11月
2025/11/17
緊急報告 上田二郎(僧侶兼税理士/元マルサ)
文化庁が税理士連合に協力要請 宗教法人売買問題に注意喚起
本年8月、文化庁が日本税理士会連合会に対し、下記の協力依頼を行った。
《今般、宗教法人法(昭和26年法律第126号。以下「法」という。)に基づき設立された宗教法人について、その本来の目的を潜脱した宗教法人の売買に類似した取引の事例が見られるところ、文化庁としましては、この課題の解消に取り組む必要があると考えております。つきましては、貴会の御協力をいただきたく、御連絡いたします。》
文化庁と連携し監視の強化を
文化庁に通報したところで、誰が、どのように処理していくのかが決まっていないとの意見も耳にする。また、宗教法人売買には専門的知識をもった税理士などがスキームを構築しているケースがあり、そもそも不正取引の通報をするのかとの疑問が沸く。
国税当局も「パナマ文書」の公表を受け、租税回避策を企業や富裕層に指南する税理士にスキームの開示を義務付けたが、バレないスキームで高額報酬を得ている者が通報するはずがないとの意見も多く、導入を見送っている。
しかしながら、文化庁の発表では不活動法人が約5千もあり、待ったなしの問題だ。加えて、すでに第三者の手に渡ってしまった宗教法人の監視体制の構築も急がれる。これらの問題を放置しておけば、脱税やマネーロンダリングなどの犯罪に使われることは目に見えており、空き家問題と同様に不法投棄や占拠、火災など見過ごすことのできない問題が想起される。
宗教界は文化庁の取り組みに賛同し、速やかに文化庁に通報する制度を構築するよう強く望む。特に第三者による法人格の不正取得などは、宗教界からの監視体制を強めることによって抑止力が高まるのではないだろうか。
宗教法人法の趣旨
そもそも 宗教法人とは、宗教団体が自由で自主的な活動をするための基礎として、法に基づき設立される公益法人の一類型であり、法の定めるところにより、宗教団体のみがこの法人格を取得できる(第4条)。法は、宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることをその目的としている(第1条)。
人々の浄財に頼るために財務基盤の弱い宗教法人が、永続的に存続できるよう願って制定された宗教法人法だが、近頃では、宗教法人の税制優遇を狙って、節税や脱税を目的とした宗教法人の売買が行われている。
拙著『税理士の坊さんが書いた宗教法人の税務と会計入門』(国書刊行会)にも掲載した、「宗教法人がラブホテル経営で14億円の脱税」は、休眠宗教法人を買い取って悪さをしていた事案だが、その後も宗教法人の脱税報道は枚挙に暇がない。(続きは紙面でご覧ください)
2025/11/13
仏教伝道協会設立60周年 感謝の会
発願者沼田惠範氏の精神継ぐ
感謝の会で挨拶する沼田恵明理事長 今年説立60周年を迎えた(公財)仏教伝道協会は10月28日、都内ホテルで関係者らを招いて「感謝の会」を開いた。国内外に仏教を伝道するため㈱ミツトヨ創業者の沼田惠範氏が協会を創立して60年。「成功は社会に還元する」という今に繋がる精神に思いを馳せ、また若い世代への仏教伝道の取り組みも展望した。
木村清孝会長は沼田惠範氏が昭和40年(1965)に設立した協会の活動を支える㈱ミツトヨをはじめとする多くの支援者に感謝した。『仏教聖典』の普及を柱に、国内外で行ってきた活動の成果と課題を踏まえた今後の取り組みに向けたスローガン「もっとつながる、もっとつなげる」を紹介。「仏教のみ教えを個々のみなさま、また社会全体としっかり繋げる橋渡しの役割を担い、今を生きる人々に仏教を伝えていく道を弛まず歩み続けたい」と述べ、一層の協力を求めた。
