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2025/10/2
全日本仏教尼僧法団75周年祝典挙行
世界平和を祈願 団員物故者と災害犠牲者追悼も
世界平和と物故者追悼の法要を厳修した 全日本仏教尼僧法団(鷹司誓玉総裁、笹川悦導理事長)は9月17日、東京会館(千代田区丸の内)で結成75周年記念祝典を挙行した。団員や来賓100人が参集し75周年を祝した。
1950年に超宗派の尼僧たちが集い「釈尊在世のときのような純一清澄な尼僧の教団をつくりましょう」との呼びかけで結成された全日本仏教尼僧法団。翌年、日比谷公会堂で300余名の尼僧が集い結成式が行われた。国内外の戦災や自然災害の犠牲者追悼や支援活動、国際交流に取り組み、平成25年(2013)に公益財団法人へと以降。近年は尼僧の高齢化や団員減少があり、令和4年(2022)に理念を共にするシャンティ国際ボランティア会(SVA)と合併し法人を解散したが、現在も花まつり茶会などを行っている。
記念式典では川名観恵・浄土宗大本山善光寺大本願法主を導師に法要を厳修。結成75周年を慶祝し、世界平和を祈願すると共に団員・賛助団員物故者と自然災害犠牲物故者を追悼した。次いで青山俊董氏が記念法話を行った。
祝宴では来賓の高野山真言宗金剛院名誉住職の山田一眞氏が結成当時の思い出を披瀝し、「75年の歴史を現在に繋げていることに敬意を表します」と祝した。乾杯の発声は曹洞宗大本山永平寺の西田正法副監院。「世の中は分断と対立の様相を呈していますが、仏教徒こそが平和という確かな道を示していかなければいけない。そのなかで住持三宝の先端にいる僧宝という自覚のもと、一歩一歩自らの生き方として歩む尼僧法団のような在り方を世に示していくことが平和への確かな一歩ではないかと思います」と敬意を表した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/2
韓国統一教会 韓総裁逮捕受けて2弁護団が声明 日韓組織の実態解明要請
統一教会(現世界平和統一家庭連合)韓国本部の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁が9月23日、政治資金法違反、不正請託禁止法違反等の容疑で韓国の特別検察官によって逮捕された。これを受けて同日、全国霊感商法対策弁護士連絡会と、全国統一教会(世界平和統一家庭連合)被害対策弁護団が声明を発表した。
霊感商法弁連声明では、韓総裁逮捕にいたる経緯に言及した上で、「日本の霊感商法や違法な献金勧誘等の被害者から得た資金が韓国本部において不当な利得や私欲のために支出されてきた実態までが解明されることになると期待し、今後の捜査、公判の推移を注視していきたい」とした。
さらに日本での霊感商法や違法な献金勧誘等が40年以上にわたって行われ、多数の被害者が出ていると指摘。これらを背景に「政治家に不当な手段で影響力を行使しようとしていた実態を解明しようとするもの」と韓国当局の捜査に理解を示す一方で、日本では統一教会と自民党議員の関係について「徹底した実態解明がなされたとは到底言えない」とし、第三者機関による徹底調査を要請している。
被害対策弁護団も「韓国だけでなく、日本からの資金の流れや日本法人への指示なども含め、統一教会の日韓両組織の実態や違法・不正行為の内実についても徹底的に解明していただくよう強く期待します」と表明した。
日本の統一教会に対しては今年3月、東京地裁が宗教法人法の規定に基づいて解散命令を出した。教団側は抗告し、東京高裁で審理されている。高裁が地裁に続いて解散命令を出せば、解散手続きが始まる。
2025/10/2
宗教者核燃裁判 原発問題 裁判から学ぶ 裁判官の使命「社会の一隅照らす」こと
聖アンデレ教会で行われた学習会。井戸弁護士と樋口氏、岡田住職(右から) 全国の宗教者258人が原告となり、日本原燃株式会社を相手に青森県六ケ所村の原子力施設(再処理工場)の運転差止を求める「宗教者核燃裁判」の第8回口頭弁論が9月18日に東京地裁で開かれた。その後、聖アンデレ教会(港区)で行われた学習会では井戸謙一弁護士と元裁判官の樋口英明氏が司法の役割や裁判官の使命を論じた。樋口氏は「一つひとつの仕事が社会の一隅を照らす」とその意義を示した。
