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2022/8/11
比叡山宗教サミット35周年 雷鳴と豪雨 山上式典を中断 「気候変動を実感」参加者


午後3時半、鐘の音と共に平和の祈りが捧げられた 稲光と雷鳴、豪雨となった8月4日の比叡山宗教サミット35周年の式典。比叡山山上で午後3時に開式し、同5時頃までの予定だった世界平和の祈りの式典は、あまりにも激しい雨と雷のため中断となり、午後4時前に中止を宣言した。「気候変動と宗教者の責務」をテーマに開かれたサミットだが、猛暑続きと突然の雷雨に、「気候変動を身近に感じた」と参加者は口を揃えた。そうした中で環境重視型のライフスタイルへの転換を求めた「比叡山メッセージ2022」が発表された。午前中の国立京都国際会館での開会式典・記念講演・シンポジウムは予定通り行われた。主催は「世界宗教者平和の祈りの集い」実行委員会(委員長=阿部昌宏・天台宗宗務総長)。(続きは紙面をご覧ください)

2022/8/11

第36回全国仏教保育北海道大会 「連なる生命」テーマに開催 生命尊重の保育、深化の場に


4年ぶりに開催された全国仏教保育北海道大会の開会式 (公社)日本仏教保育協会(日仏保/髙山久照理事長)は7月29・30日、北海道札幌市のカナモトホール等を会場に、第36回全国仏教保育北海道大会(野村定弘実行委員長)を開催。大会テーマ「連(つら)なる生命(いのち)」のもと、基調講演や分科会を通して、日仏保が標榜する「生命尊重の保育」の意味を深めた。

 全国大会は平成30年の愛知大会以来4年ぶり。コロナ禍のため、各会場の定員を50%に設定するなど感染対策を図っての開催となった。来賓をはじめ全国の仏教系保育園、幼稚園、認定子ども園の職員ら約450人が参加した。

 開会式では北海道の自然や動物の映像を背景に、北海道出身で和太鼓・津軽三味線二刀流演奏家の木村善幸氏のパフォーマンスで参加者を歓迎。

 日仏保名誉会長の八木季生・浄土宗大本山増上寺法主(当時)の代理で同寺執事の巖谷勝正氏が式辞を述べ、「幼児期の間に仏教情操教育のもとに人格形成がなされることは非常に大切である」という八木名誉会長の言葉を紹介したうえで、「本大会で研鑽を積み、それを現場で活かしていただきたい」と呼びかけた。

 大会委員長の髙山理事長は仏教保育の原点である釈尊の教えにふれ、「自分のいのちと他のいのちの連なりに気づくことが大事」と指摘。新型コロナウイルスの影響で対面での関わりが減少し、気候変動、紛争や人権侵害、貧困など多岐にわたる問題を抱える社会にあって、「これらを解決に導き、持続可能な社会の担い手となる子どもたちを育てるためには、慈悲と智慧を基調とする仏教保育の実践が重要である」と意義を強調した。

 実行委員長の野村氏は北の大地で開催される大会参加を歓迎し、「2月の末から東欧で想定外の悲しい状況が続いている。今一度、命の尊さ、命の意味を問い直すことは今日的意義がある。生命尊重の保育の更なる実践、深化の場となることを」と期待した。 

 来賓祝辞では北海道の鈴木直道知事(土屋俊亮副知事代読)、秋元克広札幌市長(ビデオメッセージ)、自民党衆議院議員の和田義明氏、全日本仏教会の尾井貴童事務総長が幼児保育・教育の実践に敬意を表し、大会の成功を念願した。

 開会式は「私たちは、いま子どもたちと、生き生きと過ごすなかで生命の輝きを体現すること、そこに、共に生きることの喜びを誓い」とする大会宣言が読み上げられ締めくくられた。

 初日は、釈徹宗氏(相愛大学学長・本願寺派如来寺住職)が「仏教と保育のケミストリー」と題し基調講演。大会テーマのもと釈氏、本田優子氏(札幌大学教授)、今津秀邦氏(写真家・映画監督)が北海道のアイヌ文化や自然や動物の姿から「生命」を多角的に語った。シンガーソングライターで本願寺派教恩寺住職のやなせななさんによる記念公演「悲しみの先に開かれる世界」では、ガンを克服した体験、東日本大震災の支援活動を語り、味わい深い歌声をホールに響かせた。2日は市内のホテルロイトン札幌、かでる2・7を会場に11分科会が行われた。