ミツトヨ取締役専務執行役員の佐々木繁幸氏が祝辞。ミツトヨを創業し、精密測定器の分野で世界的な企業を築き上げた惠範氏の人生の柱に「仏教への深い信仰」があったとしたうえで、「企業の成功は社会に還元するための手段である」という師の言葉を紹介。現在も利益の一部を仏教伝道や様々な社会貢献に活用していることを報告し「惠範氏の志が今も引き継がれている証。単なる資金提供という枠を超えた、志をもった社会貢献の象徴」と胸を張った。技術革新による新たな仏教伝道の可能性にも言及しながら「仏教の精神を次世代へと継承するみなさまのご努力に感謝し、仏教の教えがさらに世界に広まることを祈念します」と祝した。
惠範氏の孫でミツトヨ社長の沼田恵明理事長は「共に節目の日を迎えることができ、惠範も大変喜んでおられると思う」と謝意。ミツトヨが昨年90周年を迎えたことにも触れつつ、「新しい世代へ創業者の思いを繋いでいくためにも仏教伝道協会とミツトヨの関係が益々重要になる。4月より新体制となり、若い世代への伝道活動に職員一同一丸となって取り組んでおります。引き続き皆様の温かいご支援をお願いします」と呼びかけ杯を上げた。
2025/11/13
新パイプオルガン上納 築地本願寺で披露
築地本願寺に上納されたイタリア・ザニン社製のパイプオルガン 東京都中央区の浄土真宗本願寺派築地本願寺で5日、新しいパイプオルガンの上納式が営まれ、本堂内に設置された新オルガンがお披露目された。
仏教伝道協会の設立者である沼田惠範氏が米国の教会でパイプオルガンの音色に感銘を受け、日本の寺院への寄贈を発願。1970年に仏教音楽の振興と芸術文化の発信のために同会がドイツ・ヴァルカー社製のパイプオルガンを築地本願寺に寄贈した。55年にわたり法要やコンサートで演奏されてきたが、経年による老朽化が進み、新たなパイプオルガン製作を決めた。イタリア・ザニン社で製作され、9月下旬から築地本願寺で組み立て作業が行われてきた。
新たなパイプオルガンは初代と同じく本堂を入って直ぐの上部左右に設置。正面に阿弥陀如来の四十八願を表す48本のパイプが並び、パイプ群で六字名号を表す6つの山を象り、木枠のデザインは合掌をイメージした。3段手鍵盤と足鍵盤の4つのオルガンで構成。演奏台は移動式で、電気信号で音を鳴らす。パイプの総数は2566本。
今年は仏教伝道協会設立60周年でもあり、これに併せた上納となった。オルガンの製作費は約1億2千万円。上納式では木村清孝会長が異なる個性をもつ大小様々なパイプが美しいハーモニーを奏でることから、「仏教が実現を目指す、多様なるがゆえに美しい調和の世界を象徴している」と述べ、無事に上納されたことを喜んだ。
築地本願寺の尾井貴童宗務長はパイプオルガンは「築地本願寺の大きな特徴のひとつ」と誇り、「この素晴らしい音がお参り下さる方の心に仏さまの灯をつけて下さると思う」と感謝した。
新しいパイプオルガンの音色で「四弘誓願」が奏でられ、同寺合唱団楽友会による音楽礼拝が行われたほか、バッハの『前奏曲 ト長調』をはじめとする西洋音楽の演奏、仏教讃歌「しんらんさま」も奉納された。来年1月には特別演奏会も開催する予定。
2025/11/13
「薫聖教」国宝追加で慶讃法要
大津市石山寺 入定信仰に直結する至宝
奉告文を読む鷲尾座主 日本仏教黎明期の息吹を伝える滋賀県大津市の東寺真言宗大本山石山寺(鷲尾龍華座主)で2日、高野山奥之院に入定している弘法大師の芳香が移ったとされる「薫聖教(においのしょうぎょう)」の国宝追加指定慶讃法要が本堂で厳修された。市の文化財関係者ら約20人が参列。豊かな歴史が息づく湖国に、新たな至宝が加えられたことを喜び合った。
