最新記事

2025/8/8
識者に聞く カンボジア・タイ国境で武力衝突
両国とも寺院を避難所に オンライン対話の試みが
浅見靖仁・法政大学教授


 領有権を主張するタイとカンボジアの国境で7月24日、軍事衝突が発生し、両国で30人以上が死亡した。避難者は双方で30万人とされる。同28日、マレーシアの仲介で両国の停戦合意にいたった。しかしその後も攻撃があったと伝えられている。上座部仏教国に位置付けられる両国はどのような状態なのか。それぞれの国や仏教事情に詳しい識者3氏に聞いた。

両国とも寺院を避難所に オンライン対話の試みが
浅見靖仁・法政大学教授

 両国の仏教界上層部は今回の紛争に対して沈黙しているが、僧侶たちはただ座しているわけではない。戦闘によって双方とも十数万人が自宅に滞在できなくなり、避難民となった。日本では小中学校の体育館や公民館が災害時の避難先として使われるが、両国とも国境近くの地域には大きな公民館や体育館のある学校はほとんどない。どちらの国でも僧侶が寺院を一時避難所として開放し、政府が救援物資を配布するようになるまでは食事の手配もした。

 1970年代から90年代にかけて激しい内戦を経験したカンボジアでは、僧侶が平和と和解の重要性を唱えて行進するタンマイェートラという「新たな伝統」が作られたが、今回の紛争に対しても8月2日に中堅の僧侶が中心となって平和行進が行われた。ASEAN議長国マレーシアの仲介による一時停戦の合意成立を祝い、戦闘が再開されないことを祈願する行進であったが、停戦合意を実現したフン・マネット首相やフン・セン上院議長に感謝し、彼らの指導の下に国民が一致団結することを呼びかけもした。

 こうした姿勢は、特定の側に肩入れすることなく、紛争の当事者双方に自制と寛容を呼びかけた内戦終結時に行われた平和行進の精神とは相容れないという不満を表明するカンボジアの仏教徒もいる。

 そうしたカンボジア側の動きに呼応するように、タイ側でもカンボジアとの仏教者交流を続けてきた人たちを中心にして、相互理解と寛容の精神でカンボジアとの和解を進めるべきだという訴えをSNSで行う人が少しずつではあるが、増えてきている。タイとカンボジアの仏教者が今回の紛争についてオンラインで対話する試みも始まりつつある。

 紛争発生以来、両国のネット上では、相手国は好戦的で悪意に満ちた侵略者であり、自国は常に正しく、争いは好まないが自衛のためにやむをえずに戦っているという言説に満ち溢れていた。そうした怒涛のような憎悪の感情を、両国の仏教者の訴えが少しでも良い方向に変えてくれることに期待したい。

(紙面では、東海林良昌・世界仏教徒連盟人道支援委員会委員長、小野正遠・TM良薬センター事務局長のご意見も掲載しております。ぜひ紙面をご覧ください)

2025/8/8
栴檀学園創立150年 洞門の強豪野球部が記念試合 東北福祉大 VS 駒澤大 ドラフト候補先発 序盤から点を取り合う熱戦


力を出し合った両校の選手ら(仙台市青葉区、福祉大野球場) 曹洞宗の宗門関係校・東北福祉大を運営する栴檀学園の創立150周年を記念した野球の招待試合が3日、仙台市青葉区の同大野球場で行われた。対戦したのは駒澤大。同門の強豪校同士の熱戦に、両校の関係者ら約700人が声援を送った。

 6月の全日本大学野球選手権で7年ぶり4度目の優勝を飾った福祉大。対する駒澤大も今春に東都リーグ2部で優勝し、1部に復帰した強豪。同選手権では歴代2位となる6度の優勝経験を持つ。曹洞宗門校同士の対戦は、序盤から点を取り合う白熱した展開となった。試合前には両校の応援団がエール交換した。

 福祉大は今秋ドラフト候補の櫻井頼之介投手、駒澤大は本間葉琉投手が先発した。一回に福祉大がDH・冨田隼吾内野手のライト前ヒットで先制。二回に駒澤大が鳥山穣太郎内野手のツーランホームランで逆転すると、福祉大が2点を返して再逆転。三、五回にも2点ずつ追加した。七回に駒澤大が2点を挙げて追い上げるも、福祉大が7対4で勝利した。

