある「マーチ・スカイブルー・ドリーム」(矢藤学作曲)や激しく盛り上がる難曲「焔」(島田尚美作曲)に、夏のコンクールを控えた吹奏楽部の中高生も熱心に聞きいった。

 大井指揮者が「皆さんにとっても特別な曲だと思います」と述べ演奏したのは、福島弘和氏の作曲した「『相馬流山』の主題による変奏曲」。この地方に伝わる民謡をモチーフにした旋律に、しみじみと復興への想いがホールに漲った。第2部はスタジオジブリなどのおなじみの曲を楽しく演奏。「この演奏会を通じて、皆様といつも心がつながって、復興に進んでいければいいと思っています」と大井指揮者は語った。アンコールは復興支援ソング「花は咲く」でしめくくった。

 岡原楽団長は「50人の演奏者にスタッフも加わる大所帯が地方公演するのは、受け入れる側も大変です。実現できたのはひとえに久保木伸浩原町教会長の熱意」と語る。岡原楽団長も南相馬市や県吹奏楽連盟相双支部からの後援をとりつけるなど事務方として奔走した。訪れた吹奏楽部の生徒は「プロの演奏はすごい。感動しました、あんな演奏がしたい」と多いに触発された様子だった。

「こころひとつに」プロジェクトによるTKWO被災地チャリティ公演は今回で6回目。

2016/6/2 築地で宗教者全国集会 「戦争法」廃止へ平和行進

銀座の目抜き通りで「戦争法に賛成する議員には投票しない」「選挙へ行こう!」と呼びかけた「『殺さない 殺させない』今こそ、宗教者・信者として」をテーマとする「『戦争法』廃止・憲法改悪阻止をめざす宗教者・信者全国集会」が5月31日午後、東京の築地本願寺で開かれ、仏教・キリスト教・金光教・立正佼成会・創価学会・イスラム教などから300人超が参加した。集会後には、築地から日比谷公園まで平和行進。国内外の買い物客や帰宅途中のサラリーマンなど、大勢が行き交う銀座の目抜き通りを1時間かけて歩いた。平和のメッセージに加え、7月の参院選に向け「私たちは戦争法に賛成する議員には投票しないことを宗派・党派を超えて呼びかけます」「選挙へ行こう!」とアピールした。

 集会の開会にあたり、呼びかけ人を代表して「黙ってはいられない!戦争法廃止を求める宗教者の会」の山崎龍明代表(浄土真宗本願寺派僧侶)が挨拶。「戦争は人間最大の罪業。『殺してはならない 殺させてはならない』は、私たち宗教者の存在証明」と断言し、「次の参院選挙は〝あなたは平和を取りますか、戦争を取りますか〟というところまで来ている」と述べた。

「戦争法」(安保法制)と憲法改悪に反対する4野党、民進党・共産党・社民党・生活の党の代表者6氏が参院選に向けて決意表明。壇上で手を繋ぎ、野党共闘の証を示した。

『憲法を変えて「戦争のボタン」を押しますか?』の著者で憲法学者の清水雅彦・日本体育大学教授が講演。自民党の改憲草案を批判し、「『殺さない 殺させない』は憲法前文の平和的生存権に当たる。自民党の改憲案ではバッサリ削除されている。安倍政権の積極的平和主義は積極的戦争主義とも言える」と危機感をあらわにした。

 集会後は平和行進。築地本願寺を出発し、「命と憲法9条を守ろう!武力で平和は作れません!戦争に大義などありません!」と訴えながら日比谷公園を目指した。

 兵庫県から夫婦で参加した男性は、「今、大谷大学で仏教を勉強している。戦時教学を学び、〝これは何たることだ〟と驚いた。(現代の安保関連法に対し)孫に〝何であの時、おじいちゃんは反対してくれなかったの〟と言われたくない。次の世代に『戦争法』を残したくない」と決意を表明。

 クリスチャン女性2人は「(信仰者として)『戦争法』は許せない。70年間守ってきた憲法9条は必要」と口を揃えた。

 参院選に向けての活動の一環として「戦争法の廃止を求める統一署名」活動に加え、寺院や教会、個人宅の外塀などに新作ポスターを貼る啓発運動を推進。問い合わせは念仏者九条の会事務局(電話/FAX0824―63―8042 西善寺内)。

2016/6/9 立正佼成会第4回世界サンガ結集 15の国・地域から530人が参加

民族衣装をまとって参加したアジアの会員たち。一緒に経典を唱和した 立正佼成会(庭野日鑛会長)は5月29日、東京・杉並の大聖堂で第4回世界サンガ結集を開催。日本を含む海外16の国と地域の25拠点から約1250人(海外会員約530人、東京教区33教会約720人)が参加した。通訳をまじえての法座も行われ、国境を超えてサンガの意識を高めた。

 庭野日敬開祖生誕110年を記念しての世界結集は10年ぶり。色彩豊かな民族衣装をまとった各国の会員たちが大聖堂に参集し、庭野光祥次代会長導師による読経供養で声を合わせた。

 教団代表挨拶では川端健之理事長が、参加者の出身地に合わせ14言語を駆使して歓迎の挨拶。庭野日敬開祖の最後の公式出席となった1999年3月5日の創立式典当時、川端理事長は米国サンフランシスコ教会長で、その時の開祖の言葉である「私が本会を創立した願いは、一人でも多くの人に法華経に示された人間の生き方を知ってもらい、本当の幸せを自分のものにしていただきたい」を紹介すると共に、その実現を呼びかけた。

 体験説法ではニューヨーク教会のメアリー・シグマンさんが登壇。ヨガ講師をしていたシグマンさんは仏教に関心があり、シカゴ支部の教会を自ら訪れたことを紹介し、荘厳さのある儀礼に目を奪われたという。また法座から多くを学んだと言い、「立正佼成会の命である法座は、現実に人を救われ、真実の信仰に目覚め、互いに相手から学び、菩薩行実践の場である」と語った。

 庭野会長は参加国の名前を一つひとつ読み上げ、手を振って参加者を歓迎した。庭野会長は仏教の基本である「いかなる悪も行わず(諸悪莫作)、専ら善を完成し(衆善奉行)、自己の心を浄くする(自浄其意)」という七仏通戒偈を示しながら教えを説いた。

 参加者はこの後、通訳をまじえて国際的な法座を実践。国境を超えた一つのサンガを実感した。

参加国・地域 ブラジル、バングラデシュ、台湾、香港、モンゴル、タイ、インド、スリランカ、ネパール、ロシア、イタリア、韓国、米国、イギリス、カンボジア、日本

2016/6/16 全日仏の理事長に石上智康・本願寺派総長 現役総長38年ぶり

石上理事長久喜事務総長 公益財団法人全日本仏教会(全日仏)は9日、東京・芝公園の明照会館で理事会を開き、第32期理事長に浄土真宗本願寺派の石上智康総長(79)を選出した。20期、24期に続く3度目の就任は初めて。また現職総長の理事長就任は第13期(1978~80)の曹洞宗宗務総長だった町田宗夫氏(故人)以来38年ぶりとなる。石上理事長は「仏恩報謝の一点に置いて、心一つにしてこの全日仏を皆さまと共にしっかりと進めて参りたい」と強調した。事務総長には前社会・人権部長の久喜和裕氏(曹洞宗)が就任した。任期は各2年。

2016/6/16 真如苑立教80年 沖縄の海へ300基の灯籠

  立教80年を迎え各種の記念行事を実施している真如苑(伊藤真聰苑主)は14日夕、沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで、沖縄に関する諸精霊や国内外の災害・紛争犠牲者へ廻向の祈りを捧げる灯籠流しを執り行った。約300基の灯籠がセンター内の池と海に流され水面を静かに照らした。センター内の池に灯籠を浮かべ合掌する伊藤真聰苑主

 午後7時からの法要では、琉球王朝時代に王府の神々信仰であるノロを統一する最高位である聞大君(きこえおおぎみ)の善政を伝える音楽劇をまじえて執り行われた。本尊である涅槃尊像レリーフ、開祖・霊祖・両童子の御影、そして親灯籠と苑主が願いを込めて「慈救」としたためられた灯籠が洒浄によって浄められた。 

 苑主は瑞教でこの法要が世界のあらゆる災害や紛争の犠牲者を追悼するものであると同時に、80年前のこの日、長男逝去後に開祖と霊祖が新たな出発の決意を示す滝行を修めた日であることに言及しながら、立教の原点である利他の実践を呼びかけた。

 続いて灯籠が隣接する海岸から海に流されたほか、一部はセンター内の池に浮かべられ、移動した苑主は合掌して祈りを込めた。

2016/6/16 比叡山延暦寺 恵心僧都一千年遠忌法要「二十五三昧式」で執行

  天台宗総本山比叡山延暦寺(滋賀県大津市)は10日、祖師先徳鑽仰大法会の一つ、恵心僧都源信の一千年御遠忌の御祥当法要を同寺大講堂で厳修した。先月から浄土系教団が同寺根本中堂で記念法要を営んでおり、当日は各宗各派から代表者が参列し、日本浄土教の祖と言われる恵心僧都への報恩感謝の思いをともにした。

 法要は、比叡山一山住職出仕の下、恵心僧都が『往生要集』を著した地、比叡山横川の山田能裕・長臈を導師に「二十五三昧式(六道講式)」で営まれた。先師先徳を祀る大講堂で営まれた遠忌祥当法要

「二十五三昧式」は、恵心僧都の作といわれ、念仏三昧の集会で唱えられてきたもの。集会の人々に語る講式節と呼ばれる独自の節回しで式文が独唱され、式文の前後に全員で阿弥陀経や念仏を繰り返し唱える。

 式文は、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天の六道衆生の苦悩の有様を説き、称名念仏を勧める内容で、六道それぞれに苦しむ衆生を救うため、自他ともに極楽に往生することを目指していることが示されている。

 延暦寺の小堀光實執行は、法要が比叡山で学んだ各宗派宗祖が祀られている大講堂で営まれたことに感慨を示し、「お念仏の法門が各宗各派に伝わり、多くの方々へのお導きの基となっている。恵心僧都さまのお人柄、その御生涯に篤く敬意を表します」と挨拶。

 その上で「改めてこの比叡山で御修行になられました祖師先徳の方々に対しても、総本山の護持に専心努めてまいることが、私共にとって大事なことと心したところです」と先徳への鑽仰の思いを新たにした。

 木ノ下寂俊総長は、先月から浄土門各教団が根本中堂で法要を厳修していることに御礼を述べ、「この恵心僧都さまとのご勝縁を通じまして、浄土門教団との交流がますます親密になることを願います」と話した。

 浄土系教団の法要は、先月に時宗、天台真盛宗、浄土宗、浄土宗西山禅林寺派、浄土宗西山深草派、西山浄土宗、浄土真宗本願寺派が営み、今月22日に真宗大谷派、24日に融通念仏宗が行う予定だ。

2016/6/23 大覚寺カフェ2年目始動 チュートリアルが店長・シェフの設定

庭湖館で行われた記者発表に笑い飯哲夫、ミライスカート、エグスプロージョンらも参加 大本山大覚寺の魅力を知ってもらおうと、昨年6月に始まった「大覚寺カフェ」が2年目を迎え、京都市右京区の同寺で16日、いけばなや写経などの新プロジェクトが発表された。


「大覚寺カフェ」は、京都市出身のお笑いコンビ・チュートリアルの徳井義実さんが店長、福田充徳さんがシェフという設定の架空のカフェ。2人がオリジナルスイーツを開発するなどし、同寺を知るきっかけをつくってきた。


 今年は仏教に詳しい笑い飯哲夫さんの写経サークル「哲夫塾」や、京都を中心に活動する4人組アイドル・ミライスカートがいけばなを学ぶサークル「いけばなスカート」が活動に加わった。


 草津栄晋総務部長は、嵯峨天皇が写経した勅封心経を60年に1度開封する同寺を象徴する伝統を紹介。「若い世代にも大覚寺を発信していきたい」と意欲をみせた。勅封心経は再来年に開封される。


 辻井ミカ華務長は、いけばなを嗜んだ嵯峨天皇によって嵯峨御流が始まり、「以来1200年、いのちの大切さと平和を願う気持ちをお花で伝え続けている」と解説。「初心者でも気軽にいけられる形もある。いけばなの楽しさを伝えてくれたら嬉しい」と話した。


「踊る授業シリーズ」で人気のダンスユニット・エグスプロージョンによる新作「大覚寺」の制作も発表。チュートリアルの2人も出演するといい、両手両足を広げて大覚寺の「大」を表す振り付けを教えてもらった徳井さんがダンスを披露した。

2016/6/23 第37回日韓仏教交流大会 32年ぶりに川崎大師で開く

藤田会長を導師に営まれた世界平和祈願法要 日韓仏教交流協議会(藤田隆乗会長)と韓日仏教文化交流協議会(慈乗会長)は15日から18日にかけ、神奈川県川崎市の真言宗智山派大本山平間寺(川崎大師)を中心に第37回仏教文化交流大会を開催した。川崎大師は藤田会長の自坊で、1984年の第5回大会から32年ぶりの会場提供。両国から200人超の僧侶や信徒が参加した。

 17日のメイン大会での法要は藤田会長を導師に真言宗の様式で厳修。表白で柴田哲彦副会長(浄土宗大本山光明寺法主)は全世界の天災や戦争などで犠牲になった人に想いをめぐらし追悼。韓国側は泓坡副会長が「両国紐帯友好増進之大願」の祝願文を奏上した。

 藤田会長と同宗派の全日本仏教会・小峰一允会長は「先代ご貫首さま(故・髙橋隆天氏)の先見性と篤き信仰の力をもって、ある時は会場を提供をされ、ある時は本会会長としてご尽力をいただきましたこと、同じ真言宗智山派に籍を置く者としても、まことにご同慶に堪えません」と祝辞を述べた。

 学術大会では日本側は高野山恵光院の近藤大玄住職が「宿坊における修行体験による布教」、韓国側は曹渓宗立中央僧伽大学校の柳承武教授が「韓国の仏教信仰とテンプルステイ」の題で発表。韓国の参加者からは近藤氏に質問が相次ぎ、日本の宿坊への関心の高さをうかがわせた。

 恒例の共同宣言は渡邊真行日本側事務総長、金香雲韓国側事務総長が調印し交換。熊本・大分地震被災者の苦痛への共感や、昨年の龍珠寺大会で提起された日韓青少年交流事業の実践に向け引き続き協議することなどが盛り込まれた。大本堂では藤田会長による特別の護摩祈祷が営まれ、参加者全員の無病息災や仏法昌隆が願われた。

 会場を移して行われたレセプションには福田紀彦市長も出席。在日コリアンの多い川崎市で大会が開かれたことを大いに歓迎し、今後も行政・民間でさまざまな交流をしていく大切さを強調した。清興は日蓮宗大本山池上本門寺の「池上太鼓」で、ダイナミックな響きが韓国の人々を喜ばせた。

2016/6/23 孝道教団開顕80周年大法要 孝道菩薩の自覚と精進を

初代統理夫妻尊像の前で孝道菩薩の道を説く岡野統理(孝道山本仏殿) 孝道教団(岡野正純統理)は12日、横浜市神奈川区の孝道山本仏殿で開顕80周年記念大法要を執り行った。全国から約1500人が参集し、記念標語である「濁世に菩薩育む孝の山」に基づいた孝道菩薩としての自覚と精進を誓った。


 宝前には初代となる始祖岡野正道統理(「大無遍行院さま」と尊称)とその妻である岡野貴美子初代副統理(「薬王三昧院さま」と尊称)の尊像が信徒を見守るように安置された。


 法要は3部構成で、最初はご宝前を荘厳する「献供」。子どもや青年会代表らによる献花・献香・献茶、壮年会の献灯、婦人会の献膳に続いて、5地域系統と4別院、1信徒代表によって御菓子や各地の特産物が厳かに供えられた。


 続く「法楽」は岡野統理を導師、鄰子第2世副統理と華蓮第3世副統理を副導師に、老若男女80人の式衆が出仕し、法華経の如来寿量品第十六と如来神力品第二十一を会場一体となって唱和し、初代統理夫妻に報恩と感謝の誠を捧げた。


 最後は「慶祝」で、草創期を中心にスライドが上映された。現在地に移る以前の六角橋仮道場で法話を述べる初代統理の様子や比叡山との交流、平和の鐘の落慶、盛大な花まつりパレード、第2世岡野正貫統理への伝法相承式の模様などが披露された。高齢信徒は懐かしそうに、青少年信徒は歴史を確認するように見入っていた。


 岡野統理は80年前の開顕当時を振り返りながら、教団内外の感謝の言葉を述べた。最後に「孝道教団は、仲間と共に幸せな生き方を学ぶために助け合い、お互いの智慧と慈悲を育てるために支え合うサンガである。そして広く社会に向けては、人々が様々な苦しみから解放されることを助け、世の中の争いや憎しみがなくなることを目指して精進努力していく菩薩教団である。開顕80周年の節目の年に、皆と共に、孝道菩薩としての自覚を新たに、菩薩行に精進し、菩薩を育成することに真剣に取り組んでいこう」と呼びかけた。


 孝道教団は天台宗寺院で得度した岡野正道初代統理(1900~78)と岡野貴美子副統理(1902~76)によって昭和11年(1936)8月15日、孝道会として創立。初代は「みのる法華経・熟益正法」を確立。昭和50年(1975)1月、子息の岡野正貫第2世統理(1925~)に法灯が継承され、開顕50周年からマイトリー運動を提唱し実践。平成18年(2006)に現在の第3世岡野正純統理(1960~)に法灯継承された。

2016/6/30 本願寺派東京教区 寺族女性連盟20周年大会開く 全国組織化を要望

 浄土真宗本願寺派東京教区寺族女性連盟(菅原和美会長)は20日、築地本願寺で結成20周年記念大会を開催した。大会テーマ「つながる ひろがる お寺の未来」のもと185人が参集し、将来の宗門、寺院における役割を探った。菅原会長は「全国の坊守、寺族女性と連携がとれれば今以上に宗門の発展に寄与できる」として全国組織化を要望した。

 記念式典は女性僧侶が出仕し、十二礼拝作法をお勤めした。挨拶に立った石上智康総長は昨年策定された「宗門総合振興計画」がスタートしたことから、「このような時期であればこそ、坊守、寺族女性の皆様のご活動を抜きにして成果は得られない。宗門の最先端のご活躍であり、宗門は皆様のご尽力があればこそ成り立っていると申しても過言ではない」と述べ、現場を担う女性の活躍を念じた。女性僧侶の出仕で営まれた十二礼拝作法

 菅原会長は振興計画に「坊守の研修内容とネットワークの充実を図る」と謳われていることから、「坊守、寺族女性の組織が宗門の組織の中に何らかの形で位置づけられ、全国の坊守、寺族女性と連携がとれる全国組織となれば、今以上に宗門の発展に寄与できる」と力を込め、「重要なことであり、近い将来実現できますよう願ってやみません」と熱い思いを口にした。

 式典に続いて釈徹宗氏(相愛大学教授・如来寺住職)が「日本のお寺について考える」と題し記念講演し、将来の寺院の方向性を展望した。
釈氏は日本の仏教寺院の特徴に「家族で運営する寺院という形態」があり、「寺院として評価されなければいけない一方、家族として暮らしていかないといけない。この2つをどう両立させるか」を課題にあげたうえで、「最重要ポイントは寺族のモチベーション」とその重要性を強調した。

 持続的な寺院運営のためには「社会的に高い評価を受ける活動が収入に結び付くことが望ましい」として、成熟期の社会に対応した自然環境問題、貧困、高齢者、子育て支援といった公共性の高い活動への視点を提供。活動の手順を1「これまでの自坊の点検」2「特性の把握」3「モデルになる寺院と出会う」と示し、「寺族こそお寺に行かなければいけない。具体的な事例に出会えば問題も整理される」と行動を促した。

2016/6/30 大谷派保護司会を設立 業縁存在として共に歩む

 真宗大谷派の僧侶や寺族でつくる保護司会の全国組織が設立され、京都市下京区のしんらん交流館で16日、結成大会が開かれた。全国各教区の代表者約110人が、「人間をいかなる振る舞いもする業縁存在として見出された宗祖の眼に常に問い返され、対象者と共に歩んでいく」と掲げた設立理念を胸に刻み、真宗の教えに基づく更生保護活動への決意を新たにした。

 2010年に北陸連区の保護司会によって全国組織の設立が提案され、12年に全国代表者会議を開催。設立理念や会則などが検討され、14年に役員を選出するなどして「真宗大谷派保護司会」が発足。活動者の名簿を作成するなど準備を進め、この日、結成大会が開かれた。

 会長に幸村明氏(金沢)、副会長に光林忠明氏(東京)、藤木諭氏(大阪)が就任。事務局は大谷派教育部に置く。現時点での名簿の人数は約450人。

 幸村会長は、宗祖の教えに基づく保護司活動のあり方を学び、相互の連携による活動の充実を目指してきたと同会設立の道のりを述べ、「親鸞聖人の教えを聞いて、更生保護活動の足元を照らすことがこの会の特徴だ」と話した。

 里雄康意宗務総長は、かつて寺が担ってきた学びや安らぎの場という役割が公共機関に置き換えられ、寺は社会から必要とされない存在になりつつあるのではないかとの認識を述べた上で、「寺という場の存在意義をもう一度確かめる機縁になるのが、社会復帰支援に向けた居場所の確保ではないか。罪悪深重の御同朋として接する人と場が必要だ」と語った。

 川端英樹・京都保護観察所長が「全国の保護司をつなぐ組織。活躍に期待したい」と挨拶した。結成大会の司会を務めた巖城孝明氏(北海道)は、「親鸞聖人の教えと社会との接点教えに基づいた保護司活動について述べる幸村会長 を見出す具体的行動が、保護司の活動ではないか」と述べた。

 岐阜聖徳学園大教授で臨床心理士の譲西賢・慶円寺(岐阜県神戸町)住職が「悪人正機の自覚と感情受容」と題し記念講演し、すべての人が過ちを起こしても不思議でないとし、「更生保護の手を差し伸べる自身の危うさを十分に自覚するべき」との考えを示した。

 こうした視点から、期待に応えてくれそうもない人を見放しがちだったり、マイナスの先入観をぬぐいきれなかったりなど現場で陥りやすい危うさに注意を促した。その上で、抑圧によって追い詰められ悪循環を繰り返す人にとって、無条件に感情が受容されることが大切だと指摘。「如来の働きがあるからこそ、相手の感情を受容できる。如来の代わりに苦悩を受け止める保護司は如来の代官だ」と訴えた。

2016/6/30 真言宗豊山派 新総長に星野英紀氏 異例の学長経験者の就任

 真言宗豊山派(坂井智宏宗務総長)の次期宗務総長候補者を選出する第142次宗会臨時会(加藤章雄議長)が28日、東京・大塚の宗務所で開かれ、大正大学元学長(現・同大常務理事)の星野英紀氏(菩提院結衆、東京都中野区白鷺・福蔵院住職)を選出した。大学学長経験者の宗務総長就任は極めて異例。星野氏は7月5日に就任、新内局を発足させる。任期は4年間。星野新総長

 同派の宗務総長職は、興正系・一新系から交互に選任するのが慣例。7月4日に任期満了を迎える坂井総長が興正系であるため、今回は一新系からの選出となった。

 増澤秀丸総務部長は次期宗務総長候補者を決める議案第1号の補足説明で、「豊山派をさらに一層躍進させ、輝ける宗団に導くことのできる候補者を選出いただきたい」と要請。議案は全宗会議員から成る特別委員会(島根太真委員長)に付託され、審議された。議会再開後、委員長報告を行った島根議員(千葉・不動院)から、星野氏の名前が高らかに発表された。

