2022年

6月

2022/6/30 真如苑 初の「真如ヤーナ済摂会」執行 屋外法要に7千人参座 融和世界の顕現、開かれた聖地へ


参座者に向かって洒浄する伊藤真聰苑主 20年前に入手した東京・立川市と武蔵村山市に跨る広大な敷地(旧日産工場跡地)を、先般「真如ヤーナ」と命名した真如苑(総本部=立川市)。新たな聖地への出発となる火と水の浄儀「真如ヤーナ済摂会」が18日、伊藤真聰苑主を導師に執り行われた。雨や猛暑が心配されるなか、薄曇りの好天にめぐまれ行われたこの野外法要には、地元市長など来賓のほか7千人の教徒が参座した。

 106ヘクタール(東京ドーム23個分)という敷地の中央部分に特別の祭壇がしつらえられ、常住本尊と開祖・霊祖・両童子の尊像が安置され、護摩壇も配置された。稚児行列に続き、浄儀に用いられる火と聖水を携えた出仕者らが会場奥から祭壇へと進列。その後に苑主が特別車で続いた。

 登壇した苑主が挨拶。真如ヤーナの意味をひも解き、「ヤーナは古代インドのサンスクリット語で、乗り物、道、教えを表します。すなわちここに真如ヤーナは、真如開祖教主様のお名前のごとく『真乗』。真の乗り物そのものです」と述べ、伊藤真乗開祖(1906~1989)の思いを具現化したものであることを示唆した。

 さらに「人と自然、あらゆる存在が共生・融和し、地域、社会をはじめ、幅広い分野で世に貢献する開かれたステージをここに作り上げてまいります」と決意も口にした。

 最初の法要となる火と水による「真如ヤーナ済摂会」について「多様性を融和に摂め、善なる個性を輝かせ、一切を救いへ導く」法会と解説、融和世界顕現を祈誓すると表明した。

 法要は、斉燈護摩で行われる承仕の所作をアレンジ、青年が群舞で結界し開始。真如太鼓とオーケストラという和と洋の音楽、コーラスなどをBGMにしながら、智慧の火で護摩が焚かれ、慈悲の水で万霊を廻向。祭壇前の池に灯籠も浮かべられた。

 この敷地の活用法については真如苑、立川市、武蔵村山市、東京都の四者で協議し、この間、周辺環境の整備や生態系の回復にも努めてきた。真如苑では現在世代で終了するプロジェクトではなく、50年、100年、200年と次世代、次々世代も参画し、変化する世界、環境にそって人々に寄り添い、様々な価値観を超えて心かよう空間づくりを構想している。

2022/6/30 東寺でウクライナ法要 駐日大使が参列、献花 犠牲者慰霊し平和願う


 ロシアによるウクライナ軍事侵攻から4カ月となった6月24日午後、京都市南区の東寺真言宗総本山教王護国寺(東寺)・大日堂で「ウクライナ軍事侵攻犠牲物故者慰霊並びに平和祈願法要」が厳修された。駐日ウクライナ特命全権大使や大使館職員、京都で暮らす同国人をはじめ、ルーマニア人やアメリカ人ら12人が参列。ウクライナの国花ヒマワリを宝前に献花した。英訳願文も奉納。大使館を通して、ゼレンスキー大統領に届けることになった。

 吉村増亮宗務総長を導師に宗内高僧12人が職衆として出仕。最初に僧侶と参列者全員で黙祷を捧げてから法要に入った。

 祭壇の両脇にはウクライナ国旗と国旗の色に盛られたヒマワリが供えられ、参列者はその中央にヒマワリを一輪ずつ献花。合掌し、平和の到来を祈念した。法要中、堂外には一緒に合掌する一般参拝者の姿もあった。

日本語に続き、英訳された願文も奉読された 吉村総長は願文で、「神に慈しみの光あり、仏に平和の教えあり。人は安寧幸福を求めてやまぬところ、何故(なにゆえ)世は武を弄(もてあそ)ぶのか」と悲憤。「宗教は違えども祈りは通ずる」と念じた上で、軍事侵攻犠牲者への哀悼と慰霊、そして「ウクライナ国恒久の平和」を祈願した。

 この願文を英訳し、ルーマニア人の参列者マーガリットさんが読誦。「Humans are born to love, and to be loved.」(人は愛し、愛されるために生まれる)と人間存在の真理を唱えた。英訳願文も宝前に供えられ、平和のメッセージをウクライナに回向した。

 1カ寺×3万円で勧募 近く義援金を大使館へ

 吉村総長が法要後に挨拶。「本日の祈りが通じて一日も早くウクライナに平和が訪れ、国民の皆様が今まで以上に幸せに暮らしていけるようになることを願う」と述べた。

 セルギー・コルスンスキー大使は、「毎日のように子ども、女性、お年寄りを含めて罪のない人たちが死亡している。誰も冷静でいられない。母親は子どもが生き残るよう、爆撃で死なないように神様に毎日祈りを捧げている」と心痛の念を表明。「命と平和に最高の価値を置く仏教の本日の祈りは、私たちにとって極めて重要だ」と感謝した。

 同宗ではウクライナへの人道支援として、正住職寺院約130カ寺に3万円以上の義援金を勧募。近日中に東京に行き、大使館に届ける予定だ。

 吉村総長は3月の宗議会で、「軍事侵攻に対して宗派声明を出すかどうかではなく、その前に宗教者として慰霊と平和を祈りたい」と演説。宗議会後、ウクライナ大使館に赴いてこの思いを伝えたところ、大使も快諾し、今法要が実現したという。

 今法要には、高野山真言宗から国際局長の桐生俊雅教学部長ら3氏も参列。大使に平和への思いを伝えるなどしていた。

2022/6/30 最高裁、国の責任を否定 原発事故被害者住民の4訴訟 落胆と批判の声


 2011年の福島原発事故により被害を受けた住民らが国に損害賠償を求めた4つの訴訟で17日、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は、地震が想定を超えて大きかったため「事故を回避できたと判断するには無理が大きすぎる」と国の責任を否定する判決を下した。裁判官4人のうち、1人が国の責任を認める反対意見を述べた。避難者の支援や原発問題に取り組む宗教者からは、落胆と批判の声が上がっている。

 同訴訟は、群馬・千葉・福島・愛媛で行われ、群馬だけが東京高裁で国の責任を否定する判決が出されており、国の責任についての最高裁の統一的判断が注目されていた。

 判決では、福島第一原発事故以前の津波対策は防潮堤が基本だったとし、実際に発生した地震・津波が想定よりはるかに大規模であったため、国の地震予測「長期評価」に基づく防潮堤を国が設置させたとしても、事故は避けられなかったと国の責任を認めなかった。

 一方で、反対意見を述べた三浦守裁判官は、国は遅くとも長期評価の公表から1年が過ぎた2003年7月頃までに、原子炉施設が津波により損傷を受けるおそれがあると認識でき、東電に改善を求める「技術基準適合命令」を発する必要を認識できたと指摘。事故を回避できた可能性に触れ、国が「規制権限を行使しなかったことは合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上違法である」との認識を示した。
 
 司法の忖度ではないか
 原賠裁判を支援する群馬の会の小野文珖氏(日蓮宗僧侶・群馬諸宗教者の集い代表)の話

 6月17日の最高裁正門前は30度を超す暑さをものともしない全国の原告・支援者でひしめいていた。判決の出た2時半頃から周囲の雰囲気が重く静まりかえり、イヤな気分になってきたところ、訴訟団の弁護士の沈痛な声がマイクから伝わってきました。「国の責任を認めず――」。周りの原告から、「うそー」「バカな―」。声にならない悲鳴のようなものも聞こえてきた。

 要は想定外の事故だったので防ぐことはできなかった。国には責任はない、という判決。これは「公正な」判決とは言えないだろう。「不当判決」もはなはだしい。

 広島・長崎で放射能被害を体験している日本である。近くにスリーマイル島やチェルノブイリの事故を目の当たりにしている。にも関わらず国策で原発を作り続け、地元住民には「絶対安全」「事故など起こるはずがない」と説得してきた。国の原発行政の結果だったことは間違いない。電力会社にだけ責めを負わせて逃げてしまう、それを日本の司法が追認して免罪符を与えてしまうとは、司法の忖度としか言いようがない。最高裁第二小法廷の判決に賛成した3人の裁判官を弾劾したい。

 世論の喚起が重要
 原子力行政を問い直す宗教者の会・長田浩昭氏(真宗大谷派僧侶)の話

 原子力政策という国策の本質、すなわち国が責任もとらなければ犠牲もかえりみない、ということが表れたとんでもない判決。これでは三権分立も、国民を守ることも成立しないのではないか。

 これから再稼働が進められても、安全確保はすべて自治体や国民に丸投げということ。命の犠牲を大前提にした行政が本当に正しいのかを問うのが司法の役目であるはず。ただ、4人の裁判官のうち1人が反対意見を出したのは、良心からだと思いたい。

 私達の裁判(宗教者核燃裁判)はこれから第4回口頭弁論(東京地裁、7月7日)で、現時点ではこの判決がそこまで影響があるとは思っていないが、最高裁というのは世論に敏感なところ。「こういう判決を出しても国民は怒らない」と思えばこういう判決になってしまう。国民一人ひとりが原発の危険性を考え、監視し続けていくことが重要になってくる。

 今、北海道の神恵内村と寿都町に核のゴミを捨てるという計画が出ている。都会で電力を大量に消費し、10万年残るゴミを出して遠くの町や村に押し付ける。こんなことでいいのかと声を上げ、繰り返し世論を喚起していかなければならない。

2022/6/30 第39回庭野平和賞贈呈式/記者懇談会 南アフリカのラプスレー司祭 平和をつくる「助産師」に


賞状を手にするラプスレー司祭©2022 Niwano Peace Foundation 第39回庭野平和賞(公益財団法人庭野平和財団主催)を受賞した南アフリカのマイケル・ラプスレー聖公会司祭(73)への贈呈式が14日に開催された。17日には記者懇談会が開かれた。反アパルトヘイト運動の過程で郵便爆弾により両手と右目を失った司祭は、人間の奥底に残る心の傷(トラウマ)を癒す「記憶の癒し」ワークショップを通じて、平和構築に取り組む。人間はみな平和創出の「助産師」になるよう訴えた。

 3年連続のオンライン開催となった贈呈式。庭野平和賞委員会(全9人)のランジャナ・ムコパディヤーヤ委員長(インド・デリー大学准教授)が贈呈理由を報告。その中で委員の一人が「ラプスレー司祭は大きな代償をはらいながら、なおも記憶の癒しを訴え続けている。それが示すことは、世界に迫害の犠牲者が数多く存在する中、赦しと癒しについて語る強靱な被害者の姿であり、権力者は強靱なる被害者の存在を認識する必要がある」と述べたという。

 庭野日鑛・財団名誉会長(立正佼成会会長)が賞状を読み上げ、アパルトヘイト撤廃や心の傷を癒す活動に讃え、賞状をおくった(副賞は顕彰メダルと賞金2千万円)。(続きは紙面でご覧ください)

2022/6/23 全日仏 新理事長に里雄元大谷派総長 事務総長は尾井氏 直近課題に参院選、山梨大会

 
 (公財)全日本仏教会(全日仏、東京都港区)は14日、評議員会を開き、任期満了に伴い第35期の理事及び幹事を選任。続く理事会で新理事長に真宗大谷派元宗務総長の里雄康意氏の就任を承認した。第35期の会長は大谷派の大谷暢裕門首で、会長と理事長が同じ宗派というのは第33期の曹洞宗以来となる。新事務総長には浄土真宗本願寺派の尾井貴童氏(築地本願寺副宗務長・東京教区教務所長)が就いた。任期は2年。

 コロナ禍のため2年前の第34期に続いてオンラインによる評議員会と理事会で新執行部が決まった。ロシアによるウクライナ侵攻といった国際的な難題に直面しているが、全日仏としては直近に迫った参院選(7月10日投開票)に対する候補者推薦や、10月7・8両日に開かれる第46回全日本仏教徒会議山梨・身延山大会が当面の取り組み課題となる。

 コロナ禍以降、対面型の公開シンポジウムなどはなされていないが、オンラインでSDGs(持続可能な開発目標)に関連したシンポが何度か開催された。こうした路線は新執行部にも引き継がれると思われる。

 また33期と34期の理事長が社会人権審議会に諮問した事項に死刑廃止に関するものがある。いずれの答申でも「仏教の教義と死刑が相いれないことは明白」と明言。しかし死刑制度の是非については触れていない。里雄理事長の属する大谷派は死刑廃止の立場をとっており、死刑廃止論に進展が見られるかどうかが注目される。

【里雄康意(さとお・こうい)理事長略歴】昭和24年(1949)1月生まれ。73歳。1993年12月より大谷派宗会議員。現在8期目。3内局で4度の参務を務めた。2012年から2016年まで宗務総長。宗務総長時代、大谷暢顕門首(当時)の後継者としてブラジル国籍の暢裕氏(現全日仏会長)着任の道筋を付けた。自坊は岐阜県海津市の緑林寺。

【尾井貴童(おのい・きどう)事務総長】昭和38年(1963)2月生まれ。59歳。2006年本願寺派財務部長を皮切りに、統合企画室次長兼所務部財務担当部長、総合企画室長などを経て21年7月から築地本願寺副宗務長・東京教区教務所長。自坊は兵庫県丹波市の照徳寺。


 4宗派体制維持

 全日仏は59宗派、37都道府県仏教会、9仏教団体の計105団体で構成されている。このうち宗派の上位10宗派から職員が出向し業務に当たっている(ほかに2名の職員)。

 さらに10宗派の中で負担金が大きい曹洞宗・本願寺派・大谷派・浄土宗が慣例で理事長と事務総長を順番に務めてきた。公益財団法人に移行(2012年4月)したころにはその見直し機運もあったが、4宗派体制は維持されている。

 かつては1954年の創立後、会長も4宗派体制だった。しかし第15期(1982年)に日蓮宗管長が全日仏会長に就任してから10宗派に広がった。「仏教界が直面している問題の解決のためにも10宗派の有為な人材を登用できるようにしたらどうか」という声は少なくない。

2022/6/23 東西2学園が150周年 立正大学学園 花園学園


立正大学学園「立正グランドデザイン」を発表 建学精神活かして人材育成

「立正グランドデザイン」を発表する望月理事長 (学)立正大学学園開校150周年を祝う記念式典が15日、東京都品川区の同大品川キャンパス石橋湛山記念講堂で開かれた。日蓮宗教育委機関「飯高檀林」を淵源として明治5年(1872)に設立された日蓮宗小教院を開校の起点とし、9学部16学科7研究科を擁する総合大学へと発展した歴史を振り返るとともに、150周年を節目とする新たな時代に向けた長期構想「立正グランドデザイン」を発表した。

 記念法要では、導師を務めた学園総裁の菅野日彰・日蓮宗管長が挨拶。宗祖日蓮聖人の三大誓願を拠り所として第16代学長の石橋湛山のもとで明文化された建学の精神「真実を求め至誠を捧げよう/正義を尊び邪悪を除こう/和平を願い人類に尽くそう」を紹介し、「まさに立正精神。先師先聖より脈々と受け継がれたこの精神を根本として、時代に適応した知識と技術を修めた社会に有為な人材を育て、輩出し、150周年を迎えることができた。本日この日が200年に向けての第一歩となりますよう未来永劫の発展を期待します」と学園の発展を祈念した。

 式典は歴代理事長・学長をはじめとする関係者が列席する中、大学吹奏楽部、同大付属中学・高等学校吹奏楽部が共演する演奏で幕を開けた。

 学園の望月兼雄理事長、大学の寺尾英智学長、付属立正中学・高等学校の大場一人校長が挨拶。望月理事長は学園の沿革を繙きつつ、多様な150周年事業の成果を挙げ、「さらなる教育発展のために、歴史と伝統のある学園として誇りをもって皆さんと一緒に進んで参りたい」と呼びかけた。(続きは紙面でご覧ください)

花園学園 妙心寺法堂で記念式典 9月と10月にも記念イベント

狩野探幽の雲龍図の下での法要。導師は小倉管長 (学)花園学園(本部=京都市中京区)は14日、右京区の臨済宗妙心寺派大本山妙心寺法堂で創立150周年記念式典を開催した。明治5年(1872)妙心寺に臨済宗各派連合の経営による僧侶養成機関「般若林」が設置されてから1世紀半、数多の僧侶を輩出してきた歴史を噛み締め、さらなる未来に向かう一歩を踏み出した。

 妙心寺派の小倉宗俊管長を導師として、学園関係各位物故者慰霊法要が営まれた。続いて野口善敬理事長(妙心寺派宗務総長)が挨拶。同大教授で学僧でもある野口理事長は、花園大学の前身である臨済宗大学の学長だった釈宗演(円覚寺派管長)、その教え子の鈴木大拙が禅を世界に広めたことや。柳田聖山や入矢義高といった優れた学者の研究を称賛した。

一方で「禅は言うまでもなく、僧侶だけでなく元々世界すべての人々に差別なく大きく開かれています。一般社会を離れて仏教も禅も存在しない」とし、幼稚園から大学院までの幅広い教育を持つ学園で「世界で活躍できる人材を必ずや育ててまいります」と決意を述べた。

 田中英之文部科学副大臣(京都市出身)、西脇隆俊京都府知事、門川大作京都市長が祝辞を述べた。門川市長は大学間連携組織「大学コンソーシアム京都」の単位互換制度で、花園大学の禅の講義が他大学の留学生にも人気があることを称揚した。

 横田南嶺総長(円覚寺派管長)と、花園大学仏教学科OBでソフトバンク㈱代表取締役社長の宮川潤一氏(学園理事)が記念対談。寺院の生まれから世界的実業家となった宮川氏のあゆみや、メタバースなど最新技術について盛り上がった。(続きは紙面でご覧ください)

2022/6/23 豊山派 宗祖生誕1250年事業 総本山長谷寺 総登嶺がスタート 


宗祖降誕会に合わせて厳修された開白法要 来年迎える宗祖弘法大師御生誕1250年の記念事業として、全国49宗務支所の住職・檀信徒による総本山長谷寺への総登嶺を計画している真言宗豊山派。その開白法要が弘法大師降誕会の15日午後、奈良県桜井市の総本山長谷寺・御影堂で厳修され、1年半に及ぶ祖山慶讃参拝がスタートした。

 前日まで続いた法雨が初夏の生命を潤し、新緑がその輝きを増した初瀬の山々。一般参拝者が見守る中、宗派・総本山の両内局と要職者、総本山研修生ら30人超が陽光を浴びながら御影堂に入り、浅井侃雄化主(同宗管長)が稚児大師尊像正面の導師の座に着いた。

 壮麗な豊山声明が堂内外を荘厳。浅井化主が表白を読誦し、宗祖の生誕が「日本文化を潤し、以て萬民を利益すること」になった縁起を明らかにした。
 右の壇に設えられた御堂にも、稚児大師像を奉祀。鈴木常英宗務総長に続き、職衆、総本山研修生らが灌沐した。報道陣も尊像に甘茶を灌ぎ、総登嶺に結縁。全真言宗各派で最も早い御生誕1250年開白法要の法悦を共にした。

 浅井化主は垂示で、「今日開白した慶讃事業は来年の12月31日まで、支所の総登嶺を一大目的として遂行する」と説明。「私は常日頃、御本山には二つの大きな顔があると申している。一つは十一面観音様の一大霊場。もう一つは豊山派の総本山としての顔で、お大師様はいつも御影堂においでになる。大勢の方にお大師様との御縁を結んでいただき、観音様の慈悲の心をいただいてほしいと願っている」と述べた。

 川俣海淳総本山寺務長は法要後、「50年ぶりのお大師様の法要。コロナも収まり、普段の生活に戻れるよう合わせてお祈りしたい」と抱負。「1年半と長く期間を設定したので、世界の平和のためにも〝みんなで一緒にお大師様を拝もうよ〟と呼びかけたい」と話した。(続きは紙面でご覧ください)

2022/6/23 浄土宗大阪教区教区団 古舘氏、熱烈仏教トーク お経も披露し喝采浴びる


「法然上人を背負って」縦横無尽に話す古舘氏 浄土宗大阪教区教化団(中山正則団長)は9日、大阪市天王寺区の大阪国際交流センターで3年ぶりの仏教文化大講演会を開催した。総本山知恩院おてつぎ運動本部おてつぎ運動推進大会との併催。日本を代表するアナウンサーの古舘伊知郎氏が「古舘節」を唸らせながら仏教について熱く語った。

 司会のプロフィール紹介に続いて古舘氏はさっそく「テレビ朝日のアナウンサーになった時スポーツアナウンサーとして採用されました、従いましてとにかくお前は喋れ、日常起きている時は、“寝ている時以外常に喋れ”と言われました、そこから今や言葉の中毒者と言われております、喋らなくては堪らなくなるわけで…」と、往年のプロレス実況を彷彿とさせるマシンガントークで入場。大歓声を浴びた。

 両親がクリスチャン、大学はミッション系の立教大学を卒業した古舘氏が仏教に関心を抱いたのは、42歳で亡くなった姉の葬儀の頃からだったという。「人が死ぬってどういうことだろう。本当に釈迦に説法でお坊さんもいるのに申し訳ないのですが、仏教では生死一如といいますね。生きることと死ぬことは一つである、死があるから次の命へのバトンで生がある」

 人間が死後、別の人間に生まれ変わるような「輪廻」は信じていない古舘氏。しかし、ある浄土真宗の僧侶に「私は輪廻を信じません、輪廻って何ですか」と疑問をぶつけた際に、火葬場の煙が大気となり、それが雨になって大地に降り注ぎ植物を育むことだと説かれたことには感銘を受け、輪廻思想と循環型社会との共通性を指摘するなど、「報道ステーション」元キャスターとしてのジャーナリスティックな顔ものぞかせた。

 「私は仏教ファンなだけ、特に原始釈迦仏教が好き」とのことで、諸行無常、諸法無我、一切皆苦など根本教理について縦横無尽にトーク。一方「法然さんはヘルプミーブッダと言った。親鸞さんはサンキューブッダと言った」など、独自の切り口で大乗仏教も賞賛。さらに知人の日蓮宗僧侶からお経を習っているといい、京都の永観堂(浄土宗西山禅林寺派総本山禅林寺)でのライブ「トーキングブルース」で暗誦した秘話も。この会場でも勧請文を唱え、宗派が違っても受け入れる仏教界の懐の深さを称えた。

 古舘氏の講演に先立ち、京都文教大学教授の平岡聡氏が「いのちを考えなおす」の題で講演。仏法に基づく生命観をユーモアを交えながら説いた。

2022/6/16 時宗法主・遊行75代 他阿一浄上人 東山心徹氏が晋山 法要後には念仏札を賦算


境内を合掌姿でお練りする他阿一浄上人 神奈川県藤沢市の時宗総本山清浄光寺(遊行寺)で8日、遊行75代・藤澤58世の他阿一浄・東山心徹上人の晋山式が営まれた。今年1月に時宗法主に就任した一浄上人は「お一人おひとりがお互いを信じ、支え合っていく社会」を念じた。

 お稚児と木遣り衆に先導され境内をお練りする一浄上人を、隣接する学校法人藤嶺学園藤沢中学・高等学校の学生約300人や檀信徒が合掌姿で迎えた。晋山式には天台宗総本山比叡山延暦寺の水尾寂芳執行、浄土宗大本山光明寺の柴田哲彦法主、同清浄華院の飯田実雄法主ら宗外からの多数の来賓を含む220人が列席して営まれた。

 遊行75代に就任した一浄上人は表白で「嗣法の大任」に「故聖の遺範を遵守して利生の道に進まんとする」と表明。宝前に「佛日増輝 令法久住を悃祷し奉る」と祈念した。

 参列者に十念を授与した一浄上人は、改めて多くの参列に謝意。疫病や紛争が起こる世相を鑑み「改めて普通の日常の有難さ、人と人とが接することの大切さを味わっている」とし、「人と人との触れ合いを大事にし、お一人おひとりがお互いを信じ、支え合っていく社会を目指していくことが大事だと心しております」と念じた。

 祝辞では時宗宗議会の落合浩人議長(代読)が「山風の宣揚、遊行御賦算に積善されますことを願ってやみません。我々宗門人も、御上人様のお導きにお応えできますよう日々精進し、教化の実をあげるべく努力致します」と宣誓。遊行寺檀徒会の尾島秀樹会長は「天下泰平の祈りは、檀徒一同も心根を同じくするもの。同じ心根を持つものとして本日は大変嬉しく思います」と祝した。
謝辞に立った神田普照宗務総長は「宗門一同、一浄上人のもと同入和合海を誓い、宗門興隆、念仏弘通に専心致すことをお誓い申し上げます」と決意を示した。

 法要後に御賦算行われ、 橙色の御札箱を首から下げた一浄上人が、参列者一人ひとりに「南無阿弥陀佛決定往生六十万人」と書かれた「念仏札」を手渡した。(続きは紙面でご覧ください)

2022/6/16 浄土宗大本山増上寺 次期法主に小澤憲珠氏


 浄土宗大本山増上寺の八木季生法主の後任となる法主に浄土宗総合研究所所長の小澤憲珠氏(80)が推戴されることが決まった。八木法主が退任の意向を示したことを受け、5月23日と6月7日に開催された浄土門主・法主推戴委員会で決定した。任期は8月1日から4年間。

 小澤次期法主は1941年11月6日生まれ。東京都八王子市の極楽寺住職。大正大学大学院文学研究科博士課程満期退学。同大教授、副学長を経て現在名誉教授。浄土宗教学院副理事長、日中友好浄土宗協会副理事長など宗内要職を歴任。増上寺でも教監を務めた。著書に『大乗の菩薩』など多数。

2022/6/16 三河大浜騒動150年記念法要 愛知県内3カ所で殉教者悼む


石川台嶺や護法有志の墓のある蓮泉寺での法要 三河殉教記念会(平野眞会長)は6月5日、愛知県安城市小川町の真宗大谷派蓮泉寺(午前10時)、西尾市葵町の殉教記念碑(同10時30分)、西尾市一色町の大谷派赤羽別院(午後1時30分)で三河大浜騒動150年記念法要を執り行った。騒動から今年は151年だが、新型コロナの影響を受け、一年延期し、コロナ対策を万全にしたうえで開催された。

 法要にはそれぞれ、真宗大谷派の鍵役・大谷佳人氏(信教院)が導師をつとめ、赤羽別院では雅楽が付くなど150年の節目として盛大に行われた。参加者も例年より多く、蓮泉寺では40名超、殉教記念碑前では200人以上、赤羽別院では百数十人が殉教者を追悼した。

 鍵役も本紙の告知記事に関心を示し、移動の途中に岩瀬文庫へ立ち寄り、企画展の前室で放映されている戦後制作された幻燈(スライド)に音声を吹込んだDVDや展示されている首謀者とされた石川台嶺が処刑時に着ていた「血染めの白衣」や「幽囚日記」などの貴重な資料を熱心に閲覧した。

 赤羽別院の法要後、三河殉教会の平野会長が挨拶し、「新型コロナウイルスの蔓延により、一昨年と昨年は法要を執り行えず、150年法要は一年延期し今年になったが、多くの方々が参集していただき、これからも大浜騒動で犠牲になった方々の信仰を少しでも触れていただきたい」と述べた。

 続いて鍵役は「151年も続く法要は、地元のみなさまに支えられてこんにちに継続されており、ご縁あって今日、参りましたが、これからも末永くこの法要を大事にしていただきたい」と挨拶した。

 この後、同朋大学教授の安藤弥氏が「三河大浜騒動」の歴史としての視点と、信仰としての視点について法話を行った。

 大浜騒動は、明治4年(1871)3月、現在の愛知県碧南市で、寺院統廃合や天拝日拝に反対する僧侶や護法有志らが立ち上がった事件。役人一人が殺害され、首謀者とされた僧侶の石川台嶺は裁判の判決で斬首となり、即日執行された。29歳だった。

2022/6/16 お寺の戦伝遺産を歩く17 奈良市大本山霊山寺「バラ庭園」 世界平和願い昭和32年開園 当時の住職が戦争とシベリア抑留体験し


東山管長と開園時から植えられている「ピース」。太平洋戦争終結を記念して作出されたバラだ 天平8年(736)に創建された奈良市の古刹、大本山霊山寺(りょうせんじ)。「登美山鼻高 霊山寺」の勅号を有する真言宗寺院である。広大な敷地の中には国宝の本堂や重要文化財の三重塔などがある。歴史の古層と文化が漂う境内に現代的なバラ庭園がある。世界平和を願って作庭された。その背景を東山光秀(とうやま・こうしゅう)管長(住職)に取材した。
 
 富雄川の橋を渡ると正面に山内に入る受付がある。そのすぐ先にバラ庭園がある。入口の説明板から、京都大学農学部造園学研究室が設計し、造園学者の新田伸三氏が監督して昭和32年(1957)5月に開園したことがわかる。1200坪の土地に200種2000株のバラが植えられていることも記されている。

 6月に入り春シーズンのピークは過ぎたとはいえ、紅や白、黄色などカラフルなバラの花が、緑の葉や幹の中で優雅に咲きほころぶ。萎れて散った色とりどりの花びらにも味わいがある。

 説明板には発願者の名前はない。霊山寺パンフレットに「当時の住職の戦争体験から世界平和を願って開園された」とある。当時の住職とは東山管長の祖父にあたる東山圓教師(1898~1984)である。

 高野山大学を卒業し、昭和2年(1927)霊山寺住職となり、同寺の復興に努めた。旧富雄村の村長を務めるなど地元の名士であった。

 その後、召集を受けて中国大陸に渡った。詳しい戦地は不明だが、終戦と共にシベリアに抑留された。過酷な労働、寒さと飢え――多くの抑留者が帰国を願いながらいのちを落とした。「夜中に目が覚めてトイレに行って、戻ってきたら仲間が死んでいたこともあったそうです。抑留生活は2年半に及びました」と東山氏。

 「太平洋戦争の終結を記念して作出されたのがピースという名前のバラです。フランスのメイアンさんが作出され、開園時は、このピースを中心に植えられました」

 戦争と抑留体験から平和な世の中を願って近代洋風庭園が生まれた。そして年間を通して多くの参拝者が鑑賞する人気のスポットとなった。

2022/6/9 10月開催 山梨・身延山大会のテーマ発表 「共に生きる尊さ」~だれも取り残さない社会の実現に向けて~ 


 
完成したポスター 4カ月後に迫った第46回全日本仏教徒会議山梨・身延山大会のテーマ「共に生きる尊さ―だれも取り残さない社会の実現に向けて」や日程などが発表された。記念講演は仏教学者の平岡聡氏(京都文教学園学園長)が「現代における仏教の可能性を問う」と題して実施する。概要は今月2日、全日本仏教会(全日仏)のHPに掲載された。また日蓮宗総本山身延山久遠寺HPに特設サイトが設けられた。