ドラフト候補に挙がる福祉大の先発・櫻井頼之介投手 ユーチューブでライブ配信され、実況席では福祉大の山路哲生監督と駒澤大の香田誉士史監督の対談もあった。

 球場にはレジェンドたちも集結。福祉大OBで元メジャーリーガーの「大魔神」こと佐々木主浩氏や元阪神監督の金本知憲氏らが駆け付けた。始球式では元福祉大野球部長の大竹榮氏がマウンドに立ち、打席に入ったのは駒澤大終身名誉監督の太田誠氏。前福祉大監督の大塚光二氏が捕手役を務めた。

 初めての記念試合に両校の理事長も揃って参加した。福祉大の平井正道理事長は「互いに高め合えるいい機会になった」。駒澤大の小島𣳾道理事長は「今後も続けていけたら。楽しみだ」と話した。

 福祉大の千葉公慈学長は「精一杯力を出し切ることが相手の全力を引き出すことにつながる。それが互いの利益となる。本学の教育理念は自利・利他円満。自己研鑽にふさわしい試合だった」と語った。

2025/8/8
核廃絶 比叡山から世界へ サミット38周年 真の平和、慈愛社会訴える


平和の鐘の音が響く中、諸宗教者が黙祷を捧げた 超宗教で世界の恒久平和を祈る比叡山宗教サミット38周年・第39回「世界平和祈りの集い」が4日、滋賀県大津市の天台宗総本山比叡山延暦寺で開催された。各宗教から約450人が参加。広島・長崎への原爆投下から80年を迎えた今、世界では自国第一主義の台頭で対立・分断が深刻化し、再び核武装論の拡大による核の実戦使用の危機が増大。比叡山上に参集した諸宗教者は、山内に鳴り響く平和の鐘の音に乗せて「日本仏教の母山」から世界中に祈りを発信し、国境を越えた対話・協力による核兵器廃絶の道を探った。

 一隅を照らす会館前「祈りの広場」で、「平和の祈り」。次代を担う若手宗教者を代表して神社神道の戸内(とのうち)結(ゆ)律子(りこ)氏と仏教の犬山空(くう)翼(よく)氏がステージに登壇し、「平和のために祈ることは、平和のために働くこと、そして平和のために苦しむことですらある」とする比叡山メッセージの全文を交互に読み上げた。

 藤光賢天台座主をはじめ、仏教・神道・キリスト教・イスラム教などの各教宗派・団体の代表10氏がステージに登壇。午後3時半、文殊楼横鐘楼の「世界平和の鐘」を打ち鳴らし、参加者全員が起立して黙祷を捧げた。

 藤座主は主催者代表挨拶で、「平和とは、単に戦争がないということではない。人間同士だけでなく全ての生物と慈しみをもって共生していくことが、真の世界平和と言える」と表明。終戦80年に際し、「あらゆる兵器や暴力のない、慈愛に満ちた社会の実現に邁進する」決意を新たにした。(記事全文は紙面をご覧ください)

2025/8/8
子どもの栄養失調深刻 議連総会 ガザに即時食糧を


多くの乳児が重度の栄養失調状態であることが報告された パレスチナのガザ地区で飢餓状態が深刻化するなか、超党派の人道外交議員連盟(阿部知子事務局長)は5日、国会内で緊急総会を開いた。現地で活動するNGO団体も参加し、食糧等の物資搬入や即時停戦の必要性を強く訴えた。

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長がオンラインでガザの状況を報告。3月にイスラエルが食料搬入を止めてから子どもたちの栄養失調の割合が増加し、7月時点で18・5%が栄養失調の状態に。現地で働くUNRWA職員の飢えと疲弊も深刻で「崩壊が始まっている」と危惧。「ガザの外には大量の食料と医療品がある。何故それが届けられないのか」「人道支援が政治の題材にされている」と憤った。