2022/8/11

大本山増上寺 新旧法主そろって入退山 八木氏から小澤氏へ血脈相承

 
三解脱門前で開門の作法を行う小澤氏 東京都港区の浄土宗大本山増上寺で1日、新法主の小澤憲珠第89世(80)の入山式と、7月31日に法主を退任した八木季生第88世(93)の退山式が合わせて執り行われた。1993年に総本山知恩院(京都市東山区)門跡に転董した中村康隆第85世以来、生前に法主が退任するのは29年ぶりで、参列者約120人は両法主がそろった極めてまれな入退山式で、念仏の相続を喜んだ。

 同寺によると、中村氏が退任した際には今回のように合わせて行われる入退山式はなかった。1978年にその2代前の大野法道第83世が生前に退任した際も同じく執行されておらず、こうした形の式は近年では例がないという。

 大殿での退山式中に、開山堂で聖聰上人ら先師に就任を奉告した小澤氏は、自坊・極楽寺(東京都八王子市)の関係者ら約60人と列をなし、三解脱門前に進んだ。開門の作法を行いくぐり抜けると、楼上から散華が降りそそいだ。

 大殿では、徳川宗家次期当主の徳川家広氏が総代代理として八木氏に花束を贈呈。友田達祐執事長が感謝の言葉を伝え、2008年の法主就任から宗脈と戒脈を授けた加行道場成満者800人超が教師として活躍しているとし、「八木台下の大いなる足跡は、浄土宗850年の歴史に残る偉大な功績。心から敬意を表します」と述べた。

 退山式が終わり大殿に入堂した小澤氏は、八木氏から授与された払子を手に入山式を営み、「浄土宗の伝統、増上寺の血脈をお手次ぎさせていただいた」と法主の継承を告げ、「身の引き締まる思い。八木台下の思いを受け、大本山増上寺の念仏道場としての伝統を受け継いでいく」と誓った。

 晋山式の日程は未定。

 小澤法主は1941年生まれ。大正大大学院博士課程満期退学。同大名誉教授。同大副学長・浄土宗学監を務めたほか、浄土宗総合研究所所長など要職を歴任した。八木氏の退任に伴い、6月に法主に推戴された。任期は1日から4年間。

2022/8/11

大本 ゲノム編集に見解 未来への禍根を憂慮し宗教者らの機関設置提言 


 大本教学委員会は7日に発行された教学研鑽誌「まつのよ」第9号で「『ゲノム編集』についての見解」を公表した。ゲノム(生物の遺伝子情報)を操作して食用や医療用などの動植物の育成に利用する技術「ゲノム編集」について、宗教的、倫理的観点から慎重な検討を求めるもの。

 見解は、大本が従来から遺伝子組み換え技術について「科学の暴走」として警鐘を鳴らしてきたことを踏まえ、「ゲノム編集技術については、遺伝子組み換え技術よりもはるかに研究・開発期間が短く、将来的な安全性の確認も極めて不十分なことは明らかである」と指摘。現在の日本ではゲノム編集が施された作物・食品に表示義務はないが、子孫の健康に悪影響を及ぼす不安が拭えない以上、国民の知る権利として遺伝子組み換え食品と同様の表示義務を果たすべきとした。

 また医療への応用に際しても医療関係者はリスクの説明責任があるとしている。生態系への不可逆的な影響も危惧。科学者だけでなく倫理学、社会学、哲学、宗教学、市民代表や宗教者を含めた幅広い分野の専門家による公的機関を設置し、国民的議論を積み重ねなければならないと提言している。

 人間が恣意的に行うゲノム編集は自然の摂理とは異なり、自然界に異変をもたらす危険性や万物の神性を損なう恐れがあるとし、「私たちの生命を守り育てて下さる大地のご恩に感謝を捧げ、神意(宇宙の意志)に従うまことの生き方ができるよう共に祈り、人類および全生物の未来に禍根を遺すことがないよう、『真の科学』の発展を期待するものである」としている。

 宗教教団がゲノム編集に見解を出すのは異例。2018年12月に日本宗教学会など3学会は「ゲノム編集による子どもの誕生についての声明」を発表している。

2022/8/4
水月会ウクライナ支援 大使館訪れ200万円寄託 日本で負傷者のリハビリに


コルスンスキー大使(中央)と中島支援委員長(左)。右から本多住職、松原氏。左端は小泉氏 アジア各地で小学校建設など教育支援を行っている(一社)水月会(事務局=東京都品川区、来福寺内)は7月29日、都内のウクライナ大使館を訪れ、セルギー・コルスンスキー大使に支援金200万円を寄託した。大使は感謝すると共に用途について負傷者のリハビリに充てたいと話した。

 訪問したのは水月会理事でウクライナ支援委員長の中島真成氏(浄土宗梅窓院住職)、同会理事の本多隆法氏(真言宗智山派来福寺住職)および、橋渡し役を担った同会顧問で衆院議員の松原仁氏と元衆院議員の小泉俊明氏の4人。