「薫聖教」は、菅原道真の孫で石山寺第3代座主を務めた淳祐内供(しゅんにゅうないく)(890〜953)による一連の自筆聖教。すでに国宝に指定されている「七十三巻一帖」に加え、弘法大師入定日の今年3月21日に新出分の「十巻」が国宝に指定された。
一昨年2月の大津市歴史博物館の悉皆調査で、塔頭法輪院から平安中期の聖教二巻を発見。先代座主の書斎・知足庵にあった聖教八巻と合わせ、同年の夏冬に行われた石山寺文化財綜合調査団の精査によって、散逸していた「薫聖教」の一部と判明した。
「薫聖教」は石山寺の座主だけに閲覧が許された秘宝で、歴代座主が1千年間にわたって護持。「生身(しょうじん)の大師が高野山の奥之院御廟で永遠の瞑想を行じている」とする弘法大師入定信仰と直結する真言宗屈指の名宝に位置づけられている。(続きは紙面でご覧ください)
2025/11/13
被爆80年 平和の石碑を除幕 法王と教皇のメッセージを刻字
広島市法縁寺 超宗派で〝意思〟つなぐ
碑を奉安した阿弥陀堂の前で諸宗教の祈り 浄土真宗本願寺派僧侶でひろしま平和大使の中垣顕實氏らによる「チーム和ちゃん」が3日、広島市中区の本願寺派法縁寺の阿弥陀堂に被爆80周年世界平和メッセージの石碑を建立した。ダライ・ラマ法王と、カトリックの故フランシスコ教皇が寄せた平和メッセージが刻まれている。
広島出身の書家である鳥生春葉氏が揮毫した「和」の書の両隣には折り鶴が刻まれ、その下に2人のメッセージが日英両文で記される。フランシスコ教皇は2019年11月に広島平和記念公園を訪れた際の「核兵器の保有もそれ自体が倫理に反しています」という言葉、ダライ・ラマ法王は今年8月6日の「世界に平和をもたらすにはまず我々自身の中に平和な心を育てる必要があることを覚えておかねばなりません」という言葉である。中垣氏は「平和の意思を繋ぐ石」と説明する。石碑の後ろにある阿弥陀如来像は引き取り手のない被爆死者の遺骨で作られた「骨仏」だ。
除幕式典は児童による、被爆樹木で作られたパンフルートの奉納演奏で開始。松井一實市長の平和祈念のメッセージが読み上げられた。中垣氏のほか、「和ちゃん」メンバーの原田真二氏(ひろしま平和文化大使、ミュージシャン)、白浜満氏(カトリック広島司教区司教)、法縁寺の本川こども園園長である大森顕乗氏がそれぞれの形で祈りを捧げた。(続きは紙面でご覧ください)
2025/11/13
花園大からドラフト1位 藤原投手、宗務本所表敬
宗務本所会議室を訪れた藤原投手(中央) 花園大学(京都市中京区)から史上初のプロ野球ドラフト1位という快挙だ。10月23日、同大野球部の4年生、藤原聡大投手が東北楽天ゴールデンイーグルスから1位指名を受け、大学のみならず臨済宗妙心寺派宗務本所も驚きと喜びの歓声に包まれた。
藤原投手は2003年11月生まれの三重県出身。京滋大学野球で頭角を現し、球速156キロを記録した剛速球の持ち主。直球だけでなくスライダーなど変化球も身に着けている。藤原投手は29日、奥本保昭監督らと宗務本所(右京区)を表敬訪問。野口善敬宗務総長ら役員と懇談した。
藤原投手は「花園大学を選んでよかった。ここからが新しいスタートですが、一から自分の道を自分で切り開けるよう、東北の地で、沢山の人の応援を背に頑張っていきます」と決意を語った。
栗原正雄花園学園長は「東北のお寺からどんどん電話がかかってきている。楽天ファンは多いですね」と宗門の誉れでもあると伝え激励。