 米国・イスラエルによるガザ人道財団が設置した食料配布所は、ガザの人口200万人以上に対して僅か4カ所。配布所周辺で1400人以上が殺害されている。国連の配布所は400カ所ある。「何ができるか答えは明白。停戦と食料と医薬品の搬入。それ以外にない」と訴えた。日本国際ボランティアセンター、国境なき医師団、パレスチナ子どもキャンペーン、セーブザチルドレンジャパンも参加した。

 人道外交議連は7月上旬に「パレスチナの国家承認」等を求める要望書を政府に提出している。阿部事務局長は「国家承認の迅速化、人道物資支援の搬入、医療的な避難の加速を申し入れる」と述べた。

2025/8/5
模擬原爆投下80年 恩楽寺で追悼式 長崎原爆と同型 5㌧の火薬、7人死去


門前の追悼碑には千羽鶴が供えられた 80年前の7月下旬、終戦を目前にした日本各地に「模擬原爆」が投下された。それは米軍が原爆を落とす練習のためだった―その被害を受けた大阪市東住吉区の真宗大谷派恩楽寺(乙部大信住職)で7月26日、犠牲者追悼式が営まれ、当時を知る人から小学生まで120人以上が参加した。オンラインで各地の平和団体とも繋いだ。主催は追悼実行委員会。

 1945年7月26日の朝、B29は恩楽寺付近に模擬原爆を投下、急旋回して消え去った。中身は約5トンの火薬で、7人の死者を出した。外形は長崎原爆「ファットマン」と同じ。本物の原爆を投下した時に自機が衝撃波を受けないように急旋回する練習のためだったと指摘されている。恩楽寺もこの時の爆風で柱が傾いており、現在でも敢えてその傾きを残して戦争の被害を知る助けとしている。

 3人が体験を語った。当時、小学校2年生だった山本悦子さんは空襲警報が鳴り響き、防空頭巾を被って路地で伏せると「とたんに爆風の凄い音がして、上から瓦とホコリが降り掛かってきた」。帰宅すると家の窓ガラスは全部割れていた。当時はもちろん模擬原爆とは知る由もなかったが、「戦後4、5年して何か怪しい爆弾だったという話を聞きました。数十年経ってやっと模擬原爆だとわかった」と回想。戦争は人間の尊厳を無視したものだと訴えた。(続きは紙面でご覧ください)

2025/8/1
自由な意思決定権を奪われた 宗教2世 旧統一教会を提訴 弁護団、教団の共同不法行為問う


記者会見する弁護団。前列中央が村越進弁護団長 旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)信者の親を持つ2世の8人が24日、教義に基づく虐待などによって精神的な自由な意思決定権等を奪われたとして教団に対して総額約3億2千万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。弁護団は教団側の民法上の共同不法行為を問うとしている。同日、全国統一教会被害対策弁護団と原告の1人が都内で記者会見した。

 弁護団長の村越進氏は「2世の方が統一教会を訴えるのは初めてであり、画期的なことと考えている」と語った。訴状では、「被告(教団)が、親に対して、2世の人権よりも教義の実践を優先するよう指示した結果、2世の発達環境を著しく歪めた」と指摘。具体的には「恋愛は堕落の始まり」「統一原理に反する行動を取れば地獄に落ちる」「親や教会に背くことは神に背くこと」と教え込まれ、「人生の基礎にかかわる事柄について自由な意思決定を行うことを許さなかった」としている。

 こうした2世への人権侵害に対し、民法709条、同719条に基づいて教団の故意の不法行為を問うとしている。

 会見では、原告8人の被害は「驚くほど似通っている」とし、ネグレクトのような状況、教育環境が十分ではない、交遊・恋愛関係の制限、趣味・趣向の制限、幼少時から教義の教え込みを受ける、祝福によってさまざまな苦しみを受ける――といった事象を列挙。その上で「個別家庭ではなく、多くの問題が共通して起こっている。それを生み出している教団も教義で指導している。教団は組織的にそうした被害が生じうると分かった上で行為に及んでいることになり、法律的には共同不法行為にあたる」と説明した。(続きは紙面でご覧ください)