 次いで岩﨑榮勝議員(茨城・安穏寺)が宗会議員を代表して、星野氏を推薦する演説を行った。

 その中で、葬儀の多様化と企業の参入、寺離れなど激変する寺院環境を指摘。厳しい社会情勢に向かって宗派行政の舵取りを担う宗務総長職の重要性を強調し、「学徳兼備にして識見豊富なる星野僧正が最適任者であると考える」と述べた。

 さらに災害対策や危機管理、布教教化の推進、子弟教育の充実と後継者育成、宗派財政の安定化と総本山長谷寺の護持整備の推進など、重要な課題を列挙。「星野僧正によって構成される内局であれば、必ずや適切な決断、果敢な行動力で推進されるものと確信している」と期待感を表明した。加藤議長も「学山豊山にふさわしい総長」と祝した。

 宗務総長に選出された星野氏は報道陣の質問に、「重責を担うことになった。4年間、頑張りたい」と抱負を語った。

原発被災寺院の復興策 研究進める行動派学者

 星野氏は昭和18年(1943)12月生まれ。72歳。大正大学卒。シカゴ大学修士課程、大正大学大学院博士課程修了。文学博士。第31代大正大学学長(平成15~19年)。宗内の学階は最高位の勧学。宗外では日本宗教学会会長・財団法人国際宗教研究所所長・理事長等を歴任。専門は宗教社会学で、第16回日本宗教学会賞受賞(昭和55年)。聖地・巡礼研究で顕著な業績を上げ、著書に『巡礼―聖と俗の現象学』『四国遍路の宗教学的研究―その構造と近現代の展開』等。

 東日本大震災発生後は大津波と原発事故で被災した福島県沿岸部の相馬・双葉地域に度々赴き、実地踏査を実施。被災寺院を中心とする地域の復興過程や現状・課題の研究を続けている。避難生活をおくる住職や檀信徒、地域住民への綿密な聞き取り調査を行い、共に原発事故からの復興策を模索するなど、行動派の学者としても知られている。

2016/7/7 曹洞宗宗議会 有志議員提出の返金案否決

 第125回曹洞宗通常宗議会は6月30日、有志議員提出の「催告書で集められた金銭の返金を求める」議案を除く当局提出の全議案を可決・承認して閉会した。3日目の後半から旧多々良学園問題に質問が集中し緊張が走ったが、内局側は深入りせず押し切った。一方、内局側が審事院に申告していた駒澤大学・愛知学院の理事問題についての質問はほとんどなかった。

 善管注意義務違反に基づき、かつての責任役員に求められていた金銭が時効成立となった件について近藤龍法議員(總和会)が強い疑念を表明。「内局は訴訟提起をせずに請求額約1億円のうちの納入金額3千万円を引いた7千万円を、内局自らの行為により、法的請求のないままに放置し、結果時効を成立させ、曹洞宗に損害を回復する機会を逃したことになる」と、釜田内局の善管注意義務違反を指摘。その上で、催告書で集められた金銭は賠償金であるかどうかを確認した。

 神野哲州人事部長は、善管注意義務を問われた責任役員らが支払った金銭は法的責任に基づく賠償金であり、その余の道義的責任を求められた人の金銭は「任意の寄付」の性質を持つものと考えていると答弁。近藤議員は「宗議会の承認なしに看過できる金額ではない」と宗制違反でもあると主張し降壇した。

 山崎奎一議員(總和会)は、民事再生計画を立てた当時の中村見自理事長が現内局で教化部長に就き、金銭請求の庁議決定に関わっているのは利益相反だと主張した。神野部長は中村理事長就任は学園の破綻後であり、また民事再生は理事長の独断でなされたものではなく、利益相反にはあたらないとの考えを示した。

「宗議会のあり方を考えるみんなの会」代表の水野格正議員(總和会)は、第三者委員会報告書で宗門組織改革の必要性や議会の機能不全が指摘されていると再確認。創設が検討されているリスクマネジメント機関において議員らから広く意見を募ることを要請した。神野部長は、現段階で議員の意見は聞けていないが企画委員会ができた段階で機会もあると答弁し、理解を求めた。

 最終日午前中は空転。山路純正議員(總和会)と永島玄隆議員(同)が提出した、旧多々良学園問題の文書質問の答弁について弁護士を交え確認するためだった。さらに、「旧多々良学園問題を考える有志の会」代表の五十嵐靖雄議員(總和会)ら17人が、催告書・お願い書の手続き上の違法性や内容の不当性を主張し、集められた金銭の返金手続きを直ちに求める決議案が上程されたが、17人以外に賛成者はなく、否決された。

 主な成立議案は、監正機関である審事院の審事を6人から8人に増員。これを受け、増員する審事候補者に上野徳充氏、大澤光邦氏が内局により推薦された。従前から審事でありこの6月29日をもって辞任した鈴木太源氏も再び推薦された。


2016/7/7 冥土喫茶ぴゅあらんどオープン 宗教語り合う場に

”ゆる~く”宗教間対話が趣旨の冥土喫茶 宗教宗派を超えて宗教や信仰について語り合う「冥土喫茶ぴゅあらんど」が25日、京都市下京区の浄土宗龍岸寺(池口龍法住職)で初開催された。参加者は天台宗や日蓮宗、浄土宗などの僧侶、キリスト者、宗教に興味がある人など様々。メイドさんが出すお茶を飲みながら、宗教談義で盛り上がった。


 記念すべき第1回のテーマは「お坊さんと語る『聖☆おに』的宗教のリアル」。キリスト者の実生活に迫った『キリスト教のリアル』の著者でキリスト新聞社の松谷信司氏をゲストに迎えた。


 松谷氏と池口住職とのトークでは〝神父・牧師・僧侶あるある〟が話題に。松谷氏は、子どもに聖書の登場人物の名前をそのまま付ける人がおり、「ヨハネ、イサク、マタイとか。アブラハムはさすがにないですけど。名前に苦しめられた2世3世の話はよく聞きますね」と珍しい名前をつけるキリスト者版「キラキラネーム」を紹介した。


 僧侶の場合は、訓読みから音読みに変えたり、戸籍の変更を行う場合があることなどを池口住職が説明し、両者の違いに参加者は興味津々。トーク後は、各テーブルに分かれて宗教について自由に語り合い、地獄極楽(天国)や死んだらどうなるのか、カルトの問題など、話が尽きない様子だった。


 企画した池口住職は、「宗教のことを真剣に話し始めるとたぶん収拾がつかなくなるので、冗談をかけて企画しました。対立するのではなく、それぞれが違うバックグラウンドを持ちながら、それぞれの宗教の中で生きていることを確認し合える場に」と話す。


 月1回での開催を目指し、第2回は7月23日午後3時から、ゲストに『ダライ・ラマ共苦の思想』著者の辻村優英氏を迎え「共苦(ニンジェ)の思想とジャパニーズ人情」を予定。チャージ料1500円。

2016/7/7 邦人7人犠牲 バングラデシュのテロ事件 貧富拡大とIS浸透の中で

 バングラデシュの首都ダッカで1日、武装集団がレストランを襲撃した。日本人7人を含む20人が殺害された。武装集団は治安部隊によって鎮圧されたが、「IS(過激派組織「イスラーム国」)」が犯行声明を出し、その影響力がアジアにも及んでいることが判明した。貧富の格差拡大と中東の宗教対立を背景にした今回の事件。現地で活動するNGO関係者と国際的なテロに詳しい2人からコメントをいただいた。

バングラデシュ東部のチッタゴンでマハムニ母子寮を運営している後藤一氏(兵庫・真宗大谷派明覚寺住職)の話
 バングラデシュは何度も訪問しましたが、治安が悪いと感じたことはなく、こんな事態が起こるとは思ってもいませんでした。犠牲になった80歳の方(鉄道技術士の田中宏さん)とは何度かお話をしたことがあります。本当に残念です。皆さまのご冥福を念じます。
 バングラデシュは貧富の格差が大きい。3%が富裕層で、あとは貧しい人たちです。友人が現地で製鎖会社を経営しており、その関係でマハムニ母子寮を知ることになりました。貧しいながら母子寮は日本からの支援がほとんどですが、現地のムスリムやキリスト教徒も温かい目で見守ってくれています。
 バングラデシュは人口の約90%がイスラーム。ヒンズー教が9%ほど。仏教徒は0・7%で、キリストが0・3%。以前、私は衣姿でイスラーム寺院(モスク)を訪れたことがあります。しかし特に苦情を言われたという記憶はありません。現地を訪れた際の案内役はイスラームの方です。ですから今回のようなテロ事件が信じられません。
 テロによって最貧国の一つであるバングラデシュへの支援が滞らないか心配しています。
※マハムニ母子寮 1971年バングラデシュ独立の際、大量の難民が発生し日本山妙法寺の渡辺天城師(故人)が救済施設として開設。後に臨済宗禅堂とタイの僧院で修行した福井宗芳師が継承するも07年に急逝。その後を後藤氏が受け継いでいる。小中学生115人が入寮している。

宗教問題を内包した紛争やテロに詳しい金光教泉尾教会総長の三宅善信氏の話
 今回のダッカでのテロ事件で、「何の罪もない」どころか、バングラデシュの「発展のために貢献」している日本人が七人も無慈悲に殺害されたことに衝撃を受けた日本人も多かったであろう。しかも、従来「日本の友好国」として認識されてきたバングラデシュでの事件だったので――それ故、犠牲者たちもそのことをテロリストに訴えて助命を懇願したのに――余計に疑問を抱いたであろう。
 しかし、それらの人は「一神教」の本質を全く理解していないと言える。イスラムに限らず、ユダヤ教にしろキリスト教にしろ、中東で成立した「一神教」に共通する最も大切な教えがある。『クルアン』の信仰告白「アラー(神)の他に神はない」、あるいは『旧約聖書』の「十戒」の第一条「わたし(ヤハウェ)の他に神があってはならない」である。最重要と思われる「殺人禁止規定」なんて第五条に過ぎない。
 日本人にとっては、まったく意味不明のトートロジー(同語反復)に思える一神教徒のこの信仰告白の意味するところをしっかりと理解することこそ、一神教徒の行動原理を理解する近道である。

2016/7/14 参議院議員選挙当選者 全日仏推薦14人、佼成会推薦25人

 この度の参院選で全日本仏教会(全日仏)は選挙区と比例を含め4党28人を推薦。そのうち14人が当選した。政党別では自由民主党8人(推薦13人)、民進党5人(同12人)、生活の党と山本太郎となかまたち0人(同1人)、無所属1人(同2人)。

 立正佼成会は全体で34人を推薦し、25人が当選。選挙区では民進党17人(推薦23人)、自由民主党3人(同3人)、無所属3人(同6人)の23人。比例では推薦した民進党の2候補が当選した。

 なお、以前は候補者を推薦していた新日本宗教団体連合会(新宗連)は今回は推薦しなかった。

2016/7/14 真宗大谷派難波別院 御堂会館を解体し17階建ビルへ

コンサート会場などとしても広く市民に親しまれてきた御堂会館。半世紀にわたる歴史に幕を閉じる 昨年末で収益事業を中止した真宗大谷派難波別院(大阪市中央区)の御堂会館が解体され、跡地にホテルを中心としたビルが建設される。計画に伴い、教区教化センターを取り壊す工事が7月から始まった。ホテル不足とされる大阪市中心部での需要を見込み、東京五輪前の2019年中に完成させる予定。将来の本堂建て替えを視野に、これまでの会場貸しに代わる収益事業とし、年間5000万円ほどを確保する考えだ。

 御堂会館は建設から50年以上が経過していて、2012年に耐震診断を実施。震度6弱の地震により倒壊はしないものの、ピロティが崩れるなど大きな被害が出る可能性があるとの結果だった。耐震補強工事には約11億円かかり、取り壊す場合は約8億円が必要との見積もりだった。

 多額の費用をかけて耐震補強工事を行ったとしても、その資金を回収し収益を上げていくことは困難と判断し、会館で行っていたイベントや会議などの会場貸し事業を中止。ビルの建設を決め、不動産開発の積和不動産関西と定期借地権契約を結んだ。同社がビルを建設し事業を行う。契約期間は60年。2077年9月に更地にされた土地が返還される。

 会館の建て替え工事に伴い、教区教化センターも解体。解体後に工事期間中の参道とする。センターの機能は境内の同朋会館に移設した。会館の解体は1月に始まる見通し。建設予定のビルは地上17階地下1階建て。最終的なデザインや延べ床面積は今後決まるという。

 ビルは、会館と同様に山門の役割を果たすような設計。御堂筋から本堂全体が見渡せるように、開口部天井の高さを現在の7㍍から13㍍に上げる。幅は27㍍から21㍍になる予定。完成後のビル1~4階北側の約1200平方㍍を別院が賃借し、総合案内所や多目的会議室とする。

 ビル完成後は、別院北隣の大阪御堂筋ビルなどが建つ土地の不動産収入の一部5000万円と合わせて年間1億円ほどの収益を見込んでいる。老朽化が進む本堂の今後に備えて、契約期間終了までに50億円ほどを確保し、山門の再建と本堂の建て替え費用に充てたい考えだ。

 難波別院は1945年の空襲で本堂などが焼失。1961年に山門を兼ねた御堂会館と本堂が再建された。御堂筋沿道に立地し、本願寺津村別院の「北御堂」に対し難波別院は「南御堂」と呼ばれる。御堂会館ではコンサートや映画試写会などが開かれ、55年間にわたって広く市民に親しまれてきた。大規模利用者の撤退や固定資産税の課税などの影響で、2009年から収益が悪化していた。

2016/7/14 大谷光淳門主が門信徒の中へ 築地本願寺「夏の夕べ」に参加

門信徒や一般に混じって太鼓の指導を受ける大谷光淳門主(7日) 浄土真宗本願寺派の第25代大谷光淳(釋専如)門主は7日、東京・中央区の築地本願寺を訪れ、「東京教区ご巡回・築地本願寺ご巡拝」を行った。門主は築地本願寺夏の夕べ「ご縁フェスタ」にも参加し、和太鼓演奏や、築地本願寺本堂屋根をイメージしたのり巻き「本願寺ロール」作りを門信徒にまじって体験した。境内は終日賑わいを見せた。

 門主の到着を地元の京橋築地小学校のマーチングバンドが出迎え、演奏を披露。地域の幼稚園からも園児が出迎え、門主が「暑いね」と声をかけると園児が「暑いー!」と元気よく答え境内は笑顔でいっぱいになった。

 日中は本堂で式典やパイプオルガンコンサート、記念布教、夕方からの「ご縁フェスタ」では境内で出店や熊本などの物産販売展、盆踊り、大江戸助六太鼓の演奏、大人数で作るのり巻き大会が行われた。門主は門信徒や訪れた地域の人々と触れあった。

 盆踊り用に浴衣に着替えた門主は、み教えを現代に伝えるため、宗門が新たな取り組みを進めていることに触れ、「多くの方にここ東京・築地の地でみ教えに親しんでいただければと思っております。どうぞこれからも築地本願寺へお越しいただきますことを願っています」と話した。

2016/7/21 長野・善光寺大勧進 一山住職ら貫主の罷免要求

  天台宗善光寺大勧進(長野市)の小松玄澄貫主(82)が女性職員に対し差別発言やセクハラ、パワハラをしたとして、大勧進の一山会議の有志や信徒総代から辞任を要求されている問題は、12日に記者会見が開かれ、小松貫主は「辞任はしない」「差別的な発言はしていない」と否定した。これを受け、一山会議の住職有志や信徒総代らは13日、天台宗宗務総長宛てに小松貫主の罷免を要求する申告書を送付した。

 申告書には、6月に住職有志や信徒総代らが小松貫主に手渡した辞任を求める文書も添付されているとみられる。

 申告書は教区宗務所を通じて天台宗務庁に送付され、15日現在、天台宗務庁には申告書が届いておらず、天台宗は「届き次第対応したい」としている。

 小松貫主が差別発言をしたとされる部分については、今月下旬に部落解放同盟との事実関係の確認を行う会合が予定されており、小松貫主も出席する意向だという。

2016/7/21 真言僧の臨床宗教師誕生 7人が天理教施設で研修終え 種智院大学臨床密教センター

 種智院大学臨床密教センター(京都市伏見区、松本峰哲センター長)の臨床宗教師養成講座が終わり、奈良県天理市の天理教浪華分教会で14日、第1期生の修了式が行われた。3カ月のカリキュラムを終えた32~70歳の7人が修了証を受け取り、臨床宗教師として新しい一歩を踏み出す。

 5、6月に医療施設などで計4日間の実習を受けた研修生は13、14の両日、最後の研修に臨んだ。「宗教間対話」の講義を担当した石鎚山真言宗弘元寺(広島県福山市)副住職で臨床仏教師の村上泰教さん(34)も講師として出席。「人の役に立つことを志す真言僧の心に触れ、母校の種智院大が主催する講座で自身を見直すきっかけになれば」と参加した。
研修は、超宗派の活動を前提とする臨床宗教師の研修場所にふさわしいと、天理教の上田禮子さん(63)の協力により同分教会で行われた。同センターが養成の対象にするのは真言宗の僧侶。すべての人に救済を続ける「普賢行」や、苦しみを共にする「同行二人」の精神に基づいた臨床宗教師を育成する。同時に、密教僧としての確固たる信仰が、超宗派の活動に必要との考えがある。

 この日、実習先での会話を書き起こした記録をもとに、ケア方法を検討するグループワークを実施。講師の谷山洋三・東北大准教授は、「会話を振り返ることは、課題を見つける機会になる。普段から印象に残ったケースの会話記録を続けてほしい」と勧めた。

 長崎県佐世保市の真言宗智山派御橋観音寺の原田照久住職(44)は、「1回目の研修でいつものやり方が通用しないと分かった」。初めて来た天理市の本殿で朝づとめに参加。「あの場へ行っただけでも宗教間対話になるように感じた」と刺激を受けていた。

 岡山県高梁市の高野山真言宗千柱寺の宇喜多隆充副住職(36)は訪問介護施設での実習から、「働いている人のケアも大切だと気づいた。それによって利用者に質の高いケア3カ月のカリキュラムを終え松本センター長㊨から終了証を受け取る研修生を提供できるのではないか」と学びを語った。

 徳島県小松島市の高野山真言宗桂林寺僧侶の岩佐隆昇さん(70)は最年長。信仰心の篤い檀信徒だった祖母の影響を受け僧侶になる思いを強くし、10年前、定年を機に出家した。実習先の松阪市の病院でボランティア活動の登録をした。「沈黙は会話になりうる。自分の考えを押し付けないようにする」と決意を示した。

 松本センター長は、「柔軟な研修生が集まった。真言宗の僧侶を対象とし、天理教の施設で研修した意味を感じ取ってもらえたと思う。今の気持ちを忘れずに、現場に出続けてほしい」と話した。

2016/7/21 「改憲勢力」3分の2 問われる平和主義 仏教教団と日本国憲法

 日本国憲法第96条は憲法改正の手続きを規定している。「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」とある。先般の参院選で改憲勢力が3分の2を超えた。改憲の最大の焦点は戦争放棄を明記した第9条である。立正佼成会は改憲論じたいを否定していないが、平和憲法の理念を生かすべきだという主張を繰り返している。伝統教団は憲法、特に平和主義についてどのような考えを発信してきたかをたどってみる。

 昭和22年(1947)5月、東京・築地本願寺に超宗派の宗教者らが集った。ここで懺悔文が発表され、同時に宗教平和宣言が採択された。懺悔文では「新憲法は世界に向って戦争放棄を誓約したが、この人類史上類いなき崇高なる理想の実現は、人間精神の改造による宗教的基礎に立ちてのみ可能なのである」と謳っている。第2次大戦で受けた被害は物心・身心ともに大きかったために、新憲法への期待感が込められている。
 これを受け、例えば日蓮宗は管長諭達で「新憲法は既に実施せられ、日本は新たなる決意を以て平和建設の途に就いた。(略)固(もと)より平和国家の基礎を為すものは宗教である。我等教家の責任たるや、実に重且つ大なりと言わねばならぬ」(昭和22年6月30日)と宣言した。
 憲法施行直前、曹洞宗は管長告諭で「人類普遍に基づく日本国憲法は制定せられ、平和国家の基礎ここに確立したるは、寔(まこと)に欣快に堪えざるところなり。/惟うに永遠に戦争を放棄せる新生日本の指標は、民主主義に基づく最高文化国家を建設し、世界恒久平和の実現、人類最高理想の達成とに寄与するに在り」(昭和22年4月1日)と評価している。
 1990年代以降、伝統教団では戦争協力に対する懺悔や平和メッセージが相次いだ。また自衛隊イラク派遣(2003)や昨年の安保法制など平和憲法が岐路に立つ場面に遭遇すると、第9条を前面にたてて政府の姿勢を批判するところもあった。 
     ◇
 国会(衆参)では改憲勢力が3分の2を超え憲法改正発議が可能になった。こうした状況において、いくつかの教団の現行憲法に対する声明やメッセージを集約した。
▼真言宗豊山派 「豊山派の主張」大塚惠章宗務総長(平成15年〈03〉12月24日)
(自衛隊のイラク派遣に関し)私たちは日本国憲法の戦争放棄の精神を忘れてはなりませんし、仏教の平和主義からいって十分注意しなければなりません。しかし、このたびの政府の政治的決定について宗団として総括的に賛否を論ずることはいたしません。それよりも私たち仏教徒が強く主張しなくてはならないのは、仏教が釈尊以来、持ち続けている仏教的平和主義についてであります。
 ▼真宗大谷派 宗議会「日本国憲法『改正』反対決議」(05年6月14日)
「世のなか安穏なれ、仏法ひろまれ」と宗祖の仰せをいただき、1995年・戦後50年に当たって「不戦決議」を採択した私たちは、宗門の負の歴史を心に刻み、「日本国憲法」を生み出した戦争犠牲者の声なき声に耳を澄ませて、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」を「国際紛争を解決する手段」として「永久にこれを放棄する」意志を再確認し、今般の「日本国憲法」「改正」の動きに対して、真宗門徒として強く反対の意を表明いたします。
 ▼曹洞宗 宗務総長(渕英徳)談話(07年12月8日)
 昨今、日本国憲法第9条の改憲について、さまざまな論議がなされております。(略)
 現在、とりわけ戦争放棄と戦力不保持・交戦権の否認という理念を変えようとする動きがあり、どのように政治的な必要性が強調されるにせよ、その原則を変え、戦争の放棄と戦争のための軍事力を保持しないと明言する現行の憲法を、あえて戦争のできるよう改変する積極的理由は認められないと思います。
 ▼孝道教団 『安全保障関連法案』に関する声明(平成27年〈15〉9月19日)
 他国のためにも武力を使う集団的自衛権の行使は、戦争を放棄した日本国憲法9条に根本から違反します。
日本国憲法9条は、歴代政府が遵守してきた平和の理念です。一内閣の閣議決定で憲法解釈を変更することは、国の最高法規である憲法によって権力を縛り、人間の尊厳を守る立憲主義に反する憲法違反です。

2016/7/28 興正寺罷免住職を刑事告訴へ 「弘法大師御遺書」6億の謎

 隣接する中京大学への寺有地無断売却で得た138億8千万円のほぼ全額が、罷免後も「不法占拠」を続ける梅村正昭元住職側によって費消されていたことが明らかになった名古屋市昭和区の高野山真言宗別格本山・八事山興正寺。罷免住職側の元責任役員らが関係する株式会社日本開発研究所など複数の会社に、「不可解な巨額支払い」が繰り返しなされていたことも判明した。特任住職(添田隆昭宗務総長)側ではこれを受け、梅村元住職を「背任罪」で刑事告訴する準備を開始。「断固たる対抗措置を取る」(複数の宗派関係者)構えだ。