 山梨・身延山大会は全日仏と山梨県仏教会が主催し、身延山久遠寺が共催。10月7日(金)8日(土)に久遠寺本堂および身延山大学講堂を会場に行われる。初日には開会式や記念講演、現代音楽法要を開催。2日目のパネルディスカッション「だれも取り残さない社会の実現に向けて」は、山梨県内寺院を対象にしたSDGs(持続可能な開発目標)意識調査アンケートの結果に基づいて開かれる。コーディーネーター兼調査報告を小谷みどり氏(シニア生活文化研究所代表理事)が担当し、パネラーは平岡氏、ロバート・キャンベル氏(日本文学研究者、東大名誉教授)、内藤麻里子氏(文芸ジャーナリスト、元毎日新聞記者)の3人。

 昨年10月の第45回島根大会はコロナ禍のため1年延期したうえ、オンライン開催となった。今大会もライブ配信を予定している。

 参加無料。申込み締めきりは8月末(先着順)。申込み・問い合わせは久遠寺HP内の特設サイト(https://www.kuonji.jp/bc46th/)、または大会事務局(身延山久遠寺庶務部内☎0556―62―1011)へ。

2022/6/9 天台宗延暦寺 大樹孝啓座主が傳燈相承 祖訓広め慈悲社会に


歴代座主1200年の系譜に自身の名を書き加える大樹座主(大津市・延暦寺) 昨年11月22日に上任した天台宗総本山比叡山延暦寺(滋賀県大津市)の大樹孝啓第258世天台座主(97)は5月31日午前、延暦寺一山の総本堂・根本中堂で歴代座主の名が記された「傳燈相承譜」(座主血脈譜)に署名する傳燈相承式に臨み、名実共に天台座主に就任した。宗祖伝教大師が約1200年前に全てのいのちの平安を願って灯した不滅の法灯と、絶対秘仏である宗祖謹刻の薬師如来像の宝前で、混迷する世界に真の平和をもたらす宗祖の遺訓「忘己利他」「一隅を照らす」を広めていくことを誓った。

 大樹座主は天上輿に乗って、大書院から根本中堂まで進列。輿から降りると、宗門最高厳儀の歴史を一歩一歩確かめるようなしっかりとした足取りで入堂していった。そして内陣本尊壇を拝する中陣中央の猊座に登壇。不滅の法灯の輝きと秘仏薬師如来像をはじめとする諸仏諸菩薩の照覧の中、天台座主史に新たな歴史の始まりを刻んだ。

 大樹座主は猊座右側に掛けられた伝教大師御影の宝前に着座し、「傳燈相承譜」に署名。墨痕鮮やかに新座主の名を加えた。同時に御影の前に安置された伝教大師ゆかりの法具や天台宗の至宝を納めた勅封唐櫃の鍵など、歴代座主が教えと共に伝持してきた法宝物の継承もなされ、天台宗1200年の教えと歴史の全てが大樹座主に相承された。(続きは紙面でご覧ください)

2022/6/9 東大寺 橋村公英別当が晋山 戦乱と疫病消除を祈る


輿に乗って南大門から大仏殿へと向かう橋村別当 コロナ以前の賑わいを取り戻し始めた南都のシンボル、華厳宗大本山東大寺(奈良市雑司町)で5月30日、橋村公英第224世別当(65・同宗管長)の晋山式が営まれた。大仏殿での伝燈奉告法要に臨んだ橋村別当は、全てのいのちの安寧を祈って同寺を創建した本願聖武天皇の願いを追想。世界を覆う戦乱と疫病、人心に苦をもたらす「貪瞋」「驕慢」等の蔓延を深く憂えて、本尊盧舎那大仏にそれらの消除と世界安穏の実現を祈念した。

 橋村別当は、鎌倉時代の大仏師・運慶一門作の金剛力士像が守護する南大門から轅(えん)(輿)に乗って進列。中門を過ぎると輿から降り、大仏殿まで一歩一歩確かめるように進んでいった。大勢の参拝客や修学旅行生も、1300年続く伝統の法儀に結縁。厳粛な祈りの様子に感動している様子だった。

 一際高い須弥壇上に着座した橋村別当は、本尊盧舎那大仏の宝前で伝燈奉告文を読誦し、特に「騒擾報復を重ね、干戈諸処に交わる」世界の武力衝突の連鎖を憂慮。「分断騒擾の焦熱を冷まし、四海静謐」に至ることを祈願し、聖武天皇が願った全ての生きとし生けるものが栄える「動植咸栄」の世になることを熱望した。

 続いて大仏殿裏庭で晋山披露。コロナ禍に鑑みて会食を伴わない形式で挙行し、宗教界内外から480人が参加した。(続きは紙面でご覧ください)

2022/6/9 佛光寺派宗会 親鸞会の対応策を質す 昨年末、本山間近に会館完成


 昨年12月、京都市下京区に浄土真宗親鸞会の「京都会館」が完成、大規模な新聞広告を打つなどアピールを行った。真宗佛光寺派本山佛光寺(下京区)とは目と鼻の先の距離。このため宗会2日目の5月25日、物部修道議員(京都教区)がどのような対応策を考えているかを内局に質した。

 物部議員は、親鸞会について「カルト的な体質」や「善知識信仰」などに問題点があるとしつつ、平易な言葉で、全く仏教のことを知らない人や若者向けのメッセージを発信していることに着目。「毎日のように歎異抄を中心とした法座を開催している。しかし佛光寺では毎日の行事はお茶所の法話だけ。これでいいんだろうか、こういう新興宗教に見習うべき点はあるんじゃないか」と提起した。

 法務・教学担当の廣澤晃隆総務は、親鸞会京都会館には驚いたとし、千葉県・幕張メッセで大規模な大会を開催したことや新聞各紙への連日の広告出稿、さらには大学にもサークルを結成していることなどを把握していると答弁。その教学には自力的な面もあると指摘し、佛光寺の教学とは相いれないとしつつも、積極的な布教姿勢には「刺激」もあるとし、「潰そうとかいうことではなく、切磋琢磨した教団にしていきたい」と述べた。

 物部議員は「親鸞会の人は『真宗聖典』を真っ黒になるくらい読んでおり、勉強しているなと思う。そして信心獲得、私はこの教えで助かったということを堂々と発表している。うちの門徒さんでそんなことを言える人がどれだけいるだろうか」と語り、危機感を持っていかなければならないとした。

 親鸞会は1958年、元本願寺派僧侶の高森顕徹会長により設立。他教団への激しい法論に特徴がある。本部は富山県射水市にある。

2022/6/2 コロナ禍の善光寺御開帳 期間延長、参拝者6~7割か 廻向柱 触れる前にアルコール消毒 団体から個人へ 参拝が変化 林明晋寺務総長に聞く


林寺務総長 7年に一度の盛儀「善光寺御開帳」が開かれている信州善光寺(長野市元善町)。新型コロナウイルスの影響で1年延期し、さらに密を避けた安心・安全な参拝のため期間を1カ月延長(88日間)するなど、様々な対策を講じて開催されている。コロナ禍の御開帳も6月29日の結願法要まで残り1カ月を切った。コロナ以前との変化や御開帳の意義について林明晋寺務総長(58、 天台宗教授院住職)に聞いた。


回向柱の参拝は「片手」でと呼びかけられた 善光寺境内には混雑状況などを知らせる電子掲示板が各所に設置され、「前立本尊」と善の綱で結ばれた回向柱に触れる際には前後2回のアルコール消毒がアナウンスされる。回向柱の参拝者が触れる部分には抗菌のため「光触媒コーティング」も施された。

 御開帳後半に入った5月下旬。初夏を思わせる晴天のなか、山門まで参拝者の列が連なり、回向柱の下では頭を垂れて真剣な面持ちで静かに回向柱に触れる人々の姿があった。境内は賑わいをみせるが、「いつもの御開帳に比べれば一日あたりの参拝者数は少ない。6割から7割程度です」と林寺務総長はいう。「講中」を組織しての団体参拝がかつては多かったが、平成の時代から徐々に減少。年配者が多く参加していたバス旅行はコロナ感染を敬遠したためか大きく減った。これに代わって今回の御開帳には個人旅行の参拝が増え、若年層の割合も増えている印象だという。参拝者層の変化やコロナ禍の影響は土産店にも出ている。「(売上が)前回と比べても低いようです。旅行に行ったと言いづらいのか、お土産を配りづらいことが大きいかもしれません」とその影響をみる。

 善光寺は御開帳の回向柱だけでなく、びんずる尊者やお戒壇めぐりなど〝触れる参拝〟が多い。「デルタ株が流行した時もマスクと消毒という対策を講じればクラスターが起こらないという知見も得られていた」と林寺務総長。とはいえ一昨年に1年の延期を決めた時には、コロナの状況は見通せず、実際に開白直前までは中止の可能性も念頭に入れていた。それゆえ期間の半分を過ぎた今は「何事もなく過ぎている。運がいいですし、開催できて良かった」と安堵する。

参拝者の列は山門まで続いた 御開帳は善光寺だけの行事ではない。地元の商工会議所で組織する「善光寺御開帳奉賛会」とも協力して行う。長野市は、令和元年(2019)の台風19号によって大きな被害を受けた。「水害の被災者に配慮して年末年始の忘年会や新年会を自粛する方々もいました。その後にコロナに突入してしまった。ですからこの地域は全国より半年早い不況状態になった」と振り返る。御開帳は近年のこうした閉塞状況から回復するイベントにもなっているようだ。

 そもそも御開帳の歴史を繙けば、天災や疫病と深い関わりがある。江戸時代の等順大僧正(大勧進第80世貫主)は、天明3年(1783)の浅間山大噴火の際に被災者救援に尽力し、天明5年の三回忌に善光寺本堂で回向し、これが現在の御開帳の始まりとされている。天明の大飢饉では「疲弊した民衆のために出開帳で浄財を集めたそうです」(林寺務総長)。善光寺如来は古代インドの疫病を鎮めるために出現したという縁起もある。台風被害に新型コロナウイルス、ウクライナ危機などを受けて行われている今年の御開帳は、その歴史や意義を思い起こさせる。「コロナ禍で看取りができない別れ、自粛の疲れや人に会えないストレスなど、みんなが傷を抱えていると思います。そこに手を差し伸べることができるのが御開帳。宗教行事でもあるけど、旅行や日常の楽しみを思い出してもらえる行事でもあります」と参拝者を迎えている。(棚井)

2022/6/2 日蓮宗村雲御所瑞龍寺 詫間日郁門跡が晋山 尼門跡の歴史を継承


宗門唯一の門跡寺院に晋山した詫間門跡 日蓮宗唯一の門跡寺院である本山村雲御所瑞龍寺(滋賀県近江八幡市)で5月22日、詫間日郁(にちゆう)第16世門跡(67)の晋山式が営まれた。詫間門跡は廃仏毀釈をはじめとする幾多の苦難に言及し、法難を乗り越えて法燈を繋いできた歴代門跡(大比丘尼)の遺徳を敬慕。時に感極まりつつ、晋山奉告文で「聖徳太子ゆかりの八幡山よりお題目を弘め、近江八幡市の標柱となるべく精進する」と誓った。

 晋山式を祝うかのように、陽光に輝く八幡山。その麓からの稚児行列十数人が、ロープウェーに乗って山頂へ。詫間門跡は、石段を上がって山門まで来た稚児たちと共に本堂前へと練り歩いた。

 入堂後、田中恵紳宗務総長が詫間門跡に住職承認を伝達。続いて早川日章・大本山本圀寺貫首から、新門跡の証である拂子が手渡された。詫間門跡はさらに、歴代門跡の系譜である『歴譜』に加判。名実ともに村雲御所の門跡に就任した。

 法要後の式典で、宮内庁京都事務所の石原秀樹所長が祝辞。「瑞龍寺と皇室との親しいお繋がりは今もなお続いている」と述べ、尼門跡寺院としての歴史の継承を寿いだ。

 田中総長は、宗門の布教伝道に果たす女性教師の役割に期待。「猊下にはその先陣として、一層のご活躍を願う」とした。

 内野日総・総本山身延山久遠寺法主の祝辞を、浜島典彦・同寺副総務が代読。国内外に「仏教の慈悲を根本とする心のあり方」を発信するよう要望した。小西理・近江八幡市長は、「本市のシンボル」としての興隆に期待。インド・ブッダガヤなどからも祝意が届けられた。

 京都各本山をはじめとする宗内高僧や檀信徒らが大勢参列。全国日蓮宗女性教師の会の有志らも駆けつけ、式衆を務めた。

 老朽化した伽藍を改修

 瑞龍寺は太閤豊臣秀吉の姉で関白秀次の生母である日秀尼が文禄5年(1596)、高野山で割腹して非業の最期を遂げた我が子の菩提を弔うために創建。京都・嵯峨野の村雲にあり、代々皇女や公家の娘を貫首(尼門跡)として迎えたため、村雲御所とも称された。

 江戸中期の焼失後に今出川堀川(京都西陣)に移って諸堂を再建。昭和36~38年、秀次の居城だった八幡城の本丸跡石垣上に伽藍を移築した。

 近年は老朽化による破損や荒廃に加え、地盤沈下などで堂宇が倒壊の危機に。令和2年11月に執事長に就任した詫間門跡は、私財も投じながら修復大改修工事を推進。この日は、晋山と竣工が重なる慶事となった。

 詫間門跡は、車や重機が入れない険しい山頂の寺域に「麓から材木を背負って登る」などしてくれた工事関係者ら全ての協力者に感謝。それぞれの代表者に、涙に咽びながら感謝状を授与した。

【詫間門跡略歴】昭和29年11月10日京都市生まれ。ジュエリーデザイナー・染繍作家を辞め、平成23年8月に得度。在家出身だが幼少期から僧侶になりたいと願い、以前から仏教の勉強を続けていたという。同27年1月、京都府南丹市・長久寺住職。令和2年11月に瑞龍寺執事長となり、今年3月に空席となっていた門跡に就任(終身制)。晋山式には子どもや孫たち、親族も参加した。

2022/6/2 大谷派宗会 同朋会運動の原点確認 発足60年 真宗再興と念仏の奥義 行財政改革検討委を新設

 
初の常会で所信を表明する木越総長 真宗大谷派の第72回宗議会(常会・沼秋香議長)が5月26日、京都市下京区の宗務所で始まった。昨年10月に就任した木越渉宗務総長は初の常会での施政方針演説に臨み、今年発足60年を迎えた同朋会運動の原点を確認。宗門の生命線である同朋会運動の「確かめ」が必然的に来年迎える「宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」厳修の意義の「確かめ」となると強調し、「念仏の奥義を、全身を挙げて聴き尋ねてまいりたい」と表明した。(続きは紙面でご覧ください)

2022/6/2 駒澤大禅文化歴史博物館 『嗣書』複製へCF挑戦 草案本 道元禅師が見た光景を再現


道元禅師が草案本を執筆した興聖寺(京都府宇治市)に伝わる『嗣書』草案本の断簡 駒澤大禅文化歴史博物館(東京都世田谷区)は、道元禅師の主著『正法眼蔵』のうちの『嗣書』草案本の複製に向け、クラウドファンディング(CF)による資金調達に挑戦している。「清書本にあたる修訂本と一緒に展示したい。道元禅師が見たであろう両本が並ぶ光景を再現できる」と意気込む。目標額は300万円。

 今年迎える同館の開館20年(6月1日が開館記念日)、同大の開校140年を記念して実施。同館の予算は運営や維持管理といった基本的な経費だけのため、新たな試みに挑戦をしようとCFを始めた。目標額に達しなかった場合も複製プロジェクトは実行する。

 『嗣書』は『正法眼蔵』のうちの一巻。法統を受け継ぐことを指す「嗣法」に関する道元禅師の考えが中国での見聞を交えて記されたもので、草案本は、中国から戻った道元禅師が最初に開いた最古の道場「曹洞宗初開道場」と呼ばれる興聖寺(京都府宇治市)で執筆された。草案本が残っているのは『嗣書』のみとされる。

 同館は『嗣書』の清書本にあたる修訂本を所蔵。数少ないとされる道元禅師の真筆だ。入手した2007年当時から草案本を複製したいと考えていて、2010年頃から草案本を保有する各地の寺院で状態確認などの調査を進めてきた。

 草案本は江戸期に26葉に裁断され、複数の寺院などに納められたと香積寺(広島県三原市)に伝わる草案本副本に記録される。現在、所在が明らかなのは8府県の11カ寺に残る13葉のみで、複製するのはこれら断簡が対象となる。

 塚田博学芸員によると、修訂本とは万葉仮名の違いも見られ、推敲の跡が認められるという。「両本を比較するのは道元禅師の思想をうかがい知る上で重要」と強調。「このプロジェクトを通して、所在不明となっている残りの草案本断簡の発見につながるかもしれない」と期待を込める。

 複製は、今年度に関西・西日本の6カ寺にある7点から始める。来年度以降に北陸・東日本にある残りの断簡に着手する予定。

 CFの期間は7月8日まで。ウェブサイト(https://readyfor.jp/projects/zenpaku2022)から寄付できる。問い合わせは同館(☏03ー3418ー9610)。

5月

2022/5/26 沖縄本土復帰50年に寄せて 基地のない復帰の願いかなわず 今も日米の〝植民地〟 岡田弘隆・真言宗豊山派沖縄山長谷寺住職


沖縄戦で犠牲になったすべての人々の名前を刻む平和の礎(2016年撮影) 5月15日、沖縄は本土復帰50年を迎えました。政府と県が共催し、東京と那覇で記念式典が行われましたが、祝賀ムードとは違い県民からは疑問の声が上がっています。なぜなら、日本国憲法の下で基本的人権と米軍基地のない復帰を願った沖縄県民は、50年間裏切られたままだからです。米軍が何をやっても文句ひとつ言えない政府に、絶望しています。なぜ日本政府は米軍とアメリカ政府にものが言えないのか?私なりに解明したいと思います。

 まず一つに考えられるのが「日本はアメリカの植民地」ではないかということです。植民地主義とは自国民の移住を目的とするものと、異民族を政治的・軍事的・経済的支配下に置くものがあり、日米関係は後者です。日本には「主権」がありません。その証拠に、「横田空域」で知られるように、日本の首都圏と新潟から静岡までの広大な上空が今でも米軍横田基地の管制空域です。沖縄周辺の空も同じで、日本の空の主権がアメリカに握られているのです。

 また在日米軍は日本では超法規の存在です。これは「日米地位協定」に基づいたもので、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落(2004年)しましたが、米軍が規制線を張り、日本の警察も消防も入れず、政府は抗議もできませんでした。この不平等を解消するために「地位協定」の改正をしようともしません。日本は司法もアメリカに支配されているからです。

 司法の支配は砂川事件(1957年)に始まります。東京・立川の米軍立川基地の拡張に反対する人々が基地内に入り、起訴された事件は、一審東京地裁が「無罪」判決を出しました。これに対してアメリカ大使が直接介入し、当時の田中耕太郎最高裁長官と連携をとり「米軍や安保条約のような高度な政治的問題には、裁判所は憲法判断はできない」と、安保条約と米軍は、日本国憲法の上位にあると判断。この判決により、アメリカが日本の司法を支配することになり、それが今でも続いています。

 植民地・日本の、さらに植民地が沖縄です。国土面積の0・6%しかない沖縄が、米軍基地の70%以上を押し付けられているからです。これが私の試論です。

 なぜ私が政治に関心を向けているのか。その原因と理由は、先の大戦における仏教教団や住職らの戦争協力にあります。釈尊は「不殺生」を説きましたが、日本仏教は教団をあげて戦争に協力し、釈尊の教えよりも国家を優先させる「国家仏教」になってしまったのです。

 明治政府は神道を上に置きつつ、仏教も優遇しました。政府が対外戦争を始めた時に、日本仏教は批判することができませんでした。日本の戦争は諸外国に甚大な被害を与え、国民にも大きな被害を与えました。この戦争責任を自覚してこそ、真の仏教は再生できると考えます。

 高校時代に、住職である父はなぜ戦地に出かけたのか、と疑問を持ちました。それが私の出発点になっています。その父は戦争で病気になり、戦病死の認定を受けました。「仏教が再び戦争に協力してはならない」というのが私の信念です。日本が再び戦争を起こさないようにできるか。これが私たちに問われています。そのためには政治への関心と監視が必要だというのが私の観点です。 

おかだ・こうりゅう/昭和21年(1946)東京生まれ。弁護士。真言宗豊山派泉福寺住職を経て、平成18年(2006)に沖縄戦の犠牲者供養のため糸満市に沖縄山長谷寺を開き、住職を務める。

2022/5/26 日宗連セミナー 社寺教会施設の活用を考える 災害時「いのちを守る」 宗教界と行政、歩調を合わせる


セミナーでは戸松氏をコーディネーターに6氏が発題した 日本宗教連盟(日宗連)は18日、東京・芝公園の増上寺慈雲閣で宗教者や行政担当者ら6人をパネリストに第6回宗教法人の公益性に関するセミナー「防災・減災、災害時の地域協力―社寺教会施設の活用を考える」を開催した。宗教界と行政という珍しい顔合わせに約80人が出席。災害時に「いのちを守る」という点で歩調を合わせた。大震災や豪雨被害の支援体験なども報告された。東京都宗教連盟(都宗連)と宗教者災害支援連絡会(宗援連)が後援した。

 日宗連の宗教文化振興等調査研究委員会委員長の戸松義晴氏(全日本仏教会理事長)をコーディネーターに進行。

 最初に災害避難所としての宗教施設のあり方を研究し、提案を続けている稲場圭信大阪大学大学院教授が発表。東日本大震災後の宗教と防災を俯瞰し、自治体と寺院や神社との協定締結が進んでいるが、中には「自治体が宗教法人にお願いするケースも増えている」とした。稲場氏の調査によると、指定避難所、指定緊急避難場所、自主避難場所なとで自治体と協力関係を結んでいるのは4千カ所を超え、「国や自治体には災害対策基本法に基づいて8万前後の避難所があるが、その5%が宗教施設」と説明した。

 2年前の熊本・球磨川流域豪雨災害を体験した球磨村・曹洞宗神照寺住職の岩崎哲秀氏は、動画をまじえて発表した。「一夜明けたらこんな状態だった」と軒先まで浸水した町の様子を説明。高台にあるお寺と併設している保育園は難を逃れた。「道路は水路になり、指定避難所は水没」。寺の両隣にある本願寺派寺院と川の対岸の神社が避難者を受け入れた。

 岩崎氏の保育園には120人が避難した。「どの避難所を選択するか。子ども、高齢者、ペットがいるかにもよる。より安全にいのちを守れる場所、安心して避難生活を送れる場所を選択する」と報告した。

 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(避難生活担当)の重永将志氏は政府の方針を発表。近年の豪雨災害で高齢者に被害が集中していることから、有識者会議が個別の避難行動を提言していると説明。具体的には高齢者や障がい者、医療的なケアが必要な人たちは、一般的な体育館では困難なため、小規模でも宗教施設での受け入れに期待感を示した。

 文化庁宗務課課長の石﨑宏明氏は、宗教法人の防災・減災活動を「有意義な活動」と評価。そうした取り組みをさらに行いやすいようにと昨年、「宗教法人が行う社会貢献活動について」と題する事務連絡文書を発出したことを報告した。

 東京都総務局総合防災部防災対策担当部長の八嶋吉人氏は、帰宅困難者対策としてのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、事業防災リーダー制度、そして一時滞在施設の3点について報告した。首都直下型地震では92万の帰宅困難者を想定。現在、公的施設と寺院を含む民間施設を合わせて約45万人分を確保しているが、「それでも5割に満たない」として、民間の一時滞在施設の必要性を訴えた。そうした施設は一人あたり3日分の水、食糧、簡易トイレ、毛布などを備蓄している。(続きは紙面でご覧ください)

2022/5/26 曹洞宗 梅花流創立70年 6775人の講員を表彰 来年5月、4年ぶり全国大会


「梅花流創立記念奉讃御和讃」を奉詠した特派師範ら 曹洞宗の詠讃歌流派「梅花流」が、昭和27年(1952)の道元禅師700回大遠忌に際して創立されてから今年で70年を迎え、東京都港区の檀信徒会館で17日、御詠歌の興隆に貢献した人を顕彰する記念表彰式が行われた。講員ら参加者約60人が、6700人以上の表彰者を祝った。節目に合わせ、バリトン歌手の平林龍氏が二部合唱向けに編曲した御詠歌も発表された。

 表彰されたのは年功賞(講員歴5年以上)3825人、奨励賞(同20年以上)2950人の計6775人の講員。佐藤みえ子氏(東京都・宗保院)と市川君子氏(神奈川県・泰翁寺)に、それぞれ年功賞と奨励賞の表彰者を代表して賞状と記念品が授与された。宗務所や宗務庁が推挙した僧侶や寺院への表彰もあった。

 また、東日本大震災をきっかけに始まった被災者を御詠歌で元気づける活動「スマイルアゲイン梅花のつどい」代表の北野良昭・正伝師範(滋賀県高島市・正傳寺住職)や、これまで詠讃歌2曲を作詞・作曲した歌手の南こうせつ氏に感謝状が贈られた。

 「スマイルアゲイン」はこれまでに21回開催。参加者から集まった浄財計976万3815円を曹洞宗義援金に寄付し、被災地に心を寄せる。北野氏は「詠讃歌を歌う皆さんの生き生きとした顔から、音楽布教の大切さを感じている。これからも真心が被災地に届くようにがんばっていきたい」と語った。

 大分市の同宗勝光寺の三男として生まれた南氏は「父と母の喜ぶ顔が浮かんだ」と挨拶。「お坊さんの姿を見て、帰ってきたようでリラックスしています」と話し、デジタル化などで複雑な時代に、「人の交流を支えるお寺の役割が大事になってくる」と寺院の活躍に期待を寄せた。多死社会を迎える中、高齢者が集うカフェを自坊で開きたいとの願望も明かした。

 特派師範の僧侶13人による「梅花流創立記念奉讃御和讃」の奉詠後、平林氏とソプラノ歌手の北野里沙氏が、栗原麻樹氏のピアノ演奏でミニコンサートを開催。編曲した23曲のうち8曲を歌い、オペラの名曲も披露した。

 加療中の鬼生田俊英宗務総長に代わって賞状を授与した岩井秀弘伝道部長が、来年5月24日に東京・有明の東京ガーデンシアターで4年ぶりとなる全国奉詠大会を開催すると発表した。

 創立70年の祝辞を寄せた管長の石附周行・大本山總持寺貫首も来年の全国大会への参加を約束し、「コロナ禍で2年間全国大会が開催できなかったのは残念」と述べ、瑩山禅師の教えを引きながら“あるべきときはあるべきように暮らす”ことを勧め、「研鑽の時間と受け止め、日々努力していただきたい」と垂示した。

 梅花流の講員数は10万9381人(2021年9月末時点)で、欧米にも梅花講が広がっている。

2022/5/26 日本香堂 母の日参り俳壇 入選作決定 ラジオで発表 「孫はしゃぐ 母の日参り からのパフェ」


 ㈱日本香堂(土屋義幸社長)は今年の「母の日」に向け〝母との心の絆〟を詠んだ俳句作品を公募した『母の日参り 俳壇』を開催。その入選作4句を同社提供のTBSラジオ朝のワイド番組「パンサー向井の#ふらっと」(月~木)内の「ふらっとポスト」コーナー(8時41分頃)の5月2・3日放送回で発表した。併せて、同社サイト内特設ページでも入選作を掲載している。

 番組MCの向井慧さんは過去のテレビ番組で俳人・夏井いつきさんに作品を絶賛されたことから、同社が推進する新たな供養習慣「母の日参り」への協力を番組に持ちかけ「俳壇」が実現。4月4日~22日の期間中、「母の日」「母の日参り」をテーマとした俳句作品の投稿を番組発信を中心に呼びかけたところ、短期間で335句が全国から寄せられた。

 事務局で一次選考の後、入選作の選句は向井さんと、俳句にまつわる著書もあるフルーツポンチ・村上健志さんに委任。5月2・3日の放送で選んだ句が披露された。入選4句は以下の通り。

「風薫る 母の面影 妻の背に」(岡山県 かじゅるおさん)
「孫はしゃぐ 母の日参り からのパフェ」(東京都 遠音さん)
「母の日も 母の居りたる 厨かな」(東京都 破れ蓮さん)
「母の字の ポテサラレシピ 夏始」(兵庫県・江國優笑さん)

 番組では向井さんが、「風薫る~」について、「ご存命であろうがなかろうが、面影を感じる瞬間がある。素敵な作品」と講評。「孫はしゃぐ~」を選んだ村上さんは、「お墓詣りは寂しさもある。でも、お墓の前で笑い声が起きること、それが母へのプレゼントになる」と「母の日参り」の意義も話していた。

2022/5/19 親鸞聖人と蓮如上人の尊骨 東西越え初の分骨法要 大阪 平野区慧光寺(東)から八尾市顕証寺(西)へ 約350年没交渉、5年前に交流復活


慧光寺本堂での「引渡之儀」 「混迷を深める現代にあって、浄土真宗も東だ西だと言っている場合ではない」―そんな思いから大阪市平野区の真宗大谷派慧光寺(近松暢昭住職)が恪護する親鸞聖人と蓮如上人の御尊骨が、八尾市の浄土真宗本願寺派顕証寺(近松真定住職)に分骨され、11日に両寺で奉送迎法要が営まれた。来年の親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年に向け、両派の結束が深まる機縁となった。

 慧光寺と顕証寺は共に蓮如上人の六男である蓮淳僧都(滋賀県大津市の近松坊舎2世)が開基。河内の本願寺教団では重要な寺院で、東西分派に際しては共に西本願寺に所属した。しかし江戸時代中期の貞享年間に争いが発生し、慧光寺は東本願寺へ転派。以後、およそ350年間没交渉だったが、平成29年(2017)に慧光寺で親鸞聖人750回御遠忌が営まれた際に交流を復活。現在では報恩講などで拝礼しあう仲である。