2025/8/1
仏教伝道文化賞決定 本賞 河野太通氏・妙心寺派元管長 沼田奨励賞 雄谷良成氏・日蓮宗蓮昌寺住職 贈呈式は10月16日


河野太通氏雄谷良成氏(公財)仏教伝道協会は7月24日、第59回仏教伝道文化賞選定委員会を開催し、仏教伝道文化賞に河野太通氏(95、臨済宗妙心寺派元管長、兵庫県・龍門寺先住職)を選出した。沼田奨励賞は雄谷良成氏(64、石川県・日蓮宗蓮昌寺住職、社会福祉法人佛子園理事長)に決まった。

 仏教伝道文化賞は国内外で仏教関連の研究や論文、美術や音楽、仏教精神を基に活動する実践者など、幅広い分野で仏教精神と仏教文化の振興と発展に貢献した人物や団体に贈られる。今後の活動に期待ができる個人や団体に「沼田奨励賞」を贈呈している。

 河野氏は太平洋戦争の激戦地の慰霊、内戦地での人道支援、震災復興支援などを長年にわたり実践し、宗教者としての生き方を身をもって示してきた功績を称賛しての授賞となった。アジア南太平洋友好協会会長、花園大学学長、全日本仏教会(全日仏)会長等を歴任。ちなみに全日仏会長時には東日本大震災とそれに伴う原発事故を受けて「原発によらない生き方を求めて」とする宣言文を発表。脱原発依存を打ち出した。

 雄谷氏は特別支援学校教員、青年海外協力隊、北國新聞社勤務などを経て、祖父が創設した佛子園に戻って事業を展開。「シェア金沢」のオープン、「輪島KABULET®プロジェクト」の始動など、世代・障害・国籍の分け隔てをせず共生する福祉施設を運営。差別のない世界を目指す地道な活動が評価された。昨年元旦の能登半島地震では金沢市の自坊が被災しながら、復旧・復興活動に取り組んでいる。

 贈呈式は10月16日午前11時から、東京都港区の仏教伝道センタービルで開く。受賞者には賞状と賞金(本賞500万円、奨励賞300万円)、記念品が贈られる。
 
受賞者の声

無文老師の志継承
河野太通氏

 この度は文化賞を賜り、誠に光栄に存じます。妙心寺派山田無文老大師の志を受け継ぎ、アジア南太平洋友好協会・RACKの活動を続けてまいりました。諸仏の加護と皆様の支えに深く感謝し、今後も平和と共生のため精進いたします。


感謝の大切さ学ぶ
雄谷良成氏

 能登半島地震から1年7カ月、復旧・復興活動では人と意見を交わすことが必要ですが、色々なことに向き合っています。一番必要だと思うのは、日頃から子どもも若者も高齢者も、障害のある人もない人も、外国人も、みんなが何らかの形でつながっていること。これが災害時にも大きな力を発揮します。そして感謝をする力がある人はすごく強い。災害に遭っても「ありがとう」と言える人は周りを引っ張っていく力がある。そういう人たちと一緒に、感謝する大切さを学ぶ場になっています。今回の表彰を自分のことのように喜んでくれて、お祝いをしようと考えてくれています。

2025/8/1

次期全日本仏教徒会議 2027年秋 東京で開催
東仏賛同 全日仏70周年式典も


 東京都仏教連合会(東仏)は7月28日、台東区の浄土宗凉源寺で理事会を開き、全日本仏教会(全日仏)が2年後の2027年秋に開催を予定する「法人創立70周年式典・記念祝賀会」の一環として「第48回全日本仏教徒会議」の企画運営を行うことを決め、東京大会が内定した。東京大会は昭和58年(1983)10月、池上本門寺で行われて以来44年ぶりとなる。今後は実行委員会を作り、内容を検討していく。

 理事会には55地区仏教会から30人が出席。三吉廣明理事長(烏山仏教会)、吉田泰樹事務局長(浅草仏教会)が全日仏から東京大会開催の打診を受けてからの経緯や、60周年大会が行われた2017年の福島大会を参考にしながら予算計画について説明した。細かな質疑の後、出席者の賛同を得て大会開催が内定した。

