2022年

12月

2022/12/8・15合併号 回想2022 対照的な2つの反応 課題先送りするな


10月に行われた全日本仏教徒会議山梨・身延山大会のパネル討論。SDGs(持続可能な開発目標)への関心の薄さに「僧侶が社会から取り残されている」という指摘がなされた 地球規模の七難

 今年4月初旬、静岡県沼津市の法華宗(本門流)大本山光長寺で開山日蓮聖人御聖誕800年と開創750年法要が営まれた。表白文で𠩤井日鳳貫首は、「時恰も世界気候変動・自然破壊・新型コロナウイルス蔓延・ミャンマー国軍の国民弾圧、さらにはロシア独裁者のウクライナ侵略等々世界政治の歪みと申せ、悪世末法の様相厳然たり。/宗祖の『立正安国論』中、鎌倉時代日本が直面したる七難は今や世界が直面する七難に異ならず」と奏上した。

 750年前、日蓮聖人が経典に基づいて主張した七難が地球規模で起きていると警告したのだった。さらに難は続く。この法要から3カ月後の7月8日には安倍晋三元首相の銃撃事件が衆人環視の中で発生した。

 事件の背景には実行犯の母親が信奉する旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への多額献金があった。同時に親の信仰によって行動が制限され、親から金銭を無心されて困窮する宗教(カルト)2世の存在も次第に明らかになった。

 今年の宗教界を俯瞰すると二つの際だった現象が見える。

 一つは、ロシア軍によるウクライナ侵攻後の素早いメッセージ発表(声明や談話)である。主な宗派をあげると、日蓮宗(2月25日)、大谷派・妙心寺派・曹洞宗(3月1日)、浄土宗(2日)、天台宗(3日)、本願寺派(4日)などである。10日以内にほぼ出そろった。天台宗の総長談話には「このたびの武力による侵攻は、仏教者として看過することは全くできません。あらゆる暴力行為を非難し、武器を置いた対話による解決を強く望みます」とある。
 
 さらにウクライナからの避難者支援も寺院や教団レベルで行われた。従来の難民支援とは異なるスピード感があった。

 二つ目は、安倍元首相銃撃事件後の宗教界の反応のなさである。多額献金と霊感商法、政治家との深い関係、マインドコントロール、極端な韓国ナショナリズムといった統一教会の実態が明らかにされてきた。

 そして解散命令請求(宗教法人格取消)が取り沙汰され、宗教2世に対する救済案などが国会で議論されるようになった。文科省は宗教法人法に基づいて11月22日、質問権行使を発表した。回答期限は12月9日。その回答内容をさらに吟味して文科省は次の行動に移ることになるだろう。

 関連して宗教研究者有志が10月24日、声明を発表し、宗務行政の速やかな対応と2世信者の救済を要望した。同28日の記者会見で共同代表の1人である櫻井義秀氏(北海道大学教授)が430代にまでさかのぼる統一教会の先祖供養のおかしさを指摘し、「日本の仏教界が、こういうことはあり得ないと言っておくべきではなかったか」と注文を付けた。

 またNHKのEテレ「こころの時代」は10月、信仰を持つ宗教学者らが参画して「宗教と“カルト”」をテーマにした討論番組を2週にわたって放映した。統一教会やカルトの問題とあわせて社会背景などが論じられた。まさに社会的な関心の高さを示すものだ。

 カルト、宗教2世、宗教法人法に基づく解散命令請求など、どれもが宗教および信教の自由と密接にかかわる事案である。だが、教団からはこれらに対して明確なメッセージはみられない(キリスト教界を除く)。ウクライナ侵攻時とは対照的である。
 
過疎と後継者

 話題を転じて過疎地寺院と後継者問題に触れてみたい。各宗派の宗勢調査などで過疎地寺院の苦境は明らかである。本願寺派・豊山派・浄土宗・曹洞宗・智山派6宗派の寺院年収は300万円以下が4割前後である。豊山派は38%だが、智山派は49%で全寺院のほぼ半分が300万円以下である。また本願寺派は23%にあたる1600カ寺が解散や合併を考えていると回答。率は小さいが、浄土宗でも460カ寺以上がそう答えている。過疎地と収入は無関係ではない。そこに後継者問題もからむ。教団側の策は尽きたのか。

 『真言宗智山派の現状と課題』(2015年度実施の総合調査分析研究報告書)に次のような解説がある。

 「後継者の有無は経済性に強く影響されることが判明した。本宗寺院・教会の半数が年間総収入額300万円未満であることから、今後各寺院の・教会の後継者不足によるさらなる兼務寺院増加や合併の動きが表面化するおそれがある。そこで法資の確保を住職・主管者各自に任せておくだけではなく、宗団・教区主体による大規模な人材確保も検討に入れるべきではないだろうか」

 過疎地寺院や後継者対策を個々の住職や寺院の自助努力に任せていては限界があり、教団本部や教区でも検討すべきという指摘だ。智山派に限らず、日本仏教の共通する課題である。しばしば提起してきたが、まずは都市寺院と過疎地寺院の人員交流から始めてはどうか。数カ月単位で都市寺院の副住職クラスの教師たちを過疎地に派遣し、現状に接する。そこから新たなアイデアが生まれるかも知れない。

 冒頭の七難は、姿を変えて仏教界にもある。過疎や後継者難、住職の高齢化などのほか、僧侶の資質低下が指摘されている。課題は山積するが、問題を先送りすることなく、現実を直視して取り組むことが求められる。(工藤)

2022/12/8・15合併号 輝け!お寺の掲示板大賞2022 大賞 武器を捨て数珠を持とう 


大賞を受賞した龍岸寺の掲示板 お寺の掲示板の標語を表彰する「輝け!お寺の掲示板大賞2022」(仏教伝道協会主催)の授賞作品が5日、同協会のホームページで発表された。7月1日から10月10日までの応募期間にツイッターやインスタグラムで過去最高の4093作品が投稿された。
 
 今年の仏教伝道協会大賞には京都府京都市の浄土宗龍岸寺の「武器を捨て 数珠を持とう 絵・文字 長男(10)」が選ばれた。講評では、ウクライナでの戦争でいまなお多くの人々が苦しむなか、『仏説無量寿経』にある「兵戈無用(武力も兵力も必要がない)」という意味の言葉をあげ、「『武器を捨てて、数珠を持ち、拝む心(敬い感謝する心)を大切にしてほしい』ということで、今回は子どもによる掲示板の作品を大賞に」選出したと説明した。

仏教タイムス賞を受賞した徳源院の掲示板 仏教タイムス賞は東京都文京区の臨済宗妙心寺派徳源院の「かんしゃくの くの字をすてて 日をくらす」が授賞した。入賞作は以下の通り。(寺院・標語・投稿者の順)

【仏教伝道協会大賞】京都府京都市・浄土宗龍岸寺「武器を捨て 数珠を持とう 絵・文字 長男(10)」よっき@yokki2
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【仏教伝道協会本賞】東京都墨田区・真宗大谷派本明寺「私は今多くの死者の上に立っている そのことを忘れてはいけない」真宗大谷派本明寺@honmyouji271
 広島県広島市・浄土宗妙慶寺「毒言吐いたら 自分も浴びる」myoukeiin_buddhastagram
 大分県中津市・浄土真宗本願寺派雲西寺「修行がたらん」紅楳聖@unsaiji
【中外日報賞】広島県広島市・真宗大谷派超覚寺「歯車1つ外れれば止まってしまう時計 私1人休んでも止まらない社会 だから私の役目は歯車じゃないんだな」林鶯山 憶西院 超覺寺@chokakuji
【仏教タイムス賞】東京都文京区・臨済宗妙心寺派徳源院「かんしゃくのくの字をすてて 日をくらす」la source de vie @1947_2016
【文化時報賞】島根県松江市・臨済宗妙心寺派円成寺「意地の上にも三年」mskeibimanoken
【寺社NOW賞】三重県桑名市・真宗大谷派西恩寺「おばあちゃんは、(おじいちゃんは)なにになりたいの?(小学1年生からの問い)」tooru.ikeda.1
【彼岸寺賞】大分県日田市・真宗大谷派西光寺「自分が思いつく理由づけだけで、人生は説明できるわけではありません 梶田真章」パードレ@hiro5936
【フリースタイルな僧侶たち賞】福岡県北九州市・浄土真宗本願寺派永明寺「NO WAR PLEA
SE Нет войне」パードレ @hiro5936
【まいてら賞】広島県広島市・真宗大谷派超覚寺「蒔かない種は咲かないが 望まぬ花が咲いたなら 昔その種を蒔いたのだろう」林鶯山 憶西院 超覺寺@chokakuji
【お寺の窓口賞】大分県宇佐市・浄土真宗本願寺派浄泉寺「命の重さ 平和」パードレ@hiro5936
【寺子屋ブッダ賞】大分県宇佐市・真宗大谷派寶泉寺「人間みんな裁判官 他人は有罪 自分は無罪」パードレ@hiro5936
【ここより賞】宮城県仙台市・真宗大谷派・長稱寺「今日だけですよ」あみたBAR@BAR70040383
【笑い飯哲夫賞】鹿児島県南さつま市・浄土真宗本願寺派顯證寺「疲れたら休めばいいのよ」藤かおり@HrdJhAPPHqpUjSd

2022/12/8・15合併号 高野山真言宗青年教師会 東大寺で真言院1200年法会営む 宗祖青年期の志を継承


大仏殿で総礼を捧げる青年僧侶 真言密教という新たな救いの大法を授かって唐から帰朝した弘法大師空海が、華厳宗大本山東大寺(奈良市雑司町)に、勅命を受けて真言院灌頂道場を開いてから1200年。高野山真言宗青年教師会(永田道範会長)は11月30日、東大寺大仏殿で、平安新仏教・真言宗の確立に情熱を燃やしていた青年時代の宗祖の志を受け継ぐ「弘法大師灌頂開壇1200年記念法会」を厳修した。

 勇壮な法螺貝の音が先導する中、華麗な天平装束をまとった東大寺学園幼稚園年長組の児童を中心とするお稚児さん約60人と青年僧侶約200人、華厳宗の上司永照宗務長と高野山真言宗の今川泰伸宗務総長をはじめとする両派内局ら来賓約40人が、真言院の門前から中門を通って大仏殿までお練り。国内外の大勢の観光客や修学旅行生らが壮麗な進列を見守り、古代から続く日本仏教の精華に結縁した。

 大仏殿に入った青年僧侶らは一際高い内陣に上がり、本尊盧舎那大仏を仰ぎ見て総礼。大仏建立に疫病の終息や人々の安寧を願った天平期の聖武天皇と、高野山を開いて世の平和を祈った平安初期の弘法大師に共通する鎮護国家の教えを胸に刻みながら、コロナ終息や世界平和を祈念した。

 真言密教僧としての「原点回帰」が、今回の法会の根本理念。青年僧侶らは光明真言や御宝号「南無大師遍照金剛」を唱えながら、平安新時代を切り拓いた宗祖の足跡にならって、令和の世に新たな仏法の救いを広めていくことを誓った。

 治承4年(1180)の平家による南都焼き討ち後に大仏を再建した大勧進聖は、醍醐寺出身の重源。醍醐寺座主で東大寺別当になった勝賢のバックアップを受け、金胎両部の両界堂を備えた真言密教色の強い新たな大仏殿を完成させたという。

 そうした歴史を持つ大仏殿の中で、多くの参拝者が真言院1200年に結縁し合掌。香川県観音寺市から来た大師信者の男性は、「(大仏殿で)般若心経を唱えた時は胸が熱くなった」と語った。

 古代国家仏教の頂点である東大寺での法会を終えた永田会長は、「大仏殿で鎮護国家の祈りを捧げることができたのは、まさに真言僧侶冥利に尽きる」と感想。「世の中が平和でみんなが幸せに暮らせるように—。これが聖武天皇とお大師さまの共通の願いであり、だからこそ帰朝後いち早く東大寺に正式に密教を導入された」と敬慕し、「密教の礎には、お大師さまが南都で学ばれた顕教や古密教がある。私たちがそれを追体験させていただく貴重な機会になった」と感謝の思いを語った。

 青年僧侶らは前日、真言院で報恩清掃。感謝の勤行を捧げた。

2022/12/8・15合併号 埼玉県宗教連盟 20回目の平和の祈り カトリック川越教会で


埼玉県佛教会・青年会による祈り 埼玉県宗教連盟(理事長=齊藤佳佑・立正佼成会浦和教会長)は11月28日、川越市のカトリック川越教会で「平和の祈り」を開催した。コロナ禍に考慮し今回は祈りの時間の短縮、参加人数を半数程度に制限して行い、加盟6教宗派がそれぞれの儀式で世界平和の実現に向けて祈りを捧げた。

 2001年の米国同時多発テロ事件の追悼のために始まり、2004年以降毎年開催され、今年で20回を迎えた。会の冒頭では、ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルスによる犠牲者への黙祷が行われた。

 齊藤理事長は集いの発足経緯に触れつつ、「この平和の祈りを通じて教宗派を超えて世界平和の祈りを捧げたい」と挨拶を述べ、加盟団体の日本基督教団、埼玉県神社庁・神道青年会、立正佼成会所沢教会、天理教埼玉教区、埼玉県佛教会・仏教青年会、カトリックが交代で祈りを捧げた。

 2003年から会場を提供している川越教会の加藤智神父(カトリック)は、村上春樹著『猫を棄てる』を読み涙したことを語り、「村上さんと同じで私の父もお坊さんだった。今日も仏教の皆さんが素晴らしい勤行をしてくださり父を思い出し涙が出た」とし、同書にあった僧侶である村上氏の父が敵味方なく戦争の犠牲者を悼む姿を、実父やキリストに重ねた。

 父が遺言で「どうか神仏だけでなく、一人ひとりの人に心から手を合わせられる人間になってほしい」と願っていたことを紹介し、超教派の祈りの中で「皆さんがお互いに手を合わせ合って生きておられると感じた。今日の皆さんのお姿を心にとめ、見習って生きていきたい」と話した。

 コロナ禍に配慮し、今回は一般の参加が見送られたが、天理教の協力により各教派の祈りは後日動画で配信される予定だという。

2022/12/8・15合併号 2022年 仏教・宗教関係書 今年の3冊


 ロシアによるウクライナ侵攻、安倍元首相銃撃事件とカルト宗教問題など、ショックな出来事が続いた一年。仏教書・宗教書にはどんな成果があっただろうか。研究者に「3冊」を選んでもらった。

※数字は順位ではありません。紙面では選者による評も掲載しています。ぜひ紙面もご覧下さい。

松尾剛次(日本仏教史)
山形大学名誉教授

①末木文美士著『禅の中世 仏教史の再構築』臨川書店
②島薗進著『日本仏教の社会倫理』岩波書店
③松長有慶著『空海』岩波書店

安藤嘉則(禅宗史/仏教学)
駒沢女子大学学長

①鈴木大拙著(碧海寿広訳)『禅と日本文化〔新訳完全版〕』角川ソフィア文庫
②河崎豊・藤永伸編『ジャイナ教聖典選』国書刊行会
③志賀浄邦著『シャーンタラクシタ『真実集成』の原典研究―業報・論理・時間』起心書房

釈徹宗(宗教学)
相愛大学学長

①ウィリアム・ダルリンブル著、(パロミタ友美訳)『9つの人生』集英社
②菊池真理子著『「神様」のいる家で育ちましたー宗教2世な私たちー』文藝春秋
③佐々木隆晃著『構築された仏教思想 蓮如』佼成出版社

師茂樹(仏教学/人文情報学)
花園大学教授

①末木文美士著『禅の中世 仏教史の再構築』臨川書店
②楠淳證・後藤康夫編『貞慶撰『唯識論尋思鈔』の研究 「別要」教理篇・上』法藏館
③伊藤聡・門屋温監修/新井大祐・鈴木英之・大東敬明・平沢卓也編『中世神道入門 カミとホトケの織りなす世界』勉誠出版

佐久間瑠理子(仏教文化史)
大阪観光大学教授

①田中公明著『仏菩薩の名前からわかる大乗仏典の成立』春秋社
②大羽恵美著『チベットにおける仏教説話図の研究』法藏館
③杉本卓洲著『インド・ジャータカ図の研究』起心書房

花野充道(法華仏教思想/日蓮教学)
法華仏教研究会主宰

①菅野博史著『中国仏教の経典解釈と思想研究』法藏館
②大平宏龍著『日蓮遺文の思想的研究』東方出版
③丹治正弘著『日蓮と世界認識』同成社

柴田泰山(中国仏教/浄土宗学)
浄土宗総合研究所研究員

①齊藤隆信著『隋東都洛陽上林園翻経館沙門 釈彦琮の研究』臨川書店
②若松英輔編『文学者と哲学者と聖者 吉満義彦コレクション』文春学藝ライブラリー
③横内裕人編『対馬の渡来版経 護り伝える東アジアの至宝』勉誠出版

小林奈央子(宗教学)
愛知学院大学教授

①安井眞奈美著『狙われた身体―病いと妖怪とジェンダー』平凡社
②徳永誓子著『憑霊信仰と日本中世社会』法藏館
③櫻井弘人著『遠山霜月祭の研究』岩田書院

文芸編今年の三冊
内藤麻里子(文芸評論家)

①角田光代著『タラント』中央公論新社
②沢木耕太郎著『天路の旅人』新潮社
③小川哲著『地図と拳』集英社

2022/12/1 「動的平衡」に利他性と相補性 万博プロデューサー福岡伸一氏が講演 仏教の生命観と通底とも 


 大阪府佛教会(村山廣甫会長)は11月17日、大阪市のホテル日航大阪で第57回大阪府佛教徒大会を開催した。来る2025年の大阪・関西万博に向け村山会長は「人と物とが集約的に大阪に集まってまいります。この時に仏教界が何もしないでいるわけにもいきません」と宣言。その第一歩として、同万博テーマ事業「いのちの輝きプロジェクト」の一つである「いのちを知る」パビリオンプロデューサーの福岡伸一氏(分子生物学者、青山学院大学教授)が講演し、主著『生物と無生物のあいだ』で提唱した「動的平衡」の理論について、仏教との共通性に触れながら論じた。(続きは紙面をご覧ください)

万博と同じ年には仏教徒会議

大会旗をはさみ右が里雄理事長、左が村山会長 大阪府佛教徒大会には里雄康意・全日本仏教会理事長らも出席。2025年の第47回全日本仏教徒会議大阪大会の開催に向け、改めて府佛の村山廣甫会長へと大会旗が受け渡された(写真)。里雄氏は祝辞で「大会の成功に向け大阪府佛教会の皆様と共に取り組んでまいります」と話した。
 
 大阪大会の2025年はもちろん、大阪・関西万博が開かれる年でもあり、どのような相乗効果が生まれるか、期待は大きい。    
  
 講演会で司会をした村山博雅氏(世界仏教徒青年連盟会長)は講師、福岡伸一氏を紹介する際、「このたびの万博のキーワードは『いのち』であり、私たち仏教徒にとって大変高い親和性を持ったテーマで開催されます。大阪にとってまたとない機会を最大限に活用し、仏教徒として社会に貢献していきたい」と抱負を述べた。

 ちなみに1970年の大阪万博で全日仏は無料休憩所「法輪閣」を開設。その建物は現在、四天王寺の庚申堂として利用されている。

2022/12/1 いのちの森で3回目植樹 WCRP日本委気候危機TF 70人余が汗流す


記念植樹を行う関係者たち。左端がタスクフォース責任者の田中氏 世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の気候危機タスクフォースは11月19日、埼玉県所沢市の「WCRPいのちの森」で2019年2月以来、3年11カ月ぶりとなる3回目の植樹会を開催。募集定員をはるかに超える70人余が植樹作業に汗を流した。

 開式にあたりタスクフォース責任者の田中庸仁氏(真生会会長)が挨拶し、「世界の気候危機に対処するためCO2(二酸化炭素)を減らすことは大事だが、一方で酸素を生み出さなければならないと薗田稔先生(前タスクフォース責任者、秩父神社宮司)によっていのちの森づくりが始まった」と説明し、「自身の体力に合わせて作業してください」と呼び掛けた。

 土地を所有する「堀口天満神社周辺緑地を守る会」の中村明氏は、かつては鬱蒼と竹林に覆われ、その竹の伐採にあたっていたものの、膨大な量に「ほとほと疲れていた」。そんな折にWCRPから打診があったと言い、「延べ何百人もこの森に入ってきれいにしていただいた。感謝いたします」と安堵の表情を浮かべた。

 記念植樹は2カ所で行われた。タスクフォースメンバーと地元関係者、小学生たちによってスコップで土をかけ水をかけて成長を祈った。

 引き続き、南向き緩斜面10カ所に分散してスコップによる穴掘りが行われた。場所によって土質が違い柔らかいところもあれば、木の根にぶつかり苦労しながら掘ったところも。ある場所では親指大のカブトムシの幼虫が見つかった。

 深さ30~40㌢ほど掘ったところで苗木をうえ、水を撒いた。人数が多かったため、予定時刻より早く終了した。

 終了後、薗田氏が「ご苦労さまでした」とねぎらいの言葉を贈り、「小さなお子さんたちに参加いただいたことは将来に希望が持てる」とし、今後も「万物の母」たるいのちの森を育ていくよう述べた。

 いのちの森では2018年3月に最初の植樹会を実施。今回で合計約150本が植えられた。

2022/12/1 智山派別院真福寺で慶讃事業 カルタや御詠歌、声明、法話で宗祖の生涯学ぶ


 真言宗智山派(芙蓉良英宗務総長)は11月22日、東京都港区の別院真福寺で宗祖弘法大師ご生誕1250年慶讃事業として宗祖の生涯に思いを巡らす公開講座や御詠歌法音絵巻を開催した。満席となる約200人が訪れた。 

 公開講座では、教化誌『生きる力SHINGON』で「お大師さまのご生涯」を執筆する川﨑一洸氏が「カルタで知るお大師さま空海」と題して講演。宗祖の足跡に親しめる「お大師さまカルタ」の絵を読み解きながら、宗祖の生涯を振り返った。

 「し」の札の「静かなる/その佇まい/ご入定」では、「ご入定とは亡くなることではなく、ずっと人々を救いたい、その思いを持ちながら瞑想を続けた。まだ生きておられてその魂で救ってくださっている」とし、高野山では「今でもお坊さんが毎日メニューを変えてお大師さまにご飯をお届けしています」と大師信仰を語った。

大盛況だった慶讃事業の御詠歌法音絵巻 川﨑氏は、講演後に行われる御詠歌・声明・法話で綴る御詠歌法音絵巻を紹介し、「すべての音、五感に感じられるものの中には大日如来の説法が含まれている」と述べ、声明・御詠歌で「その法恩、法悦に浸ってほしい」と述べた。

 続いて、密厳流遍照講指導師範による御詠歌法音絵巻「お大師さま」では、「お大師さまカルタ」に御詠歌・声明・法話を交え、密教の教えや宗祖の生涯を音でも感じる試みとなった。
 
 声明や宗祖の教えを解説する法話を挿みながら、「同行二人詠歌」「密厳国土和讃」「弘法大師生誕和讃」等が披露され、最後は全員で「同行和讃」とご宝号を唱和した。

 別院真福寺での開催に先立ち、11月15日には総本山智積院金堂でも公開講座や御詠歌法音絵巻が開催された。

2022/12/1 炎天寺 一茶まつりで 新企画 俳句クイズで想像力養う


かえる?すずめ?俳句をつかって創造力クイズ 江戸時代の俳人・小林一茶ゆかりの東京都足立区の真言宗豊山派炎天寺(吉野秀彦住職)で11月23日、第61回一茶まつりが開催された。新たな試みとして「俳句創造力クイズ」が行われ、小さないのちを寿ぐ俳句の心にふれた。

 昨年をもって「全国小中学生俳句大会」を終了し、新たなスタートとなった一茶まつり。初めに本堂で一茶忌法要を営み、このなかで吉野住職が「一茶の弱きものや小動物のいのちを寿ぐ句を顕彰」しながら、「俳句を方便とし、目の前にあるものの心根、本質を創造し、存在そのものを寿ぐ力を養う活動を盛んに」していくことを宣誓した。

 大蛙と痩蛙による恒例の「蛙奉納相撲」は3年ぶりの開催と思われたが、大蛙がコロナ陽性の疑い、痩蛙が自転車で道路交通法に違反し辞退を申し出て中止となった。行司が「相撲道に邁進できるよう指導していく」とアナウンスして笑いを誘った。

 プログラム最後には一茶の句や、過去の俳句大会特選句の中から一字を伏せて、その言葉を当てる「俳句創造力クイズ」を実施。「〇〇〇来い今日は一茶のまつりの日」の句では、「①かえる②すずめ、どっちでしょう」と出題。作者の気持ちを想像したり、感覚の違いを感じてもらう俳句クイズとなった。

 吉野住職は「みんなで作り、みんなで参加できる楽しいおまつりにするため役員さんとも話し合っていく。地域社会のなかで文化を発信していきたい」と展望した。

11月

2022/11/24 戦時中供出の梵鐘 日米の友好育む アトランタに鐘楼堂完成 広島の曹洞宗寺院が所有


鐘楼と写る吉井氏(右から2人目)や秋葉氏(左)。カーター氏(中央)も参列した(曹洞宗提供) 戦時中に供出され、ジミー・カーター元米大統領が活動拠点とするNGO「カーター・センター」で展示されていた梵鐘をつるす鐘楼堂が完成し、ジョージア州アトランタ市のセンター敷地内で9月末に落慶式と撞初式が執り行われた。

 梵鐘は曹洞宗正願寺(広島県三次市甲奴町、吉井祥道住職)が太平洋戦争中の1942年に砲弾資材として呉海軍工廠に供出。江戸期の1820年に鋳造されたものという。砲弾となる前に終戦を迎え、英国を経て米国に渡った梵鐘を購入した現地の日本人商工会と在アトランタ日本国領事館が1985年にセンターに寄贈した。

 これを縁にカーター氏は1990年に同寺を訪れ、同州アメリカス市と旧甲奴町(現三次市)は姉妹都市となって現在も交流を続けている。米国の生徒らが訪問した際には、正願寺で坐禅体験も行われた。日米の友好を育んだ梵鐘が平和の象徴となるよう願い、ジョージア日米協会などが鐘楼堂の建設を計画した。

 落慶式では秋葉玄吾・曹洞宗北アメリカ国際布教総監が導師を務め、カーター氏の孫ジェイソン・カーター氏ら関係者400人以上が参列。撞初式では吉井住職が法語を唱え、「平和を願う鐘の音を世界中に強く響かせてほしい」と祈りを込めた。ゴッドウィン建仁・同宗国際センター所長が英訳して伝えた。

 初めてこの梵鐘を撞き、「腹の底まで響く重い音で感動した。誇らしい気持ち」と吉井住職。「建立の経緯や願いが梵鐘に刻まれているのではと期待して行ったが、慌ただしくて確認できなかったのが心残り」と話した。