 慧光寺の暢昭住職は「ある時、当寺に御尊骨が残されているというお話をして、顕証寺さんにも当然あると思っていたら、ないと仰る。そこから話が進んだ」と振り返る。尊骨はいずれも創建当初から伝わるもので、指先ほどの大きさだという。「派を越えた分骨は浄土真宗800年の歴史で初めてのこと。準備を重ね執行できて本当によかった」と笑顔を見せた。

唐櫃に入れられ顕証寺境内に入る御尊骨 慧光寺で法要を営んだ後、舎利器に納められた尊骨が厳かに顕証寺の真定住職に引き渡された。その後、約3キロ離れた顕証寺まで送迎。唐櫃に入れられた尊骨が山門に入ると、大勢の門信徒が一斉に念仏で出迎えた。というのも、この日、顕証寺は750回大遠忌の祥当。尊骨が奉安されると、大谷派僧侶による正信偈が読誦された。東西本願寺で共に読まれる正信偈だが、節回しは全く異なる。顕証寺本堂で大谷派流の正信偈が読誦されたのも初のことだという。

 山階照雄・本願寺派津村別院輪番、禿信敬・大谷派難波別院輪番、澤田秀丸・同八尾別院輪番が祝辞。山階氏は「東西本願寺のお寺では、住職は『うちはお西だ、お東だ』という意識があるようだが、門徒さんはあまり気にせず、親鸞さんの尊い教えを伝えてくれるお寺と思っている」と話し、慧光寺と顕証寺が交流を深めたことを「新しい東西本願寺の出発」と称えた。

 顕証寺の真定住職は「ビッグバンにも匹敵するような、大地や空気が感動で振動する日」と大感激。両近松がこの尊骨を護持し、門徒ともどもみ教えに救われる道を進むことを誓った。

2022/5/19 比叡山サミット35周年テーマ発表 気候変動と宗教者の責務


 改選後最初の天台宗第152回臨時宗議会(細野舜海議長)が10日、滋賀県大津市の宗務庁に招集された。阿部昌宏宗務総長は施政方針演説で、今年8月4日開催の比叡山宗教サミット「世界宗教者平和の祈りの集い」35周年記念大会の概要を発表。「気候変動と宗教者の責務」をメインテーマとして、国内外の宗教者が地球環境を護持する持続可能な生活のあり方などについて討議するとした。比叡山の聖域に宿る「草木国土悉皆成仏」の教えを世界に発信する重要な機会になりそうだ。

 午前中に国立京都国際会館(京都市左京区)で寺島実郎・日本総合研究所会長が基調講演を行い、国内外の宗教者がシンポジウムを展開する。午後は比叡山延暦寺(滋賀県大津市)に会場を移し、山上から国内外に向けて平和の祈りを奉修する。

 オンライン配信もフル活用し、空間や国境を超越した大会にするという。12日には東京出張の一環として阿部総長らがバチカン大使館を訪問し、宗教サミットへの協力を要請した。

【35周年テーマ深読み】 リオから30年
 35周年の大会テーマは「気候変動と宗教者の責務」と発表された。周知のように日本政府は「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表した。すなわち地球温暖化の要因である温室効果ガス排出を実質ゼロにするというものである。環境問題には倫理的なアプローチも求められ、その意味では時宜を得たテーマであろう。

 また1992年6月、国連環境開発会議(地球サミット)がブラジルで開催された。リオサミットの名称で知られており、それから30年の節目となる。このリオサミットで提起されたのが、「持続可能な開発」という命題だった。今日、各教団が取り組んでいるSDGs(持続可能な開発目標)の源流といえるものだ。比叡山からのメッセージに注目したい。

2022/5/19 真如苑が摂受心院誕生110年祭 MURAYAMA用地「真如ヤーナ」と命名 


 真如苑(総本部:東京都立川市)9日、立川市泉町の応現院と秋田市の秋田支部を二元中継で結び、開祖伊藤真乗教主の妻で霊能の祖である伊藤友司夫人(1912~1967)の誕生を祝する「摂受心院お誕生110年大祭」を厳修。真如苑が所有する立川市と武蔵村山市にまたがるプロジェクトMURAYAMA用地(日産村山工場跡地)の正式名称が「真如ヤーナ」と発表された。

 今年は開祖と摂受心院が秋田へ布教に赴いて60年を記念して秋田支部と伊藤真聰苑主が導師を務める応現院を結んで法要が執り行われた。

 法要後、苑主が挨拶に立ち、信徒は接心修行によって困難をこえ勇気と希望を見出すことができること、その接心の基は霊祖である摂受心院であることを伝え、それぞれの場所で参座したすべての信徒とともに、摂受心院の誕生を祝う言葉を述べた。

 続いて、02年に真如苑が取得した約106万平方㍍のプロジェクトMURAYAMA用地の正式名称を“真如ヤーナ”と命名したと発表。ヤーナはサンスクリットで「救いへの道・乗り物・教え」の意であることを解説し、真如ヤーナは開祖の名前である真乗(まことののりもの)そのものであると説明した。

 さらに「人と自然が共生し、あらゆる存在の個性輝く、思いやりと安らぎに溢れた新たな聖地を築いて参ります」と決意を口にした。そして、“真如ヤーナ”の出発として6月18日に行われる「火と水の浄儀 済摂会」にむけて、真如苑の利他行である三つの歩み(お救け・歓喜・奉仕)に励んでいくよう呼びかけた。

 苑主の挨拶ののち、中継を結んだ秋田支部と応現院で、それぞれ一名の代表信徒がみ仏尊前で感謝の言葉を言上。開祖・霊祖の姿や言葉に触れて心動かされ、今日まで精進を続けてきた経験と、さらなる精進の誓いを述べた。

 本法要は、真如苑の霊能の祖であり、法母として親しまれる開祖の妻・摂受心院の誕生を寿ぎ、報恩実践を誓う法会。開祖誕生大祭(3月28日)と、一年の精進を奉告する秋の一如まつり(11月上旬)とともに、三大祭の一つ。

2022/5/19 仏教書総目録休刊 刊行会は解散


 仏教書普及のため毎年発刊の『仏教書総目録』が2022年版(2021年9月刊行)で休刊。刊行元の「仏教書総目録刊行会」(刊行会)が今年6月末に解散する。

 休刊と解散の大きな要因は来年10月から開始されるインボイス制度。業務・費用の負担が大幅に増加するため、会員社らで議論し、継続が困難との結論に至った。代表幹事の石原俊道・大法輪閣社長は「全国の書店で仏教書フェアを開くなど活動してきたので、会員社とは別の形で何かできないか、今後相談したい」と話した。

 昭和58年に発足した刊行会は、仏教書、聖典、経典、辞典・事典、仏教の文化事象に関わる仏教書を収録した総目録を刊行。最終号2022年版には100社、約3500点が収録されている。会員社は春秋社、誠信書房、大蔵出版、大法輪閣、東京大学出版会、中山書房仏書林、法藏館、吉川弘文館の8社。

2022/5/12 全日仏 葬儀実態調査の結果を発表 全葬連協力 僧侶の資質向上に課題 50%が失礼な態度経験 葬儀に僧侶必要は76%


僧侶の失礼な態度を経験した葬儀社は50%に達した(報告書より) 全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)の協力を得て葬儀に関する実態調査を実施した(公財)全日本仏教会(全日仏、戸松義晴理事長)は4月25日、その調査結果をHPを通じて発表した。遺族や葬儀社に対する僧侶の態度に厳しい指摘がなされる一方で、今後の葬儀においても「僧侶が必要」との回答は76%に及んだ。また自由回答では忌憚のない意見が提出されている。

 調査は、「今後の寺院、葬儀、僧侶のあり方の考察にあたり、葬儀に関わる僧侶と葬儀社との関わりについて、実態を把握すること」を目的に昨年9月から10月にかけて行われた。設問は10項目のほか自由回答を設けている。全葬連に加盟する1269社が対象だが、回収率は18・6%(236社)に止まった。

 直近1年間で僧侶が携わらなかった葬儀について「5~20%」の割合が40・7%だった。だが、「20%以上」は17・8%で葬儀の2割近くは僧侶不在の可能性がある。関東が高く、新型コロナの影響が考えられる。

 僧侶が遺族に対して失礼な態度をとったり、遺族への寄り添いが感じられないと回答したのは、半数に上った。「遺族に対し横柄な態度、言葉遣い」55・1%、「お布施でもめる」42・4%、「日程を強引に決める」41・5%が上位を占めた。

 「今後の葬儀に際しての僧侶の必要性」については、「絶対に必要」11・9%、「必要である」64・4%と76・1%が認めている。「あまり必要でない」「必要でない」は10%ほどだ。必要な最大の理由は「葬儀の導師であり葬式に不可欠だから」と約6割が回答。一定程度は葬儀における僧侶・仏教界の存在意義を実感しているようだ。

 全日仏関係者は、自由回答の意見を踏まえて「一般常識の欠如やマナーの悪さが指摘されている。調査結果を研修会等に活かして僧侶の資質向上につながればと思っている」と話している。

 回収率の低さを指摘する葬送事情に詳しいジャーナリストは「各地の葬儀社が仏教界に遠慮した様子がうかがえる。回答することで生じかねない寺院との摩擦を回避するためだと考えられる」と解説する。

 調査結果は、全日仏HP(http://www.jbf.ne.jp/info/detail?id=16091)からダウンロードできる。問い合わせは全日仏(☎03―3437―9275)まで。

自由回答から(抜粋)

~僧侶の失礼な態度など~
▶式に遅れてきたにもかかわらず「遅れて申し訳ありません」の一言もなく遺族も嫌な思いをした。
▶葬家にとって悲しみや関係者の対応等で大変な状況であるにも関わらず、日程調整や戒名、お布施などの事項を決定するのに、寺へ呼びつける方が多くいる。
▶式場が自分のお寺ではないと機嫌が悪くなり、お花を使った祭壇を作ったこと、故人とのお別れで棺に花を入れることなどは葬儀社の金儲けのためにしている風習だ、と法話で葬儀社批判をする。
▶遺族の意向は聞かず、火葬式や一日葬を認めない。
▶9時から17時の間しかお寺は業務をしていないので、その間に全ての事柄を行ってほしいと言われた。
▶遺族からのお布施の金額が少ないため、葬儀社でその分負担しろと言われた。
▶火葬場で飲酒され、遺族と話の行き違いで暴力を振るわれ大変だったことがある。
▶一般社会人の常識欠如、立場をわきまえていない。非課税の意味を全く理解していない。
▶現状のままだと寺院を含めて葬送文化が廃れる。インターネット等の紹介僧侶の方が常識的である。
 
~評価や提言~
▶寺院にて月一回「カレーの日」を開催し、食育を行っている。町内に9ケ寺の寺が存在するが、社会活動を1ケ寺が行っていて、社会的な役職を務めているのが1ケ寺、他の7寺院は社会的な活動に参画していない。
▶浄土宗のお寺様で生活困窮者の方のご遺骨や引き取り手のないご遺骨を合同合葬していただいている。
▶特定の菩提寺が無い方でも信じる心のある方、僧侶がいてくれることで安心していただけると考えます。実際そのような印象を受けます。
▶亡くなった人の遺族に寄り添い、心のケアをするには必要不可欠な存在であるべきだが、日常で寄り添いにくい環境になってきたことが僧侶離れに拍車がかかっていると思う。今一度、存在意義を示すことが必要だと思う。

2022/5/12 遺骨奉還連 韓国への返還求め外務省に要望書 朝鮮半島出身徴用者の遺骨


白眞勲参院議員(右から3人目)とともに外務省を訪れ、要望書を提出する宗教者ら 「遺骨奉還宗教者市民連絡会」は4月26日、東京・霞が関の外務省を訪れ、太平洋戦争中に朝鮮半島から徴用されるなどして日本で亡くなった民間人の遺骨の返還を求める岸田文雄首相宛の要望書を提出した。

 アジア大洋州局の船越健裕局長と面談する予定だったが、韓国の尹錫悦新大統領が派遣した「政策協議代表団」の対応のため欠席。同局の武田克利日韓交流室長が代理出席した。

 要望書では、政府の依頼を受けた全日本仏教会の調査で明らかになった寺院などに残される1018体と、長崎・壱岐島の曹洞宗天徳寺に安置される131体の民間徴用者らの遺骨について、早急な返還を求めるとした。

 提出にあたっては、戦没者の身元を特定する遺骨のDNA鑑定拡大に尽力するなど遺骨収集問題に取り組んできた立憲民主党の白眞勲参院議員も同席。「まさに在日韓国人という私の出自からしても一刻も早くご遺族のもとにお返しすべきだと考えている」と強調。日本との関係に前向きな姿勢を示す尹大統領の就任で、「日韓の新しい枠組みが期待される中、早期実現に向けて私も取り組んでいく」と語った。

 同連絡会は武田氏に対し、天徳寺に参拝した上で、「遺骨を前にして、政治的な課題にとらわれずに人道的な立場から検討してほしい」と訴えた。同連絡会によると外務省は、遺骨返還を巡る交渉は日韓両国ともに現在も続いているとの認識だが、両政府間の合意にいたっていないと述べたという。

同連絡会メンバーでもある天徳寺の西谷徳道住職は、遺骨とともに埋葬されていた靴底や布切れなどの遺品を持参。同寺に安置されるのは、引き揚げ途中に壱岐島で難破した船に乗っていた朝鮮半島出身者たちの遺骨で、遺品は遺体が身につけていたものと推測される。武田氏は「生活が伝わってくるようだ」と関心を持って話したという。

 西谷氏は「亡くなった人たちは祖国に帰りたかった。その思いが何よりも大切にされるべき。それを後回しにしてほかの都合を優先していれば、いつまでも返還できない」と力を込めた。

 遺骨返還に長年取り組む同連絡会世話人の殿平善彦・浄土真宗本願寺派一乗寺住職は「私たちは犠牲となったこの遺骨の上に立って生きている。遺骨を届けるのは日本人の責任だ」と述べた。

 同連絡会からほかに、事務局長の森俊英・浄土宗正明寺住職、木村眞昭・本願寺派妙泉寺住職、松本智量・本願寺派延立寺住職、真宗大谷派僧侶・森修覚氏が同席した。同連絡会はこれまで2回、遺骨返還についての要望書を厚生労働省に出しているが、今回初めて両国間の交渉に関わる外務省に提出した。

2022/5/12 「上州月夜野七福神」発足 群馬県みなかみ町に30㌔の巡礼路 地域振興へ観光施設も札所に


月夜野びーどろパークでの開白法要。『大般若経』転読も執り行われた 群馬県北部の旧月夜野町(現みなかみ町)にある7カ所の寺社などを巡る「上州月夜野七福神会」(会長=鈴木潔州・曹洞宗嶽林寺住職)が発足し、7番札所の月夜野びーどろパークで4月30日、開白法要が営まれた。鬼頭春二町長ら参拝者約35人が、巡礼興隆と地域振興を祈念した。

 同七福神は約30㌔の巡礼路。札所は1番・嶽林寺(布袋尊)、2番・曹洞宗如意寺(寿老人)、3番・本山修験宗三重院=事務局=(毘沙門天)、4番・三峯神社(恵比寿)、5番・茂左衛門地蔵尊千日堂(福禄寿)、6番・曹洞宗常恩院(弁財天)、7番・月夜野びーどろパーク=瑠璃光院=(大黒天)。

 月夜野びーどろパークは、ガラス製品を製造・販売する上越クリスタル硝子が運営する観光・体験施設。地域振興に向け、寺社以外も参加するのが同七福神の特徴で、札所名は「瑠璃光院」とした。大黒天は2階に安置する。

 法要は鈴木会長を導師に、札所の寺社による神仏習合の形式で執り行われた。三峯神社の高橋和昭禰宜が修祓で場を清め、三重院の村上圓信代表が七福神を開眼。入退堂では法螺貝を吹き鳴らした。鈴木会長が法語を唱え、『大般若経』の転読も修された。二胡奏者の李英姿氏の奉納演奏もあった。

 記念式典で利根西部仏教会の山岸弘文会長が祝辞を述べ、「人の心を耕し、信仰を呼び起こす七福神巡りとなってほしい。巡礼をきっかけに参拝者が真実心を持てるよう祈念する」と話した。

 発起人となって約1年前から計画を進めてきた鈴木会長は「七福神が大きな福を招いてくれると信じている」と力を込め、「県内で最も広いみなかみ町を歩いて回れば新たな発見もある。ぜひチャレンジしてほしい」と期待を込めた。

 今後瑠璃光院で毎月1日、札所の輪番で祈祷が行われる。毎年5月の大型連休頃に大祭を営む予定。各札所のスタンプを集めると、大祭後の抽選会で記念品が贈られる。

 今月25日に三重院の主催で歩いて札所を巡る企画がある。問い合わせは同院(☎0278―25―3578)。

4月

2022/4/28 修復秘仏を背負い麓から本堂へ 1200段の石段 14人が交代で 滋賀・観音正寺 5月22日から御開帳 


篤信者に背負われゆっくりと山道を登る秘仏 聖徳太子が推古天皇13年(605)に創建した滋賀県近江八幡市繖山(きぬがさやま)の観音正寺(岡村遍導住職)の「御前立」千手観音菩薩像が修復された。20日に住職、信徒、修験者らの手により麓から1200段の石段を登って本堂まで運ばれ、開眼供養が営まれた上で宮殿に奉安され、新たに秘仏となった。修復は聖徳太子1400年御遠忌大法会事業の一環で、来月下旬から33年に1度の御開帳となる。

 西国霊場第32番でもある観音正寺は創建以来、観音・聖徳太子信仰の聖地だったが、1993年に不幸にも火災で本堂や国の重文だった秘仏千手観音像を失った。その後、本堂を再建し2004年に丈六仏の千手大観音像を本尊に迎えたが、さらに2012年になって偶然、旧秘仏千手観音の「御前立」が発見された。この御前立を新たに秘仏にしようと観音正寺は発願し、冨田工芸(京都市東山区)の冨田珠雲仏師に依頼して修復。宮殿も新調した。

 繖山の麓から岡村住職、信徒、修験者らが登嶺。白木の箱に厳重に封印された重さ約30㌔の秘仏を担いだのは老若男女14人。交代で、時に急角度にもなっている道を少しずつ休みながら慎重に運んだ。雲一つない晴天の下の新緑に、「さーんげさんげ、ろーっこんしょうじょーう」の大音声が響いた。60年前に旧秘仏が修復された際も同じルートだったという。

 道中の日吉神社では、住職らが神前で般若心経一巻を読誦。神仏習合の豊かな文化が残る近江の信仰を示した。山頂の観音正寺本堂前では深尾増男宮司が代表して岡村住職に秘仏受け渡しの儀を行った。

 岡村住職が本堂裏手で開眼供養を行い、華道家の川瀬敏郎氏が松と牡丹の壮麗な生け花を奉納した。秘仏は御開帳前ということで、参列者には一切姿を見せなかった。岡村住職は「もう開帳という行事はできないと思っていた」が、御前立の発見を機縁に修復、登嶺、宮殿の造立を経て再び開帳ができるようになったとし、「これで焼失からの復興を成就させていただきました」と感無量の面持ちで話した。

 御開帳は5月22日から来年7月10日まで。また御開帳終了後も2025年12月まで御遠忌大法会は続き、期間中には脇侍仏の開眼や聖徳太子絵伝の公開などさまざまな慶事がある。

2022/4/28 成田山新勝寺 岸田照泰貫首が晋山 お練り1800人 地域を挙げて慶祝

 
くす玉で地元の人々から祝福される岸田新貫首 真言宗智山派大本山成田山新勝寺で24日、岸田照泰・中興第22世貫首の晋山式が執り行われた。お練り行列では、岸田貫首をはじめ職衆、稚児、地元の小中高校生など約1800人が参道を練り歩いた。境内での盛大な庭儀の後、大本堂で晋山式・奉告大護摩供を厳修。岸田貫首は奉告文の中で、疫病、環境破壊、戦乱に対し、「宗教界に置く者の責務極めて重きを覚ゆ」と述べ、世界平和と人類の共生の実現に貢献することを誓った。

 参道の門前町には、晋山を祝うのぼり旗やくす玉が用意され、お練りする岸田貫首に何度も花束を贈呈する場面が見られた。前日にも約380人の稚児行列が行われ、地元を挙げて岸田貫首の晋山を祝った。

 大本堂前で営まれた庭儀式では、古式に則り厳かな声明が境内に響いた。続いて「銚子はね太鼓保存会」による太鼓演舞を奉納。岸田貫首による稚児加持も行われた。

 大本堂内に移動して行われた奉告大護摩供では、約300人が入堂。本堂に入りきらない参列者は、別室でモニターにより、暗闇の中で炎と相対する岸田貫首の姿を見守った。

 岸田貫首は晋山傳燈奉告文で、地域の教育・福祉・文化に尽くした歴代先師や成田山の教化活動に報恩謝徳の思いを披露。世界でまだ生命冒涜の風潮が続いていることに、「晋山を契機として、さらに一段高く御本尊不動明王の御本誓の体得に努め〝生命尊し、いただこう、生き抜く力〟を唱導し、以って済世利人の仏行に精進して世界の平和と人類の共生の実現に貢献せん」と誓った。

 記念式典では、真言宗智山派の芙蓉良英宗務総長、成田山奉賛会の山崎正昭会長、成田市長の小泉一成氏が祝辞を述べた。最後は奉祝歌「今ぞ讃えん」が奉唱され、新貫首の誕生を慶祝した。

2022/4/28 黄檗宗宝蔵院 重文「鉄眼版一切経」保存に動く 収蔵庫老朽化し版木が危機に


6万枚の版木が積み上げられている様子は圧巻だが、棚も歪みが目立つ 京都府宇治市の黄檗宗大本山萬福寺塔頭宝蔵院(盛井幸道住職)に恪護されている「鉄原版一切経版木」は6万枚にも及ぶ一切経の版木で、うち約4万8千枚が国の重要文化財に指定されている。ところがこの保存が近年、危機に瀕しているというのだ。背景は60年以上前に建てられた収蔵庫の老朽化。同寺は普茶料理付きの見学会や写経会でこの鉄眼版の重要性を知ってもらおうと呼びかけ、収蔵庫の建て替えを目指す。

 鉄眼版は熊本出身の僧侶・鉄眼道光(1630~82)が修行の中で、人々に広く仏典を伝えるためには版木が必要だと痛感し、中国から来日した隠元禅師に相談。隠元禅師は快く鉄眼に7千巻の経巻を授け、これを基に版木が製作された。

 版木は吉野桜でできており、縦26㌢、横82㌢、厚さ2㌢。これが6万枚あるのだから、保存してきた先人の労苦は並々ではなかっただろう。ちなみにこの版木で使われている字体が、現在、紙面などでも使われている「明朝体」の元になった。出版文化的にも非常に重要なものだ。

 だが、本堂裏山の収蔵庫は1961年の竣工。すでに60年以上が経ち、扉やスチールの棚に歪みも出つつある。さらに当時の技術的な問題で冷暖房装置は一切なく、湿気によるカビや虫喰いも懸念される。耐震も不十分だ。「本来、版木は縦置きにすべきなのですが平積みにされており、下部のものの損傷は本当に心配。きちんと調査しなければと思っているのですが」と役僧の黒木啓宗氏。宝蔵院は世襲ではなく数年おきの輪番で住職が交替する寺なのも、継続的な調査になかなか手が付けられなかった要因の一つのようだ。

 一部の版木は現在でも貝葉書院(京都市)の職人がやってきて手で刷っているが、全容は未解明といっていい。黒木氏によると「実は、どれが重文の版木でどれが未指定なのかもはっきりしていない」とのことだ。文化庁は実態を把握していく方針だという。

 宝蔵院では、「てつげん版木の会」を設立し、法話、見学、普茶料理のセットを提供して志納金を勧募している(1人2万円から)。4月30日には第3回目となり、順次開催予定。黒木氏は「鉄眼さんは一切経のために全国を巡って集めた喜捨を、延宝の大坂洪水や天和飢饉の時には被災者を救済しようとすべて放出し、それから改めて完成させました。そういった事績もこれから顕彰していきたい」と話している。

 5月28日には鉄眼版大般若転読法要を営む。

2022/4/28 駒澤大学竹友寮 柿田宗芳寮監が「卒寮」 27年間で500人超巣立つ 「確たる信仰を持ってほしい」

 
退職祝いに寮生OBらから寄贈された『大般若経』を手にする柿田氏 曹洞宗の宗門関係校・駒澤大に設置される子弟育成に向けた学生寮「仏教研修館竹友寮」(東京都世田谷区)の寮監、柿田宗芳氏(65)が3月末に定年退職を迎えた。27年間にわたり僧侶への一歩を踏み出した学生たちを導き、送り出してきた柿田氏。「卒寮」にあたって思い出とともに、僧侶育成に携わる心構えを聞いた。
     
 昨年末、退職を聞きつけた卒寮生から『大般若経』600巻が贈られた。寮監に就いて初めての寮生たちが発起人となってOBに寄付を募り、退職祝いに準備したものだ。曹洞宗の宗侶にとって大般若経の法要は欠かせないため、柿田氏は「入手するのは悲願だった」と喜んだ。

 国際NGO「シャンティ国際ボランティア会」(東京都新宿区)に勤務する日比洸紹氏(35)も大般若経を寄贈した一人だ。2005~09年に柿田氏から手ほどきを受けた。4年通して在寮する学生は珍しい。「寮監先生は曲がったことが嫌い。おだやかで安心できる人でした」と、貴重な青春時代を寮生活に捧げた理由の一つにその人柄を挙げる。

 NGOで働こうと決意したのは柿田氏の影響もあるという。「未熟だった私たちにも一人の人間として接してくれました。僧侶の役割は仏事だけではない。社会の中で生きてこそだと、視野を広げてくれました」

 在家から僧侶の道へ

 寮生から慕われた柿田氏は、父が医院を営む在家の出身。上智大を卒業後、大手の金属製品メーカーに入社した。自らの弱さを自覚する経験から、次第に僧侶に憧れを抱くようになり、27歳で駒澤大に入学。仏門をたたき、卒業後は大本山永平寺(福井県永平寺町)で4年間修行した。

 歴代寮監は高名な人物が務めていたから、話がきたとき最初は辞退した。周囲の勧めもあり、決心したのは1995年。「振り返ってみれば楽しかった。天職だったのかもしれない」。そうは言っても若い学生たちと寝起きをともにし、範を示すのは並大抵のことではない。

 就任当初は寮生が多く、60人以上の指導に一人であたらねばならなかった。中には跳ねっ返りもいる。「優しすぎても厳しすぎてもだめ。いくつも顔を用意しないといけません。雷を落とすこともありましたが、その分こちらもつらくなる」。現在の寮生数は20人台にまで減ったが、苦労に変わりはない。

 「寮生が騒ぎを起こしたり、知らない人になっていたりする夢を見るんです」。後任の寮監が引き継ぎのため約1年前に着任するまで、うなされることも少なくなかった。「最近になってようやくぐっすり眠れたような気がします」と表情もやわらかい。

 竹友寮史上、最も長く寮監を務めたであろう柿田氏。退職までに500人以上の寮生を送り出してきた。学生は僧堂での修行に備え、儀式や食事の作法をはじめ、先輩への接し方なども学ぶ。竹友寮出身の修行僧はレベルが高いことで知られている。

 柿田氏は、僧侶への一歩を踏み出したばかりの学生たちとどのような気持ちで過ごしてきたのか。伝えたかったことをこう話す。「一番大切なことは確かな信仰を持つことです。人口とともに檀家数も減り、寺院はこれまで通りとはいかなくってくる。信徒に寄り添う強い気持ちが必要になる。だから一層、確たる信仰を持って僧侶として自分を高めていってほしい」

 柿田氏はこの春、大本山永平寺別院・長谷寺(東京・西麻布)の知客に就いた。

2022/4/21 大樹孝啓座主が比叡山「御拝堂」 座主職継承を宗祖に奉告


浄土院・宗祖御廟に参拝する大樹座主 天台宗総本山比叡山延暦寺(滋賀県大津市)は15日、大樹孝啓第258世天台座主(97)が比叡山全域(東塔・西塔・横川)の諸堂を巡る「御拝堂」を執り行った。昨年11月22日に上任した大樹座主は、宗祖伝教大師や諸仏諸菩薩に座主職の継承を奉告。天台座主の就任に際して営まれる伝統厳儀に偶然出会った参拝者らは、その勝縁に感激しながら共に手を合わせるなどしていた。

 大樹座主は午前9時40分、宗祖伝教大師が約1200年前に全ての命の平和を願って灯した「不滅の法灯」を護持する延暦寺一山の総本堂・根本中堂に入堂。絶対秘仏である宗祖謹刻の薬師如来像を奉安する内陣中央の壇へと進み、仏法興隆と宗祖の本願成就に努めて「社会福祉の増進に貢献せん」と誓う諷誦文を力強く奉読した。

 東塔地域の大講堂・前唐院・戒壇院・阿弥陀堂・法華総持院東塔や無動寺明王堂を巡拝し、午後からは浄土院へ。十二年籠山行を満行した後も浄土院で修行に励む侍真の渡部(わたなべ)光臣・延暦寺一山本行院住職の出迎えを受け、宗祖御廟宝前に参拝した。

 続いて西塔地域に入り、法華堂・常行堂・釈迦堂へ。横川中堂から元三大師堂に参って横川地域の巡拝を終え、千日回峰行を満行した藤波源信大阿闍梨や信徒らが待つ飯室谷不動堂へと向かった。

比叡山全域を巡る御拝堂を終え、謝辞を述べる大樹座主 そして午後4時半、比叡山麓坂本の滋賀院門跡に到着。出迎えた叡南覺範・延暦寺一山建立院住職(次席探題)と挨拶を交わした後、宗派・本山の両内局や宗務庁僧侶らと共に祈りを捧げ、「御拝堂」を無魔成満した。

 水尾寂芳延暦寺執行の祝辞を受けた大樹座主は、「今日は初めての所まで参拝でき、感謝している。私一人の力では到底成しえなかった。たくさんの方々のお世話によって実現したものと感激している」と謝辞を述べた。

 大樹座主は今月27日、聖徳太子御廟がある叡福寺(大阪府太子町)と和宗総本山四天王寺(大阪市)に参拝し、聖徳太子宝前で座主上任を奉告する。同日、京都御所にも行く予定。