 今後は東仏事務局・常務理事を中心にした実行委員会を組織し、仏教徒会議の方向性や具体的な内容を計画していく。また事務局は今回の理事会に参加しなかった地区仏教会に対して必要があれば説明するとしている。

 全日仏はおよそ2年に一度、加盟する全国の都道府県仏教会との共催で全日本仏教徒会議を開催してきた。今年9月5・6日に第47回大阪大会が行われる。
 
 次期大会となる2027年は全日仏の法人創立70周年と重なるため記念式典や祝賀会も開催する。全日仏からは50周年、60周年の大会が「ご縁」をテーマに行われたことを踏まえ、70周年大会のテーマも「明日へつなげるご縁の力」(案)で検討されている。開催時期は2027年10~11月頃を予定。

2025/8/1
じわり浸透 キャッシュレス 野村証券公益法人部主催 宗教法人実務者会議 物品販売に導入 トラブル減少 政府は将来的に80%目標


野村證券の塚嵜氏(左端)をモデレーターに3法人財務担当者で行われたパネル討論 野村證券㈱金融公共公益法人部主催の第2回宗教法人財務運用実務者会議が7月18日、東京・大手町の野村證券会議室で開かれた。各宗教法人から70人余りが参加し、宗教法人のキャッシュレス決済や宗教法人の資産運用について情報共有をはかった。外国人参詣者の多い観光寺社では物品販売を中心にキャッシュレス化がじわり浸透。一部の本山ではお賽銭に導入した事例もあるが、まだ手探りの状態のようだ。

 パネルディスカッション「宗教法人におけるキャッシュレス決済対応の現状と課題」には3法人の担当者が登壇。モデレーターの野村證券の塚嵜智志氏が趣旨説明を行い、「政府は総決済の80%以上をキャッシュレスにしたいとしている。2024年時点でキャッシュレス決済比率は42・8%。その中で宗教界はこれをどう考えるのか」と提起した。

 奈良・春日大社権禰宜の岩城隆宏財務部長は、「宗教とは切り離されたところに限って導入している」と述べ、2年ほど前から宝物殿と植物園の券売機、茶店に導入。「釣り銭が不要で計算間違いがなくなった。もちろん現金での対応も出来るようレジも設置している」と報告した。

 京都・清水寺の森清顕執事(北法相宗宗務長)は所属する京都仏教会の2回(2019年6月、昨年6月)にわたる声明の意図を説明し、キャッシュレスには「情報と手数料の二つの問題がある」と指摘。情報問題とは、憲法で保障されている信教の自由には「信仰秘匿の自由」も含まれ、「キャッシュレスによって第三者が知ることになる」と警戒した。

 手数料問題は、国税庁の見解ではクレジット払いの手数料に課税される可能性があった。しかし、「令和6年のガイドブックでクレジット(キャッシュレス)は非課税ですという一文が入った」と解説。宗教行為である拝観に対する料金は非課税であるべきで、その手数料が非課税だとした国税庁見解を重視したのが2回目の声明だった。

 森氏は清水寺について「段階的に納経所横の物品販売のところから始めた」と述べ、本堂拝観や御朱印には導入せず、現金としているとした。(続きは紙面でご覧ください)

2025/7/28

住職が語る『敵も味方もなく尊い命』刊行 墜落B29搭乗兵を弔う


 戦後80年、住職が地域の戦争の記憶を語った証言記録『敵も味方もなく尊い命~米兵を弔い住民を救った僧侶』(A5判・20頁・価300円・日本機関紙出版センター)が、このほど刊行された。

 終戦直前の昭和20年(1945)6月5日、米軍のB29爆撃機が京都府南部・木津川の河川敷に墜落。10人近い搭乗兵の半数以上が死亡した。現場に近い浄土宗深廣寺(城陽市)の住職がいち早く駆け付け、「憎らしい兵隊かもしれないが、人は死んだら敵も味方もない」と敵国への怒りや憎しみで興奮している住民を必死になだめていたー。