野球ファンの野口総長は「練習の姿を見たこともあるのですが、速いな!と思いましたよ」と速球に驚いたと話し、体を大切にしてほしいと願いつつ大活躍を期待した。
藤原投手には花束と、山川宗玄管長が揮毫した「独歩青天」の色紙も贈られた。束縛を離れ自由な心で生きる悟りの境地を意味する禅語だが、イーグルが自由に天を飛ぶイメージも感じられる。ちなみに花園大学では基礎禅学が必修で、藤原投手も禅を経験している。
2025/11/10
埼玉佛青50周年大会 先祖供養の歴史学ぶ 先祖にならない人が増加傾向
他界観や葬送の歴史について学んだ記念大会 埼玉県佛教青年会(元山憲寿会長)は15日、県内のホテルで創立50周年記念大会を開催した。「祖先崇拝再考―日本における先祖供養の歴史を学ぶ」をテーマに専門家による記念講演やパネルディスカッションで、葬送の歴史や先祖供養の重要性を改めて学んだ。
元山会長は、初代会長が自宗派の真言宗智山派であったことに触れ、「節目の大会を私が引受させていただいたことを光栄に思う」と挨拶。今大会のテーマ設定ついて「昨今のコロナ禍以降、葬送儀礼の変容が急速に進んでいる。各宗派の作法などはきちんと務められていると思うが、今一度、日本人の精神性を学ぶ機会にしていただけたら」と話した。
記念講演では、三浦周・大正大学非常勤講師と問芝志保・東北大学准教授が古代から現代の日本の他界観や葬送の変遷について講演した。
三浦氏は「仏教伝来前後の祖霊崇拝の歴史」と題して講演。海に囲まれ山が多い日本の地理的条件から、古代の日本人が持つ「魂の行方」のイメージは、垂直方向への山中他界と水平方向への海上他界だったと指摘。この時点では「遺体・遺骨祭祀ではなく、魂祭祀だった」と説明した。
文献に見られる日本初の火葬は法相宗の道昭(700年)、天皇初の火葬は持統天皇(703年)だったが、遺骨祭祀ではなく、穢れを扱う僧侶の登場後に遺体・遺骨祭祀を伴う家祭祀へと変化。中世から近世にかけて地域の祭礼や寺院経営に影響力を持った宮座・堂座に着目し、共同体の精神性や祭礼の継承・教導に重要な役割を果たしたと解説した。
共同体による共同祭祀の継承・教導の重要性を強調し、禁教が解かれた後も先祖の教えを捨てずカトリックに合流しなかった隠れキリシタンを例に挙げ日本仏教と比較。「隠れキリシタンは日本の土壌に馴染んで民俗宗教になったが、地域共同体がなくなり共同祭祀がなくなれば消滅する。日本仏教も日本の民俗宗教ではないか。地域の共同祭祀がなくなれば日本仏教も消滅する可能性がある」と警鐘を鳴らした。(続きは紙面をご覧ください)
2025/11/6
智山派代表会 「寺庭婦人」呼称を廃止 性別不問の「寺族」に統一 女性住職と〝寺庭男性〟増で
ジェンダー研究の取り組みなどを報告する三神総長 真言宗智山派(三神栄法宗務総長)の第141次定期教区代表会(深澤照生議長)が21~23日、京都市東山区の総本山智積院内宗務庁に招集された。寺族の中で女性に限定される「寺庭婦人」の呼称を宗制上から撤廃し、住職・前住職らの親族で性別不問の「寺族」に統一。「寺庭婦人規程」を廃止して「寺族規程」を新設し、各寺院の事情に応じて寺族の中から男女を問わずに寺族代表者を1人選定することになった。〝寺庭男性〟と呼ぶべき女性住職の配偶者が増える現状に対応した措置。
久保田剛士総務部長は、「近年、女性教師の増加で女性住職・主管者も増え、男性の配偶者もいる。智山派では得度式や教師養成のカリキュラム、晋山でも性別による格差をなくす努力を重ねているが、宗法では寺庭婦人は寺族の中で住職や前住職等の『婦人』と規定されており、〝住職は男性〟が前提の条文となっている」と説明。「性別による固定観念を払拭する条文に改めることで、『智山派は性別によるハンデを克服している』という宗団の姿勢を社会に示すものとなる」と展望した。