2022/11/24 高野山金剛峯寺、善光寺で入山式や晋山式

 
高野山金剛峯寺 長谷部真道座主入山 逆境の時代にこそ祈り

陽光を浴びながら金剛峯寺に入る長谷部座主 高野山真言宗総本山金剛峯寺(和歌山県高野町)で15日午前、長谷部真道第415世座主(83・同宗管長)の入山式が営まれた。新座主は、合掌しながら言葉を一言々々確かめるように思いを込めて垂示。宗内全寺院の僧侶と全檀信徒に向け、「大変な逆境の時代を迎え、世界人類が今、視界不良(に陥っている)。我々には祈るしか道はない。なにとぞ一緒に世界の平安を念じていただきたい」と呼びかけた。晋山式は3月9日。(続きは紙面をご覧ください)


善光寺大勧進 栢木寛照氏の晋山式営む 〝誇りを持って精進〟誓う

仲見世を練り歩く栢木新貫主 長野市の善光寺世住職ならびに天台宗大勧進第104世貫主に就任した栢木寛照氏の晋山式が16日に執り行われた。一山住職や信徒ら約450人に「誇りを持って、善光寺の発展、仏法興隆のため、一人でも多くのみなさんにご縁を結んでもらいたい一心で精進する」と決意を表明。すでに春~夏の「御開帳」を円成させた栢木新貫主の正式なお披露目に、街全体は喜びのムードでいっぱいとなった。善光寺は大勧進貫主と浄土宗大本山大本願法主が共に住職を務める。(続きは紙面をご覧ください)

2022/11/24 自坊税務調査日記その1 私の対策マニュアル 約10年ぶり調査のリベンジ ボロボロ状態から〝お墨付き〟得る 上田二郎氏(僧侶兼税理士)

 約10年ぶりに、自坊に税務署の調査が入った。前回は帳簿がボロボロで、重加算税を含む多額の追徴税額を賦課された。元国税査察官として対応することになったのだが、とても恥ずかしい思いをした。

 しかし、自分には不正会計の責任はなく、前回調査をきっかけに『税理士の坊さんが書いた 宗教法人の税務と会計入門』を世に送り出すことができたため、むしろ調査に感謝している。

 今回はたったの1・5日ですべてが終了し、「申告是認通知書」が送られてくる。税理士の申告額が正しくなければ恥ずかしいので、結果は当たり前なのだが、それでも、今後10年間は税務調査がない“お墨付き”をもらったことは、素直にうれしい。

 ところで、統一教会に関係しているのかどうかは定かではないが、宗教法人に対する税務調査が増えているようだ。そこで、『自坊の税務調査日記』と題して、税務調査対策マニュアルを書き記すので、自坊の防衛にお役立ていただきたい。

調査日程は交渉が可能

 調査日程は交渉が可能だ。9月初旬に税務調査の予約電話があり、10月13日(友引)及び11月10日(友引)の10時~15時と決めた。寺院の特殊事情である「いつも葬儀は突然に」を説明すれば、税務署は日程調整に応じてくれる。

 後日、調査期間(平成31年1月~令和4年6月)の通知とともに、当日までに準備しておく書類が郵送され、以下のとおり記載されていた。

①寺院沿革のわかるパンフなど
②帳簿一式(総勘定元帳、現金出納帳、経費帳、給与台帳など)
③法人名義預金通帳(住職個人の預金も確認する旨の注意書きあり)
④役員名簿、寺務日誌、葬儀・法事の受付簿、過去帳などの備え付け帳簿
⑤各種契約書綴り(賃貸借契約、売買契約書など)
⑥収入と経費に係る契約書、領収書(控を含む)
⑦県(学事課)への報告書
⑧源泉徴収簿及び各種控除証明書などの年末調整等関係書類
 など
 
 注意書きとして、現金出納帳には「調査日直前までの記載状況を確認します」と書かれている。これは、『現金監査』と呼ばれ、帳簿の現金残高と実際の現金有り高が合っているかどうかを確認する調査手法だが、調査官の狙いは別のところにある。すなわち、現金の保管場所(金庫)などを調査し、帳簿外の現金が保管されていないかを確認するのだ。

 寺院会計は「超現金主義」と呼ばれ、ほとんどの取引が現金で行われている。金庫などに帳簿残高以外の現金が保管されていれば、現金出納帳が正しくない証拠になる。そのため、法人名義の預金通帳とは別に、可能な限り、住職個人の通帳を提出するよう要求し、不正経理の有無を探っているのだ。(続きは紙面をご覧ください)

2022/11/24 頼朝手植えの杉が本人像に 静岡・智満寺の倒木を再生

江里仏師が手掛けた頼朝像 源頼朝が源氏再興を願って植えたとされる推定樹齢800年の「頼朝杉」を使って制作された頼朝像が完成し、10月25日に京都市左京区のロームシアター京都で披露された。征夷大将軍に就いた頼朝をイメージした座像で、今後一般公開された後、頼朝ゆかりの鶴岡八幡宮(鎌倉市)に奉納される予定。

 平安佛所(京都市左京区)の仏師江里康慧氏が今年1月から約9カ月かけて制作。厨子もつくられ、江里氏の娘で截金師の朋子氏が頼朝の流刑地だった伊豆の風景を表した。

 衣装考証を重ねて詳細に選定された黒袍と藤色の袴をつけた頼朝像は高さ110㌢、幅147㌢。神護寺(京都市右京区)や善光寺(山梨県甲府市)などの各像を参考にしつつも、「令和の頼朝像」を目指したと江里氏。「すべての人が無限の可能性をもって生まれてくる。頼朝はスケールの大きなことを成し遂げた。多くの人に勇気を感じてほしい」と話した。

 使用した杉は、天台宗智満寺(静岡県島田市)の境内に点在する国の天然記念物「十本杉」の1本。いずれも樹齢800~1000年とされ、現存するのは7本。幹回り9・7㍍、高さ36㍍あった頼朝杉は2012年に倒木した。北川教裕住職の発願で、2015年に江里仏師によって弥勒菩薩像も造立されている。

 北川住職は「頼朝の大願成就の願いが込められた木。その魂に導かれ、まさによみがえったようだ」と語った。頼朝像制作は、樹木の調査・研究により地域活性化や文化継承に取り組む銘木総研(大阪市、前井宏之代表取締役)を中心とする「頼朝杉プロジェクト」が企画。前井氏は「頼朝は鎌倉に建立した永福寺で、敵味方関係なく平等に弔って国の平和を願った。そうした怨親平等の精神も感じてもらえたら」と話した。

 頼朝像は、東京都江東区の東京ビッグサイトで12月7~9日に開かれる「エコプロ2022」で公開され、来春には鶴岡八幡宮に寄進される予定。

2022/11/17 全日仏青全国大会 自己研鑽し、前へ WFBY50周年式典と法要も 菅前首相が基調講演


全国の青年僧に呼びかける西郊理事長 全日本仏教青年会(全日仏青、西郊良貴理事長)は10日、横浜市内のホテルで対面では4年ぶりとなる全国大会を開催した。世界仏教徒青年連盟(WFBY)の創立50周年を記念した世界平和祈願法要や記念式典が合わせて執り行われた。大会では、菅義偉・前首相の基調講演も行われた。青年僧の役割を再確認する中で、西郊理事長は「青年僧の活発な活動を期待するとともに応援していきたい」と全国の青年僧侶に向けて呼びかけた。

 全日仏青はWFBY唯一の日本センターでもあることから、WFBY50周年を記念する法要・式典を企画。西郊理事長とWFBYの村山博雅会長を導師に加盟各団体の代表者が式衆を務めた。タイ・スリランカ・マレーシア・韓国からWFBY役員も来日した。

 式典で西郊理事長は、今期のテーマとして掲げた「多様性における青年僧の役割」に触れて、青年僧が混沌とした時代の諸問題に取り組むために知識や経験を積み成長する必要性を説き、「僧侶として自己研鑽し、少しでも前に進んでほしい」と語った。

 全日本仏教会の尾井貴童事務総長も、「日々変動する時代の中で、世界の事象を共有し、青年僧が悩み苦しむ人々に寄り添ってほしい」と期待。

 村山会長は、来日したWFBY役員を一人ひとり紹介し、「WFBYの50年とJYBA(全日仏青)の45年は密接な歴史がある。言語と国境を越えた交流は大変な苦労の連続の歴史であり、その努力があってこその今の友情深い関係性ができた」と感謝した。

 仏教を通じた国際交流は多様性と深く関連することや、他国との違いである日本の宗派仏教についても言及し、「多くの宗派が一つに集まり同じ活動をする全日仏青こそは、釈尊の教えに基づき多様性の調和を実現している。皆さまには社会や国際交流での多様性のあり方を牽引していただきたい」と話した。

 菅前首相の講演では、安全保障やコロナ禍、急激な円安に対応した経済政策などを説明。菅前首相は、自身が打ち出した温室効果ガスとその吸収量の均衡を掲げた「カーボンニュートラル」について「誰もが必要と思いながらも、言い出せなかった。あえて誰にも相談せずに宣言したが、誰からも苦情はこなかった」と一歩踏み出すことの重要性を語った。

2022/11/17 浄土宗大本山金戒光明寺 藤本淨彦法主が晋山 参拝者目線で実践表明


境内をお練り行列する藤本新法主 「くろ谷さん」として親しまれる浄土宗大本山金戒光明寺(京都市左京区)で第76世藤本淨彦法主の晋山式が9日に営まれた。宗門要路や檀信徒ら約500人が参列。藤本新法主は浄土宗開宗850年キャッチフレーズの「お念佛からはじまる幸せ」を引き、「お参りの皆さんの目線の中で実践し、教化し、社会に発信していく所存です」と決意を語った。

 澄み切った空の下でお練り行列が開始。「浄土真宗最初門」の勅額のある山門の下で読経し、門扉が開かれた。この勅額は、室町時代に後小松天皇が法然上人の遺徳を称え「真にこの地こそ、浄土宗が始まった門である」との思いを込めたもの。

 そこからさらに石段を登って経蔵、阿弥陀堂を参拝。御影堂では「元祖法然上人ご自証の選択本願念仏義を顕揚せんとす」と上人75歳像に誓願。不惜身命の心を披瀝した。満堂の参列者も共に念仏を称え喜んだ。

 藤本法主と同じく佛教大学で教員だった伊藤唯眞浄土門主は祝辞で、宗教学、宗教哲学、宗学などへの深い見識を称え、特に「一枚起請文」のドイツ語訳の業績に着目。「一枚起請文の原本があるこのお寺に晋山なさったことは非常に大きな意味があると思います」と称賛した。川中光敎宗務総長は伝宗伝戒道場・璽書道場の教誡師、浄土宗総合研究所所長などで宗門興隆に尽力したことに感謝し、「学徳深き称名念仏の善知識を得たることはわが宗門にとって大いなる喜び」と寿いだ。(続きは紙面をご覧下さい)

2022/11/17 曹洞宗 無住実態調査 無住の4割以上が合併・解散望む 過疎地以外に多く存在


 曹洞宗の過疎地寺院振興対策室は、全国の無住職寺院の実態を初調査したアンケートの結果をまとめ、『宗報』10月号で発表した。無住の4割以上が合併・解散を望んでいることが明らかになったとともに、過疎地でない地域により多く無住が存在することも分かった。

 調査は4~6月、4月の時点で代表役員のいなかった400カ寺を対象に実施。総合研究センターと協力し、対象の無住がある地域の教区長にアンケートを行い、就任手続き中や具体的な後継予定のある寺院を外した288カ寺を有効回答とした。

 後継者がいる寺院は約19%にとどまった一方で、後継者がいない寺院は約65%に上った。「わからない」とした約16%を含めると、さらに多くの寺院で今後も無住の状態が続くと予想される。後継者がいないとした186カ寺のうち、60%が合併・解散を望んでいると回答。全体の288カ寺から見ると約43%を占め、寺院の維持・管理が困難とする理由が最も多かった。

 合併・解散を望む寺院のうち、その課題となる建物・墓地を保有する寺院は70%以上あった。手続きに必要な代表役員などがいない場合もあり、対策室は「宗務庁の介入や支援を進める必要がある」と指摘。手続き上の課題が比較的少ない寺院も把握できたため、「合併・解散の事例づくりに努めていきたい」としている。

 また、一般に無住は過疎地に多いと考えられているが、過半数に達する約56%が過疎地でない地域にあることが明らかになった。さらに、非過疎地のほうが過疎地に比べて檀徒がいない割合が高く、後継者がいない割合についても高水準だった。

 対策室の吉岡靖雄次長は「無住職寺院に関しては、過疎地に限った問題でないことが分かった。無住がある教区の問題でもあり、宗門全体として考えていかねばならない。困ったことがあれば相談してほしい」と話した。

 なお、今回の調査対象は本務寺院(全体は約1万860カ寺)のみとした。兼務寺院など約3570カ寺を加えると、さらに無住数は増えると見られる。

2022/11/17 政治と宗教考えるシンポ 旧統一教会と創価学会に共通性 宗教・政治・産業が一体化 宗教コングロマリット


 8月に続いて2回目となる市民団体主催の「政治と宗教を考えるシンポジウム」が6日、東京・東村山市民センターで開催された。元参院議員でジャーナリストの有田芳生氏が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)について、同じくジャーナリストの乙骨正生氏が創価学会についてそれぞれ講演した。討論には元創価学会員の芸人、長井秀和氏が参加。政治のほか、お金優先体質、宗教と産業が一体化したコングロマリット(複合企業体)といった共通性が確認された。シンポは地元市議や市民らによる「政治と宗教を考える市民の会」が主催した。(続きは紙面をご覧ください)

2022/11/10 日蓮宗大荒行入行会 法華経寺3年ぶり開堂116人 遠壽院は4人 前年より3人減


マスクを着用しながら、気合のこもった読経を響かせる修行僧(法華経寺) 祈祷修法を習得するために「寒一百日」間の修行に籠る日蓮宗大荒行の入行会が1日、千葉県市川市の大本山中山法華経寺(新井日湛貫首)の日蓮宗加行所(若松宏泉伝師)と日蓮宗遠壽院荒行堂(戸田日晨伝師)でそれぞれ厳修された。コロナ禍の影響により3年ぶりの開堂となった日蓮宗加行所には116人(初行67人、再行7人、三行15人、四行6人、五行13人、参籠8人)が入行。遠壽院は昨年に比べ3人減の4人(初行3人、再行1人)が入行した。

 日蓮宗加行所では、新型コロナウイルスの感染対策を徹底し、事前に入行僧・職員・取材者に至るまで事前のPCR検査を実施。入行会が行われる本堂に寺族・檀信徒などの参列者の立ち入りを制限した。入行中も水行や食事以外ではなるべくマスクを着用し、各自が体温計やマスク100枚以上を持参するなど、感染対策に配慮した形となっている。

 田中恵紳宗務総長は「3年ぶりの満を持しての入行。宗門人のみならず全ての関係者が注目する一百日間となることを肝に銘じてほしい」とコロナ禍以降、初の開堂であることに触れた上で、「成満会を全員無事に、全員無事に、全員無事に!迎えられますことを」と入行僧全員の成満を強く願った。加行所伝主の新井貫首も「鬼子母神さまに身を託し、行堂清規を守って元気な姿でまたお会いしたい」と述べた。

 若松伝師は「開堂するために考えられる準備をすべてしてくれた」と関係者に感謝。コロナ禍やウクライナでの戦争など混沌とした世情を憂え、「こういう時代だからこそ、我々修法師は自分自身が仏さまの慈悲と知恵で人々を助ける約束をした法子であることを自覚しなければならない」と説示。「これから厳しい修行が始まる。皆さまの地位や大切な命を預からせていただきます。よろしいですね」と問いかけると、修行僧は「はい!」と力強く答えた。

 遠壽院では、戸田伝師が「混沌とした日本、世界の状況の中で、歴史と伝統ある遠壽院行堂で行ずる意味をよく考え、修行に励んでほしい」と入行者らに呼びかけた。

2022/11/10 WFB新役員 新会長にパロップ・タイアリー氏 人道支援委員長に東海林氏


 第30回WFB世界仏教徒会議・第21回WFBY世界仏教徒青年会議・第12回WBU世界仏教徒大学会議が10月17日から21日までタイの首都バンコクで開催された。役員選挙では、長年WFBを牽引してきたパン・ワナメッティー会長(99)が退任し、新会長に事務総長のパロップ・タイアリー氏(72)が選任された。任期は2年、もしくは次期大会まで。

 パン・ワナメッティー氏は98年、オーストラリアで開催された第20回WFB大会で会長に就任。タイ国の元外交官。たびたび日本を訪れ、仏教界や各教団とも交流を深めた。

 同氏を支えてきたパロップ・タイアリー氏が会長に。タイの実業家で、WFBY会長などを経てWFB事務総長に就いた知日派。2018年、日本で開催された第29回WFB大会の際、来日できなかった会長に代わって大会を指揮した。

 後任のWFB事務総長にはタイ仏教青年会(YBAT)会長のモンティエン・タナナート氏が選任された。

 日本唯一のWFBセンターである全日本仏教会(全日仏)関係では、WFB副会長の小林正道氏(浄土宗)、国際執行役員の戸松義晴氏(同、前理事長)が再任された。人道支援委員会委員長の日比野郁皓氏(同)が退任し、東海林良昌氏(同)が就任した。なお東海林氏は副事務総長を兼任(留任)する。

 またWBUの役員に日比野氏と岡野正純(孝道教団)が就いた。

 WFBは1950年5月、世界的なパーリ語学者マララセーケラ博士の提唱によってスリランカ(当時セイロン)で発足した。3年後の2025年には、創設75周年を迎えることから、新執行部はその準備を整えることになる。
 
大谷会長がスピーチ
 
 4年前の日本大会以来となるWFB世界大会に、全日仏の大谷暢裕会長(真宗大谷派門首)が出席し、英語でスピーチした。ロシアによるウクライナ侵攻、WFB大会直前にタイ北部で起きた保育施設の園児殺害事件に心を痛めているとして、「人を傷つけ、殺める『暴力』はいかなる理由があったとしても決して許されることではない」と述べた。世界で頻発するテロや争いにも言及し、「問題解決のために武力・暴力を行使することは、仏教の智慧と慈悲に反する」と提起した。

2022/11/10 浄土宗 お寺で「参礼寺」(まいれいじ)貯めよう! 850年記念アプリをリリース


近隣の寺院を瞬時に表示する機能も 浄土宗(川中光敎宗務総長)は1日、開宗850年記念スマホアプリ「そうだ、浄土宗寺院を巡ろう」を正式リリースした。全国の浄土宗寺院を参拝しこのアプリで記録すると「参礼寺」(まいれいじ)ポイントが貯まり、豪華グッズと交換することができるのが画期的。「アナログ社会であるお寺が、モバイル技術を使っての大改革に浄土宗を挙げて挑戦します」と宗派も自信を見せる。

 全国に約7千カ寺ある浄土宗寺院だが、ほとんどの寺院は観光寺ではない市井の檀家寺。檀信徒以外が赴くには敷居が高く入りづらいと誤解されがちであることから、「開かれたお寺」「地域とともに生きるお寺」を目指すためのアプリ。

 さっそくダウンロードすると、「参拝する」「寺院検索」など9つのコマンドが表示される。この「参拝する」機能が優れもので、スマホのGPS機能を活かし、瞬時に現在地の近隣寺院の浄土宗寺院を表示してくれる。「あ、この近くにお寺があるんだ、せっかくだからお参りしよう」となり、仏縁の広がりになっていくというわけだ。QRコードが設置された寺院ではそれを読み取ることでさらに参礼寺ポイントがプラスで獲得されるという仕組みで、ゲーム感覚なのが楽しい。ポイントに応じ10段階のランクが上がっていく仕組みとなっている。もちろん、訪れた人をどう教化していくかは住職の腕の見せ所だ。

 気になる参礼寺ポイントと交換できるグッズはと言うと、「宗務総長直筆の850年限定御朱印」「なむちゃんグッズ」「850年記念書籍」「京の銘酒」などさまざま。アプリは今後、積極的にアップデートを行い、スマホ御朱印やイベント一覧、フォトコンテストなどのコーナーを充実させていく。

 開発は㈱ドリグロ(本社=大阪市)が担当した。

2022/11/10 曹洞宗 服部秀世宗務総長語る 社会に目を向ける宗門へ


総長室でインタビューに応じた服部総長 曹洞宗の宗務総長に服部秀世議員(73)が10月16日付で就任した。満票で指名を受け、演壇に立った服部新総長は「広く社会の要請に応えたい」と力強く語り、社会に目を向ける開かれた宗門づくりへと舵を切った。

寺院の壁を越えて

 前内局で財政部長を務め、宗費軽減や資金貸付などの新型コロナ対策を通して難局を支えた。自坊・浄元寺がある静岡市から東京の宗務庁に出向したのを機に、上智大グリーフケア研究所の講座に通った。「葬儀での法話は遺族に伝わっているのだろうか。ずっと頭から離れなかった」。コロナ禍以降もオンラインで参加し続けた。

 僧侶、寺院の壁を越えて外へ目を向ける大切さを知らせる出来事の一つが自坊での取り組みだ。弟子が始めた御朱印をきっかけに参拝した若い人たちの輪が広がり、食の会などの催しも開くようになった。檀信徒とは別のコミュニティができ、結婚式に呼ばれるほど関係性が深まっている。

 「なにかあればお寺の手伝いにも来てくれる。これまでは考えられなかったこと。今後のお寺のあり方を指し示しているようです」。そう弟子の発想力と行動力に目を見張る。「社会で起きていることに注意を払い、お寺の活動に取り入れる。現場の発想を生かすのであり、その逆ではない」

葛藤を抱えて進む

 一方で、弟子の意見をなんでも受け入れるわけにもいかない。「弟子は反発するもの」と話す眼差しは温かい。「失敗を重ね、葛藤しながら進んでいく。その反骨精神が尊い」と道元禅師の教えを引きつつ、大本山永平寺での随喜時代を回想する。

 約10年にわたる随喜の間、楢崎一光氏が副貫首に就いた。能筆家としても高名な人物で、その書を求めて会いに行ったところ、お茶とお菓子を出してもてなしてくれたという。「はっとして背中に汗が流れた。安易な気持ちだったことを恥じ入りました」。無作法を受け止め、差し向けてくれた笑顔が今も折に触れ思い起こされる。「人が育つとはどういうことかお示しいただいた」

 静岡第1宗務所長や東海管区長を経て、地方の声を届けたいと立候補し、2014年に宗議会議員となった。「誠実な人柄」と周囲の人望も厚く、総長へ駆け上がった。

 人生の様々な出会いに育てられた。駒澤大大学院では、勉学以上に恩師たちとの交流が思い出に残る。晩年の15年間親交を結んだ評論家の草柳大蔵氏(2002年死去、享年78)もその一人だ。「立場が変わった今、もう一度話してみたい」。これからも自らを形づくる記憶と語り合うことだろう。

2022/11/3 旧統一教会問題 宗教研究者有志が声明 宗務行政の適切対応要望 正体隠し勧誘「信教の自由」侵害


記者会見する櫻井氏(左)と島薗氏 旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への解散請求(宗教法人格取消)が政府内で検討されているなか、宗教研究者の有志が10月24日、「旧統一教会に対する宗教行政の適切な対応を要望する声明」を発表。同28日には有志代表の島薗進氏(東京大学名誉教授)と櫻井義秀氏(北海道大学教授)が都内で記者会見を開き、透明性を確保した上で「適切かつ迅速な宗務行政の対応」を求めた。また旧統一教会の正体を隠した勧誘や破産に追い込む献金などは「公共の福祉」に反し、「人権侵害」との認識も示した。

 会見で島薗氏は安倍元首相銃撃事件後の動向を踏まえつつ「私たちも責任を感じて見解を発表することになった」と説明。NHKの番組やオンラインで顔を合わせた研究者をはじめ全国の大学に声をかけたところ25人の賛同があったとした。この中には日本宗教学会会長経験者も含まれている。「研究者が共有する考え方を社会に発信することは珍しい」と意義を強調した。

 櫻井氏は宗教法人法に基づいた解散命令の請求について「法的な手続きの適格性、透明性といったことを十分に考慮して進めて欲しい」と慎重さを求めた。その理由として「日本での活動は50年に及ぶ。それがわずか数カ月で理解され、しかるべく対応がなされるというのは考えにくい。迅速性が求められているが、統一教会だから早くやる、という形ではなく適切にやっていただきたい」と注文を付けた。

 また霊感商法について問われると櫻井氏は、旧統一教会の先祖解怨や先祖はすべて地獄で苦しんでいるとの教えに言及。「7代とか120代とか210代とか430代とか。こういう供養はあり得ない。なぜするのか。それは資金を稼ぐことが先にあるから。(世間の供養や慣行とは)まったく異質」と断言。「日本の仏教界が、こういうことはあり得ないと言っておくべきではなかったか」と苦言気味に述べた。

 宗教研究者と宗教界との連携について島薗氏は「宗教界が立場表明して欲しい」と要望したものの、「働きかけとまではいかないが、話はしていきたい」と述べるにとどまった。

 なお声明では、宗教法人法に基づいた対応と共に、霊感商法や高額献金被害者救済、二世信者支援を要請している。

2022/11/3 滋賀・観音正寺 復元聖徳太子絵伝1幅目公開 未来の遠忌へ想い継承


岡村住職と菱田さん(左)と井上さん 秘仏千手観世音菩薩御開帳・聖徳太子1400年御遠忌のさなかである滋賀県近江八幡市繖山(きぬがさやま)の観音正寺で、かねてより制作していた旧蔵聖徳太子絵伝の復元1幅目が1日から公開されている。岡村遍導住職は「1500年、1600年の御遠忌まで想いを大切に伝えていきたい」と感無量の笑顔を見せた。

 旧蔵絵伝4幅は南北朝時代の作で、談山神社本(室町時代)と図像が一致しているため同じ工房で描かれた姉妹本と考えられる。観音正寺で伝来されてきた絵伝だが、詳しい事情は不明ながら50年ほど前に手放され、その後、行方がわからなくなっていた。このことは岡村住職も最近まで気づいておらず、京都冨田工藝の冨田珠雲代表(現在御開帳中の秘仏千手観音の修復仏師)が寺宝調査をしていたところ、かつて絵伝があったことを示す資料が発見された。

 その後の調査で、旧蔵絵伝は現在は個人蔵で、東京国立博物館に寄託されていることが判明。買い戻すのではなく、新たな歴史をここに刻むために旧蔵絵伝の復元、ならびに東近江地域のさまざまな聖徳太子伝承を描いた新しい5幅目を制作することを発願した。1幅目と2幅目はほぼ完成し、10月27日に報道陣に披露。1幅目は冨田工藝の絵仏師・菱田真如さん、2幅目は画家の井上舞さんが担当した。岡村住職には若い芸術家の制作を手助けしたいという思いがあり、気鋭の2人が起用された。

 1幅目の左上には聖徳太子が19歳の時に元服し「勝鬘」を名乗ったエピソードが描かれているが、これは菱田さんによると他の絵伝ではほとんど見られない場面。この観音正寺にも多くの女人が成仏を願って登嶺し、絵伝を見たのかもしれない―そんなロマンも感じさせられ、想像力が沸き立つ絵伝だ。

 絵伝1幅目は12月18日まで公開。2幅目は来春を予定している。岡村住職は、将来的には絵解き説法も考えているという。

2022/11/3 全国教誨師大会に300人 大きくなる教誨の役割確認


「新しい時代とともに」をテーマに開催(実行委提供) 第39回全国教誨師大会が10月19・20の両日、仙台市の江陽グランドホテルで開かれた。「新しい時代とともに」をテーマに全国の教誨師ら参加者約300人が、刑罰の種類を115年ぶりに見直した改正刑法の成立に伴い、より大きくなる教誨の役割を再確認した。