井戸弁護士と樋口氏は裁判官時代に原発の運転差し止めの判決を出し、今年6月に共著『司法が原発を止める』(旬報社)を刊行した。宗教者核燃裁判では樋口氏が差し止め判決で提起した「樋口理論」を軸に再処理工場の脆弱な耐震性を訴えている。井戸弁護士は原告弁護団の一人。
共著の刊行について井戸弁護士は「今の裁判官の在りように危機感を持った」と明かした。動機となったのが「6・17最高裁判決」。福島原発事故の国家賠償を求めた訴訟で最高裁は国の責任を認めなかった。井戸弁護士は「非常にレベルの低い判決」と批判し、「(裁判官が)大きな機械の歯車になっている印象がある」と危惧。「裁判官は裁判することで自らが裁かれる」「過去の紛争を解決することで未来のあるべき社会を示すクリエイティブな仕事だ」と矜持を示し、「意欲を持ってほしい」と現職裁判官にエールを送った。
樋口氏は同書から「裁判所に与えられた権能を行使しないことは、権能を乱用することよりさらに有害で無責任」「裁判官の本分は、その一つひとつの仕事が社会の一隅を照らすことにあるかもしれない。ごく希には社会全体が進むべき道を照らす仕事が与えられる」を引用し、「本分を尽くす」ことを求めた。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/2
日蓮宗 ハワイ別院で終戦80年法要企画 11月、アリゾナ記念館でも
日蓮宗(田中恵紳宗務総長)は11月14日、米国ハワイ州オアフ島のハワイ日蓮宗別院で田中総長導師の下、終戦80年ハワイ慰霊法要を営む。当日は真珠湾にある慰霊施設アリゾナ記念館でも慰霊法要を執り行う。協賛する日蓮聖人門下連合会や全日本仏教会の他、現地のハワイ仏教連盟加盟宗派からも代表者が参列する予定だ。
ハワイ日蓮宗別院には、太平洋戦争の口火を切った真珠湾攻撃で命を落とした日本軍兵士65人の霊簿が奉納されている。霊簿は有志により1970年代に作成された。奇襲攻撃によって差別を受けたハワイ在住日系人の感情を配慮して、現地の各宗派仏教寺院は霊簿の受け入れを拒否し、行くあてのなかった霊簿を当時の別院第10代・堀教通師が受け入れた。
霊簿には、後に1945年の静岡空襲でB29に搭乗し戦死した米兵21柱も追加されている。この米兵が付け加えられた時期などは不明だが、別院では、日本人の戦死者と共に米国の戦死者も弔い、慰霊を続けてきた。
別院での慰霊法要に加え、真珠湾攻撃で撃沈された戦艦アリゾナ(乗組員1177人の内1102人が戦死)の戦没者を追悼するアリゾナ記念館でも慰霊法要を行う。
同館は沈没した戦艦アリゾナの上に建設された国定慰霊碑。同じ湾内には日本が降伏文書に調印した際の会場となった戦艦ミズーリもあり、日本の仏教者が〝戦争の始まりと終わり〟に関わる場所で全戦没者の慰霊を行う機会となる。
終戦80年にあたる今年は、日本仏教各宗派や地域仏教会により各地で終戦80年の戦没者慰霊法要が執り行われており、日蓮宗でも毎年「終戦の日」の8月15日に東京・国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で営む法要に加え、沖縄、広島、鹿児島、長崎などで法要が営まれている。
2025/9/29
真言宗豊山派 保護司と教誨師が合同研修 薬物依存からの回復 ダルクに学ぶ
豊山派保護司会と豊山教誨師会は10日、東京都文京区の真言宗豊山派宗務所で初の合同研修会を開催。NPO東京ダルク(荒川区東日暮里)の森田邦雅氏が薬物依存からの回復の取り組みを紹介。薬物依存者2人が自身の体験を語った。回復のための安全な居場所の問題について理解を深めた。
ダルク(DARC)はドラッグ(D)・アディクション(A)・リハビリテーション(R)・センター(C)の頭文字をとった名前。薬物依存者に身体・精神・社会的援助として、薬物を使わない生き方のプログラムを提供する。自身も薬物依存者だった近藤恒夫氏がアルコール依存症の自助グループやリハビリ施設での回復プログラムに学びながら、薬物依存者が安心して回復できる専門施設として1985年に荒川区で活動を始めた。今年で40周年を迎える。地域のなかで回復者が少しずつ生まれ、そうした人たちが全国各地に草の根的にダルクの活動を広げ、現在は全国各地で約60団体が活動しているという。