 罷免された後も、自らが任命した元責任役員らの関係会社に巨額の資金を支出し続け、寺有財産を大きく毀損している梅村元住職。宗規の懲戒規程第四条の四「故意に宗命に従わず又は反抗する者」などで「もはや除名(僧籍剥奪)もやむをえない」(宗派関係者)との声も強まっている。

 数々の「不可解な支払い」の中でも特に仏教界の耳目を集めそうなのが、什物として平成26年7月10日に総額6億円で興正寺が「非宗教法人高野山文化事業団」(高野山とは無関係)から購入したとされる「弘法大師入滅6日前御遺書」なるものの真偽だ。その書名から『御遺告』の伝本か異本と考えられる。「罷免住職側がどう鑑定したのか、詳細が全くわからないが、もし本物ならば国宝・重要文化財級の大発見」(宗派関係者)となる。世紀の大発見か、それとも「背任による告訴の証拠の一つ」(同)となるのか。(続きは7月28日号紙面をご覧ください)

2016/7/28 大谷大学 18年4月から社会学部・教育学部を新設

  大谷大学(京都市北区)は21日、2018年4月に文学部に加えて社会学部と教育学部を新設すると発表した。学習形態の差別化による教育の質の向上を目指し、開学以来維持してきた文化系単科の体制から初めて複数学部に移行する。木越康学長は、社会的弱者に寄り添った親鸞聖人の精神を建学の理念とする同大として、過疎や高齢化、貧困などを抱える現代社会の課題に向き合う上で、「弱者に寄り添い決して見放すことのない社会形成を担う人間を育てたい。本学が教育の役割をいかに果たすのかを社会に提示していく」と意欲を示した。

 社会学部は定員220人。コミュニティデザイン学科と現代社会学科を設ける。現在の社会学科で展開する、フィールドワークを通して地域社会の課題解決や活性化を推進するプロジェクト「コミュ・ラボ」をカリキュラムの中心に置き、実践力、問題解決力のある学生を育成する。

 志藤修史・社会学科教授は、地域に根差した学びを特色にするとしたほか、「人口減や過疎に直面している卒業生の寺院とも連携し複数学部への構想を述べる木越学長(右から2人目)と宮﨑健司副学長、志藤社会学科教授、関口敏美教育・心理学科教授(右から) 、課題解決に向けて考えていきたい」と語った。

 教育学部は定員130人。教育学科のみ。新しく保育士や、保護者の心のケアも行う大谷保育協会の認定資格・保育心理士を養成するコースなどを設ける。現代社会の問題解決に向けては、幼少期の教育から見直す必要があるという認識のもと、他者との共生の重要性を示すことのできる人材を育てる。

 新学部の設置にあたって、木越学長は「ニーズに合わせた学問分野を展開するのではなく、しっかりとした価値観やビジョンに基づき、学部、学科を公開する必要がある」と強調した。

 新学部でも大谷派教師資格は取得可能。現行の1学部9学科から3学部9学科となるが、人文情報学科は廃止する。同学科の要素は社会学部にもたせる予定。1学年の入学定員は、教育の質を保持するため現行の745人から増やさない。

 同大は1665年に設立された東本願寺の学寮が起源。初代学長に清沢満之が就任し、近代的な学制をとった1901年以来、100年以上にわたり文化系単科の体制を維持してきた。新学部が設置される2018年4月に、建設中の新校舎「慶聞館」が、今秋の一部運用開始を経て全面オープンする。

2016/7/28 第50回仏教伝道文化賞決まる 本賞に石上善應・大正大学名誉教授 沼田奨励賞に松下功・東京芸術大学副学長

  公益財団法人仏教伝道協会(沼田智秀会長)は19日、第50回仏教伝道文化賞・沼田奨励賞の選定委員会を開き、仏教伝道文化賞に石上善應氏(87、大正大学名誉教授、淑徳短期大学前学長)、沼田奨励賞に松下功氏(65、東京芸術大学副学長)を選定した。贈呈式は10月5日に東京・芝の仏教伝道センタービルで執り行われる。

 仏教関連の研究や論文、美術や音楽、仏教精神を基に活動する実践者など、幅広い分野で仏教精神と仏教文化の振興と発展に貢献した人物や団体を顕彰する文化賞。沼田奨励賞は、今後の仏教伝道を通じた文化活動の振興が大いに期待できる人物や団体に贈られる。

 本賞の石上氏は、インド説話研究の第一人者で、仏教の文化・美術に造詣が深く、一般人を対象に原始経典から浄土経典まで、放送・講演・執筆等を通じた幅広い仏教伝道活動を行ってきた。また韓国の研究者などと交流が深く、国際学術振興にも寄与してきたことが評価された。

 奨励賞の松下氏は、日本の現代音楽の代表的な作曲家で、東洋的情緒を持った作品があり、日本の各種伝統芸能や声明とのコラボレーションなどで仏教精神を感じさせる現代音楽を開拓してきた功績があり、今後のさらなる活躍が期待される。

 仏教伝道文化賞には賞金300万円、沼田奨励賞には200万円と記念品が贈られる。

受賞者の声

驚きと共に恐縮…石上善應氏石上氏
 第50回仏教伝道文化賞を受け、驚きと共に恐縮している次第です。考えてみれば、自分の好きな道を自分なりに歩み続けてきただけでしたから。私は仏縁に支えられて、多くの方々と出会い、教えを受けながら今日まで続けることができました。まことに有難い限りです。今は私が大事にしている言葉があります。それは鎌倉時代を生きた法然の言葉です。
 「たとい余事をいとなむとも、念仏を申し申し、これをする思いをなせ。余事をしし、念仏すとは思うべからず」
 この言葉は私にとって、かけがえのない教えとなりました。愚直な庶民に語りかけた法然の言動を受けとめながら、今日もまた歩んで行こうと思います。

仏教に影響を受け…松下功氏松下氏
 この度の受賞のお知らせ、大変光栄に存じております。考えてみますと私はいつも仏教の御加護の元にいるように思います。私が生まれたのは赤坂の浄土寺の境内で、幼い頃より読経と鐘の音を聞いて育ちました。家は浄土真宗で、両親は毎朝経を唱えていました。東京藝術大学時代より仏教の教えや響きには強い影響を受け、いくつもの仏教を素材にした作品を書いてきました。
 長野・善光寺とのご縁をいただき、長野オリンピックの折にはオペラ《信濃国・善光寺物語》を作曲、数年前には奈良・薬師寺でオペラ《遣唐使〜安倍仲麻呂》を僧侶の皆さんと演奏させていだきました。板橋の安養院の平井ご住職とは30年来のご親交を得て、毎年本堂で演奏会をさせていただくなど、仏教と共に音楽生活を送っているように思います。今後さらに仏教の哲学的な思想や音楽的要素を取り入れた作品を創作していきたいと思っています。

2016/7/28 特別寄稿 時代の病理としての憲法「改正」―「改憲勢力」2/3現象が示すものとは? 守中高明・早稲田大学法学学術院教授(浄土宗僧侶)

改憲勢力「2/3」を報じる新聞各紙 国会はいま改憲勢力が3分の2となり、憲法改正発議が可能となった。安倍首相は憲法改正に言及しだした。しかも問題点が多い自民党の憲法改正草案を持ち出しての発言である。今日の状況や憲法問題について積極的に発信している守中高明・早稲田大学法学学術院教授から寄稿いただいた。 

 先の参議院選挙の結果、改憲勢力が「3分の2」の議席を獲得し、憲法改正の国会発議の条件が衆参両院で整った。しかし、自民・公明の両党は選挙戦において改憲をまったく争点化しなかった。これは明らかに両党の戦略であり、事実、安倍首相は選挙戦中には一度も改憲に言及することはなかったにもかかわらず、投開票日の夜のテレビ番組では、一転してつぎの国会から憲法審査会を本格稼働させることを明言し、翌日の記者会見では「いかに我が党の案をベースに三分の二を構築していくか、これがまさに政治の技術だ」と言い放ち、自民党による「日本国憲法改正草案」を基に改憲へむかう構えであることを公言した。

 政治目的を争点化することを意図的に避け、隠蔽することで獲得した「3分の2」という数字は、虚構の多数であり、民意を反映しているとは言えない。ましてや、理論上可能になったからと言って有権者が現政権に改憲発議へのフリーハンドを与えたわけではまったくない。

 そもそも安倍首相が「ベース」にするという改憲草案は、現代国家の憲法草案とはおよそ言いがたい非合理と錯誤に満ちたプランである。真っ先に、天皇制の問題がある。草案・第一条において「天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって」と相矛盾する規定がなされている。これは、草案前文の「日本国は〔…〕天皇を戴く国家」であるという文言と併せて読むとき、「天皇」を「国ノ元首」と定めた『大日本帝国憲法』への逆行を意図しているとしか解せない。

 第二に、第一〇二条第一項には何と書かれているか――「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」。これは、憲法によって支配者の恣意的な権力行使を制限するという立憲主義そのものの全否定である。憲法の尊重擁護義務は、言うまでもなく天皇および「国会議員、裁判官、その他の公務員」にある。憲法とは国民から政権への命令なのであり、その正反対を規定する草案の企図は、国民の隷属化にあると言わねばならない。

 第三に、現行憲法の第九条第二項を削除して「国防軍」の「保持」を導入するのはむろん最大の問題の一つだが、集団的自衛権の行使容認の閣議決定(2014年7月10日)および安全保障法制の強行採決(2015年9月19日)によって九条がすでに実質的に空文化した今、最大限に警戒すべきなのは、草案第九八条・九九条の「緊急事態」条項である。現政権は、この条項を大規模自然災害対策という口実のもとに新設しようとしているが、その内実は内閣の独裁を可能にする危険極まりないものである。「緊急事態」宣言の権限は内閣総理大臣にある。

 そして、宣言下において「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定」することができ、何びともその「指示に従わなければならない」。しかも、宣言下において「衆議院は解散されないもの」となり議員の任期は特例措置とされる。これは一内閣に立法権を無制限に与える条項であり、宣言が発せられた瞬間から三権分立はその機能を停止し、紛れもない独裁政治が可能となる恐るべき条項なのである。

 その他、「表現の自由」(そこには宗教的言論・結社も含まれる)という基本的人権を「公益及び公の秩序」を理由に制限するなど、改憲草案の危険性を挙げていけばきりがない。

 このような問題だらけの草案であってみれば、仮にどの条文が国会発議されても、賢明な国民は国民投票でそれを斥けるだろうと誰もが期待する。しかし、経済格差が広がり、社会福祉が縮小され、「自己責任」の名のもとに弱者が切り捨てられ、そして東アジア情勢の緊張が誇張されて喧伝される中で、日本人は今、かつてない不安に陥っている。そのような状況下で、「強い」国家像、「強い」権力像を提示されたとき、はたしてすべての国民が理性的判断をし得るだろうか。安倍政権が「取り戻す」と言う日本、「この道しかない」と言うその将来像は、それ自体、脆弱化した国家とその政権担当者がみずからの窮地から脱出するために夢想する危険な病理である。

 それはまさに、かつてヴェルサイユ体制のもとで弱体化したみずからを「第三帝国」として復活させようと企てたナチス・ドイツを想起させる。私たちはだから、過去の教訓に学び、絶対に同じ過ちを犯してはならないのである。
………………………
もりなか・たかあき/1960年東京生まれ。早稲田大学法学学術院教授。専門はフランス文学・思想・哲学。浄土宗専念寺前住職。著書に『脱構築』『法』(ともに岩波書店)、『存在と灰』(人文書院)、『終わりなきパッション』(未来社)など。

2016/8/4・11 WCRP日本委〝核兵器使用は違法〟セッション 破滅の道か、いのち輝く地球か

 国際司法裁判所(ICJ)が1996年、核兵器の使用または使用の威嚇は一般的に違法であり、あらゆる国家は核兵器の完全軍縮を達成する義務を負う、とする勧告的意見を発表してから20年。(公財)世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は2日、東京・渋谷の国連大学で「核兵器廃絶に向けた国際特別セッション―ICJの勧告的意見から20年」を開催。被爆者や市民団体、政治家などの代表者らと宗教者が核廃絶に向けて意見発表した。約80人が参加した。 田中氏(右端)の被爆体験に聞き入る出席者


 主催者を代表して杉谷義純日本委理事長(WCRP/RfP国際軍縮・安全保障常設委員会委員長)が挨拶。「20年前に画期的な勧告がありながら、核兵器廃絶は困難の連続であった。RfPの委員会でも精力的に取り組んできた。NPT再検討会議には提言やシンポを通じて実りある成果を見つけるべく努力をしてきたが、充分な結果は得られなかった」と進展がないことを憂慮する一方で、「国連では核兵器禁止条約(制定と締結)の気運が盛り上がり、現実のものになろうとしていけば、これを契機に核廃絶への大きな弾みがつくことが期待されている」と希望を口にした。


 被爆者証言では、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)事務局長の田中煕巳氏が長崎での被爆で親族を相次いで亡くした体験を話した。また84歳という年齢と共に運動として掲げている一節「人類は破滅の道を進むのか、それともいのち輝く青い地球を目指すのか、岐路に立たされている」を紹介し、核廃絶を迫った。(続きは8月4・11日合併号紙面をご覧ください)

2016/8/4・11 全国仏教保育福島大会 原発被災地でフィールドワーク ふくしまで生命尊重考える

  第34回全国仏教保育福島大会(主催=((公社)日本仏教保育協会)が7月30・31両日、「合掌の姿に花は咲く 被災地(ふくしま)で学ぶ生命尊重の保育」をテーマに郡山市内のホテルで開催され、約650人が参加した。開会式では東日本大震災・原発事故の被災地で開催する意義を、参加者全員で共有。2日目には原発事故被災地フィールドワークバスツアーが実施され、約120人が川俣町と飯舘村を訪問した。今大会に約650人が参加。開会式では被災地での開催意義を共有した

 強制避難区域になった飯舘村の除染は国の直轄で実施され、来年4月1日に避難解除になる予定だ。フィールドワークは、地元の講師3氏の現状説明を聞きながら進行。参加者は、除染で出た土砂などの放射性廃棄物が詰まったフレコンバックの山と、それらとは対照的に美しい福島の山野を目の当たりにした。

 葛尾村議会議員の松本静男氏は、「町村が除染すれば住民から見える場所に除染廃棄物は置かず、遮るフェンスも作る。国は除染物を便利な目につく農地などに置き、フレコンバッグの山の上にブルーシートを被せるだけ。地域住民が故郷の家に帰れる状況ではない。復興予算からは、公共事業にばかり巨額の金が流れる仕組みになっている」と語った。美しい山野と放射性廃棄物の山。相容れない情景を目の当たりにした(飯舘村 7月31日)

 川俣町議会議員の菅野清一氏は、「福島県内(の復興事業)は原発を作った3社が中心に請け負っている。まさに〝作って儲けて壊して儲けて、笑いが止まらない〟という現状だ」と批判。「巨額の除染費用もゼネコンに流れ、地元には入らない。福島県全体で除染費用が5兆1千億円と言われている。だが除染が終わっても、線量が下がったから安全だというわけではない。若い人はすでに郡山や福島に家を建てていて、多くの人が(故郷に)戻らないと言っている。たとえ戻ったとしても、20~30頭の猪の群れや猿、放射能、国との戦いが始まる」と述べた。

飯舘村に戻りたい

 飯舘村の農業を支えた栄養価の高い土壌は除染ですべて剥ぎ取られ、代わりに山から運ばれた砂が敷かれた。農業再開には土作りから始めねばならず、農地に戻すには10~20年はかかるという。人々と共に暮らしていた家畜は殺処分された。

 飯舘村の豊かな自然から、住民が長い時間をかけて育んできた営みが奪い去られた。「原発地区はどこでも同じ。一度、事故が起これば、どこもこうなる」(菅野氏)(続きは8月4・11日合併号の紙面をご覧ください)

2016/8/4・11 緊急寄稿 相模原市福祉施設19人刺殺事件の背景を問う さまざまな「ひと」をどう考えるか 清水海隆・立正大学社会福祉学部学部長(日蓮宗僧侶)

  7月26日、神奈川県相模原市緑区の社会福祉施設で19人が刺殺された残忍な事件が起きた。逮捕された容疑者は障がい者の人権を無視するような言動を繰り返していた。事件はさまざまな問題を現代社会に投げかけた。社会福祉を専門とする立正大学福祉学部長の清水海隆教授(日蓮宗僧侶)に、仏教の観点から緊急寄稿いただいた。

 社会福祉施設で悲惨な事件が起きてしまった。7月26日未明、神奈川県相模原市にある知的障がい者を主とする障害者支援施設(定員160名)にて、元職員による利用者殺傷事件が起き、死者19名、重軽傷者26名という痛ましい被害が発生している。犯人の自首を受けて警察が捜査中であり、事件の詳細についてもマスコミが日々報じてはいるが、犯人の動機や背景に何があるかは、未だ明確にはなっていない。しかし、この事件の第一報に接した時、約20年前に神戸市内で発生し、児童2名が犠牲となった神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇聖斗事件)を思い起こしたのは筆者のみであろうか。家族で献花に訪れるなど、やまゆり園前には献花者が相次いだ(7月30日午前)



非人間的な障がい者観

 この事件によって、すでに現時点でいくつかの問題点が指摘されている。社会福祉従事者養成の内容に関する問題、入所型の社会福祉施設の安全性・防犯対策の問題、措置入院の解除問題等々がその主なものと言えよう。そして、その背景にあるのは犯人が書き記した非人間的な悪意に満ちた障がい者観であろう。

 まとめれば、「障がい者は不幸を作ることしかできない存在であり、保護者や施設職員は疲れ、生気のない様子である。自分は日本と世界のために障がい者四七〇名を抹殺できる。二六〇名を抹殺して自首する」という実に不愉快な考えであり、前近代的な優生思想を思い起こさせるものである。

 さて、すべての問題を検討する能力も紙幅もないので、以下では人材養成や啓蒙活動という「ひと」に関する部分について触れてみたい。

 わが国は2年前に「障害者権利条約」を批准し、国際的な基準にしたがって障がい者の人権を保証することを明らかにしている。また国内法整備の一環として今年度「障害者差別解消法」が施行されている。このような状況下で福祉施設職員が先のような障がい者観を持つに至ったということは、一面において社会福祉従事者養成の内容的不備を示唆していると言えるのである。

 すなわち、社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士等の養成教育・国家試験はテクニカルな内容に偏りがちで、人間観や社会観に関するカリキュラムが十分には組み込まれていない。その結果、特に20代前半で資格を取得する初任者層においては、人間や社会に関する福祉哲学的理解が不十分であり、また、施設内外での研修項目として取り上げられる機会も少ないため、成熟化の機会も与えられておらず、誤った情報や思考を修正するチャンスが存在しがたいのであろう。



自己の課題として語り続けることが

 また、障がい者観・人間観は施設従事者のみが持ち、成熟させればそれで足りるものではない。わが国に暮らすすべての人々が理解し、考えなければならない課題である。もちろん課題は障がい者のみではなく、高齢者であり、性的マイノリティであり、児童でもある等々、さまざまな「ひと」の存在をどう考えるのかということに他ならない。わたしたち個々のこのような課題に対する思考が、地方を動かし、国を動かす福祉哲学となるのである。そして、福祉哲学的思考に契機を与えるのは宗教や哲学であり、その意味で宗教者・哲学者の役割には大きなものがあるのである。

 わが国の宗教者なかでも仏教者は神戸連続児童殺傷事件以降、生命尊重の教育やこころの教育の重要性を再認識し、それに積極的に取り組んできたはずであった。さらには東日本大震災以降のこころの癒やしに積極的に取り組んでいたはずであった。

 しかし、直近では宗教者なかでも最大数を数える仏教者が「三離れ」や「お坊さん便」などの社会事象に囚われている一方でこのような事件が起こってしまったことを、自己の、宗教界の、課題として真摯に反省し、時間のかかることではあるが、「ひと」の存在をいかに考えるか、有縁の人々に語り続けなければならない。事件の原因を犯人の特異性に求めるだけでは、真の問題解決にはならないのではなかろうか。

 しみず・かいりゅう/昭和27年(1952)生まれ。立正大学大学院文学研究科仏教学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。日蓮宗僧侶。立正大学社会福祉学部教授。平成26年(2014)4月より社会福祉学部長。著書に『考察仏教福祉』『仏教福祉の思想と展開に関する研究』など。

2016/8/18 日本ムスリム協会が五反田に新拠点 イスラーム理解と交流の場に

 宗教法人日本ムスリム協会(JMA、徳増公明会長)は東京・渋谷に置かれていた本部を今年4月に品川区東五反田に移転。新本部となる「日本イスラーム文化交流会館」で8日、中東のイスラーム諸国の駐日大使、日本の宗教者らの来賓、JMA関係者ら約100人が出席してテープカットとオープニング式典が挙行された。テープカット後、協会代表や在京アラブ外交団、諸宗教者らによる記念撮影

 エントランスで来賓や徳増会長らが並んで紅白のテープにハサミをいれて開館。続いて、礼拝室のある3階に移動して式典が行われた。主催者を代表し徳増会長が謝辞を述べると共に「会館実現は1952年に協会が設立されてからの夢だった。会員はじめ内外の多くの方のご理解とご協力によって実現できた」「この会館ではイスラーム文化に触れることを通して、また世界中のイスラームとの交流を通して日本人に真のイスラームを紹介し、日本とイスラーム諸国との関係強化に努めてまいりたい」と抱負を口にした。


 在京アラブ外交団理事長はじめ各国大使、日本政府代表らが祝辞を述べた。諸宗教を代表して(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の杉谷義純理事長(天台宗宗機顧問)がスピーチ。昨年4月の世界ムスリム連盟(ラビタ)との交流、今年5月の中東宗教指導者を招いての国際コンサルテーションを報告し、「イスラームが直面している問題について情報をいただきながら世界平和を探った。日本ムスリム協会にはそのたびに大変お世話になっている。その立派な拠点ができ、うれしく思っている」と祝福した。

 既存の建物を改装した会館は敷地面積が約103平方㍍(31・2坪)。1階にグッズ販売・カフェ、2階に図書館・教室、3階に礼拝室、4階に応接室を配置。諸宗教や一般市民とイスラーム文化を架橋する拠点となる。

2016/8/18 高野山大学 大阪で臨床宗教講座 東京からは一時撤退

  高野山大学(和歌山県高野町、藤田光寛学長)が昨年9月、首都圏本格進出の第一歩として都心で開講した東京サテライトキャンパス「臨床宗教教養講座」(大学院修士課程)の第1期受講生(16人)の修了式が7月29日、港区高輪の東京別院で行われた。9月から始まる次年度の同講座は、スピリチュアルケア師の養成講座(別科)を開いている大阪市内で開講。次年度の同講座受講希望者が少数だったことなどを受け、東京からは1年で撤退することになった。資格取得などに向け、東京での講座継続を希望する受講者には、来年3月まで補講を行うことも決まった。

 布教とは一線を画した宗教的ケアを行う臨床宗教師とスピリチュアルケア師の両資格が取得できる臨床宗教教養講座は、僧侶ら宗教者と看護や福祉職の従事者・経験者ら一般社会人が共に学び合う場として注目された。受講1期生のモチベーションは高く、学生増加に向けた同大の首都圏展開のスタートは上々と思われた。 

 だが高野山に本部がある同大にとって東京は遠く、意思伝達の課題や同講座専属の教職員の配置などの負担が表面化。新興分野である臨床宗教・スピリチュアルケアでは資格認定のレベルアップが著しく、それに見合う臨床実習の実施と実習先(病院・緩和ケア病棟、高齢者施設など)の確保など難題に直面した。