 初日の式典で、全国教誨師連盟総裁の大谷光淳・浄土真宗本願寺派門主が、1872年に名古屋監獄で始まった近代宗教教誨活動から今年で150年になるとし、「宗教教誨が連綿と受け継がれてきたことは誠にありがたく、大変意義深い」と挨拶。改正少年法施行や刑罰制度を見直した改正刑法の成立に触れ、「社会の大きな変化に対応した教誨活動の実践に向けて思いを新たにし、日々研鑽に励むことが大切だ」と述べた。

 改正刑法は今年6月に成立。懲役刑と禁錮刑を廃止し、新たに創設する「拘禁刑」として一本化するもので、懲罰から更生に軸足を移して再犯抑止につなげる狙いがある。刑罰の種類が変わるのは1907年の刑法制定以降初めてで、施行は2025年の見込み。

 こうした法改正を受け、大会テーマを「新しい時代とともに」とし、「教誨の原点―人間性の回復―を見つめて」とのサブテーマを添えた。基調講演では、「矯正の現状」と題して花村博文・法務省矯正局長が、矯正による再犯抑止を目標に制度変更されたことなどについて語った。

 分科会では、犯罪の加害当事者に加え加害者側、被害者側の家族・遺族の両方の立場から、現場で支援に携わる専門家らが講演。大会実行委員で、宮城刑務所(仙台市)の教誨師を務める石巻栄光教会(石巻市)の川上直哉牧師は、「受刑者と向き合う教誨師にとって、被害者への意識は薄れがちになる。それではいけません。法改正に伴い、教誨師の役割は大きくなります。被害者の存在を胸に刻み、責務を果たしていきたい」と話した。

 2日目の全体協議会で、「被収容者に寄り添い、共に慈愛の心を取り戻す宗教教誨をめざして一層精進することをここに宣言いたします」などとした大会宣言文を採択した。

 全国大会は隔年で開催。前回大会はコロナ禍で中止され、4年ぶりに開かれた。教誨師は仏教や神道、キリスト教、新宗教などの宗教者有志が務め、全国で約1820人が活動している。

2022/11/3 世界仏教徒青年会議WFBY会長 村山博雅氏再選


世界大会・総会でスピーチする村山氏 世界仏教徒青年会議(WFBY)の世界大会・総会が10月17日から21日までタイ・バンコクで開催され、役員選挙の結果、現職の村山博雅氏(曹洞宗)が信任を得て無投票で当選した。任期は次期世界大会(原則2年毎に開催)まで。

 世界大会・総会は原則2年毎に開催されるが、コロナ禍により2020年に予定していた世界大会・総会等の対面を伴う諸事業が延期・中止されたため、4年ぶりの世界大会・総会となった。

 会長、会長代行、会計長、副会長11人の計14人を選任する役員選挙では、日本から全日本仏教青年会(JYBA・全日仏青)顧問で現職の村山氏が会長選に臨み、対立候補なく2期目の当選を果たした。11人枠に12人が立候補した副会長選では、日本から全日仏青前理事長の谷晃仁氏(天台宗)が当選した。

 WFBYは、世界仏教徒連盟の青年部で世界最大の仏教青年ネットワーク。選挙で選任される会長以下14人の役員と会長が指名する事務局長を合わせた計15人により最高意思決定機関である執行役員会(EXBO)を組織する。

 日本からのEXBOメンバー以外の役員では、顧問に東海林良昌氏(全日仏青顧問、浄土宗)、倉島隆行氏(全日仏青顧問、曹洞宗)、事務局次長に髙栁龍哉氏(全日仏青理事、曹洞宗)、会計次長に村上徹信氏(全日仏青事務局次長、曹洞宗)が就任した。

 2期目となる村山会長は世界大会全体会議でのスピーチで、国際交流などの諸事業をオンラインで実施した成果やコロナ禍での学びについて語った。今年がWFBY創立50周年であり、日本でも今月に50周年を記念したJYBAの全国大会が行われることに触れ、「次の50年を見据えて、力を合わせていこう」と危機の時代における仏教徒の団結を訴えた。

10月

2022/10/27 国会討論・消費者庁提言・ネット署名 旧統一教会への解散請求活発化 初の質問権行使へ動く


旧統一教会本部の入り口(東京都渋谷区) 宗教法人法の規定に基づいて旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への解散請求が国会でも議論され、同法の質問権行使についても答弁されたなか、消費者庁に設置された「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」が17日、報告書を公表した。

 8月末の第1回会合から7回審議。同検討会の報告書にある提言は6節からなるが、第一の総論では、旧統一教会については、社会的に看過できない深刻な問題が指摘されており、▽宗教法人法(昭和 26 年法律第 126 号)第 78 条の2に基づく報告徴収及び質問の権限を行使する必要がある、▽消費者被害の救済の実効化を図るため、取消権の対象範囲を拡大するとともに、その行使期間を延長するための法制上の措置を講ずるべき、▽専門家とも連携して宗教2世に対する支援の必要がある――など5点を提示している。

 政府答弁と検討会の提言を受けて全国霊感商法対策弁護士連絡会は同日、「質問権等の行使に関する声明」を発表。これまで質問権を行使した前例がないものの「旧統一教会の被害を撲滅するための重要な一歩として評価したい」と支持する姿勢を示した。

 また同日から「統一教会の宗教法人解散(法人格取消)を求めます」と題するネット署名が始まった。呼びかけ人には宗教2世や研究者、ジャーナリストらが名前を連ね、仏教界から楠山泰道氏(日蓮宗大明寺住職)平野喜之氏(真宗大谷派僧侶)が加わっている。24日現在、16万人が署名している。

 国会答弁で岸田首相は、解散命令請求の要件に民法の不法行為も含まれるとの見解を示した。宗教法人法の解散要件には「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」とある。旧統一教会に関する訴訟では不法行為を認定する判決が複数出ている。

 なお質問権行使に先立ち、規定に従い宗教法人審議会が開かれる予定だ。委員には法学者のほか日本宗教連盟(日宗連)理事長や全日本仏教会(全日仏)理事、新日本宗教団体連合会(新宗連)理事、全日本仏教婦人連盟(全仏婦)理事ら宗教者も含まれている。

 仏教界も決別宣言を
 旧統一教会問題に取り組んでいる曹洞宗僧侶・別府良孝氏のコメント
 
 解散命令請求に、賛成します。

 しかし統一協会から「税制上の優遇措置」を剥奪するだけでは、本質的な解決にはなりません。なぜなら、宗教活動は行えるからです。

 私は、2018年と19年の日本宗教学会で述べたように、「統一協会と仲良くした政治家の責任」よりも、「統一協会に協力・入信した聖職者の責任」の方が重いと考えています。前者(協力政治家)は、統一原理を支える「つっかい棒」ですが、後者(協力聖職者)は「大黒柱」です。協力聖職者は、『宗教新聞』の紙面構成に協力し、文鮮明の葬儀(聖和式)で、葬儀委員(聖和委員)を務めました。聖和委員25人のうち10人が、僧侶(男僧7+尼僧3)でした。

 彼らは、韓鶴子氏の聖和委員も務める可能性があります。自民党は「統一協会および関連団体との関係を断つ」と宣言しましたが、伝統教団による宣言も必要です。『宗教新聞』が統一協会の新聞であることは、『新宗教事典』の590頁に明記されています。(名古屋市龍潭寺住職、現代宗教研究会会長)

2022/10/27 京都・大本山清浄華院、奈良・大本山室生寺で晋山式


大本山清浄華院 盛大に飯田法主晋山式 150年ぶり勅使門通る

修復された勅使門を開扉し大殿に向かう法主 浄土宗大本山清浄華院(京都市上京区)で19日、飯田実雄第83世法主の晋山式が盛大に営まれた。宗内外や政界から約550人が参列。飯田法主は「立錐の余地がないくらい皆さんに集まっていただいて、大きな声でお念仏を称えることができました。コロナ禍を忘れるほどの人。今日の集まりが、人と人とが親しく付き合い接することが出来る世の中への先駆けになれば」と話し、世界平和と疫病消災を願った。(続きは紙面でご覧ください)



大本山室生寺 第32世下村座主が晋山 愛される「女人高野」誓願

本尊如意輪観世音に奉告する下村新座主 真言宗室生寺派大本山室生寺(奈良県宇陀市)の中興第32世下村聖登座主(室生寺派管長)の晋山式が高祖弘法大師御縁日の21日に営まれ、女人高野の名にふさわしい「愛されるお山」を興隆することを誓願した。新型コロナウイルスを考慮し、参列者は檀家総代など約30人に絞った。(続きは紙面をご覧ください)

2022/10/27 弘法大師生誕1250年シリーズ① 空海 顕と密の世界 御生誕の地に息づく信仰 長谷川恵淳・真言宗善通寺派教学部長


弘仁4年(813)に落慶したと伝えられている善通寺の御影堂と大師像。この場所で空海が生まれたという 「お大師さま」として親しまれる弘法大師空海は、宝亀5年(774)6月15日、讃岐国多度郡(たどのこおり)屏風浦(びょうぶがうら)(現在の香川県の西部、善通寺の地)に父・佐伯直田君(さえきのあたいたぎみ)、母・玉寄御前(たまよりごぜん)の子として御誕生になりました。

 父の姓である佐伯直とは、もともと大和朝廷が東国を征服した際に捕虜となった佐伯部(さえきべ)という部民を各地に配置した際に、それらを統率する役を担っていて、当時の讃岐の佐伯家は国造(くにのみやつこ)、つまり朝廷から任命されて地方を統治する地方豪族でした。

 そして母は阿刀氏の出身。阿刀氏は学者の家系で、空海の叔父にあたる阿刀大足(あとのおおたり)は桓武天皇の皇子・伊予親王の侍講も務められました。

 幼名を「真魚(まお)」と名付けられたお大師さまは、ご両親の寵愛を受けてお育ちになりました。幼い頃から非常に聡明で信仰心の篤い子供で神童・貴物(とうともの)と呼ばれていたと伝えられています。この地の豊かな自然の中で多感な時期をお過ごしになられました。

 近年の発掘調査により、現在の善通寺伽藍から北東300メートル程の場所に、善通寺創建をさかのぼる白鳳期に建立されたと考えられる佐伯家の氏寺・伝導寺(でんどうじ)があったことが確認されています。おそらくその寺で仏像や仏典に親しまれたことでしょう。延暦10年(791)18歳で都の大学に入学するものの中退、仏法に目覚め山林修行に身を投じられましたが、この地で蒔かれたほとけの種子が宿っていたのではないでしょうか。

 善通寺の創建は、『多度郡屏風浦善通寺之記』(江戸時代中期成立)によると、唐より帰朝されたお大師さまが、御父の寄進した四町四方の地に、師である恵果和尚の住した長安・青龍寺を模して建立したと言い、大同2年(807)臘月(陰暦12月)朔日に斧始めを行い、弘仁4年(813)6月15日に落慶し、父の諱「善通(よしみち)」をとって「善通寺」と号したと記されています。

 現在の善通寺は「伽藍」と称される東院、「誕生院」と称される西院の東西二院に分かれていますが、金堂、五重塔などが建ち並ぶ「伽藍」が創建時以来の寺域です。

 そして御影堂を中心とする「誕生院」は、お大師さまが御誕生された佐伯家の邸宅跡にあたり、鎌倉時代の建長元年(1249)に建立されました。そして江戸時代までは、善通寺と誕生院のそれぞれに住職を置く別々のお寺でしたが、明治時代に善通寺として一つのお寺となったのです。(続きは紙面をご覧ください)

 明令和5年(2023)6月15日は弘法大師空海(774~835)の生誕1250年にあたる。空海が開いた真言宗や密教は、日本仏教にとどまらず、社会や文化にさまざまな影響を及ぼした。そして空海伝説は日本各地に残されている。今シリーズでは1200年以上にわたって日本人の心に刻まれてきた空海像を整理し検証する。

2022/10/27 <カルト2世 宗教2世 信仰と離反の中で> 「救済」受容に「恐怖」演出 竹迫之(いたる)・日本基督教団白河教会牧師


 わたしがキリスト教の牧師になって、まる30年が経ちました。そもそも少年時代、映画監督になることが「将来の夢」だったのですが、まさか宗教を職業にするなど思いもよらなかったことです。「ビデオを鑑賞して人生について勉強するサークルだ」と紹介されたところが、実は統一協会というカルト団体でした。

 多くの日本人たちがそうであるように、わたしもまた自分の内に宿る宗教性など考えたこともなかったし、よりにもよって特定の宗教団体に所属するなど想像すらしたことがありませんでした。まだ「カルト」とか「マインドコントロール」などの言葉が知られていなかった時代のことでしたから、周囲の人々から「お前は洗脳されていたのだ」と言われるたびに「統一協会で得た自分の宗教経験は偽りのものだったのか」と考え込んだものです。

 安倍晋三氏に対する銃撃事件以降、急に統一協会問題が注目されるようになり、自分が元信者であることや30年以上も脱会カウンセリングに携わってきたことなどから、自分自身の半生をも振り返る機会が増えました。今のわたしはキリスト教の信仰を持っていますが、それと統一協会で与えられた「信仰」との違いはどこにあるのか、すなわち「宗教とカルトとは何が違うのか」を思い悩んできました。

 カルトに色濃いのは「恐怖を前提とする救済」であり、「救済」を受け入れさせるためにわざわざ「恐怖」を演出してさえ見せます。ありのまま生きるということに不安を生じさせ、罪責感を煽って救済の必要を捏造するためです。

 それは「呪い」と言うべき業であると言わなければなりません。カルトに対抗する人々がしばしば宗教者であるのは、宗教という営みが本来的に持っている「祝福」こそが「呪い」の対極にあるものであるからに他なりません。人が生きる現実そのものを祝福する文化を発信していくことが、宗教の果たすべき役割なのです。

 2世信者の中には、統一協会そのものや1世(親)達の結婚の背後にある問題に触れて「自分は生まれてきてはならない存在だったのか」と悩む人たちが少なからずいます。

 そういう人々に対してこそ、宗教は「生まれてきてくれてありがとう」と祝福を語るべきなのです。不安や不正が跋扈する世にあって、なおも祝福を追求し続ける宗教者でありたいと願っております。(日本脱カルト協会理事)

2022/10/20 大本山總持寺 石附貫首が晋山開堂 問答で「一味同心」を説く


拄杖を手に晋山開堂に臨んだ石附貫首 横浜市鶴見区の曹洞宗大本山總持寺で11日、昨年9月に貫首に就いた石附周行独住第26世(85)の晋山式礼が執り行われた。修行僧と問答を交わした石附貫首は瑩山禅師の教えを示した上で、自らが座右の銘とする「一味同心」の言葉を伝えた。

 法螺貝が鳴り響く中、参道を進んだ石附貫首は三門に到達すると、自身の境地を表す法語を述べた。「照映鶴湾 一百余年 打開八字 秋生機先」と、瑩山禅師がまさに總持寺開創とも言える瞬間に語ったとされる「打開八字」の句を唱えた。(続きは紙面をご覧下さい)

2022/10/20 曹洞宗 新宗務総長に服部氏 「社会の要請に応える」


抱負を述べる服部新総長 曹洞宗の鬼生田俊英宗務総長の任期満了に伴う次期総長を決める特別宗議会が9日、東京都港区の檀信徒会館で開かれ、現内局財政部長の服部秀世議員(73)が満票で指名された。任期は16日から4年間。

 大本山總持寺系宗政会派・總和会から首班が移る大本山永平寺系宗政会派・有道会の議員36人から候補者を選ぶ総長指名選挙は出席議員71人で行われ、4日に有道会会長に就任した服部議員が、無効票なしの満票で選出された。

 挨拶に立った服部議員は「社会と人々の問題に向き合うことを政策の基本理念に置き、広く社会の要請に応える」との方針を表明。鬼生田内局の路線も引き継ぐとした上で、「宗務機構の改革を推し進めたい」と抱負を語った。

 特に財政面に関しては、2期4年間の財政部長の経験を生かして舵取りにあたるとし、「現状維持の施策ではなく、行政機構、諸事業の再構築を視野に入れた抜本的な改革が必要だと考える」と述べた。

 さらに、社会環境の変化に対応するため前例踏襲にとらわれずに事業の必要性を判断する考えを示し、「迅速果断な取り組みが今こそ求められている。次代を担う宗侶が明日への希望を持ち、宗門が継続発展しうる土壌づくりに精励する覚悟だ」と力を込めた。

 宗議会後に記者会見した服部議員は、人口減・少子高齢化や経済低迷、後継者不足など寺院が抱える課題について、「すべて社会と切り離された問題はない」と強調し、「人々と社会の声に耳を澄まして施策を打ち出していきたい」と話した。

 また布教教化面では、全国の各寺院それぞれの特長を生かしたブランディングによる活性化に期待を込め、「特長がないと自ら思っている寺院にも、歴史のほかにも運営に携わる人の思いといった価値が必ずある。もっと社会にアピールすることで、地域の活性化にも貢献できるのではないか」と語った。

2022/10/20 尼僧法団、SVAに合併吸収 公益財団法人格消滅、活動は継続


 (公財)全日本仏教尼僧法団(笹川悦導理事長)は9月1日付で、(公社)シャンティ国際ボランティア会(SVA/若林恭英代表理事)に吸収合併された。尼僧法団の公益財団法人格が消滅したが、任意団体として活動は継続する。

 昭和25年(1950)に各宗派の尼僧が集い結成した尼僧法団。昭和36年(1961)に財団法人格を取得。平成25年(2013)に公益財団法人へと移行した。

 写経会や坐禅会、毎年4月には花まつり茶会を開催してきたが、団員の高齢化や減少、人員不足もあり、法団内で公益事業の継続が困難と判断。コロナで活動が休止となったことも影響した。 

 「吸収合併」の方向で協議を重ねるなか、「同じく衆生共済のために活動する団体」(笹川理事長)として、法団拠点の慈母会館(東京都新宿区大京町)に平成9年から事務所を置いているSVAに打診し、吸収合併の手続きを進めてきた。 

 今年5月11日に合併の調印式を行い、9月1日付けで効力が発生した。これに伴い、尼僧法団所有の「慈母会館」の土地・建物をはじめとする「残余財産」はSVAの帰属となった。

 公益財団法人格が消滅したが、写経会やお茶会、機関紙の発行などこれまでの活動は継続する。なお法団事務所は東京都新宿区新宿6―15―2(西光庵内)に移転した。

2022/10/20 天台宗曼殊院 次期門主に西郊良光氏

西郊次期門主 天台宗五箇室門跡の一つである曼殊院門跡(京都市左京区)の門主に、元宗務総長の西郊(にしおか)良光氏(81・横浜市西区久保町・圓満寺住職)が就任することが決まった。天台宗が5日、門跡寺住職推薦委員会の結果を受けて選任したと発表。現在進行中の任命の諸手続が今月中に完了予定で、任期は任命日から7年間。藤光賢前門主の任期満了後の昨年12月2日付で代表役員代務者に阿部昌宏宗務総長が特命されていた。

 西郊氏は昭和16年(1941)9月16日、福島県会津若松市生まれ。大正大学仏教学部仏教学科卒、同大学院仏教学専攻修了。昭和54年から平成13年まで宗議会議員6期。同6年から宗議会副議長2期、10年から同議長2期。13年12月に宗務総長に就任(1期4年間)。20年から宗機顧問(4期・現職)など要職多数。

 青年僧時代からボランティアや平和構築活動に取り組み、現在は天台宗国際平和宗教協力協会顧問や日中友好天台宗協会顧問を務める。

 平成29年に天台座主への登竜門と称される戸津説法の説法師を務めた。

2022/10/13 第46回全日本仏教徒会議 山梨・身延山大会 「互いを尊重し合う社会」誓う 共に生きる尊さ―だれも取り残さない社会の実現に向けて


約450人が参加して身延山大学講堂で行われた開会式典 「共に生きる尊さ―だれも取り残さない社会の実現に向けて」のテーマのもと第46回全日本仏教徒会議山梨・身延山大会が7・8の両日、山梨県身延町の日蓮宗総本山身延山久遠寺で開催された。全国から約450人が参加し、記念講演や音楽法要・テーマに即したパネルディスカッションに臨んだ。大会宣言では、「互いを尊重し合う社会を目指すことを誓います」と結んだ。身延山での開催は第3回大会以来67年ぶり。大会は全日本仏教会と山梨県仏教会が主催し、身延山久遠寺が共催した。

 初日は雨に見舞われたものの、スケジュール通りに進行。身延山大学講堂で開会式典・法要・記念講演が行われ、本堂で現代音楽法要が営まれた。山梨県仏の近藤英夫会長(本願寺派)は「将来の世界・地球のために、仏教徒として私たち一人ひとりが取り組むべきことを提言していきたい」と表明。96歳の身延山久遠寺の内野日総法主は歓迎の言葉を述べると共に、祖師の頃は「圧倒的に情報が少ない時代」であり、「智慧で逆境を乗り越えるしかなかったことでしょう」と仏教の智慧による問題解決を促した。

 記念講演は平岡聡・京都文教学園学園長(京都文教大学教授)が「現代における仏教の可能性を問う」をテーマに、仏法僧の順番を入れ替えて法(仏の教え)僧(法の実践者集団)仏(僧のリーダー的存在)について話した。檀家制度と世襲制が「志のない出家者を輩出する装置となっている」と嘆じた。一方で、「寺檀制度が崩壊してきて、檀家だけに法を説く時代は終わった。すべての人に普遍性をもって法を説けるかどうか」と新たな僧侶像を提起した。(続きは紙面をご覧ください)

2022/10/13 総本山智積院 宗祖弘法大師ご誕生1250年開白 利他・菩薩行の精神を確認


慶祝法要供養塔開眼の庭儀 来年迎える宗祖弘法大師ご誕生1250年の記念慶讃開白法要が5日、京都市東山区の真言宗智山派総本山智積院で勤修された。午前10時、学山智山の法燈を継ぐ最高職で職衆を務める集議・菩提院結衆24人を中心に本坊大玄関から進列。布施浄慧化主(同派管長)は輿に乗って修復工事が完了したばかりの参道を進み、金堂正面に立てられた「御誕生慶祝法要供養塔」の開眼に臨んだ。

 庭儀を経て、今春に大改修を終えた金堂に入堂。布施化主が弘法大師御影(絵像)宝前の大導師の座に着き、来年6月15日に結願となる慶讃法要の開白を厳かに修した。

 布施化主は慶讃文で、宗祖の誕生を敬仰。「生来聡明」だった「真魚少年」が仏法の師に出会って僧となり、入唐求法しての「奇跡的な密教受法」から「衆生済度の誓願」によって真言宗を開くに至った歩みに深く感謝した。(続きは紙面をご覧ください)

2022/10/13 増上寺三解脱門 特別公開始まる 11年ぶり400年前の面影残す


400年前に建立された三解脱門。楼上にも創建当時の仏像が安置されている 東京都港区の浄土宗大本山増上寺(芝公園4―7―35)で1日から三解脱門建立400年記念特別公開が始まった。

 慶長16年(1611)、徳川幕府の助成で建立され、元和8年(1622)に再建された「三解脱門」。「貪欲・瞋恚・愚痴」の三毒から離れ、極楽浄土に入る心を作るための門とされている。戦禍で多くの建造物が灰燼に帰した同寺において、400年前の江戸初期に大造営された当時の面影を残す貴重な山門で、東京都内でも最も古い木造建築物の一つ。入母屋造り・本瓦葺の屋根に朱漆塗重層の二重門で、唐様を中心とした建物に和様の勾欄などが加味されている。楼上(2階内部)には、釈迦三尊像、その左右には8躯ずつの十六羅漢像が安置されている。

 令和6年に浄土宗開宗850年の慶讃事業として解体大修理を予定している。

 特別公開は2011年の法然上人800年遠忌記念から11年ぶり。この時は約9万人が参拝したとのことで、増上寺スタッフも「(今回も)多くの方に参拝してほしい」と歓迎している。公開は11月27日まで。時間は10時から16時半。拝観料大人千円、中高生500円、小学生以下無料。

2022/10/13 佼成出版社 電子書籍販売「ちえうみ」開設 仏教書特化のネットショップ 月額990円の読み放題プランも


 佼成出版社(東京都杉並区)は3日、仏教書に特化した電子書籍のネットショップ「ちえうみ」を開設した。月額990円(税込)の「読み放題プラン」もある。

 「ちえうみ」は仏教語「智慧海」からとった。「深く経蔵に入りて智慧海の如くならん」(『華厳経』「浄行品」)の一節から、「どこまでも広く深い、海のような如来の智慧」があふれる場を目指してネーミングしたという。

 サイトの利用には会員登録が必要。購入した書籍は専用のリーダーアプリをダウンロードすると読むことができる。新規会員登録キャンペーンで、11月30日まで書籍代が半額になるクーポンを配布。無料の本4冊も用意している。

 書籍は現在のところ130冊。『新アジア仏教史』シリーズ(全15巻)や『構築された仏教思想』シリーズ(既刊11巻)、ひろさちや氏の祖師を生きるシリーズ(全8巻)などが購入できる。

 今後、絶版本の電子復刊にも力を入れるほか、ほかの仏教系出版社の書籍の販売も視野に入れるという。

 開発担当者は「仏教の教えは、いかなる時代でも自らを輝かせる生き方を説くもの。半世紀以上にわたり仏教書を出版してきた当社の書籍やネットワークを最大限に生かし、利用者の人生の充実に貢献できるサービスを提供していきたい」と話している。

 「ちえうみ」のサイトはhttps://chieumi.com/。QRコードからもアクセスできる。

2022/10/6 全葬連お葬式アンケート 希望する葬儀「家族葬」66.9% 業界の法整備7割強が支持 


設問「あなたは喪主・遺族として、あなたのご家族または親族のお葬式は どのような形で行ないたいと思いますか。最もあてはまるものを教えてく ださい」の回答  全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連、石井時明会長)は9月、「お葬式に関するアンケート」の調査結果を発表。希望する葬儀の形態として、知人や職場関係者が参列する「一般葬」が13%台だったのに対し、家族や親族に限った
「家族葬」が66・9%と7割近くに及んでいることが明らかになった。年々進行している葬儀の縮小だが、改めて裏付けられた。

 「一日葬」と宗教儀式のない「直葬・火葬式」は共に10%前後だった。「家族葬」とこの2者を加えると86・7%に達し、縮小と共に簡略化の傾向も確認できる。

 喪主や遺族が、葬儀を葬儀社に依頼する際に重要なポイントは何かを尋ねる設問(複数回答)には、83・6%が「価格の明瞭さ」と回答し、「見積書、請求書の提示」がそれに次いで61・9%だった。同じ問いで一つだけに絞った回答では、39・1%が「価格の明瞭さ」を選択した。

 喪主や遺族は料金の明瞭化を葬儀社に求めているが、おそらく寺院費用(お布施)も含意されているとみられる。諸調査の結果によると約9割が仏式で葬儀が行われており、料金の明瞭化は仏教界にも要請されていると考えられる。

 「家族葬」は最近では、安倍晋三元首相が知られる。増上寺で7月11日通夜、12日葬儀の日程で営まれた。家族葬だったが、多くの人が増上寺周辺に参じた。こうした大規模な家族葬は極めて珍しいが、一般的には参列者は限定的だ。