東京ダルクはほとんどの職員が薬物依存の回復途上者で森田氏もその一人。「回復者と言われるが過去の問題じゃない。今も薬物依存者で回復の途上者。完治はないが回復できる病気」と説明。
入寮者や通所者は午前と午後のミーティング、夜は地域で行われる自助グループでのNA(ナルコティクス・アノニマス)ミーティングに参加。これを通して「薬物を使わない生き方」への方向付けをするという。ミーティングでは「自分の人生を振り返り、自分自身の弱さや欠点を分かち合う。その中で皆で経験と力と希望を分かち合っていく」と森田氏。
多くの薬物依存者が孤独感や不安感を抱えるなかで薬物に依存し「社会からドロップアウト」してしまうが、「自分1人だけじゃない。もう1度人生をやり直そうという人たちが出会い、ミーティングで孤独や不安、弱さに気づき、あるがままの自分を受け入れていく。自分自身を大切にしていくことによって、仲間も大切にしていく。そうすることによって生き方が転換していく」とそのプロセスを提示。
森田氏は「回復は生涯続くもの。今日1日薬物を使わないような生き方をやっていく」との考え方を示し、「クリーン」になるまでには2回3回の「再発」があるが、「再発はダメじゃない。失敗を通して回復するというのが本当の姿だと思う」と実際を話した。
研修会では薬物依存者のスカイさんとシュンさんが薬物依存と回復の体験を共有した。スカイさんは「止めたいと思っても止められない」状況からダルクにつながった希望を、シュンさんは家庭内暴力を起因にする不安感や孤立から薬物依存になった体験とダルクとの出会いについて話した。
森田氏は薬物依存者だけでなく高齢者の孤独死や「トー横キッズ」など社会の「孤立」の問題を挙げ、「居場所づくり」の大切さを強調した。
2025/9/25
本願寺派 第45回千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要 門主 戦争支持を反省
六角堂の導師席に向かう大谷光淳門主 いわゆる15年戦争の導火線となった柳条湖事件(1931年9月18日)から50年となる昭和56年(1981)から東京・国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で全戦没者の追悼法要を勤めてきた浄土真宗本願寺派(西本願寺)は同日、大谷光淳門主を導師に45回目の法要を執り行った。門主は表白で「戦争を支持した宗門の歴史を深く省みて、非戦平和の願いを新たに致します」と宣明した。全国から1500人が参拝したほか、ユーチューブで同時配信された。
法要に先立ち、千鳥ヶ淵墓苑に設置された平和の鐘と各地の梵鐘が一斉に撞かれ、平和を願った。続いて園城義孝総長が今年4月14日に発表された「戦後80年にあたっての平和を願うメッセージ」を読み上げた。その中で、第2次大戦では世界各地において多くの市民が犠牲になり、日本でも沖縄の地上戦、広島・長崎の原爆、都市の空襲により凄惨な状況に陥ったことを列挙し、一方で「その戦争に協力し、戦争を賛美したことも、私たちの教団です」と戦争責任に言及した。
法要では、大谷門主が表白。「武力による争いの解決は、真の安らぎをもたらさないことを広く世界に伝えると共に、あらゆる人々が武器を取って争うことなく、お互いを認め合い、心豊かに暮らすことの出来る道を切り拓くために努力し続けなければなりません」と教団の使命を強調。そして「私たち人間の根本的な愚かさと、仏法の名において戦争を支持した宗門の歴史を深く省みて、非戦平和の願いを新たに致します」と述べた。
参拝者全員で正信念仏偈とお念仏で全戦没者を追悼した。(続きは紙面をご覧ください)
2025/9/25
各山会 代表総務が途中交代 高野山の今川執行長に
真言宗各派総大本山会は8日、京都市東山区の智山派宗務庁で常任委員会を開いた。菊入諒如事務局長が冒頭で、代表総務だった三神栄法・智山派総本山智積院寺務長が8月8日の臨時総務会で一身上の都合により任期途中で辞任したと発表。常任委を中断して別室で総務7人の互選による新代表総務の選出が行われ、今川泰伸・高野山真言宗総本山金剛峯寺執行長が就任した。任期は通常2年間だが、今回は途中交代のため前任者の残任期間で来年6月末日。