 5月11・12日には東京で、皇居での「御記帳」などを行う。31日に比叡山延暦寺で歴代天台座主の血脈譜に署名する「傳燈相承式」に臨み、名実共に天台座主に就任する。

2022/4/21 五百羅漢寺に麒麟像が復活 夢告きっかけに制作


奉納された麒麟像 羅漢像など300体以上の群像で知られる東京都目黒区の五百羅漢寺(無垢品宗生住職)で8日、仏師・加藤巍山氏が制作した麒麟像が奉納され、開眼法要が執り行われた。流出してから初めて、麒麟像が同寺に復活した。

 2年前の2020年2月。同寺の仏像修復に携わった修復家・長井武志氏の夢に麒麟があらわれたのが制作のきっかけ。彫るよう告げられたと受け止めた長井氏が、知人の加藤氏に彫像を勧めた。

 同寺はかつて麒麟像を所蔵。開基(1695年)の松雲元慶禅師が羅漢像などとともに制作した。現存する白澤像と対をなして境内の護法神宮に安置されていたが、廃仏毀釈の影響もあり、明治期以降に流出したとみられている。536体あった仏像も多く失われ、現存するのは羅漢像287体を含む305体(都指定文化財)となっている。

 流出したオリジナルに代わるものという位置付けでなく、別の麒麟像として安置するとの前提で制作。加藤氏はクラウドファンディング(CF)で費用を募り、昨年2月下旬までに331人から目標額350万円を上回る518万5千円が集まった。

 制作期間は約5カ月で、木曾ヒノキ寄木造りの高さ74㌢、幅27㌢、長さ53㌢。白澤像と大きさを合わせた。モデルとしたのは、東京・下町で生まれ育った加藤氏にとって思い入れが強いという日本橋の麒麟像。羽はなく、尊顔や肉体表現にオリジナリティを出した。

麒麟像を挟んで写る仏師・加藤氏(左)と無垢品住職 昨年中に奉納する予定だったが、コロナ禍のため延期が重なり、この日、CFの支援者ら参拝者約25人とともに開眼法要が営まれた。胎内には世の中が平和で、人々が安穏に暮らせるよう願う「祝聖文」が、CFの支援者名とともに納められた。

 加藤氏は「天や仏の意志によって彫らされていると思うときがある」と明かした上で、麒麟像の造立は必然で、ロシアのウクライナ侵攻後に奉納がずれ込んだのも意味があるとし、「いま麒麟が現れたのはとても象徴的に感じる」と話した。

 無垢品住職は制作の話が持ち上がってからの2年間に新型コロナの感染拡大だけでなく、戦争も始まったことに触れ、「祝聖文が皮肉にもふさわしいものとなってしまった。苦しみのさなかにある人の心の支えになり続けるよう願いたい」と述べ、「麒麟像が奉納され、大変心強い」と語った。

 同寺はオリジナルの麒麟像を現在も捜索中だ。

2022/4/21 全日仏青 西郊理事長の就任祝う 行動する青年僧に期待


抱負を述べる西郊理事長 全日本仏教青年会(全日仏青)は11日、横浜市内のホテルで西郊良貴理事長(神奈川県仏教青年会、天台宗)の就任祝賀会を開催した。西郊理事長は謝辞に先立ち、ロシアのウクライナへの侵攻のため多くの犠牲者が出ていることに自ら黙祷を呼びかけ、列席者全員で祈りを捧げた。「これからの青年僧の役割として、何をすべきかを模索し、失敗もして、考えていきながら行動したい」と抱負を語った。

 祝賀会は、埼玉仏教青年会の飯野隆宥会長による開会宣言で幕をあげた。全日本仏教会の戸松義晴理事長、天台宗宗務総長代理の舩戸俊宏財務部長の祝辞の後、巨大スクリーンで菅義偉前首相のビデオメッセージが紹介された。(続きは紙面でご覧ください)

2022/4/21 ウクライナ救援1200万円 本願寺派がユニセフへ寄付


早水専務理事に目録を手渡す石上総長 浄土真宗本願寺派は14日、ウクライナ危機への緊急募金として日本ユニセフ協会に1千万円を寄付した。寺院・門信徒による「子どもたちの笑顔のために募金」の中から拠出された。京都市下京区の伝道本部を訪れた日本ユニセフの早水研専務理事に、石上智康総長が目録を手渡した。早水氏から総長へは感謝状が渡された。

 ユニセフによると、ウクライナでは現在、710万人が国内避難民となり、そのうち最大で280万人が子どもだと見られるという。病院、給水施設、学校、幼稚園も破壊され、衛生、教育、保健・医療などライフラインも絶たれている。周辺国へ逃れた450万人以上の難民の90%が女性と子どもだ。3千円の募金で浄水剤9493粒、3万円で毛布57枚に変わるとされている。

 総長は「何らかの意味で仏教徒として平和貢献したい、すべきだと思って、ブッダダルマの精神でさせていただいた」と述べ、戦争中に妹が消化不良になったが薬もない、医療資源もない中で死んでしまった悲惨を振り返った。「第二次世界大戦の悲惨な経験から作られた国連の、重要なメンバーが一方的に戦争をするというのはとても残念」とし、1日も早い停戦、平和を念じた。

 同日、宗会も200万円を日本ユニセフに寄付。園城義孝議長から早水氏へ目録が手渡された。

2022/4/14 第46回正力松太郎賞が決定 


 仏教精神による青少幼年育成に尽力している個人・団体を表彰する(公財)全国青少年教化協議会(全青協)主宰の第46回「正力松太郎賞」本賞に、淨教寺仏教青年会(奈良県奈良市/代表=島田春樹・浄土真宗本願寺派淨教寺住職)とNPO法人けやの森自然塾(埼玉県狭山市/理事長=佐藤朝代・真言宗智山派明光寺寺庭)が決まった。今後の活動が期待される奨励賞には、雲龍寺集いの会(栃木県鹿沼市/代表=今井俊宏・浄土宗雲龍寺住職)が選ばれた。6日に発表された。(続きは紙面でご覧ください)

2022/4/14 法華宗本門流大本山光長寺 日蓮聖人御聖誕800年を厳修 「二十八紙曼荼羅本尊」安置


日蓮聖人真筆「二十八紙曼荼羅本尊」を安置して営まれた御聖誕800年法要 法華宗(本門流)大本山光長寺開山である日蓮聖人の御聖誕800年と開創750年を記念して5日、静岡県沼津市の同寺で3座にわたる大法要が原井日鳳貫首を導師に厳修された。

 前日の春の嵐から一転して穏やかな天候となった当日は、午前に先祖代々供養および諸事業円成法要の1座、午後に御聖誕800年慶讃法要、開創750年報恩法要の2座が順次営まれた。

 中心の御聖誕800年法要では、宗祖御真筆本尊で最大の「二十八紙曼荼羅本尊」(タテ247、ヨコ125㌢㍍)を安置。慶讃文で原井貫首は開山の宗祖と光長寺同時二祖(日春・日法聖人)および先師に報恩感謝の誠を言上。地球環境への発信を続けている原井貫首は、気候変動や新型コロナ、ミャンマー情勢、ロシアによるウクライナ侵略を列挙し、宗祖が直面した七難が今日の世界で起きていると指摘。そして「心の蘇生・環境の蘇生を実践し仏国土建設の使命に生きる時なり」と力を込めて奏上した。

 読経のなか、小西日遶管長はじめ四大本山貫首・執事長、金井孝顕宗務総長ら代表者がご宝前に進み焼香した。

 原井貫首の御親教では、日頃からキーワードとして掲げている「蘇生」について説明。日蓮聖人が佐渡島で著した『観心本尊抄』中の「今本時の娑婆世界は三災を離れ四劫を出でたる常住の浄土なり。仏すでに過去にも滅せず未来にも生ぜず、所化以て同体なり」を読み上げた。続けて「これはまさに蘇生のこと。この娑婆世界はたくさんの苦しみで満ちている。本仏のお釈迦さまは修行して、常寂光土をつくられた。これを見本として、お釈迦さまは私たちを指名され、地涌菩薩としてこの娑婆世界を蘇生させなさいと言われている。私どもにはこれを実行するお勤めがある」と自覚と行動を呼びかけた。

 コロナ禍のため1年遅れとなった本法要は規模を縮小して営まれた。原井貫首は改めて参席者に感謝の言葉を述べた。

 法要合間の正午過ぎ、伝道隊と光長寺八品講講員ら約60人が山門から本堂まで団扇太鼓を手に唱題行脚した。散りかけの桜が舞うなか、お題目が境内に響き渡った。
 

 日法聖人のご遺骨か? 御廟所の発掘で出土

日法聖人の可能性がある遺骨はガラスの容器に入れて展示 御聖誕800年に合わせて光長寺では、同時二祖の1人である日法聖人(1259~1341)の御廟所修復に際して発掘調査を行ったところ、小さな骨壺が出土。中には人骨が入っていた。

 科学的調査(放射性炭素年代測定法)により、遺骨の時代が判明した。「鎌倉時代後期から室町時代前期のものであることがわかりました」と原井貫首。日法聖人は、幼少のころから日蓮聖人(1222~1282)のもとに仕え、宗祖の命をうけて現在の沼津周辺の布教に尽力した。こうした時代性と科学的調査から「日法聖人のご遺骨の可能性があるのです」。そのため光長寺の歴史や日法聖人の研究の上でも重要な発掘だとも口にした。御廟所からは、ほかにも江戸期の寛永通宝など古銭類も出土した。

 光長寺では、祖師堂の一角を改装して「歴史展示室」をこの日からオープンした。出土した遺骨をガラス容器に移して展示した。日蓮聖人の真筆曼荼羅など寺宝類も展示している。法要の合間に宗門僧侶や檀信徒らが見学に訪れた。

2022/4/14 萬福寺一山で厳修 隠元禅師350年大遠諱 秋には授戒会を建壇


開山堂で法要を勤める近藤管長ら 黄檗宗大本山萬福寺(京都府宇治市)で3日、開山隠元禅師の350年大遠諱法要が営まれた。新型コロナウイルスの影響で、団体参拝なしの一山のみによる法要となったが、少数の一般参拝者もあり、日本と中国の禅の架け橋となった禅師の大徳に感謝した。YouTubeでも生配信された。

 近藤博道管長を筆頭とする僧侶が厳かに開山堂に入り、隠元禅師の像に平身低頭し報恩。日本仏教ではあまり聞くことができない中国語(唐音)に基づく読経や、豊かな旋律を持つ梵唄、さらに普茶料理(黄檗流の精進料理)でしばしば使われるニンジンやカボチャをたくさん供えた荘厳など、独特の流儀の法要に、隠元禅師が伝えた黄檗禅が今にも途切れず根付き、花開いていることが示された。式衆は開山堂を出て、隠元禅師の墓所「寿塔」を参拝した。

 荒木將旭宗務総長は「本来ならたくさんの方とお参りしたかったのですが、コロナ禍でこのような形にせざるを得ませんでした。しかし厳粛に法要をさせていただき、大遠諱に立ち会えたことは非常に喜ばしいです」と語った。

 近藤管長は「50年前は私は修行僧で、もう50年経ったのかという思い。遠諱は今日で終わりというわけではなく、今年一年があたるわけですので、皆様の都合の良い時にお参りしていただければ」と笑顔を見せた。

 大遠諱記念行事として、法堂など重要文化財の伽藍の修復が完了。10月1日にはその法堂で授戒会が建壇される。このほか、黄檗文化の宣揚と日中仏教文化交流のための様々なイベントも検討しているという。
 
厳統大師号を受ける

 大遠諱にあたり、天皇陛下からの大師号「厳統大師」が下賜された。厳格で綿密な宗旨、宗統、法統を意味している。隠元禅師は寛文3年(1673)に後水尾法皇から「大光普照国師」の国師号を授かったのを最初に、4つの国師号と3つの大師号を授かった。

 近藤管長は「大師号は誰でも頂けるものではない。やはり徳の非常に高い方だということを示すものです」と深く感謝した。

2022/4/14 花まつりスケッチ 智積院、大阪市仏・大阪市仏青


智積院 家族で巡るご朱印あつめ

「ご朱印あつめ」を成満し、好きなうでわ念珠をもらう親子 真言宗智山派総本山智積院(京都市東山区)で3日午前、16回目となる「こども花まつり」が開かれた。金堂で花まつりの法楽を営み、服部融亮教化部長が子どもたちの健やかな成長を祈念して洒水加持。誕生仏に甘茶を灌いだ子には、お菓子や花の種が入ったお土産と当日限定の「こども守り」が手渡された。さらに「ご朱印あつめ」が行われ、近隣の子どもたち数十人とその保護者、参拝者らが参加。満開の桜の下、家族で境内の諸堂を巡る姿が見られた。

 「今日はお釈迦さまのお誕生日だから、おめでとうございますって(言いに行こう)」と子どもに話しかけながら金堂に入る父親も。「ご朱印あつめ」を成満したお堂でうでわ念珠をもらい、歓喜する男の子もいた。(続きは紙面でご覧ください)


大阪市仏・大阪市仏青 お父さんお母さん大切に 3年ぶりに子どもの笑顔

コンクール最優秀賞の福永さんの荘厳な力作 大阪市仏教青年会・大阪市仏教会・大阪青少年教化協議会による「花まつり子ども大会」が6日、天王寺区のクレオ大阪で開催された。一昨年は中止、昨年は「ほとけ様の絵コンクール」の表彰式のみ実施したため、3年ぶりの開催となった。

 おしゃか様誕生ビデオの上映、僧侶による灌仏が行われた。市仏の白井忠雄会長は「毎日しんどくて嫌なことが多いですけど、コロナにかかったらもっとしんどくて嫌ですから、コロナにかからないように元気で新学期を迎えていただきたい。お父さんやお母さんの言うことをきいて、いい子にしていたらお釈迦さまは皆さんを見守ってくれます」と語りかけた。(続きは紙面でご覧ください)

2022/4/7 石山寺1300年と花まつり 源氏物語が紡ぐ花の祈り 大本山石山寺第53世 鷲尾龍華座主に聞く 


桜が咲く参道に立つ鷲尾座主。「花を縁に多くの方々にお参りしてほしい」 日本仏教黎明期の息吹を今に伝える石山寺(滋賀県大津市)の花まつりは、旧暦に従って毎年5月8日に営まれる。午前8時半から灌仏会法要を厳修。本堂には蓮華草などで飾られた花御堂が置かれ、参拝者が誕生仏に甘茶をかけていく。釈尊の生誕を祝う灌仏会(仏生会)は、天平19年(747)開創の古刹・石山寺においても「草創期から続く最も古い行事の一つではないかと思います」。

 そう語る鷲尾龍華座主(34)の幼少期の花まつりの思い出は、石山寺に隣接する石山寺保育園でもらった甘茶飴の味と共にある。「保育園では4月8日になると、みんなでお釈迦さまのアニメを見たり、誕生仏に順番に甘茶をかけたりしました。そしてその後、ピンク色のパッケージにかわいいお釈迦さまの絵が描いてある甘茶飴がもらえた。それがすごく好きでした」

 現在、園児約140人が通う「石山寺こども園」となった同園。鷲尾座主は祖父・父の後を継ぎ、数年前から園児たちに花まつりの法話を行っている。

 「子どもたちは、誕生仏のポーズで花まつりを覚えてくれます。そこで『お釈迦さまはどういうポーズしてた?』と問いかけながら、『天上天下唯我独尊』の意味について、『自分が尊いということは、お友だちも大事だということだよ』とお話ししています。誕生仏に甘茶をかけ、お坊さんが来て話をしたという記憶が子どもたちの心のどこかに残れば、いつか大人になった時に仏教に繋がる縁になるかもしれない。その種まきという思いでお話ししています」

 つい最近まで、大津市仏教婦人会の石山地区主催で、毎年4月8日に花まつりを開催。石山寺の山門前に花御堂を置いて参拝者や通行人に灌仏をすすめ、甘茶を接待していた。「来られた方の中には『小さい頃にこれ(灌仏)、やったことがある。懐かしい』と思い出す方もいました。コロナ禍が終息したら、ぜひ復活させたいですね」

 新暦と旧暦の両方で花まつりを営んでいる石山寺は、四季折々の花々が咲き誇る「花の寺」とも称される。その観音浄土のような境内の美しさの源には、『源氏物語』に代表される王朝文化が育んだ祈りがある。

 紫式部が7日間参籠

本堂の一角にある「源氏の間」。紫式部がここで『源氏物語』を書き始めたと伝わる 平安時代、京から近い石山寺に参拝する石山詣が貴族の間で流行。名立たる女流文学者も石山寺に参籠したが、中でも紫式部がここで『源氏物語』の着想を得たという話は夙に有名だ。

 「紫式部は7日間参籠し、7日目の十五夜に琵琶湖に映る月を見て、『源氏物語』の一場面を構想したと伝えられています」。石山寺には紫式部の現存最古の肖像画とされる「紫式部聖像」(室町~安土桃山時代)が伝来。「描かれている紫式部は文机の上で物語を書いている姿ですが、観音さまのような印象を受けます。(『源氏物語』に基づく法要である)源氏供養の本尊として用いられたとの指摘もあり、水が入った壺から『源氏物語』の複数の場面が吹き出すように描かれています。紫式部が水の清らかさから極楽浄土を観想する「水想観」を行っていた時に、『源氏物語』の主人公・光源氏が水の面に現れたと伝えられており、『源氏物語』は仏教を広めるための方便だったという伝承もあります」。

 石山寺ではこうした故事にならい、旧暦8月の十五夜に紫式部の供養法要を厳修。「だいたい9月か10月に開催しています。その日は夜間拝観を実施し、音楽を奏でたり、月見亭からお月見をしたりしています」

 ではなぜ紫式部をはじめ、歴史にその名を刻む女流文学者たちは石山寺に詣でたのか。「女性が自由に参拝できるお寺が、そんなに多くなかったのではないでしょうか。安心してお籠もりしながら、ゆったりした気持ちで観音さまにお祈りする。そうした時間を過ごす中で、文学的なひらめきが訪れたのではないかと思います」

 紫の道で花々を愛でる

 「源氏絵や屏風絵、様々な調度品、源氏香など、『源氏物語』がきっかけになっている日本文化は非常に多いですね」と鷲尾座主。能などの伝統芸能の演目にも採られている。『源氏物語』は、その後の日本文化を開花させていった創造力の源泉と言っていい。

 石山寺はその名の通り、石の山の上に建てられた寺院。硅灰岩(天然記念物)が織りなす境内の起伏に富んだ風景は、一見すると武骨な印象を受けるが、少し眺めていると優美な曲線で形成されていることに気づく。古代の人々がここを聖地とした理由を垣間見る思いがすると同時に、多様な石の表情は『源氏物語』の多彩な登場人物の表象にも感じられる。

 京阪石山寺駅から東大門へと続く参道沿いに、『源氏物語』に登場する四季折々の花々を植えた「石山紫の道」が近年整備された。絶滅危惧種や稀少種を守り育て、紫式部が愛した花々に想いを馳せる取り組みで、『源氏物語』の魅力を国内外に積極的に発信した鷲尾遍隆第52世座主が中心となって推進した。

 さらに今年から従来の「梅つくし」に加え、「桜まいり」を門前あげて開始。梅と桜にちなんだ料理やおもてなしで、参拝者を出迎えている。「花が咲いていることを縁にして、多くの方々にお参りしてほしい」。父である先代座主の遺志を受け継ぐ鷲尾座主は、静かにそう語った。

 わしお・りゅうげ/昭和62年(1987)大津市生まれ。同志社大学文学部美学芸術学科卒業。種智院大学人文学部仏教学科卒業。昨年12月21日に東寺真言宗大本山石山寺の第53世座主に就任した。

2022/4/7 花まつり号特集 ユニーク/アイデア花まつり 


秩父市塚越 子どもが営む花まつり 新緑の山間に花が舞う
淡いピンク色に彩られた参道を進む子どもたち(フォトさいたま提供) 花々が咲き誇る釈尊の生まれたルンビニー園が出現したかのように花びらが舞い、淡いピンクに色づいた参道を行列が進む。埼玉県秩父市の山間にある集落・塚越に、子どもたちの手によって営まれる花まつりが伝えられている。

 5月4日午前7時。合図の花火が上がると、揃いの半纏の子どもたちが熊野神社を出発し、腰に下げた籠から花びらを散らしながら歩いてゆく。目指すのは、約300㍍先の山腹に立つ米山薬師堂だ。八重桜など季節の花々によって、新緑のなか薄ピンクの絨毯が敷かれたような参道を登る。

 薬師堂は、同じ集落にある真言宗豊山派正福寺の奥の院で、三間四面の浜縁をめぐらせた堂。運んできた誕生仏と花御堂を安置し、一人ずつ甘茶をそそいで手を合わせる。

 お参りをすませた子どもたちは薬師堂の前でぐるりと円をつくり、残った花びらを空に向かって繰り返し舞い上げる。行事としてはおまけのようなものらしいが、花々が満開に咲き誇るようなこの光景を目当てに大勢の参拝者が訪れ、拍手と歓声が湧き起こる。

米山薬師堂前で満開に咲き誇るように舞い上がる花びら(フォトさいたま提供) 子どもたちの下山後、午前11時から「米山薬師御縁日」として、護摩供法要が薬師堂で執り行われ、無病息災や五穀豊穣の祈りが捧げられる。行事がすべて終わり、誕生仏と花御堂を片付けた子どもたちに、ご褒美の金一封が渡される。

 「塚越の花まつり」と親しまれ、県無形民俗文化財に指定されている。月遅れの5月8日に行われていたが、時代の流れに応じて平成元年(1989)から、護摩供とともにこの日に変更された。その特色は、子どもたちの手によって運営されることだ。(続きは紙面でご覧ください)


池田市 お寺でみよう人形劇ラリー 今年は5カ寺で上演
大廣寺では劇団ザッツが「まねっこ鳥」を披露 大阪府池田市で2日、「池田こども花まつり お寺でみよう人形げきラリー」が開かれた。宗派を超えて5つの寺院を会場に楽しい人形劇や紙芝居など、ちょっと懐かしくも楽しい催しがあり、スタンプラリー形式でたくさんの子どもたちがお寺を巡った。ちんどん屋さんの練り歩きも加わって町中、春の陽気にふさわしい大賑わいとなった。

 阪急池田駅北側、池田小学校区の9つのお寺(曹洞宗大廣寺・陽春寺、日蓮宗本養寺、高野山真言宗髙法寺、浄土宗法園寺・西光寺・寿命寺、浄土真宗本願寺派託明寺・弘誓寺)は300年以上に及ぶ「巡回講」という宗派を超えたつながりがあり、毎月の会合が持たれているという。

 この縁から子どもたちの健全な育成のために何かできないか、と、お寺と地域の人達が考えたのがこの人形劇ラリー。人形劇団「せっぽく座」座長の渡辺千芳さん(元池田市議会議長)は「昔からお寺がつながりを持っていた地域の歴史、伝統を知ってほしかったし、さらに言えば、クリスマスは盛り上がるのになぜお釈迦さまの誕生日はそれほどでもないのかな?と盛り上げたい思いもありました」と話す。(続きは紙面でご覧ください)


流山市円東寺 子どもの笑顔を奉納 はなまつりマジックショー
増田住職自らマジックを披露する 子育て世代の流入などで人口が増加している千葉県流山市の真言宗豊山派円東寺(増田俊康住職)では毎年4月8日に「はなまつり」を開催している。大道芸人プリンコちゃんとしても活動する増田住職がマジックショーで楽しませ、明るい子どもたちの笑顔を仏さまに奉納している。

 花まつりには子どもたち約30人と保護者が集まる。檀家以外の参加が多く、「有難いことに子どもの数が増えていて、特に宣伝しなくても来てくれる」と増田住職。お寺によっては土・日に花まつりを行うこともあるが「4月8日の開催」にこだわる。「クリスマスは日にちをずらさないでしょ?4月8日を定着させ、子どもたちに花まつりを知ってもらいたい」。バルーンで飾り付けをし、花まつりの由来などを交えて短く法話をし、その後にマジックショー。子どもたちにはおやつと花の苗をプレゼントする。(続きは紙面でご覧ください)

2022/4/7 愛知県江南市 信長の側室祀る久昌寺解体へ 曹洞宗寺院老朽化で維持困難


歴史を今に伝える久昌寺(生駒氏提供) 織田信長が最も愛した女性と伝わる「吉乃」が祀られる曹洞宗久昌寺(愛知県江南市)が解体される。老朽化に伴い維持が難しくなったためで、来月から工事が始まる。跡地は市に売却する予定。

 同寺は1384年の創建。吉乃が病死した1566年、その戒名「久菴桂昌大禅定尼」から寺号をとって久昌寺と改め、曹洞宗に改宗した。現在の本堂は1925年の再建。大本山總持寺(横浜市鶴見区)の直末で、末寺が8カ寺ある。

 吉乃の生家・生駒家が菩提寺として代々管理している。19代当主の生駒英夫氏によると、東日本大震災後、市から建物の耐震化を求められた際に、老朽化のため補強工事ができない状態だと分かった。建て替える費用までは捻出できず、2013年に解体する方針を決めた。

 檀家は10軒ほどで、1959年を最後に正住職がいなかった。末寺の般若寺(愛知県江南市)が長年兼務してきたが、末寺による4年交代の輪番制となり、2019年から常観寺(同)の杉浦元昭住職が就いている。

 本堂と庫裏が建つ敷地約1700平方㍍を市に売却し、跡地は公園として整備される予定。市に無償で貸している隣接地約2600平方㍍は市に寄付する。

 吉乃は側室でありながら、織田家の家督を継ぐ長男信忠と次男信雄、徳川家康の長男信康に嫁いだ徳姫を生んだとされる歴史的な人物。生駒氏は「吉乃と信長ゆかりの寺がなくなってしまうのは、とてもさみしい。生駒家にとっては大切な先祖。できれば残したかった」と無念の思いを語った。

 宗教法人は解散する意向だが、本尊釈迦如来像や代々の位牌を安置し、同寺の痕跡を伝えるお堂を建立する予定という。先祖のほか信長や家康、豊臣秀吉らの位牌もある。生駒氏は「いつの時代になるか分かりませんが、もしかしたら再建される日が来るかもしれない。歴史的な資料とともに、久昌寺があったことを伝えていきたい」と話した。

2022/4/7 龍谷大学 新学生寮「光輝」が完成 ホテルライクな空間に 全106室完全個室型 

 
セレモニーでは新寮生が大学生活への期待を語った 龍谷大学は3月22日午前、京都市伏見区の深草キャンパスから徒歩8分の好立地にある新学生専用寮「Ryukoku Student Home光輝」の開寮セレモニーを挙行した。学生寮のイメージを刷新する、ホテルライクでおしゃれな空間。寮長寮母夫妻も住み込み、管理栄養士考案のレシピによるバランスのとれた手作りの食事も提供される。キャンパスライフを全面的にバックアップする、24時間安心・安全な新時代の寮が誕生した。

 完全個室型で全106室。家具・家電はもとよりWi-Fiも完備。3月22日時点で女子室が残り10室程度という人気ぶりだ。入寮者のほとんどが新入生で男子・女子半々だという。居室はホテルのような快適さ。実家から両親が訪ねてきた場合などに宿泊してもらうゲストルームもある。

 シェアキッチン付きのカフェラウンジやシアタールーム、ブース形式のスタディルームなど、共用スペースも充実。鉄筋コンクリート造6階建で、月額費用は食事付きで4万6500円から。

新学生寮「光輝」の外観(京都市伏見区) 入澤崇学長は、「学生が光り輝く大学へ」という自身のスローガンを紹介。「活力に満ち魅力あふれる大学とは学生が光り輝く大学のこと。ここに集う学生が、より光り輝く存在へと成長することを期待している」と話した。

 運営会社・共立メンテナンスの中村幸治社長が挨拶。「当社は全国393棟の寮を運営してきた。その経験を結集した日本一の寮が光輝。学生のお役に立てるよう運営してまいりたい」と述べた。

 寮での学生同士のコミュニケーションを活性化する寮生リーダーRA(レジデント・アシスタント)に3人が就任。RAを代表して挨拶した伊良皆環希さんは、「春からの龍大生としての生活が待ち遠しい」と第一声。「イベント企画や地域との交流、SDGsに繋がる企画に取り組みたい」と抱負を語った。

 寮生限定の企業説明会や業界研究会など就活支援も実施予定。英会話スクールやクッキングスクールの無料受講なども計画されているという。

3月

2022/3/24 真言宗豊山派福島2号支所 9日に大震災慰霊法要 1週間後に震度6強 修復した石仏落下


相馬市沿岸部の高台にある摂取院の境内。東日本大震災発生時に被災し、その後耐震補強・修復した石仏諸尊像が今回の地震で再び落下。大震災で損傷した後に補強した石壇は倒壊を免れた 東日本大震災から11年。沿岸部に位置する真言宗豊山派福島県第2号宗務支所は9日、相馬市・相馬妙見歓喜寺の境内にある大震災慰霊堂「慈眼院」で法要を営んだ。林心澄支所長(浪江町・清水寺)と山岡観舟副長(双葉町・自性院)、酒主秀寛布教長(楢葉町・大楽院)が、津波・原発事故で亡くなった全ての人々を供養した。1週間後には同地域を最大震度6強の地震が襲った。

 法要は例年、支所(全21カ寺)の住職らが出仕して厳修。だがコロナ禍のため今年も支所3役のみで営んだ。そのわずか1週間後の16日午後11時半過ぎには、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生。災害への不断の備えの重要性が改めて確認された。

相馬市内の 清水寺別院では石灯籠が倒壊 原発事故で強制避難となり県北部の相馬市内に別院を構えた林支所長は、「浪江の方は燈籠が数基倒れたり、本堂内が散乱したりという程度だったが、相馬の別院の中はぐちゃぐちゃ。大震災の時より揺れの時間が短かったがかなり強く、2回目がひどかった」と振り返り、「その時、いた場所によって感じ方は違う。『大震災の時より揺れた』と言う人もいる」と話した。

 酒主布教長は「楢葉は震度6弱でお寺に大きな被害はないが、(17日午前現在で)水道の水の勢いが弱まってきた」と説明。日頃の備えとして「非常時の生活用水にはお風呂の水を使い、飲用水は備蓄している」と話した。大震災の経験から、「万一の断水に備えて前日の風呂の水を一晩流さない」ようにするなどし、「お寺が一時的な地域の避難所になっても対応できるように常に準備している」


 大震災以上の揺れ 暗闇の高台に避難

相馬妙見歓喜寺にある震災慰霊堂で法要を営む林支所長(9日) 「本堂内も境内もめちゃめちゃ。お墓もずれたり倒れたり…」。相馬市海岸部の高台にある同支所・摂取院の鈴木弘隆住職はそう語り、「11年前の大震災よりも大きな揺れだった」と振り返った。境内には地割れが生じ、屋根瓦も激しくはがれ落ちた。