 家族葬について全日本仏教会(全日仏)が平成29年(2017)に実施した「仏教に関する実態把握調査」が参考になる。信仰の有無で分けて「執り行いたい葬儀」を設問。「親族のみ」と「家族のみ」を合計すると一般では61・7%、仏教信者では63・2%と共に6割を超えて、今回の全葬連調査に近い。単純にみると3~6ポイントほど増加している。家族葬は今後さらに増えるとみられる。(続きは紙面をご覧ください)

2022/10/6 安倍氏「国葬」 分断鮮明に


「国葬」が行われた武道館近くに設けられた献花台。途切れることなく献花者が続いた 安倍晋三元首相の「国葬」が9月27日、東京・日本武道館で行われた。周辺をはじめ都内は厳重な警備体制が敷かれた。政府発表では国内外から約4200人が参列した。武道館近くに設けられた献花台には2万人超が訪れ、持参した花を手向けた。

 一方、国会議事堂正門前では「国葬」に反対する市民たちが集会を開き、次々と反対をアピール。議論なしの閣議決定などを批判した。日本山妙法寺など平和をつくり出す宗教者ネットのメンバーらも横断幕や幟を手に参加した。

 賛否が分かれる中で強行された安倍氏「国葬」。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党との蜜月ぶりが明らかになるにつれて「国葬」反対の声が強まった。各社の世論調査で反対が上回った。世論に耳を傾けることがないままに行われた「国葬」によって分断はより鮮明になった。

 今回の「国葬」に対してキリスト教界からは反対声明が出された。しかし仏教教団からは管見の限り声明などはなく、沈黙と言っていい。歴史的に死者を供養してきた伝統仏教は、政治的な「国葬」をどう捉えたのか。国会では検証が行われるが、仏教界もメッセージの有無にかかわらず、検証は必要だろう。 

国会前で「国葬反対」を叫ぶ 小野文珖氏(「宗教者九条の和」呼びかけ人・世話役)

国会議事堂前での「国葬」反対集会。前列左から二人目が小野氏 2022年9月27日、国会正門前で正午より、「お題目九条の会」の旗を掲げてスタンディングをしていた。日本武道館で行われる安倍晋三氏の「国葬」を認めない、諸宗教者合同の抗議活動である。

 午後2時の開式に合わせて、市民団体が集会を始めたが、もう身動きができない状態で、2万人を超えていたと思う。まさに分断である。「国葬反対」のシュプレヒコールが国会を包み込んでいた。岸田総理はこの責任をどうとるつもりなのであろう。自民党葬でやれば誰も文句を言わず、静かに追悼できたであろうに。

 「国葬儀」などと無理矢理内閣府設置法に結びつけようとしているが、そもそも芝の増上寺で引導を渡され、お戒名を授与されて葬儀は終了している。葬儀ではなく告別式を「国葬」としてやろというのだが、岸田さんはその違いがわかっていない。お別れの会を国の税金を使ってやろうというのなら、それ相応の根拠や理由がなければならないのに、岸田さんの説明では国民が納得しなかった。だから世論調査で6割超も反対が出たのである。

 弔問外交とか民主主義を守るためとかの口実は、弔いの政治利用で、結果としてカルト教団旧統一教会(世界平和統一家庭連合)を黙認することになってしまう。一般献花の2万人の数字は勝共連合の動員数と重なるのではないか。どうしてもこの「国葬」は認めるわけにはいかないのだ。(日蓮宗僧侶)

2022/10/6 曹洞宗 ごみ拾いSNSに参加 活動を知ってもらう機会にも


アプリでの曹洞宗のアイコンを示す近藤さん 交流サイト(SNS)を利用した曹洞宗のごみ拾い活動が広がっている。環境問題に取り組もうと、宗務庁(東京都港区芝)の広報係が始め、これまでにつながったフォロワーらと1600㍑以上のごみを集めた。同係の近藤真徳さんは「小さな一歩ですが、全国のお寺や檀信徒が加われば大きな成果につながる」と参加を呼び掛けている。

 ごみ拾いSNSアプリ「ピリカ」に参加したのは7月。各教団はSDGs達成に向けた活動を進めているが、環境問題への取り組みは十分とは言えない状況だ。そこで身近なところからできることをやってみようと、広報係の3人が始めた。

 「ごみ袋をもって歩くのは恥ずかしかったのですが、そのうち気にならなくなりました。今ではごみを見つけ出す力も鍛えられました」と近藤さん。週1回、宗務庁周辺を1時間ほど回ってごみを拾っている。「植込みの奥に隠されていることもあるんです」と目を光らせる。自動車のタイヤのホイールカバーや自転車のサドルなど大型のごみも捨てられていたという。

 毎日活動するのは大変なため、集中してごみを拾う1週間のイベントも企画。第1回は9月12~18日に開催し、グループに参加した18人がそれぞれの地域で計110㍑のごみを集めた。拾ったごみの写真を撮ってアプリに投稿すると、「いいね」ボタンにあたる「ありがとう」がほかのユーザーから届き、コメントも添えられる。

 アプリでの曹洞宗のアイコンは僧衣を身に付け、ごみ袋を持つお坊さん。近藤さんの妻がデザインした。僧侶と一目で分かるため、ユーザーからお寺を話題にしたコメントが寄せられることも。近藤さんは「曹洞宗の活動を知ってもらえたらうれしい」と話し、SNSに参加するメリットにも期待を込める。

 次回のイベントは10月中旬に開く予定。参加方法は曹洞宗HPで確認できる。

2022/10/6 浄土宗宗議会 女性僧侶育成強く要望 国法に合わせ産後パパ育休導入


 浄土宗(川中光敎宗務総長)は9月27~30日の4日間、第128次定期宗議会(村上眞孝議長)を京都宗務庁(京都市東山区)に招集した。令和3年度一般会計・特別会計の決算をはじめ、宗教法人法第22条の役員欠格事項改正(令和元年)に伴う僧侶分限規程の改正など全12議案を可決。令和6年の開宗850年慶讃事業については周知・広報の徹底などいくつかの声も寄せられた。

 一般職の職員の就業に関する規程が改正され、「出生時育児休業」の措置を講ずることが可能となった。国の改正育児・介護休業法により今年10月1日から施行される出生時育児休業制度は、父親が子どもが出生してから8週間以内に4週間までの育児休暇を取得出来ることを可能とする制度で、通称「産後パパ育休」と呼ばれるもの。国の法改正に合わせた迅速な宗規改正となった。

 このような男女共同参画への取り組みもある一方で、一般質問では唯一の女性議員・稲岡春瑛議員から女性教師の育成について厳しい意見も。稲岡議員は寺院数・教師数が減少する中で、女性教師の増加こそが浄土宗躍進に必要だとした上で、女性教師育成機関の設置の如何を質問。「憲法や宗規で男女平等が謳われていても宗教界で女性教師は『つなぎの存在』『資格を一応持っているだけ』と一段下の存在と軽視されがち」と憂慮し、男性優位の潜在意識を取り除くよう宗の動きを訴えた。

 光岡素生宗務役員は「女性僧侶の今後のさらなる増加と活躍を期待したい」と激励。過去に尼僧専門の養成道場があったことは認めつつ、現在は「性別を隔てず男女共に行学を修めることの意義」等の理由により教師養成道場は共学になっているとし、女性教師のみの育成機関を作ることはないと答弁した。ただしやる気のある女性教師が自発的に資質向上の道場を開設する場合、教学部として協力はやぶさかでないとした。

 稲岡議員は、女性僧侶は組寺での法要の際に、「声の高さが合わないから口パクしてほしい」と言われた人もいるなど、男僧中心社会で尼僧が想うように仏事ができない現実があることも指摘した。

 令和3年度一般会計経常部決算は歳入約24億2千万円に対し歳出約21億9千万円で剰余金は約2億4千万円。(続きは紙面をご覧ください)

9月

2022/9/29 WCRP 宗教指導者招き東京円卓会議 平和は目的でなく共に歩く旅 


閉会式で挨拶する日本委員会の戸松理事長(©WCRP日本委員会) 紛争当事国の宗教者らを日本に招へいしての『「戦争を超え、和解へ」諸宗教平和円卓会議』(第1回東京平和円卓会議)が21日から3日間、都内のホテルで開催された。新型コロナ以降、かつロシアによる軍事侵攻後では初の対面による諸宗教会議に海外から23人が来日し、約25人がオンライン参加した。最終日に声明文が発表された。世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会のアッザ・カラム事務総長は「平和は目的ではなく、共に歩く旅である」と述べ、この認識を共有した。

 WCRP国際委員会と日本委員会(戸松義晴理事長)が主催し、WCRP国際活動支援議員懇談会などが後援。会議は3日間だが、中日(22日)は都内の宗教施設見学にあてられた。そのため会議は実質2日間。開会式と閉会式、一部セッションが公開されたものの、紛争当事国の宗教者たちの自由な発言を担保するため、ほとんどは非公開で行われた。

 閉会式でアッザ・カラム事務総長は円卓会議の成果を「実際に宗教指導者が(対面で)一緒に集まることに合意し、それがかなったこと」と「宗教指導者が紛争などで多くの違いがあると理解したこと」をあげた。そして「紛争解決は容易なことではない。合意には時間がかかる。しかし出会うことには合意した。色々なコンテキストから考えると意味がある」と強調した。

 日本委員会を代表して戸松理事長は「3日間お話ししたことは、今後の平和に向かう重要なステップに違いない」と述べた。さらに多様性と相互理解の必要性を指摘し、「決して途中で投げ出すことがなければ、いつの日か近い将来、和解が実現できると思います」と願いを込めた。

 発表された声明文では以下の3点が呼び掛けられた。①コミットメント:癒しと赦しの必要性、およびその憲章に基づき、暴力の連鎖の再発を防ぐため、すべての関係者が長期的な和解のプロセスに取り組むこと。②継続:諸宗教平和円卓会議を継続し、紛争のすべての側から宗教指導者を招集し、知恵を共有し、諸宗教間の協力と平和を構築すること。③認識:私たちすべてが、人間の命の神聖さとすべての人々への愛を育み続けることが不可欠であると認めること。

 円卓会議には紛争を抱えるブルキナファソ、エチオピア、ミャンマー、ロシア、南スーダン、シリア、ウクライナの7カ国の宗教指導者らが参加した。
 
ロシアとウクライナ 言葉に配慮した発言

 円卓会議にはロシアとウクライナの正教会指導者が参加した。閉会後の記者会見でアッザ・カラム事務総長は、両国をめぐって言葉に配慮した発言や、事実に基づいた発言をすべきだというやりとりがあったと説明。具体的な内容は明言しなかった。

 一方でWCRP/RfPの立場から、「実際に暴力行為が終わるまでは和解について話し始めることができないという考え方」と「対話の旅を始めることによって和解を求めていく考え方」の二つを提示。「円卓会議は解決策を求めるのではなく、実際に集まって対話が必要であると合意された」と後者に力点が置かれことを示唆した。

 なお参加した一人は「WCRP/RfP国際議長のエマニュエル府主教(フランス)が同じ東方教会として両国の宗教者にかなり気を遣っていたのが伝わってきた」と話した。会議以外のところでそうした場面が見られたという。

2022/9/29 日本宗教学会公開シンポ 方法論、専門性、実践性 「宗教学の軌跡と展望」を討論 


大家、中堅学者が揃って研究の歴史を語り合った  日本宗教学会の第81回学術大会の公開シンポジウム「宗教学の軌跡と展望」が9日、愛知県名古屋市の愛知学院大学名城キャンパスで行われた(オンライン併用)。2部構成で、前半は島薗進氏(元会長)と小松和彦氏(国際日本文化研究センター名誉教授)の2人に林淳氏(愛学教授)がインタビューし、軌跡が語られた。

 島薗氏(1948年生まれ)は東大理科三類に入学するも学生運動の中で自分の生き方を深く考え、文学部に進学。「宗教学(研究室)はすごく居心地が良かった」というのも非常に間口が広く学生の自主性を尊んだ教育をしてくれ「居場所がなくなってしまった学生」への居場所を与えたからだと回想した。宗教学と社会学の架橋となった画期的な研究会「宗教社会学研究会」(「宗教と社会」学会の前身)については、「宗教学は方法論がはっきりしないので、アカデミックな確からしさをどこに置いたらいいのか迷う。社会学からそうしたしっかりした足場、実証研究をしなければならないということを教わった」と述べた。

 当時の思想家・学者では、島薗氏は吉本隆明氏(1924~2012)の影響が一番大きかったとした。小松氏(1947年生まれ)は山口昌男氏(1931~2013)のフーコー、エリアーデからつげ義春までを博捜した「面食らうような授業」に大きな影響を受け、「追っかけみたいなことをした」。山口氏が歴史学を学んでから人類学の研究をしたように、何らかの専門を持ってから人類学に入った先達には尊敬があったと告白。「宗教学はよその学問からの借り物で成り立ってるようなコンプレックスを持ちながら、いろんな周辺の学問成果を吸収する」という面が自分にあったと打ち明けた。

 後半は中堅研究者の4人が展望を話した。大谷栄一氏(佛教大学教授)はこの30年の宗教研究において、「宗教」概念の非自明化と宗教研究の「固有領域の融解」があったと指摘。さらにオウム真理教事件以後、研究者の「立場性」「実践性」が問われているとした上で「近現代日本の文脈における宗教の公共的役割と臨床、『宗教と近代、後期近代』の関係、研究者の立場性と実践性が今後の宗教学を展望するキーワードになる」とした。

 伊達聖伸氏(東京大学教授)は専門のライシテ(フランスにおける政教分離)研究の最前線を解説し、政教関係の国際比較や世俗主義が進展する中で伝統宗教がどのように再構成されるかを検討する視点を提示。伊藤雅之氏(愛学教授)は英米における宗教社会学研究の歴史をひもとき、スピリチュアリティ文化研究や「nones」と呼ばれる無宗教の人々への研究関心が高まっていると分析した。

 小林奈央子氏(愛学教授)は宗教学の中にあるジェンダー格差の問題を批判。日本宗教学会の会員1716人のうち女性は15%しかいないことを指摘し、「男性の研究者が多いというだけでなく聖職者が多い。大学教員かつ聖職者というのは非常に権威主義的傾向になりがち」とした。

 旧統一教会を始めとする政治と宗教の癒着を考える際も、家族中心主義の推進や同性婚・選択的夫婦別姓への強固な反対など、ジェンダーの視座が不可欠な課題が数多くあると指摘した。

2022/9/29 妙心寺派宗会 天衣尼僧堂、在錫者ゼロに 剰余金8千万円「苦心惨憺」


施政方針を述べる野口総長 臨済宗妙心寺派(野口善敬宗務総長)は13~15日、京都市右京区の宗務本所に第143次定期宗議会(小松全秀議長)を招集した。6月の選挙で改選された議員(うち新人は11人)が顔合わせし、令和3年度決算や、令和9年の高祖微妙大師六百五十年遠諱大法会に向けた準備室規定制定案など全議案を原案通り可決。一般質問も6本と平穏裡に閉会した。

 野口総長は率先して取り組む課題として、遠諱事業と財政健全化以外には①コロナ後の布教教化の再構築、②花園会員名簿管理の改善・宗制上の会員定義の明確化、③無相協会の会員減少への対策、④旧宗務本所の解体と予算措置を挙げた。

 かねてより懸念されていた、岐阜市天衣寺に設置されている臨済宗唯一の尼僧堂である天衣尼僧堂について、9月14日付で在錫者がゼロとなったことを報告。総長は「実質的に休単状態となります。それに伴って掛搭者の受け入れが難しい状態となりました」と苦衷を述べつつ、今後の対策として中西東峰氏(美濃加茂市小山寺住職、布教師)が堂長として寺務処理と檀務にあたり、新たに掛搭者がいる場合は出身者と協力して雲水を指導するとした。

 通常会計歳入歳出は予算約10億400万円に対し決算は約9億7400万円。一般質問で増田元裕議員は「健全財政を堅持しているものの、令和2年度から財政調整基金に3千万円ずつ積み立てているほか、剰余金(繰越金)が8千万円以上生じている。コロナ禍の中で事業ができなかったとはいえ、これは賦課金収入の23%以上を占める。納める側とすれば事業を行わなかったのだから令和4年の賦課金を減額できないのかという意見もある。剰余金についてどのような認識を持っているのか」と質し、遠諱のために基金を設置して剰余金を積み立てることも提案した。(続きは紙面をご覧下さい)

2022/9/29 第1回庭野平和賞奨励賞に3氏 草の根平和運動に光 フェルナンド氏(スリランカ) リアン氏(インド) ワヒド氏(インドネシア)


 (公財)庭野平和財団は16日、宗教的精神を基盤に平和を構築する先駆的・実験的な活動をする人を表彰する第1回「庭野平和賞奨励賞」の受賞者を発表した。選ばれたのはスリランカの人権活動家ルキ・フェルナンド氏(カトリック)、インドで紛争解決等に取り組むジェニファー・リアン氏(ヒューマニティー)、インドネシアの故ワヒド大統領の長女であるアリサ・コトルンナダ・ムナワロ・ワヒド氏(イスラム)の3人。正賞の賞状、副賞の賞金200万円の贈呈式は9月下旬から10月上旬にかけて各人の活動地域で実施される予定。

前カトリック・マンナール県司教(故人)、カトリック修道女と語り合うフェルナンド氏(中央)©Lucille Abeykoon フェルナンド氏は1973年9月生まれ。スリランカ内戦の中で国際キリスト教学生運動のアジアコーディネーターなどキリスト教啓人道組織で平和運動を実践し、自身は民族的には多数派のシンハラ人、宗教的には少数派のカトリックでありながら、シンハラ人とタミル人、仏教徒とイスラム教徒という分断があるスリランカでの和解と平和構築に尽力。「時には敵や裏切り者と見なされても、表面の敵対や偏見ではなく、人々の奥にある良心を見つめ続け、悲苦を自らのものとして寄り添い続けている」ことが受賞理由となった。


リアン氏(右端)と活動地の村落の女性たち©The Ant リアン氏は1972年2月生まれ。凄惨な武装闘争が繰り返されているインド北東部アッサム州西武のボド地域で、ガンディーの「アヒンサー(非暴力)」の信念に基づき貧困撲滅のための農村開発、職能訓練、女性の人権擁護、暴力的環境にある人の心身のケアなどに取り組む。さらに紛争解決のトレーニングや組織化で人々自身が平和を醸成する能力も育んでおり、「非暴力と知恵と優れた実行力」で諸問題の解決の術を人々と共に紡ぎ出していると評価された。なお、「特定の宗教にはこだわらない」とし、信ずるものを「ヒューマニティー」としている。

イスラム寄宿舎学校の生徒たちと笑顔で交流するワヒド氏(中央)©Gusdurian Network Indonesia ワヒド氏は1972年6月生まれ。第4代インドネシア大統領である故ワヒド大統領の長女で、穏健派ムスリム指導者だった父の意思を継ぎ「多元的イスラム」「寛容のイスラム」をインドネシア社会に浸透させるべく活動。差別を受ける少数派イスラム教団「アハマディーヤ」の擁護にも尽力している。大資本により土地を奪われた農民の支援など、人道主義の実践活動に取り組み、民主主義と多文化主義を尊重した精力的で平和的な活動が評価された。同国最大のイスラム団体「ナフダトゥル・ウラマー」の家族福利研究所の事務局長でもある。

 浅見靖仁・法政大学教授を委員長とする全10人の「奨励賞委員会」が選考に当たり、11人のノミネートから今回の3人が選ばれた。毎年2月に発表される庭野平和賞は世界的評価の定まった宗教者に贈られるものだが、奨励賞はより草の根的で、知る人ぞ知るという宗教者の活動を支援する意味で設けられたもの。財団としても積極的な対話、交流を継続的にする意向で、11月以降に受賞者3人とオンラインでの対話集会を予定している。

2022/9/15-22日合併号 共生特集 SDGsは「現代版アヘン」か? 『人新世の「資本論」』著者 斎藤幸平氏インタビュー


 資本主義によって地球環境は危殆に瀕している。2021年の新書大賞を受賞した『人新世の「資本論」』(集英社新書)はこの問題を掘り下げ、脱成長経済を提起した。人新世とは「人類が地球を破壊しつくす時代」のことだ。一方でSDGs(持続可能な開発目標)に対して痛烈な批判を加えている。著者、斎藤幸平氏(東京大学大学院総合文化研究科准教授)にインタビューした。(構成/編集部)
  
 ――仏教界、宗教界ではSDGsの17目標すべてとは行きませんが、多様な活動がなされています。しかし著書で、SDGsは「現代版『大衆のアヘン』」と批判しています。

 斎藤 SDGsが企業のアリバイ作りに使われたりしています。海外ではグリーン・ウオッシュという言い方をしますが、要するに環境に優しいと謳いながら、実際には見せかけだったりで、EU(ヨーロッパ連合)では、「環境に優しい」という言葉を使ってはいけないという議論もなされるようになりました。要するに環境に優しいものなんてないんです。私たちは何かを作るとすると必ず資源を使う。だから企業の「環境に優しい」表現自体が、すでにウオッシュ(配慮しているように見せかけていること)なんです。

 日本で特徴的なのは、SDGsという言葉が流行ったことです。SDGsは国連で採択された世界的な課題です。日本の場合、2つ問題があって、企業がやっているふりをしながら実質的には内容がない状態が続いている。もう一つは、人権やジェンダーなどを含んだ概念であるにもかかわらず、環境問題に矮小化されてしまっていることです。かつてマルクスが宗教はアヘンであると批判したわけですが、それに倣って現実を直視しないで、免罪符的にSDGsを利用している。これは見直さなければならないと思ったのです。

 ――SDGsの理念「誰一人取り残さない」に共感する宗教者は多い。

 斎藤 そうだと思います。寺院は従来から人権や貧困など程度の差はあれ、取り組んできていると思う。けれども気候変動に取り組んできたイメージは私にはなかったので、包括的な運動になればと期待はしています。

 宗教との関連で言えば、明治神宮外苑の樹を伐採して商業施設を建てるという計画がありますね。SDGsを掲げる企業や団体がこれに関わっているはずで、これを行うのはSDGsの本質を見失っているのではないかと考えざるを得ない。つまりグリーン・ウオッシュであって、SDGsが利益のための道具になっている。SDGsというのはゴール(目標)なのに、経済成長の手段にしてしまっている。宗教がそうなっているとは思いませんが、利用される危険性はあるでしょう。もともと宗教や教育は、利益や成長を目指しているわけではないので、むしろ、強欲資本主義の動きを一緒に批判してほしい。

 ――現在、GDP(国内総生産)が国際的な経済指標となっています。著書ではGDPの増大ではなく脱成長を訴えています。

 斎藤 GDPは100年ぐらい前にサイモン・クズネッツという経済学者たちが中心になって提出された概念です。アメリカ政府に依頼され、それこそロシアとかイギリスよりも優れているんだという客観的指標としてGDPが生み出された。ですから多分に政治的です。クズネッツは、例えば広告とか戦争といったものはGDPに含めるべきではないと主張していました。広告は本来必要ではないし、破壊活動である戦争を経済活動に換算するのはおかしいというわけです。ところがアメリカ政府にとっては軍事費を含めることが目的にかなっていた。自然を破壊することも、戦争も、日頃の悪い食生活が原因で病院に通うことも、GDPを増やすのです。

 GDPを増やしていくことが社会繁栄の必須条件であるという考え方は、21世紀に入り地球環境が過酷な状況となった現代では、もはや適さないと多くの人たちが疑問を抱くようになりました。GDPに換算されない、健康や幸福度、心の豊かさ、社会の持続可能性といった価値を重視するような社会や暮らし方に切り替えることは、これから絶対必要になってきます。

実際、この30年間で日本の格差は広がり、暮らしは豊かにならず、むしろ幸福度は下がっています。若者たちの意識調査でも“将来に希望を持てません”と答える社会は、明らかにおかしい。私たちはGDP成長に依存するだけではない社会のあり方をみつける試みをもっともっとしていくべきではないでしょうか。

 ――『人新世―』が注目された背景には新型コロナの感染拡大もありました。

 斎藤 2020年、私たちの生活は大幅にスローダウンしました。今までのやり方では感染拡大を抑えられないため営業自粛や時短が行われ、出張や飲み会が激減した。ものを買わなくなり、テレワークが普及した。これは地球環境にとって良いことです。2020年は2019年と比較すると、世界で二酸化炭素の排出量が6%ぐらい減っています。その時に話題になりましたが、大気汚染がひどかったインドや中国では、ヒマラヤが見えるようになった。自然にとっては、経済活動のスローダウンが非常にポジティブだったのです。

 逆に言うと、今回のパンデミックの背景には間違いなくグローバル資本主義がありました。資源の乱開発もそうだし、ウイルスが瞬時に広がったのもグローバル化の影響です。こうしたあり方を私は「人新世」と呼んでいるわけです。しかし2021年以降は元に戻ってしまった。このままいけば、地球環境は危機的な状況になってしまう。

 ――仏教や宗教は何ができますか。

 斎藤 先ほども触れましたが、仏教や宗教は本来、成長型とは全然違う理念に基づいて、しかも伝統という形で何百年、何千年の単位で残ってきた。その点では持続可能なのです。つまり成長に依存せずとも持続可能なあり方をしているのです。私はマルクス研究者として古典を重視します。古典は何百年と読み継がれ、その中には、資本主義の価値観や技術とは異なる普遍性や指針みたいなものがあるわけで、だからこそ、マルクスを読んでいるのです。同じように宗教も時代を超えた普遍性、かつ成長に依存しない持続可能性があります。そこに期待するところはあります。

 今年はローマクラブが発表した『成長の限界』から50年です。また「仏教経済学」を盛り込んだシューマッハーの『スモール・イズ・ビューティフル』はその翌年の刊行です。当時あった危機感は、1980年代以降、グローバル化の中で技術革新が進み、東西冷戦構造が終わって新しいマーケットが開けると労働力や資源が出てきた。そこで地球はまだまだいけるぞとなって時間稼ぎとなった。「成長の限界」議論が一時的に後退したけれども、危機が去ったわけではありません。『スモール―』が刊行されてから来年は50年にあたります。この機会に仏教経済学の理念が再評価されることを願っています。(了)

 さいとう・こうへい/1987年生まれ。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。大阪市立大学大学院准教授を経て今年4月から東京大学大学院総合文化研究科准教授。“Karl Marx's Ecosocialism: Capital, Nature, and the Unfinished Critique of Political Economy”(邦訳『大洪水の前に』)は権威あるドイッチャー記念賞を日本人初、歴代最年少で受賞。浄土宗系の芝学園(東京都港区)の卒業生。

2022/9/15-22日合併号 共生特集 おてらおむつプロジェクト 介護者カフェから展開 浄土宗安福寺

おむつを必要な人や施設に支援する大﨑住職 大阪府柏原市の浄土宗安福寺の大﨑信人住職(46)は、肉親の介護をする人や終えた人たちが悩みをや経験を話し合い、複雑な気持ちを分かち合う場「介護者カフェ」を開き、その中で「おてらおむつプロジェクト」も行っている。介護用を終えた人などから不要になったおむつを集め、必要としてくれる施設や個人に受け渡すもので、類例のないユニークな取り組みだ。