菊入局長が、「三神代表総務が辞意を表明した席上、総務も全員辞任という方向に話が行ったが、それでは今後の各山会の議事に支障を来たすということで代表総務のみの辞任が承認された」と経緯を説明。別室での新代表総務選出が終わると、「常任委員を4年間務め、(真言宗の最高厳儀である)後七日御修法の(大阿闍梨を支える事務局の最重要職)別当を経験している今川僧正が一番適任ということで決まった」と報告した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/25
全日仏青 来馬氏が新理事長に就任 〝日本と世界の仏法興隆目指したい〟
就任の挨拶を述べる来馬新理事長 全日本仏教青年会(全日仏青)は16日、さいたま市浦和区の埼佛会館(埼玉佛教会)で臨時理事会を開催。新理事長に前副理事長の来馬司龍氏(48)が就任した。第25代理事長の来馬氏は埼玉県仏教青年会所属で、同青年会からは第17代理事長の宮寺守正氏(曹洞宗)以来となる。任期は2年。
来馬新理事長は、「48歳だが、気持は青年のまま」と挨拶した。さらに「仏教離れが叫ばれている。そんな中で全日仏青は何ができるのか、そしてこの仲間たちと何を学んでいけるのか。それが大事なことだと思っている」と語った。そして「みんなで仏教を盛り上げていきたい。若い力で日本と世界の仏法興隆を目指して頑張っていきたい」と抱負を口にした。来馬氏は就任にあたり「普く等しく済(すく)う」をモットーとして掲げている。
なお、事務局長には神奈川仏青の菊池重忠氏(日蓮宗)が就任した。
【来馬司龍理事長略歴】くるば・しりゅう/1977年8月17日生まれ。立命館大卒。曹洞宗大本山永平寺安居。全日仏青事務局長、埼玉仏青事務局長などを歴任。曹洞宗第2宗務所青年会「彩青会」会長。富士見市の曹洞宗大願寺住職。
2025/9/25
WCRP理事会 資産運用着手を承認 米国の投資信託に3600万円
世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(戸松義晴理事長)は11日、オンラインで理事会を開催し、WCRPの運営改善に向けて資産運用と遺贈寄付に取り組むことを承認した。基本財産1億600万円のうち、約3分の1にあたる3600万円を運用する。
日本委はこれまで定期預金と国債で資産を運用してきたが、「元本割れを防ぐ安全性に主眼」が置かれてきた。前回の理事会で運用の見直しが決まり、事務局では外部専門家の助言を得て運用試案を策定し、今回の理事会に提出した。
運用原則として、▽安全性と効率性の確保、▽リスクの分散、▽運用対象のバランスの考慮、▽投資対象の選定はWCRPの理念や使命に反しない――を提示。その上で米国の投資信託会社「インベスコ世界厳選株式オープン」に投資するとした。これには大手銀行出身で資産運用経験が豊富な佐藤武男・立正佼成会理事と相談の上で決めたという。
3600万円(3600万口)をインベスコで運用すると、配当は1万口あたり毎月150円で、月54万円、年間648万円が配当されると試算。事務局では「安全性を確保するため、専門家と常時相談し、リスクが起きそうな場合は直ちに必要な措置を講じる」と説明した。
三宅善信理事は、日本では30年ほど金利のない状態にあり、「仮に消費者物価が毎年3%ずつ上がったら、金利が0・5%で実質マイナス2・5%。そうするとローリスク・ローリターンとは言い切れない」と資産の目減りを指摘。
事務局が相談相手としている佐藤理事が宗教法人の資産運用に際して「ミドルリスク・ミドルリーン」と発言した新聞記事を紹介。国際NGOでの自らの資産運用体験を交えて、「WCRP日本委は公益財団法人。宗教法人とは異なるものの同じ公益法人。資産運用は同様のルール(ミドルリスク・ミドルリターン)で運用して欲しい」と要請した。(続きは紙面をご覧ください)
2025/9/19
共生特集 日常を変えた温暖化 仏教の実践が未来を変える
窪川香薫(浄土宗僧侶・海洋生物学者)
とにかく暑かった今年の夏。気象庁は今夏の平均気温が平年を2・36度上回ったと発表した。毎年のように記録が更新されている。加えて日本を囲む海水温の上昇は自然災害の激甚化につながっている。温暖化を押し止めるために必要な行動とは何か、そして仏教者がどんな役割を果たせるのか。海洋生物学者で浄土宗僧侶の窪川香薫氏に提起していただく。