 大震災発生時、高台にある摂取院本堂の2~3㍍手前まで大津波が来た。檀家の7~8割が自宅を失い、大勢が亡くなった。

 11年の時を経て発生した、今回の大きな揺れ。津波注意報も出された。

 鈴木住職や近隣住民たちは深夜、停電による暗闇の中、大震災の大津波も到達しなかった地蔵堂がある高台へと避難。「皆、11年前の記憶があるから避難が早かった」

 停電は17日午後2時半頃まで続き、断水で給水車が出動。影響はしばらく続いた。「お墓を見に来た檀家さんも(残念そうに)〝倒れちゃったなあ〟と。でも同時に〝これからまた頑張らなきゃいけねぇな〟と気持ちを入れていた」

 震災後の復興事業で巨大な海岸堤防も作られたが、「11年前はそれを越える大津波だった」と鈴木住職。堤防や防潮堤を過信してはいけないとし、「今回の地震で、地域の人的被害がなかったのが幸いだった」と安堵したように話した。

2022/3/24 全日仏理事会 新年度負担金 元に戻る 10月に山梨・身延山大会


 全日本仏教会(全日仏、戸松義晴理事長)は15日、4月からの2022年度事業計画案などを審議する理事会をオンラインで開催した。事業計画案・予算案などをすべて承認した。前年度は負担金を1割カットしたが、新年度は元に戻った。

 前年度は、コロナ禍を考慮して加盟団体の負担金を1割削減した。負担金は8875万円だったが、新年度は9895万円で約1千万円の増額となった。そのため予算総額にあたる経常収益は1209万円増の約1億2317万円。

 新年度事業のうち公益目的事業はほぼ前年度を踏襲。①調査研究活動(時局問題など)、②仏教文化活動 (セミナー、シンポなど)、③広報活動(機関誌発行やウェブサイトなど)④人権擁護活動、⑤全日本仏教徒会議、⑥国際交流、⑦WFB(世界仏教徒連盟)、⑧救援活動支援、⑨大蔵経テキストデータベース支援の9項目にわたっている。

 このうち⑤第46回全日本仏教徒会議山梨・身延山大会は10月7・8日に開催する。2年続けての大会は第32回徳島大会(1985)以来、37年ぶりとなる。ただし大会内容はこれから具体化する模様だ。

 報告事項では今期(第34期)の戸松理事長からの諮問事項の報告がなされた。死刑制度や仏教界におけるSDGs(持続可能な開発目標)などについての答申書が提出された。(続きは紙面をご覧ください)

「死刑」諮問と答申 被害者家族への対応要請
「制度」の是非には言及せず 

 全日仏理事長による各種諮問で、2期続けて死刑問題が諮問されたが、テーマは異なった。前期(第33期)は「死刑廃止について宗教者はいのちの尊厳と人権的見地からどのように捉えるか」であった。今期は「死刑制度を問うとき、いのちの尊厳と人権的見地から仏教者はなにをすべきか」であり、「制度」としての死刑を掲げている。

 答申したのは第34期社会・人権審議会(我孫子高宏委員長)。冒頭で前期答申にある「仏陀のおしえや仏教の教義と死刑が相いれないことは明白」とする記述を再確認した上で、「仏教者に求められている行動にはどのようなものがあるか」を審議したとしている。

 今期は、犯罪被害者家族、加害者家族支援団体、冤罪被害者の人たちからの「提言」に基づき、「死刑制度が存在するが故に『死刑になりたい』と凶悪犯罪の動機になっている事例のあることも学んだ」という。

 全体的には昨年9月のシンポジウム「被害者・被害者家族と共にあるなかで」で提起された課題への対応について触れている。僧侶が被害者遺族にかけた言葉が適切でなかったり、弔いが遺族を置き去りにしたものであったりと、これらに対する取り組みの理必要性を述べている。ただし「死刑制度」の是非には言及していない。

2022/3/24 西山浄土宗総本山光明寺 初の女性法主誕生 沢田教英法主が入山 未来の尼僧のため頑張る


「命ある限り仕える」と話す沢田法主 西山浄土宗管長・総本山光明寺(京都府長岡京市)88世法主に沢田教英氏が7日、就任した。任期は5年。光明寺の820年を超える歴史の中で女性法主は初となる。17日、入山式法要を総本山関係者のみで営んだ後に記者会見した。

 沢田法主は1934年5月、愛知県生まれ。6歳で京都市下京区の安養寺に入り、沢田教然住職の弟子となった。光明寺に隣接する京都西山短期大学ならびに龍谷大学を卒業し、宗務所職員、西山短大職員・非常勤講師を歴任。「もう70年ここにご厄介になり、御忌などにもほとんど出させていただいて、法然上人様、西山上人様を非常に身近に感じております。子どもの頃、紙芝居を見せてもらったりして、本山は自分の家だと思っています。命のある限り、少しでも長くお仕えしたい」と目を輝かせた。

 仏教界を見ても女性法主・管長はきわめて貴重な存在だが「私は男は男らしく、女は女らしく、尼さんは尼さんらしく、と思っていまして、尼僧として皆さんにお会いしたいなと考えています。未来の尼僧さんのために一つ頑張ってみようとも思っています」と、尼僧としての誇りを交え抱負を語った。

                                                                                                                                                                
 沢田法主は女性が悩みを抱え苦しみ、自殺者が増えているような世相に心を痛め「話を聞いて癒しを与えたい」と願っているという。土江賢祥宗務総長は「我々が具体的な事業を考えて応えていきたい。大法尼ならではの社会福祉事業があるのでは」と話した。

 沢田法主は西山浄土宗宗会議員を2008年から8年間務めた。同宗の宗会議員で女性は沢田法主が現時点で唯一。宗外では(公財)全日本仏教尼僧法団副理事長、仏教クラブ(京都)の副会長などを歴任。茶道裏千家の正教授でもあり、自坊安養寺や京都西山高校、花園高校で教えている。

 前任の中西随功法主は昨年7月に晋山したが、その1カ月後に体調を崩し、治療に専念。2月に辞意を表明し速やかに管長推戴委員会が招集され、4日に満場一致で沢田新法主の推戴が決した。

2022/3/24 寄稿 傾聴移動喫茶カフェデモンク 11年目の3.11 天災・疾病、そして戦争 説く宗教から聴く宗教へ 再生していく「場」を開く 金田諦應氏(カフェデモンクマスター)


今年の3.11に石巻市新蛇田復興住宅で開店したカフェデモンク。前列右端が金田氏 東日本大震災から11年。その日私たちは石巻市新蛇田復興住宅第一集会所にいた。ここで開店するのは一年ぶり。感染症に気を遣いながら中庭にテントを張り、寒さ対策のために焚き火台に炭火を用意した。スタッフ全員の胸にウクライナ国旗をあしらったネームプレートを付け、テントの周りにはウクライナの国旗を吊り下げた。

 復興住宅ではコロナ禍でほとんどの自治会活動が困難になった。開店前から火の周りに少しずつ人が集まってくる。私たちの来訪を心待ちにしていたようだ。ここの住人さんとは仮設住宅で活動していた時からの顔なじみが多く住んでいる。久しぶりの再会に、テントの中ではそれぞれ近況を語り合っている姿があった。この一年で亡くなった方も多い。復興住宅には確実に老いと病、そして死の影が漂っていることを感じる。

 話題がウクライナのことになると「人が死ぬ姿を見るのはもう嫌だ」と虚ろな視線で呟く。ここの住人はまさに生と死の狭間から立ち上がってきた人々だ。誰にも増して命と平穏な生活に対して想いの深い人々だ。地震が起こった2時46分に黙祷を捧げる。11年目の3・11は、震災犠牲者への追悼だけでなく世界の平和を祈念する日となった。

 東日本大震災から続く日本各地の災害。新型コロナウイルス感染症。そして2月24日のロシアによるウクライナへの侵攻。この11年間、私たちは天災・疫病そして戦争の中を生きている。歴史を振り返ると、鎌倉仏教の祖師方はまさにそのような濁世を生き、苦悩と対峙しながら己の信仰を問い続けた。
 
 東日本大震災の被災地から始まった臨床宗教師養成は10年目を迎える。その動きは日本各地の大学に広がり、やがて日本臨床宗教師会が設立される。認定制度も整えられ300名ほどの認定臨床宗教師が誕生した。その動きに合わせ傾聴移動喫茶カフェデモンクは全国14カ所に広がっていった。

 先ごろカフェデモンクサミットがオンラインで開かれた。臨床宗教師の社会への定着を、活動現場を通して検証するためだ。第一回は北海道えりも町で活動している「カフェデモンクえりも」の事例が発表された。ここでは精神障がいを抱える人々と臨床宗教師・医療・福祉・行政・住民が協働して心地よい「居場所」を作っている。

 東日本大震災を契機に日本の宗教は、教理・哲理を「説く宗教」から人々の苦悩を「聴く宗教」へと変化しているのを感じる。宗教者は崩壊する世界の最先端に居て、そこから立ち上がる言葉を聴き、全身全霊で応答し続けなければならない存在なのだ。カフェデモンクはこれからも世界が再生していく「場」を開き続けようと思う。(宮城県栗原市・曹洞宗通大寺住職/日本臨床宗教師会副会長)

2022/3/24 日蓮宗宗勢調査 後継者なし43%


 日蓮宗の令和2年(2020)度宗勢調査報告書が日蓮宗『宗報』3月号で発表された。後継予定者がいるかを尋ねる項目では、有効回答4611カ寺のうち、「いる」は2529カ寺(54・8%)、「いない」が1997カ寺(43・3%)だった。

 過去3回の調査結果では、「いる」は63・3%→60・1%→58・1%。「いない」が33・7%→35・5%→35・6%となっている。

 直近2回の「いない」が0・1%~0・2%の差で推移していたのに対し、今回の調査では前回比で7・7%の上昇が見られ、後継予定者は急激な減少傾向にあることが分かった。北陸教区と中四国教区で「いない」の割合が50%以上となった。5割を超える教区が出たことは、前回の調査ではなかった。

2022/3/17 WCRP理事会 ウクライナ和平を模索 国内の両国正教会に働きかけ 核被爆と原発事故 日本に大惨事を訴えていく使命


ウクライナの平和を願い、理事や視聴者らが一斉に祈りを捧げた 世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(植松誠理事長)は10日、京都市内の会議場とオンラインを併用して理事会を開催。ロシア軍よるウクライナ侵攻をうけて、平和に向けた活動について議論した。ロシアとウクライナの両正教会への働きかけや、日本の両国正教会関係者へのコンタクトなどが提案された。今後、事務局が整理して具体化していく。

 植松理事長は挨拶で「いまこの時にでも、泣いて、逃げ惑い、傷ついて、殺されている人たちがいる。加害者もいる。その中で平和を求める宗教者の活動が、あまりに無残に破られてしまう現実がある。だからこそ私たちはもっともっと真剣に平和構築に関わっていかなければならない」と述べた。

 植松理事長はウクライナとロシアへの取り組み案や意見を求めた。三宅善信氏(金光教春日丘教会教会長)は51年前の第一回WCRP京都大会(1970年10月)から間もない12月、先人が戦火のベトナムを訪問した歴史に言及し、「声明だけでは不十分。実際に活動していただきたい」と提案。さらに京都大会に出席したロシア正教会の代表が後にウクライナ教会初代総主教に就任したと解説。三宅氏は「コロナ禍で行きにくいが、ウクライナ宗教界、ロシア宗教界にコミットして具体的な活動ができれば」と話した。

 山本俊正氏(元関西学院大学教授、日本基督教団)は2日に世界教会協議会(WCC)総幹事代行がロシア正教会の総主教に書簡を送り、「平和のための仲介をして欲しい」と伝えているとした。他方、ロシア正教会とウクライナ正教会は犬猿の仲で、ロシア正教会はプーチン大統領を強力に支持。「今回の問題はロシア内部から解決しないと本質は解決しないように思う。訪問できるかどうかわからない。微力ではあるけれども、書面でもいいので私たちの声を届け、ロシア正教会に仲介の労をとるよう働きかけをするのが私たちのできる一つではないか」と提起した。(続きは紙面をご覧ください)

 ウクライナの平和願い祈る

 理事会に先立ち、午前11時から15分間、「ウクライナの平和を願う祈り」がオンラインで行われた。黒住教の黒住宗道教主は、「核兵器使用はもってのほか。駆け引きの道具に用いられないことを祈る」と表明。日本基督教団の山本俊正牧師は「神よ、わたしをあなたの平和の道具としてお使いください。憎しみのあるところに愛を――」で始まる聖フランシスコの言葉を紹介した。立正佼成会の中村憲一郎参務は「絶対非戦・核兵器廃絶」などを訴えた。

 3氏のメッセージを経て、全員で1分間の祈りが捧げられた。

2022/3/17 東日本大震災11年 全曹青・全日仏青・WFBY 被災地で慰霊法要 「寄り添い続ける」決意 新たに


「鎮魂の誓い」を唱和する右から山田、谷、村山の導師を務めた3氏 全国曹洞宗青年会(全曹青、山田俊哉会長)と全日本仏教青年会(全日仏青、西郊良貴理事長)、世界仏教徒青年連盟(WFBY、村山博雅会長)は10日、「東日本大震災慰霊復興祈願法要」を福島県伊達市の同宗成林寺で営んだ。コロナ禍のため昨年同様オンラインで配信し、16団体、約160人が各地から手を合わせた。

 法要は3団体の共催。同寺は震災後に支援活動の拠点となった場所で、各団体の代表者ら少数の僧侶だけが現地を訪問。物故者の慰霊と復興の誓いを込めて安置された納経塔前で、山田会長ら3人を導師に執行された。西郊理事長は新型コロナの濃厚接触者となったため、谷晃仁直前理事長が出席した。

 山田会長が開式にあたって、「震災から年月は経ったが、被災者の皆さまの悲しみは癒えていないことを忘れずに、その苦しみに寄り添いながら活動を続けていきたい」と決意を新たにした。

 またコロナ禍は、相次ぐ自然災害のボランティア活動にも影響を及ぼしているとやり切れない思いを口にし、「世界を一層暗くしているのはウクライナでの軍事侵攻だ」と現在進行中の戦争に言及。「当たり前の日常が突然奪われることを、私たちは震災やコロナ禍で経験してきた。しかし、人の手で、戦争という形でこの平和が奪われることは決してあってはならない」と力を込め、一刻も早い事態の収拾を願った。

 地震が発生した午後2時46分から1分間の黙祷を捧げた後、納経塔に刻まれた碑文「鎮魂の誓い」を唱和。写経は約2千枚が寄せられ、納経塔に奉納した。

 西郊理事長がオンラインで挨拶し、「来年に13回忌を迎える。しっかりと手を携え、法要を執り行いたい」と慰霊を続けることを誓った。

 村山会長は「毎年のこの法要は私たちにとって原点に戻り、改めて誓願を起こす大切なとき。これからも心から応援していきたい」と話した。

 法要は全曹青のユーチューブチャンネルで視聴できる。

2022/3/17 宗会シーズン 天台宗、日蓮宗、御室派、大覚寺派、善通寺派、新義真言宗


 天台宗宗議会 鑽迎大法会最終年度へ 恒常的積立金制度を検討
施政方針を述べる阿部総長 コロナ禍の拡大で2月15日招集予定を延期していた天台宗の第151回通常宗議会(中村彰恵議長)が8~10日、滋賀県大津市の宗務庁に招集された。阿部昌宏宗務総長は施政方針演説で、期間を1年間延長して令和4年度に最終年を迎える祖師先徳鑽仰大法会への意気込みを表明。全国の宗徒と檀信徒に登叡を呼びかけ、大法会の掉尾を飾る宗祖伝教大師1200年大遠忌への結縁を強く勧めた。

 各教区や部、数カ寺単位での団体参拝計画の策定を要請し、比叡山大講堂での報恩法要など、大法会事務局を窓口に対応すると説明。平成24年から始まった祖師先徳鑽仰大法会の総結願法要を来年3月に厳修すると改めて発表した。(続きは紙面をご覧ください)


日蓮宗宗会 グランドデザイン策定へ 寺院統廃合で「特区」構想
施政方針を述べる田中総長 日蓮宗の第120定期宗会(佐野前延議長)が8~10日、東京都大田区の宗務院に招集され、令和4年度予算や法服規程中改正案など総長提出の全議案が可決承認された。同心会議員が議員立法で提出した「日蓮聖人七百五十遠忌奉行準備委員会規程制定案」も一部修正し可決された。施政方針で田中恵紳宗務総長は、「宗門再生」を基本としたグランドデザイン策定の必要性を訴え、「教師に寄り添い、寺院に寄り添い、社会に寄り添い、そして何よりも檀信徒に寄り添う」との決意を表明した。

 就任後、初の定期宗会に臨んだ田中総長は、二日目の施政方針で、「危機意識を共有し、持続可能な宗門とするための努力を継続していく」と表明。諸問題にその都度対処するのではなく、グランドデザイン(日蓮宗長期総合計画)に基づいて「内包する事象から目をそらすことなく対峙し、解決と再生を模索していきたい」とし、宗門機構検討委員会にプロジェクトチームを設置して、計画の策定に取り組むとした。(続きは紙面をご覧ください)


御室派宗会 助成金5割カットで編成
 真言宗御室派の第156回前期定期宗会(尾池文章議長)が3・4日、京都市右京区の総本山仁和寺・御室会館に招集された。16日に任期満了を迎える現内局最後の宗会。吉田正裕宗務総長は施政方針演説で、コロナ禍に直面した任期後半の予算編成のあり方を総括した。(続きは紙面をご覧ください)


大覚寺派宗会 寺号勅許1150年始動
 真言宗大覚寺派(伊勢俊雄宗務総長)は9日、京都市右京区の大本山大覚寺に定期宗会(谷亮弘議長)を招集した。令和4年度予算、各種会議のオンライン出席を可能にする宗規改正、来年迎える弘法大師御生誕1250年事業の概略を可決。令和8年(2026)の寺号勅許(開創)1150年の説明もあった。(続きは紙面をご覧ください)


善通寺派宗会 大法会出仕日程固まる
 真言宗善通寺派の第118次定期宗会(生駒琢一議長)が3日、香川県善通寺市の総本山善通寺内宗務庁に招集された。齋藤弘道宗務総長が施政方針で、「弘法大師御誕生1250年」事業の進捗状況を説明。来年4月23日から始まる大法会では、真言宗各派総大本山、四国八十八ヶ所霊場会をはじめとする各種団体、宗内各支所の出仕日程がほぼ決定したと報告した。(続きは紙面をご覧ください)


新義真言宗宗会 新本坊建設を承認
 新義真言宗(妹川敬弘宗務総長)の第69次定期宗会が10日に招集された。オミクロン株の感染拡大に鑑み、オンラインで開催された。長年の懸案だった総本山根来寺(和歌山県岩出市)の本坊の建築事業が承認された。来年6月6日に善通寺派総本山善通寺(香川県善通寺市)で営まれる弘法大師御生誕1250年記念大法会の準備のため、法要委員会が設置された。(続きは紙面をご覧ください)

2022/3/17 豊山派講習会 LGBTの基礎学ぶ 「いる」前提でコミュニケーションを


LGBTアクティビストの東さんが講演 真言宗豊山派は7日、宗立全国同和推進・人権擁護講習会をオンラインで開催した。公認心理士でLGBTアクティビストの東小雪さんが講演し、葬儀の場で苦悩する当事者の声を伝えると共に、「LGBTは見えなくても〝いる〟という前提でコミュニケーションを」と呼びかけた。

 東さんは同性愛者として、2015年に東京都渋谷区が日本で初めて導入した「同性パートナーシップ制度」による第一号証明書をパートナーと受け取った。ディズニーランドでは人前結婚式を挙行。「自分たちは家族と思っていたが、社会から認めてもらえず、排除されると思っていた。証明書をもらった時は嬉しかった。忘れられない」と振り返った。

 パートナーシップ制度が全国の自治体に広がるなど社会は変化しているが、「知らない人権を守ることはできない。知識として知ることも大切」と学びの重要性を指摘。差別やハラスメントをおそれて周囲に言い出せない、自分を肯定できないといった当事者が抱える困難や誤解について説明。LGBTの葬儀に関わる問題にも言及。男女により戒名が分かれるため望む戒名を頂けない、家族にカミングアウトしていないためパートナーが参列できない等のケースを紹介した。生きている間だけでなく、死後も当事者や家族が傷ついている状況に、「どんな戒名、葬儀にしたいのか。できれば事前に聞いてほしい」と要望した。

 カミングアウトをする人はごくわずかであり、相談しやすい環境作りや、アライ(理解者・支援者)の表明が必要と東さん。カミングアウトを受けた場合には、「わからないことは正直に聞く。カミングアウトしたい範囲の外にばらすことをアウティングというが、誰に伝えているのか・良いのか、確認を徹底すること」と注意を促した。

 LGBTは11人に1人という身近な存在。「見えないからいないと思うのではなく、〝いる〟〝出会っている〟前提でコミュニケーションを見直してほしい」と訴えた。

2022/3/10 全国水平社創立100周年集会 あらゆる差別のない世界へ 「宗祖に帰れ」組坂委員長が期待


発祥の地で改めて差別根絶を誓った 「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と高らかに謳う「水平社宣言」。1922年3月3日、部落差別の根絶のために全国水平社が創立され、この日本最初の人権宣言が発表されてから100年が経った3日、結成大会が行われた京都市東山区岡崎と同じ地に立つロームシアター京都で創立100周年記念大会が開催された。部落解放同盟中央本部が主催。

 冒頭、かつて部落差別により神社への奉納を禁じられた歴史を持つ「吉祥院六斎念仏踊り」が上演された。続いて俳優の峰蘭太郎氏により、西光万吉(浄土真宗本願寺派僧侶)が起草した水平社宣言の全文が読み上げられ、会場は熱気に包まれた。組坂繁之解放同盟中央本部中央執行委員長はこの宣言をもう一度胸に刻み、あらゆる差別のない社会を作らなければならないと挨拶。また大きな被害が出ているウクライナ情勢に鑑み、元執行委員長・松本治一郎の「戦争は最大の差別であり、最大の人権侵害」の語を引き、世界平和にも取り組むと述べた。

 政界や関係団体からの祝辞が寄せられた。公明党の伊佐進一衆議院議員は自身が学んでいる法華経の精神と水平社宣言とは「同じように人類の普遍的な価値を歴史に刻んでいる」と述べた。自民党の二階俊博衆議院議員は欠席したもののメッセージを寄せた。

 部落解放同盟の協力団体で差別戒名の改正などに取り組んできた「同和問題に取り組む宗教教団連帯会議」を代表して、議長教団臨済宗妙心寺派の足立宜了教学部長が賞状を受け取った。足立氏は「今後も強く連帯をお願い申し上げます」と述べ、取り組みを続けていくと誓った。なお宗教界からは全日本仏教会などが来賓として招かれた。

 また、「新たなる決意」も発表された。全国水平社の創立からの部落解放闘争の苦難の歴史を振り返り、戦時中は心ならずも戦争協力したことへの反省も盛り込みつつ、人種や障害などあらゆる差別を許さない包括的な差別禁止法の成立に向けて進むと誓った。その後、創立100周年記念映画「破戒」(島崎藤村原作)の試写が行われた。

 閉会後、記者会見をした組坂氏は宗教界に期待することを問われると「宗祖に帰ることです」と断言。「植木等さんのお父さんの徹誠さんは部落の人ではなかったが解放運動を大変応援してくれた。その徹誠さんは亡くなる時『我、未だ親鸞たりえず』と言ったそうです」と述べ、宗祖のような心で差別に向き合い、社会を変えていくことを期待した。

東西本願寺が水平社100年に寄せ声明

 浄土真宗本願寺派と真宗大谷派はそれぞれ3日、水平社創立100年についての宗派声明を表明した。本願寺派は石上智康総長名で、水平社創立にあたり多くの門信徒や僧侶が「親鸞聖人の同朋精神に立ち還ってほしい」との心で参加したことに触れつつ「当時の教団が十分に応えることができなかったことを重く受け止めたい」と述べ、改めて差別・被差別からの解放を目指すとした。

 大谷派は木越渉宗務総長名で、「憶えば、真宗大谷派は、全国水平社の創立以来、被差別部落のご門徒から、教団の差別土壌、次々に惹き起こす差別事件などに対して、問題提起や厳しい糾弾を受けてまいりました」と深く反省。現在、経典の差別用語「是旃陀羅」の解決に向けて取り組みを進めていることも述べた。

 なお水平社宣言では3項目の決議の一つに「部落民の絶対多数を門信徒とする東西両本願寺が此際我々の運動に対して抱蔵する赤裸々なる意見を聴取し其の回答により機宜の行動をとること」とある。

2022/3/10 宗会シーズン 高野山真言宗、浄土宗、真言宗豊山派


施政方針演説を行う今川総長 高野山宗会 宗派改革の全体像を提示 
 高野山真言宗の第170次春季宗会(赤松俊英議長)が1~3日、和歌山県高野町の総本山金剛峯寺内宗務所に招集された。今川泰伸宗務総長は、本山宗団改革のグランドデザイン(全体構想)を発表。コロナ禍終息後の公平な財務調査の実施や海外開教の拡充、学生増による高野山大学の経営再建、SDGs(持続可能な開発目標)の推進などを掲げた。

 宗費負担額を決める財務調査では、昨秋の宗会後の11月30日に新内局での第1回諮問委員会を招集したと報告。制度調査会内にも財務調査検討委員会を設置したと発表し、「不公平感の是正」に繋げたいと表明した。

 来年に迫った「宗祖弘法大師御誕生1250年記念大法会」では、全国9ブロックの地域伝道団が営む慶讃法会に多くのお稚児さんが参加することを期待。加えて今年がお待ち受け法会の期間となることから、「希望があれば協力させていただく」と全国宗務支所に呼びかけた。(続きは紙面をご覧ください)


執務方針を述べる川中総長 浄土宗宗議会 住職認証冥加料を減額
 浄土宗(川中光教宗務総長)は1~4日、第127次定期宗議会(村上真孝議長)を東山区の京都宗務庁に招集した。令和4年度予算のほか、冥加料規程と監正委員会規程の改正など重要議案を上程。川中総長は「少しでも、浄土宗でよかったと感じていただけるように努力していく」と執務方針で述べた。

 冥加料規程の変更で大きな点は、住職・兼務住職認証冥加料の定額化。従来は「当該寺院の当該年度均等割課金及び等級割課金合計金額の3年分」だったが、これを1~5等級寺院は400万円、6~10等級は300万円といったように5等級刻みで分類し固定化。もっとも低い55・56等級は5万円となっている。わかりやすくなっただけでなく、寺院によっては大幅な値下げにもなっている。従来、最上級寺院では4千万円近い認証冥加料となっていた。(続きは紙面をご覧ください)


施政方針演説をする鈴木宗務総長 豊山派宗会 6月から総登嶺が始動
 真言宗豊山派(鈴木常英宗務総長)の第157次宗会通常会(川田興聖議長)が1・2日に東京都文京区の宗務所に招集され、令和3年度収支補正予算案、令和4年度収支予算案など予算関連6議案が上程され、全案が可決承認された。

 令和5年の弘法大師御生誕1250年の記念事業として今年6月から総本山長谷寺(奈良県桜井市)への総登嶺が始まる。鈴木宗務総長は施政方針演説で記念事業の進捗状況を報告。総登嶺に併せて6月15日には浅井侃雄化主を大導師に開白法要を長谷寺御影堂で執行、来年12月31日に結願法要を厳修することが決まった。正当を迎える来年度は5月15日に長谷寺で慶讃法要を執行することも正式に決定した。

 布教資料や宗派の各種発行物を通して「この祝賀の高揚感を高めるべく、関連記事及びスローガン等を出来得る限り掲載する」として、記念事業への意欲を示した。(続きは紙面をご覧ください)

2022/3/10 ウクライナ支援 佼成会 国連2機関へ2千万円  真如苑 新たに日赤に1千万円 


 立正佼成会一食平和基金運営委員会(委員長=熊野隆規教務部長)は5日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により深刻化する人道危機に対して、2千万円の緊急支援を発表した。

 支援金は支援金は、WFP国連世界食糧計画(国連WFP)と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)にそれぞれ 1千万円がおくられ、ウクライナ国内や近隣諸国へ避難している人々への食糧支援などに充てられる。

 真如苑(総本部=東京都立川市)は4日、伊藤真聰苑主を導師に応現院(立川市泉町)で廻向法要を執行し、先月28日に続いてロシアによるウクライナ侵攻の犠牲者に廻向の祈りを捧げ、早期鎮静を祈念した。

 真如苑はまた、先日拠出を決定した2千万円に加え、同日新たに、日本赤十字社(日赤)東京都支部に1千万円を寄付した。

2022/3/10 立正佼成会創立84周年式典 2年ぶりに大聖堂に集う 新宗連理事長 エピソードまじえて祝福


3月20日の庭野会長84歳の誕生日を祝して花束が贈られた 立正佼成会(庭野日鑛会長)は5日、東京・杉並の大聖堂で創立84周年式典を挙行した。大聖堂に会員を入れての式典は2020年2月の涅槃会以来2年ぶりで、本部職員や関連団体スタッフら230人の読経とお題目が堂内に響き渡った。また新日本宗教団体連合会(新宗連)理事長で崇教眞光三代教え主の岡田光央氏がエピソードをまじえて祝辞を述べた。(続きは紙面でご覧ください)

2022/3/3 石山寺に初の女性座主 鷲尾龍華氏が就任 

 
鷲尾座主 『源氏物語』ゆかりの王朝の美と日本仏教黎明期の息吹を今に伝える花の寺、東寺真言宗大本山石山寺(滋賀県大津市・西国三十三所観音霊場第十三番札所)の第53世座主に昨年12月21日、鷲尾龍華氏(34)が就任した。鷲尾遍隆第52世座主の長女で、初の女性座主となる。遍隆前座主の四十九日を待って、2月4日に同寺が発表した。

 昭和62年8月1日大津市生まれ。同志社大学文学部美学芸術学科卒業。平成25年1月に東寺で伝法灌頂入壇、同年4月に種智院大学人文学部仏教学科に3年次編入学し27年3月卒業。同30年6月に石山寺塔頭法輪院住職に就任。