 浄土宗宗務庁が、お寺で「介護者カフェ」を開くための講習会をスタートしたのは2020年。大﨑住職も同年に受講した。「自分はまだまだ両親も元気で、介護経験もない、特別な資格を持っているわけでもない」と、ごく普通の僧侶だったと言う大﨑住職。しかし檀家の家に月参りに行く中で、元気だったお年寄りが施設に入ったりする変化も如実に感じていたという。さらに受講すると「父親を、つまり師僧をですが、介護する中で辛くなってしまったり、きつく当たってしまうような、緊急性の高い僧侶の悩みも聞きました」と振り返る。悩んでいる人が周りに一人でもいるなら、に場所を提供して耳を傾けるこのカフェは自分でもできることじゃないか、そう思ったという。

 ある時、介護者カフェに訪れた檀家から「母親の生前に使っていた介護用おむつがたくさん残っているので、なにか活用できる所があれば役に立ててほしい」との申し出があった。介護用おむつは、子ども用おむつと違って「使わなくなる日」がいつ来るかわからない。また意外と値段もするもので、まとめ買いしておく介護者も多いという。そうして見送り後に介護用おむつが残されることになる。

 市内のデイサービス施設を訪問してのレクリエーション活動を始めていた大﨑住職はその施設に相談。介護用おむつの寄付は大歓迎、たとえ開封済みでも色々と利用できる、という返事だった。これに後押しされ、おてらおむつプロジェクトのスタートとなった。市の社会福祉協議会や、隣の八尾市の介護用品ショップとの連携も生まれた。

 「介護を終えられた方の中にも、こうして何か寄付をしたり、自分の経験から他人の役に立ちたいと思う人がいらっしゃいます。ひょっとしたらそれがその人にとってのグリーフケアになるのかもしれません」と大﨑住職は話す。

 最近、フードパントリー事業も始めた。「介護者カフェに来てくれた人が、食料品や日用品を寄付してくれるんです」とのこと。「自分でもできることじゃないか」そう思って一歩を踏み出した僧侶の思いが地域に広がり福祉の縁を紡いでいく。

2022/9/15-22日合併号 共生特集 生長の家のウクライナ支援「P4U」 全国で国旗の日パレード

 8月下旬に各地で行われた国旗パレード生長の家(国際本部=山梨県北杜市、谷口雅宣総裁)はウクライナ支援イベント「ピースフォーウクライナ(P4U)ウクライナに平和を」を3月から行っている。「人類の光明化」を目的に、戦争のない世界の実現を目指す同教団は、「すべての人間は神の子である」という信仰の広まりにより真の国際平和が実現するとの信条から、ロシアによる違法な武力攻撃は侵略戦争にあたると反対の立場を示している。

 支援活動は国際人道支援団体への「募金」、ウクライナ国旗の色を使った物品を手作りして発表する「友愛の情の表現」、ウクライナの文化や民俗、産業などを学び活動につなげる「学習と追体験」の3本柱で進められ、フェイスブックの公開グループ「P4U」で信者らの取り組みが報告・共有されている。ウクライナ国旗をつけての自転車通勤、ウクライナの歴史や文化を学ぶ書籍紹介、ウクライナ刺繍などの工芸品づくり、「一汁一飯」で浮いた食事代の募金など。低炭素のライフスタイル普及を進める教団の信仰生活にも連関する活動が各地で行われ、SNSを通じてその思いをリレー形式でつないでいる。P4Uのロゴマークも作成され、各イベントで使用されている。

 3月22日から5月末までの第一次募金には7226万1313円が寄せられ、NPO国際連合世界食糧計画(WFP)協会に寄託。これに先行して生長の家国際本部が3月末に1千万円を寄付した。6月1日からの第二次募金は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、(公財)日本ユニセフ協会、NPO日本ウクライナ友好協会(KRAIANY)に贈る予定だ。

 ウクライナの国旗の日にあたる8月23日からはカナダと全国約100カ所で信徒たちのグループが「ウクライナ国旗の日パレード」を行い、街頭募金も実施。長引く軍事侵攻でウクライナへの関心が薄れつつある現状を憂慮し、街頭パレードをP4Uの第2次スタートと位置付けている。

 P4Uのロゴマークさらに9月27日には「世界平和六章経連続リレー読誦」を行う。日本時間の午前9時から午後9時まで、信仰の基礎である「大調和の神示」、経本「万物調和六章経」「人類同胞大調和六章経」に収録された祈りの言葉を30人のメンバーが交代で読誦し、フェイスブックグループ「P4U」で配信。全国6カ所の本部直轄練成道場でも集団読誦する。リレー読誦はロシアの軍事侵攻に加え、世界で起きる地球温暖化による気候変動の根本が「人間の欲望という点で同じで、相互に悪影響を与え問題を深刻化」させているとし、一日も早い戦争終結と、「神・自然・人間の大調和の実現」を祈る。

 国葬反対のメッセージ

 9月27日は創始者・谷口雅春大聖師に「大調和の神示」が天降った日であり、奇しくも安倍晋三元総理大臣の国葬が行われる日にあたる。生長の家は安倍政権による立憲主義を軽視した強引な政治運営を問題視し、国政選挙の際に「与党を支持しない」との声明を出してきた。多額の税金を投入して行われる国葬にも反対の立場を示し、祈りの宗教行事を通して「大調和」へと心を振り向ける全国的な取り組みが、信仰の初心に帰るだけでなく「国葬反対」への「明確なメッセージ」とも明言している。

2022/9/15-22日合併号 共生特集 日本禁煙学会がポケットブック刊行 “卒煙”はSDGs推進 医僧・来馬明規住職訴える


SDGsにはタバコ規制が含まれていると説くポケットブック “とげぬき地蔵尊”で知られる東京・巣鴨の曹洞宗髙岩寺。参拝者で賑わう境内の各所には「全域禁煙」の垂れ幕が掲示されている。内科医でもある来馬明規住職は15年以上、禁煙運動に取り組む。来馬住職が監事を務める日本禁煙学会(作田学理事長)は、今春「SDGsポケットブック」を刊行した。「禁煙はSDGsの実践であり、タバコはSDGsの理念に背く」と来馬住職は言う。

 既知の通りSDGs(持続可能な開発目標)には17の目標と169のゴールがある。しかし、第3の開発目標「すべての人に健康と福祉を」のゴール3・aに「すべての国々で適切にタバコ規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)の実施を強化する」と明記されていることは知られていない。タバコ規制こそSDGsの根幹であることが「ポケットブック」に詳述されている。

 そもそもタバコ産業自体がSDGsに違背すると来馬住職は指摘する。「アフリカ諸国などの葉タバコ生産国では経済的な奴隷制度があり、労働搾取や小児労働、子どもを含む農民の職業性ニコチン中毒が横行しています。葉タバコ乾燥の燃料調達のために森林が伐採され、自然破壊が広がっています」

 すなわち原料の生産、製品の製造消費、受動喫煙を含む喫煙の健康被害、吸い殻ポイ捨てで発生するマイクロプラスチックの環境汚染にいたる全ての段階で「人権、福祉、環境を脅かしている」(来馬住職)。ポケットブックも「タバコ製品の製造と消費はSDGsのすべての開発目標を妨害」と結論づけている。

 来馬住職は「禁煙勧奨と実践は有力なSDGs推進事業です。将来にわたって『誰一人取り残さない』ためにも、個人の“卒煙”の積み重ねが大きなSDGs推進につながります」と訴える。

 ブックレットは百円で学会ホームページ上からも取得可能。問い合わせは日本禁煙学会事務局(電話03―5360―8233 ゴミむなしヤニ散々)へ。

2022/9/15-22日合併号 身延山開闢750年記念オペラ「日蓮の宇宙―曼荼羅世界」 日蓮の生涯を3幕で表現


 高らかにアリアを歌う日蓮日蓮宗総本山身延山開闢750年記念オペラ「日蓮の宇宙-曼荼羅世界」が8月31日・9月1日の両日、東京都渋谷区の新国立劇場オペラパレスで上演され2日間で約2500人が鑑賞した。宗祖の物語と西洋音楽が見事に融合した大作で、昨年の宗祖降誕800年、来年の身延山開闢750年を祝した宗門史に残る記念碑的な作品となった。

 仏教に関連した作品も手掛けてきたオペラ作曲家仙道作三氏が作曲・演出。江戸時代初期の久遠寺22世法主・日遠上人と篤信者の徳川家康側室・お萬の方を語り手に宗祖日蓮の生涯を辿り、物語が展開していく。

 圧巻だったフィナーレ。観客は拍手で演者やオーケストラを称えた第1幕『立教宣言』、第2幕『日蓮の自覚』、第3幕『霊山浄土・身延』の3幕7場から成り、立教開宗や龍口法難、佐渡での始顕曼荼羅など、名場面も網羅。オペラ初心者でも楽しめる内容だ。

 国、父母、民衆を想い、信仰に生きた日蓮の言葉を高らかに歌い上げ、3幕の「臨滅」や「フィナーレ」では、読経とそのリズムを曲中に効果的に織り交ぜ、〝和のボレロ〟のような独特の進行で聴衆を惹きつけた。

 最後は、鎌倉時代、江戸時代でそれぞれ演じていた役者が現代の服装で登場。日蓮や六老僧と共に「生まれては消えて /消えては生まれ/咲いては散って/散っては咲いて」と歌う。散華そして大合唱、唱題への流れは圧巻だった。日蓮の物語が現代へとつながり、今を生きるいのち、現代に息づく仏教、法華経信仰の営みが大河の流れのように感じられ、巧みに表現されている。

2022/9/15-22日合併号 高野山真言宗宗会 財務調査11月から開始 完了後の抜本的改革表明


 財務調査の本調査開始を発表する今川総長高野山真言宗の第171次秋季宗会(赤松俊英議長)が7・8日、和歌山県高野町の総本山金剛峯寺内宗務所に招集された。今川泰伸宗務総長は施政方針演説で、各寺院の宗費負担額を決める財務調査の本調査を11月1日から来年12月10日を目処に行うと発表。添田前内局時に準備が始まった今回の財務調査を完結させた後、制度調査会等での検討を重ねた上で、指数の定義など制度設計も含めた今後の財務調査のあり方について抜本的に改革したい考えを示した。財務調査の実施は平成16年度以来。

 添田前内局時に任意で提出を求めた各寺院の収支計算書3年間分(平成29~31年度)の分析で、「各宗務支所の平均収入と(宗費算定の基準である)平均指数とが非常によく相関していること」(今川総長)が判明。その一方で、「いくつかの支所は(宗費負担の不均衡が生じており)要検討であることが認識された」。

 本調査ではこのデータを用いた上で、宗規に則り各末寺の収入総額などを記入した財務調査申告書(平成30年度から4年間)の提出を受け、支所・地区・中央の各調査委員会で審議する流れだ。

 寺院運営に甚大な影響を及ぼしているコロナ禍の中での財務調査実施となるが、「寺院・教会財務調査諮問委員会」(眞田有快委員長・全国10地区からの代表各2人の委員で構成)の協議で「5年周期で行わねばならない財務調査が平成16年以来行われていない中、来年に御誕生法会を迎える今、これ以上宗費負担の不均衡を放置せず、コロナ禍の影響も加味して実施すべき」(委員の一人)と結論。8月31日付の同委員会の答申書で、「本調査開始前に現状の指数の範囲内で不均衡の調整を行う」ことも明記された。(続きは紙面でご覧ください)

2022/9/15-22日合併号 WCRP日本委員会 新理事長に戸松義晴氏(前全日仏理事長) “チャレンジ精神で”


 記者会見後、写真撮影に応じる戸松新理事長(右)と植松前理事長(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(庭野日鑛会長)は13日、京都市内の立正佼成会京都普門館で理事会を開催し、植松誠理事長(日本聖公会主教)の任期満了に伴い、新理事長に浄土宗総合研究所副所長(心光院住職)の戸松義晴氏(69)を選任した。(公財)全日本仏教会(全日仏)理事長経験者が同理事長への就任は初めて。

 この日の最後の議案となった理事長改選。2期4年間の任期を満了した植松理事長は「お役を十分にできたとは思っていないが、なんとか今日まで来ることができた」と退任の弁。植松氏は2006年から理事として活動に本格的に参画し、同年の第8回WCRP世界大会(京都)、2013年の第9回大会(ウィーン)、2019年の第10回大会(ドイツ・リンダウ)に出席した。

 事務局が戸松氏を提案し、理事会が賛同して就任が決まった。戸松氏は今年6月、理事に就任したばかり。理事長となった戸松氏は挨拶(要旨別掲)で「私は、行動力やチャレンジ精神はあるけれども人徳はない」と述べながら、「笑顔でいられる社会」作りを目標として掲げた。

 理事会終了後、戸松・植松新旧理事長は記者会見に臨んだ。

 【戸松義晴理事長の略歴】昭和28年(1953)5月生まれ。慶應義塾大学卒、大正大学大学院博士課程満期退学、ハーバード大学大学院修士課程卒業(神学修士)。全日本仏教会事務総長(2回)を務め、令和2年(2020)6月から同理事長(2年)および日本宗教連盟理事長(1年)を務めた。今年8月から浄土宗総合研究所副所長。自坊は東京都港区の心光院。

 笑顔の社会へ

 戸松新理事長の就任挨拶 今まで、WCRP日本委員会には、色々な機会にご挨拶はさせてもらったが、活動にはあまり参加していなかった。ただ平和の問題は宗教者にとって根幹に関わるところであり、祈るだけでなく具体的な形にしていきたい。

 ただ私は、行動力やチャレンジ精神はあるけれども人徳はない。理事長をお受けするにあたり、皆さま方のお支えとご理解をいただき、これまでずっと培ってこられた先輩方の活動を引き継いでいきたい。

 ここに『笑顔と涙に寄りそおう』(京都普門館に掲げられている標語)とある。宗教者は社会的には悲しいことに関わることが多いと思われているが、できるだけ笑顔でいられるような社会を作っていくことが一番の目的ではないかと思っている。皆さまと共にWCRP日本委員会を多くの方に喜んでいただけるようにしたい。(要旨)

 21~23日 東京円卓会議 紛争国の宗教指導者来日

 この日の理事会で21日から始まる「戦争を超え、和解へ」諸宗教平和円卓会議(第1回東京平和円卓会議)の開催を承認した。ウクライナやロシアのほか紛争地の宗教指導者を東京に招いて宗教者の役割などを検討する。WCRP/RfP国際、日本委員会が主催し、国会議員組織であるWCRP国際活動支援懇談会などが後援。会議は都内のホテルで23日まで。オンライン併用。

 会議にはアッザ・カラム国際事務総長や、エマニュエル府主教(東方正教会、フランス)、ヴィヌ・アラム氏(シャンティアシュラム会長、インド)、シェイク・アブダッラー・ビン・バイヤ氏(アブダビ平和フォーラム会長、アラブ首長国連邦)、庭野光祥氏(立正佼成会次代会長)の教同議長4人が出席する。

 またブルキナファソ、エチオピア、シリア、南スーダン、ミャンマー宗教指導者や政府関係者、WCRP/RfPの各国委員会メンバーら海外から40人ほどが参加する予定。日本からは評議員や理事等が参加する。

2022/9/8 関東大震災100回忌 東京都慰霊堂で秋季法要 増上寺出仕 犠牲者を回向


秋季慰霊大法要で導師を務めた小澤法主が挨拶した(東京都慰霊堂) 10万人以上が犠牲となった大正12年(1923)の関東大震災から100回忌(99年)を迎えた1日、東京・墨田の東京都慰霊堂で浄土宗大本山増上寺が出仕して秋季慰霊大法要が営まれた。秋篠宮ご夫妻が焼香された。コロナ対策として参列者は30人ほどで、東京都仏教連合会の随喜も小人数にとどめた。主催は(公財)東京都慰霊協会。

 小澤憲珠法主を導師に増上寺一山僧侶が読経後、小池百合子東京都知事の追悼の辞を武市敬副知事が代読。関東大震災および東京大空襲の犠牲者を偲びつつ、首都直下地震や大規模災害を想定した取り組みに着手していることを紹介。さらに関東大震災と東京大空襲に言及した上で、「私たちは先人の苦難に思いをはせ、直面する困難を乗り越えて、東京を持続可能な都市として未来に引き継いでまいります」と表明した。

 指名焼香では、秋篠宮ご夫妻が最初に行ってから退出。続いて東京都の役職者、遺族、地元墨田区の関係者によって行われ、震災と戦災の犠牲者を回向した。

 法要は、関東大震災と都内戦災の遭難者を追悼するもの。東京大空襲の3月10日には春季大法要が営まれる。

 用心を教えられた

 法要後の小澤憲珠法主の挨拶(要旨)
 大震災から100回忌、大震災を直接体験した方はわずかだ。私の母は港区に生まれ、大震災の時は小学生だった。母からは当時のことを聞かされた。そして、くれぐれも用心を怠らないようにと教えられた。

 また終戦の年、私は小学生に入る直前だった。(3月10日の東京大空襲では)空襲警報が鳴り、眠いのをたたき起こされて防空壕に入った体験がある。人間は忘れる性質があるが、決して忘れてはならない教訓であり、いつまでも語り継ぐ使命があると思う。

朝鮮人犠牲者追悼碑前で「鎮魂の舞」を舞う金順子さん 朝鮮人犠牲者追悼

 東京都慰霊堂に隣接する朝鮮人犠牲者追悼碑前では99周年記念式典が執り行われた。実行委員会委員長で日朝協会東京都連合会の宮川泰彦会長が開式の挨拶を述べ、虐殺の真相解明調査に着手しない日本政府の姿勢を批判した。

 式典では浅川金刀比羅神社(八王子市)の奥田靖二宮司が祝詞を奏上。大惨事に乗じて朝鮮・中国の人々などを襲撃したことを述べ、「歴史をけっして忘るることなし」と読み上げ、犠牲となった御霊を追悼した。続いて韓国伝統舞踊家の金順子(キム・スンジャ)さんが今年も鎮魂の舞を披露した。仏教界からは日本山妙法寺のほか各宗派僧侶が参列した。



慰霊堂内に掲げられている「被服廠跡」。読経する僧侶が描かれている  供養描いた一枚の絵 

 東京都慰霊堂内には関東大震災を描いた絵と都内の空襲被害の写真パネルが掲示されている。正面右側の一枚目が「被服廠跡」と題する絵で、焼骨の山となった場所で読経する僧侶の姿が描かれている。

 その説明文には次のようにある。

〈この慰霊堂の敷地付近は元陸軍被服廠であって空き地となっていたので絶好の避難処となり各方面から集った為立錐の余地もなかった。午後三時頃延煙してきた猛火はここを襲い火に包まれ煙に巻かれ一瞬にして三万八千の人々が悲惨な犠牲となった。遺体は十数日かかって露天火葬し焼骨は山と積上げてただ合掌するより言葉はなかった〉

 僧侶は地元の日蓮宗僧侶だと伝えられている。大法要が仏式で、東京都仏教連合会傘下の本山寺院で行われるようになったのも、いち早く震災犠牲者を供養したからだ。

2022/9/8 築地本願寺佃ビルが竣工 布施に頼らない事業モデル テナントの老人ホームで傾聴も


地上9階、地下1階の佃ビル 築地本願寺(東京都中央区)が佃島分院(同区月島)の跡地に建てた老人ホームが入る「築地本願寺佃ビル」が竣工し、現地で8月31日、記者会見が開かれた。東森尚人副宗務長は「お布施だけに頼らない事業モデルの初の実践例。不動産事業を行うことで永続的な宗教活動を可能にしたい」と意気込みを語った。

 地上9階、地下1階の延べ約3千平方㍍。総工費は約17億円。2階が佃島分院で本堂がある。3~9階に介護付き有料老人ホーム「ドーミー月島駅前」(全53室)、1階に同寺境内にも店舗を構える「カフェTumugi」の“はなれ”がそれぞれテナントして入り、賃貸借契約を結んでいる。

 月島など湾岸エリアはタワーマンションの建設などで人口が増えた地域。東森副宗務長は「生きている間の絆づくりができるお寺を目指している」と述べ、「人が亡くなってからのご縁だけでなく、日々の暮らしの中でこそ関わりを持っていきたい」と、都市開教の拠点としたい考えを語った。

 佃島分院の行事を通して老人ホームの入居者と交流を図るほか、常駐する僧侶が傾聴活動も行う。老人ホームを運営する共立メンテナンス(千代田区)の君塚良生取締役は「仏教に関心がある入居者のために、本願寺さんと一緒に何かできないか考えていきたい」と期待を込める。すでに20件の予約があるといい、「とても早いペース。高齢者がお寺の入る施設で暮らすことに、ネガティブなイメージがないことの証明と言える」と話した。

 旧佃島分院は1934年の建立。2018年から計画を進めていた。2020年4月に説教所から同寺分院とした。同年から解体、建設工事を始め、今年8月に竣工。9月1日から運営を開始した。建物の一部には、解体した旧佃島分院の瓦や木材を再利用し、従来の「和」のイメージを踏襲した。

2022/9/8 撤退、参入 葬祭関連業に異変 僧侶仲介手数料、衝撃の75%も


 葬祭事情に異変が起きている。近年、大手流通グループ・イオンの葬祭業への参入やネット通販大手のアマゾンでの僧侶派遣など、葬祭関連業の動きが活発になった。厳しい競争に敗れ、撤退する企業もあれば、生き残りや業界の勝ち組を狙ってのことか、これまでにない動きも目立つようになった。

 インターネットで葬儀社を探すことが当たり前になり、ネットの葬儀仲介業者が勃興している。様々なネットサービスを提供するDMMが参入し、わずか1年ほどで撤退したことは記憶に新しい。2019年に愛知県のネット葬儀仲介業者が始めた「お坊さんのいないお葬式」も昨年サービスを終了。一部のメディアに広告や記事で取り上げられることもあったが、撤退も早かった。

 昨年は、ネット葬儀サービス市場で4割のシェアを持つとされる「小さなお葬式」を運営する大阪のネット葬儀会社ユニクエストが、公正取引委員会に独占禁止法違反の疑いを指摘され、他のネット葬儀社と取引しない条件の「特約加盟店制度」を廃止した。死者の尊厳と関わる公共性の高い葬祭を取り扱う会社が独占禁止法を指摘されたのは驚きだが、顧客や葬儀社の囲い込みのために、生き馬の目を抜く競争が起こっているのだろう。

 都内でも葬祭業社をざわつかせる現象が起こっている。都内斎場大手・東京博善の親会社広済堂は、大阪の葬儀社大手・公益社と組んでグランセレモ東京を設立し、葬祭業に参入。これまで火葬斎場が葬儀社の業態に踏み込むことはなかっただけに、業界内で波紋を呼んでいる。

 都内で長年葬儀社を営み、現在は葬儀後のサポートを行う清水敬哲氏は「東京博善の斎場は東京23区で6~7割のシェアがあり、ほぼ独占状態です。都内の葬儀社は大きな影響を受けると思う。葬儀社は利便性のある斎場を勧めてきたが、裏切られたような気持ちでいるはずだ」と話す。

 この点、同社のサイトでは、「東京博善の火葬場並びに式場施設は、東京都の許認可のもと他葬儀社との使用の公益性を担保した施設となります」と明記し、「東京博善のお葬式」の優先予約や特別割引などの公益性を欠いた使用は行えないと表記している。だが、最初に斎場に問い合わせがある場合など、斎場選びの段階でグループ葬儀社が選択肢に上がれば、大きな商機になりそうだ。

 このほか、東京博善は今月5日から都内の町屋・落合・代々幡・四ツ木・桐ケ谷・堀ノ内の各斎場で、いわゆる直葬における読経サービスを開始。仏教8宗派に対応し、直葬のために僧侶を斎場に常駐させる新サービスを立ち上げている。

 こうした葬祭業界の状況を寺院・僧侶は対岸の火事のように見ていられない事態も生じている。葬儀仲介を行う事業者の中には、菩提寺をもたない施主に対して僧侶を紹介する場合に、僧侶にお布施の75%を手数料として要求するところも出てきたという。仮にお布施が10万円だとすれば、7万5千円を仲介業者に渡し、僧侶の手元には2万5千円が残る。そうした実態を施主は知る由もないということだ。

 都内で新寺建立した僧侶は「遺族のために一生懸命に読経することは変わらないが、ギャップはありますよね。企業が仕事を受けるために広告費や人件費など経費をかけているのは分かるが、一般の人材派遣でさえ、5割も取らないでしょう。6割という業者もあるが、さすがに法外だ。もはや僧侶を商品として原価ゼロで仕入れ、売っているという感覚なのではないか」と憤る。

 僧侶紹介の法外な手数料は、葬祭業界の信頼を失わせることにもつながるのではないか。清水氏は「一般の人からすれば、仲介業者がそんなことをしているのかと思う人が多いだろう。同時に、そこまでしてお坊さんは仕事を受けているのかと思うかもしれないが、お檀家さんというバックボーンがない僧侶の方々は、菩提寺がない人とつながるために、本当に努力している。私もそういう方に応援する意味でもご紹介してきた。無料でという形ではなかったが、それでも付き合いの範疇で1~2割だった」。

 既存寺院の檀信徒以外の施主が対象だとしても、次の世代への影響が危惧される。ネットで情報収集し、寺院側と折り合いがつかないという話はよく聞く。「うちの寺は関係ない」と言えない日がすぐそこに来ている。今後も葬祭関連業界の動向に気を付けていかねばならないだろう。

2022/9/8 <カルト2世 宗教2世 信仰と離反の中で> 孤立化させない サンガの精神発揮せよ 神仁・臨床仏教研究所主幹、国際宗教研究所顧問


 事件の第一報を耳にして、これは政治的なテロではないと思いました。大阪の池田小学校事件、秋葉原での無差別殺傷事件、最近では京王線で起きた死傷事件に共通するもので、「孤独・孤立」が起因した事件ではないかと受け止めました。

 宗教2世とされる人たちも誰にも相談できず「孤独・孤立」の中に置かれている。親の信仰に疑問を抱いた時に、どう対処するのか。宗教2世が家族から離れることは経済的な自立を意味しますから、若い人たちにとっては、容易なことではありません。親が教団の経済圏内にいるとなおさらです。信仰を辞めると、自分自身が食べていけなくなるので、親には言い出せない。

 引きこもりもそうですが、こうした人たちをサポートする際、身体性、精神性、経済性、社会性の4点から考えることができます。虐待や自傷行為といった身体に問題はないか。次に精神性の面からみてどんな状態にあるのか。経済的に自立は可能なのか。経済的に自立できれば、社会性も自ずと伴ってきます。

 まずは孤立させないために悩みを打ち明けられる場を作ることが重要です。ネット上でかまいません。悩みを持つ人は最初にチャット欄に書き込んだりします。それに丁寧に応じていく。相手が落ち着いてきたり、こちらに安心感を持つと電話で相談したり、対面で話すようにもなります。

 相談を受ける側が気をつけなければならないのは、一方的に話し、自身の価値観を押しつけないこと。それに宗教2世や親の信仰を否定しないことです。あるオウム信者ですが、信仰を全否定されると、自分が生きてきたすべてを否定された気持ちになったと言います。ですから、そうした体験を今後の生きる糧にしましょう、人としての成長につなげましょう、と助言するようにしています。