 主に実習先をめぐり、受講生の間で戸惑いが広がり、大学担当者との間で複数回の話し合いが持たれたという。受講後、医療・介護現場などで臨床宗教の学びを活かすには、十分な講義時間と充実した現場実習の確保が不可欠だからだ。受講者の中には、「東京なら通える」という理由で入学した人もいる。そこで東京での受講継続希望者がいる講義等に限り、補講として次年度も続けることが決まった。(続きは8月18日号紙面をご覧ください)

2016/8/18 8・14千鳥ヶ淵式典 戦後71年非戦の誓い新たに 新宗連青年会が単独主催で「平和の願い」を継承

 「8・14式典」として東京・国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で非戦と平和への誓いを新たにしてきた新宗連(新日本宗教団体連合会)の「戦争犠牲者追悼並びに平和祈願式典」。51回目の今年は第19回式典(1984)以来の新日本宗教青年会連盟(新宗連青年会)による単独主催となり、式典の精神と平和の願いの継承へ新たなスタートをきった。18教団から2500人が参列した。
式典の途中で「ふるさと」を合唱する子どもたち(14日)
 六角堂前に設営された来賓席には、大島理森衆院議長、横路孝弘元衆院議長、岡田克也民進党代表といった政治家をはじめ諸宗教教団代表などが参席し、通路を挟んだ反対側テントには新宗連加盟団体トップや幹部が着座した。

 主催者を代表して新宗連青年会の岩渕明大委員長(松緑神道大和山)が挨拶。東南アジアの戦跡地を巡拝してきたこれまでの青年会の活動と今年2月に実施したタイとミャンマーの泰緬鉄道起点であるタンビュザヤでの慰霊祭を報告しながら、「新宗連青年会の平和活動の根本には、いつも『8・14式典』の祈りがある。この式典に込められた祈りとその精神は、青年会があらゆる平和活動を展開していくときの大きな柱として受け継がれている」と強調。

 さらに岩渕委員長は、自らの東南アジア体験や沖縄慰霊の学びから「見たこと、学んだこと、感じたことなど、自らの姿と『私のことば』で、次の世代へ伝えいく」と決意を表明した。

 新宗連代表挨拶では保積秀胤理事長(大和教団)が今式典が青年会によって運営されていることに対し、「この式典は、過去から現在、そして未来へと『平和の願い』を継承する大きく力強い架け橋である」とエールを送った。(続きは8月18日号紙面をご覧ください)

2016/8/25 全日仏調査 九州全域で995カ寺被災 熊本県内は64%の寺院が

  全日本仏教会(全日仏)は23日、熊本地震における最新の寺院被災状況を発表。8月1日現在、被害が報告されていない鹿児島県を除く九州6県で995カ寺が被災し、とりわけ熊本県は64%と他県に比して被害が集中していることが改めて明らかになった。
 全日仏は今夏に加盟宗派を対象にアンケート調査を実施。35宗派から回答があり、県別に被害状況を整理。前回6月調査と比べ本堂全壊が4件から9件に増え、庫裏を含めた全壊も9件から27件と3倍に増加した。
 本堂の一部損壊は510カ寺、庫裏の一部損壊は253カ寺、附属建物の一部損壊は347カ寺に達した。
 全日仏は震災発生以降、義援金を募ると共に被災状況を考慮しながら支援金を寄託してきた。加盟団体を含む支援金総額は約3億2600万円(拠出予定額含む)。現在も協力を要請している。

2016/8/25 智積院会館 宿泊2割増 個人利用者が団参上回る 20年ぶりに宿泊者数7000人超え

  真言宗智山派総本山智積院の宿坊・智積院会館(京都市東山区)を利用する観光客が増えている。個人利用者が昨年度、団体参拝の宿泊者を初めて上回った。山内の僧侶による境内案内や朝勤行への参加などが宿泊プランに盛り込まれ、通常のホテルでは体験できない寺院らしいもてなしが人気を集めている。寺院らしいもてなしが人気を集める智積院会館

 智積院会館は1966年の建設。仏教思想にも影響を受けた京都大教授で建築家だった故・増田友也氏(1914~1981)による設計で、コンクリートの造形が特徴的だ。竣工から50年が経過し設備などは古いものの、風呂やトイレ、洗面所を改修して2013年春にリニューアルオープンした。

 近年の宿泊者数は6000人代で推移していたが、約20年ぶりに昨年度に7000人を超えた。一昨年度の6088人から約20・6%増の7341人が利用。観光などを目的とする個人の利用者数が3885人とけん引し、団体参拝で訪れる檀信徒数3456人を上回った。

 同会館の特色は、金堂での朝勤行に宿泊者が参加することだ。勤行に続いて明王殿で、祈祷も受けられる護摩供法要が営まれる。お勤めが終わると、山内の僧侶や修行僧の案内で、長谷川等伯の障壁画(国宝)や名勝庭園を拝観。案内時の僧侶による解説や、修行生活の話が好評を得ている。朝食では、食作法に五観の偈を唱える。

 清水寺などへも近く、京都国立博物館や三十三間堂もすぐそばという立地。寺社巡りを楽しむ観光客にとって、このような寺院体験は魅力となっている。(続きは8月25日号紙面をご覧ください)

2016/8/25 興正寺元住職を背任で刑事告訴へ〝架空契約〟で寺有財産流出 68億が不自然な支払い

 罷免された梅村正昭元住職側による寺有財産の巨額外部流出が明らかになった名古屋市昭和区の高野山真言宗別格本山・八事山興正寺の不法占拠問題で、宗派の特任住職(添田隆昭宗務総長)側が19日、同市内で記者会見を開いた。添田特任住職と監査人の公認会計士、代理人弁護士2氏が出席。寺有地の無断売却収入約138億円のうち、約68億円が元責任役員らの関係会社・団体等に不自然な形で支払われていたことなどから、「梅村元住職らを背任罪で刑事告訴する準備を進めている」と発表した。元住職への刑事告訴検討が発表された記者会見の席上、檀信徒有志代表が元住職の除名(僧侶資格取り消し)を求める署名615人分を特任住職である添田総長に提出(19日、名古屋市内)

 梅村元住職は在任時の平成24年3月、隣接する中京大学にキャンパス用地として貸していた寺有地を、宗派に無断で同大に138億8千万円で売却。宗派は同26年1月、「悪質な宗規違反だ」として梅村住職を罷免した。しかし罷免された後も元住職側が会計資料の引き渡しを拒否し、寺を占拠し続けているため、特任住職側が寺有地の売却収入の行方を確認できない事態に。先般の名古屋国税局の税務調査で約6億6千万円の申告漏れ(平成24~26年度)が指摘された際、元住職側によって大半が費消されていたことがわかった。

 会見では売却収入の使途のうち、主に元住職側の元責任役員らが関係する7社に支払われた合計68億2千万円について説明。コンサルタント料など様々な名目で41億9800万円を受け取った㈱日本開発研究所(日開、東京都港区)や、スイスの投資会社LACから興正寺への107億円超の融資契約に絡む支払手数料で4億8900万円を得た㈱リジェネレーション(リ社、東京都大田区)の事例など、巨額資金が国内外に設立された会社・団体等を複雑に経由する「形式上は一見合法的に見える」不可解な契約実態を解説した。(続きは8月25日号紙面をご覧ください)

2016/8/25 日蓮宗・九州教区 原爆投下の長崎で死没者追善平和法要

  日蓮宗(小林順光宗務総長)と九州教区(濵田義正教区長)は2日、長崎市の平和公園と本蓮寺で「長崎原爆死没者追善供養と世界立正平和祈願法要」を厳修した。昨年の広島での法要に続く原爆追悼の祈りで、直接・間接を合わせ約20万人の長崎原爆犠牲者をはじめ、広島原爆など戦没者諸精霊を供養した。終戦から71年を迎えて当時を知る人がだんだん少なくなる中、いのちの尊さを改めてかみしめ、法華経精神に基づく世界平和を作りたいという小林総長の想いが象徴された法要となった。1954年、原水爆禁止の祈りから始まった立正平和運動はこれからさらに羽ばたいていく。



青年僧たちによる唱題行脚原爆投下のあの日(8月9日)と同様に、朝から青空が広がった2日。平和式典のため改修工事中だった平和公園に数多くの僧侶、檀信徒が集った。最初に祈りを捧げたのは原子爆弾無縁死没者追悼祈念堂。ここは原爆で犠牲になった身元不明者の遺骨や、氏名がわかっていても一家全滅などで引き取り手がない無縁仏らおよそ9千柱が祀られている。1954年に当時のインド首相、ジャワハルラール・ネールが長崎市を訪れ、日印友好、原爆死没者慰霊、世界恒久平和を願い寄贈した仏舎利も奉安されている。全国から花や折鶴が多数納められている中、日蓮宗も花輪を献じ、原爆犠牲者を追悼した。


 続いて、平和祈念像の前に移動し直立不動のまま合掌して読経。平和祈念像には「右手は原爆を示し左手は平和を 顔は戦争犠牲者の冥福を祈る 是人種を超越した人間 時に佛時に神」という制作者の北村西望氏の思いが込められている。その思いに立脚し、一同は手を合わせ世界中の平和を祈念した。
無縁死没者遺骨と仏舎利に向かい読経
 そこから全国日蓮宗青年会(藤井教祥会長)と長崎県日蓮宗青年会(森慈弘会長)による唱題行脚がスタート。約100人の青年僧が平和祈念像の前に整列し、「南無妙法蓮華経」の題目旗を先頭に2ルートで本蓮寺を目指した。団扇太鼓の轟きが、炎天下の約3キロの道のりに響いた。道中、手を合わせる高齢者たちも多数みられ、「毎年ありがたいことです」と語っていた。

 行脚は毎年夏に長崎青年会が檀信徒と共に行っている。「水を、水を」とうめき声をあげながら死んでいった人々の渇きを安らげんとする平和の泉、無数の死んだ母子を弔う平和の母子像、街角の小さな地蔵、それに原爆の熱線が直撃したため片側のみを残す山王神社の一本足鳥居など、様々な慰霊モニュメントを過ぎ哀悼の願いを捧げながら、午前11時前に本蓮寺に到着した。(続きは8月25日号紙面をご覧ください)

2016/9/1 仏教看護・ビハーラ学会第12回大会 妻の看取りを僧侶が語る

本願寺聞法会館で開かれた大会に延べ約250人が参加した 医療従事者や僧侶らでつくる「仏教看護・ビハーラ学会」の第12回年次大会が8月27・28日、京都市下京区の浄土真宗本願寺派聞法会館で開かれ、ビハーラの提唱から30周年にあたって田宮仁会長が講演し、ビハーラの考えを捉え直す意見を示した。「いのちを啓く―遺族・医療福祉従事者・仏教徒からの提言」をテーマにシンポジウムも行われ、会員ら延べ約250人が参加した。

 ビハーラは、仏教を背景としたターミナルケア施設の呼称で、仏教ホスピスに代わる言葉として1985年に田宮会長が提唱。兄・田宮崇氏が理事長の長岡西病院ビハーラ病棟(新潟県長岡市)や本願寺派のあそかビハーラ病院(京都府城陽市)などが開設された。病院にはビハーラ僧が従事する。活動は全国に広がり、その理念は臨床宗教師の誕生にもつながっている。現在の会員数は個人が218人と病院や寺など4団体。

 田宮会長は27日、「ビハーラ提唱から30年、今、考えていること」と題して講演。これまで述べてきたビハーラについての考えは、近代科学をベースにした枠組みの中での発言で、「ビハーラの考え方を自己否定せざるをえない」との見解を述べた。

 福島第一原発事故が「想定外」と位置づけられたように、近代科学は人間のコントロールの埒外に及んだと指摘。これからは、科学が支配する価値体系の中から仏教の役割を導くのでなく、仏教に基づいたターミナルケアのあり方などを考えるべきだと訴えた。

 この後、臨床宗教師の養成に携わる鍋島直樹・龍谷大教授が司会を務め、「仏教を背景とした看取り」と題してシンポジウムが開かれた。遺族の大柳満之・龍谷大理工学部長、看護師の河野由美・畿央大教授、医師の波江野茂彦・拓海会神経内科クリニック院長、僧侶の森田敬史・長岡西病院ビハーラ僧がそれぞれの立場で意見を述べた。 

 大柳教授は昨年3月末、あそかビハーラ病院で妻を看取った。乳がんの発見から半年経たずに亡くなった。抗がん剤の使用を拒んでいたため、滋賀県内の多くの病院から治療を断られ、「医療難民の地獄を味わった気がした」。(続きは紙面でご覧ください)

2016/9/1 広島から欧州、エルサレムへ「原爆の残り火」巡礼行脚 記録映画完成

遠藤住職(中央)がエルサレムで営んだ法要のワンシーン 原爆の残り火を広島から東京まで自転車で運び、欧州を経てエルサレムへ持って行く旅の記録が映画化された。「BE FREE! 原爆の残り火をパレスチナへ」の試写会が19日、京都市下京区のひと・まち交流館京都で開かれた。戦争のない平和な世界を願い、人種や宗教を超え人々と交流しようと、終戦70年を機に遠藤喨及・浄土宗和田寺住職(島根県益田市)の呼びかけで始まった40日間の旅が描かれる。

 福岡県八女市星野村で灯され続ける広島原爆の残り火「平和の火」。世界平和への願いが込められた灯火が昨年7月5日、ランプに分灯されて広島を出発。「アースキャラバン」と名付けられたイベントに、浄土宗平和協会や浄土宗ともいき財団など多くの団体が協力した。

 中継地の京都、東京ではそれぞれ総本山知恩院と大本山増上寺の境内でコンサートやマーケットなどのイベントが行われ、信仰の異なる世界各国の宗教者から平和への思いも語られた。

 欧州へは空路で渡った。メンバーの熱心な交渉で航空会社が趣旨に理解を示した。オーストリア、ドイツ、チェコ、ポーランドを巡り、ナチスの強制収容所跡では法要を営んだ。エルサレムに入り、広島への原爆投下と同日の同年8月6日、ユダヤ、キリスト、イスラム3宗教のシンボルが祀られる教会で、「平和の火」を囲んで祈りを捧げた。

 ヨルダン川西岸地区で、イスラエルが建てた分離壁を目の当たりにする。高さ8メートルのコンクリートが占領地のパレスチナ人を分断している現実が映し出される。一方で、ユダヤ人とパレスチナ人が共に暮らす共同体を訪問し、平和を望む声を聞く。

 映画を撮った鈴木聡監督は旅を通して、対立の根底に横たわっているのは宗教ではないと確信し、政治的イデオロギーとしてのシオニズムに問題があると指摘する。われわれにできるのは、問題を共有し伝えることではないかと訴える。

 試写会に来ていた高山豊希さん(31)は旅の途中に得度した。タオ療法の創始者でもある遠藤住職から学んでいた指圧修行の一環で念仏を唱えると、長年苦しんだ体のつらさが和らぎ、心が安らぐのを実感した。平和活動に携わるようになり、出家を決意した。

 オーストリアの首都ウィーンで遠藤住職に頭を剃ってもらった。試写会翌日の20日から京都で始まった教師養成道場に通い、3年かけて教師資格を取得する。高山さんは、「救いの道を説く使命と法を伝える責任を感じている」と話した。

 アースキャラバンは今年も行われている。今回は長崎から出発した。カナダを回り、8月にイスラエルを巡拝。ベツレヘムでは広島の被爆樹木の種が植えられた。9月24、25日に東京・江東区の木場公園で最終セレモニーが行われる。

 映画は10月29日から11月4日まで、京都市中京区の立誠シネマで上映される。問い合わせはアースキャラバン(電話075―551―2770)。

2016/9/1 「エンディング産業展」来場僧侶からコメント 散骨や簡素な葬儀にも理解

生前葬のデモンストレーションも行われた 東京ビッグサイト(江東区有明)で8月22日から24日まで開催された「エンディング産業展」。葬儀、埋葬、供養など終活に関する約300の業者がその設備や機器、サービスで新しいエンディングの形を提案する展示会は、初日が台風で出足が遅かったものの、3日間で2万2500人が来場した。このなかには葬送を担ってきた僧侶の姿も多数あったが、エンディング業界最前線にどんな印象を抱いたのか。

 美坊主コンテストや供養女子コンテスト、華やかな花で彩った祭壇では有名漫画家による生前葬。各種イベントも賑わい、人生の終焉がテーマの展示会とは思えないような明るい雰囲気が会場を包む。

 一方で僧侶向けのセミナーでは、檀家制度の廃止や送骨サービス開始などで話題となっている見性院(埼玉県熊谷市)の橋本英樹住職、未来の住職塾を開く松本紹圭氏が「これからの寺院運営」について提案。会場には真剣な表情の僧侶の姿。過疎化が深刻だという島根の本願寺派僧侶は寺院運営が厳しいため東京に出て僧侶派遣の仕事で収入を得ていたが、「10件やればその半分はその後の法事も頼んでくれた。そこから宗教心を深めてもらわないとね」と話す。展示会を眺めながら「演出なんかをみても、死の香りというか、悲しみの感じはないんだねぇ」とポツリつぶやく。

 大阪から来た真言宗僧侶は、こうした展示会にも積極的に足を運ぶそうで、「お坊さんの世界にいるとそこだけの情報になってしまう。一般のニーズを知りたい。何を求めているのか。どこまで許容できるか。その兼ね合いです」とのこと。「散骨」には否定的な僧侶もいるが、「自然に還りたい、という気持ちはわかる。私もできれば沖縄の海に…。年を取れば考えも変わるんだろうけど」と密かな思いも。遺骨をダイヤモンドにする手元供養なども理解はできるが「宇宙葬はやり過ぎ?」と線引きする。(続きは紙面でご覧ください)

2016/9/8 第8回IPCR国際セミナー 東北アジアの平和構築を討議 日中韓宗教者80人が参加

植松氏(右から2人目)の基調発題にコメントするKCRPのキム・グワンジュン事務総長。左端は発言に聞き入る庭野会長(9月2日) 世界宗教人平和会議韓国委員会(KCRP)の外郭組織である宗教平和国際事業団(IPCR)主催のもと、日本・中国・韓国の宗教指導者や研究者らが東北アジアの平和について討議する第8回セミナーが2日から3日間、横浜市の立正佼成会横浜普門館で開かれた。約80人が参加したセミナーのテーマは「東北アジア平和共同体構築のための課題」で、5つのセッションが行われた。政治的には種々の問題を抱えているが、「人と人との関係」に着目しつつ、平和と和解について議論した。

 初日(2日)はオープニングセッション。平和の祈りで開幕し、庭野日鑛・日本委会長(立正佼成会会長)が歓迎の挨拶を述べた。庭野会長は、故中村康隆浄土門主の「中国は父なる国、韓国は母なる国」との言葉を紹介し、「私たちの先達は古くから文化・経済・社会的な交流を密にし、相互の信頼を培ってきた。血の通い合った父母・兄弟ともいえる関係を取り戻し、発展させていくことが私ども宗教者に課せられた重要な役割ではないか」と喚起した。

 中国委員会(CCRP)のヤンジュ法師(中国仏教協会副会長)は、「われわれはみな同じアジアで生活し、互いに依存し、平和を共有し発展をし合い、その運命は関わり合っている」とし、「中日韓は互いに引っ越しができない隣国同士。善隣友好、ウィン・ウィンは私どもにとって正しい選択である。善隣が平和であれば、ちょっとした衝突があっても問題は解決できる」と期待を込めた。

 今回のセミナー主催者でもあるKCRPのキム・グワンジュン事務総長(聖公会神父)は会場を準備した日本委に感謝。セミナーテーマに沿いながら、北朝鮮の核実験とミサイル発射をはじめ韓国政府のTHAAD(サード、高高度防衛ミサイル)配備決定、日韓の慰安婦や竹島問題、日中の問題を指摘し「北東アジア状勢は非常に危うい状況」と憂慮。他方、「こういった危機であればあるほど、われわれ宗教者の役割は重要となる。なぜなら宗教というのは国家や人種、理念を超えて人類普遍の平和を志向するという共通点を持っているからだ」とし、「信仰に基づいた平和への理想と希望がわれわれにはある。それへの追究が限界を克服してくれるであろうと信じている」と前向きに発言した。(続きは紙面でご覧ください)

2016/9/8 九州大学仏教青年会、引っ越しへ―大学のキャンパス移転に伴い

取り壊しが決まった学生寮の九大仏青会館 今年創立110周年を迎える一般社団法人九州大学仏教青年会(福岡市東区千早)が運営する学生寮「九州大学仏教青年会館」が大学のキャンパス移転に伴い、引っ越しすることが分かった。現在の学生寮は今年中に取り壊される予定だ。

 九州大学は、箱崎地区などにある複数のキャンパスを統合し、福岡県内の福岡市西区・糸島市にまたがる新キャンパス(伊都キャンパス)への移転を進めている。

 九大仏青では、通学が不便になることや建物が築47年を経過し老朽化していることから、「千早地域での寮運営はこれ以上困難」との結論に至り、移転を決めた。一方で、学生寮に隣接する「九大仏青クリニック」は建て替えのみで現住所のまま存続の方向だ。

 現在、新キャンパス周辺で候補地を選定中で、九大仏青が代々受け継いできた地域活動が移転先でも行えるように学生らの準備が始まっている(紙面に関連レポートあり)

2016/9/8 全国教誨師連盟創立60周年記念式典挙行 虐待阻止など宗教界に期待

被収容者の信教の自由を守り更生を助ける役割を再確認した 公益財団法人全国教誨師連盟(大谷光真総裁、近藤哲城理事長)は6・7の両日、創立60周年記念式典を新宿区の京王プラザホテル東京で開催し、全国から約750人の教誨師や矯正関係者が参加した。テーマは「希望へ!生き抜く力の発見」で、現代社会に宗教心が希薄になっていることを憂慮、救いの光のために努力と研鑽を重ねることを誓った。

 大谷総裁(浄土真宗本願寺派前門)は式辞で「今日の社会状況に目を向けますと犯罪件数は減少しているものの、児童虐待や相模原事件など弱者をターゲットに命の尊さを根底から覆す事件が発生しております。そうした中において社会全体の心の豊かさを取り戻すために宗教者としての役割の重要性を深く感じるものであります」と述べ、矯正施設被収容者らの信教の自由を守り更生の一助にもなる教誨師の一層の発展を期し社会の要請に応えたいとした。

 法務大臣表彰(25人)、日本宗教連盟理事長表彰(12人)、全国教誨師連盟総裁表彰(24人)が行われた後に来賓祝辞。(公財)日本宗教連盟理事長の植松誠氏(日本聖公会首座主教)は民間の宗教者が篤志で更生を促す教誨を「国や行政では担えない大変尊い活動」とし、被収容者の多様化が進んでいる現代では女性教誨師や外国人被収容者のための教誨活動も望まれていると期待した。

 基調講演として、法務省矯正局長の富山聡氏が矯正施設の現状を説明。2014年の一般刑法犯検挙者約25万人のうち、13万人は初犯で12万人は再犯だとデータを示し、ここ20年で初犯者は減少したが再犯者はさほど減少していないと今後の課題に挙げた。そのため、薬物依存からの更生プログラムや、高齢だったり障害を有する収容者に対する福祉支援の充実、少年院での就業支援の必要性を強調。被収容者は「誰かの役に立っている、世の中に頼りにされている、そういう気持ちにならなかったら立ち直れない」との思いがあると伝えた。

 記念講演は2人。杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏は「子ども虐待防止と臨床法医学」をテーマに、これまで診断してきた数々の子どもたちの生々しい傷跡を紹介した。虐待は連鎖するとして「子ども虐待というのは親(大人)と子、両者のSOS」と語り、DVも高齢者虐待も子ども虐待もまとめて対処しなければ解決にならないと指摘。「日本にはものすごい仏教界という大きな団体がある」と述べ、被虐待者の電話相談や物品支援などの実践的な寄り添いをしてほしいと期待した。東京大学名誉教授の姜尚中氏は人間は何歳になっても反省し変わり得ることを語った。