 中島氏からコルスンスキー大使に支援金が手渡され、大谷暢顯・水月会名誉会長(東本願寺第25代門首)から寄せられた「一日も早くこの戦争が終わり、貴国の方々が安らぎを持って生活できる日々が訪れるようご祈念申し上げます」とのメッセージを紹介した。

 大使は「心からお礼を申し上げます」と謝意を示しつつ、「ウクライナには平和以外の目的はない。しかし残念なことに毎日のように民間人の殺害が続いている。その理由もわからないことが多い」と顔を曇らせた。「ロシアに期待するのは、殺すことを止めて撤退してください、ということだけです」と話した。

 大使は「ウクライナから二人ほどの負傷者を日本に連れてきたい。その方のリハビリや治療費に支援金を充てたいが、そうした用途でもよろしいのか」と尋ねると、水月会側は「大使館にお任せします」と返答。安堵した表情で大使は「日本のリハビリはレベルが高い。リハビリ後は、(その人に)社会で貢献させてもらいたい」と話した。

 本多理事は避難民一家族(3人ほど)を自坊の客殿で受け入れる用意があることを伝えると、大使も大きくうなずき、感謝した。

2022/8/4
第56回仏教伝道文化賞 本賞 田中昭德氏・聖観音宗浅草寺貫首 奨励賞 東大寺福祉事業団・奈良市 


 (公財)仏教伝道協会(木村清孝会長)は7月28日、都内の仏教伝道センタービルで第56回仏教伝道文化賞選定委員会(大久保良峻委員長・早稲田大学教授)を開き、本賞に聖観音宗浅草寺(東京都台東区)の田中昭德第二十八世貫首(90)を選定したと発表した。半世紀以上にわたり多くの仏教音楽を作曲したほか天台声明の普及、浅草寺での活動などが評価された。沼田奨励賞には社会福祉法人東大寺福祉事業団(奈良市、富和清隆理事長)が選ばれた。
 
 仏教伝道文化賞は国内外を問わず、仏教関連の研究や論文、美術や音楽、仏教精神を基に活動する実践など幅広い分野で仏教精神と仏教文化の振興と発展に貢献した人物や団体に贈られる。平成24(2012)年度からは 今後の活動が期待できる個人や団体に贈る「沼田奨励賞」が設けられた。

 本賞の田中貫首は昭和7年(1932)生まれ。武蔵野音楽大学を卒業。浅草寺で僧籍を取得。仏教讃歌の作曲やコーラスを中心とした仏教音楽の振興、さらに能・狂言のルーツとされる天台声明の普及に努めた。

 また大正大学音楽部混声合唱団を草創期から指導し、第22回仏教伝道文化賞を受賞した伊藤完夫氏(1906~2005)と共に戦後の仏教讃歌を支えてきた。

 奨励賞の東大寺福祉事業団は聖武天皇1200年御遠忌記念事業として昭和30年(1955)に設立され「東大寺整肢園」の開園をみた。奈良仏教の伝統と華厳の教えを背景に、難病の子どもとその親が家族となる縁を大切にし、親子である喜びを実感できるよう支援し、いのちの尊さを伝える活動を続けている。

 贈呈式は10月27日午前11時から仏教伝道センタービルで。受賞者には記念品及び賞金(本賞500万円、奨励賞300万円)が贈られる。


 受賞者の声
 

浅草寺・田中昭德貫首 仏の教えを音楽と共に

 諸大徳・諸先生方もお受けになっているこの賞を、不肖の私が頂戴する報に接し、最初は他の方の間違いではないかと思いました。過分な賞を頂戴し、大変恐縮に存じております。またこの報をいただきました折、昭和51年(1976)に、当山第二十四世貫首・清水谷恭順大僧正が、協会様から「功労賞」をいただいたことを、あたかも昨日のように思い出します。

 私は学生のころから音楽と親しんできました。仏様を讃嘆する音楽・声明は、それを聞く人のみならず、歌う人・唱える人・演奏する人も含めて、大勢を仏様の世界にいざないます。今回の栄誉を頂戴しまして、これからは、時代に即した「仏様の音楽」のお届けの方法を、積極的に模索していく必要があると痛感しております。他方、浅草寺には国内外から多くの方がお参りにいらっしゃいます。そのすべての皆様が、心の平安、安心、やすらぎを得てお帰りになれることを、私のみならず、一山住職・職員一同ともに、胸に刻みながら日々つとめております。その日常をご評価いただいたと思われ、只々有難いことです。

 この度賜りました栄誉は、「皆様のために、これからも怠らずに努力せよ」とのお言葉であると受け止めさせていただき、今後も微力ながら音楽を通しての伝道と、浅草寺での布教にまい進する所存です。