令和7年の夏は、前年に続く猛暑だった。9月になっても30℃を超える日が続く。身近な自然は高温のためか、アリ、蚊、クモ、セミが少ない。生活では、米、野菜、果実の不作、卵の値上げ、魚の不漁など、農家も漁師も高温と少雨に困り果てた。温暖化は、産業革命以降、豊かさを求めてきた私たちの生き様の結果であり、いつの間にか巡り巡ってきた。
平均気温の急上昇
気象庁は、令和5年以来、夏の平均気温が急上昇していると発表した。今年は歴代1位となり、猛暑日数は増え、40℃以上の地点も増え、初の41・8℃が観測された。気温上昇が直近30年を大きく上回った。特に海水温の上昇が大きかった。また、最も早い梅雨明けと7月の顕著な少雨も記録的であった。これらの要因は、地球温暖化であり、それに伴う異常気象である。日本は海に囲まれているために海水温の上昇がもろに影響する。
日常生活も変わった。節電は無理をしない冷房使用に変わり、庭木の水やりは最低限になった。水と塩分の必携も習慣化した。
毎日、暑さ指数や熱中症警戒アラートに注目せざるを得ず、温暖化は行動を制限するだけでなく生死に関わる災害になっている。さらに温暖化を起因とする線状降水帯、豪雨、竜巻、台風などの激甚化は、誰もが自然災害に遭遇する可能性を増している。少雨続きが突然の豪雨に化けた地域も少なくない。
暑さが過ぎた安堵の秋のはずが、今年は温暖化の進行を認めざるを得なかった。夏の酷暑はこれからも続く。というよりも続かない理由がない。195の国と地域が関係する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は気温上昇を1・5℃に抑えるという目標を設定しているが、これを突破してしまい2℃で考えようとの論文も出ている。突発的に気温が下がる年があったとしても温室効果ガスの排出を大幅に抑えるといった対策を取り続けなければ温暖化は抑えられない。
漁獲量減少ですすむ養殖
海には温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を吸収する役割がある。しかしその容量はとうに超えてしまい、世界の海で海水温が上昇している。温暖な黒潮が流れる日本の周辺海域は世界平均に比べて海水温が高く、それが災害級の猛暑や線状降水帯の発生につながっている。
海水の高温化で水産物の漁獲量が減少している。また北海道ではサケが減り、ブリが増えるなど、近海の魚種に変化が起きている。水産業でも高温に強い品種の開発を進めたり、川に戻る天然のサケ漁ではなく、佐渡や東北の海面養殖のサケがスーパーに並ぶようになった。温度をコントロール出来る陸上養殖も増えている。ただ、陸上養殖は電気代や餌代もかかるため、コストが高くなる。
多くの生物は私たちが思う以上に強く、将来は、高温を好む美味しい魚介類や藻類が出てくるかもしれない。しかし環境変化が速すぎて適応が追いつけない恐れが多分にある。海外では、サンゴ礁が白化して藻類が育たず多くの生物の消えた海がすでに出てきている。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/19
共生特集 山形県・源福寺 本堂で犬とふれあい会 アニマルセラピーに効果
7月27日のふれあい会の様子(源福寺提供) 山形市の浄土宗源福寺(鈴木好善住職)は本堂で「わんわんふれあい会」を行っている。仏さまに見守られた広い空間でセラピー犬と人間が遊ぶことでの解放感が大好評だ。山形アニマルセラピー協会との共催。
アニマルセラピーは国際的にも認められた医療・養育の技術で、動物と触れ合うことで闘病生活を送る人の心のケアや、日常生活の中でのストレスの解消、発達に課題を抱える子どもの成長サポートとなど様々な分野において癒しをもたらすもの。寺庭婦人の由香里さんがアニマルセラピストの資格を持っている。
「セラピストの方々も、病院やケア施設での活動だけでなく、定期的に犬と触れ合える場所があればいいと考えていたのですが、ちょうど本堂を新築したこともあり、それならお寺でやろうと思ったのです。どなたでも来られる場所ですから」と鈴木住職。2022年に開始し、ほぼ月1回開催。多い時には犬5頭、参加者30人以上が集まる。