 仏教界にそうした相談窓口が必要なのですが、評論家が多くて実行力に欠けるところがあります。宗教2世を「孤独・孤立」化させないよう、サンガの精神を発揮して寄り添ってもらいたいものです。(談)

2022/9/1 「もうお寺やめたいです」愚痴大賞に僧侶の切実な声 台東区・厳念寺


本堂に飾られた愚痴の短冊 東京都台東区の浄土真宗厳念寺で8月13~16日、「愚痴供養祭」が開かれた。「もうお寺やめたいです」。僧侶の切実な声が、「愚痴大賞」に選ばれた。

 亡き人に思いを馳せ、自分自身にも向き合うお盆。ふだんどんなことに不満を感じているか書き出してみることで、自らの心を見つめ直すきっかけにしてほしい。昨年に続いて2回目の「愚痴供養祭」が催された。

 愚痴をしたためた短冊が境内や本堂に飾られ、夜には灯籠でライトアップされた。親しい友人にこぼすのと違い、書くとなると意外と難しい。寄せられたのは約180枚。眺めていると、ありのままの心を映した素直なものだったり、ちょっといいことを言おうしていたり。その人柄も思い浮かぶ。

 参拝者の投票で選ばれた「愚痴大賞」は「関西の住職48歳」のぎょっとする句だった。きっと真剣に僧侶として生きているからこその心情だろうと想像するが、これを選んだ参拝者の意図を考えると、お寺への複雑な感情も暗に伝わってくるようだ。

 「愚痴というとマイナスのイメージがありますが、自分が抱いている気持ちに気づくきっかけにもできます」と菅原耀副住職。「人に言いにくいこともあることでしょう。そんな思いにも誰かが共感してくれるはず。そうした場になればと思っています」

 短冊は後日、お焚き上げする。愚痴を見たり、書いたりするスタンプラリーや縁日でお馴染みの「型抜き」などもあり、参拝者たちは心を洗うお盆のひと時を過ごした。

2022/9/1 都内で「政治と宗教」シンポ 政権に接近 旧統一教会と創価学会 選挙の見返りは祝電や挨拶


シンポでは、旧統一教会と創価学会の問題を中心に討論された 市民グループらによる「政治と宗教を考えるシンポジウム―安倍晋三総理銃殺事件で浮きぼりになった政治と宗教の闇」が8月20日、東京・東村山市の市民ホールで開かれた。事件を契機に急浮上してきた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と政治家の関係や自公政権の宗教構造などが討論された。この模様はオンラインでも同時配信された。

 最初に衆院議員で日本共産党統一協会追及チームの宮本徹事務局長が国会報告。臨時国会初日(8月3日)に「統一協会(家庭連合)」名称変更などに関する質問主意書を提出したものの、「何一つまともな回答はない」と嘆いた。
 
 急きょ政府内に設置された「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議についても「宗教法人を所管し、解散権限を持っている文科省が入っていない」「(児童相談所などを所管する)厚労省が入っていない」と実効性を疑問視した。

 続いて「前衛」編集長の盛美影氏が「カルト教団・統一協会とは」と題して基調講演。長年にわたり統一協会をはじめ関連組織を追及してきた盛氏は、教義や正体隠しの伝道、被害者が新たな被害者をつくりだす霊感商法の構造を話した。その中で、日本を「エバ国」、韓国を「アダム国」とし日本は韓国の指導を受け、奉仕しなければならないという「韓国中心主義」の教義があると指摘した。

 また「共産主義の抹殺」を掲げる国際勝共連合(1968年発足)と自民党の関係を解説。スパイ防止法制定、軍備拡張、核保有といった政策で共闘してきたが、「課題はなんでもいい。自民党と一緒にやって進めて行くこと」に運動の価値を見出しているという。その延長上で自民党候補者の選挙応援、さらには勝共連合が人件費を持っての秘書派遣があり、「いっときには200人近くの統一協会信者の秘書がいたと言われる」。

 そうした見返りとして自民党議員は催しの時に祝電や祝辞をおくり、挨拶をしたりする。「挨拶などは、これだけ社会に認められているのだと信じ、信者は元気になる」。それによって霊感商法は根絶されることなく、繰り返されてきた。

 全体討論は、創価学会・公明党に詳しいジャーナリストで月刊誌『フォーラム21』発行者の乙骨正生氏を進行役に行われた。「自公政権の宗教構造」について乙骨氏が説明。民主党政権をのぞき20年近く続いている自公政権だが、もともと創価学会・公明党は非自民の立場だった。自民党も創価学会・公明党を厳しく指弾してきた。ところが、1999年に自自公政権が発足以後、自公間の選挙協力が常態化した。「潰れかかっていた自民党を助け、生命維持装置になったのが創価学会」だとした。

 次いで乙骨氏は日本会議の存在を指摘。「神社界をはじめ右翼系の宗教団体」が名前を連ね、「戦前レジームへの回帰」という目的を共有。三つ目は「反共を旗印に浸透してきた統一教会」であり、「この三つが自民党を支えてきた」と解説した。

 関連して元公明党国会議員の二見伸明氏が補足。自公政権となった背景に「証人喚問問題があった」と明言。問題が起こるたびに池田大作氏(第3代会長)の国会招致が取り沙汰され、それを回避するためだったと明かした。

 統一協会が反共・勝共で自民党と連携する一方で、宮本氏は「(霊感商法など)危うい活動をしているからこそ、政治家の庇護を求めている」との見方を示した。

 安倍晋三元首相の祖父岸信介と勝共連合の関係を盛氏が深掘りすると、乙骨氏は戸田城聖2代会長の著述から、創価学会とも関係が深かったと論証。それが娘婿の安倍晋太郎元外相、晋三元首相親子にもつながっているとした。

 討論ではさらに政教分離や宗教法人法の問題点、メディアのあり方などが提出された。

 ※統一協会と統一教会の表記があるが、発言者の資料に従った。

2022/9/1 お寺も戦場だった! 岐阜空襲の被害パネル展開く 隣町寺院から発見『戦災顛末書綴』受け


29枚のパネルで被害を展示 「お寺も戦場だった」と題するパネル展が5日から15日まで岐阜市のメディアコスモスで開かれた。1945年7月9日夜11時頃から米軍により大量の焼夷弾が落とされ、市街地の7割が焼け野原となり、約900人が命を落とした岐阜空襲。その中でお寺はどのような被害を受けたかが明らかになった。

 西本願寺岐阜別院は3発の焼夷弾を受けたが、火災は広がらなかった。しかし周囲の町内から燃え広がり、消防車も来ることができずにどうしようもなく、大本堂は焼け落ちた。忠魂堂(現在は八角堂と改称)や経蔵などいくつかの建物だけが残った。境内の瓦礫を片付けるために岐阜刑務所の受刑者が働いた記録があるという。

瑞龍寺伽藍で唯一焼失を免れた鐘楼 臨済宗妙心寺派瑞龍寺は同派で屈指の大刹だが、やはり焼夷弾で鐘楼を除く全ての建物が焼失した。修行道場として使われていた塔頭天澤院は当時、軍隊が駐留していた。

 本尊を衣に包んで田んぼに放り投げ守った曹洞宗醫王寺、戦後に「戦争の鬼をはらう」として「つり込み祭」を始めた真言宗醍醐派玉性院、戦前では珍しい鉄筋コンクリート本堂だったため消失を免れ、戦後は職業安定所としても利用された真宗大谷派西覚寺など、29枚のパネルでエピソードを伝えた。「本尊を背中にくくりつけられて、泥まみれになりながら逃げ延びた。空襲後には残っていた鐘楼の下に数十人の孤児が住んだ」といった証言も紹介された。

岐阜別院の忠魂堂は八角堂と改称 この展示に至るまでには、一つの戦争資料の発見があった。岐阜市の隣、北方町の浄土真宗本願寺派西順寺で昨年、『戦災顛末書綴』という冊子が書庫から出てきたのだ。市内51の寺院と天理教教会が被害状況の報告や損害見積額を記して県に提出した「顛末書」を綴じたもの。県に公的な補償を求めた可能性もある。

 提出を受けた県の教学課が綴じ、保管していたものとみられるが、岐阜市ではない西順寺になぜこれが移され眠っていたかの詳しい理由は不明。三浦真智前住職は「ほとんど奇跡的に発見されたもの。こういった綴は他には聞いたことがなく、他県で同じようなものを知っている方がいたらぜひ教えてほしい」と話す。

 この記録を元に戦争を語り継がなければ―そう考えた三浦前住職は岐阜市平和資料室友の会に相談し、有志による「戦災顚末書調査研究会」を発足させた。1年かけて丹念に聞き取り調査をしてきたことが展示に結実した。

 三浦前住職は多くの来場に安堵しつつ、詳しいことは未定ながら他の場所でも展示を行いたいと考えている。

2022/9/1 <カルト2世 宗教2世 信仰と離反の中で> 被害者支援、宗教者の協力必要 柳本伸良・日本基督教団華陽教会牧師


 安倍元首相の銃撃事件以降、破壊的カルトの信者の家族に注目が集まっています。特に、親が組織に入ってしまった子どもの場合、教育ローンのお金が献金に消えて、進学できなくなってしまったり、親が高齢者施設へ入れるように貯めていたお金がささげられ、自宅で介護する必要が出てきたり、切羽詰まった問題が待ち構えています。

 また、カルト2世の子どもたちは、組織の教えや指示によって、人権を蔑ろにされることが少なくありません。小さい頃から、同じ信仰を持たなければ本物の家族として扱われなかったり、メンバー以外の人間と仲良くすることを禁じられたり、教育を理由にした虐待が組織的に支持されたり、様々な暴力と抑圧に晒されます。

 成人しても、社会の常識を身につける機会や一般人とのコミュニケーションの経験を奪われてきた人が、いきなり外の世界で生きていくのは困難です。そのため、カルト2世の人間が、組織を抜けて、親から離れ、自立して生活するためには、避難先のシェルターと、臨床心理士や宗教者による心の整理と、同じ境遇の2世や一般人とのコミュニケーションの積み重ねなど、社会とのつながりを徐々に回復していくセーフティーネットが必要です。

 特に、カルトの被害者は、長い間刷り込まれた教えによって、組織を離れた自分への裁きを恐れたり、自分で考え決断することを怖がったり、恋愛や性に関わることへ極端な不安を感じたりします。それらの感情・思考・行動パターンを誘導してきた組織の教えや指導について、どこに問題があり、どこに歪みがあるか伝えることは、住職や牧師など、宗教の専門的な知識を共有する人でなければ、なかなか手をつけられません。

 日本基督教団は、この問題に、長く地道に取り組んできた方ではありますが、現在も被害者の救出や回復に携わっている牧師は、決して多くありません。しかし、「私たちはカルトじゃありません」「健全な宗教です」と言う主張は、多くの教会で行われています。にもかかわらず、カルトについての理解は、曖昧なままの牧師や信徒がほとんどです。

 せめて、「なぜ健全と言えるのか」「カルト問題とは何か」を説明できるように向き合うことが、誠実な宗教者の姿勢だと思います。向き合い始めれば、自ずとこの問題を放置できなくなるはずです。私たちがカルト問題を放置することは、私たちが宗教者であることを放棄することでもあります。その点を反省しつつ、被害者の救出や回復のために、宗教者同士の理解と連携を強めていけたら幸いです。(日本基督教団カルト問題連絡会世話人)

8月

2022/8/25 終戦77年 平和を願う 


立正佼成会 「衆生」は人間にとどまらず 平和構築への視座提示

大聖堂では、戦争犠牲者の慰霊と平和を願い、光祥次代会長導師による読経供養が行われた(写真提供:佼成出版社) 立正佼成会は終戦記念日の15日、東京・杉並の大聖堂で「戦争犠牲者慰霊・平和祈願」式典を執行。庭野日鑛会長は法話で、釈尊の説く「衆生」の意味を解説し、平和構築への視座を提示した。式典の模様はライブ配信された。

 庭野光祥次代会長を導師に、妙法蓮華経方便品・如来寿量品を読誦。続いて庭野会長による回向文を読み上げ、ロシア軍によるウクライナ侵攻など「暴力と怒りの連鎖」が起きていと指摘。「怨みを捨てる」という法句経の一部を説示した。

 体験説法は世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の篠原祥哲事務局長。信仰3代目で、大学時代から佼成会信仰を深めていった。座右の銘となる法華経法師品の経文を紹介する一方で、WCRP事務局に奉職して白柳誠一理事長(当時、カトリック枢機卿)から「もっとも貧しい人、もっとも大変な状況にある人にこちらから会いに行きなさい。会いに行く目的は、その人を救うためではなく、自分が学ぶためにです」と教えられたことを披露。その精神のもとに、東日本大震災や今年のウクライナ難民支援など現地に赴いた体験を語った。

 庭野会長の法話では、77年前の終戦時のエピソードや終戦の詔勅に込められた願いなどを口にした。さらに釈尊の生誕および成道時に発せられた偈文の意味をひも解きつつ、普回向「願わくはこの功徳を以って、普く一切に及ぼし、我等と衆生と、皆共に仏道を成ぜん」の「衆生」に着目。「(衆生は)人間にとどまらず、すべての動植物、石や土も包含している」とし、普回向のように布教することによって平和が築かれると説いた。

日蓮宗 暴力で問題は解決せず 今年も千鳥ヶ淵法要

法要で立正平和を説く田中総長 日蓮宗は15日、東京都千代田区の国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で終戦から77年にあたる戦没者追善供養・世界立正平和祈願法要を厳修した。昨年と同様に新型コロナウイルス感染防止のため式衆や参列者の規模を縮小して開催し、法要の様子はユーチューブでライブ配信された。

 法要は田中恵紳宗務総長が大導師を務め、東京4管区の所長が副導師を務めて厳修された。昭和34年の同墓苑の創建以来、日蓮宗が毎年「終戦の日」の8月15日に法要を営んでおり、今年で64回目となる。

 田中総長は、戦争を体験した世代が少なくなる中で「我々戦後の世に生まれた者の役割とは、その史実に向き合い、数多の犠牲によって世界の歴史、文明が紡がれたことを決して忘れないことではないか」と述べた。

 世界各地で起こっている紛争にも言及した田中総長は、「理由の如何を問わず、暴力によって解決する問題は存在せず、そこから生み出されるものもまた皆無」と説示。世界立正平和を祈願し、「一人でも多くの人々が過ぎし日の戦火に思いを馳せ、各々の国を思うことにより、恒久なる安寧が一日も早く実現することを願ってやみません」と念願した。

 千鳥ヶ淵戦没者墓苑奉仕会の塚田章理事長は、今年5月、3年ぶりに拝礼式が挙行されたことに触れ、同墓苑に安置された遺骨が37万267柱となったことを報告。

 さらに「戦後の平和と繁栄に慣れ、先の大戦の記憶や戦没者への尊崇の念が風化されつつある今日、私共は戦没者に対する慰霊報讃の思いが全国に広がり、次の世代へと伝えられるよう努めてまいります。日蓮宗の皆さまに戦没者供養を毎年続けていただいていることは大きな支えです」と語った。

 神奈川県から法要に参列した70代女性は「ウクライナ情勢とか不穏な中で、亡くなった方を供養して心から平和を願うことが、とても重要な時期だと思う。多くの人に参拝してもらうためにも、法要を続けてもらいたい」と話した。

2022/8/25 諸宗教者集い国葬に反対 「弔意の強制」と批判 閣議決定撤回求める


参議院議員会館で開かれた諸宗教者らの記者会見 平和をつくり出す宗教者ネットは18日、東京都千代田区の参議院議員会館で記者会見を開き、安倍晋三元首相の国葬に反対する諸宗教者共同声明を発表した。「国民に弔意を強制してはならない」とする共同声明を内閣府に提出し、閣議決定の撤回を求めた。

 声明では、「葬儀・弔いは本来宗教的教義に基づく行為」であるとし、戦前の「国葬令」は「諸宗教の上に国家神道が置かれた、天皇制国家主義の明治憲法下の法令」と指摘。「国民の弔意が権力によって強制されることがあってはならない」と国葬の実施を決めた閣議決定の撤回を求めている。

 日蓮宗僧侶で「群馬諸宗教者の集い」代表の小野文珖氏は、「諸宗教者ということに意味がある。仏教、キリスト教、新宗教、神道、各宗教の方が集まって声をあげた。声明を出しただけでなく、行動にも移していく」と表明。声明文の賛同者には諸宗教者52人が名を連ねており、現在も増えているとした。

 浄土真宗本願寺派僧侶の山崎龍明氏は「岸田首相は国葬を政治利用しているのではないか。国葬問題は個人の人権が問われている大きな問題。このうねりを大きくしていきたい」と語った。

 日本キリスト教協議会議長の吉髙叶氏は「国家の思惑でいかなる人間の生も死も賛美されたり美化されてはならない。国葬は最大級の〝顕彰〟を行う営み。むしろ、字が違う〝検証〟をすべき。国葬は日本の民主主義を葬ります」と訴えた。

 浄土宗僧侶の大河内秀人氏は「安倍元首相の密葬が増上寺で行われた。どのような悪人でも阿弥陀さまは救ってくださり、安倍さんがお浄土にいくことを願っているが、国葬に反対することを通して民主主義とは何か、国とは何かを多くの人に訴えていきたい」と話した。

 諸宗教者らは今後、国葬が予定されている9月27日までに市民団体などと連携し、各地で集会やデモを開き、国葬の中止を訴える。国葬が実施される場合には、当日に国会議事堂や首相官邸周辺で抗議するとしている。

2022/8/25 全日本仏教会第35期 里雄康意理事長インタビュー ブッダの教え伝える環境整備へ


 6月、(公財)全日本仏教会(全日仏)第35期の理事長に就任した真宗大谷派元宗務総長の里雄康意氏(73)。コロナ禍3年目を迎えた中での着任となったが、感染症対策を含めて仏教界が直面している課題は少なくない。全日仏の舵取り役にインタビューした。

 まずは第7波とされる新型コロナだが、「東京の感染が拡大し、全日本事務総局職員も罹患したとの連絡を受けました」と里雄理事長。事務総局では7月初め、職員が感染し、保健所の指示を仰ぎながら対応にあたった。里雄理事長は続ける。「しかし当初のような恐怖感はなくなっているかのなと。ウィズコロナという形で日常を保ってきて3年目になります。消毒やマスクが普通になり、ワクチン接種も進んだ。感染者は増えているけれども、対策をしながらお寺での法座も行えるようになった。最初の頃とはだいぶ変わったと思います」

 さてこの先2年にわたる任期中に里雄執行部は何をなすのか。理事長になってからの抱負を尋ねると、意外な答が返ってきた。「7万5千に及ぶ寺院、教会、布教所を抱える教団や都道府県仏教会、諸団体など105団体によって構成されている全日本仏教会なので、加盟している105団体がブッダの教えそのものをきちんと世の中に伝えていく環境を整備することが大事な務めだと思います」

 かつては真宗大谷派宗務総長を務め、現在も現役の宗会議員である。過疎地寺院や高齢社会、人口減少、ジェンダー平等など様々な社会課題に接してきた里雄氏が語ったのは、加盟する宗派や組織の源流にあるブッダの存在である。「社会的な問題に真向かうことを通して、原点に立ち返って、仏教のものの見方、考え方を発信することです。少しでもそうできればいいなと願っています」

 その原点の一つに里雄理事長は四諦八正道を見据える。「正しくものを見て(正見)、正しく考え(正思)、正しい言葉をかける(正語)――、こういった八正道の実践は仏教者が常に心がけしていなければならぬと思いますね。仏(ぶつ)の教えが持っておる、そういう具体的な生活における公益性を全面に発揮する。それが全日本仏教会ができる仕事だと思いますね」

 正見・正思・正語・正業・正命・正精進・正念・正定からなる八正道。いわば“仏教の基本(生活)ソフト”である八正道には公益性があると説く。現在では死語に近い「全一仏教」の一面を表していよう。(続きは紙面でご覧ください)

 

2022/8/25 Jリーグ入りを祈願 奈良クラブが長谷寺に登嶺


右から金子優希選手(GK)、金子昌広選手(MF)、金子雄祐選手(MF) 奈良県のサッカークラブチーム「奈良クラブ」の選手・サポーターは16日、真言宗豊山派総本山長谷寺(桜井市)に登嶺し、写経と風鈴の奉納、祈願法要を営んだ。登廊にたくさんの風鈴と願い事を書いた短冊を釣り下げ涼をとる同寺の「風鈴回廊」企画とのコラボレーション。どんな願いも叶えてくれる長谷観音の霊験を励みにJリーグ入りを目指す。

 奈良クラブは1991年に設立。日本フットボールリーグ(JFL)に加盟しており、関西のサッカークラブでは強豪だ。Jリーグ入りを目指して奮闘中。JFL加盟団体がJリーグJ3に入るにはいくつかの条件があるが、まずはJFLで上位の成績を残すのが絶対条件。試合で全力を尽くすために、精神集中を身につける一環として写経を体験することとした。川俣海淳寺務長は「今年はすごい成績と伺っている、ぜひ頑張っていただきたい」と激励。

 寺務所では選手もサポーターも心静かに「延命十句観音経」を写経。42文字のお経だが「そうとう集中した」「スッキリしました」と選手たち。「はねが綺麗にできた時は嬉しいかな」と笑顔も見せた。

 続いて、1200個の風鈴が「観音の恵みの風」を受けてリンリンと鳴る中、リラックスして本尊の元へ。クラブのメンバーはこの日を前にあらかじめ風鈴を奉納。特製されたサッカーボール型の短冊には「優勝!」「毎試合無失点!」といった願いが書かれ、闘志をみなぎらせた。

 吉田敬岳法務執事の導師により、全力を発揮できることを祈願する法要が営まれた。奇しくも本尊・十一面観音菩薩と、サッカーが11人での競技なことには共通点も。本尊の足に触れられる長谷寺は、選手たちにとって強力なパワースポットとなったようだ。

 奈良クラブはこの後19日の試合に勝ち、JFL16チーム中首位となっている

2022/8/11 比叡山宗教サミット35周年 雷鳴と豪雨 山上式典を中断 「気候変動を実感」参加者


午後3時半、鐘の音と共に平和の祈りが捧げられた 稲光と雷鳴、豪雨となった8月4日の比叡山宗教サミット35周年の式典。比叡山山上で午後3時に開式し、同5時頃までの予定だった世界平和の祈りの式典は、あまりにも激しい雨と雷のため中断となり、午後4時前に中止を宣言した。「気候変動と宗教者の責務」をテーマに開かれたサミットだが、猛暑続きと突然の雷雨に、「気候変動を身近に感じた」と参加者は口を揃えた。そうした中で環境重視型のライフスタイルへの転換を求めた「比叡山メッセージ2022」が発表された。午前中の国立京都国際会館での開会式典・記念講演・シンポジウムは予定通り行われた。主催は「世界宗教者平和の祈りの集い」実行委員会(委員長=阿部昌宏・天台宗宗務総長)。(続きは紙面をご覧ください)

2022/8/11 第36回全国仏教保育北海道大会 「連なる生命」テーマに開催 生命尊重の保育、深化の場に


4年ぶりに開催された全国仏教保育北海道大会の開会式 (公社)日本仏教保育協会(日仏保/髙山久照理事長)は7月29・30日、北海道札幌市のカナモトホール等を会場に、第36回全国仏教保育北海道大会(野村定弘実行委員長)を開催。大会テーマ「連(つら)なる生命(いのち)」のもと、基調講演や分科会を通して、日仏保が標榜する「生命尊重の保育」の意味を深めた。

 全国大会は平成30年の愛知大会以来4年ぶり。コロナ禍のため、各会場の定員を50%に設定するなど感染対策を図っての開催となった。来賓をはじめ全国の仏教系保育園、幼稚園、認定子ども園の職員ら約450人が参加した。

 開会式では北海道の自然や動物の映像を背景に、北海道出身で和太鼓・津軽三味線二刀流演奏家の木村善幸氏のパフォーマンスで参加者を歓迎。

 日仏保名誉会長の八木季生・浄土宗大本山増上寺法主(当時)の代理で同寺執事の巖谷勝正氏が式辞を述べ、「幼児期の間に仏教情操教育のもとに人格形成がなされることは非常に大切である」という八木名誉会長の言葉を紹介したうえで、「本大会で研鑽を積み、それを現場で活かしていただきたい」と呼びかけた。

 大会委員長の髙山理事長は仏教保育の原点である釈尊の教えにふれ、「自分のいのちと他のいのちの連なりに気づくことが大事」と指摘。新型コロナウイルスの影響で対面での関わりが減少し、気候変動、紛争や人権侵害、貧困など多岐にわたる問題を抱える社会にあって、「これらを解決に導き、持続可能な社会の担い手となる子どもたちを育てるためには、慈悲と智慧を基調とする仏教保育の実践が重要である」と意義を強調した。

 実行委員長の野村氏は北の大地で開催される大会参加を歓迎し、「2月の末から東欧で想定外の悲しい状況が続いている。今一度、命の尊さ、命の意味を問い直すことは今日的意義がある。生命尊重の保育の更なる実践、深化の場となることを」と期待した。 

 来賓祝辞では北海道の鈴木直道知事(土屋俊亮副知事代読)、秋元克広札幌市長(ビデオメッセージ)、自民党衆議院議員の和田義明氏、全日本仏教会の尾井貴童事務総長が幼児保育・教育の実践に敬意を表し、大会の成功を念願した。

 開会式は「私たちは、いま子どもたちと、生き生きと過ごすなかで生命の輝きを体現すること、そこに、共に生きることの喜びを誓い」とする大会宣言が読み上げられ締めくくられた。

 初日は、釈徹宗氏(相愛大学学長・本願寺派如来寺住職)が「仏教と保育のケミストリー」と題し基調講演。大会テーマのもと釈氏、本田優子氏(札幌大学教授)、今津秀邦氏(写真家・映画監督)が北海道のアイヌ文化や自然や動物の姿から「生命」を多角的に語った。シンガーソングライターで本願寺派教恩寺住職のやなせななさんによる記念公演「悲しみの先に開かれる世界」では、ガンを克服した体験、東日本大震災の支援活動を語り、味わい深い歌声をホールに響かせた。2日は市内のホテルロイトン札幌、かでる2・7を会場に11分科会が行われた。

2022/8/11 大本山増上寺 新旧法主そろって入退山 八木氏から小澤氏へ血脈相承

 
三解脱門前で開門の作法を行う小澤氏 東京都港区の浄土宗大本山増上寺で1日、新法主の小澤憲珠第89世(80)の入山式と、7月31日に法主を退任した八木季生第88世(93)の退山式が合わせて執り行われた。1993年に総本山知恩院(京都市東山区)門跡に転董した中村康隆第85世以来、生前に法主が退任するのは29年ぶりで、参列者約120人は両法主がそろった極めてまれな入退山式で、念仏の相続を喜んだ。

 同寺によると、中村氏が退任した際には今回のように合わせて行われる入退山式はなかった。1978年にその2代前の大野法道第83世が生前に退任した際も同じく執行されておらず、こうした形の式は近年では例がないという。

 大殿での退山式中に、開山堂で聖聰上人ら先師に就任を奉告した小澤氏は、自坊・極楽寺(東京都八王子市)の関係者ら約60人と列をなし、三解脱門前に進んだ。開門の作法を行いくぐり抜けると、楼上から散華が降りそそいだ。