 宗内では宗議会議員、近畿宗務支所副支所長(いずれも現職)。

 宗外では世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会青年部会幹事として、世界平和実現を目指して活動中。石山観光協会会長、湖信会会長、びわこビジターズビューロー理事、大津市歴史博物館協議会副会長、大津市歴史的風致維持向上計画策定委員、大津市観光交流計画策定委員として地域の歴史や文化の維持・発信に尽力している。

2022/3/3 ロシア、ウクライナに侵攻 真如苑 2千万円を緊急医療支援


 国際社会の警告を無視して2月24日、ロシア軍がウクライナ共和国に武力侵攻した。国内避難民は700万人に達するとみられ、国際的な人道支援が必要とされている。ロシアのプーチン大統領は戦略核部隊への「特別態勢」を指示しており、核兵器をめぐり、冷戦後、最大の危機に直面した。一方で両国による停戦協議が始まり、早期の停戦が期待されている。仏教界・宗教界からは即時停戦を求める声明や談話が相次いでいる。真如苑(伊藤真聰苑主)は緊急医療支援として2千万円の拠出を発表した。

教団や団体が声明発表 殺してはならぬ 殺さしめてはならぬ
  
 全日本仏教会(全日仏)は2月28日、戸松義晴理事長名で「ウクライナ情勢に関する理事長談話」を発表した。

 仏典の「すべての者は暴力におびえる。すべての(生きもの)にとって生命は愛しい。己が身にひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』「ダンマパダ」130)を引用して、早期の停戦と平和な日常の回復などを祈念している。

 この他、宗教界の各教団・団体も侵攻に反対する声明などを発表。京都宗教者平和協議会・日蓮聖人門下京都立正平和の会、京滋キリスト者平和の会などが2月27日に共同で声明。国際宗教同志会は同25日、シャンティ国際ボランティア(SVA)が同26日に発表。伝統仏教教団では日蓮宗が同25日に声明を発表している。
 

2022/3/3 ウクライナ情勢緊急インタビュー 伊勢崎賢治氏(元国連職員・東京外国語大学教授)に聞く


 2月24日、緊張感が高まる中、ついにロシアがウクライナ共和国に武力侵攻した。国連理事国で核保有国のロシアが、国際社会の警告を聞き入れず、一方的に攻め込むのは極めて異例だ。ロシアの軍事行動は許容できるものではないが、その背景には何があるのか。国際紛争の現場に詳しい元国連職員の伊勢﨑賢治・東京外大教授に緊急インタビューした。

 ——ロシアはなぜ隣国であるウクライナに侵略したのでしょうか。西側諸国及びNATO(北大西洋条約機構)は止めることができなかったのか。

 いま、「侵略」という言葉を使いましたが、これがとても厄介で、根本的な問題の一つです。グテーレス国連事務総長はロシアの軍事行使を厳しく非難しましたが、「侵略」とは言っていない。国連憲章では「武力による威嚇」「武力の行使」を厳禁としている。バイデン米大統領も、プーチン大統領をディクテーター(独裁者)とかアグレッサー(攻撃者)だと非難しているけれども、侵略者とは言っていない。なぜか。米国もかつてイラクやアフガニスタンでも同じようなことをしたからです。

 プーチン大統領は軍事侵攻に当たり、東部ドンバス地方の独立を承認して、その国の同じロシア人同胞から依頼されたという形を取った。彼らは同胞であり、同胞がウクライナ人にやられて苦しんでいると。これは集団的自衛権の行使だというロジックなんです。

 ここが問題なのです。国連憲章では個別的自衛権と集団的自衛権の2つがあり、この集団的自衛権が悪用されてきたわけです。旧ソ連のアフガニスタン侵攻も米国のベトナム戦争も同じロジックでした。

 もう一つは分離独立という問題。つまり民族自決権です。これは肯定的に使われるけれども問題も多い。今回、ドンバス地方の人たちは民族自決を主張しているわけですが、それをロシアや米国などの外力が武器を供与してまで支援していいのか。例えば私もかかわった東チモールの分離独立がありました。冷戦時代は、欧米は分離独立派をアカと呼び、迫害する側のインドネシア政府と軍を支持した。ところが冷戦が終わると掌を返すように独立派を応援したのです。民族自決権は人権とも深く関わっている。しかし国家にとっては国土を失うことになる。ウクライナ政府が、ドンバス地方の独立に反対してきたように。

 集団的自衛権と民族自決権の濫用をどうするか。国際法の大きな課題です。国連憲章を変えるのは、安保理常任理事国の拒否権で難しい。けれども国際協定という方法がある。例えば核兵器禁止条約が成立し、発効しましたが、これを慣習法にする努力をしないといけない。批准国を増やす。そうすると国連憲章も刺激されて変わるかも知れない。核兵器禁止条約が成立したのはNGOの努力ですから、日本も主導できると思いますね。

 ——プーチン大統領はNATOの東方拡大を批判し、ウクライナにも釘を刺していました。

 みんなプーチン大統領を嫌悪します。私もそうです。しかし悪魔化するだけでは何も改善しない。プーチン大統領に味方するのかという誹りを恐れず、何が彼をそうさせるのかを考えなければいけないと思います。

 簡単に言うと、冷戦が終結したにもかかわらず、冷戦期にできたNATOが現存していることなのです。ソ連が崩壊したときに軍事同盟としての役割は終わるはずだった。冷戦が終わったのは、西側が東側に軍事力で勝利したわけではなく、ソ連の内なる変化です。ゴルバチョフさんが登場してペレストロイカを打ち出した。1989年、ソ連はアフガニスタンに負けて撤退して、どんどん変化した。同じ年の11月、ベルリンの壁が崩れた。

 開示された米国外交文書で明らかになったのは、英国のサッチャー首相、西独のコール首相、米国のブッシュ大統領(父)らはゴルバチョフを擁護しようとしたことです。つまりソ連で内なる変化が起き、西側諸国にとっては渡りに船。しかしソ連内には強硬派がいた。そうした人たちによってゴルバチョフが失脚しないための“気遣い”が、NATOは一インチも東方拡大しないという「約束」だったのです。NATOも軍事同盟から、ソ連も含んだ母なるヨーロッパの安定のための外交フォーラムに変身させるビジョンも語られたのです。ところがそうならなかった。旧ソ連の国々を加盟国にすることによって東方拡大していったのです。これがプーチン大統領の主張の背景です。

 ——軍事行動はまだ続くと思います。どんな落としどころが考えられるでしょうか。

 ウクライナ政府がドンバス地方の独立を認める。これはしょうがないと思います。そして、隣のモルドバ共和国のようにロシア寄りの中立を保持して、国土をNATOには使わせない「約束」をする。これでプーチン大統領が納得し、ロシア軍も撤退してくれれば御の字です。大量の市民が犠牲になる前に、そうなるよう祈るばかりです。

 一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領にも問題がある。彼は市民に銃を取るよう呼びかけています。軍は戦うけれども、ロシア軍に怯むことなく市民は非暴力の抵抗を一緒にしようとなぜ言えなかったのか。非暴力で独立を勝ち取ったインドのマハトマ・ガンジーのように。私が非暴力主義者だから言っているわけではありません。でも、非暴力という戦術で、「市民を虐殺するロシア」を更に国際社会から孤立させることができるのです。

 市民が武装すれば犠牲は更に多くなります。プーチン大統領に、あれは市民ではない、武装したネオナチ傭兵部隊だ。だから合法的な攻撃目標だ。こう言える隙を与えてしまうのです。

 非暴力の抵抗、それは仏教界から呼びかけてもいいのではないか。それによって、なにより今変わりつつあるロシア国内の同情の世論に効果的に訴えられます。無辜の市民の命を守るため、残された唯一の方法であると思います。

 いせざき・けんじ/1957年生まれ。東京外国語大学教授。元国連職員。紛争予防や平和構築の研究者であり、実践者。国連時代、東チモール、シエラレオネ、アフガニスタンでゲリラの武装解除などに取り組んだ。

2022/3/3 宗会シーズン 本願寺派、真言宗智山派で宗議会

   
施政方針演説する石上総長 本願寺派宗会 DXを積極的に推進 
浄土真宗本願寺派(石上智康総長)は2月25日、京都市下京区の宗務所に第320回定期宗会(園城義孝議長)を招集した。「宗務の基本方針」は「ご親教『浄土真宗のみ教え』に学び、行動する—『伝わる伝道』の実践」を提示。来年迎える親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年の慶讃法要に向け万端の準備を整えていくとした。

 石上総長は施政方針演説で、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進を掲げ、次年度はスマートフォン向けアプリの活用やSNSでの情報発信、新会計システムの導入、動画配信による僧侶・坊守・寺族の育成などを提言。オンライン会議も積極的に導入するとした。「子どもたちの笑顔のために募金」のキャッシュレス化はすでに導入。なお、今次宗会も新型コロナウイルス感染症対策として各教務所と中継し、議員が教務所に赴くことでのオンライン出席を可能としている。(続きは紙面をご覧ください)

施政方針を述べる芙蓉総長 智山派代表会 50教区で減額の見通し
 真言宗智山派(芙蓉良英宗務総長)の第134次定期教区代表会(池田英乘議長)が2月22~24日、京都市東山区の総本山智積院内宗務庁に招集された。令和4年度が5年に一度の宗費負担数を決める申告書提出年に当たることから、申告基準を承認。「檀徒・信徒」の基準額を変更するなどしたため、前回比で全60教区中50教区の総負担数が減り10教区が増となる試算が発表された。

 「檀徒1戸・信徒1人」からの収入申告基準額では、都市部を1号(東京特別区部)~9号(人口5万人未満の市)に分類。町村部を1号(東京50㎞圏以内の人口2万人以上の町村、大阪・名古屋10㎞圏以内の町村)~5号(政令による過疎地域及び僻地)に分けている。

 平成9年度から29年度の申告までは、平成の大合併によって生じた旧町村部の経済的不均衡を是正するため、各号1地域にABの2基準を採用。だが今回、最初の大合併から20年以上、最後からも10年が経過したことから、AB2基準を廃止して申告基準額をその中間で設定した。結果、前回A基準で申告した寺院は負担数減、B基準で申告の寺院は増となるという。(続きは紙面をご覧ください)

2月

2022/2/24 宗会シーズン始まる 妙心寺派宗議会、曹洞宗宗議会


妙心寺派宗議会 コロナ禍 再スタート予算 議会閉会中の審査可能に
遠諱などで財源確保の必要性も説いた野口総長 臨済宗妙心寺派は16~18日、第142次定期宗議会(小松全秀議長)を京都市右京区の花園会館に招集し、予算や規程改正など全21議案を原案通り可決した。野口善敬宗務総長は仏教の四法印の教えに基づき「失うものは本来何もないと達観してコロナ禍の中、スタートを切るべき」と、機構刷新の継続や仏教行事の再開、新事業の展開にも意欲を見せた。

 野口総長は「財政引き締めとは逆方向になりますが、大きな財源確保が確実に必要となる」として①旧宗務本所の解体工事と跡地利用、②興祖微妙大師六百五十年遠諱事業、③花園会館・花園禅塾の建て替え論議を挙げた。特に③は花園大学の経営、僧侶育成、宗派の行事にも関わることであり、そもそも将来的に会館が必要なのかという根源的な面にまで踏み込んで考える必要があると認識を示し、跡地利用や遠諱ともリンクしながら考える長期的な課題になるとした。②の大遠諱は令和9年(2027)に大法会を執行する議案が可決された。

 法規議案は僧侶育成審議会を廃止し教学審議会に機能を統合する議案などが成立。また鬼頭孝道議員(岐阜東教区)の発議により宗議会規程改正案が上程され、議会閉会中の委員会開催・継続審査を可能とし、感染症や大規模災害の発生に際しての委員会へのオンライン参加を明文化した。宗議会規程には国や自治体の議会のような「議会閉会中の委員会審査及び調査」の定めがなく、「多様的で即応性が求められる今日的な課題に対応し得る、よりフットワークの軽い委員会審議」のための提案だと説明。議員の全員賛成で成立した。なお妙心寺派宗議会で議員立法は極めて珍しいといい、初の可能性もあるという。

 令和4年度の妙心寺派通常会計歳入歳出予算案は約10億2500万円で、前年度当初予算比で約1200万円の減額となっている。歳入は法階義財や花園禅塾収入で減になっているが、妙心寺会計繰越収入5千万円増、花園会本部収入が3830万円増。歳出は教学部所管費が4240万円増加しており、定期巡教や高等布教講習会、大衆禅堂など行事の再開・活性化による。議員からは「積極的に再出発の意欲が見える予算」との評価もあった。(続きは紙面をご覧ください)


曹洞宗宗議会 寺族代表の懲戒処分を提案 分限剥奪から譴責まで4種
演説する鬼生田総長 曹洞宗の第138回通常宗議会が21日、東京都港区の檀信徒会館で始まった。新たに導入を決めた寺族に対する懲戒制度に関し、寺族代表の分限剥奪などを可能とする懲戒規程変更案が上程された。

 寺族への懲戒制度を巡っては、昨年2月の宗議会で寺族代表を審事院の懲戒処分の対象にすると決定し、今回の規程変更案で内容を定めた。教義に背くなどといった僧侶と同じ懲戒理由を適用するほか、職務を放棄したり、檀務を行ったり、後任住職の選定手続きをしなかったりするなどの違反に応じて分限剥奪・停止、謹慎、譴責の処分を科す。分限剥奪については、処分を受けても再び寺族代表になれるとした。

 懲戒規程の変更に加え、宗教法人「曹洞宗」規則と宗憲の変更案、各種審議会規程制定案も提出された。それぞれ連動する部分や重複などを整理・修正する。このほか僧侶教師分限規程や教育規程、財務規程の変更案、予算案など全17議案が上程された。

 2022年度一般会計予算案は、新型コロナウイルス対策関連費が減るなどし、前年度当初予算比約8億5200万円減の約48億2700万円とした。(続きは紙面をご覧ください)

2022/2/24 第39回庭野平和賞 南アのラプスレー司祭に 爆弾テロで両手、右目を失う


受賞者のラプスレー司祭©2021 Father Michael Lapsley, SSM (公財)庭野平和財団(庭野浩士理事長)は21日、京都市内で記者会見し、第39回庭野平和賞に聖公会司祭で反アパルトヘイト活動家、「記憶の癒しグローバルネットワーク」会長のマイケル・ラプスレー氏を選出したと発表した。正賞の賞状、副賞のメダルと賞金2千万円は6月14日に開催される贈呈式で贈られるが、昨年のようにオンライン開催になるかは現時点では未定。

 ラプスレー司祭は1949年6月ニュージーランド生まれ。オーストラリア聖公会で按手を受け司祭となり、南アフリカ共和国に赴任してチャプレンとなる。その中で南ア政府のアパルトヘイト政策に直面、自身は白人だが、差別はキリスト教の正義に反するものだとして反差別運動に身を投じた。ネルソン・マンデラ元大統領や、昨年末死去したデズモンド・ツツ大主教とも同志だった。

 1990年、爆弾を仕込まれた郵便物によるテロに遭遇し両手と右目を失う。犯人は不明だが、アパルトヘイト政権の暗殺リストにラプスレー司祭の名が載っていたという。しかし世界中の人の愛のメッセージを受け、神の恩寵を信じ続け、後半生は暴力や差別で傷ついた人々の痛みの記憶を、傾聴と分かち合いで希望に変える「癒しのワークショップ」を世界各地で展開。反体制活動家から治癒者への劇的な人生を辿った。キリスト教に基づきながらも普遍的な言葉で対話と和解、正義の回復を行う努力が選考委員会から高く評価されての受賞となった。

 ラプスレー司祭は受諾メッセージで「過去の傷を癒すことが世界の平和に不可欠であることを、本日、庭野平和賞によって認めていただくことができました。庭野平和財団の活動は希望の光です」と感謝した。なお、その半生は『記憶の癒し』(聖公会出版)に綴られており、監修者である西原廉太氏(現在・立教大学総長)の招きにより2015年に来日している。

2022/2/24 島根・浄土宗金皇寺の解散で新事例 昨秋、残余財産が国庫帰属


 人口減少に伴い、過疎地域では存続が極めて困難な寺院(宗教法人)が少なくない。昨年末に発行された『宗教年鑑』と10年前のそれを比べると、法人格を有する寺院は479カ寺減少した。年平均ではマイナス48カ寺。法人の合併や解散の手続きの中で、新たな方策として試みられたのが残余財産の国庫帰属である。宗教法人法制定以来、初とされるこのケースの経緯を追った。この事例は昨年11月に宗教法学会で発表された。

 最初の事例となったのは島根県大田市仁摩町の浄土宗金皇寺(こんこうじ)。16世紀、「石見銀山の極楽寺住持・良休が開山となる形で現在地へ移転、再興されて浄土宗寺院になったという」(『石見銀山遺跡石造物調査報告書20』島根県教育委員会/大田市教育委員会編集)。

 平成25年(2013)6月、その金皇寺前住職が死去。前住職は同寺に居住せず、用事や法要があるときに出向いていた。檀家数も少なかった。晩年は病気のため通うことが出来ず、「不活動寺院」となっていた。地元の浄土宗石見教区が本庁である浄土宗に相談。それから現地視察や金皇寺関係者との話し合いがもたれた。

 金皇寺は解散する方向で決まった。境内地は主に山林で12万4221平方㍍(約3万7642坪、東京ドームの約2・6個分)。近隣寺院や自治体、森林組合等に残余財産の帰属を打診したが、引き取り手がなかなか見つからず手続きが滞った。

 他方、宗教界でも不活動法人は大きな課題であり、文化庁(宗務課)も頭を悩ませていた。最大の懸案は合併ができない法人の残余財産の帰属先だ。宗教法人法第50条第3項に基づいて国庫に帰属できないか。文化庁と日本宗教連盟(日宗連)の間でも検討され、財務省や与党へも理解を求め協力を働きかけた。(続きは紙面をご覧ください)

2022/2/17 激論真言宗 新義VS古義 両派一堂に会す歴史的討論 衆生救済の有無 争点に


北川氏 智山伝法院の特別講習会が8日、東京・愛宕の別院真福寺で開かれた。「激論 新義教学 VS 古義教学」と銘打ち、袂を分かつ原因となった法身説法の解釈を巡り、衆生の救いの有無を争点に議論を戦わせた。両派が一堂に会して意見を交わす「歴史的な機会」に、オンラインの参加者を含む約100人の僧侶らが立ち会った。

 宮坂宥洪・同院長は、鎌倉期前後から900年近くにわたり議論が繰り広げられてきたが、「両者が同じ場所で意見を交わすことはなかった。まさに歴史的な機会だ」と語気を強めた。

土居氏 同じ真言宗である両派の差異は教学上の認識の相違。興教大師覚鑁を祖とする新義派が加持身説を唱え、高野山の流れを汲む古義派は本地身説を取る。智山・豊山両派と新義真言宗が新義派にあたる。

 いずれも法身が真理を説くことは可能とする法身説法(=密教)の立場だが、法を説く教主である法身・大日如来のあり方に関して見解が異なる。法身そのものが法を説くのが本地身説で、法身が現れて説法するのが加持身説とされる。

 解釈が分かれるのは、鈴木晋雄・同院常勤研究員によると、どちらとも読み取れる文章があったり、句読点や送り仮名の付け方で意味が違ってきたり、対立する文章を矛盾しないようまとめたり(会通)した影響が考えられるという。

別所氏 古義派の論陣を張った北川真寛・高野山大密教文化研究所委託研究員は、古義が批判対象としていたのは顕教であり、とりわけ天台を仮想敵としていたとし、「新義を相手にしていないとの見方もできる」と焚きつけた。

 続いて土居夏樹・高野山大准教授は、真理を直接把握する古義の立場からすると、真理を得ることと説法することを区別し、悟りの境地での説法を否定する新義側の意見は修行者の視点から論じているのであり、「衆生の理解力の問題に過ぎない」と二の矢を放った。

 迎え撃った新義派の別所弘淳・智山伝法院常勤講師が、加持身説が宗祖弘法大師の思想と矛盾しないことを明らかにした上で、小林靖典・同院常勤教授が登壇。劣慧の救済のために法が説かれるとした経典の言葉を引き、「衆生の視点は必ず必要だ」と主張した。

小林氏 さらに、古義の考えは仏の視点を強調するだけで、衆生の救いが欠如していると指摘。近代になって化他の必要性を認め、それを補うための会通が試みられたことを挙げ、「後ろめたさがあったのではないか。苦肉の策にしか見えない。新義のように理解すればいい」と反論した。

 土居准教授はこれに対し、悟りと化他は同じ意味だとする解釈を示し、「両派の間には成仏、行の観点の違いがある」と退け、議論は平行線をたどった。また、教主を巡る議論は悟りとは何かを問うことだと提起。修法の流派によって解釈が異なる場合もあり、教学上の問題(教相)にとどまらず、実践的な領域(事相)と密接に結びつくと語った。

2022/2/17 寺院への窃盗相次ぐ 埼玉県佛が防犯呼びかける


     防犯を呼びかけた埼玉県仏教会のチラシ 埼玉県を中心に寺院を狙った窃盗被害が相次いでいる。昨年11月に埼玉県警から(一財)埼玉県佛教会(倉持秀裕会長)に連絡があり、埼玉県警の助言を受けて防犯を呼びかけるチラシを作成。今年1月にチラシを機関紙に同封するなど注意を呼びかけている。

 埼玉県佛の金子嘉広事務局長によると、「警察からの話では、昨年11月頃までで寺院で32件の被害があった。市街地ではなく郊外にある寺院を狙って、午後10時ごろから未明にかけて犯行が行われるケースが多い」という。

 寺院の現金を狙う点やガラスを割り侵入する手口が共通しており、防犯カメラの映像などから3、4人の同一グループによる犯行が疑われている。一部報道では、近隣の群馬、栃木、茨城、福島の各県でも同様の手口で被害があり、計約100件、総額2億円もの被害があったとされる。

 埼玉県佛はチラシで、窓に防犯フィルムを貼ることや錠を増やし二重ロックをするなどの窓ガラスの強化、人感センサー付きの照明の導入、金庫を固定するなどの防犯対策を呼びかけた。

 県内の東松山・滑川仏教会(村井惇匡会長)は埼玉県佛の呼びかけを受け、同仏教会でも地元の東松山警察署と相談し注意喚起のためのチラシを作成。犯人を見つけても声をかけず警察に通報することなどを周知し、防犯意識の向上に努めている。村井会長は、「近年の御朱印ブームで檀信徒以外の人が寺院を訪れることも増えた。コロナ禍でマスクもしているので、下見などを行う不審者を判断しにくい状況もある」と警戒している。

 今月9日に群馬県で寺院に侵入した男が複数人逮捕されており、埼玉県佛の金子事務局長は「逮捕者が一連の犯行グループの一部である可能性があるが、まだ捜査中とのこと。一安心だと思いたいが、いわゆる模倣犯や時間をおいてまた起こることもあり得る。県佛としても引き続き警戒していきたい」と話している。

2022/2/17 追想記 石原慎太郎と法華経 霊友会・小谷喜美の弟子 佼成会・妙智會とも親しく 「師」を意識した信仰者


 今月1日に死去した石原慎太郎(享年89)。訃報と共に作家や政治家としての活躍ぶり、奔放ぶりが盛んに報じられた。各紙が評伝を掲載しているが、宗教面に迫った石原論は見当たらない。

 石原が霊友会と関係が深かったことはよく知られている。昭和43年(1968)の参院選挙全国区出馬にあたり、産経新聞社主の水野成夫を介して小谷喜美会長(1901~71)と出会う。この場で次のようなやりとりがあった。
〈小谷「家の宗旨は」 石原「私の家は禅の方の曹洞宗です」 小谷「ああ、なら同じ仏法じゃない」 水野「なら、二十万ほど、頼みますよ」 小谷「全部この人に上げるよ。その代わり私の弟子になりなさい」(取意、『法華経を生きる』幻冬舎)〉

 こうして石原は小谷喜美の弟子となった。「結果として驚くほど多くのものを学び感得することが出来たものでした」(同)と回想する。この場面は4年前、石原が「小谷大恩師と私」を特別寄稿した霊友会機関誌『あした21』(18年2月号)にも記載。よほど印象深かったに違いない。石原は昭和43年選挙で300万票を獲得した。

 霊友会の教えの基本は法華経による先祖供養である。石原の父は51歳で死去。そのことも信仰を受容する要因になったのかも知れない。

 石原と親交を結んだ宗教者に立正佼成会開祖の庭野日敬(1906~99)がいる。庭野が提唱した明るい社会づくり運動(明社運動)全国協議会の第4代会長(1995~2013)を務めた。庭野の葬儀で弔辞を読んだ石原は、法華三部経の一つである仏説観普賢菩薩行法経の一節「但当(ただまさ)に深く因果を信じ、一実の道を信じ、仏は滅したまわずと知るべし」を述べて追悼した。

 開祖逝去の半年前に行われたのが東京都知事選だった(99年4月)。都内に相応の票田を持つ立正佼成会は石原を全面的に支援。石原の都知事時代は常に支えた。

 同様に妙智會教団大導師の宮本丈靖(1917~2015)との関係も深かった。2月の節分追儺式では豆をまき、節目の周年式典では挨拶することもあった。「(宮本丈靖先生は)過去に仏の授記を受けた菩薩の一人として今ふたたびこの現代に現れ、人々を救い導くために仏の説かれた真理を広めていく体現者」(『開教50年記念誌』)と評している。

 立正佼成会と妙智會教団は霊友会から分かれた教団であり、教えの主要部分は共通する。「ともかく一部経(法華経)は読めば読むほど、随所に劇的な事例やおどろくほど面白くわかりやすい見事な例え話で読む者を人生真理実相に導いていっててくれます」(前出の『あした21』)と語るほど石原は法華経を読み信奉し続けた。

 小谷喜美の弟子となって以降、庭野日敬や宮本丈靖の法華経観に共感するところがあったのだろう。放言で物議を醸しもしたが、宗教面では「師」を意識した信仰者であったことは確かだ。(敬称略)

2022/2/17 広島市本覚寺 ハンバーガー自販機で子ども食堂を支援 人気「みょうけんバーガー」


境内に設置された自販機 先月末、広島市中区の日蓮宗本覚寺(渡部公友住職)の境内にハンバーガーの自動販売機が設置され、話題を呼んでいる。渡部住職個人の事業としてハンバーガーを販売し、売り上げの一部は同寺が協力する「十日市こども食堂おてらごはん」に寄付される。渡部住職は「このハンバーガーで子ども食堂やお寺を知ってもらい、それが子ども食堂の支援につながれば」と話している。

 販売するハンバーガーは、同寺の妙見大菩薩をモデルにしたキャラクター「みょうけんくん」にちなみ、「みょうけんバーガー」と命名。味はチーズバーガーやお好み焼き味など全6種類で1個300~350円。冷蔵されており、家で温めれば肉厚で本格的な味が楽しめる。最初に仕入れた125個が3日間で完売する人気を見せ、渡部住職は「想像以上の反響です」と驚いている。

 同寺を会場に開催されている「十日市こども食堂おてらごはん」は、地域の任意団体が運営し、運営資金は賛助団体などの寄付に頼っているのが現状だ。

 全国的にも珍しいハンバーガーを冷蔵できる自販機を知り、「長く子ども食堂が続けられる仕組みの一つになるのでは」と導入を決めた。早速ハンバーガーを買い求めた人の中には「お寺で気軽に子ども食堂の支援ができてうれしい」との声があったという。

 ハンバーガーには、法華経の一節や日蓮聖人の聖語の入った「寶樹みくじ」(日蓮宗兵庫東布教師会制作)も付いており、法華経や宗祖の言葉に親しんでもらう工夫も。子ども食堂やお寺のことを知ってもらいたいという願いが込められている。

 自販機は冷蔵できる商品ならば提供可能で、渡部住職は「売れ行きが好調なら、大判焼きやホットドック、焼きそばなど商品を追加していきたい」としている。

2022/2/10 レポート 進む大谷派の教区再編 岐阜・高山別院の挑戦 縦と横「十文字教化」打ち出す 地域の特性活かし100年先まで


自作ポスターを持つ三島輪番。ちなみに絵やデザインは独学とのこと 険しい山々に囲まれた中に、浄土真宗の信心が広がっている岐阜県の飛騨高山地方。その中心道場である高山市の真宗大谷派飛騨御坊高山別院照蓮寺(三島多聞輪番)では宗祖親鸞聖人750回大遠忌を2019年5月に厳修した。帰敬式・同朋唱和・青少幼年教化を三本柱に掲げた遠忌は、御正当の3日間でのべ5500人が参拝。この経験を活かし、来年の親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年に向かって布教に全力を尽くす。

 大谷派は「持続可能な宗門」の確立のため、30あった教区を統合により、2023年までに17教区に再編することを掲げている。2017年、最初に統合が合意されたのが高山教区と岐阜教区である(2020年6月の宗会の議決を経て岐阜高山教区となった)。

 しかし高山市と岐阜市は、特急電車を使っても2時間ほどかかる距離があり、文化的にも岐阜市周辺と飛騨地域では無視できない差異があった。そのため、高山別院には教務所長との兼任ではない専任の輪番が置かれることになり、隣接する真蓮寺の三島住職(元・内局参務)が2017年秋に就任した。なお、別院内には高山教務支所も設立されている。

 「この辺りではお勤めの際に、門徒さんも正信偈を一緒にお唱えする人が多い。真宗の土徳が根付いている」と三島輪番は語る。旧高山教区は約80カ寺に1万人の門徒がいる。それぞれの寺院や各家庭でお勤めの際に正信偈が唱えられているのは、想像するだけでも壮観だ。御同朋の精神に基づき僧侶と門徒が共に「同朋唱和」した妙なるハーモニーの大遠忌法要であった。信仰の自覚、主体的な仏事参加を促すことにつながった。このほか、210人が参加した帰敬式、境内を開放して念珠づくりなどを楽しむ青少幼年教化の「家族de御遠忌」も営まれた。円成後、三島輪番は温めてきた構想を始動する。

 別院の役割とは

 高山教区が岐阜高山教区に再編されても、飛騨高山の歴史と伝統に鑑みて教化体制を継続・確立することは急務だった。新教区が発足したのと同時に、「飛騨御坊真宗教化センター」を設置し、自らがセンター長となった。教区から組・各寺への教化を縦の串、別院から直接門徒・市民・組・各寺を繋ぐ教化を横の串とし、センターが結節点となる「十文字教化体制」を打ち出す。具体的には先の三本柱のさらなる展開だけでなく、歴史を持つ子ども上山や夏期講座「飛騨学場」、各寺院に赴き法話する「ご回壇」の充実など、全寺院の仏教行事興隆だ。このご回壇は飛騨の伝統教化であり、別院と各寺・所属門徒の教化に果たす役割が大きい。