「今回の改正で『寺族会』に移行しても、従来の『寺庭婦人会』の組織構成は大きくは変わらず、今後は男女の区別なく入れるようになる」と説明。寺庭婦人への褒賞・功労章を寺族に対するものに変更するなど、表彰対象を拡大することで、将来的な寺院の活性化にも寄与すると期待した。 (続きは紙面でご覧下さい)
2025/11/6
安倍元首相銃撃事件 奈良地裁で公判開始 宗教学者の証人尋問も
安倍晋三元首相銃撃事件の裁判員裁判(田中伸一裁判長)が奈良地方裁判所で10月28日から始まった。予備日を含めて19日の日程が設定され、来年1月21日に判決が言い渡される。初日の公判には32の傍聴席を求めて727人が近くの奈良公園に並んだ。
2022年7月、選挙演説中の安倍元首相を手製の銃で殺害したとして殺人罪等で起訴された山上徹也被告。初公判では「私がしたことに間違いありません」と認めた。
犯行に及んだ背景には、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に多額の献金をしたことがある。そのため希望する大学に進学できず、兄が自死してもいる。いわゆる宗教2世問題の要素もあり、第13回公判に予定されている宗教学者の証人尋問時の発言が注目される。
2025/11/6
ナルタン版日本最初の将来 チベット大蔵経を公開
ダライ・ラマ13世が寄贈 大本山總持寺 日置黙仙禅師が架け橋に
總持寺が所蔵するチベット大蔵経ナルタン版を閲覧する石濱教授(左)ら 横浜市鶴見区の曹洞宗大本山總持寺で10月23日、日本で最初に将来された同寺所蔵のチベット大蔵経ナルタン版が公開された。大正期の1914年にダライ・ラマ13世(1879~1933)から日置黙仙禅師(1847~1920、大本山永平寺66世)に贈られたもので、閲覧した石濱裕美子・早稲田大教授(チベット仏教史)は「とても保存状態が良く、紙の質も高い」と驚いた表情を見せた。
ナルタン版はカンギュル(仏説部)とテンギュル(論疏部)が揃う四大版本の一つで、西チベットのナルタン寺で開版された大蔵経。1730~42年にかけて製作された。2つの伝承系統の経典が混在することなどから学術的に重要な版本とされる。
日本に伝えられたチベット大蔵経は、真宗大谷派の寺本婉雅氏が1900年に入手した北京版が最初で、總持寺のナルタン版は2番目にあたる。ナルタン版としては、日置禅師への寄贈の翌年にあたる1915年にチベットから帰国した河口慧海氏が将来したものを東京大と大正大、後に東洋文庫も所蔵。経緯は不明というが、龍谷大も保有する。
總持寺は103巻からなる仏説部を所蔵。寄贈された当時、日置禅師が總持寺の西堂を務めていたことから奉納されたと見られる。当初は1915年建立の仏殿に奉安され、戦時中には駒澤大で保管されていたこともあった。日置禅師が架け橋となってもたらされた大蔵経はこれまで広く知られていなかった。埋もれていた歴史に光を当てたのが、今回の公開を求めた石濱教授だ。(続きは紙面でご覧ください)
2025/11/6
善光寺大本願 川名観恵法主が晋山 法燈の護持を誓う
大本願に向けてお練りする川名法主 長野市の浄土宗大本山善光寺大本願で10月24日、鷹司誓玉法主の退任式と川名観恵法主(85)の晋山式が営まれた。122世の法燈を継いだ川名法主は「ご縁をいただいた皆さまと手を取り合って法燈を守るため精進したい」と誓った。
秋晴れのもと、川名法主と式衆ら60人が門前の西方寺を出発して大本願までお練り。善光寺上人の姿に参道で多くの人が手を合わせた。