 全国教誨師連盟は1956年の第3回全国教誨師大会で設立された。初代総裁は大谷光照・西本願寺第23代門主。

2016/9/8 真言宗各派総大本山会、今年の訪中団を見送り 青龍寺側との溝深まる

 京都市東山区の真言宗智山派総本山智積院で1日、真言宗各派総大本山会(各山会、芙蓉良英代表総務)の常任委員会が開かれ、毎年実施している中国・西安市の青龍寺に参拝する訪中行事を今年は見送る判断が示された。芙蓉代表総務と青龍寺の寛旭住職が6月に会談し、交流継続の意思が確認されたが、今年の訪中行事を担当する輪番寺院が難色を示した。昨年訪中した際の青龍寺側の配慮に欠けた対応や緊張が高まっている日中関係を背景に、会談によって埋まったかに見えた溝は深まっているようだ。

 今年の輪番寺院は、教王護国寺、醍醐寺、仁和寺、大覚寺、泉涌寺、善通寺、随心院、勧修寺。常任委で泉涌寺の藤田浩哉寺務長が輪番8カ寺を代表し、「数年前から訪中団がスムーズに行えていない。新たな受け入れ態勢を青龍寺が整えるということだが、もう少し様子を見たらどうかとの意見もあり、今年は遠慮したい」と辞退する意向を述べた。

 訪中行事は昨年で30回を数えた。檀信徒らと訪中団をつくり訪問しているが、近年の日中関係の悪化を受け、檀信徒の参加者数も減少している。こうした状況の中、昨年の輪番だった長谷寺は訪中を辞退。代わりに各山会事務局が訪れた。

 昨年の訪中時に、青龍寺の寛旭住職が不在という事態が起きた。維持管理費などとして納めている奉納金の受け渡しも慌ただしく済ませ、これまでに奉納した写経を確認したいとの要望も拒否された。

 こうした青龍寺の対応を各山会が問題視。訪中行事の中止を含めた今後の方向性を協議しようと、芙蓉代表総務は高野山真言宗蓮華定院(和歌山県高野町)で6月、寛旭住職と会談した。日本語が話せる信者を寺に置き、各山会の受け入れ態勢を整えるとして、交流を続けたいと強調した青龍寺側の希望を受け、訪中の継続が確認された。

 しかし、各山の不満は収まらず今回の中止に至った。ただし、檀信徒らから寄せられる写経については、奉納する方向で意見が一致。藤田寺務長は、「輪番寺院の責任を果たすため、青龍寺に納めに行ってもいい」との姿勢を示したが、奉納の方法は検討して決める。

 各山会は、弘法大師が恵果阿闍梨から伝法を受けた青龍寺の復興を願い、1984年に青龍寺跡地に恵果・空海紀念堂を建立。それ以降、訪中を続け交流してきたが、中国の著しい経済発展があった30年という年月が経つ中ですれ違いが起き、当時の思いとずれが生じてきた。常任委では、「訪中を継続するかどうか方針を決めるべき」といった意見が相次ぎ、今後の決断を迫られそうだ。

2016/9/15・22合併号 大本「神島開き」100年祭 兵庫県高砂市沖で聖師の神業に祈り

生い茂る木々の合間を信徒たちが埋める中、厳粛に執り行われた祭典 兵庫県高砂市沖の「神島」に退隠していたという坤の金神を京都・綾部の聖地に迎えた神事「神島開き」から今年で100年となるのを記念し、大本は8日、現地で祭典を執り行った。出口王仁三郎聖師の神格が明らかになり、教勢拡大の契機となった神事の節目に、信徒ら約570人が渡島し祈りを捧げた。

 高砂市沖南西約10㌔の播磨灘に浮かぶ神島は、上島などと呼ばれる家島諸島の一つで周囲約4㌔の無人島。兵庫県内では、台風13号の影響で局地的に大雨が降った。姫路港周辺も雨が降る中、午前8時頃に1便が出港。強風で神島の波止場につけられるか心配されたが、最終9便が到着したときには青空がのぞいた。上陸した一行は、100年前に出口なお開祖と王仁三郎聖師らが撮ったのと同じ場所で記念撮影した。

 1935年の第二次大本事件によって破壊されたお宮跡地に建立された石碑前に祭壇を設け、祭典が執行された。出口文営斎主が「神島開き百周年記念祝詞」を奏上し、道院代表として岐阜道院の大野岳恵統掌や、祭典の準備に尽力した地元はりま本苑の塩谷誠次長らが玉串を捧げた。

 中継された映像を亀岡本部で見ていた静養中の出口紅教主は、現地に参拝した気持ちになったとして、「松風の音が聞こえ、海の風の匂いがしました。無事に終えることができ、本当にありがたかったです。すがすがしい祭典でした」とメールでメッセージを寄せた。

 浅田秋彦本部長は、「神島開きを転機に、聖師さまは経典の整備、神苑の拡張などを精力的に進めた。それによって教団の盤石の基礎が築かれた」と神事の意義を述べた。

 この後、本部職員の出口飛鳥氏がシテを演じ、宝生流舞囃子「高砂」が披露された。赤土がむき出しの傾斜地を埋めた参拝者が、生い茂る木々の切れ間から鑑賞した。

 父の代から100周年に期待を寄せていたという大前智行はりま本苑長(71)は、「聖師さまの心を教主さまが受け継ぎ、神島から平和を広げてくださる」と語った。

 記念祭典は10年に1度で、神島に上陸できる人数も限られるため、一生に一回の参拝となる信徒が多い。綾部の聖地なで執行される大祭で顔を合わせるうちに親しくなったという4人が、偶然にも同時に参拝できた。東京主会の野月泰子さん(52)は、「最初で最後の神島参拝にいつものメンバーと一緒に来られて嬉しい。神業を進める教主さまにお供し、お手伝いできるのが楽しみ」と気持ちを新たにしていた。

 高砂市の神島遥拝所で同時に斎行された祭典に、今回渡島できなかった信徒約420人が参拝した。

 艮の金神、国常立尊の妻神である坤の金神、豊雲野尊の神霊を迎えた神島開きは大正5年(1916)、3回にわたる渡島によって行われた。3度目(旧9月8日)に出口なお開祖が、王仁三郎聖師の神霊がみろくの大神との神示を受けたのをきっかけに教団は大きく発展していった。

2016/9/15・22合併号 本門佛立宗・本山宥清寺 髙須日良講有が晋位晋山

行道でお練りする髙須講有 本門佛立宗の第26世講有、本山宥清寺第67世住職に就任した髙須日良講有(75)の晋位及び本山晋山の式典が8日、京都市上京区の同寺で厳修された。髙須講有は諭告で、「下種のお題目をお弘めすることが世界に安穏をもたらし、先師先聖への大恩報謝のご奉公となる。本日を契機として信心改良に奮起し、三祖の御本意に叶うご奉公に精進されんことを」と参列した全国有縁の教講に呼びかけた。

 当日は朝から激しい雨が降ったが、式典に合わせるように降りやみ、行道を組んだ高須講有のお練り行列が予定通り行われた。式典では、高須講有が晋位晋山と結願の言上を奉読し、開導日扇聖人をはじめ諸先師先聖に大恩報謝の奉公を誓った。

 式典の執行長を務めた木村日覚宗務総長は、「開導日扇聖人ご生誕二百年慶讃御奉公」や「佛立開花運動」の円成に向けたこの時期の晋位晋山は「正しく佛祖のお計らいと銘肝、感激おく能わざるもの」と祝った。

 髙須講有は諭告で、4月に発生した熊本地震で被災した経験を語り、被災地の復興を念願。宗内外からの支援に「教講一体となってご奉公を進める佛立の絆の強さに深く随喜、感謝いたしました」と感慨を述べた。

 開導聖人御指南の「妙法蓮華経の極意は人を助けんと行ずれば我身をたすかると云う菩薩行也」を引き、「その御教えの精神を体する佛立信徒が世界に増え続け、声高に口唱の音声が満ちる時、この娑婆に佛国土が実現されると私は確信いたします」と話した。

 その後、宗門や本山信徒代表、宗会、宗務支長、全国教務・信徒の各代表が宣誓や祝詞を述べ、祝意を表した。前講有の山内日開氏には木村総長から功労金が奉呈された。午後は市内のホテルで祝宴が執り行われた。

 髙須講有は昭和15年台湾高雄市生まれ。昭和35年に熊本市長薫寺で得度。昭和45年に長薫寺住職に就任。宗内では、教学講師、教務局長、出版局長、弘通局長等の要職を歴任した。

2016/9/15・22合併号 共生特集2016 動きだしたSDGs―持続可能な地球のために

 西暦2000年から2015年まで国際社会が取り組む共通課題としてミレニアム開発目標(MDGs)が設定され、昨年達成期限を迎えた。貧困・飢餓や初等教育、HIV/エイズなど大きく8項目が掲げられた。発展途上国の貧困削減や教育の改善など成果はあったが、残された課題は多い。


 1年前の昨年9月、「国連持続可能な開発サミット」が開れた。そこで採択されたのが、向こう15年間の目標「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」である。


 MDGsに代わる新たなSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)は、貧困の撲滅やジェンダー平等、地球環境にかかわる海洋資源の保全や陸の生態系保護など17項目の目標と、それを細分化した169のターゲットで構成されている。8項目21ターゲットの MDGsに比して大幅に増えた。

 SDGsはMDGsを継承しているものの、特徴がいくつかある。『SDGsと開発教育』(学文社)によれば、5つあるという。そのうち二つを紹介する。


カンボジアで活動するシャンティ国際ボランティア会の識字教育で学ぶカイレーンさん(撮影・川畑嘉文)同会の活動レポートは紙面をご覧ください〈第一は、「貧困の解消」と「環境の保全」という「2本柱の統合である」。MDGsが達成しようとしてきた貧困削減に関する目標と1992年の地球サミット以降の気候変動や生物多様性といった環境保全に関する目標の両者が統合された。つまり貧困削減と環境保全は不可分の関係にあり、両方とも同時に解決していかなければならないことがSDGsによって合意された〉

先進国も対象

 17の目標にはこのことが明確に示されている。第2の特徴としてあげているのが、「開発途上国だけではなく先進国も対象としているという『普遍主義』である」として、次のように続ける。

〈SDGsには、女性の権利(目標5)、エネルギー(目標7)、雇用(目標8)、格差(目標10)、防災・減災(目標11)、持続可能な生産と消費(目標12)といった、日本を含む先進国にも大いに関係がある課題が掲げられている〉(続きは紙面でご覧ください)

2016/9/15・22合併号 共生特集2016 自然農法国際研究開発センター 岡田茂吉の思想を具現化

ナスの生育状況を説明する岩堀次長 EM(有用微生物群)を活用した自然農法が国内外に広がっている。健康志向から家庭菜園でも人気だ。世界救世教いづのめ教団(本部・静岡県熱海市)は教団として自然農法に取り組んでいるが、外郭組織である公益財団法人自然農法国際研究開発センター(伊藤明雄理事長)は、専門的に推進している。その拠点となるのが長野県松本市に有している農業試験場だ。研究や諸事業を通しての自然農法普及の最前線を取材した。

◆ ◆ ◆

 北アルプスを遠望する松本市波田地区に農業試験場はある。この周辺は火山灰の土であるため水はけがよく、スイカ産地として知られている。
 昭和60年(1985)、自然農法国際研究開発センターが財団法人として設立され、5年後の平成2年(1990)にこの地に農業試験場(約380アール)が開設された。その中の研究開発・研修・種子の育成の3点について報告する。

■研究開発■

 研究開発は具体例から入ってみよう。稲作で重労働となるのは水田の雑草取り。昔ならば田んぼに入り手で取った。いまは専用の草取り機があり、労力は軽減した。それでも作業は必要で、多くの農家は除草剤を用いる。それをやめて自然農法でも可能なように研究調査と実験を進めた。その結果、「雑草を抑制するには土壌の管理が大切」と伊藤理事長。鍵になるのが稲を刈り取った後の稲わらである。「わらを田植えまでに半分以上分解させることができれば、かなり雑草を抑制できる」。

数種類の品種を実験している圃場「試験田ではだいぶ雑草を減らすことができ、無除草でもできるようになりました」「収穫量は10アール(1反歩)あたり8~10俵。一般の水田と遜色がないくらいです」と研究部次長の岩堀寿氏が説明する。

 土壌管理は野菜栽培でも同じだ。26種類のキャベツを植えているが、「どの種類が自然農法に適しているのかを調べています。虫がつくのは無農薬だから当然という考えがありますが、バランスが崩れているからつきやすい。むしろ健康な野菜にはつきにくいのです」(岩堀次長)

 トマトで市販品種とセンター育成品種を比較栽培したところ、市販品種は説明書のような成果とはならなかった。「一般の種子は化学肥料や農薬の使用を前提に成長するようになっているわけです」(同)と指摘する。(続きは紙面でご覧ください)

2016/9/15・22日合併号 共生特集2016 社会福祉法人佛子園「シェア金沢」 高齢者、障がい者中心の街づくり

3.6ヘクタール以上の敷地に約30の建物が並び、80人ほどが暮らすシェア金沢。放課後、道路に絵を描いて遊ぶ学童保育の子どもたちと話す奥村俊哉施設長 子どもからお年寄りまで世代を超えて集う場所。今は薄れつつある、かつての寺の役割を担う「街」が石川県金沢市にある。「シェア金沢」は、障がい者や高齢者といった社会的弱者中心の街づくりを進め、大きな注目を集めている。街を運営する社会福祉法人佛子園(同県白山市)理事長で日蓮宗蓮昌寺(金沢市)住職の雄谷良成氏(55)は、経済成長を追い求めた現代社会の先に今、「仏教が目指してきた人が支え合い縁をつなぐ教えの大切さを振り返る時代が来ているのではないか」と話す。

 約3・6㌶の敷地に、学生向け住宅8戸、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)32戸があり、約80人が暮らす。天然温泉やレストランが入る施設では、地域で採れた野菜が売られる。日用品雑貨の店は、学童保育に通う駄菓子目当ての子どもたちに人気だ。市内のクリーニング店やマッサージ店が出店し、ジャズが流れるバーで音楽やお酒も楽しめる。緑豊かな敷地内に約30の建物が並び、一つの「街」を形づくっている。

 金沢駅から約6㌔南東の国立若松病院跡地に2014年3月、開設された。住人の約40人が高齢者。そのうち半数が首都圏などからの移住者だ。健康なうちに移り住み、介護が必要になっても継続的なケアが受けられる退職者の生活共同体(CCRC)として紹介されることが多い。政府が進める地方創生の先駆的事例に挙げられ、昨年全国から約530団体が視察に来た。安倍晋三首相も訪れた。

障がい児と共に育つ

 佛子園の創設は1960年。孤児だった祖父・故雄谷本英氏が、出身地能登半島の日蓮宗本山妙成寺に入り、後に住職となった同宗行善寺(同県白山市)で大勢の戦災孤児を引き取り育てたことに始まる。

 その翌年に生まれた雄谷氏は、障がい児らと一緒に生活し成長した。墓石の下敷きになったことがある。一緒に遊んでいた近所の子は驚いて走り去ったが、重度の知的障がい児が職員を呼び助けてくれた。大けがを負い、病院へ搬送中に出血多量で心臓が止まるも一命をとりとめた。雄谷氏は、「障がいのある子どもと寝食を共にし、命までも助けられた」と現在70以上の施設を運営する原動力を語った。

 大学卒業後、障がい者教育の指導者育成に海外協力青年隊員として赴任したドミニカ共和国で、国民が幸せそうに暮らしていると感じた。「社会保障が不十分で、支え合って生きるしかない状況があった。人がつながることによって幸福感が生まれることに深く気づかされた」。帰国後、新聞社勤務を経て34歳で佛子園を引き継いだ。

多様な人の集まりがさらに多く人を呼ぶ

 シェア金沢の原型となり、ドミニカでの経験を具体化したのは、廃寺となった西圓寺(同県小松市、元真宗大谷派)で住民と共に取り組んだ地域おこしだった。かつての寺が担っていたような人の集まる場に再生しようと、2008年に「三草二木西圓寺」をオープン。温泉を掘りカフェや居酒屋となるスペースを設け、にぎわいを取り戻した。

 障がい者が働き、高齢者デイサービスも利用できる福祉施設として生まれ変わった西圓寺で、認知症の老婦が重度心身障がいを持つ青年の面倒を見るようになった。食事の手伝いをするうちに老婦は、「あの子が心配。西圓寺に行かないと」ときちんと寝るようになり、深夜徘徊が激減した。(続きは紙面でご覧ください)

2016/9/15・22日合併号 共生特集2016 NPO法人ロシナンテス 北アフリカで巡回診療 妙心寺派「おかげさま運動」が援助

スーダンの人々とレンガを掲げる川原理事長 長く続いた内戦の影響により現在も多くの課題を抱える北アフリカ・スーダン共和国で、国際NGOとして医療支援活動を行う認定NPO法人ロシナンテス(福岡県北九州市、川原尚行理事長)。

 砂漠を奔走し無医村に医療を届ける巡回診療や国連WFPと地元NGOと連携する栄養改善プロジェクト等を行うロシナンテスの活動に共感し、昨年から臨済宗妙心寺派の「おかげさま運動」も援助の手を挙げた。

 ロシナンテスの活動の中で中心となるものの一つが、月に2週間かけ、東京都とほぼ同じ大きさのハルツーム州ワッドアブサーレ区の29の村をまわる巡回診療だ。この地域には約2万人の住民が住み、出産・妊産婦検診・ワクチン接種・乳幼児検診など月平均で1686件の医療サービスを提供している。

 今年度は巡回診療区域内の無医村に診療所をつくる「土とレンガの診療所プロジェクト」が始まり、いつでも診療を受けられる待望の診療所第1号が完成。川原理事長は、「これまでの信頼関係を基に新たな支援活動を展開するためのステップになる」と期待を込める。

 現在スーダンでは、海外援助においてスーダン人の自立を目標としたスーダン人強化政策(スーダナイゼーション)が進められている。川原理事長によると、建設した診療所も保健省に引き渡し、スーダン人の手で運営する。ロシナンテスは「地域や行政と連携しながら人材育成や運営面で自立までサポートしていく」という。

 九州大学医学部を卒業し、医師の川原理事長が目の前の患者を救いたいと外務省の医務官を辞してロシナンテスを設立したのは2005年。以来、10年以上にわたる現地での活動で、情況が好転した地域が他の地域を助ける〝ペイ・フォワード〟(思いやりの循環)が起こり始めている。

 川原理事長は「プロジェクトが成功すれば、この動きは広がります。何もない所でもできることがあるというモデルになる。そうなれば他の地域や国でも展開できるはずです」と新たな支援の展望を思い描いている。

2016/9/29 卒業生が1億円寄付 大谷専修学院の新築に

 真宗大谷派の教師養成学校、大谷専修学院(京都市山科区)の卒業生でつくる「青草びとの会」(清史彦会長)は14日、学院新学舎建設費3000万円を宗派に寄付した。建設費の寄付は今回で3回目で、計1億円が贈られた。目録を受け取った里雄康意宗務総長は、「目標額を超えて寄付していただき感謝します。学院の教育環境をよりよくしていきたい」と話した。 内局と懇談した卒業生でつくる青草びとの会

 同会は新学舎建設計画を受け、2014年秋から寄付金の勧募を開始。9000万円を目標に、全国9ブロックに世話人を置き募った。卒業生の6割に当たる1700人余りから寄せられた。


 昨年4月に4千万円、今年6月に3千万円を贈った。今回で寄付総額は目標を上回る1億円となった。同派は、学院建設特別会計6億2500万円のうち1億円を寄付で賄う予定だったが、宗派の勧募金を合わせると寄付金は計1億4881万7714円に達した。

 勧募活動にあたって、同会は各教区で開く学習会「青草講」の充実を促した。清会長は、「勉強会を中断していた教区もあったため、いい勝縁になった。今後も協力していきたい」と話した。また、寄付金の贈呈に伴い内局と懇談したのを受け、「学院の教育について話し合う機会を定期的に設けたい」と意欲を示した。
 渓内弘恵前会長は、「教師養成機関は宗派の土台を築くもの。大学では行き届かない細やかな教育が学院に期待できる。卒業生同士のつながりを深めたい」として、学院の機関紙「願生」の無料配布を訴えた。

 新学舎は昨年5月、山科別院長福寺境内の旧山科学舎跡地に建設。昨年5月に着工し、今年4月に竣工した。老朽化などに伴い岡崎学舎(同市左京区)を解体し、2学舎を統合。今年度の入学者数は46人。狐野秀存学院長は、車いすに乗った卒業生が新学舎に訪れ、「これほどバリアフリー設備が整う施設はない」と喜んでいたと述べ、「卒業生一人ひとりの心が新校舎をつくった」と語った。

2016/9/29 WCRP理事会 臨床宗教師養成への支援継続「現段階で厳しい」

 公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(杉谷義純理事長)は13日、京都市右京区の花園会館で第19回理事会を開いた。各タスクフォースや部会から活動報告がなされる中で、特別報告で臨床宗教師を養成する東北大学実践宗教学寄附講座への支援要望が出されたが、杉谷理事長は予算的に例年並みの支援は「現段階では厳しい」との見方を示した。

 東北大学では、平成31年に同寄附講座を基幹講座へと移行する計画を進めているが、それまで同寄附講座が存続できるかは不透明な状況だ。講座を担当してきた同大大学院の鈴木岩弓教授が今年度で定年を迎える上、現在も来年度の講座を維持する寄付の目途が立っていない。報告の中で鈴木教授はこれまでの支援に感謝を示した上で「私の定年と一緒に寄附講座が終わると基幹講座の芽がなくなってしまうかもしれない」と支援継続を要望した。

 WCRP日本委では、東日本大震災を契機に始まった同寄附講座の開設以来、震災支援として5年間で計5千万円を支援。同寄附講座の年間予算が約2500万円であることを考えると大きな割合を占めている。

 三宅善信理事(金光教泉尾教会総長)は震災での宗教者の活動に対しては、政府や行政に政教分離の壁があり、マスコミも宗教者を取り上げないと感じることが多かったが、「東北大学のおかげでそれが変わりつつある」と臨床宗教師の活動を評価。支援の継続は日本委にとっても「公益法人としての大きな功績だ。支援ができるといい」と意見を述べた。

 杉谷理事長は予算的に「毎年支援してきたが、準備金があるわけではなく、多くの方が街頭に立って勧募したことによるもの。現在の手持ちはゼロ。私も支援には賛成だが、今この場では支援するとは言い切れない」と事情を語り、同寄附講座への支援は今後の検討課題とした。

 審議事項では、来年6月頃に東京で開催を予定している日韓宗教指導者交流や、イタリア中部地震への緊急支援、北朝鮮の核実験に関する声明文、来年1月25日開催の新春学習会(担当=女性部会・東日本及び熊本地震タスクフォース)について話し合われた。

 日韓宗教指導者交流は韓国側の要望により、「日本の宗教、特に神道についての誤解がある」として秩父神社の見学や両国の宗教事情について学び合う対話プログラムを行う案が出ている。来月のACRP40周年記念シンポジウムの際に最終的な調整が行われる予定だ。

2016/9/29 高野山宗会 総長「両事件の根は同じ」 前内局と興正寺裁判で答弁

  高野山真言宗(添田隆昭宗務総長)の第154次秋季宗会(14・15日、安藤尊仁議長)で、宗派が抱える2大裁判について集中質疑が行われた。添田総長は、宗派財政を破綻の危機に陥れた前内局による放漫財政問題と、別格本山・八事山興正寺(名古屋市昭和区)の梅村正昭元住職らによる寺有財産の巨額外部流出事件について、「密接に関連した、一連の事件」との考えを表明。「もし内局交代がなければ興正寺問題は表面化せず、我々が知らないところで正体不明の組織によって寺有財産が食い潰されてしまっただろう」と指摘し、両裁判は宗教者の社会的責任を問う事件との見解を示した。