 当時10歳の竹田正信・同寺前住職が目の当たりにした惨状や、「仕返しをしてはいけない」という法然上人の教えで米兵の位牌「B29搭乗五勇士英霊」を「軍に黙って」作り弔っていた父の姿、戦争がもたらす過酷な現実を証言。「寺(仏教)はどんな時も決して人に死ねとは言わない」という師父の言葉を振り返った。

 戦後、占領軍が墜落事件と搭乗兵の行方を捜査。深廣寺の本堂で軍事裁判が開かれたが、日本語と英語で書かれた米兵の位牌があったおかげで、1人も捕虜虐待の罪に問われなかったという。住民たちを救った位牌は今、死亡した米兵の関係者も手を合わせる怨親平等と平和の絆になっている。

 編集は原爆被害者相談員の会の黒岩晴子氏(佛教大学元教授)。綴喜京田辺戦争展実行委員会の北村武弘氏が協力、遊友画会の西村公一氏が挿絵を添えた。黒岩氏は、「世界の平和をめぐる情勢はますます厳しくなっています。戦争体験者の方々の後世への伝言をしっかり受けとめたいと思います」と述懐。竹田前住職は、「世界のどこの国の人々も子どもたちも、皆が平和で安全に生きていくことができるよう願います。ウクライナやガザでの戦闘の終結を祈って!」とのメッセージを寄せている。

2025/7/25
第47回全日本仏教徒会議大阪大会に向けて 『無量のいのち』空襲から平和を考える 戦争はしてもさせてもいけない


空襲の激しさを伝える竹林寺の「焼け地蔵」 日本中の仏教徒が集い、釈尊の教えを鑽仰して仏国土建設を目指す全日本仏教徒会議。第47回となる今年は全日本仏教会(全日仏)と大阪府佛教会(府佛)の共催により、9月5・6日の両日に大阪市のホテル日航で開催される。テーマ「無量の『いのち』―すべてのいのちを慈しむ」には真実のいのちの平等性を仏教から考える意味を込めている。もちろん慈・悲・喜・捨の四無量心が背景にある。

 会議初日には、伊藤唯眞・全日仏会長(浄土門主)を大導師とし、戦後80年の全世界物故者追悼慰霊・世界平和祈願法要が営まれる。伊藤会長は滋賀県出身の94歳。学徒動員で働いていた兵器工場が滋賀空襲で壊滅した体験を持ち、平和を願う気持ちは強い。「必要なのは、いのちを尊重するという人間の基本に立ち返ること」だと、かつて浄土宗平和協会30周年大会で語っている。

 村山廣甫・府佛会長(全日仏副会長/豊中市曹洞宗東光院住職)は81歳で、大阪空襲の体験者だ。天王寺区の吉祥寺に住んでいた赤ん坊の頃に母親の背中で、油脂焼夷弾が燃え上がり寺が焼けていくのを見たことを記憶している。昨年11月の大阪府佛教徒大会では「戦争はしてもいけない、させてもいけない。そのために宗教家ができることは祈りです」と呼びかけた。釈尊の「殺すなかれ、殺さしむるなかれ」(ダンマパダ)の教えは、全仏教徒共通のものだろう。

 「焼け地蔵」が問う

 こうした両会長の平和への強い願いもあり、仏教徒会議ではピースおおさかの協力を得て平和パネル展が開催される。戦争体験者の思いを、戦後世代、さらには平成・令和世代に伝えていく一助となるだろう。そのピースおおさかでは今年3月から7月13日まで、「大阪空襲」展が開かれていた。昭和20年(1945)3月から8月にかけ8回の大空襲で、およそ1万5千人が死亡。人間だけでなく建造物被害も甚大で、同展でもいくつかの寺院について解説されていた。

 そのうちの一つが、二上寛弘・府佛事務局長の自坊である高野山真言宗釈迦院(港区)。元は難波津にあったが6月1日の第2次空襲で全焼しており、昭和27年(1952)に現在地に移転した。いわば存在そのものが戦争を伝えるお寺だ。