東大寺福祉事業団・富和清隆理事長 難病家族が楽しむ

 伝統ある賞を受賞させていただき、とても名誉なことだと感謝しております。ささやかな活動ですが、10年余り自分たちにできることを続けてまいりました。

 難病の子どもたちとそのご家族は、ケアだけで精一杯の毎日をおくっています。命があることの感謝を常に感じるご家族に一緒に楽しんで大切な時間を共有してもらうレスパイト事業は、平成22年(2010)から第1回が始まりました。事業を大きくすることより、背伸びをせずに自分たちができる範囲のことを続けていくことを心掛けてきました。

 千年以上の歴史のある仏教の教えや大仏さまに触れられる東大寺は、命の大切さを感じているご家族にとっても、大切な時間を一緒に過ごすのに相応しい場所です。受賞を励みに、今後も1回1回をできるだけ丁寧に行うことを大事にしていきたいと考えています。

2022/8/4
熊野・天台宗那智山青岸渡寺/西国霊場第一札所 中興9世 髙木亮英住職が晋山 那智の滝から慈悲心発信


智英副住職㊨と共に那智山信仰の唱導実践に邁進すると誓う髙木住職 世界遺産・西国観音霊場第1番札所の天台宗那智山青岸渡寺(和歌山県那智勝浦町)で7月24日午後、中興第9世・髙木亮英住職(72)の晋山式が営まれた。髙木住職は陽光に輝く那智の大滝を臨む本堂で、那智山での1千日の修行をし西国観音霊場を中興した花山法皇の法具を継承。「観音様の慈悲の心とは、人に対する思いやり、慈しみ、優しさの心。(大勢の人が)観音様にお参りすることで、平和な明るい和やかな社会になることを願う」と述べ、那智山信仰のさらなる唱導実践を誓った。

 髙木住職は、約1700年前にインドからの渡来僧・裸形上人(同寺開山)が観音菩薩を感得した那智の滝を拝しながら、熊野山伏や天台宗高僧と共に信徒会館から本堂まで進列。多くの参拝者が見守る中、堂内に入った。(続きは紙面をご覧ください)

2022/8/4

日本研究国際賞受賞 ロベール氏が講演 釈教歌が仏教を日本化


日本に仏教文化が息づいていると話したロベール氏 日本文化研究機構(東京・虎ノ門)の第3回日本研究国際賞授賞式が7月21日、受賞者のジャン=ノエル・ロベール氏(72)が在住するフランスと日本学士院(同・上野公園)をオンラインで結んで開かれた。

 同賞は海外を拠点に、日本に関する文学や言語、歴史など人間文化研究で成果を上げ、日本研究の国際的発展に貢献した研究者が対象。昨年11月に受賞が発表された。ロベール氏はコレージュ・ド・フランス教授で、フランスの日本仏教研究の第一人者として知られる。

 授賞式では選考委員長の野家啓一・東北大名誉教授がロベール氏の業績について、天台宗の教理研究などで欧州の仏教理解に寄与したほか、釈教歌を通して宗教と文学の連関を明らかにしたと評価。漢文の役割をラテン語と比定し、俗語と対比される聖語という「ヒエログラシア(聖語論)」の観点から斬新な比較文化論を展開するなど独創的な研究を進めていると紹介した。

 同機構長の木部暢子氏は「ロベール先生の幅広い業績は授賞にふさわしい」と祝し、読み上げた賞状を披露した。記念品のメダルとともに、同賞を支援するクラレ財団代表理事の藤波智氏から賞金2万ドルが贈られた。文部科学省研究振興局長の池田貴城氏と、国際日本文化研究センター名誉教授の末木文美士氏が祝辞を寄せた。

 記念講演したロベール氏は、コレージュ・ド・フランスの初代日本学講座教授を務めたベルナール・フランク氏の薫陶を受け、日本に仏教文化が色濃く息づいていることに感激したという。川端康成がノーベル文学賞の受賞記念講演で発表した『美しい日本の私』を挙げ、「日本文学と日本仏教の統一性を唱える声明のようだ」と話した。

 漢文を通して東アジアの仏教世界がつながっていることに着目したロベール氏は、仏教思想に基づいて詠まれた和歌「釈教歌」が、大陸から伝わった仏教を日本化する仲介役となったとし、「この言語的展開は偶然でない。日本の文化とともに生じた運命的なもの」と強調。神仏習合のもと、聖なる言葉である和歌を基盤に、日本語が漢文を表すことができ、さらに漢文を超えて梵語とつながる思想だと述べた。