 ハイリスクな資産運用による巨額損失の隠蔽などで宗派に総額8億7565万円の損害を与えたとして、前内局の庄野光昭宗務総長と森寛勝財務部長を善管注意義務違反で今年1月に提訴。さらに今月14日、宗規違反の寺有地無断売却で得た約138億円の大半を元責任役員らと結託して寺外に流出させたとして、興正寺の梅村正昭元住職と元責任役員らを背任・横領罪で刑事告訴した。興正寺元住職らを背任・横領罪で刑事告訴したことについて、代理人弁護士の説明を聞く添田総長㊧(15日)

 髙橋隆岱議員(東京)は両裁判について、添田内局の所信を質問。特に「(罷免された興正寺の)元住職が(前内局時代に)宗会議員を務め、宗会議長にも立候補(対立候補に敗れ、落選)していた」事実を問題視し、「いわば〝犯罪に加担した〟人物が宗政の中枢に位置する危険性もあった。寺院を乗っ取ろうとする勢力も現実に存在する。我々は危機管理をより一層、認識しなければならない」と提起した。

 添田総長は、「元住職が寺有地の(中京大学への)無断売却を行ったのは前内局時代の平成24年3月。(現内局が就任するまで)宗規違反が1年以上も放置されていた。前内局と元住職との密接な関係を疑わざるを得ない」と糾弾。前内局の放漫財政と興正寺元住職による寺有財産の巨額外部流出の「根は同じ」とし、「(宗教的な問題ではなく社会的責任を問うているので)世俗の法に基づいて判断してもらう」事件との認識を示した。

 長濱大法議員(栃木)は、「もしあのまま(〝梅村宗会議長〟が誕生し、庄野内局の施政が)続いていたら、本山・宗団は大変なことになっていた」と指摘。(続きは9月29日号紙面をご覧ください)

2016/10/6 曹洞宗臨時宗議会 愛学裁判の早期解決図る 人事部長、勝訴に自信

 曹洞宗(釜田隆文宗務総長)は4日、東京・芝の宗務庁に第126回臨時宗議会を招集。今月21日の内局改造を前に、釜田内局の成果が中間報告された。

 総長は今後の施政の展望について挨拶した。学校法人愛知学院や一部理事が曹洞宗を相手取り名古屋地裁、横浜地裁、東京地裁で係争中の民事訴訟については「法人格は異なるといえども、設立以来の歴史に鑑みれば、理事を推薦する意味、さらに推薦された理事などの宗門に対する善管注意義務は明らか」とし、訴訟代理人と密接な連携をとって早期解決を図ると表明した。

 記者会見で神野哲州人事部長は「係争中なので多くは申し上げられないが、絶対に勝つ」と明言。勝訴に自信をのぞかせた。

 旧多々良学園問題について総長は「旧学校法人多々良学園に関する協議会」が作られたと報告。当時の関係者に状況を聞き取る「聴取会」(非公開)を10月中に開催する運びとなった。5日の聴取会では破綻時の理事長だった中村見自教化部長が聴取される側として出席した。第2回聴取会は12日の予定で、内局改造前に聴取結果がまとめられる模様だ。
総長肝煎りの僧堂振興改革については、『普勧坐禅儀』『坐禅用心記』を読誦する機会と経本を掛搭僧に提供し、坐禅の根本的な意義を学んでもらうことと、けがをした時のために宗門主体で掛搭僧に傷害保険をかけることが準備中だと報告した。

 砂越隆侃議長の辞任に伴う議長候補者選挙では、有効投票数68票のうち、小島泰道議員(有道会)が62票を集め、直ちに総長を経て管長に奏上され任命となった。

 改造内局で予定されている人事は次の通り(敬称略)。教学部長=成田隆眞 財政部長=橋本壽幸(留任)教化部長=山本健善 出版部長=藏山大顕(以上總和会)総務部長=河村松雄 人事部長=松原道一 伝道部長=渡部卓史(以上有道会)

2016/10/6 日蓮宗大本山誕生寺で聖母妙蓮尊儀750遠忌宗門法要

妙蓮尊儀の御位牌を運ぶ上村貞雄住職 日蓮宗は日蓮聖人の母、聖母妙蓮尊儀(梅菊御前)の750遠忌を9月14・15の両日、宗祖生誕の地である千葉県鴨川市に建つ両親閣妙蓮寺と大本山誕生寺で執り行った。遠忌実行委員会の名誉総裁は誕生寺・石川日命貫首、総裁は妙蓮寺・上村貞雄住職。15日に誕生寺で営まれた正当法要は内野日総管長が大導師、小林順光宗務総長が施主となった宗門法要で、5年後の宗祖降誕800年に向けて宗門一丸となって不惜身命のお題目弘通につとめることを誓った。9年前の聖父妙日尊儀の750遠忌に続き、「内典の孝経」たる法華経で両親への恩に報いる大切さもかみしめた。両日でのべ千人以上が参拝した。(続きは紙面でご覧ください)

2016/10/6 浄土真宗本願寺派伝灯奉告法要始まる 大谷光淳門主「一人でも多くにみ教え伝えたい」

御影堂へと歩む大谷光淳門主(1日) 浄土真宗本願寺派の第25代大谷光淳(専如)門主(39)の就任を内外に伝える伝灯奉告法要が1日、京都市下京区の西本願寺で始まった。光淳門主は表白で「受け継いだみ教えが一人でも多くの方々に伝わるよう力を尽くしたい」と述べた。日本仏教界の各宗派管長、宗務総長や世界仏教徒連盟事務総長をはじめ約2500人が参拝し、光淳門主の門出を祝った。法要は来年5月31日までの全10期80日間営まれ、約20万人の参拝が見込まれている。(続きは紙面でご覧ください)

2016/10/13 日蓮宗比企谷妙本寺 玉川日薩貫首が晋山 御題目広布を奉告

 今年5月、日蓮宗の古刹である鎌倉市大町の霊跡本山比企谷妙本寺の第81世貫首に就任した玉川日薩氏(75)の晋山式が7日、同寺祖師堂で執り行われた。宗門関係者や檀信徒ら約200人が御題目で新貫首の誕生を祝した。

 秋晴れのなか総門前に玉川貫首および副導師が参集し、雅楽の音色を合図にお稚児さんらと共に晋山のお練りがスタート。参道をゆっくりと進み、二天門を経て祖師堂に向かった。

 祖師堂には小林順光宗務総長名代の塩崎望巳総務局長、池上本門寺の菅野日彰貫首をはじめとする池上法縁の重役らが参席。お練りと一緒に参道を上った檀信徒らが着座し晋山法要が営まれた。

 奉告文では妙本寺創建の歴史を紐解き、さらに玉川貫首自身の生い立ちに言及した上で、「寺門興隆と宗風宣揚のため、不退転の覚悟をもって歩まんことを誓い奉る」と宣言し、「高祖の肝要は唱題なり、皆帰妙法の祖願達成の一翼を担い、当山より古都鎌倉の地に御題目を広布せんと志すものなり」と続け、妙本寺を御題目発信拠点とする抱負を口にした。

 祝辞では塩崎局長が小林総長のメッセージを代読。続いて池上本門寺の菅野貫首が、出家の機縁となった玉川貫首の母の篤信ぶりを紹介し、「猊下の信仰の根底にあるもの」とし、「お母様の祈りがここに籠っている」と讃えた。そして「檀信徒の皆さま、玉川貫首のご教導を存分にお受け下さい。必ずや大きな果報がいただける」と祝意を表した。

 晋山奉告式終了後、横浜市内のホテルに移動して披露宴が盛大に催された。祝辞では、小林総長が登壇し、玉川貫首の生家が自坊妙源寺(東京・堀切)の檀家であったことを明かし、「玉川猊下のご活躍を拝見しつつ、いつか追いつきたいとの一心で精進してきたが、このような晴れやかな席でご祝辞を述べることができ、誠に光栄に存ずるところである」と述べた。

 玉川氏は昭和16年(1941)東京生まれ。東京大空襲により実父死去。東京大学農学部、立正大学仏教学部卒。立正大学大学院中退。昭和40年(1965)、鎌倉市の安国論寺の藤原日義住職に就いて出家、得度。昭和49年(1974)に安国論寺住職に。神奈川県仏教青年会、全日本仏教青年会を通じて難民支援などに携わり、BAC仏教救援センターを有志らと共に設立し初代理事長に就任した。今年2月の妙本寺80世早水日秀貫首の逝去をうけ、後任貫首に選出された。

2016/10/13 比叡山宗教サミット、来年30周年 日本宗教代表者会議が発足 森川座主「多様性認め共生を」

  来年30周年の節目を迎える「比叡山宗教サミット 世界宗教者平和の祈りのつどい」の運営を行う日本宗教代表者会議が5日に発足し、同会議名誉議長の森川宏映天台座主ら役員が同日、京都市左京区の国際会館で会見を開いた。森川座主は宗教者の役割を「神仏に社会の安寧を祈り、人々の幸せのために尽くすことが使命」と語り、来年の比叡山宗教サミットの成功に「全力を傾注する」との意気込みを語った。会見で諸宗教が集う意義について話す森川天台座主

 同会議は、日本宗教連盟協賛団体(教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、新日本宗教団体連合会、神社本庁)とWCRP日本委員会、世界連邦日本宗教委員会などの諸宗教組織の代表者で結成。

 比叡山宗教サミットは、昭和62年(1987)に前年のイタリア・アッシジで開かれた祈りの集いの精神を受け継ぎ、山田恵諦天台座主(当時)が提唱した。以後、節目となる年の開催には、諸宗教の代表者でつくる同会議が運営を担い、宗教界全体で平和への意識を高めてきた。

 森川座主は、宗教の名を借りたテロや紛争など現在の世界情勢を憂慮。「負の連鎖を打破し、世界平和を実現するためには、お互いに価値観の多様性を認め共生する必要がある」と30年目の意義を強調した。

 先月アッシジで開かれた「世界宗教者祈りの集い」に参加し、バチカン(ローマ法王庁)でフランシスコ・ローマ教皇に比叡山宗教サミットへの参加を懇請する親書を手渡したことにも触れ、「予定が合えば、ぜひ参加したいという積極的な意思を示していただいたことは非常にありがたいこと」と語った。

 30周年となる比叡山宗教サミットは、来年8月3・4両日に比叡山延暦寺(大津市)や国際会館(京都市)で開催される。全体テーマは「今こそ平和のために協調を~分裂と憎悪を乗り越えて」。

 宗教者が暴力的過激主義にどう立ち向かうべきかをテーマとした基調講演や、分科会でオバマ米大統領の広島演説を受けた核廃絶と原子力問題などを議論する。青蓮院門跡「青龍殿」での世界の戦災・災害の犠牲者を弔う鎮魂と祈りのセレモニーも予定されている。

2016/10/13 豊山保護司会が群馬県仏教保護会を見学 刑務所出所者の一時受け入れ施設 生活指導と就労支援で

 真言宗豊山派・豊山保護司会(丹治宥勝会長)は6日、前橋市の更生保護法人群馬県仏教保護会(若槻繁隆理事長)を訪問し、刑務所から出てきたばかりの人の社会復帰を支える収容保護施設の活動を学んだ。
職員の説明を受けながら施設内を見学。1部屋につき原則3人の入所者が生活し、社会復帰をめざす
 釈放後に身を寄せる場所のない出所者らを一時的に受け入れ、生活指導と就労支援で再犯防止と社会復帰に繋げる更生保護施設。大正時代初期から本格的に開始した群馬県各宗連合協会の免囚保護事業に淵源を有する群馬県仏教保護会の収容保護施設(本間ふみ枝施設長)は、県内唯一の更生保護施設で、群馬県仏教連合会(会長=若槻理事長)の約千カ寺が中心となって運営している。全国に103カ所ある同様の施設の中で、「仏教」を冠しているのはここだけだ。

 職員は僧侶ら7人。収容定員は40人(男のみ)で、入所期間は最長6カ月。通常は30人が入っているというが、現在の入所者は20人で「今年は少ない」(本間施設長)。ここで健全な生活習慣を身につけ、外で仕事をしながら20~30万円を貯める。これが社会に復帰する最初のステップとなる。

 同保護会の就労支援では、ハローワークや協力雇用主に当たって入所者の職探しをバックアップ。多くが建設・解体工事現場での派遣労働に従事していくという。本間施設長は、「更生に一番必要なのは、まじめに働くこと。でもここに来てなんとか3カ月は我慢できても、その後に昔の癖が出てしまう者もいる」と更生の難しさを指摘した。

 入居者が高齢であったり健康に難があったりする場合、仕事はなく未就労になる。こうした人に対しては福祉施設や生活保護など、福祉制度に繋ぐ支援をしている。

 更生が特に難しいのが薬物依存者で、医療機関との連携が不可欠だ。仮釈放後に再び薬物に手を出し、刑務所に戻される者もいる。本間施設長は、「ここにいる6カ月を順調に過ごしたのに、出た直後に注射してしまった者もいる。刑務所で2~3年我慢して、ここで更生に向けて歩み出しても、薬物を忘れられない。覚醒剤には、そういう怖さがある」と話した。
 様々な困難が伴う更生保護活動だが、「ここは県内のお寺によって支えられている。宗教者の皆さんに見守られていることが、(入所者が)人生のやり直しに向かう励みになっている」と本間施設長。活動の説明を受けた豊山保護司会の丹治会長も、「今日の研修を糧として、今後の保護司の任務に邁進したい」と応じた。

 豊山保護司会一行は翌日、前橋刑務所を見学。今年の一泊研修会には15人が参加した。

2016/10/20 真宗興正派の門主後継者に華園門主の長女・沙弥香さん

 真宗興正寺派(龍村豐雄宗務総長)の門主後継者である「嗣法」に、華園真暢門主の長女の沙弥香さん(法名=釋真慶・22)が就任することが決まった。12日に開かれた第135定期宗会の中で、龍村総長が9月7日の法灯伝承委員会で沙弥香さんを「嗣法」に選定したことを報告した。

 沙弥香さんは、現在、日本獣医生命科学大学(東京都武蔵野市)の4年生で、大学卒業後の来年4月1日に正式に嗣法に就任する予定。真暢門主には沙弥香さんしか子どもがおらず、門主に就任した2001年に女性が法灯を継承できるよう宗規を変更していた。

2016/10/20 第28回WFB世界仏教徒会議・韓国大会で人道支援基金に500万円寄付 2年後は日本大会

韓国大会で読経する上座部僧侶 世界最大の国際的な仏教徒の組織であるWFB(世界仏教徒連盟)の第28回世界仏教徒会議韓国大会が9月26日から28日までソウル市内のホテルや真覚宗統理院で開催された。日本からは全日本仏教会(全日仏)の中西玄禮副会長らが参加し、WFBの人道支援基金へ500万円を贈った。次回大会は2018年11月に日本で行われることから、閉会式でWFB副会長の小林正道氏(元全日仏理事長)へ仏旗が継承された。

 日本からは全日仏の中西副会長、久喜和裕事務総長をはじめ、WFB役員である小林副会長、戸松義晴執行役員、日比野郁晧人道支援委員会委員長のほか日韓仏教交流協議会の西郊良光理事長ら30人が参加した。

 開会式では全日仏会長でWFB最高顧問の小峰一允氏のメッセージを中西副会長が代読、英語でスピーチ。今大会のテーマが「日々の生活における仏教・仏教徒としての生き方」とあることにふれながら「世界各国の仏教徒が共に学び合い、平和的に共に生きる世界を実現する糧となることと信じております」と大会の成功を祈念した。

 続いて人道支援基金へ寄付金として500万円を贈った。寄付金は昨年4月に発生したネパール地震で被災した子どもたちへの生活支援に充てられる。

開会式で中西副会長が500万円目録を手渡した 大会には世界各国から約600人が参加し、各種会議が行われ、大会テーマに沿った議論や意見が交わされた。

 閉会式では次回大会が2018年11月に日本で行われることから小林副会長へ仏旗が継承された。挨拶では日本大会への参加を呼びかけ〝おもてなし〟の心を示した。日本大会は11月5日から9日までの日程で、千葉県成田市内のホテルや神奈川県横浜市の曹洞宗大本山總持寺を会場に開催される。

 開会式を前にして行われた執行役員・副会長選挙では、小林副会長、戸松義晴執行役員が再任された。任期は2年。

2016/10/20 過疎問題連絡懇談会 超宗派で過疎対策推進へ、宗制調査の設問共有を提案

今回は9宗派が参加。大谷派と智山派の現状をもとに意見を交換した 超宗派でつくる過疎問題連絡懇談会(事務局=真宗大谷派)が14日、東京・愛宕の真言宗智山派総本山智積院別院真福寺で開かれ、9宗派から約50人が参加した。真宗大谷派と智山派の現況の発表をもとに、「それぞれの地域の特性に応じた教化活動ができるかが鍵になる」など過疎対策について意見交換。各宗派で宗勢調査を行う際には超宗派で結果を活用できるようにするため、過疎問題に関する設問の共有化が提案された。同懇談会は昨年3月の開始以来、情報共有の会議や過疎地域の共同調査などを積み重ねている。これまでの会場は主に京都で、東京開催は初。

 真宗教化センターの大江則成・企画調整局次長が、「寺院活性化に向けた真宗大谷派の取り組み」を発表。地域との密着度が高い真宗寺院の長所を活かした様々な地域コミュニティ作りを紹介した。

 平成24年に全8786カ寺を対象に実施した教勢調査で、全体的な下降傾向がより顕著になったと説明。「婦人会組織の減少が教団の弱体化を表している」ことや「高齢化社会の中で死者は増えているが、直葬・葬儀の不執行の増加で葬儀・法事が減っている」こと、門徒後継者の転居による菩提寺との無縁化の増加などを挙げた。

 こうした状況に対し、「(住職と坊守、門徒の組織である)同朋の会・伝道活動は参詣減の抑止効果がある」ことを指摘。一方で「過疎を含む地域寺院の活動が顕著だが、合併・解散などで毎年10カ寺弱減っている。過疎地の寺院ほど頑張っているが、そういう所から厳しい状況になっている」と憂慮した。

 智山教化センターの鈴木芳謙所員が、「智山派の現況」を報告。全2903カ寺のうち過疎地域に388カ寺が所在し、過疎化率が13・4%と説明した。しかし全国60教区中、過疎化率が0%でも寺院兼務率が68%と高い教区もあるなど、“過疎地ほど正住職がいない寺院が多い”とは言い切れないデータを提示。過疎地域にある祈祷寺院の可能性にも言及。「(お札など)遠隔地からも申し込んでくる人がいる」と述べた。

 全体協議では、兼職率が高くても教化活動が活発な地域があることも議題に。研修費助成等も含め、他に仕事を持ちながら寺を守っている住職へのサポート体制の構築が重要だとの意見も出た。

 今回から、伝統教団の中で過疎地域に末寺が立地する割合が4割強と最も高い高野山真言宗も加わることになった。宗派の過疎対策検討小委員会として参加した添田隆昭宗務総長は、過疎地寺院の後継者難や寺族の保護などが緊急課題になっていると報告した。

 次回は京都で開催予定。

2016/10/27 臨床仏教師養成プログラム第3期スタート 末期がんの医師・僧侶田中雅博氏が講演

末期がんを打ち明けながら患者のケアについて話す田中氏 全国青少年教化協議会(全青協)臨床仏教研究所が主宰する第3期臨床仏教師養成プログラムの第一段階となる公開講座の第1講が12日、東京・本郷の東京大学仏教青年会会館で始まった。末期がんを公表している医師で真言宗豊山派僧侶の田中雅博氏(栃木県益子町西明寺住職・普門院診療所理事長)が「“宗教”と“医療”のはざまで―ターミナルケア」と題し、医師・患者・仏教者の立場から話した。約80人が受講した。

 田中氏は末期の膵臓がん。そのため講演時に死亡していた場合には妻の貞雅さん(医師)が講師を務める予定だった。

 医師となり医学研究を志し、国立がんセンターに入った。研修医として内科医を併任したが、「全員が進行がんの患者さん」だった。「患者さんは、死ぬのが怖い、死にたくない」と言い、25歳の田中氏は「死にたくないと言われても医学では対応できない。医学は科学であり、手術をするか薬を使うか。死にたくないという苦しみは治療はできない」と当時の戸惑いを口にした。

 田中氏は「けれども他の国をみると、日本もかつてそうだったが、宗教者が担当していた。日本では坊さんだったが、それがなくなった」と言葉を継ぎ仏教者の役割を説いた。また仏教チャプレンの未来に期待を示しながら、患者との語りに基づく医療(ナラティブ・ベイスト・メディスン)の可能性を提起した。

 第1段階は社会的なテーマを中心とした公開講座で来年2月まで全10講。資格希望者は8割以上の受講が条件となる。これを修了すると第2段階のワークショップ(40時間)、その修了者が第3段階の実践研修(100時間以上)へ進む。


第1期生は各地の医療機関で活動中


 同日から3期目の臨床仏教師養成プログラムが始まったが、開講に当たり主宰者である臨床仏教研究所の神仁上席研究員が第1期生6名のその後を報告。都内ではこの日の講師である田中氏の尽力により国立がんセンターや慈恵会病院に。また「色んなご縁から、福島の県立医療センターや四国のがんセンターなどで活動している。予想以上であり、世間からも注目されている」と報告した。

2016/10/27 浄土宗シンポ・寺院の社会貢献とは? 「葬式仏教」は僧侶の本分 自意識過剰の指摘も

浄土宗教化研修会館で行われたシンポジウム。左から秋田氏、松島氏、戸松氏、大谷氏、佐藤氏 人口減と高齢化が進行する中で寺院の役割を考えようと、京都市東山区の浄土宗教化研修会館で17日、「寺院縮小時代における社会貢献を考える」と題したシンポジウムが開かれた。「葬式仏教」は社会貢献といえるかを巡り、浄土宗総合研究所主任研究員の戸松義晴心光院住職は、「亡くなった人を弔うのは私たちの本分で、最も本質的な公益性だ」と主張した。浄土宗平和協会が主催。

 戸松氏、大谷栄一佛教大教授、寺の供え物を困窮世帯に届ける「おてらおやつクラブ」代表の松島靖朗安養寺住職、佐藤行雄浄土宗ともいき財団理事長が意見を交わした。

 司会を兼ねた浄土宗平和協会副理事長の秋田光彦大蓮寺住職が、「葬式仏教」のアリバイとも揶揄される宗教の社会貢献について意見を求め、戸松氏は、社会的存在としての教団と宗教を区別した上で、「教団は規模が拡大する中で、維持発展のために社会貢献を行った歴史がある」と考えを述べた。

 その上で、エンゲージドブディズムの観点から仏教は社会問題に関わらざるをえない思いに原点があるとして、「NGOなどと異なるのは実践。それぞれの教団でいえば念仏や禅であり、そこからのスタートでなければやる意味がない」との見方を示した。

 さらに秋田氏は、東日本大震災の際に僧侶が従事した弔いは多くのメディアに取り上げられたが、「葬式仏教」は社会貢献ではないのかと質問。戸松氏は最も本質的な公益性と答える一方で、「信頼を損なうようなことをすれば、ビジネスの葬式仏教になる」と強調。全日本仏教会が、お布施は喜捨としての宗教的営為だと表明したにもかかわらず、定価表を出すなどの行為によって信頼と公益性を失っているとの見解を述べた。