 大殿では、徳川宗家次期当主の徳川家広氏が総代代理として八木氏に花束を贈呈。友田達祐執事長が感謝の言葉を伝え、2008年の法主就任から宗脈と戒脈を授けた加行道場成満者800人超が教師として活躍しているとし、「八木台下の大いなる足跡は、浄土宗850年の歴史に残る偉大な功績。心から敬意を表します」と述べた。

 退山式が終わり大殿に入堂した小澤氏は、八木氏から授与された払子を手に入山式を営み、「浄土宗の伝統、増上寺の血脈をお手次ぎさせていただいた」と法主の継承を告げ、「身の引き締まる思い。八木台下の思いを受け、大本山増上寺の念仏道場としての伝統を受け継いでいく」と誓った。

 晋山式の日程は未定。

 小澤法主は1941年生まれ。大正大大学院博士課程満期退学。同大名誉教授。同大副学長・浄土宗学監を務めたほか、浄土宗総合研究所所長など要職を歴任した。八木氏の退任に伴い、6月に法主に推戴された。任期は1日から4年間。

2022/8/11 大本 ゲノム編集に見解 未来への禍根を憂慮し宗教者らの機関設置提言 


 大本教学委員会は7日に発行された教学研鑽誌「まつのよ」第9号で「『ゲノム編集』についての見解」を公表した。ゲノム(生物の遺伝子情報)を操作して食用や医療用などの動植物の育成に利用する技術「ゲノム編集」について、宗教的、倫理的観点から慎重な検討を求めるもの。

 見解は、大本が従来から遺伝子組み換え技術について「科学の暴走」として警鐘を鳴らしてきたことを踏まえ、「ゲノム編集技術については、遺伝子組み換え技術よりもはるかに研究・開発期間が短く、将来的な安全性の確認も極めて不十分なことは明らかである」と指摘。現在の日本ではゲノム編集が施された作物・食品に表示義務はないが、子孫の健康に悪影響を及ぼす不安が拭えない以上、国民の知る権利として遺伝子組み換え食品と同様の表示義務を果たすべきとした。

 また医療への応用に際しても医療関係者はリスクの説明責任があるとしている。生態系への不可逆的な影響も危惧。科学者だけでなく倫理学、社会学、哲学、宗教学、市民代表や宗教者を含めた幅広い分野の専門家による公的機関を設置し、国民的議論を積み重ねなければならないと提言している。

 人間が恣意的に行うゲノム編集は自然の摂理とは異なり、自然界に異変をもたらす危険性や万物の神性を損なう恐れがあるとし、「私たちの生命を守り育てて下さる大地のご恩に感謝を捧げ、神意(宇宙の意志)に従うまことの生き方ができるよう共に祈り、人類および全生物の未来に禍根を遺すことがないよう、『真の科学』の発展を期待するものである」としている。

 宗教教団がゲノム編集に見解を出すのは異例。2018年12月に日本宗教学会など3学会は「ゲノム編集による子どもの誕生についての声明」を発表している。

2022/8/4 水月会ウクライナ支援 大使館訪れ200万円寄託 日本で負傷者のリハビリに


コルスンスキー大使(中央)と中島支援委員長(左)。右から本多住職、松原氏。左端は小泉氏 アジア各地で小学校建設など教育支援を行っている(一社)水月会(事務局=東京都品川区、来福寺内)は7月29日、都内のウクライナ大使館を訪れ、セルギー・コルスンスキー大使に支援金200万円を寄託した。大使は感謝すると共に用途について負傷者のリハビリに充てたいと話した。

 訪問したのは水月会理事でウクライナ支援委員長の中島真成氏(浄土宗梅窓院住職)、同会理事の本多隆法氏(真言宗智山派来福寺住職)および、橋渡し役を担った同会顧問で衆院議員の松原仁氏と元衆院議員の小泉俊明氏の4人。

 中島氏からコルスンスキー大使に支援金が手渡され、大谷暢顯・水月会名誉会長(東本願寺第25代門首)から寄せられた「一日も早くこの戦争が終わり、貴国の方々が安らぎを持って生活できる日々が訪れるようご祈念申し上げます」とのメッセージを紹介した。

 大使は「心からお礼を申し上げます」と謝意を示しつつ、「ウクライナには平和以外の目的はない。しかし残念なことに毎日のように民間人の殺害が続いている。その理由もわからないことが多い」と顔を曇らせた。「ロシアに期待するのは、殺すことを止めて撤退してください、ということだけです」と話した。

 大使は「ウクライナから二人ほどの負傷者を日本に連れてきたい。その方のリハビリや治療費に支援金を充てたいが、そうした用途でもよろしいのか」と尋ねると、水月会側は「大使館にお任せします」と返答。安堵した表情で大使は「日本のリハビリはレベルが高い。リハビリ後は、(その人に)社会で貢献させてもらいたい」と話した。

 本多理事は避難民一家族(3人ほど)を自坊の客殿で受け入れる用意があることを伝えると、大使も大きくうなずき、感謝した。

2022/8/4 第56回仏教伝道文化賞 本賞 田中昭德氏・聖観音宗浅草寺貫首 奨励賞 東大寺福祉事業団・奈良市 


 (公財)仏教伝道協会(木村清孝会長)は7月28日、都内の仏教伝道センタービルで第56回仏教伝道文化賞選定委員会(大久保良峻委員長・早稲田大学教授)を開き、本賞に聖観音宗浅草寺(東京都台東区)の田中昭德第二十八世貫首(90)を選定したと発表した。半世紀以上にわたり多くの仏教音楽を作曲したほか天台声明の普及、浅草寺での活動などが評価された。沼田奨励賞には社会福祉法人東大寺福祉事業団(奈良市、富和清隆理事長)が選ばれた。
 
 仏教伝道文化賞は国内外を問わず、仏教関連の研究や論文、美術や音楽、仏教精神を基に活動する実践など幅広い分野で仏教精神と仏教文化の振興と発展に貢献した人物や団体に贈られる。平成24(2012)年度からは 今後の活動が期待できる個人や団体に贈る「沼田奨励賞」が設けられた。

 本賞の田中貫首は昭和7年(1932)生まれ。武蔵野音楽大学を卒業。浅草寺で僧籍を取得。仏教讃歌の作曲やコーラスを中心とした仏教音楽の振興、さらに能・狂言のルーツとされる天台声明の普及に努めた。

 また大正大学音楽部混声合唱団を草創期から指導し、第22回仏教伝道文化賞を受賞した伊藤完夫氏(1906~2005)と共に戦後の仏教讃歌を支えてきた。

 奨励賞の東大寺福祉事業団は聖武天皇1200年御遠忌記念事業として昭和30年(1955)に設立され「東大寺整肢園」の開園をみた。奈良仏教の伝統と華厳の教えを背景に、難病の子どもとその親が家族となる縁を大切にし、親子である喜びを実感できるよう支援し、いのちの尊さを伝える活動を続けている。

 贈呈式は10月27日午前11時から仏教伝道センタービルで。受賞者には記念品及び賞金(本賞500万円、奨励賞300万円)が贈られる。


 受賞者の声
 

浅草寺・田中昭德貫首 仏の教えを音楽と共に

 諸大徳・諸先生方もお受けになっているこの賞を、不肖の私が頂戴する報に接し、最初は他の方の間違いではないかと思いました。過分な賞を頂戴し、大変恐縮に存じております。またこの報をいただきました折、昭和51年(1976)に、当山第二十四世貫首・清水谷恭順大僧正が、協会様から「功労賞」をいただいたことを、あたかも昨日のように思い出します。

 私は学生のころから音楽と親しんできました。仏様を讃嘆する音楽・声明は、それを聞く人のみならず、歌う人・唱える人・演奏する人も含めて、大勢を仏様の世界にいざないます。今回の栄誉を頂戴しまして、これからは、時代に即した「仏様の音楽」のお届けの方法を、積極的に模索していく必要があると痛感しております。他方、浅草寺には国内外から多くの方がお参りにいらっしゃいます。そのすべての皆様が、心の平安、安心、やすらぎを得てお帰りになれることを、私のみならず、一山住職・職員一同ともに、胸に刻みながら日々つとめております。その日常をご評価いただいたと思われ、只々有難いことです。

 この度賜りました栄誉は、「皆様のために、これからも怠らずに努力せよ」とのお言葉であると受け止めさせていただき、今後も微力ながら音楽を通しての伝道と、浅草寺での布教にまい進する所存です。


東大寺福祉事業団・富和清隆理事長 難病家族が楽しむ

 伝統ある賞を受賞させていただき、とても名誉なことだと感謝しております。ささやかな活動ですが、10年余り自分たちにできることを続けてまいりました。

 難病の子どもたちとそのご家族は、ケアだけで精一杯の毎日をおくっています。命があることの感謝を常に感じるご家族に一緒に楽しんで大切な時間を共有してもらうレスパイト事業は、平成22年(2010)から第1回が始まりました。事業を大きくすることより、背伸びをせずに自分たちができる範囲のことを続けていくことを心掛けてきました。

 千年以上の歴史のある仏教の教えや大仏さまに触れられる東大寺は、命の大切さを感じているご家族にとっても、大切な時間を一緒に過ごすのに相応しい場所です。受賞を励みに、今後も1回1回をできるだけ丁寧に行うことを大事にしていきたいと考えています。

2022/8/4 熊野・天台宗那智山青岸渡寺/西国霊場第一札所 中興9世 髙木亮英住職が晋山 那智の滝から慈悲心発信


智英副住職㊨と共に那智山信仰の唱導実践に邁進すると誓う髙木住職 世界遺産・西国観音霊場第1番札所の天台宗那智山青岸渡寺(和歌山県那智勝浦町)で7月24日午後、中興第9世・髙木亮英住職(72)の晋山式が営まれた。髙木住職は陽光に輝く那智の大滝を臨む本堂で、那智山での1千日の修行をし西国観音霊場を中興した花山法皇の法具を継承。「観音様の慈悲の心とは、人に対する思いやり、慈しみ、優しさの心。(大勢の人が)観音様にお参りすることで、平和な明るい和やかな社会になることを願う」と述べ、那智山信仰のさらなる唱導実践を誓った。

 髙木住職は、約1700年前にインドからの渡来僧・裸形上人(同寺開山)が観音菩薩を感得した那智の滝を拝しながら、熊野山伏や天台宗高僧と共に信徒会館から本堂まで進列。多くの参拝者が見守る中、堂内に入った。(続きは紙面をご覧ください)

2022/8/4 日本研究国際賞受賞 ロベール氏が講演 釈教歌が仏教を日本化


日本に仏教文化が息づいていると話したロベール氏 日本文化研究機構(東京・虎ノ門)の第3回日本研究国際賞授賞式が7月21日、受賞者のジャン=ノエル・ロベール氏(72)が在住するフランスと日本学士院(同・上野公園)をオンラインで結んで開かれた。

 同賞は海外を拠点に、日本に関する文学や言語、歴史など人間文化研究で成果を上げ、日本研究の国際的発展に貢献した研究者が対象。昨年11月に受賞が発表された。ロベール氏はコレージュ・ド・フランス教授で、フランスの日本仏教研究の第一人者として知られる。

 授賞式では選考委員長の野家啓一・東北大名誉教授がロベール氏の業績について、天台宗の教理研究などで欧州の仏教理解に寄与したほか、釈教歌を通して宗教と文学の連関を明らかにしたと評価。漢文の役割をラテン語と比定し、俗語と対比される聖語という「ヒエログラシア(聖語論)」の観点から斬新な比較文化論を展開するなど独創的な研究を進めていると紹介した。

 同機構長の木部暢子氏は「ロベール先生の幅広い業績は授賞にふさわしい」と祝し、読み上げた賞状を披露した。記念品のメダルとともに、同賞を支援するクラレ財団代表理事の藤波智氏から賞金2万ドルが贈られた。文部科学省研究振興局長の池田貴城氏と、国際日本文化研究センター名誉教授の末木文美士氏が祝辞を寄せた。

 記念講演したロベール氏は、コレージュ・ド・フランスの初代日本学講座教授を務めたベルナール・フランク氏の薫陶を受け、日本に仏教文化が色濃く息づいていることに感激したという。川端康成がノーベル文学賞の受賞記念講演で発表した『美しい日本の私』を挙げ、「日本文学と日本仏教の統一性を唱える声明のようだ」と話した。

 漢文を通して東アジアの仏教世界がつながっていることに着目したロベール氏は、仏教思想に基づいて詠まれた和歌「釈教歌」が、大陸から伝わった仏教を日本化する仲介役となったとし、「この言語的展開は偶然でない。日本の文化とともに生じた運命的なもの」と強調。神仏習合のもと、聖なる言葉である和歌を基盤に、日本語が漢文を表すことができ、さらに漢文を超えて梵語とつながる思想だと述べた。

 こうした日本の聖語論をユーラシアの文化圏に適用したいと意欲を見せ、「日本の現象をモデルに、ほかの言語や文化を検討している」と語った。

7月

2022/7/28 <カルト2世 宗教2世 信仰と離反の中で> どうしていいのかわからない2世たち 楠山泰道・日蓮宗大明寺住職


 今回の容疑者はもちろん加害者であるが、それと同時に被害者でもあると思う。今回の件に限らず辛い思いをしているカルト信者の2世は、常に言葉にならない思いでいるのだろう。問題のある宗教の中でも、特に統一教会は全財産を献金し、借金までして献金させられるケースがある。お金の面だけでなく、合同結婚式で韓国に嫁ぎ、大変な目にあう日本人女性も多い。人権を無視された行動を取らされ、人生を失うような被害もある。

 しかし、これは以前からあったことであり、その警告も再三ずっと行われてきた。あってはならないことだが、そのことを承知で政治家がそのような団体を利用している状況が、今回の件で広く知られるようになった。

 今回、2世の問題もより注目されるようになった。これは統一教会だけではなく、社会常識から逸脱した教団の中だけで育った子どもたちは、生活の中で自然と教団の教えを身につけ、それがトラウマや後遺症になることがあり、状況はケース・バイ・ケースで様々だ。

 私が相談を受けたケースでは、親や兄弟が信者で、自分で結婚相手を決めたいと教団から逃げようとして親兄弟から反対された方がいた。最後は教団にこの方は信者ではないとの証明を出させることができたが、これはまだ良いケースだろう。

 私の所に相談に来るのは、入信した者の親や本人が多い。信者2世の相談者は少なく、ここ数年に2、3人だ。生まれながらにカルトの環境で育ち、しがらみが多く、どうしていいのか分からない、仕方なく自分の中に秘めている2世が多いのだと思う。

 一部のカルト的な教団により、宗教全体が問われる状態になりつつある。カルトのような人の心を壊す宗教もあるが、人の心を救うのもまた宗教ではないか。宗教家はカルトに対して法律違反を問えなくても、宗教として間違っている〝宗教違反〟だと、きちんと言える宗教家でなくてはいけない。(日本脱カルト協会元代表理事)

2022/7/28 <カルト2世 宗教2世 信仰と離反の中で> 向き合う力失っていないか 瓜生崇・真宗大谷派玄照寺住職


 安倍元首相暗殺事件。その動機が安倍元首相と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わりにあった。社会はこのカルトのことを長く忘れていたが、被害はその間も続いている。伝統キリスト教団の一つである日本基督教団はこの問題に地道に取り組んでおり、今も少なくない牧師が支援活動を継続している。

 対して我々伝統仏教教団は、あのオウム事件から今に至るまで、ほぼ何もしなかったと言っていい。それどころかあんなのは仏教ではないと、あくまで自分らとは無関係との態度をとり続けた。自分たちは歴史ある伝統仏教教団だと驕り、今もなおカルト問題などどこか遠い国の出来事だと言わんばかりである。

 伝統仏教教団は本当にカルトとは無関係なのだろうか。振り返ってみれば、我々は歴史の中で様々な弾圧に関わり、人を支配し、国家の戦争に協力し、現代でも修行道場でのいじめや職員のパワハラ、差別問題など、実はカルトにつながる様々な問題を積み重ねてきた。宗教的救済と紙一重のところに存在する人間の深い闇を、我々はその歴史から十分に知っているはずなのである。

 しかしそれ以上に深刻な問題は、その「宗教的救済」の核心を、現代の仏教教団が失いつつあることだ。敷居を下げる、門戸を開くといった大義名分の元、わかりやすくありがたい、癒やしやヒューマニズムの延長のような教えばかりがもてはやされる。そしてすっかり宗教としての深みを失い、真の救済を求めてカルトに入る人たちの気持ちも、わからなくなってしまった。

 結果としてカルトの問題に怒ったり、入った人の被害を哀れむことは出来ても、信者個人の信仰に寄り添い、その宗教的問題に踏み込むことはできないままである。伝統と権威に依存しきって、宗教であることを放棄しつつある我々は、本当はカルトに無関心なのではない。それに向き合う力を失っているだけなのだろう。(瓜生氏は親鸞会脱会後、カルトの脱会支援活動に尽力する僧侶)

2022/7/28 「尼僧サンガの現在と未来」韓国ハンマウム禅院で世界の尼僧や研究者が発表 


ハンマウム禅院で開催された学会に参加した尼僧や研究者 韓国曹渓宗のハンマウム(一心)禅院が主催する「世界の仏教尼僧サンガの現在と未来」をテーマとした学会が、6月17日から20日まで同国・安養市の同院本部で開催され、世界各地の尼僧や研究者が集った。学会では前半2日間で13人の尼僧や研究者が韓国・日本・台湾・ベトナム・タイ・スリランカ・ミャンマー・チベットの尼僧の歴史や現在の活動を報告した。

 日本からは全日本仏教尼僧法団(笹川悦導理事長)の推薦で浄土宗の日比野郁皓氏、天台宗の緑川明世氏が参加。このほかゲストスピーカーとして、日本仏教の尼僧をテーマに中世日本研究所のモニカ・べーテ所長、ドイツ・テュービンゲン大学からモニカ・シュリンプ教授が発題した。またイギリス・ランカスター大学の川並宏子教授も参加し、ミャンマーの尼僧について発表。世界の尼僧サンガの歴史と多彩な活動をみせる現状からその未来を展望した。学会の様子はユーチューブでも配信した。

 世界の尼僧や研究者が集まった韓国ハンマウム(一心)禅院での学会は、同院創始者の比丘尼、大行(テハン・クン)大和尚の遷化10周忌を記念して開催された。大行大和尚は1972年にソウル市の南に位置する安養市にハンマウム禅院を建立し、日常生活で実践できる仏教を布教。現在も多くの比丘・比丘尼の弟子たちが活躍している。

 コロナ禍での開催ながら、世界各地の尼僧と研究者が集い、渡韓できなかった台湾の尼僧はオンラインで発表した。


2氏が日本仏教の現状報告 エネルギー溢れる韓国仏教 上座部では比丘尼が増加

学会で発表した日比野氏(左)と緑川氏 日本から参加した日比野郁皓氏は「浄土宗寺院で生まれ育ち僧侶になった私」と題し発表。寺院に住職家族が暮らし、子息が弟子となって後継者になることが多いことや、檀家制度や先祖供養の習慣など日本仏教の現在を紹介。浄土宗の教師養成課程について自身の修行体験をもとに説明したほか、国際協力活動や寺院で開くコンサート、舞台等の文化活動も報告した。

 緑川明世氏は在家出身で天台宗僧侶として活動する自身の歩みを紹介。アメリカでチベット仏教の高僧に出会い「仏教は人生をより良く生きる為の教え」と学び、仏門に入った緑川氏。「女性と仏教関東ネットワーク」「国際仏教文化を学ぶ会(ILAB)」など女性仏教徒の会の活動をはじめ、ラジオ放送、リトリートや写経を通した布教、精進料理やお茶会などの実践について話し、「日々の暮らしの中で実践できる方法を伝えてゆくことがより良い未来につながる」と展望した。日比野氏は木魚とお念仏、緑川氏が声明を披露して会場を和ませた。

 韓国仏教における近年の比丘尼の活躍をはじめ、北米出身でチベット仏教や韓国仏教を学び、米国でセンターを作って活動する事例、上座部仏教のスリランカやタイにおける近年の比丘尼サンガや女性仏教徒の増加とその活動など、多岐にわたる発表がなされた。

 昼食は信徒らが韓服で正装し、伝統的な食材を使った彩り豊かで美味しい精進料理でもてなした。学会に向け昨秋から準備が進められ、全発表者の資料は英語と韓国語に翻訳して冊子として配られ、当日は英語と韓国語の同時通訳が入った。

 日比野氏は「多くの方が働かれて、温かく迎えてもらった。信者の方のエネルギーが素晴らしく、若い尼僧さんが育っている姿に勉強させてもらった。また他国の発表者からは日本仏教の持つ〝伝統〟がうらやましいという声も聞き、歴史の重みや大切さを改めて感じた」と話した。緑川氏は「どなたの発表内容も机上の研究にとどまらず、それぞれのフィールドで、現実社会の問題と真摯に向き合っている様子に共感した。またその活動の動機となる仏陀の教え、慈悲と菩提心に育まれた智慧に基づく活動の先に未来があるのだと思う」と充実の学会を振り返った。

 学会後半の2日間は世界遺産の古都慶州の通度寺、仏国寺と石窟庵、ハンマウム禅院の蔚山(ウルサン)・釜山(プサン)・晋州(ジンジュ)の各別院や曹渓宗の僧侶が学ぶ東国大学を巡る巡礼ツアーも行われた。

2022/7/28 尼崎市西正寺 お寺でトランスジェンダー講座 当事者が複雑な体験語る 〝自己肯定感育めない〟


西田氏(左)と仲岡氏、中平住職が座談 兵庫県尼崎市の浄土真宗本願寺派西正寺(中平了悟住職)で17日、トランスジェンダー(LGBTのT)について考える公開講座が開催された。同寺が取り組む地域に開かれたお寺として人生や社会を考えるプロジェクト「テラハ」の一環。男性から女性に性別変更した当事者の西田彩氏(大谷大学非常勤講師、音楽家)が、トランスを理解する基礎知識を講演した。

 トランスジェンダーは主に、出生時に(外性器の確認だけで)割り当てられた性別とは「異なる性自認の人、あるいは異なる性別で生きている・生きようとしている人」と説明される。西田氏はジェンダーアイデンティティ(性同一性・性自認)は「トランスだけでなくすべての人の根幹にかかわること」と前置きした上で、ポイントとして場所や状況が変わっても一貫して同じ自分であるという感覚「斉一性」、昔の自分から今の自分へ大きく成長・変化していく中でも同じ自分であるという感覚「連続性」を指摘した。

 そういう斉一性と連続性のなかで自己のジェンダーアイデンティティを確立するが、トランスの場合は「社会の中で望まない扱いを受け、否定や矯正、いじめや『あなた男の子でしょ、そんなことをしちゃいけません』といった禁止を受ける。そうすると自分の内的な感覚を表現した自分と違うものとして扱われてしまう。自分の斉一性がそこで途切れてしまう。なんで自分を発揮したら自分のありかたが否定されるのか、特に幼少時などは全く意味不明で、ジェンダーアイデンティティが確立できず、自己肯定感を育めない」と、その苦しみを解説。

 トランスジェンダーはしばしばメディアでは「心の性と体の性が異なる人」と説明されるが、西田氏はこれを「何一つ合っていない」と一蹴。世間に説明する上で「アイデンティティ」などの言葉よりわかった気になるから使われているに過ぎないため、「マジョリティが理解可能なジェンダー規範の中に位置づけられてしまう。ピンクが好きだから心の性は女だね、などと解釈される危険性がある。当事者の持っているジェンダーの複雑な体験は置き去りにされる」とし、個人の体験を塗りつぶしかねない危険性には注意を向けた。

 その上でトランスジェンダーは抽象的な思考実験の題材ではなく、「身近に暮らしているリアルな人間」だとし、デマやフェイクに流されず正しい知識を得ていくことを促した。後半では西田氏と、同じくトランス当事者の仲岡しゅん弁護士が自身の性別移行の経験を振り返った。司会は中平住職が務めた。

2022/7/28 全生庵鉄舟忌 何が起こるか分からない 安倍氏死去で平井住職


参列した石破氏(右)と平井住職 維新の志士・山岡鉄舟居士(1836~88)の年忌法要「鉄舟忌」が命日の19日、東京・谷中の菩提寺・臨済宗国泰寺派全生庵で営まれた。かつて鉄舟忌に参拝し、同寺に参禅もした安倍晋三元首相の訃報に触れた平井正修住職は「人間は何が起こるか分からない。心に念じながら生きていかねばならない」と心境を語った。

 平井住職は続けて、「いつなんどき、われわれの身に難儀が降りかかるかもしれない。そのときになってからでは遅い。平素の心がけが大切だ」と述べた。努力の人だった鉄舟居士の言葉「学びて成らざるの理なし。成らざるは自ら為さざるなり」を引いた上で、鉄舟居士が亡くなった53歳をとうとう超えたとし、「愕然としている。自分が54歳になって、鉄舟先生が成し遂げたことの大きさを改めて感じている」と話した。また本堂屋根の修復が今春に完了したことを報告し、感謝を伝えた。

 江戸無血開城の立役者として知られ、勝海舟らとともに「幕末三舟」と称される鉄舟居士。一刀正伝無刀流を開いた剣の達人は禅を重んじ、剣禅一如の境地を求道した。法要には衆院議員の石破茂元自民党幹事長や亀井静香元衆院議員ら鉄舟居士を慕う政治家も参列。遺徳を偲ぶ諷経が読誦される中、参拝者約70人が香を手向けた。

 石破氏は昨年の鉄舟忌の1年後に、「こういう世の中になっているとは誰も思わなかった」と安倍元首相の死去に言及。「晴れてよし 曇りてもよし 富士の山 もとの姿は 変らざりけり」との鉄舟居士の言葉について、「人がなしたことは周りの評価はどうであれ、変わらないということ」と述べ、「その人自身が一番よく知っている。物事が起こったときに、一体なぜこうなったのか議論することが大切だ」と語った。

2022/7/21 安倍元首相銃撃事件 霊感対策弁連が会見 旧統一教会の説明に反論 政治家のダミー組織支持姿勢も批判


会見で岸信介など要人と握手を交わす文鮮明教祖の写真を提示して説明する山口弁護士 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による被害者の救済に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会は12日、都内で会見を開いた。安倍元首相への銃撃事件で、母親が旧統一教会へ多額の献金をして家庭が崩壊したことを恨んだ上で、容疑者は安倍元首相が同団体を支持していると考えていたという報道を受け、政治家が「統一教会やそのダミー組織の活動について支持するような行動は厳に慎んでいただきたい」との声明を発表した。

 声明では、今回の犯行は「いかなる理由があろうとも決して許されない」との前提に立ちつつ、安倍元首相が統一教会と創立者が同じ天宙平和連合(UPF)などのイベントにメッセージを発信したことに触れ、2012年に死去した文鮮明教祖の後継である教祖の韓鶴子氏に「敬意を表します」と述べていたことについて「統一教会のために人生や家庭を崩壊あるいは崩壊の危機に追い込まれた人々にとってたいへんな衝撃でしたし、当会も厳重な抗議をしてきた」としている。安倍元首相へは昨年9月に抗議文を提出したが、「受け取りを拒否された」という。

 同連絡会は、旧統一教会が開いた会見の内容にも言及。別団体というUPFはダミー組織として統一教会とは「明らかに一体」とし、2009年以降、献金トラブルはないとの説明には、その後も訴訟があり、「今も続いている」と反論。昨年も3億3千万円以上の被害があったと批判した。