もちろん、セラピー犬は訓練を受けているため人を噛んだりすることはない。源福寺の愛犬であるトイプードルのあずきちゃんもセラピー犬として活躍中だ。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/19
共生特集 立正佼成会 帰宅困難者の受け入れ想定 本部職員が防災訓練
訓練で止血法を学ぶ参加者 立正佼成会(東京都杉並区、庭野日鑛会長)では5日、首都直下型地震などの大規模災害時における地域住民や帰宅困難者の受け入れを想定した本部職員の防災訓練を実施した。避難者の受け入れについての座学や応急手当、初期消火等の訓練を通して災害時の役割や行動を学んだ。約150人の職員が参加した。
首都直下型地震での帰宅困難者は都内だけでも約70万人といわれ、インバウンドの約30万人を含めると100万人ともされ、一時避難場所の充実が課題だ。今年4月に東京都と東京都宗教連盟が防災力向上の連携協力を行う協定を締結した。
立正佼成会では、2015年に杉並区と「帰宅困難者一時滞在施設の提供に関する協定」を締結。大規模災害に備え、3日間1日最大500人の帰宅困難者を大聖堂と第二団参会館で受け入れる体制を整えている。
災害対策本部事務局長の三善健雄・総務グループ次長は「東京で大きな地震が起きた場合、人命救助の優先と二次被害の回避で、3日間留まることが必要です。我々本部職員も職務中にそうした災害が起きた場合は、本部に原則3日間残る必要があります」と説明。震度6弱以上の地震で災害対策本部が設置され、本部職員は家族の安否が確認でき次第、速やかに本部に参集して対応にあたらなければならない。
訓練では、止血処置やAEDの使用法など応急手当、消火栓を使った消火訓練などを実施。避難者受け入れを想定し、倉庫から水や食料を運搬する訓練も行った。
広大な普門館跡地や免震化した大聖堂について避難場所として期待の声が寄せられており、訓練後の感想では、「災害時に職員としてどう動くかイメージできた。覚悟というか、近隣の皆様をお受け入れするんだ!という気持ちにさせていだきました」との声があった。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/19
共生特集 群馬県観昌寺×高山麺業 廃棄麺を地域福祉に活用 フードロス削減、布施行の循環
中澤住職(右)から麺を受け取るむつみ保育園の林園長 群馬県前橋市の真言宗豊山派観昌寺の中澤賢正住職は、市内の製麺業者から規格外で廃棄となる「麺」を提供してもらい、自ら運転する車で福祉施設等に配っている。フードロス削減に貢献するだけでなく、活動を通じて地域社会に布施行の循環が生まれている。
8月末の暑い日。中澤住職は前橋市内にある高山麺業に到着すると、慣れた手つきで麺の入ったパレットケースを荷台に積み込む。その数約1000食分。人気の焼きそばと特産のひもかわうどん、ラーメンに蕎麦。荷物を積み終えると、支援先リストにある福祉施設や寺院の中から、その日に配る施設を選び、電話で連絡する。「今日は支援可能ですか?」
人助けの機会
檀家の1人が毎週麺を持ってきたことから、廃棄される〝麺事情〟を知り、配布を手伝ったことが始まり。自身が関係する障がい者の就労支援施設をはじめ保育園や幼稚園、地域の福祉施設や子ども食堂へのルートが出来たことで、高山麺業と直接やりとりするようになった。活動は3年以上続いている。
中澤住職(右)と高山麵業の小柳氏 提供される麺はグラム不足や、出荷許容範囲を過ぎて規格外となったものだが賞味期限内の「美味しく食べられる製品」。活動が知られるようになると「子ども食堂からも問い合わせが来て、今7、8カ所に麺を提供している」と同社取締役の小柳泰史氏は話す。飼料用に業者に引き取ってもらっていた廃棄料は大幅に減った。それだけではない。「中澤住職に色んな話を聴き、困っている方がいると知った。喜んでもらえるのは嬉しいし、人助けができるって良いことです」と地域貢献の充実感を滲ませる。「ボランティアで毎週続ける人はなかなかいない。心が豊かじゃないとできない」と中澤住職に敬意を表すが、当人は「1、2回で終わるのは嫌で、やるなら納得するまでやりたい。誰かに喜んでもらえて、心を豊かにしてくれる。機会を与えてくれて、こちらこそ感謝している」と話す。
(続きは紙面でご覧ください)