 現在の宗教法人法では、教団が口出しできないことにも注意を促し、「いずれ起こるのは価格競争で自殺行為だ。結局は寺の住職の考え方によらざるを得ない。妙薬はない」と強い懸念を示した。

 松島氏は、おやつクラブの活動に47都道府県の450カ寺が賛同し、各地に活動が広がっていると報告。昨年の収入300万円のうち、助成金が200万円、寄付が100万円だったと明らかにし、日蓮宗の「あんのん基金」から最多の100万円の支援があるとした。個人の寄付が増え、今年は収支が500万円ほどになる見込みで、今後は法人化を視野に資金調達の方法を考えたいと語った。

 秋田氏は、大阪市内で僧侶の三浦紀夫氏らが携わる介護や障害者福祉サービスを行うNPO法人ビハーラ21の取り組みを紹介。同法人は、真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)の清史彦住職の活動をきっかけに設立された。終末期に僧侶が立ち合い、葬式は瑞興寺でするという生と死の拠点になっているとし、「こうした仕組みをもっと検討すべきだ」と力を込めた。

 佐藤氏は、寺も僧侶も社会的存在であり、社会の変化に合わせて需要に応えるのは当然として、「宗教の社会貢献という考え方が自意識過剰ではないか」と指摘。松島氏が、社会貢献の意識なしに活動を始めたことに言及し、“社会問題に関わらざるをえない思い”に通じると述べ、「とても心強い」と評価した。

 大谷氏は、お供えの米を集めて寄付する「近江米一升運動」やおやつクラブなど仏教の社会活動の新しい「型」が考案されたとした上で、「宗教者ならではの社会貢献の型が、地域社会福祉の仕組みにつながっていくように、ほかの僧侶も発信することを期待したい」と呼びかけた。

2016/10/27 高野山学園130年式典挙行 祝福と再生の中で―改革断行で少子化克服へ

添田理事長を導師に高野山大学・高校の学生・生徒らが出仕して記念法要を営んだ 高野山真言宗の宗門校を経営する学校法人高野山学園(理事長=添田隆昭宗務総長)の創立130周年記念式典が17日午後、和歌山県高野町の高野山大学・松下講堂黎明館で挙行され、大学と高野山高校の教職員、学生・生徒、関係者ら約500人が参加した。午前中には約200人が参列する中、藤田光寛・大学学長と学生、高校の生徒らが出仕して、「教職員先輩物故者追悼」と「学園安穏興隆祈念」の記念法要を厳修。導師を務めた添田理事長は、「今、(学恩をこうむった)先生方のお位牌を見ながら、お勤めをさせていただいた。『学園をしっかり頼むぞ』と私たちを叱咤激励してくださっている」と感慨を述べた。同大は「学生一人一人を徹底サポート」を柱に、改革を進めている。

 藤田学長は記念式典の開会にあたり、大学改革の現状について説明。「本学では僧侶を目指す学生も一般家庭の学生も、(各自の志に応じて)広く学べる様々なコースがある。本学から社会に出て、それぞれの職場において社会に貢献できる人を育成している」と話し、「少子高齢化の厳しい現実を克服して、これからの発展に取り組んでまいりたい」と表明した。

 高野山高校の元校長でもある添田理事長は、「中学時代の不登校から立ち直った女子生徒」の努力を回想。「人生の最初に挫折してしまっても、ここでもう一度、立ち上がることができる。それが高野山学園である」と強調し、全学園関係者に改革への協力を呼びかけた。

 岡本彌久(ますひさ)・高校校長は閉式の辞で、「学園教職員一同、140周年に向けて精進する」と宣言。改革の先頭に立つ岡本正志・法人本部長は、「全身全霊で学園を再生させたい」と決意を表明した。

 式典当日の朝は強く雨が降り、山内を洗った。やがて晴れ間が見え、式典前の昼には陽光がまぶしいほどに。ある女性職員は、「高野山大学の未来を示しているかのような良い天気になりましたね」と微笑んでいた。

 高野山大学は明治19年(1886)、高野山古義大学林として開講。弘法大師が1200年前に開学した綜芸種智院の教育理念を受け継ぎ、学を志す全ての人に開かれた大学として歴史を刻んできた。しかし近年、学部学科の統廃合が続き、現在は入学定員50人の半数ほどしか集まらないなど、開学以来最大の苦境が続く。創立130周年は、教職員と関係者が大学再生への決意を新たにする機会になった。

2016/11/3 ACRP創設40周年シンポ いかに宗教の名を使った暴力的過激主義に応答するか?

暴力的過激主義について懸念と共に取り組みが報告されたパネルトーク「いかに宗教の名を使った暴力的過激主義に応答するか?」のテーマのもとアジア宗教者平和会議(ACRP)創設40周年記念シンポジウムが10月26日、京都国際交流会館で開かれた。(一財)日本総合研究所の寺島実郎会長の基調発題とパネルトークを通じて「IS(イスラム国)」の暴力とテロの拡大を懸念。一方でイスラーム以外の諸宗教にも過激主義が内在している状況があることが示された。また赦しによって他者を理解することの重要性も指摘された。シンポには国内外から約220人の宗教者やNGO関係者らが参加した。

 主催者を代表してWCRP日本委員会会長の庭野日鑛氏(立正佼成会会長)が挨拶し、法句経を引用した上で「テロや紛争で生じた怨みの心、憎しみの心をどのように乗りこえていくか。それは心の問題を扱う宗教者こそが率先して取り組むべき課題である」と宗教者の使命を明言した。

宗教者への期待を述べる寺島氏 寺島氏の基調発題では人類史を遡りつつ人間とは何かを問いかけながら、宗教者の役割などを提示。9・11後のテロや戦争などで、少なく見積もっても30万から40万人が犠牲になっているとし、「そのかなりの部分が宗教の名のもとに自分たちの殺人を正当化している。人間の傲慢さをしっかりと睨みつけているのが宗教だと思う。人間の知恵なるものを超えた大きな存在を人間が意識しなくなったら、途方もない傲慢に陥る」と警告を発した。

 さらに宗教史に触れながら「宗教対立を超えていく唯一の方法は、相手の立場を認めること。共生し、協調して生きるという覚悟を持つこと。赦しという言葉がある。広い意味での慈悲や相手を認める心であり、すべての人が幸福になろうとしていることに対して、腹をくくって理解する力がなければ前に進み出せない」と訴えた。(続きは紙面でご覧ください)

2016/11/3 全日本仏教婦人連盟文化講座100回記念講演会 櫻井よしこ氏「歴史教育」説く

100回記念で講演した桜井氏 全日本仏教婦人連盟(東伏見具子会長)は10月19日、東京パレスホテルで100回目を迎えた文化講座の記念講演会と第63回大会を開催した。講演会ではジャーナリストの櫻井よしこ氏が「教育が拓く未来」をテーマに歴史教育の重要性や仏教界への期待が語られた。講演会と大会併せて500人が参加した。

 全仏婦では平成16年から年に8回、東京・谷中の天台宗天王寺を会場に文化講座を開いており、今回で節目の100回目を迎えた。
櫻井よしこ氏は社会の価値観や、アメリカ・中国を中心にした国際情勢の変化を背景に、「どのように自分たちの生き方、民族としての在り方を全うさせるのか。この変化を日本人としてどうやって生き抜いていくか。私たちだけでなく、未来の日本人の運命を決める」と問題意識を表し、歴史教育の重要性を指摘。縄文時代にあった死者とともに生きる在り方、仏教を受容し十七条憲法を制定した聖徳太子、明治政府による「五箇条の御誓文」などを例にあげながら、穏やかな文明を築いてきた「日本国らしさ」を、大人が子どもたちに伝える役割を強調した。

 仏教界に対しても「これからの日本の芯柱になるような存在だと思う」とし、「日本人が宗教心を取り戻すことが大事。日本の神仏が融合した教えを広く社会に説いてほしい」と期待を寄せた。

 講演会に続いて行われた63回大会では東伏見会長が環境問題への取り組みとして水の問題に言及。節電と共に「節水」への意識も高め「自分たちの水を50年後、100年後に使っていくためにどうしたらいいのか。毎日、水を汲みに行かなければいけない人や、汚染された水を飲まなくてはいけない人が世界に大勢いる。問題意識を持ち、自分たちにできることからやっていかなければいけない」と呼び掛けた。

 末廣久美理事長は文化講座について「多士済々の方々に来ていただいた」とその歩みを振り返り、「櫻井先生のお話にとても良い示唆をいただきました。我々、大人が頑張らないといけない。11月からまた101回、102回と続けたい」と抱負を語った。

 大会では写経運動の奉納金がインドの日本寺を運営する国際仏教興隆協会の佐藤雅彦事務総長に手渡された。会場では心の募金も集められ、25万円が被災地NGO恊働センターに贈られた。

2016/11/3 同和問題に取り組む宗教教団連帯会議 狭山事件の再審を求めデモ

市民集会と合流してデモ行進。雨の中、宗教者も石川さん(左端)の無実を訴えた 昭和38年に埼玉県狭山市で起こった女子高生誘拐殺人事件「狭山事件」で犯人(無期懲役)とされた石川一雄さん(逮捕当時24歳)。無実を訴え、冤罪を晴らすために闘い続けている石川さんと早智子夫人を招いての「石川夫妻の幸せを願う宗教者の集い」(主催=『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議(同宗連)」)が10月28日、東京・愛宕の真言宗智山派総本山智積院別院真福寺で開かれた。午後には市民集会に合流。日比谷公園からデモ行進を行い、狭山事件の再審開始を求めた。

 仏教・神道・キリスト教の18教団から約120人が参加。77歳になった石川さんの両腕にかけられた「見えない手錠」を一刻も早くはずすために、東京高等裁判所に「再審の開始」をより強く求めていくことを決議した。

 これまでにも石川さんの冤罪を裏付ける複数の証拠が提出されているにもかかわらず、裁判所は再審請求を棄却している。ところが石川さん宅で発見されたことから重要証拠とされてきた「被害者の万年筆」が、最新の科学鑑定で「被害者の物ではない」ことが判明。冤罪を証明する決定的な新証拠として今年8月、東京高等裁判所に提出されたことで、第3次再審請求は山場を迎えている。同宗連は他の支援団体と共に「被差別部落出身の石川さんへの差別が生んだ冤罪事件」として司法の過ちを指摘し、支援活動を続けている。

「集い」では神道・仏教・キリスト教による祈りが行われ、大本・天台宗・日本カトリック教会の各代表が石川夫妻に励ましのメッセージ。高野山真言宗の雨貝覚樹・社会人権局人権課長が集会宣言を発表し、「私たち宗教者は部落差別を許しません。部落差別に基づく冤罪を決して容認しません」と力強く読み上げた。

「集い」は平成25年に続き、2回目。同宗連事務局長の松岡順海・天台宗社会部人権啓発課長は、「(集いは)石川さんを元気づけたいという思い。(不当逮捕から)53年も経つ。この1年くらいで(再審請求を)決着させ、無実を証明しなければいけない」と話した。

 午後には日比谷野外音楽堂での「狭山事件の再審を求める市民集会」に参加。部落解放同盟や市民団体など、大勢の支援者と合流した。

 集会で石川夫妻が登壇。早智子夫人は、「今朝、同宗連に2度目の集いを開いてもらった。石川一雄の冤罪を晴らそうと、全国から多くの宗教者が集まってくれた。石川は不運な人生をおくったかもしれない。でも大勢の人に支援していただき、今、こんなに元気です」と感謝の言葉を語った。

 集会後には、日比谷公園から東京駅までデモ行進。石川さんをはじめ他の冤罪事件の当事者も加わり、沿道の人々に再審開始への応援を求めた。

2016/11/10 浄土系アイドル十夜限りの舞台 女子大生菩薩と念仏しよ♡

 「煩悩多き衆生と共に修行する」をコンセプトに、5体の菩薩が顕現するという設定の浄土系アイドルグループ「てら*ぱるむす」が6日、京都市下京区の浄土宗龍岸寺で公演した。オリジナル曲「ニルヴァーナ恋バーナ」など3曲を披露し、「極楽浄土へ往きたいかー!」を合言葉に参拝者らと“修行”した。龍岸寺本堂で歌って踊る「てら*ぱるむす」

 池口龍法住職が菩薩5体の名を呼び、「この道場に顕現したまえ」と本尊前で召喚すると、菩薩アイドルが本堂を舞台に所狭しと歌って踊った。メンバーは早勢至帆、観月花音、弥勒ミライ、文殊たま、普賢あまねの菩薩にちなんだ名前を持つ。京都、滋賀の芸術系大学に通う1、2年生だ。

 僧侶や学生が京都市内の5カ寺で10日間のアートイベントを企画する「十夜フェス」に向けて結成。十夜限りで活動を休止する予定だ。プロデュースした京都市立芸術大1年生の橋本千裕さん(19)は、家庭の事情でつらい時期があった。状況が良くなるようにと懸命に祈ったが、知人から宗教に逃げる弱者だと突き放された。悔しくて涙があふれた。そんなとき、笑顔を振りまくアイドルに勇気づけられた。「アイドルの強さを通して、同じ悩みで行き詰った人に胸を張って生きる力を感じてほしい」との思いで取り組んだ。

 オリジナル曲を作詞した池口住職は、「幸せな瞬間を仏教の言葉と結びつけた。日常を元気に過ごしてもらえたら」といい、住職の恋の世界観が垣間見える内容だ。グループがネット上で波紋を呼んだことに対し、「拝む心の表現が、生身の人間という形も考えられるのではないか」と批判を受けて立つ構え。活動休止に「依頼があれば続けてもいいのでは」と意欲を見せた。

2016/11/10 大正大学創立100周年へ 現・元学長が意見表明

直近の学長経験者4人と現役の大塚学長が100周年に向けて発言した。右から大塚・星野・小峰・多田・勝崎各氏

 大正大学(大塚伸夫学長)は創立90周年ホームカミングデーの5日午後、東京・西巣鴨の同大礼拝堂で座談会形式の講演会「創立百周年に向けて大正大学の挑戦」を開催、直近4代の学長経験者が在職中の取り組みや将来について意見表明した。大塚学長は「広報を強化し認知度を上げたい」と抱負。元学長の一人は、「歴代学長がこうして集まって話すのは初めてではないか」と異色の企画を歓迎していた。

(続きは11月10日号紙面をご覧ください)

2016/11/10 豊山派宗会 十住心に基づく目標発表 40年ぶりの宗勢調査へ

 真言宗豊山派(星野英紀宗務総長)の第143次宗会通常会(加藤章雄議長)が1・2両日、東京・大塚の宗務所に招集された。7月に就任した星野内局の初宗会。星野総長は施政方針演説で宗派の統一テーマを「悟りを求める心を深化し実践に励もう」とし、「信心の一層の確立」と「宗教的実践」の2本柱を提示。独自の現代版「十住心思想」を含む具体的目標を掲げた。さらに過疎対策など有効な施策を行うための基礎データとすべく、40年ぶりの宗勢調査を実施したい考えを表明した。初演説に臨む星野総長。信心の確立と宗教的実践を宗務の2本柱とした

 具体的目標の第1は「私たちの信仰生活をステップアップすること」とし、弘法大師の十住心思想を「私なりに簡潔化し」、仏教者の信仰生活を5段階―㋑信仰心どころか一般倫理的なことも眼中にない段階㋺社会道徳など一般倫理的なことに配慮しながら生きる段階㋩煩悩を減じ、仏教的悟りの世界を目指すという明確な目標を持ってくる段階㋥自らの覚醒に向かいつつ、他者への慈悲心の実践をも行おうとする段階㋭仏と一体となる感応の世界に到達する段階―に要約。「私自身は㋩と㋥を同時に『少しずつ進んでいる』と考えている」とし、「どの辺りに自分がいるのかを常に考えつつ日々を過ごすことが肝要」と述べた。

 第2は僧侶の社会的信頼を高めるために、「コンプライアンス(規則遵守)の励行」。第3は「差別の除去と平等の推進」。第4には「やや沈滞気味の」学山豊山の興隆のための「高度な宗学研究、仏教研究を目指す者への援助」を挙げ、「大学院博士課程後期、博士論文執筆準備にある研究者に応分の援助をする方策を考えたい。特に地方出身の研究者は生活上の困難が伴うため、学位取得に至るまでの援助が必要」とした。第5には「女性教師活躍の促進」を挙げ、寺院や宗務支所の運営に女性が「積極的に関われる環境作りを進めたい」とした。

 第6は「宗派寺院(と僧侶)の社会貢献活動の実態把握と活動促進」。第7は「長期的な総本山長谷寺の伽藍大修復計画への全面協力」。第8は「宗内寺院が所蔵する文化財の把握」で、伝統教団の責任として貴重な文化財を後世に確実に伝えるとともに、国宝・重要文化財等の盗難・売却などへの備えや抑止とする。

 第9は「地方寺院と都会寺院の交流の促進」。宗務所設置の寺院経営相談室を窓口として、過疎地域の中での寺院のあり方など個別の事情にも対応したいとした。

 第10は「諸教団、諸宗派との交流促進」。第11は「災害対応」。迅速な情報収集・発信に加えて、「必要な場合は仏教青年会等を通じてボランティアを派遣する。可能な限り、(ボランティアや被災寺院などに対して)一時的な(緊急)財政援助も行う」とした。

 星野総長は、「宗内寺院の過疎問題の実態など、ほとんどわからない。何を行うにも、宗派にデータがなさすぎる。具体的な情報がなければ、有効な施策は打てない」と指摘。「来年、半年くらいかけ、かなり細かい調査項目を設けて」、昭和52年以来となる宗勢調査を実施する考えを表明した。

2016/11/17 全日本仏教会 被災寺院復興の足がかり「指定寄付金制度」熊本で説明会

 全日本仏教会(全日仏)は9日、熊本市の浄土真宗本願寺派熊本別院で地震被災からの復興への足がかりとなる指定寄附金制度の説明会を開いた。被災した寺院を中心に約70人が参加し、制度の活用を呼びかけた。

 阪神・淡路大震災、東日本大震災でも設定された指定寄附金制度は、宗教法人に寄附する個人や法人に税制上の優遇措置が設けられている。この制度を活用し、宗教法人に寄附がしやすくすることが狙いだが、東日本大震災で利用した宗教法人は17件に留まった。背景には制度自体を知らなかった宗教法人が多く、「周知が課題」(久喜和裕事務総長)だった。

 九州全域では約19%、熊本県内では約65%の寺院が被災。東日本大震災の課題をもとに、制度の概要などを説明し、活用促進をはかった。
優遇措置としては、とりわけ法人が寄付した場合、全額が損金に算入できるメリットがある。個人の場合でも控除の恩恵が受けられる。

 参加者からは「直接制度を知る機会は良かった」「寄附者の節税につながることは有難い」との声がある一方、「申請は宗派に手伝ってもらわないと厳しい」「活用して損はないが、寄付が集まるかは別問題」との意見も寄せられた。今後、京都と東京でも開催し、制度の周知を進めていく。

2016/11/17 浄土宗芸術祭美術展 絵画・書・彫刻・写真など90点

立教開宗の文「一心専念弥陀名号」を揮毫した浄土宗教師修練道場の太田珠光氏 浄土宗の僧侶や寺族、檀信徒らの作品が出展される「第41回浄土宗芸術祭美術展」が8~13日、京都市左京区の京都市美術館別館で開かれた。絵画や書、彫刻、写真など作品90点余りが展示された。

 昨年100周年を迎えた飯塚美術協会(福岡県飯塚市)会長の原田敏規浄善寺住職は、ガンジス川沿いのヒンズー教聖地、ベナレスの風景を描いた油絵「ベナレスの裏通り」を出展。ガンジス川で沐浴する人などの絵はよく見られるが、古い街並みや歴史を表現しようと裏通りを描いた。

 作品は、現地を訪問した20年に手掛け、今年完成させた。原田さんは創作活動の集大成として、撮りためた写真やスケッチなどの資料をもとに、今年4月から140点の水彩画を制作中。今回出展した作品も水彩画に再び描き起こし、油絵にした。

 資料は500以上あるといい、原田さんは「まだまだ描きたいものがたくさんある」と意欲を語った。モチーフによっては日本画や版画として表現する。近年、スケッチを目的に一人で旅したシルクロードを描いた個展も開いている。

 釋玄虚称名寺(京都市東山区)住職は、理想郷を描いた写意画「夏山幽荘」を出展。夕暮れの夏の風景で、船に乗って自由気ままに暮らしたいとの思いから、河川を中心とした構図に船が往来する様子を描いた。

 浄土宗教師修練道場(京都市左京区、大本山金戒光明寺)で指導員として書道を教える大田珠光氏は、加藤達成元佛教大教授から書の指導を受け研鑽を積んだ。今回は、立教開宗の文「一心専念弥陀名号」(『観経疏』)を躍動感のある筆致で綴った。

 伊藤唯眞総本山知恩院門跡や大本山法主の墨蹟展、宗立宗門校学生美術展も併催された。

2016/11/17〈レポート〉大阪・千日前で毎日護摩を焚く鳥居弘昌住職 在留外国人支援、交流活動も

ビルの1階にある寺の入り口で護摩を焚く鳥居住職。足を止めて見つめる人も多い 大阪・千日前で毎日護摩を焚き、街の安寧を祈る僧侶がいる。真言宗山階派千日山護法院弘昌寺の鳥居弘昌住職(57)だ。両親の菩提を弔うために得度し、両親が愛したこの地を護るために僧侶となった。街の「過去」と「今」に向き合い、在留外国人のための支援やこの街に眠る人々の慰霊活動など、宗教者としての地域活動を精力的に行っている。2012年に起こったある事件がきっかけだった。

 弘昌寺がある大阪・千日前は、難波駅周辺の「ミナミ」ともいわれる大阪の中心地。歩いて5分もかからない場所に道頓堀があり、ブランド店や飲食店が立ち並ぶ。言わずと知れた関西屈指の繁華街だ。

 しかし、4年前、この街で暮らす人々にとって衝撃的な事件が起こった。フィリピン国籍の若い母親が当時6歳の長男と4歳の長女を道連れに無理心中を図り、地元の南小学校に通う長男の男子児童が幼い命を落とした。(続きは紙面でご覧ください)

2016/11/17 立正佼成会・庭野光祥次代会長とカトリック・岡田武夫大司教が対談 三毒からお節介まで

身近なところから宗教の使命について対談する岡田大司教(左)と庭野光祥次代会長 立正佼成会の庭野光祥次代会長とカトリックの岡田武夫大司教による仏教×キリスト教対談が9日、都内で「平和のための宗教の使命」をテーマに開かれた。宗教関連から社会問題まで幅広い話題で展開した。カトリック東京大司教区アレルヤ会が主催し、約100人が聴講した。

 最初に岡田氏の質問に庭野氏が応答。諸宗教パネリストが参加した昨年のシンポジウムで杉谷義純氏(天台宗、世界宗教者平和会議〈WCRP〉日本委員会理事長)から、ユネスコ憲章の前文にある「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」とあるが、その人間の心には「三つの毒がある」と教えられたという。岡田氏は「三毒とは何か」と問いかけた。

 庭野氏は、「私にある毒の懺悔をしなさいということかなと思いながら」と前置きして説明。釈尊の出家の動機となる四門出遊を紹介しつつ、悟りの妨げとなる貪瞋癡(欲と怒りとグチの心)を紐解き、「三毒は人間が持っている迷いの心の根本的なもの。この三つの毒を滅することができれば、悟りが得られると伝えられている」と概説した。

 それを受けて岡田氏はカトリックの立場から、人間の心は揺れ動き、欲にもきりがないとし、「カトリックの教えでは、人間が真実を認めないという問題がある。無明という言葉で表される。私たちが深く物事を見ようとしないところからくる」と三毒との共通性を指摘。一方でキリスト教の霊的な生活では、「神様から光がイエス・キリストを通して与えられる」と述べ、仏教においての三毒克服法を尋ねた。