 こうした日本の聖語論をユーラシアの文化圏に適用したいと意欲を見せ、「日本の現象をモデルに、ほかの言語や文化を検討している」と語った。

2022/7/28
<カルト2世 宗教2世 信仰と離反の中で> どうしていいのかわからない2世たち 楠山泰道・日蓮宗大明寺住職


 今回の容疑者はもちろん加害者であるが、それと同時に被害者でもあると思う。今回の件に限らず辛い思いをしているカルト信者の2世は、常に言葉にならない思いでいるのだろう。問題のある宗教の中でも、特に統一教会は全財産を献金し、借金までして献金させられるケースがある。お金の面だけでなく、合同結婚式で韓国に嫁ぎ、大変な目にあう日本人女性も多い。人権を無視された行動を取らされ、人生を失うような被害もある。

 しかし、これは以前からあったことであり、その警告も再三ずっと行われてきた。あってはならないことだが、そのことを承知で政治家がそのような団体を利用している状況が、今回の件で広く知られるようになった。

 今回、2世の問題もより注目されるようになった。これは統一教会だけではなく、社会常識から逸脱した教団の中だけで育った子どもたちは、生活の中で自然と教団の教えを身につけ、それがトラウマや後遺症になることがあり、状況はケース・バイ・ケースで様々だ。

 私が相談を受けたケースでは、親や兄弟が信者で、自分で結婚相手を決めたいと教団から逃げようとして親兄弟から反対された方がいた。最後は教団にこの方は信者ではないとの証明を出させることができたが、これはまだ良いケースだろう。

 私の所に相談に来るのは、入信した者の親や本人が多い。信者2世の相談者は少なく、ここ数年に2、3人だ。生まれながらにカルトの環境で育ち、しがらみが多く、どうしていいのか分からない、仕方なく自分の中に秘めている2世が多いのだと思う。

 一部のカルト的な教団により、宗教全体が問われる状態になりつつある。カルトのような人の心を壊す宗教もあるが、人の心を救うのもまた宗教ではないか。宗教家はカルトに対して法律違反を問えなくても、宗教として間違っている〝宗教違反〟だと、きちんと言える宗教家でなくてはいけない。(日本脱カルト協会元代表理事)

2022/7/28

<カルト2世 宗教2世 信仰と離反の中で> 向き合う力失っていないか 瓜生崇・真宗大谷派玄照寺住職


 安倍元首相暗殺事件。その動機が安倍元首相と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わりにあった。社会はこのカルトのことを長く忘れていたが、被害はその間も続いている。伝統キリスト教団の一つである日本基督教団はこの問題に地道に取り組んでおり、今も少なくない牧師が支援活動を継続している。

 対して我々伝統仏教教団は、あのオウム事件から今に至るまで、ほぼ何もしなかったと言っていい。それどころかあんなのは仏教ではないと、あくまで自分らとは無関係との態度をとり続けた。自分たちは歴史ある伝統仏教教団だと驕り、今もなおカルト問題などどこか遠い国の出来事だと言わんばかりである。

 伝統仏教教団は本当にカルトとは無関係なのだろうか。振り返ってみれば、我々は歴史の中で様々な弾圧に関わり、人を支配し、国家の戦争に協力し、現代でも修行道場でのいじめや職員のパワハラ、差別問題など、実はカルトにつながる様々な問題を積み重ねてきた。宗教的救済と紙一重のところに存在する人間の深い闇を、我々はその歴史から十分に知っているはずなのである。

 しかしそれ以上に深刻な問題は、その「宗教的救済」の核心を、現代の仏教教団が失いつつあることだ。敷居を下げる、門戸を開くといった大義名分の元、わかりやすくありがたい、癒やしやヒューマニズムの延長のような教えばかりがもてはやされる。そしてすっかり宗教としての深みを失い、真の救済を求めてカルトに入る人たちの気持ちも、わからなくなってしまった。

 結果としてカルトの問題に怒ったり、入った人の被害を哀れむことは出来ても、信者個人の信仰に寄り添い、その宗教的問題に踏み込むことはできないままである。伝統と権威に依存しきって、宗教であることを放棄しつつある我々は、本当はカルトに無関心なのではない。それに向き合う力を失っているだけなのだろう。(瓜生氏は親鸞会脱会後、カルトの脱会支援活動に尽力する僧侶)

2022/7/28

「尼僧サンガの現在と未来」韓国ハンマウム禅院で世界の尼僧や研究者が発表 


ハンマウム禅院で開催された学会に参加した尼僧や研究者 韓国曹渓宗のハンマウム(一心)禅院が主催する「世界の仏教尼僧サンガの現在と未来」をテーマとした学会が、6月17日から20日まで同国・安養市の同院本部で開催され、世界各地の尼僧や研究者が集った。学会では前半2日間で13人の尼僧や研究者が韓国・日本・台湾・ベトナム・タイ・スリランカ・ミャンマー・チベットの尼僧の歴史や現在の活動を報告した。