 浄土宗竹林寺(西区)も空襲展で解説されていた寺院。墓地にある「焼け地蔵」は煤で真っ黒な痛々しい肌をしており、空襲の激しさを如実に伝える。手に持っていたはずの錫杖は鉄製だったため、溶けてなくなったという。「戦争の頃はお寺に防空壕を掘っていたそうです。それでも境内は全部焼けてしまって、阿弥陀さま(本尊)だけはなんとか守ったと伝わっています」と寺族の保阪濱子さんは話す。

 大阪の寺院にこうしたエピソードは事欠かない。仏教徒会議で展示を見た人が体験や、復興の道のりなどを語り合う場面もあるかもしれない。(続きは紙面でご覧ください)

2025/7/25
ヒロシマ・ナガサキを繰り返すな! 日本山妙法寺 平和行進を開始


展示された第五福竜丸の隣で行われた出発式 日本山妙法寺は12日、核兵器廃絶・世界平和を祈念して広島・長崎へと歩む平和行進を開始した。原爆が投下された8月6日に広島、同9日に長崎で平和祈念法要を行う。東京都江東区の都立第五福竜丸展示館での出発式では約30人が集い、平和への思いを新たにした。

 出発式で同寺の武田隆雄氏は「南無妙法蓮華経を唱えて平和行進を務めることは、日本山妙法寺のお師匠さまの誓願であり、私たち一人ひとりの誓願です」と述べ、「広島長崎で無残に亡くなられた方々を思い起こして少しでも祈っていただきたい」と話した。

 同館を管理する(公財)第五福竜丸平和協会の市田真理事務局長は「広島・長崎、ビキニ事件は過去のことではなく、今現在の私たちの命に直結する話です。私もここで解説をしながら、共に学ぶ毎日です。皆さんの非暴力の戦いが私たちにもつながっていると確信しています。安全に行って来てください」と激励した。

 当日は、米国NPO「Manabi Alliance」の体験学習に参加するワシントン州公立学校の教員7人が米国によるビキニ環礁の水爆実験で被ばくした第五福竜丸が保存されている同館を訪問。非暴力の平和への取り組みを見学したいと出発式に参加した。

 ワシントン州は長崎・広島に投下された原爆やB29爆撃機が製造された州で、参加した教員の中にはこれから酷暑の中で行進する僧侶らを見て涙を浮かべる人もいた。

 平和行進は、1958年から毎年実施。団扇太鼓を持ち撃鼓唱題しながら東京から岡山、広島、長崎までの道程を歩く。参加者は「ヒロシマ・ナガサキを繰り返すな!」と書かれた横断幕を手に出発し、平和を願う旅路の一歩を踏み出した。

2025/7/25
天台宗一隅運動 新会長に杉谷義純門主 利他の精神で学びながら活動


 『生命(いのち)・奉仕・共生』を実践三つの柱とする天台宗の一隅を照らす運動。一人ひとりが「自身の置かれた環境で全力を尽くす」社会啓発運動であることから、「ポストにベスト」とも言われる。その理事会が9日、滋賀県大津市の天台宗務庁で開かれ、第12代会長に杉谷義純氏(妙法院門跡門主)が選任された。任期は同日から4年間。杉谷新会長(82)は就任会見で、「利他の精神が一番大事。新たな社会問題が次々と起こる現代、我々は学びながら活動していかないといけない」と表明した。

 杉谷会長は、一隅を照らす運動が発足した昭和44年(1969)から現代までを概観。「発足当初は高度経済成長で物質的に豊かになった反面、物を粗末にするような時代になりつつあった。〝物で栄えて心で滅ぶ〟、そんな日本になってはいけないという危機感があった。現代は非常に閉塞感がある。〝自分の居場所がない〟など、生きづらさを感じている人が多い時代だ」と述べた。

 この〝生きづらさ〟は、どこから来るのか。「居場所がなくなるとは、他者との心の交流ができていない状態のこと。社会との繋がりの断絶だけでなく、家庭内でも起こっている」と指摘し、「一隅を照らす運動は、利他の実践そのもの。(〝生きづらさ〟を解消するには)お互いに利他の精神で生きていかないといけない」と明示した。(続きは紙面をご覧ください)