 庭野氏は「仏教はよく気づきの宗教と言われる。一つひとつ、一瞬一瞬の自分に意識を行き渡らせることが仏教では大切な修行」とまずは三毒の自覚が求められるとし、そのうえで滅していくことが大切だと述べた。具体的には日常生活の中で実践することだと話した。

 少し前まで自死・自殺者が年間3万人超であったが、この問題に取り組んできた岡田氏は「自死者は病気その他色々な理由で自死に追いつめられる。その背景には孤独がある。自分の問題を話したくても話す相手、話す場所がない。しかし統計によると自死者は直前に、相談など後から思い当たる行為をしている」と解説。


 そして「カトリック教会は、あそこに行ったら話が聞いてもらえるとか、受け付けてもらえるとか思われていない気がする」と自分自身に問いかけるように無力さを語った。

 庭野氏は「日本の中は、関係の貧困が大きな問題。仏教では縁起を説きますので人と人との関係を大切にしている。立正佼成会ももっと身の回りの人に寄り添ったり、近づいていったりしなければ。言ってしまえばお節介。いまはスマートになってお節介が失われている」とお節介の復活を提唱した。

 対談では死者に対するカトリックの祈りと仏教の回向の共通性やローマ教皇の発した回勅に示された地球環境の保全などが話題に上り、テーマの「平和のための宗教の使命」を足元から再考する語り合いとなった。

2016/11/24 高野山真言宗神奈川宗務支所の寺族得度式に57人 地元では30年ぶり

寺族婦人が一堂に会しての得度式は同支所独自の取り組み。女性への配慮が随所に見られた 高野山真言宗神奈川宗務支所(眞田有快支所長、117カ寺)は6日、横浜市磯子区の金藏院(住職=眞田支所長)で支所下寺院寺族を対象とした得度式を30年ぶりに開催した。高野山無量光院の土生川正道前官を戒師に寺族婦人・徒弟ら57人が入壇。一堂に会しての女性得度式は同支所独自の取り組み。そこには弘法大師の末弟子として、住職と共に教化活動に邁進する寺族婦人への期待が込められている。


 お寺の玄関で檀信徒や参拝者を優しく迎え、その苦悩や喜びを受け止め、分かち合う寺族婦人。だが菩薩行の実践と檀務で多忙な日々の中、総本山金剛峯寺(和歌山県高野町)で行われる得度・受戒、結縁灌頂等に参加することは難しい。


「こうした方々に地元で得度を受けていただき、弘法大師の末弟子として、より自信を持って、人々に広くみ教えを伝えていただくことはできないだろうか」―。この思いが発端となって30年前、横浜市西区の赤門東福寺で寺族対象得度式を開催。今回は眞田支所長が、当時の支所長で師父の故眞田有範師の遺志を継いで再び開催した。


 受者は白衣で入堂し三礼。戒師より出家の功徳を説かれ、受者代表の萬蔵寺・河本明子さんが戒師から灌頂・剃髪の儀式を受けた。以後、受者はそれぞれ戒師から灌頂を受け、別室で剃髪・黒衣被着を行い、再び本堂に入堂。戒師から袈裟(如法衣)と、支所からの記念品である梅の数珠を手渡され、法名を授けられた。受者の一人は、「小さな子どもたちと一緒に家族共々得度を受けることができ、師僧である夫に剃髪してもらったことは一生の思い出になる」と述懐した。


 女性得度式への細やかな配慮もあった。事前に衣の着方・畳み方の研修会を実施し、当日は僧籍のある寺族婦人が白衣・黒衣・如法衣の被着まで付き添いで指導。会場寺院でも客殿と茶室の女性用トイレを改修し、本堂の畳を全て張り替えるなど環境を整備した。ある受者は「髪を3カ所切るということで女性として不安だったが、切る方が細やかに希望を聞いてくださり、自然な形で行ってくれた」と感謝した。


 眞田支所長も、「高野山無量光院様や支所の各団体などから多くの協力をいただき実現できた」と感無量。次回開催は未定だが、「私たち現支所員の願いをぜひ受け継いでもらい、将来また開催してほしい」と次世代に思いを託した。

2016/11/24 全日本仏教会理事会 大蔵経データベース支援で議論、継続か時限か決論に到らず

 公益財団法人全日本仏教会(全日仏、石上智康理事長)は15日、京都・下京区の聞法会館で第16回理事会を開いた。審議された3議案の内、2議案を全会一致で可決したが、「大蔵経テキストデータベース運営支援第三期事業計画」の承認については「事前に各宗派での議論が必要」との意見があり、後日改めて理事会を開き再度採決することに決まった。(続きは紙面でご覧ください)

2016/11/24 ダライ・ラマ法王 世田谷学園で生徒との交流楽しむ即席問答

ダライ・ラマ法王は1400人の生徒を前に講演。その後に質疑応答が行われた 1400人の中高生を前にダライ・ラマ第14世法王はにこやかに、そして真摯な表情で質問を聞き、時には「日本のお米とうどんが好きです」とユーモアをまじえて答えた。

 16日午前、東京・世田谷にある曹洞宗関係学校の世田谷学園を訪れたダライ・ラマ法王。3度目の訪問で創立115周年記念特別講演として行われた。テーマは学園のモットーである「明日を見つめて、今をひたすらに」「違いを認め合って、思いやりのこころを」。法王は愛と慈悲を説き、とくに「心の平和(平安)」を力説した。

「若い人たちと交流したい。講演の後、みなさんの質問を受け付け、それに答えましょう」と法王は呼びかけた。生徒たちは2カ所に整列し、身の回りのことから平和論などを次々に質問した(以下は要旨)。

「人間の生きる目的は種の存続だと思っている。けれども結婚しない人が増えている。法王はどのようにお考えでしょうか」
「結婚するかしないかは個人の自由。結婚してお互いが仲良く人生を歩むことができるならば結婚することが望ましい。また結婚に合わなかったり重い課題を抱えてしまうと向かないかもしれない。日本社会では若い人たちの人口が減り、孤独者が増えていると聞く。高齢者も多い。それは日本だけでなく他の国でも起きている。結婚するかしないかは、自分自身で決めることです(笑い)。サンキュー」

「平和や幸福についてどう考えたらいいのか」
「幸せというのは、心の中に本当の意味の平和がなければ幸せな家庭は築けません。平和というのは争いが存在しないということだけではありません。無関心な状態、何も行動を起こさないのでは平和は来ない。平和は私たち自身の心の中に強い決意と自信をもち、行動することでなければならない」

「日本の観光地ではどこが好きか」
「日本のどの地方を訪れても美しい。それから日本のお米とうどんが好きです(うどんを食べる仕種をすると会場からも笑い)」

「人はなぜ生きるのか。学校では子孫を残すためと習った。その先には何があるのか」
「人生を生きるということはそれほど大変なことではない。ただし、子どもを持てば持ったという苦しみがあり、子どもがいなくいないと、いない苦しみがあるのです」

 20人ほどの生徒たちからの質問を楽しむように法王は聞き入った。講演内容と同様に平和や幸福については、心の平和を説き、物質的な平和よりも精神的な平和を強調した。

2016/12/1 日光開山1250年 輪王寺で記念法要、貴重な和讃の奉詠も

「勝道上人和讃」を唱えて生涯を偲ぶ小暮門跡  栃木・日光山の開山1250年記念慶讃、ならびに開山勝道上人の1200回大遠忌法要が11月21日、天台宗門跡寺院日光輪王寺で厳修された。宗内要職や二荒山神社・東照宮の関係者ら約200人が参列し、世界遺産「日光」の礎を築いた勝道上人の遺徳を讃えた。

 法要は大改修中の輪王寺三仏堂で85世小暮道樹門跡を導師に営まれた。小暮門跡は表白文で勝道上人が遠く天平神護の時代に日光に草庵を結んだ時から「神仏習合、山岳修験の大いなる信仰の灯、この地に灯る」と報謝。それから1250年の間、日光二社一寺は寺領の没収や徳川家の帰依、明治維新の神仏分離による打撃や平成の世界遺産認定など、苦難と栄光の激しい波にもまれながらも「開山上人の灯せし法灯は今なお光を失わず、飛錫の音今も絶ゆることなし」と永遠の興隆を誓った。

 江戸時代後期の日光山学頭・慈観大僧正が今から150年前の勝道上人1050回遠忌にあたって作った「勝道上人和讃」も唱えられた。上人の誕生から出家、日光開山、示寂までをドラマティックに表した内容で、貴重な奉詠に参列者は古代へのロマンをかきたてられた。

 法要後の会食で小暮門跡は、水樹涼子氏の原作による音楽劇「日光開山」や、巻来功士氏による漫画「SHODO」など、多方面で慶讃事業を行ってきたことを振り返り、来春には悲願だった中禅寺湖・千手ヶ浜にある千手堂の再建がかなうとした。「今後も世界の日光発展のために、東照宮様、二荒山神社様、輪王寺が一つになって、日光に来られる方が安心して思い出に残る参拝ができるように努力をしてまいりたい」と語った。

 木ノ下寂俊宗務総長の祝辞を小川晃豊宗議会議長が代読し、総本山延暦寺の獅子王圓明副執行も祝辞。二社一寺を代表して吉田健彦二荒山神社宮司は神仏一体の日光の信仰の尊さを強調し祝意を示し、平成の大改修事業の完遂に期待をかけつつ「二社一寺が一体になって協力していく所存」と述べた。

2016/12/1 真宗大谷派が本願寺文化交流財団を提訴 境内事務所の明け渡しを求める

明け渡しを求めた大玄関にある財団の事務所 真宗大谷派は11月22日、本願寺文化興隆財団(京都市山科区、大谷暢順理事長)を相手取り、京都市下京区の本山東本願寺境内に設置された財団の事務所・倉庫の明け渡しと、同寺山門前に設けられた東山浄苑行きバス停の撤去などを求めて、京都地裁に同月21日付で提訴したと発表した。

 大谷派の助成を運営目的から外し、解散時の財産帰属先を同派以外にも広げるなどの規定変更を行った財団に、変更の無効を求めるなどした訴訟に加え、財団の一般財団法人への移行認可取り消しを求めた一連の裁判は、昨年12月、上告審で同派の敗訴が確定した。

 訴状などによると、明け渡しを求めたのは、同派が1913年に財団に無期限、無償で貸与した大玄関の2室(事務所約39平方メートル、倉庫約39平方メートル)。判決によって、「事実上宗派と無関係な団体となった以上、財団がこれらを使用する法的権利はない」として、同派は今年5月、使用契約の解約を大谷理事長に内容証明郵便で通知したが、財団側が拒否したため提訴した。

 財団に通知が届いた5月12日の翌日から2室を明け渡すまで、月15万円を支払うよう合わせて求めた。同派によると、財団側は現在も週1回程度、事務所を使用。裁判に勝訴した後には、旧法人名「本願寺維持財団」から一般財団法人移行後の現名称に変更した看板に取り替えたという。

 バス停は、御影堂門前を南北に通る烏丸通中央の同派所有の緑地帯付近にある。設置時期は不明だが、1991年にはすでに運行していたという。財団ホームページによると日曜、祝日のほか、お盆、お彼岸などに増便して運行している。行き先の東山浄苑は大谷理事長の就任後、1973年に設立された財団の納骨堂。同派は、バス停の撤去とともに、緑地帯でのバス乗降の禁止を求めた。

 大谷理事長は、故大谷光暢前法主(当時)の次男で、1996年に同派を離脱した。

2016/12/1 「全国仏教者による戦没殉難者慰霊法要」超宗派120人が靖国神社を参拝

本殿に向かって礼拝する仏教者ら 超宗派で作る世界連邦日本仏教徒協議会(世連仏)と関西宗教懇話会共催の「全国仏教者による戦没殉難者慰霊法要」が11月22日、東京都千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑と靖国神社で営まれた。昨年の終戦70年を機に始められ、2回目。9宗12派から仏教者ら約120人が参加した。

 出発前、九段下のホテルで結団式。可児光永・世連仏理事長(天台宗)は、「戦没者の皆さん、戦没された方々を送られた皆さん、今日の日本の礎を作られた皆さんへの感謝の法要を(今年も)執行させていただこう」と参拝団全員に呼びかけた。

 海外で犠牲になった36万4896柱の遺骨を奉安する千鳥ヶ淵戦没者墓苑で祈りを捧げた後、靖国神社へ。参拝団では「靖国神社には『A級戦犯』が祀られていることを理由に、内閣総理大臣や閣僚が参拝することに反対する意見がある。私たちはそういう論争には与しない。ただ世界の平和を願い、散華された御霊を供養する」考えを明確にしている。

 超宗派の仏教者による、靖国神社への大規模な参拝は極めて異例。徳川康久宮司は昨年に続く参拝を歓迎し、「皆様方の靖国神社への強い思いを大変ありがたく思う。慰霊に国も民族も宗教もない。心を込めてご法要を営んでいただければ、ご祭神もさぞかしお喜びになるだろう」と謝辞を述べた。

 拝殿で、般若心経による読経供養を勤修。国難に殉じた246万6千余柱の御霊を祀る本殿に参拝し、玉串拝礼を行った。

 慰霊法要の導師を務めた小池弘三・真言宗須磨寺派管長は、「私の先代は5年間シベリアにおり、向こうで亡くした戦友もたくさんいる。父の兄も靖国神社で祀られている。万感胸に迫る思いがする」と述懐。「私たちは(戦地で)亡くなられた方々の父親の年代になっている。(我が子を)送り出す時の気持ちはどんなだったか。そして帰ってこられなかった時の気持ちはどうだったか…。日々の祈りをこれからも続けてまいりたい」と語った。

 念法眞教の桶屋良祐教務総長は、「宗教は本来、一人一人を幸せにするのが目的。宗旨宗派を超えて手を携えていきたい」と表明。「より多くの仏教者に集っていただき、神道の先生方にもお越しいただいて、今後も純粋な祈りの供養ができるようにお願いしたい」と要請した。

2016/12/1 東京都仏教連合会100周年 結成の地、増上寺で記念式典

法要後、挨拶する新美理事長。左は導師を務めた八木会長 東京都仏教連合会(東仏/八木季生会長・新美昌道理事長)は11月21日、東京・港区の浄土宗大本山増上寺で「結成100周年記念式典」を開催した。地区仏教会の代表や関係団体から約300人が参集。大正5年(1916)の「仏教護国団」結成から100年を振り返った。超宗派による地域に根差した活動の意義を深め、平和な社会の実現に向け「寛容な仏教の教え」に期待が寄せられた。

 初めに八木会長(増上寺法主)を導師に記念法要を厳修。表白では関東大震災や戦災犠牲者の慰霊法要、地域での花まつりや成道会の開催、時局対策、災害支援といった活動を挙げながら、「我が国仏教の発展と歴代先徳の趣旨を受け継ぎ、より一層の報恩精進をここに誓願する」と奉読した。垂示では「釈尊の精神に立ち返って大同団結し、仏教が盛んとなり、本当の豊かさと、世界平和を目指すことを念じます」と説いた。次いで新美理事長が結成100年の歴史を説明したうえで、「これからも50年、100年と仏教を宣揚していく努力をする覚悟」と語り、協力を求めた。

 祝辞では全日本仏教会の中西玄禮副会長が「全一仏教運動」への協力に謝意を示し、「報恩感謝の気持ちとともに生きる仏教。仏陀の教えを奉ずる私たちが、共に手を携えて、世界の平和を念じていきたい」と呼びかけた。小池百合子東京都知事からもお祝いメッセージが寄せられ、「100年という大きな節目を超え、今後益々歴史を重ねられますよう、貴会のさらなるご隆昌を祈念致します」と読み上げられた。

仏教への期待を語った池上彰氏 記念講演会ではジャーナリストの池上彰氏が「提言・期待される仏教」の演題で講演。世界各地で取材を重ねる中で、中東でのイスラム過激派組織IS、ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利をはじめとする欧米での移民排斥を掲げる右派勢力の台頭など、「世界が非寛容になっている」と憂慮し、「本来、宗教は寛容なはずなのに過激な考え方が出てくる。それをとどめるのは教育の重要な役割である」と指摘した。

 一方で「海外に行くことで仏教徒だという自覚が持てた」と語り、日本では多くの宗教を受け入れる「寛容」さや宗教的土壌があるものの、若い世代が自覚的ではない現状を分析。「仏教本来の教えを伝えること。非寛容が広がる中で仏教の寛容さを伝えること。あるいは悩みを持つ人たちが救いを求める機会がどれだけあるのか」と問いかけ、「世の中をよくするため、宗教的な力を使うことができるのではないか。仏教の新たな力を考えなければいけない」と期待を込めて提起した。

2016/12/8・15 真宗大谷派 里雄総長が辞意表明 近く臨宗開き後任選出へ

 真宗大谷派の里雄康意宗務総長(67)は1日、宗議会の会派代表者会と参議会執行部会で、辞意を表明した。後任は15、16日に開く宗会臨時会で選出する。

 御影堂、阿弥陀堂などの修復が完了し、11月の御正忌報恩講に合わせて執り行った御修復完了奉告法要を機に、辞意を固めたとみられる。
次期総長候補となる与党会派・真宗興法議員団代表を決める選挙は6日、公示された。立候補者が複数いた場合、14日に選挙が行われる。これまで代表の任期はなかったが、このほど3年とすることが決まった。

 里雄総長は在任中、大谷暢裕鍵役に決まった門首後継者の選定や、しんらん交流館開設などにも尽力した。宗議会議員や参務を歴任し、12年10月から現職。

2016/12/8・15 立正佼成会中央学研 カジノ法案に反対

 立正佼成会中央学術研究所(川本貢一所長)は5日、国会で審議されているカジノ法案(特定複合観光施設区域の整備に関する法律案)に反対する意見書を発表した。
 国内ではギャンブル依存症の疑いのある人が536万人に上るとされ、「依存症がさらに増えることは想像に難くない」と警告。また教団施設にギャンブルを原因とする相談が多く寄せられていることも述べている。

2016/12/8・15 回想2016 一年前の平和アピール、活かされたか 葬儀にもインフォームドコンセント 志ある青年仏教者の育成と登用を


戦争と平和
 終戦70年の昨年は、安保法案に危機感を抱く市民たちによる反対運動が各地で起きた。宗教者もその輪に加わり、大きなうねりとなった。各教団も声明や平和メッセージなどを発表した。
 ところが熱は冷めたのか、今年はそれらのアピールが活かされたとは言い難い。東日本大震災の犠牲者慰霊と復興を願い、鎌倉の鶴岡八幡宮が協力して東大寺で神仏合同の祈りが捧げられた(9月28日)
 12月8日は成道会。75年前の昭和16年(1941)のこの日、日本軍の真珠湾攻撃により太平洋戦争の火蓋を切った。緒戦は華々しい戦果もあり、日本国中が沸いた。仏教教団もまたさまざまな形で協力体制を敷いた。寺院や教団は金属仏具を供出し、飛行機を献納したりした。物資だけでなく祖師の遺文削除という行為もあった。しかし戦後、戦争責任が問われることになり、1990年前後から教団の懺悔と非戦の誓いに到った。
 日米両政府は5日、安倍首相とオバマ大統領が12月26・27日に真珠湾を訪問すると発表。5月の被爆地広島訪問に対する返礼という意味も取り沙汰されるが、両国トップの政治家が同地で犠牲者を追悼することは意義深い。怨親平等の精神を忘れないでもらいたい。
 しかしながら日本は“戦争法”成立や武器輸出三原則の見直し、軍学共同など軍国化がじわじわ進んでいる。国会は改憲勢力が3分の2を超えた。戦後70年余、平和憲法により、戦場に国民をおくることもなかった。こうした情勢に仏(宗)教者はどうすべきなのだろうか。法学者の眞田芳憲氏(中央大学名誉教授、前WCRP日本委員会平和研究所所長)が一つのヒントを提示している。大逆事件に連座した禅僧、内山愚童をめぐる最近の論文の中で次のように叙述している。
 〈人々は誰しも、日常生活の営みの中で常に選択を迫られている。特に宗教者の場合、貧しき人々や弱き人々の苦しみと悲しみを共にしながら、時には必要ならば不動明王のように慈悲の憤怒を顕にして彼ら衆生と寄り添うか、あるいは自覚的たると無自覚たるとを問わず、これらの非人間的な社会悪を生み出し、これを放置し、あるいはさらに暴加させる国家権力に加担するか、そのいずれの道を歩むか――それはすべてその宗教者の宗教者としての実存的選択と決断にかかっている。〉(「大逆事件と禅僧内山愚童の『仏教社会主義』とその行動の軌跡」、『中央学術研究所紀要』第45号所収)
 すなわち、社会的弱者や困窮者の側と社会悪を生み出す国家権力に対峙した場合、宗教者はどちら側に立つのか迫られるのだという指摘である。それは現在に限らず、未来においても同じであるが、慈眼視衆生の視点は持ち続けて欲しいものだ。



過疎と葬儀事情
 平成28年(2016)新年号紙面で過疎地寺院の現状を取りあげた。国学院大学の石井研士教授が示した「限界宗教法人」のデータを援用。「消滅可能性都市」とされる896自治体に存在する仏教系宗教法人は約2万に及ぶ。具体的な数字とあって各宗派議会や研究会、シンポなどで取りあげられた。
 少子高齢社会と言われて久しいが、現実はさらに進展している。総人口に対して65歳以上の比率が21%を超えると「超高齢社会」という。日本は9年前の07年から超高齢社会に入った。そのため介護や看護は日常的な課題となっている。
 過疎化は若い働き手がその地域を離れると加速する。それにより限界集落化に拍車がかかる。それが寺院維持や葬儀・法事と無関係なはずがない。親元を離れた人が、田舎から都市周辺に墓を移転(改葬)したり、墓終い(お墓の処分や散骨などを含む)したりもする。こうした現象は菩提寺からの離檀となる。この傾向はますます進行していくだろう。
 こうした負の循環は伝統仏教界にとっては厳しい現実である。全日本仏教会は「アマゾンお坊さん便」(僧侶派遣)に対して批判的な声明を発表し、販売中止を要請した。しかしネット上では僧侶派遣を謳う企業や僧侶の組織が数多ある。価格表示も珍しくない。全日仏が主張しているように「布施の精神をないがしろ」にした行為と言える。
 他方で人口流動や家族の世代間のつながりが弱まったり、住職と檀信徒のコミュニケーションが欠けていたりと脱檀家化も起きている。そうした中にありながら僧侶派遣は、伝統的な仏教文化に支えられている。僧侶派遣を「布施の精神」を説諭する機会と捉えれば、両者の歩み寄りは可能であると考える。
 医療の分野に「インフォームドコンセント」という言葉がある。医師は患者に十分な説明をして、同意の上で治療を進めていくという趣旨である。これを寺檀にあてはめるならば、寺院・僧侶は檀信徒に十分な説明をし、納得の上で葬儀や法事を執り行い、お布施をいただく、ということだろう。檀信徒であるか否かを問わず、こうした取り組みも必要だ。
 最後に、地方議会もそうだが、最近は若い僧侶たちが宗会議員になろうとしないと聞く。伝統は大切であるが、変化についていけなければ寺院や教団は周回遅れとなる。「新しい酒は新しい皮袋に盛れ」という格言があるように、閉塞的な状況を変えるには志ある青年僧侶(宗教者)の登場が求められる。教団もまたそうした人材育成と登用が望まれる。
 2年後の2018年は明治維新150年にあたる。終戦の1945年がほぼ中間である。先人たちは何をなし、何を残したのか。今を生きる人たちは何をなし、何を残すのか。近代仏教研究が盛んになってきた現在、そうしたことを検証する機会でもあろう。(工藤)