 日本からは全日本仏教尼僧法団(笹川悦導理事長)の推薦で浄土宗の日比野郁皓氏、天台宗の緑川明世氏が参加。このほかゲストスピーカーとして、日本仏教の尼僧をテーマに中世日本研究所のモニカ・べーテ所長、ドイツ・テュービンゲン大学からモニカ・シュリンプ教授が発題した。またイギリス・ランカスター大学の川並宏子教授も参加し、ミャンマーの尼僧について発表。世界の尼僧サンガの歴史と多彩な活動をみせる現状からその未来を展望した。学会の様子はユーチューブでも配信した。

 世界の尼僧や研究者が集まった韓国ハンマウム(一心)禅院での学会は、同院創始者の比丘尼、大行(テハン・クン)大和尚の遷化10周忌を記念して開催された。大行大和尚は1972年にソウル市の南に位置する安養市にハンマウム禅院を建立し、日常生活で実践できる仏教を布教。現在も多くの比丘・比丘尼の弟子たちが活躍している。

 コロナ禍での開催ながら、世界各地の尼僧と研究者が集い、渡韓できなかった台湾の尼僧はオンラインで発表した。


2氏が日本仏教の現状報告 エネルギー溢れる韓国仏教 上座部では比丘尼が増加

学会で発表した日比野氏(左)と緑川氏 日本から参加した日比野郁皓氏は「浄土宗寺院で生まれ育ち僧侶になった私」と題し発表。寺院に住職家族が暮らし、子息が弟子となって後継者になることが多いことや、檀家制度や先祖供養の習慣など日本仏教の現在を紹介。浄土宗の教師養成課程について自身の修行体験をもとに説明したほか、国際協力活動や寺院で開くコンサート、舞台等の文化活動も報告した。

 緑川明世氏は在家出身で天台宗僧侶として活動する自身の歩みを紹介。アメリカでチベット仏教の高僧に出会い「仏教は人生をより良く生きる為の教え」と学び、仏門に入った緑川氏。「女性と仏教関東ネットワーク」「国際仏教文化を学ぶ会(ILAB)」など女性仏教徒の会の活動をはじめ、ラジオ放送、リトリートや写経を通した布教、精進料理やお茶会などの実践について話し、「日々の暮らしの中で実践できる方法を伝えてゆくことがより良い未来につながる」と展望した。日比野氏は木魚とお念仏、緑川氏が声明を披露して会場を和ませた。

 韓国仏教における近年の比丘尼の活躍をはじめ、北米出身でチベット仏教や韓国仏教を学び、米国でセンターを作って活動する事例、上座部仏教のスリランカやタイにおける近年の比丘尼サンガや女性仏教徒の増加とその活動など、多岐にわたる発表がなされた。

 昼食は信徒らが韓服で正装し、伝統的な食材を使った彩り豊かで美味しい精進料理でもてなした。学会に向け昨秋から準備が進められ、全発表者の資料は英語と韓国語に翻訳して冊子として配られ、当日は英語と韓国語の同時通訳が入った。

 日比野氏は「多くの方が働かれて、温かく迎えてもらった。信者の方のエネルギーが素晴らしく、若い尼僧さんが育っている姿に勉強させてもらった。また他国の発表者からは日本仏教の持つ〝伝統〟がうらやましいという声も聞き、歴史の重みや大切さを改めて感じた」と話した。緑川氏は「どなたの発表内容も机上の研究にとどまらず、それぞれのフィールドで、現実社会の問題と真摯に向き合っている様子に共感した。またその活動の動機となる仏陀の教え、慈悲と菩提心に育まれた智慧に基づく活動の先に未来があるのだと思う」と充実の学会を振り返った。

 学会後半の2日間は世界遺産の古都慶州の通度寺、仏国寺と石窟庵、ハンマウム禅院の蔚山(ウルサン)・釜山(プサン)・晋州(ジンジュ)の各別院や曹渓宗の僧侶が学ぶ東国大学を巡る巡礼ツアーも行われた。

2022/7/28
尼崎市西正寺 お寺でトランスジェンダー講座 当事者が複雑な体験語る 〝自己肯定感育めない〟


西田氏(左)と仲岡氏、中平住職が座談 兵庫県尼崎市の浄土真宗本願寺派西正寺(中平了悟住職)で17日、トランスジェンダー(LGBTのT)について考える公開講座が開催された。同寺が取り組む地域に開かれたお寺として人生や社会を考えるプロジェクト「テラハ」の一環。男性から女性に性別変更した当事者の西田彩氏(大谷大学非常勤講師、音楽家)が、トランスを理解する基礎知識を講演した。