 会見では、旧統一教会の元2世信者が合同結婚式や家族が崩壊した体験を明かし、「犯人のしたことは何一つ擁護しないが、統一教会に人生を壊された身としては、(辛さは)分かる」と話した。安倍元首相と統一教会との関係について問われると、教会=安倍元首相という認識はなかったが、信者にとっては「大物政治家とつながっていることは、やっぱり(教祖は)メシア(救世主)なんだという思いにさせられてしまう」と語った。

 同連絡会は、旧統一教会と政治との関係性について、選挙での人手の応援や信者が秘書として国会議員の事務所に入ることもあるとし、秘書を務めた信者が地方議員になるケースもあると指摘。山口広弁護士は政治家と旧統一教会との間に「利用し利用される関係があった」とし、「政治家の皆さんもこのような団体とエールを交換することは本当に慎重に考えてほしい」と訴えた。

 紀藤正樹弁護士は「この50年で厖大な被害者が積みあがってきた中での今回の事件であることを十分にご理解いただいて、今回の事件だけを表面的に扱ってほしくない」と述べ、オウム真理教事件を振り返りつつ、「(日本社会はカルトに対し)いまだに総括ができていない。カルトをどう考えるのか、宗教が善だけでなく、場合によっては人的被害を生み出すことを真剣に考えないといけない時期に来ている。与野党を問わず考えていただきたい」と話した。

【解説】宗教界にカルト2世の受け皿を

 安倍元首相銃撃事件で明らかになってきたのが、容疑者の母親が旧統一教会(現家庭連合)に1億円を献金し、容疑者の人生に強い影響を及ぼしたことだ。それが犯行の強い動機になっている。ここにカルト2世の問題が潜んでいる。

 両親が合同結婚であれば子ども(祝福2世、カルト2世)の問題 親の統一教会信仰と価値観(教義)のもとで育ち信仰を受け入れるものの、成長過程で恋愛禁止などの制約に疑問を抱いたり、親の存在が疎ましくなったりする。その思いをどこにも打ち明けられず、自死を考える人もいる。家を飛び出すと収入がなく、生活がおぼつかなくなったりする。

 親が信仰に熱心なあまり家庭を顧みないカルトの2世問題 いわゆるマインドコントロールや、ジャーナリストの藤田庄市氏が言うところの「スピリチュアルアビュース」(信仰虐待、霊的虐待)により、教団から離れられない。献金が強制され、それに従ったりする。未成年の子どもが、親の信仰に疑問を持っても、それを止めさせるすべを持ち得ない。親の信仰によって心身を害した2世たちは総じて社会から疎外されていると感じている。そうした人たちが駆け込める場所が宗教界にあるとは言いがたい。宗教界としても受け皿や相談窓口が必要ではないか。

 一般的な宗教(信仰)2世 幕末維新期、あるいは戦後に伸長した新宗教に属する人たちは、そのほとんどが両親や祖父母からの信仰2世、3世、4世である。こうした教団は社会との接点もあり、先鋭化することはない(いわゆる制度化)。今回の事件と一般的な宗教2世を同一視することは避けたい。また宗教活動が萎縮しないことを望みたい。

 2世を受け入れる 鎌倉の祖師方のように、時代によっては、宗教は権力や社会と相反する価値観を提供する。それは宗教の魅力の一つでもある。しかし他人を騙し、人権を侵害することは、どんな宗教でも容認できるものではない。カルト1世、2世はその被害者という側面もある。

 今回の惨劇の背景にはカルト宗教問題が横たわっている。しかしそうしたカルト2世を孤立させず、誰であろうと分け隔てなく受け入れる態勢が宗教界に、社会に求められよう。(工藤)

2022/7/21 高野山金剛峯寺 次期座主に長谷部氏 山外から20年ぶり就任


長谷部氏 高野山真言宗総本山金剛峯寺(和歌山県高野町)の葛西光義座主(同宗管長)が11月14日に任期満了を迎えるのを受け、4日に発令されていた次期座主推戴の候補者確定公示が12日に行われた。

 宗規が定める正住職10人からの推薦を受け、推薦責任者から宗務所に届出があったのは、第2次添田内局(前内局)の総務部長で、兵庫県美方郡香美町(但馬宗務支所)・大乘寺住職の長谷部真道氏(83)のみ。候補者確定公示をもって、座主就任が事実上決定した。

 座主候補者が一人だったため、金剛峯寺座主推戴委員(宗会議員37人・宗務支所長53人・宗務支所座主推戴人25人・高野山塔頭寺院座主推戴人13人の計128人で構成)による投票は行わず、8月4日に開かれる座主推戴管理会で正式に第415世座主への就任が決まる。任期は11月15日から4年間。

 平成18年(2006)11月以降、松長有慶座主、中西啓寶座主、葛西座主と高野山内から推戴。山外からの座主就任は、同14年の資延敏雄座主(北海道旭川市・金峰寺)以来。

【長谷部氏略歴】昭和13年(1938)12月生まれ。学習院大学法学部を卒業後、高野山専修学院で行位を成満。さらに臨済宗祥福寺僧堂で山田無文老師の鉗(けん)鎚(つい)を受け、昭和42年、円山応挙と一門の作品が多く伝来することから「応挙寺」とも称される大乘寺の住職に就任。平成19年から宗会議員(1期)。平成29年に総本山金剛峯寺執行・総務部長兼内事長に就任。平成最後となった31年の東寺・後七日御修法で供僧(咒頭)を務めた。

2022/7/21 東京・北海道で核燃サイクル事業にNO 宗教者核燃裁判第4回公判 震災体験住職が陳述


聖アンデレ教会で行われた核燃裁判の報告集会。意見陳述した梅森氏(中央右)と原告団代表の中嶌哲演氏(中央左) 原子力行政の根幹にある核燃サイクル事業の廃止を求め、原子力行政を問い直す宗教者の会のメンバーをはじめとする原告団による、六ケ所村の再処理工場(日本原燃㈱)運転差止を求める「宗教者核燃裁判」の第4回公判が7日、東京地裁(霞が関)で開かれた。9日には「核ごみの地層処分に反対する宗教者の会」が札幌市内で学習会も開催。原発再稼働の声が政財界から上がっているが、将来世代の環境を脅かす核燃サイクル事業の問題が改めて指摘された。

 第4回公判では、原告側の北村賢二郎弁護士が再処理工場における日本原燃が想定する地震動評価の不合理を追及。再処理工場の基準値震動を設定するために想定された数値(震源から93キロの距離で地震動236ガル)を実際の観測記録と比較。太平洋沖地震で328キロ離れた地点でも239ガルを記録し、200キロ圏内で同基準を下回る地点がないことをあげ、苛酷事故を防ぐために必要な耐震性への重大な疑義を呈した。

 意見陳述では日蓮宗法運寺(仙台市)の梅森寛誠氏が、地元の女川原発において、東日本大震災で道路が寸断され避難が絶望的だったとし、「住民は閉じ込められると実感した」と回想。拠り所とする『法華経』から「増上慢」の言葉を引き、「驕りをもって核に手を染めるものの、後始末の方法を知らぬ愚かな体たらく。永く将来世代まで保証されるべき『命をつなぐ権利』を今後も脅かし続けるのか」と戒め、「将来の環境と世代に甚大な災いを招く」として再処理工場の速やかな廃止を訴えた。(続きは紙面でご覧ください)

北海道核ごみ反対宗教者の会 無毒化に10万から100万年

核ごみ問題について話した小出氏(右)と村上氏 北海道寿都町・神恵内村で核ごみ地層処分のための文献調査を受けて開催された9日の学習会では、元京都大学原子炉実験所の小出裕章氏と元茨城県東海村村長の村上達也氏が講演した。オンラインも含めて170人が参加した。

 1年間に広島原爆千発分の死の灰をつくる原発。小出氏は「いつか放射能を無毒化できると期待してきたができていない。埋め捨てしても(無毒化には)10万年から100万年かかる。人間、会社、国家の長さからみても途方もない時間。世界一の地震国で安全を保障できる所はない」と問題を整理し、「電気が足りなければ原発は仕方ないという方向に誘導されている。でも核ごみを作ることは悪いことです」と強調した。「電気を使う大都会が何の責任も取らず、小さな町や村に核のごみを押し付けようとしている。宗教者はどう考えるのか」と問うた。

 村上氏は1999年のJCO臨界事故を経験し「この国には原子力の推進機関はあるがブレーキ機関はない」と実感。「前へ進むには推進ばかりでなくブレーキも同時に作るものだが、人を騙し金で釣りながら進めてきた。この根性は変わってない」と批判した。

 東海村は大量の核ごみを保持し、再処理工場は解体計画もあるが「今世紀に終わらない」と原子力施設が地域に及ぼす影響を指摘。再生可能エネルギーを推進する北欧諸国を例に「北海道は森林も風も地熱もある。可能性がある」と提案した。

 質疑応答では原発再稼働や汚染水の海洋放出問題にも言及。小出氏はトリチウムを含む汚染水の海洋放出に反対し、新たな貯水タンクを設置するなど代替案も提示。一方で「事故が無くても六ケ所村で再処理して出るトリチウムを海に流すことにしていた。国は海に流す以外の方策を絶対にとらないと思う。単に福島の問題ではなく日本の原発の根幹につながっている」と核燃サイクル事業の問題構造に批判した。

2022/7/21 参院選当選者 全日仏26人 佼成会17人

    
 7月10日投開票の参議院議員選挙で全日本仏教会(全日仏)は45人を推薦し、当選者は26人だった。党派別では自由民主党13人(推薦17人)、立憲民主党10人(同18人)、国民民主党1人(同3人)、日本維新の会1人(同3人)、無所属1人(同3人)。れいわ0人(同1人)。

 立正佼成会は選挙区で38人を推薦し、17人が当選した。党派別では自由民主党3人(推薦4人)、立憲民主党8人(同18人)、国民民主党2人(同4人)、無所属4人(同10人)。日本維新の会とファーストの会は各1人を推薦したが、当選しなかった。

2022/7/14 安倍元首相銃撃され死亡 各方面に衝撃 教団から追悼声明


大和西大寺駅北口近くに設けられた献花台に多くの人が訪れ、手を合わせた(9日) 8日午前11時半頃、参院選挙の応援のため奈良市内で街頭演説中だった安倍晋三元首相が銃撃され死亡した。67歳だった。戦後日本で首相経験者や閣僚が殺害された事例はなく、各方面に衝撃を与えている。暴力による言論封殺には各界から非難の声が上がっている。逮捕された容疑者(41)は、母親が宗教団体にのめり込み多額の献金をしたため、同団体とつながりのあると思い込み安倍元首相を襲ったと供述しているという。信仰をめぐる親子間のトラブル(宗教2世)という側面もある。今後の捜査により動機と真相が解明されると見られる。

 献花へ長蛇の列

 安倍晋三元首相が襲撃され死去した翌日の9日、近鉄大和西大寺駅北口そばの現場に特設された仮設テントの献花台には長い列が続いた。警備が敷かれる中、老若男女を問わず花やお茶を次々に捧げ、合掌。事態が信じられない様子で涙ぐむ人が、「ご苦労様でした」と深く頭を垂れた。子連れで献花に訪れた人もいた。

 午後には突発的に豪雨も発生したが、列は途切れず、最長時には数百㍍となった。献花は溢れかえり、車道にはみ出すほどに。急遽別の献花台が設置された。献花台は18日まで設置される。

 日蓮宗 暴力による主張を許さず 安穏社会願う

 日蓮宗(田中恵紳宗務総長)は8日、安倍晋三元総理大臣が銃撃され、逝去したことについて「安倍元総理大臣銃撃に関する声明」を公表した。「安倍晋三元総理大臣のご冥福を謹んでお祈り申し上げます」と弔意を表し、「人命尊重の観点から、いかなる暴力による主張や訴えは断じて許されない行為であり強く非難いたします」と表明した。
 
 声明文では、経典に「一切衆生悉有仏性」が説かれていることを明示し、「即ち、すべての生きとし生けるものはそれぞれにかけがえのない『いのち』を持っているとの教えです」と説示。近年、米国でも銃による事件が続発し、人命が失われていることにも触れ、「我々は教主釈尊の説かれた法華経の教え、そして宗祖日蓮聖人の教えを基に『いのちに合掌』の精神を提唱しております。『いのち』を軽視したこのような卑劣な行為が繰り返されることのない、安穏な社会となることを願っております」としている。

 浄土宗 「浄光会」世話人務める 暴力行使反対

 浄土宗は8日、川中光敎宗務総長名で「緊急声明 安倍晋三元首相銃撃を受けて」を発表した。以下は全文。
 
 令和4年7月8日、奈良市で安倍晋三元首相が銃撃され、暴力の犠牲となりました。謹んで哀悼の意を表します。安倍氏は、浄土宗有縁の政治家による『浄光会』の世話人として、法然上人の非暴力・共生・万民平等救済のみ心を通して活動に尽力されてきました。私たちは、いかなる理由であれ銃や暴力を使うことには反対します。これまでの安倍氏の功績に敬意を表すと共に、暴力のない、人々が安心して暮らせる「ともいき」社会の実現を目指します。

2022/7/14 令和2年7月豪雨 人吉別院で三回忌を勤修 本願寺派熊本教区と県仏が共催


「希望」などの言葉が書かれた灯籠も供えられた 熊本県人吉市の浄土真宗本願寺派人吉別院で3日、令和2年7月豪雨物故者三回忌追悼法要が営まれ、YouTubeで配信された。本願寺派熊本教区と熊本県仏教会の共催。この豪雨で亡くなった全国85人(うち熊本県は関連死を含め67人)の菩提を弔った。人吉別院も境内諸堂が床上浸水で大きな被害を受けた。

 大辻󠄀(おおづし)子順紀教務所長は観測史上例のない早期の梅雨明けや、一方で梅雨がないとされている北海道での豪雨など様々な異常気象に触れ「私たちができることは、災害はいつでもどこでも起こるとの自覚と覚悟、備えておくことです」と気を引き締めた。さらに「計り知れない無数の悲しみがあり、その上に私たちが生きていられるということ、そして犠牲になられた方々の無念さや思いを背負っていく責務があるということを、次の世代にもしっかりと伝えていかねばなりません」と、被災体験を継承していく決意を示した。

 導師を務めた野村宗雄人吉別院輪番は表白で観測史上最高の水位となった球磨川水系で氾濫が起きたことなどを振り返り「私たちは自然災害の恐ろしい猛威にただ驚き、おののき、無力を感じざるを得ないばかりです。しかしこの厳しく悲しい事実に向かい合い、受け入れつつ、犠牲となられた方々は火宅無常、生死無常、愛別離苦の娑婆世界が決して他人事でないことを身をもって無辺の生死海を尽くさんとして私たちをご教導されたと了解したいと思います」と述べ、悼んだ。

 伊藤公明熊本県仏教会会長はこの法要の縁にあたり「今、私の周りにどういう方がいらっしゃるだろうか、そういう方とどう関わってきただろうか」と考えをめぐらして生きてほしいと呼びかけた。

 本願寺派布教使の藤岡教顕氏が法話した。法要は現在も視聴可能。

2022/7/14 龍谷大学GRRC 「仏教×SDGs×ジェンダー」シンポ 仏教界は意思決定に女性を


戸松氏、入澤氏、安食氏、安永氏による全体討論でこれからの課題を議論 (龍谷大学提供)  龍谷大学ジェンダーと宗教研究センター(GRRC)らが主催するオンラインシンポジウム「仏教×SDGs×ジェンダー―身近な課題から持続可能な世界を考える」が6月28日に開催された。仏教の思想からSDGsの理念や目標達成に必要な行動と意識の在り方を考えると共に、仏教界のジェンダー問題など身近な課題も議論した。約150人が参加した。

 初めに全日本仏教会(全日仏)前理事長の戸松義晴氏が仏教界のジェンダーギャップや全日仏の取り組みを紹介。加盟する主要10宗派の教団において、教師の女性割合は約10%、宗務庁職員は約27%、意思決定機関である宗派の宗議会は約2%と低水準。全日仏の審議会や委員会の委員選定では「推薦枠」を活用し女性委員を登用し4%から16%まで引き上げた。戸松氏は人口動態をみながら葬儀祭祀者や供養の担い手の多くを女性が占めるとし、「意思決定の場に女性が関わる在り方を進める。仏教の教えからしても当然だし、将来の仏教界、寺院を考えても大事」と提起した。

 龍谷大学の入澤崇学長は「仏教SDGs」を理念に掲げる同大の取り組みを発表。SDGsの「誰一人取り残さない」の理念と「慈悲」の精神の共通性をあげ、同大が「自省利他」を行動哲学として推進する「リタクション(利他とアクション)」の取り組みに言及。環境省との「地域脱炭素の推進に関する協力協定」やグリーン人材の育成、貧困問題、水田再活用、障がい者の就職支援など、社会課題を解決するソーシャルビジネスの実例を紹介した。

 続いてLGBTQやジェンダー問題に関する提言では、龍谷大学宗教部の安食真城課長が学内でLGBTQの問題に取り組む際に「本当にそんな人がいるんですか?」と言われた一方で、キリスト教系大学の神父から「龍大生の相談に乗っている」と明かされた経験を披瀝。学内アンケートで858人中130人が当事者と回答するなど、身近な課題であることを示し、「我々自身の問題と認識する必要がある」と強調した。

 SDGsおてらネットワークの西永亜紀子代表はお寺の中のジェンダー不平等について発題。九州の寺院で坊守だった時に、清掃や食事の準備と片付けなど裏方の仕事に固定化され、ある組織の長に就任する際には「ご主人の許可」が条件になった経験を回想。女性がケア労働を一手に担い、社会参画の機会やキャリアが奪われることでリーダーが育たない悪循環を指摘し、意思決定に女性が加わる重要性を提言。「マイノリティや弱者の意見がくみとれない所に、苦しみを抱えた人が頼りたいと思うでしょうか」と問いかけた。

 全体討論では戸松氏が全日仏の委員会の女性比率の数値が改善されることで初めて仏教界の取り組みが「社会に伝わる」と強調。「数値目標を決めて制度を変えていかないと仏教界がダメになる」とし「宗議会では10%を女性議員にする」といった具体案も示した。

2022/7/14 無住無檀家の荒れ寺を再興中! 京都市右京区浄土宗了谷寺 青柳空泉住職の取り組み 建築士資格活かし修復 夢は「空外寺」への名称変更


 「寺じまい」「寺院消滅」そんな言葉が広まって数年。宗教法人の解散を決断するお寺は毎年出ている。そんな中、「寺院再興」に取り組んでいる僧侶がいるのだから希望の持てる話だ。京都市右京区周山の浄土宗了谷寺を3年前から預かる青柳空泉住職(74)は、師僧である山本空外上人の名を残すため寺院リノベーションに奮闘中だ。

わずか15坪ほどの了谷寺。40年間無住だった 京に田舎あり―そんな俚諺も思い出される周山一帯は、京都駅から直通バスで80分。戦国時代には明智光秀が支配しており城も作った。実は了谷寺も光秀が開基という伝承がある。

 ほんの15坪ほどの平屋の了谷寺。1980年頃から約40年間無住だった。玄関、座敷を経るとすぐに仏間(本堂)で、黒ずんだ阿弥陀如来像が落ち着く。いかにも古ぼけた昭和の建築という感じで、雨漏りの跡などが残っている。失礼ながら、御本尊がなければ一瞬廃屋と見紛う状態だが、「床が抜け落ちている場所もありました。屋根は直しましたが」と青柳住職が言うように、かつてはもっと大変な状況だったようだ。はるかな昔、地元の三十三観音霊場の一つだったそうだが、その観音像は無住時代に盗まれてしまったようだという。

エプロン姿で作業をしていた青柳住職 青柳住職は山梨県甲府市の在家出身。日蓮宗の檀家で、子どもの頃から仏教は好きだったという。甲府工業高校で建築を学び、東京での務めを経て京都に移った。「お茶を習っていたので、ぜひ茶室の建築をやってみたいという思いがあったんです。それなら東京にいるよりも京都で学ばなければと」。ちなみに文学青年でもあり、東京にいた頃は大江健三郎氏の「沖縄ノート」の制作を手伝ったという秘話も。

 仏縁が結ばれたのは、京都で裏千家の茶の師匠が「お茶のことをやるなら仏教のことを知らなければ。すごいお坊さんのお話があるから聞いてきなさい」と勧めてのことだった。その僧侶こそ山本空外上人だった。(続きは紙面でご覧ください)

2022/7/7 比叡山宗教サミット35周年 実行委員会が会見 「気候変動と宗教者の責務」諸宗教の力を結集し行動へ


記者会見に臨む大樹孝啓名誉顧問ら実行委員のメンバー 比叡山宗教サミット35周年記念「世界宗教社平和の祈りの集い」が8月4日、京都国際会館(京都市左京区)と天台宗総本山比叡山延暦寺(滋賀県大津市)で開催される(主催=同実行委員会)。「気候変動と宗教者の責務」をテーマに国内外の宗教者ら400人が参加予定。6月27日に京都市内のホテルで阿部昌宏実行委員長(天台宗宗務総長)らによる記者会見が行われた。

 大会名誉顧問を務める大樹孝啓天台座主は、人間が勝手なことをして自然を破壊し、いろいろな弊害が出ている」と述べ、物質文明の中で環境破壊が起きていることや、戦争や紛争により難民、避難民が大勢出ている目下の地球を憂慮。伝教大師の言葉「一身弁じ難く、衆力成じ易し」(『伝述一心戒文』)を引き、「一人の身では僅かな力しか出ないけれど、大勢の心を合わせた力によっていろんなことは成り立つ。この真理はいつまでもその通り」とし、諸宗教が協力して世界平和の構築のため行動を起こさなければならないと呼びかけた。

「祈りの集い」ポスター 午前10時に国際会館で開会。多摩大学学長の寺島実郎氏が「歴史的大転換期における宗教―心の回復力(レジリエンス)」のテーマで記念講演する。続く気候変動シンポでは薗田稔氏(日本、秩父神社宮司)、竹村牧男氏(日本、世界宗教者平和会議日本委員会平和研究所所長)、ジェームズ・バグワン氏(フィジー、メソジスト教会・太平洋協会協議会事務総長)、デズモンド・カーヒル氏(オーストラリア、カトリック・アジア宗教者平和会議実務議長)が発言する。その後、延暦寺に移り平和の鐘を鳴らし、祈り、そして「比叡山メッセージ2022(仮称)」を発表する。5年前に折り鶴を納めた「祈りのオーブ」も登場する。

 比叡山宗教者サミットは1986年にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が提唱した「アッシジ平和の祈り」の精神を受け継ぐもの。そこで同じく平和の祈りを受け継ぐカトリックNGO団体・聖エジディオ共同体のアジア地域担当部長のアゴスティーノ・ジョバニョーリ氏が招聘される。

 集いの模様はYouTubeでオンライン配信される。(続きは紙面でご覧ください)

2022/7/7 曹洞宗宗議会 宗憲変更めぐり〝教学論〟 「和合」と「即身是仏の承当」宗制関係36案を審議 


演説する鬼生田総長 曹洞宗の第139回通常宗議会(三𠮷由之議長)が6月27日から7月1日の5日間、東京都港区の檀信徒会館で開かれた。前宗議会から継続審査となっていた宗憲の変更案に関し、有道会の河村康秀議員らが初日に修正動議を提出した。変更案によって教団が、宗旨とする「即心是仏の承当」よりも「和合」を重視しているように見えかねず、宗門の第一義に混乱を招くと疑問を呈した。

 変更案では、第1条の見出しを「名称」から「名称および趣旨」に改めた上で宗憲の趣旨を説明する項を新たに設け、「宗門は、その和合と興隆を念願する全宗門人の堅い信念に基づき、この曹洞宗宗憲を定める」(一部省略)と加えた。宗旨は第3条で述べられ、「仏祖単伝の正法に遵い、只管打坐、即身是仏を承当すること」(同)としている。

 河村議員は、第1条に「和合」を謳う趣旨が入ることで宗旨との間に混乱を招くと問題視し、「宗門の第一義が和合であるとは言えない」と主張。趣旨の新設は不要などとして、さらなる継続審査を求めた。

 採決では発議した7人以外が反対し、否決された。河村議員は「最高法規である宗憲の変更が、満票で決まらなかった。非常に残念だ」と語った。なお、変更案を検討した特別委員会の審査を経て、最終的に第1条の見出しは「趣旨」となり、名称についての条項は削除された。

 内局の任期中、最後の宗議会となった鬼生田俊英宗務総長は、重要課題に掲げた宗制の全体的見直しの締め括りに、規程変更案など宗制関係だけで36案を提出した。(続きは紙面でご覧ください)

2022/7/7 本願寺派 女性布教使大会 如来の慈悲 4人が法話 多様性狙い6回目


右上から時計回りに肥田さん、味府さん、松本さん、八幡さん  浄土真宗本願寺派の第6回女性布教使布教大会が6月24日に大阪市の津村別院で開催された。近畿・北陸から4人の女性布教使が仏法に出遇えた喜びを、自分の体験を絡めながら説法した。聴衆は男女を問わず、約60人が聞法した。

 トップバッターは北陸教区の八幡真衣さん。「またね!」と題し、昨年、法話中に倒れた経験とその回復の中で家族に励まされたことを織り交ぜながら「大好きな家族、大事な人、皆さんにもそれぞれにいられるかもしれません。どちらが先に往くことになるかわかりません」と述べ、だからこそ今、念仏することが大切なのであり「サヨナラのない世界を阿弥陀様が両手を合わせて待ってくださっている」。布教使2年目のフレッシュな感性で語りかけた。

 和歌山教区の肥田眞琴さんは「願いの中につつまれて」の題で法話。母から僧侶になることを願われ、豊かな愛情を受けて育ったことを回想し深く感謝しつつ「子煩悩というのは私たちの一番深いところの煩悩なんですね」と話し、そのような罪悪深重煩悩熾盛の凡夫を必ず救ってくれる如来の慈悲の願いを、朗々とした和讃も織り交ぜつつ語った。

 大阪教区の松本知子さんは、月参りで独居の門徒がいつも心を込めてお茶を淹れてくれることに触れ、「20数年前より5倍くらい時間がかかっている」としつつ、「その一杯のお茶は格別な味がしました。老いるってことはこういうことやなと思いながら、それも私の身に起こっていくこと。時間をかけて一杯のお茶を仕上げてこの私に届けてくださる、そのぬくもりが私の心に伝わる」と、月参り文化が根付く大阪ならではの人情法話。

 最後は大阪教区の味府浩子さん(女性布教使研修会実行委員会代表)。自分たちはどうしてもお金があるか、健康か、若いかといったことを尺度として生き、人と比べて死ぬまで苦しんでしまうが、「仏さまは、そんなこといいじゃないのって言っているの」。煩悩まみれの人間を絶対に救わずにはいられないから「お念仏して思い出しなさい、どんな時でも安心して生きなさいっておっしゃってる」と生きる力を湧き立たせる話をした。

 味府さんは女性布教使大会のねらいについて「多様性や女性の視点を考えた時、こういう機会があってもいいのかなって」と話し、来年以後はコロナの状況次第ではより幅広い地域から布教使を招いて大会としたいと期待した。女性布教使研修会の会員は現在、約240人。