 大谷派の別院は国内に52カ寺あるが、必ずしも教区・教務所と一体での布教ができていたわけではない。高山別院では教区再編を機に「教別一体」を打ち出したわけだ。

 教化基本条例第22条には「別院は、その地域の特性に即応した教化推進の使命を果たすよう運営されなければならない」とある。別院内に教化センターを置き地域の特色に合わせて教区・組と一丸となり布教に取り組む、この「高山別院モデル」が教区再編後の全国に広まれば、「同朋社会の実現」に益するだろう。

 しかし、新型コロナウイルスはやはり悩ましい。声を出さないことが推奨される現状では、先述の同朋唱和は困難だ。「お寺でも、門徒さんの家でも、集まることが難しくなり出会いがなくなる。集うというのは宗教の一つの特徴なのだけど…葬儀社からは法話もやめてくれ、などと言われる。これではせっかくの土徳がだんだんおかしくなっていくのではないか」と危機感は強い。経営的にも、駐車場収入が激減したことが痛手だという。

 三島輪番は、三帰依文を記した絵画ポスター、法話ポストカードなどを自身で作り、コロナ禍でも積極的な布教を実践中。「別院は途切れることのない教化、百年教化をしなければなりません」と決意を示した。
    
大遠忌事業として改修された本堂。雪もすぐ落ちる 大遠忌にあたり、本堂の大改修工事も行った。特に屋根の銅板葺き工事は、天禄元年(970)創業の愛知県一宮市の㈱中村社寺(加藤雅康代表取締役社長)が担当。高度な技術を注いだ威容に僧侶も門徒も大満足だ。三島輪番によると、30年ほど前から雨漏りが絶えず、修復は喫緊の課題だったという。新しい屋根は美しいだけでなく、豪雪地帯のため雪がすぐに落ちるようにしたのもポイントだ。本堂には、三島輪番が大書した法語が数多く設置されている。

 「飛騨御坊」と呼ばれ尊ばれている高山別院は、親鸞聖人の弟子・嘉念坊善俊が開基。700年に及ぶ歴史で8回の火災に見舞われたが、その度に信心で再建してきた。念仏の中心道場を護持するのは困難も多いが、喜びも大きい。

2022/2/10 各宗議会オンライン化調査 導入は妙心寺派と本願寺派 豊山派と浄土宗はPCR検査


 2月から3月にかけては各宗派の宗会・宗議会のシーズンである。新型コロナウイルスの拡大後、急速にオンライン化が進んだが、宗派によって議会への導入には温度差がある。コロナ禍から3年目を迎え、各宗派の議会対応などを調査した。

設問項目
① 本会議でのオンライン出席の可否
② 会期中の委員会などへのオンライン出席の可否

【天台宗】①・ ②不可※現時点
 宗議会ではこれまでオンラインを併用しておらず、今回(※2月15日から会期4日間の予定だが、感染状況で短縮や延期もあり得る〈1月31日現在〉)も同様。他の会議や各委員会等ではコロナ禍以降、オンラインや文書審議も広く活用している。

【高野山真言宗】①・➁未定
 コロナ禍を受けての一昨年秋の宗会で、ウェブ会議の運用に関する内規を制定。現在の感染拡大状況に鑑み、本山主催の会議については当面の間、ウェブ開催か文書審議に切り替えている。宗会でのオンライン併用は未定だが、感染状況を注視しながら宗会開催か、延期かを視野に柔軟に対応する。

【真言宗智山派】①・➁未定※現時点
 昨年2月の教区代表会前にリモート参加についてのアンケートを実施。希望者10人以上でオンライン併用の予定だったが、定数に満たなかったため通常招集にした。今回(22~25日)も原則通常招集(1月31日現在)だが、感染状況を注視して柔軟に判断する。京都・東京間などでのリモート会議は広く行われている。

【真言宗豊山派】①・②不可
現時点でオンラインは検討していない。コロナ流行後は、宗会議員、宗務所職員全員が事前にPCR検査をしている。昨春の155次宗会からは取材する記者にもPCR検査と陰性証明の提出を義務付けている。

【浄土宗】①・②不可
宗議会は3月1~4日。オンライン出席は認めていない。出席者にはPCR検査を義務付けている。傍聴者は別室での中継を視聴する。また、コロナ禍以前より東京宗務庁への中継を行っている。

【臨済宗妙心寺派】①・②可
宗議会は16~18日。伝統教団では最も早く、2020年9月の宗議会からオンライン出席を認めている。

【浄土真宗本願寺派】① ・②可
 2月25日から宗会。事前に議長に申請することにより、各議員は教務所からの中継で出席できる。2020年10月宗会で法規が整備された。

【真宗大谷派】① ・②不可
 宗会(常会)は5月末招集予定。コロナ禍以降、宗会(常会)は2回あったが、期間短縮はしてもオンラインは併用していない。現時点では次の宗会もオンラインを用いる予定はない。教務所長会や通常の会議等では広くオンラインを用いている。

【日蓮宗】① ・②不可
 一部に宗会のオンライン対応が必要との声もあるが、検討段階。

【曹洞宗】①・②不可
 第138回通常宗議会は21~25日。これまでの対応としては、議場の外で議会の中継を視聴できるようにし、議場に入る議員を半数に制限するなどしていた。

2022/2/10 法華宗本門流 新宗務総長に金井孝顕氏 新内局スタート


 法華宗本門流の二瓶海照前宗務総長の遷化に伴い、新宗務総長に金井孝顕氏が就任した。任期は1月20日から4年間。

 二瓶前総長は4期目の再任が決まっていたが、昨年11月13日に遷化した。次期総長が決まるまで、三吉廣明氏が総長を代務していた。

 金井氏は1949年生まれ。神戸市兵庫区の感應寺住職。法華宗興隆学林研究科卒。教学部長、庶務部長として内局を経験。宗会議員を3期務め、法華宗全書刊行会出版局長や宗祖・開基・先師聖人報恩奉賛会総務事務局長などを歴任した。宗外では兵庫県仏教会長を務めるほか、全日本仏教青年会副理事長、神戸青年仏教徒会長、神戸仏教塾長、神戸市佛教連合会長などを歴任した。

 同日、新内局が発足した。前総長代務(前総務部長を兼任)の三吉氏は布教部長に就き、教学部長に清水常光氏、財務部長に久野晃秀氏がそれぞれ再任した。総務部長に平田義生氏(前企画部長)、企画部長に吉﨑長生氏(前布教部長)が就任した。

2022/2/10 大本 開教130年の節分大祭 コロナ終息も祈願


長生殿に入るマスク姿の瀬織津姫たち 大本(出口紅教主)は3日、京都府綾部市の聖地・梅松苑で節分大祭を執行した。明治25年(1892)の節分に開教してから130年の佳節。1月27日に発出された京都府まん延防止等重点措置のため、直接の参拝は自粛を呼びかけ感染対策を徹底。恒例の甘酒やうどんの接待、福引は中止としたが、全国、全世界をオンラインでつなぎ、全信徒で奉祝した。併せて出口すみ2代教主、出口聖子4代教主の聖誕祭、豊年祈願祭も営まれた。

 大本にとって節分は、古の昔に退隠した国祖・国常立尊(艮の金神)が出口なお開祖の体に再び出現した重大な日で、この世のあらゆる邪気、人類の罪を祓い清め、乱れた世界の立て直しとみろくの世の建設を誓う。

 小林龍雄本部長は「この節目の年にあたり私たちがまずなすべきことは、開教の精神を深く悟り、信仰の初心、そして基本に還ることではないでしょうか」と述べ、神業を進める教主の心に沿っていくことが大切だと挨拶した。

 出口教主はコロナ禍で人間の無力さや社会の脆弱さなどが浮き彫りになり、様々な差別や抑圧により社会が分断されたことを憂慮しつつ、「人間の醜いエゴの世界も見えた一方で、人々がお互いにいたわり支えあう、優しさや思いやりの世界も同時に見えてきたように感じています。多くの人がコロナに苦しむ世界中の人々や社会のために祈り、また人のために尽くされる方々への感謝の気持ちがこれ程世界中に溢れたことがかつてあったでしょうか」と希望も示し、神の子である人間としての正しい生き方をして「言心行一致」の精神を培っていかなければならないと信徒に呼びかけた。(続きは紙面でご覧ください)

2022/2/3 WCRP理事会 TF・常設機関で検討 WJアジェンダ2030 取り組みを具体化 

 
 (公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(植松誠理事長)は1月28日、。4月から始まる2022年度事業方針や予算などを主議案に、オンラインを併用して東京・杉並の立正佼成会法輪閣で理事会を開いた。昨年11月、WCRP創設50周年式典で発表された「WJ(WCRP日本委員会)アジェンダ2030」の6項目を5つのタスクフォース(TF)と常設機関に振り分けられ、今後の実施方法が具体的に検討されることになった。

 昨年4月、青年宗教者を中心にアジェンダ策定チーム(11人で構成)が発足。オンライン会合等を積み重ねて、11月の50周年式典での発表にいたった。SDGs(持続可能な開発目標)を基底にしつつも、SDGsに触れられていない内容や宗教の視点などを加味して「世界を改革する6つのアジェンダ―私たちの10年が始まる」としてまとめられた。

 6つのアジェンダをそれぞれの取り組み内容に近い5つのTFと3つの常設機関に振り分けた(表)。アジェンダ4は人身取引防止TFが担当する。「人身取引は経済と密接に関わっているため」(事務局)、同TFとなった。各TF・機関等が検討し、それをもとに日本委員会全体の事業として取り組む方針だ。

 2022年度の事業計画の総合テーマは第10回世界大会と同じく「慈しみの実践:共通の未来のために―つながりあういのち」に設定。▽ネットワーク化、▽啓発・提言活動、▽平和教育・倫理教育、▽人道的貢献、▽女性・青年による行動指針を基盤とした平和活動、▽広報活動、▽財務基盤の確立、▽会員の拡充―の8項目を推進していく。

 今年で40周年を迎える女性部会は記念事業を計画。青年部会は明2023年の50周年に向けて学習会を開く。

2022/2/3 大正大学×追手門学院大学 地域の人材創出で協定 東西に拠点 共同研究なども


協定書を交換する髙橋学長(左)と真銅学長 大正大学(東京都豊島区、髙橋秀裕学長)と追手門学院大学(大阪府茨木市、真銅正宏学長)は1月31日、地域貢献に関して広く連携を図る包括連携協定を締結した。地域振興に資する人材育成や地域社会の発展に寄与することを目指す。同日、大正大学で協定締結式が行われた。

 両校には、ともに地域に関わる人材を輩出する「地域創生学部」(大正大学)、「地域創造学部」(追手門学院大学)があり、地域発展に寄与する人材の育成に注力している。今回の協定締結により、教育プログラムや教材の共同開発、教育・研究を目的とした学内の施設・設備の共同利用、教職員の共同研究などで連携していく。

 大正大学の髙橋学長は「教育、研究、社会貢献という大学の役割の中で、特に地域貢献を一緒にできる。東と西でスクラムを組んでいきたい」と抱負を口にした。追手門学院大学の真銅学長も「縁を感じている。本学を関西の拠点として使っていただけたら」と述べ、両学長は互いに東西の拠点となりネットワークを共有することで学びが深まることを期待した。
 

2022/2/3 各山会 来年大阿に飛鷹東寺長者 尾池門跡、真言宗長者に


芙蓉代表総務から長者杖を贈呈される尾池門跡と祝福する来年大阿の飛鷹長者㊨ 真言宗各派総大本山会(各山会)の御修法新年総会が1月25日、京都市右京区の大覚寺派大本山大覚寺で開かれ、約70人が出席した。東寺真言宗総本山教王護国寺(東寺)の飛鷹全隆長者が、来年の後七日御修法の大阿闍梨(導師)に決定。芙蓉良英・各山会代表総務(智山派総本山智積院寺務長)が発表した。

 飛鷹長者は、「明年は真言宗立教開宗1200年。ありがたいご縁、お大師さまのお計らいを頂戴したものともったいなく思う」と挨拶。1200年前の御修法創始の際の宗祖弘法大師の熱祷を敬慕し、「遥かお大師さまの御素願に思いを馳せ、心して勤めさせていただきたい」と決意を述べた。

 式の冒頭で、今年の御修法別當を務めた伊勢俊雄・大覚寺執行長が無魔成満を報告。大阿闍梨の大役を果たした尾池泰道・大覚寺門跡に、芙蓉代表総務が長者杖を贈呈した。杖を手にした尾池門跡は、1年間にわたる宗派の代表職・真言宗長者の責務について語った。

 真言宗前長者の布施浄慧・智積院化主が祝辞。長期化しているコロナ禍にあって、宗祖大師の鎮護国家の祈りの実践の重要性に言及した。

 御修法総会前の常任委員会で、今年の御修法に出仕した菅智潤・善通寺派総本山善通寺法主から「今後の御修法厳修にあたっての要望書」が提出されたことを報告。菊入諒如・各山会事務局長は「慎重に進めて検討してまいりたい」と説明した。(続きは紙面でご覧ください)

2022/2/3 高野山専修学院 コロナ緊急予防で休校 感染者出る前に決断

   
 和歌山県高野町にある高野山真言宗の教師養成機関・高野山専修学院(1年間・全寮制/酒井道淳学院長)はこのほど、1月末から高野山内で新型コロナウイルス感染者が散見されてきたことを受け、専修学院内で感染者が出る前に全面休校に踏み切った。期間は1月27日から約2週間とし、再開時期は感染状況を注視して判断。現在は院生全31人を自宅や師僧寺院に帰し、学院再開時に抗原検査を実施して全員の陰性を確認する方針だ。

 専修学院には講師や業者など多くの関係者が出入りし、学院生や寮監との接触の機会がある。万が一、学院内で感染者が出た場合、全寮制のため院生の大半が濃厚接触者となってしまう。3月の卒業を控えた大切な時期に院生全員を自宅に帰せなくなる危険性等に鑑み、本山当局とも協議の上、異例の緊急予防措置となる全面休校を決断した。

 中西雄泰監事は日頃から「院生の命と健康が一番大切だ」と話し、希望者全員(院生の9割以上と寮監ら)へのワクチン学院内集団接種など万全の対策を実施。「安心して厳しい行に打ち込める環境」の維持に努めている。

1月


2022/1/27 現代人に響く法話とは? 「聴く」姿勢が法話に出る H1法話グランプリ優勝者 関本和弘氏(融通念仏宗僧侶)に聞く


昨年の「H1法話グランプリ」で難解な仏教語を用いずに法話した関本氏 日頃仏教とは縁がない人に法話で仏法を届けるには、「難しい話をしない」ということが最も重要だ。昨年10月30日開催の「H1法話グランプリ」では、「冥加」と「顕加」について難解な仏教語を使わずに話した。「目に見えるおかげさま」に対し「目に見えないおかげさま」には、気が付かない限り感謝できない。花の根を例に、「目に見えないおかげさま」の大切さを聴衆にお伝えした。



 「頑張る」と「精進」

 現代人に仏法を届けるには、「今の人たちの悩み」を知らなければならない。例えばブラック企業の蔓延で、社員は心身を病むほど「頑張る」ことを要求される。そこで仏教では「頑張る」をどう考えるか。似て非なる言葉に「精進」がある。「頑張る」の反対語は「頑張らない」ではなく「感謝する」。「精進」の反対語が「懈怠」、即ち怠けること。「我を張る」が「頑張る」の語源で、周りを蹴落としても自分が一番になることを目指すのが「頑張る」。「精進」は「雨だれ石を穿つ」の譬喩のように、皆と一緒にコツコツと努力すること。長く努力するには休息も必要だ。だから「休息もなく働き続けるのは間違っている」と説くことができる。

 現代の様々な苦悩に、仏法はどうアプローチできるのか。常にそうした心のアンテナを高くしておかないといけない。

 世の中が僧侶に抱くイメージは、「生き方のエキスパート」。人生で困った時に「生き方を教えてほしい」と頼られる存在だ。お寺に来る人の多くは、「仏教を通した生き方」が聞きたい。これを無視して現代人の悩みにマッチしていない法話をどんなに一生懸命しても、一般の人との心の溝はますます深まってしまう。

 私は平成21年(2009)から10年間、大阪自殺防止センターで電話相談員のボランティアをしていた。そこで「死にたい」と訴える相談者の声をひたすら聴くことの大切さを学んだ。

 寺に入って2年程経った27歳の時、大学院時代の親しい友人が自殺した。彼女は私がお寺出身だと知っていたので、「どう生きたらいいんだ」と度々相談してきた。私は「こうしたらいい、ああしたらいい」などと親身になって答えていたつもりだったが、全然届いていなかったとわかり愕然とした。「僧侶は死んだ人しか相手できへんのか。生き方を伝えるにはどうしたらいいんだ」。僧侶としての無力感に苛まれていた時、大阪自殺防止センターの電話相談員の募集を見つけた。

 翌平成22年には超宗派の有志と一緒に、「自死に向きあう関西僧侶の会」も立ち上げた。年1回、自死者追悼法要を四天王寺で営み、隔月で遺族の「分かちあいの会」を北御堂で開いている。

 現代の苦悩を聴く

 電話相談の中で、「孤立」の苦悩の深さを知った。例えば独居と家族同居の高齢者では、同居高齢者の自殺が多い。「家族がいるのに自分は空気のように無視されている」。これは地獄だ。一家団欒を確認するクリスマスや正月に自殺が多いのは、それが際立つからだ。だから相談者は繋がりを求めて電話をかけてくる。私ができるのは、相談者に「安心して話していただける安全な場を作る」こと。お寺という場も同じだ。

 心に響く法話をするには、こちらの主張を押し出す「圧の強い法話」より、「このお坊さんなら自分の話を聞いてもらえるかもしれない」と安心していただく口調の方が良いのではないか。今、法話でも僧侶の「聴く」姿勢が問われていると思う。

 小5の頃、友だちから「お前んちは人が死んだら儲かんのやろ」と何気なく言われた。その言葉がずっと心の深奥で冷凍保存されていた。30歳を過ぎてから、この一言への明確な答えを見つけた。それは「死別の悲しみに寄り添ってくれる人がいることが、どれだけ支えになるか」ということ。そういう存在になることが、僧侶の使命であると気付いた。

 私は世襲4代目の長男で典型的なお寺の後継ぎだが、中学生の頃から〝お寺から逃げたい〟と思っていた。大学院の修士課程を終え、企業の研究職で内定をもらったので、「定年退職してから寺を継げばいい」と喜んでいた。だが住職だった祖父が倒れたことで、住職になる父を手伝うために就職を諦めて寺に戻ることになった。

 法話は苦手

 最初の頃は法事などでの3分間の法話も満足にできなかった。これではまずいと思って布教師会に入り、法話の基礎をみっちり教えていただいた。

 実を言えば、法話が苦手だという意識は今もそれほど変わっていない。
法話後には自己反省を欠かさず、その時間も長い方だと思う。幸い私は友人に恵まれ、今でも私の法話に対して「ここが分からない」とか、ズバズバ厳しいことを言ってくれる。それがものすごく参考になる。これも「聴く」ということだ。

 現代人の宗教心は薄れていない。その声を「聴く」姿勢があれば、現代人の心に響く法話ができるようになると思う。(談)

 せきもと・わこう/昭和51年(1976)9月生まれ。大阪府寝屋川市・融通念仏宗大念寺副住職。近畿大学水産学科卒業、北陸先端科学技術大学院大学修士課程修了(知識科学)。若手僧侶(45歳以下)による法話の祭典「H1法話グランプリ」(昨年10月30日、なら100年会館)でグランプリに輝いた。

2022/1/27 船橋市正延寺 廻向とエコで「えこうま」 誰かの幸せ願う絵馬頒布


「えこうま掛け」と田中副住職 千葉県船橋市の真言宗豊山派正延寺では昨秋のお彼岸から、「自分のための願いごとを書いてはいけない」というオリジナル絵馬の頒布を始めた。田中宥弘副住職(39)は、「誰かを思った行動は巡り巡って自分に返ってきます。子どもの成長、親の健康、友人の成功など、他者への祈りを込め絵馬を奉納してみませんか」と呼びかけている。

 「誰かのための幸せを願おう」というフレーズと共に始まったユニークな絵馬の名は「えこうま」。自分の善行の功徳を他者の幸せに振り向ける「廻向」と「絵馬」を合わせ、さらにSDGsを意識した再生素材で作る「エコ」の意味も持たせた。2種類×5色(白・桜・黄・薄緑・すみれ)の10種類で、奉納金は500円。

 田中副住職が8年程前から構想。2年前に牛乳パックなどから再生和紙を作る会社「塩山ファクトリー」と出会い、耐久性に優れたエコ素材を新たに開発することで実現した。

 現在までに奉納された「えこうま」は100枚程で、境内の絵馬掛けにある。「〇〇さんの病気が治りますように」「〇〇に彼氏ができますように」「〇〇がもう少し痩せますように」「(亡くなった)おじいちゃんがあの世でも元気でいられますように」など、大切な他者への祈りがあふれている。

 「誰かの幸せを願う絵馬は、見ている第三者の心も穏やかにしてくれます」と田中副住職。「誰かのために祈ることは、〝誰かがあなたのことを祈っている〟ということでもある。それが祈りの廻向です」

2022/1/27 大本山總持寺 盛田氏が副貫首へ 初の女性西堂 青山氏が就任


 曹洞宗大本山總持寺(横浜市鶴見区)の石附周行貫首の就任に伴う副貫首選挙が17日、公示された。宗務庁に19日、正法寺(岩手県奥州市)の盛田正孝山主を候補者とする届け出があった。届け出の締め切りは2月7日で、ほかに届け出がなければ無投票当選となる。

 副貫首は次期貫首の位置づけ。江川辰三前貫首の退董に伴い、副貫首だった石附氏が貫首に就任したのは昨年9月で、候補者が定まらず副貫首選挙が遅れていた。

 盛田氏は昭和19年(1944)生まれ。駒澤大学大学院修士課程修了。平成18年(2006)から5年間、總持寺後堂を務めた。平成26年(2014)から正法寺山主(同寺専門僧堂堂長)に就いていた。

 また、大本山總持寺の西堂に、愛知専門尼僧堂(名古屋市千種区)の青山俊董堂長(89)が10日付で就任した。同寺の役寮に女性が就くのは初めてとみられる。同僧堂によると、堂長は続けるという。

2022/1/27 今年度アーユス賞 ジュマ・ネットの下澤氏に

 アーユス仏教国際協力ネットワーク(松本智量理事長)は先月末、2021年度のアーユス賞を発表。今年の大賞(茂田賞)にジュマ・ネット代表で静岡文化芸術大学の下澤嶽氏を選出した。

 日本の国際協力NGOで多大な功績のあった関係者を表彰するアーユス賞。大賞を受賞した下澤氏は国内外で国際協力団体に従事した後、2002年にバングラデシュのチッタゴン丘陵地帯の紛争解決と平和促進のため「ジュマ・ネット」を設立。長年にわたり少数民族を支援してきた。

 今後の活躍が期待される新人賞は(公社)シャンティ国際ボランティア会ラオス事務所コーディネーターの浅木麻梨耶氏、NPO法人FoE Japan気候変動・エネルギ―担当の高橋英恵氏が受賞した。またアーユスの活動に貢献・協力した寺院や個人に贈られる特別功労賞には浄土宗西念寺住職の佐山哲郎氏が選ばれた。授賞式は3月8日に神谷町光明寺でオンラインを併用して開催予定。

2022/1/20 展望2022 水平社100年と現代の人権 ネット化で姿を変える差別 和歌山人権研究所理事・本願寺派僧侶 小笠原正仁氏


 全国水平社が結成されて今年3月で100年となる。被差別部落の若者たちが、被差別者が解放されていく、あるべき社会を求めた一歩であり、その宣言は現在もなおみずみずしい響きといまだ重い課題を我々に提起している。

 この宣言を宗教者として深く受け止めねばならないのは今や当たり前のこととなっているが、当時はそうではなかった。水平社の活動に対して、宗教者=仏教者として反応したのは浄土真宗本願寺派の大谷尊由の『親鸞聖人の正しい見方』である。これに対して西光万吉が中外日報紙上、『業報に喘ぐ』で反論した。『宣言』が、求めるものは真の解放とそのための「社会改造」である。つまりは「熱と光を求める」新しい秩序に基づく「革命」の呼びかけでもある。恩恵的な「臣民の権利」ではなく自律的な「人の権利」の享受できる社会をめざしたのである。これに対して、本願寺派は、門信徒に信仰と社会変革の無関係であることを諭す。

 国家神道による祭政一致国家である明治政府は、仏教を民衆教化のための手段としていた。それは江戸時代以来、「将軍」が「ミカド」に替わってもなんら変わりない。西光のいう『業報に喘ぐ』は、社会の批判原理たりえない本願寺派にとって不都合な真実であり、それゆえにフーコーのいう「パレーシア」であった。西光の言説は、真理として、既成秩序を脅かすのである。『正しい見方』では、仏教は「社会改造」とは無関係で、「法悦」の内に個人生活を送ることであるというのであるが、結局、社会秩序がどうあれ、どのような処遇も不平を言わずに受け取れというのである。それは個人の「因果応報」なのだから。これは真理の言葉ではなく、秩序維持のための言葉であり、支配者の言葉を代弁しているに過ぎない。つまり政治なのである。

 それから20年を経て、1945年、日本は敗戦を迎えた。水平社の求めた権利は憲法によって保障された。しかし、その基本的人権の規定が部落差別解消に力を発揮したわけではない。

 部落差別解消に力を発揮したのは解放運動であった。運動は、差別のために低位に置かれた状態の改善を求め、社会への啓発と教育を求めた。政府は、そのための施策を行ったが、人権侵害への刑事罰を適用する立法は躊躇した。その後、関連事業法は延長を打ち切られた。そして、同和問題は終わったという声がささやかれた。

 憲法の表現の自由は差別の自由ではない

 それから20年が経過し、ネット社会が拡大する中で、差別もその姿を変えていった。そのために人権三法と呼ばれる、民族差別、障害者差別、部落差別を解消するための法律が制定されたが、それもつい最近である。ヘイトの差別当事者であっても、「それまでは差別がなかったから法律の必要がなかった」とは言わないであろう。それが現状なのである。

 差別への法的手続は、可罰性のない不法行為、つまり民法上の不法行為に限定される。これを差別禁止法として可罰性を付与することについては、表現の自由を根拠に反対する憲法学者がいるが、その憲法学者が学んだ欧米では人権侵害は犯罪なのである。彼らが何に忖度しているのか見当がつかないが、日本の表現の自由は今や差別の自由の根拠となってしまった感がある。

 戦後、宗派において同朋運動が推進される中でも、「伝統的教学」は継承され、社会変革への道を閉ざしてしまう、「因果応報」による自己責任論は、現在もなお生きている。新自由主義者が口にする「最新」の自己責任論は、日本では「因果応報」によって受け止められているのである。コロナ差別のような「新しい差別」も同じ差別構造によって再生産され、処罰されることもない。

 ところで、このコロナ禍で世界は新たな局面を迎えている。距離を置くことが求められる多くの分野でDX(デジタル・トランスフォーメーション)が加速している。これは、単にパソコンやスマホで仕事や手続きをするということだけではなく、メタバースという仮想現実の世界が作り出され、そこで現実の個人情報と結びつけられたアバターとして我々は存在することになる。

 メタバースでは事業者が王となる。グーグルかフェイスブック(Meta)か、いずれの王国にしても、アバターはサービスを受けるが、王の支配に服しなければならない。宗教界のDXもこの洗礼を受ける。そして飲み込まれる。新たな王に対し、「正しい見方」か「業報に喘ぐ」かを示すことになるだろう。その時に、私は、教えが我々に示しているのは、真理(パレーシア)であるということを忘れずにいたい。

 おがさはら・まさひと/昭和31年(1956)大阪生まれ。関西大学大学院博士課程中退。日本法制史。大阪芸術大学非常勤講師。浄土真宗本願寺派僧侶。元基幹運動推進中央相談員。(一社)和歌山人権研究所理事。(財)同和教育振興会理事、㈱阿吽社代表取締役。

2022/1/20 1.17阪神淡路大震災27年法要


辻井会長(中央)を大導師に読経供養した 神戸市佛は垂水区の継孝院で 一瞬一瞬の命を大切に 
 阪神淡路大震災から27年が経過した17日、神戸市佛教連合会による物故者追悼法要が垂水区の臨済宗相国寺派継孝院で営まれた。辻井定宏会長(西区・天台宗太山寺)を大導師、善本秀樹副会長(須磨区・浄土真宗本願寺派順照寺)、西蔵全祐副会長(東灘区・高野山真言宗理性院)を脇導師に、般若心経、重誓偈、自我偈を読誦。約50人の参列者が焼香し、犠牲となった6434人に哀悼の誠を捧げた。

 辻井会長は、東日本大震災をテーマにした連続テレビ小説「おかえりモネ」の主人公・百音(宮城県の離島出身、震災をたまたま免れたことで深い葛藤を覚える)と自分を重ね合わせ、「当時、私はサラリーマンをしていました。会社に行かなければならないと思って、お寺や檀家さんの事は何もできなかった。その時は仕事が一番だと思っていましたが、何年か経つと、檀家さんのために働くべきだったのではないだろうかと後悔いたしました」と回想。

「今ある命も明日にはどうなるかわからない、一瞬一瞬を大切にしないといけない」と語り、震災の記憶を継承していく大切さも強調した。(続きは紙面でご覧ください)


昨年同様、仏教会関係者のみで厳修 長田区仏は西代寺で営む 供養の心 次世代へ
 全51カ寺から成る長田区仏教会主催の震災犠牲者追悼法要が17日午前、神戸市長田区の東寺真言宗西代(にしだい)寺で厳修された。導師の木田亮仁会長(同寺住職)は「親を失い子を亡くし、夫を亡くし妻と別れる無念、親族を失う悔やみ、誠に愛別離苦の涙、禁じ得ず」と「追悼の文」を読み上げ、供養の心を幾世代にもわたって伝えていくと誓った。