 トランスジェンダーは主に、出生時に(外性器の確認だけで)割り当てられた性別とは「異なる性自認の人、あるいは異なる性別で生きている・生きようとしている人」と説明される。西田氏はジェンダーアイデンティティ(性同一性・性自認)は「トランスだけでなくすべての人の根幹にかかわること」と前置きした上で、ポイントとして場所や状況が変わっても一貫して同じ自分であるという感覚「斉一性」、昔の自分から今の自分へ大きく成長・変化していく中でも同じ自分であるという感覚「連続性」を指摘した。

 そういう斉一性と連続性のなかで自己のジェンダーアイデンティティを確立するが、トランスの場合は「社会の中で望まない扱いを受け、否定や矯正、いじめや『あなた男の子でしょ、そんなことをしちゃいけません』といった禁止を受ける。そうすると自分の内的な感覚を表現した自分と違うものとして扱われてしまう。自分の斉一性がそこで途切れてしまう。なんで自分を発揮したら自分のありかたが否定されるのか、特に幼少時などは全く意味不明で、ジェンダーアイデンティティが確立できず、自己肯定感を育めない」と、その苦しみを解説。

 トランスジェンダーはしばしばメディアでは「心の性と体の性が異なる人」と説明されるが、西田氏はこれを「何一つ合っていない」と一蹴。世間に説明する上で「アイデンティティ」などの言葉よりわかった気になるから使われているに過ぎないため、「マジョリティが理解可能なジェンダー規範の中に位置づけられてしまう。ピンクが好きだから心の性は女だね、などと解釈される危険性がある。当事者の持っているジェンダーの複雑な体験は置き去りにされる」とし、個人の体験を塗りつぶしかねない危険性には注意を向けた。

 その上でトランスジェンダーは抽象的な思考実験の題材ではなく、「身近に暮らしているリアルな人間」だとし、デマやフェイクに流されず正しい知識を得ていくことを促した。後半では西田氏と、同じくトランス当事者の仲岡しゅん弁護士が自身の性別移行の経験を振り返った。司会は中平住職が務めた。

2022/7/28

全生庵鉄舟忌 何が起こるか分からない 安倍氏死去で平井住職


参列した石破氏(右)と平井住職 維新の志士・山岡鉄舟居士(1836~88)の年忌法要「鉄舟忌」が命日の19日、東京・谷中の菩提寺・臨済宗国泰寺派全生庵で営まれた。かつて鉄舟忌に参拝し、同寺に参禅もした安倍晋三元首相の訃報に触れた平井正修住職は「人間は何が起こるか分からない。心に念じながら生きていかねばならない」と心境を語った。

 平井住職は続けて、「いつなんどき、われわれの身に難儀が降りかかるかもしれない。そのときになってからでは遅い。平素の心がけが大切だ」と述べた。努力の人だった鉄舟居士の言葉「学びて成らざるの理なし。成らざるは自ら為さざるなり」を引いた上で、鉄舟居士が亡くなった53歳をとうとう超えたとし、「愕然としている。自分が54歳になって、鉄舟先生が成し遂げたことの大きさを改めて感じている」と話した。また本堂屋根の修復が今春に完了したことを報告し、感謝を伝えた。

 江戸無血開城の立役者として知られ、勝海舟らとともに「幕末三舟」と称される鉄舟居士。一刀正伝無刀流を開いた剣の達人は禅を重んじ、剣禅一如の境地を求道した。法要には衆院議員の石破茂元自民党幹事長や亀井静香元衆院議員ら鉄舟居士を慕う政治家も参列。遺徳を偲ぶ諷経が読誦される中、参拝者約70人が香を手向けた。

 石破氏は昨年の鉄舟忌の1年後に、「こういう世の中になっているとは誰も思わなかった」と安倍元首相の死去に言及。「晴れてよし 曇りてもよし 富士の山 もとの姿は 変らざりけり」との鉄舟居士の言葉について、「人がなしたことは周りの評価はどうであれ、変わらないということ」と述べ、「その人自身が一番よく知っている。物事が起こったときに、一体なぜこうなったのか議論することが大切だ」と語った。

2022/7/21
安倍元首相銃撃事件 霊感対策弁連が会見 旧統一教会の説明に反論 政治家のダミー組織支持姿勢も批判


会見で岸信介など要人と握手を交わす文鮮明教祖の写真を提示して説明する山口弁護士 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による被害者の救済に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会は12日、都内で会見を開いた。安倍元首相への銃撃事件で、母親が旧統一教会へ多額の献金をして家庭が崩壊したことを恨んだ上で、容疑者は安倍元首相が同団体を支持していると考えていたという報道を受け、政治家が「統一教会やそのダミー組織の活動について支持するような行動は厳に慎んでいただきたい」との声明を発表した。

 声明では、今回の犯行は「いかなる理由があろうとも決して許されない」との前提に立ちつつ、安倍元首相が統一教会と創立者が同じ天宙平和連合(UPF)などのイベントにメッセージを発信したことに触れ、2012年に死去した文鮮明教祖の後継である教祖の韓鶴子氏に「敬意を表します」と述べていたことについて「統一教会のために人生や家庭を崩壊あるいは崩壊の危機に追い込まれた人々にとってたいへんな衝撃でしたし、当会も厳重な抗議をしてきた」としている。安倍元首相へは昨年9月に抗議文を提出したが、「受け取りを拒否された」という。

 同連絡会は、旧統一教会が開いた会見の内容にも言及。別団体というUPFはダミー組織として統一教会とは「明らかに一体」とし、2009年以降、献金トラブルはないとの説明には、その後も訴訟があり、「今も続いている」と反論。昨年も3億3千万円以上の被害があったと批判した。

 会見では、旧統一教会の元2世信者が合同結婚式や家族が崩壊した体験を明かし、「犯人のしたことは何一つ擁護しないが、統一教会に人生を壊された身としては、(辛さは)分かる」と話した。安倍元首相と統一教会との関係について問われると、教会=安倍元首相という認識はなかったが、信者にとっては「大物政治家とつながっていることは、やっぱり(教祖は)メシア(救世主)なんだという思いにさせられてしまう」と語った。

 同連絡会は、旧統一教会と政治との関係性について、選挙での人手の応援や信者が秘書として国会議員の事務所に入ることもあるとし、秘書を務めた信者が地方議員になるケースもあると指摘。山口広弁護士は政治家と旧統一教会との間に「利用し利用される関係があった」とし、「政治家の皆さんもこのような団体とエールを交換することは本当に慎重に考えてほしい」と訴えた。

 紀藤正樹弁護士は「この50年で厖大な被害者が積みあがってきた中での今回の事件であることを十分にご理解いただいて、今回の事件だけを表面的に扱ってほしくない」と述べ、オウム真理教事件を振り返りつつ、「(日本社会はカルトに対し)いまだに総括ができていない。カルトをどう考えるのか、宗教が善だけでなく、場合によっては人的被害を生み出すことを真剣に考えないといけない時期に来ている。与野党を問わず考えていただきたい」と話した。

【解説】宗教界にカルト2世の受け皿を

 安倍元首相銃撃事件で明らかになってきたのが、容疑者の母親が旧統一教会(現家庭連合)に1億円を献金し、容疑者の人生に強い影響を及ぼしたことだ。それが犯行の強い動機になっている。ここにカルト2世の問題が潜んでいる。

 両親が合同結婚であれば子ども(祝福2世、カルト2世)の問題 親の統一教会信仰と価値観(教義)のもとで育ち信仰を受け入れるものの、成長過程で恋愛禁止などの制約に疑問を抱いたり、親の存在が疎ましくなったりする。その思いをどこにも打ち明けられず、自死を考える人もいる。家を飛び出すと収入がなく、生活がおぼつかなくなったりする。

 親が信仰に熱心なあまり家庭を顧みないカルトの2世問題 いわゆるマインドコントロールや、ジャーナリストの藤田庄市氏が言うところの「スピリチュアルアビュース」(信仰虐待、霊的虐待)により、教団から離れられない。献金が強制され、それに従ったりする。未成年の子どもが、親の信仰に疑問を持っても、それを止めさせるすべを持ち得ない。親の信仰によって心身を害した2世たちは総じて社会から疎外されていると感じている。そうした人たちが駆け込める場所が宗教界にあるとは言いがたい。宗教界としても受け皿や相談窓口が必要ではないか。

 一般的な宗教(信仰)2世 幕末維新期、あるいは戦後に伸長した新宗教に属する人たちは、そのほとんどが両親や祖父母からの信仰2世、3世、4世である。こうした教団は社会との接点もあり、先鋭化することはない(いわゆる制度化)。今回の事件と一般的な宗教2世を同一視することは避けたい。また宗教活動が萎縮しないことを望みたい。

 2世を受け入れる 鎌倉の祖師方のように、時代によっては、宗教は権力や社会と相反する価値観を提供する。それは宗教の魅力の一つでもある。しかし他人を騙し、人権を侵害することは、どんな宗教でも容認できるものではない。カルト1世、2世はその被害者という側面もある。

 今回の惨劇の背景にはカルト宗教問題が横たわっている。しかしそうしたカルト2世を孤立させず、誰であろうと分け隔てなく受け入れる態勢が宗教界に、社会に求められよう。(工藤)