 同法要は震災発生翌年の平成8年から始められ、毎年多くの檀信徒らが参列。だが今年も昨年同様、コロナ禍に鑑み、仏教会地区役員や関係者のみの約30人で営んだ。

 木田会長(62)は法要後の挨拶で、「(1月17日、私どものお寺も(本堂・庫裏全て)全壊し、その下敷きとなって先々代(名誉住職)のおばあさんが亡くなった。その光景は今でも覚えている」と胸中を吐露。「皆さんもそれぞれ、17日の震災体験があると思う。個々の体験をいろいろな所で語っていただき、仏教会としては回向の心を伝えていきたい」と呼びかけた。

 最も甚大な被害を受けた地域の一つである長田区。区仏教会の寺院も被災する中、震災発生翌年には西代寺の仮本堂で追悼法要を営んだ。(続きは紙面でご覧ください)

2022/1/20 御朱印でALS研究支援 岐阜市弘峰寺 医療進展難病克服祈願


志納金500円。迫力のイラストは信徒筆 全身の筋肉が徐々に動かなくなっていく難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)。日本全国で約1万人の患者がいるが、その発症のメカニズムや根治法などは未解明である。そんな中、岐阜市の高野山真言宗弘峰寺(田村昌大住職)では御朱印を通じた研究支援を行っている。

 「医療進展難病克服」と祈りが込められ、本尊・不動明王を大迫力かつ魅力的にイラスト化した御朱印。この志納金(1枚500円)が、神経細胞研究の第一人者である宇理須恒雄名古屋大学客員教授が主宰するALS解析プロジェクトに寄付される。田村住職によると「知り合いの仏壇屋さんからこのプロジェクトを教えてもらいました。私の身近にもALSの患者がいたので、ぜひこれは支援しなければと思って始めました」とのこと。イラストは信徒によるもので、事情を説明すると快く協力してくれた。

 「仏教の教えに鑑みても、やはり人々が元気に暮らせることが一番大切なことではないかと思います。たくさんの人を幸せにするために少しでも医療・健康に関わる人を支援できたら」と田村住職。ALSだけでなく、コロナ医療者支援の御朱印も授与しており、こちらは愛西市の浄土宗大法寺と協力してすでに540万円以上を日本赤十字社に寄付している。節分が終わって2月上旬からは郵送受付も再開する予定だという。問い合わせは同寺(☎058―245―6621)へ。

2022/1/13 展望2022 僧侶育成と資質向上への課題 お寺生まれに必要な「使命感」 僧堂教育の前に師匠は弟子教育を 岩手県奥州市曹洞宗正法寺 盛田正孝山主に聞く


 僧侶の育成と資質向上の課題について述べよ、とのテーマを頂きましたが、私にそれを言える資格はない。資質の向上は本人の自覚の問題です。それに僧侶の育成ですから、自分のことは棚に上げて話すしかない。

選べない宗教

 まずは在家から出家した人とお寺に生まれた人がいる。在家から出家した人には、「発心」があるわけですが、お寺の子にはそれがない。ここに大きな問題がある。在家出身者は宗教を選び、師匠を選んで出家する。本来であればこのように宗教を選ぶことができるはずなのに、お寺の子は現実には選べない。そして発心があろうとなかろうと現実問題として僧侶資格を得てお寺をやっていくのが当然として育つ。

 また、曹洞宗には1万5千カ寺弱ある。家族4人として食べていけるお寺が4割あるかどうかという報告を受けたことがある。ということはそれ以外のお寺は兼業となる。そうしなければお寺を維持できない。そうなるとお寺のことは後回しになる。仮に、兼業で、どちらに重点を置くかと言えば、兼業になります。するとお寺では、お葬式と法事、お経が中心とならざるを得ない。

 そういう中で、在家から出家した人が持つ発心や道心に代わるものがお寺の子に果たしてあるのかと考えたとき、それは「使命感」だと私は思っている。すなわちお寺に生まれた意味を自問し見出し、使命を自覚していくことです。その使命は文字通り、命を使うという意味。このいただいた命を何のために、誰のために、どのように使うかということです。

 では、何を為すべきかと言えば、お釈迦さまの教え、両祖(道元禅師・瑩山禅師)の教え、禅の教えを伝えていくのが使命であり、その使命を果たすには勉強も修行もしていかなければならない。そこで初めて修行僧の育成という課題に向き合うことになる。

 僧侶だけではない。色濃く残っている檀家制度の中で、檀家さんもお寺を選べないし、お坊さんも選べない。選べない檀信徒のことを考えたら、自分はどうすべきか。僧侶自身が自覚や使命をもっていなければならないんです。けれども、中々そこまでは言えない。自分のことを棚上げして、というのはそういうことなのです。

ペースメーカー
 
 僧侶育成に関してですが、誤解を恐れずに言えば、私は育成する意識は低いのです。どういうことか。僧侶は自然に育つものだと思っているからなんです。ただしそれには条件があって、私が一緒に修行するというのが前提なんです。これから始まる托鉢も、坐禅も一緒にして、応量器で共にお粥を食べる。僧侶育成で重要なのは何かと問われれば、私は共に歩むことだと思っている。

 一例をあげると、マラソンのペースメーカーですね。ラビットと言われてますが、あの存在に近い。ラビットは選手の少し先を走って、自分が外れても一人で走って行けるなと思えたら引いていくわけです。この例えが良いか悪いかは別にして、そういう意識なんです。修行を共にしながら、一本立ちできるとわかったら、引いていく。もちろん、「行持軌範」や「清規」に基づいてカリキュラム通りにやっていけば、ある程度育つというのは百も承知です。その上で、どう工夫し寄り添っていくかなのです。

 修行僧はだいたい1年か2年で僧堂を去っていく。この期間は根っ子を作るだけなんです。道根=道を歩む根っ子を養っているさなかに、修行が終わったという感覚で僧堂を下りる。確かにそれで一定の作法を身につけ学業を修め教師資格は得られる。でも禅僧として未熟であることに変わりはない。根っ子を養っていけば、幹が育ち葉が出て花が咲き、果実がなる。「石の上にも3年」ということわざがあるように、3年間修行道場にいたら、何が大事か、何のために修行しているのかが、教わらなくてもわかってくる。人が育つ、あるいは育てるには時間がかかるのです。

超世代の安居

 中には師匠たちは自分では教えられないため僧堂にすべてを任せる傾向がある。教育の前に養育があるように、子どもが社会に出て困らないように最低限度のことは親が家庭で教える。それと同じ。師匠である父親が、僧堂に入る前の弟子(子ども)をきちんと教育すること。衣の着方、袈裟の掛け方、応量器の使い方、お拝の仕方など最低限度の基本は教えておいてくださいとお願いはしている。僧侶育成には師匠による弟子教育が不可欠です。

 正法寺専門僧堂は再開単して5年ほど経ちます。資格取得のために安居する人のほか、有資格者の短期間安居も受け入れている。その中には老僧もいます。われわれの世界の良いところは70~80代の老僧と20~30代の若者が一緒に修行し話が出来ること。そこで世代間の価値が伝承され共有される。普通、70~80歳の話を子どもや孫はまともに聞かないし噛み合わない。それが80代の老僧と修行僧が話をする。本山僧堂ではここまではできないけれども、地方僧堂ではこれができるのです。こうした経験は若い僧侶のその後の人生にも影響を与えるはずです。(談)

 もりた・しょうこう/昭和19年(1944)生まれ。駒澤大学大学院修士課程修了。平成18年から5年間、大本山總持寺後堂を務める。曹洞宗布教師養成所主任講師、師家養成所主任講師などを歴任。平成26年から曹洞宗における元「第3の本山」とされる古刹、正法寺(岩手県奥州市水沢黒石町)の第59世山主。併設する正法寺専門僧堂堂長。栃木県野木町の満福寺を兼務。

2022/1/13 立正大学次期学長に寺尾英智氏


寺尾次期学長 (学)立正大学学園は、吉川洋学長の任期満了に伴い、11月29日開催の理事会で仏教学部教授の寺尾英智氏(64)を第35代学長に選任した。任期は2022年4月1日から2025年3月31日までの3年間。仏教学部教授が学長に選任されるのは、第25代学長を務めた渡邊宝陽・特別栄誉教授以来となる。

 寺尾氏は1980年に立正大学仏教学部宗学科を卒業。同大大学院文学研究科仏教学専攻修士課程修了後、同大仏教学部宗学科助手に就任。その後、身延山大学仏教学部専任講師、助教授を経て2011年に立正大学仏教学部教授に就任し、仏教学部長、同大日蓮教学研究所所長を歴任した。

 学会・学外等の活動では、日本印度学仏教学会や日本宗教学会で理事・評議員を務めるほか、東京都品川区や千葉県市川市の文化財保護審議会委員などを務める。

 専門は、日蓮教団史、日本仏教史。博士(文学)。日蓮宗綜合財団奨励賞(2007)、日本印度学仏教学会賞(1998)、望月学術賞(1997)などを受賞。著書に『日蓮聖人真蹟の形態と伝来』(雄山閣出版)、『日蓮信仰の歴史を探る』(山喜房佛書林)などがある。

2022/1/13 立正佼成会「御親教」式典 即是道場、日常生活が修行 庭野会長 家庭からの実践説く


今年の書き初め「素心」と「和言」のもと新年の法話を述べる庭野会長 立正佼成会(庭野日鑛会長)は7日、東京・杉並の大聖堂で新年恒例の「御親教」式典を挙行した。今年は庭野光祥次代会長が挨拶し、法華経に基づいた信仰と人生の在り方を独特な表現で紹介した。庭野会長は大乗仏教の観点から日常生活が修行であるとして「即是道場」を示した。式典の模様はオンラインで配信された。

 式典では次代会長を導師に読経供養。法華経方便品と如来寿量品を読誦した。教団を代表して國富敬二理事長が年頭挨拶を行った。元旦に会長夫妻と次代会長夫妻と共に大聖堂屋上から初日の出を拝し、「今年の太陽の光は例年以上に温かく感じられた」と和やかに報告した。さらに庭野会長が説いてきた簡素と斉家を踏まえながら「私は省くものは省き、大事なものを見極めながら楽しく精進させていただきたいと思います」と自身の決心を披瀝した。

新年挨拶を述べる庭野光祥次代会長〝人生を法華経し、法華経を人生する〟
 続いて國富理事長から新年挨拶の依頼を受けたという次代会長が登壇した。新型コロナの感染拡大以降、基本構想として掲げてきた「惜しみなくつながる」の在り方が一変したと嘆息。そして立正佼成会の「佼」の字を繙きながら、「人と交わることをもっと丁寧にしたい。それによって何が成就するのかを大切にしたいと思っています」と表明した。

 次代会長はまた、「法華経を生きている人とご縁を結ぶことができる。それが佼成会の一番の魅力だと思います」と強調し、「人生を法華経し、法華経を人生する。そんな私たちでありたい」と独特の言い回しで信仰の在り方を口にした。
 庭野会長は法話の冒頭、前日からの雪景色が残っていることにふれ、「私は雪国(新潟県十日町市菅沼)に10年いましたから、お正月に雪があるのは当然と思ってきた。今日はお正月のような気分」と懐かしんだ。

 今年の書き初めは「素心」と「和言」。庭野会長は「心を大切にしたいと思い」この字にしたと説明。「素には白いという意味がある。地位や名誉、年齢など世間的な着色に染まらない。人間そのものの純真な心を素心という。そういう心で色々なものを見たり聞いたり学んだりしたい」と自らの抱負も。「和言」は和やかに言うことで、特に家庭での実践を促した。

 次代会長が「佼」や法華経に基づいた信仰について述べたのに対し、庭野会長は大乗仏教の観点から仏道修行を概説。「日常生活が仏道修行であり、それが同時に仏の衆生救済の活動」と述べ、即是道場の考えを改めて提示した。(続きは紙面でご覧ください)

2022/1/13 後七日御修法 今年も厳戒態勢下で厳修 世界のコロナ終息祈る


開白上堂の進列を合掌しながら見送る園児ら(8日) 鎮護国家・五穀成就・国土豊饒を祈る真言宗の最高儀式・後(ご)七日(しちにち)御修法(みしほ)(主催=真言宗各派総大本山会〈各山会〉)が8日、京都市南区の総本山教王護国寺(東寺)・灌頂院で始まった。大覚寺派大本山大覚寺の尾池泰道門跡が大阿闍梨(大導師)を務め、真言宗各派の高僧14人が供僧として国家・国民の安泰や世界平和、コロナ禍の終息を祈願。14日の結願まで、7日間二十一座にわたる熱祷を捧げる。

 8日の開白には、天皇陛下の御衣を奉持した宮内庁京都事務所からの勅使4人が参向。別當の伊勢俊雄・大覚寺執行長と総務の砂原秀輝・教王護国寺執事長、局長の菊入諒如・各山会事務局長が小子坊の門前で出迎えた。
 御衣を菊の御紋の入った唐櫃に奉安して灌頂院へ。御衣伝達式が厳かに営まれた。宮内庁の勅使は11日の中日にも焼香参拝。14日の結願にも参向し献香する。

 正午から開白上堂。御修法に出仕する高僧らが本坊から灌頂院へと続く参道をゆっくりと練り歩くと、参道の脇では僧侶や参拝者らが合掌しながらお練りを見送った。東寺保育園の園児らが、元気よく「なむだいしへんじょうこんごう!」と繰り返し唱和。境内に疫病退散を願う祈りの輪が柔らかく広がった。

 開白前々日の6日、政府は再び感染者数が急増に転じ始めた沖縄・広島・山口3県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針を固め、9日に開始。御修法期間中も全国各地での感染拡大が報じられ、政府や自治体から新種のオミクロン株への警戒が呼びかけられた。

 昨年に続き厳戒態勢下での御修法厳修となったが、出仕者には事前にPCR検査を実施し、期間中はPCR検査を受けた人以外は東寺本坊への出入りを禁止するなど対策を徹底。例年賑わいを見せる定額位の中日参拝や外部からのお見舞いも昨年同様に自粛とし、極力外部との接触を避けるための措置が取られた。

2022/1/13 延暦寺年頭式 「大悲万行」を発信

 
忘己利他の心の大切さを説く大樹座主 天台宗総本山比叡山延暦寺(滋賀県大津市)で8日、年頭式が営まれた。僧侶、檀信徒、国会議員ら約250人が大樹孝啓天台座主に拝謁。今年も1年、宗祖伝教大師の一隅を照らす精神で過ごしていくことを誓った。

 年頭式で発表される「比叡山から発信する言葉」は10回目。今年は「大悲万行―すべての行いは大悲から」で、大樹座主による書き初めが会場に掲げられた。「大悲とは、仏さまが常に人々を見守り、苦しみを取り除き安心を与えて下さる御心のこと。私たちにも具わる仏心に目覚め、利他の行いに努めましょう」という意味だとしている。

 大樹座主は菩薩僧の育成のために六行(六波羅蜜)の大切さを強調。「布施の最初は和顔愛語、究極の目標は忘己利他であります」と述べ、その心で過ごせば「人間界だけでなく自然界に対しても畏怖の念を抱き、共生することで環境問題にも解決の道が開けます」と、すべての生きとし生けるものに平和をもたらす要諦を説いた。

 阿部昌宏宗務総長は挨拶で、「コロナの静まりを見ながらですが、全国の檀信徒や一般の方々にこのお山に足を運んでほしい」と期待。比叡山宗教サミット35周年の集いにあたり、世界平和への願いを発信する意気込みも見せた。サントリーホールディングス副会長の鳥井信吾氏、滋賀県知事の三日月大造氏、四天王寺管長の加藤公俊氏も挨拶した。

2022/1/1 新春エッセイ 「霊気満山 隅々に生きる力」 佐藤秀仁(真言宗智山派大本山髙尾山薬王院貫首)


高尾山山頂から望む元旦のご来光。薬王院では毎年迎光祭を営む(写真=薬王院提供) 私の祖母は修験行者で高尾山でも修行をしていました。そんなご縁もあり、父は先々代御貫首山本秀順大僧正の弟子となり薬王院に勤めていました。

 昭和49年、高尾山麓の髙楽寺に父が入寺。板橋区に開いていた道場から家族で移り住みました。しかし父はその5年後に病気で亡くなります。小学生だった私と母が遺されました。この時、山本大僧正が私の成長を「待つ」と言って、お寺を兼任して下さったのです。高校を卒業してすぐに僧侶となった私は、山本御貫首と先代の大山隆玄前御貫首に恩返しの思いでお仕えしていましたので、こうして山主になるなど想像すらしておりませんでした。

 一昨年7月、大山前御貫首がご体調上の理由でご勇退を決断されました。その後、10月に保管していた後任住職選定の書状を開封して後継を選定するための儀が、成田山と川崎大師の御両山お立ち会いの元で行われることになりました。私は執事として準備をし、後席の手配もして当日を迎えました。歴史の変わる瞬間に立ち会うつもりで、端の席に加えさせてもらいました。ところが発表されたのは私の名前。「頭の中が真っ白」とはまさにこのこと。朦朧としてしまい、後席のこともあまり覚えていません。

 どうしようか思いあぐね、眠れずにいたある日、お山の中腹にある歴代山主の墓所へ向かいました。立ち並ぶ大きな杉の木を眺めていたら、ふと思ったのです。「この杉は嵐も大雪も雷も山火事も戦も超えて、根をしっかり張って大きな杉になった。でも最初からこうじゃない。苗木や若木の時もあった。その中でしっかり生きてきたからこうして大樹になったのだ」。そして「自分もそうではないか」と感じることができたのです。

 「高尾は大衆の山」と大山前御貫首はよく口にしていました。修行や参拝、デートやスポーツなど色々な目的と気持ちで多くの方が登ってこられます。でも山を下りた皆さんの気持ちは「あぁ、すっきりした」と共通しています。昼間はとても賑やかな高尾山ですが、朝晩には霊山に戻ります。冬のこの時期のご来光は、大自然の営みの厳かさがあり、言葉にできない感動があります。自然に頭が下がり、手が合わさる。あらゆる信仰、神仏が生まれた根底ではないのかと思います。

高尾山山門には日本遺産認定の横断幕が掲げられている。「霊気満山 高尾山ー人々の祈りが紡ぐ桑都物語」とある。桑都はかつて養蚕業が盛んだった八王子を指す 令和2年(2020)6月、東京で唯一の「日本遺産」に認定され、「霊気満山 高尾山」と称されました。「霊気満山」は山本御貫首の言葉。朝のお勤めの時に立ち込める霧は、仏さんの力が目に見えて現れる、それが満ちたお山であることを指して「霊気満山」と仰いました。

 高尾山は生命の力に満ちています。パワースポットともてはやされますが、それもそのはずで、ここには小さな草も木も鳥も虫たちも、樹齢500年を超える大きな杉まで様々な生命が息づき、与えられた生命を精一杯ひたむきに全うしています。霊山の空気は、懸命に生きる生命の力の現れです。深く呼吸をして、心と体全体でこの力を受け止める。そうすればみなさんの人生や、生活の隅々にその生きる力がいき届きます。私は参拝者にそう呼びかけていますし、自分自信がそれを強く感じています。

 高尾山で得られる一番の御利益は生きる力。困難な時代だからこそ高尾山を多いに活用して下さい。

さとう・しゅうじん/昭和45年(1970)生まれ。八王子市・真言宗智山派高楽寺住職。平成2年(1990)に薬王院に入山、教務部長を経て令和2年(2020)に貫首に就任。多摩少年院教誨師会副会長、八王子保護司会高尾分区保護司などを務める。
 

2022/1/1 日蓮宗 新総長に田中恵紳氏 750遠忌見据え体制構築へ 明和会から小松氏以来12年ぶり 


田中恵紳新総長 日蓮宗は12月15日、中川法政宗務総長の任期満了に伴う新宗務総長を選出する第119臨時宗会を東京都大田区池上の宗務院に招集し、和歌山県蓮心寺住職の田中恵紳議員(明和会)を新総長に選出した。田中新総長は宗祖750遠忌に向けた準備に着手することや、コロナ禍で苦しみの中にある人々に寄り添う宗門の体制を構築することを表明。20日には認証式が執り行われ、田中内局が発足した。

 11月の宗会議員選挙において宗政会派の明和会が議会(45議席)の過半数にあたる23議席を獲得。今宗会では、明和会議員の一人が病気加療に伴い止む無く欠席したため、議場の勢力が同数(明和会22議席、同心会22議席)になり、総長選出選挙は波乱含みの展開となった。

 開会式後、昼過ぎまで本会議が開かれず中川総長の退任挨拶の後、時間延長動議が出された。午後7時頃に本会議が再開。総長選挙が行われたが、44票中、田中議員22票、中川総長22票の同数のため決せられず、再び議事進行が中断した。午後8時半頃に再開し、再投票の結果、田中議員42票、白票2票で田中議員が新総長に選出された。

 中川総長は退任の挨拶で御降誕800年事業や、加行所の開設中止などコロナ禍での運営を振り返り協力に感謝。就任時から掲げた〝強い日蓮宗〟にも触れ「世の安穏を求める私たち僧侶に安穏はありません。この4年間に私が問い続けた日蓮宗の強さという命題が、この先も常に宗門の中で問い続けられることを願います」と話した。

 田中新総長は、「いまだ終息の気配を見せないコロナ禍にあって、社会も人心も確実に新しいフェーズに移ろうとしている。人々の悩み、苦しみ、悲しみに寄り添いながら、ともに歩むための宗門の体制を早急に構築しなければなりません」と語り、加えて10年後の2031年に迎える宗祖750遠忌の準備に着手することも表明した。

 認証式が20日に宗務院で行われ、田中内局が正式に発足。田中新総長は、「これまでの12年間の議員経験で学んだのは、宗門運営は誰がやるかではなく、何をやるかが大切だということ。何をやるか、皆さんとしっかり共有してやっていきたい」と抱負を語った。

 田中新総長は昭和35年2月28日生まれ。61歳。千葉大学工学部卒。立正大学仏教学部宗学科卒。宗会議員4期目。明和会前会長。中川内局で総務部長、委員会では管長推戴委員会、制度研究委員会などで委員を務めた。加行所第初行成満。

2022/1/1 大谷大 次期学長に一楽真教授

   
一楽次期学長 大谷大学(京都市北区)は12月16日、次期(第29代)学長に文学部真宗学科の一楽真教授を選出した。任期は4月1日から2026年3月31日までの4年間。

 一楽次期学長は1957年9月16日生まれの64歳。大谷大学文学部真宗学科卒業、同大学院修士課程修了、博士課程満期退学。1989年に同大助手となり、以後講師、助教授、教授を歴任した。『親鸞の救済論』で博士(文学)。著書『シリーズ親鸞 親鸞の教化』(筑摩書房)など多数。石川県小松市の宗圓寺住職。

2022/1/1 全日仏広報委員会 社会との意識のズレ討論 お寺と檀信徒 その関係性を問う


 全日本仏教会(全日仏)の広報委員会が12月8日、京都市内のホテルを会場にリモート併用で開催され、報道陣を含めて約30人が参加した。㈱寺院デザインの薄井秀夫代表が「コロナ禍の先に見えるもの—全国生活者意識調査『コロナ禍と仏事(2021年)からの一考」をテーマに発表。戸松義晴・全日仏理事長と対談するなどし、様々な問題点を洗い出した。

 薄井氏は自社で行った意識調査の最新データに基づき発表(調査結果は同社HPから無料でダウンロード可)。コロナ禍を通して供養の意識が高まっている一方、葬儀などの儀式の簡素化を望む傾向も一層高まっていると指摘した。さらにコロナ禍で急激に広まったオンライン儀式に対して、反発を持つ人が増えていることが判明したと話した。

 「お寺と人々の間にある意識の大きなズレ」として、「①お布施②檀家制度③儀式」を挙げ、「〝なぜ供養の気持ちが仏教儀礼に結びつかないのか〟を問うべき」と提言した。

 戸松理事長は、「お布施の問題は永遠の課題かもしれないが、1月に全日仏が公表する調査の中で『お布施額の決め方と納得の度合い』も調べた」と報告。「半数近くが自分たちでお布施額を考えて納めている現状がある。そういう方々の満足度は高いが、そうでない場合は満足度が下がる」と一端を明かし、「〝お布施はお気持ちで〟は無責任という批判に対しても、こういうデータを基に考えていきたい」とした。

 薄井氏は、「その宗派の教えに帰依して檀家になっている人がどのくらいいるか。檀家さんは教えでお寺と繋がっているわけではない」とも指摘。「都市部では菩提寺を持たない人が6~7割いる。そういう人たちは自由に選んでいくのでは」と見通した。

 ある宗派の担当者は閉会後、「お布施への不満も仏教儀式に意味を見出せない人が増えているのも、僧侶一人ひとりの力量不足が何よりも大きいと思う。檀家にお布施や儀式の意味を堂々と話せる力量が今一番必要なのではないか」と分析。「宗派としても研修会の拡充などを考えていきたい」と話した。

2022/1/1 日蓮宗鎌倉布教拠点落慶 宗祖布教の聖地に建立 


落慶した鎌倉「日蓮堂」。「立正安国」の扁額は地元の日蓮宗神奈川二部管区が奉納した 日蓮宗は12月9日、神奈川県鎌倉市の日蓮聖人辻説法跡隣接地に建立した鎌倉布教拠点「日蓮堂」(小町2ー355ー1)の落慶式を執り行った。御堂内には、日蓮宗総本山身延山の霊木を使用した日蓮聖人辻説法尊像が安置され、疫病や災害に苦しむ人々のために正法を説いた日蓮聖人と出会える。檀信徒、未信徒を問わず日蓮聖人を広く知ってもらい、時空を超えて日蓮聖人と向き合える施設を目指している。

 落慶法要では、中川法政宗務総長が導師、鎌倉布教拠点建設委員会委員長を務める地元の楠山泰道・神奈川県第二部宗務所長が副導師を務めた。御堂の中央に安置された「日蓮聖人辻説法像」に向き合い、村山智洋・修法導師が裂帛の気合で開眼修法を行った。

 「日蓮堂」建立に尽力した関係者に中川総長が感謝状を贈呈。設計を担当した建築家の椎名純氏、施工を担当した松井建設株式会社の松井隆弘・代表取締役社長、日蓮聖人御尊像の彫像を担当した柳本伊佐雄・身延山大学特任教授らに感謝状が手渡された。

 鎌倉布教拠点建設用地は平成21年に小松内局で取得。以降、渡辺内局、小林内局を経て宗祖御降誕800年の正当にあたる今年、内局3代にわたる浄行が遂に形になった。

 中川総長は土地取得から12年の歳月を思い「まさに万感胸に迫る思いです」と述べ、関係各位に感謝。「私たち日蓮宗教師の誓いは、宗祖日蓮大聖人が声の限り法華経をお説きになられた750年前と変わることはございません。唯一心に、妙法蓮華経、妙玄題を以ってこの娑婆世界に生きる一切の衆生を救うことを、今一度この地においてお誓い申し上げます」と日蓮聖人布教の聖地で祖願達成を改めて誓った。

 「日蓮堂」の隣にある辻説法跡地を所有する国柱会の田中壮谷賽主は「辻説法跡地と日蓮聖人が結びつかない人もまだ多い。立派な日蓮堂が落慶し、本会としても我々の本文である一天四海皆帰妙法の成就のために、この辻説法跡地を世界平和の発信基地として皆さまと協力してやっていきたい」と語った。

辻に立ち法華経を説く日蓮聖人を再現した尊像 「日蓮堂」は、延床面積121・57平方㍍。「日蓮聖人辻説法像」を奉安する六角堂と本山妙本寺が奉納したケヤキの一枚板で作られた臨滅度時の木版題目碑がある展示ホールで構成されている。

 設計した建築家の椎名純氏は「通常、日蓮聖人像は台座に乗り高いところにあることが多い。六角堂は一対一で聖人像と向き合いやすい建物を意識しました。六角堂の中央に立つと、自然と聖人と向き合って話ができる。時空を超えて日蓮聖人と向き合っていただければ」と話した。

鎌倉駅から徒歩5分の場所にあり、鶴岡八幡宮へと続く若宮大路から一本入った小町大路沿いにある。周辺には日蓮聖人を開山に仰ぐ日蓮宗最古の寺院である本山妙本寺、佐渡流配よりもどった日蓮聖人が鎌倉での布教の拠点にした本山本覚寺など日蓮宗寺院も多い。寺院と辻説法跡地、「日蓮堂」、地元の神奈川県第二部管区との連携も今後期待される。(続きは紙面でご覧ください)

2022/1/1 鼎談 「コロナ2年の仏教界ー法事、葬儀から祈りまで」


 仏教界においては少子高齢社会の中で、葬儀の簡略化や法事の減少、会葬者の減少などがすでに進行していた。それが新型コロナウイルスの感染拡大防止、3密回避という観点から加速した。緊急事態宣言とまん延防止が繰り返されたこの2年、仏教界は何を学んだのか。法事や葬儀ばかりではなく、感染の初期から始まった疫病退散の祈りや困窮者支援はどうだったのか。またオンライン化が一気に進んだ。こうした現象が寺院や仏教界にどんな影響を及ぼしたのか。住職兼医師の倉松俊弘氏、宗教社会学者の髙瀨顕功氏、寺院コンサルタントの薄井秀夫氏に鼎談いただいた。今回の経験を次世代にどう活かすか―。(進行・構成/編集部)

―コロナ禍の葬儀や法事などについて発題いただきました。最初に檀信徒の状況や対応から始めたいと思います。

倉松 家族だけの葬儀というのは確かに増えました。県外の親戚にはご遠慮いただくように檀信徒にお願いし、法事も普段なら30~40人ぐらいですが、十数名にしてくださいとお伝えした。できるだけ地元の人だけにした。少しでも感染リスクを避けるためです。檀家さんに迷惑をおかけしましたが、メリットもあると思っています。

髙瀨 昨年(20年)4~5月の葬儀は本当に参列者が少なかった。広い式場に10人ぐらい。それでも夏ぐらいに戻ってきた。地域を越えた移動ははばかられましたが、地域内であればそんなに気を遣っていませんでした。地方の場合、移動が自家用車だったことも大きい。一方、大都市は公共交通機関が一般的なので会場に集まるだけでなく、移動自体のリスクがあると思われていた。現在は、分散型の弔問により、儀式への参加者は少ないけれども、会葬者数はほぼ戻ってきているのではないかというのが葬儀社の方のお話でした。

薄井 当時はウイルスがどんなものかもわからず、恐れもあったと思います。ステイホームで不要不急の外出はしないように呼びかけられた。会葬やお墓参りは不要不急なのかという問題提起はずっとありました。(続きは紙面でご覧ください)