浄土宗の大本山法主や宗内要職者、法類寺院、善光寺大勧進の栢木寛照貫主や来賓300人が参列。唐門で開門式、本誓殿前では角塔婆供養を営んだ川名法主は、一歩ずつ歩を進めて本誓殿に入堂。内陣に座した鷹司前法主の前に着座して「法燈譜」に記名、払子が授与された。初めに鷹司法主の退任式を執行。続いて川名法主の晋山式が執り行われ、本尊の一光三尊阿弥陀如来、開山尊光上人や歴代上人に法燈の継承を奉告した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/11/3
日本宗平協「被爆80年」シンポ 9条守り核廃絶へ 宗教者の戦後問い平和願う 被団協・田中氏 ノーベル賞受賞も国民的運動にならず
(左から)宮城、山崎、榎本、福家4氏がパネル討論 「国連軍縮週間に呼応する日本宗教者平和会議」(主催=日本宗教者平和協議会)が20日、京都市東山区の音羽山清水寺大講堂圓通殿で開催され、宗教者や市民ら約180人が参加した。テーマは「戦後・被爆80年 核兵器も戦争もない世界を・宗教者の願い」。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中煕巳(てるみ)代表委員(長崎被爆者)が、「被爆者の運動とノーベル平和賞受賞の意義」と題して記念講演を行い、それを受けてのシンポジウムでこれからの平和活動のあり方を討議した。
田中氏は、核保有国の指導者が核兵器の使用を「軽々しく口にする」現状に強い危機感を表明。「ノーベル賞委員会も緊迫した情勢に気付き〝アメリカに気兼ねしている時ではない〟と真剣に考え、日本被団協への授賞を決めたのではないか」と推断した。
被爆者が中心となって核兵器の残酷性を訴えてきた運動で、核兵器を使わせない国際世論「核のタブー」が形成されたが、「その基盤が崩されようとしている」と憂慮。「日本政府は核兵器禁止条約に署名も批准もしていないが、被団協のノーベル平和賞受賞はチャンスになると思った。だが国民的運動にはならず、どこかで運動が弱くなっているのでは」と懸念した。
一方、受賞を契機に欧州での手応えを実感していると語り、「核兵器は使用禁止を超えて、廃絶まで頑張らなければならない」と強調。被爆者の高齢化に言及した上で、「被爆者の運動に学び、それを継承するだけでなく、世界の人と一緒に活動に移してほしい」と次の世代に要請した。
4氏をパネリストに、シンポジウム「『宗教者は戦後責任をどう果たすのか』を問う」を実施。コーディネーターの小野文珖・群馬諸宗教者の集い代表(日蓮宗僧侶)は、「今日の聞き手は明日の語り手」と来場者に呼びかけ、各自の立場での平和活動の実践を求めた。(続きは紙面をご覧ください)
2025/11/3
天台宗宗議会 機構改革の3部門提示 高リスク資産運用には慎重
演壇に立つ細野総長 天台宗は21日から24日までの日程で第159回通常宗議会(大澤貫秀議長)を滋賀県大津市の天台宗務庁に招集した。令和6年度各種決算、今年度の補正予算、僧籍規程の一部改正など全22議案を原案で可決。宗務庁空調設備、エレベーター、自動ドアなどの改修のため8500万円を支出することも議決された。
細野細野舜海宗務総長は執務報告で、肝煎り政策の機構改革について3つの部門の設置を掲げた。①宗と環境の認識を踏まえ、将来に向けての組織のあり方を考えつつ寺院の存続が難しい場合の対応の検討ならびに教区・部画にまで及ぶ再編の方策などを模索する部門、②相次ぐ不祥事の予防と審判による社会的責任の果たし方を研究し、時代に即した規則を目指して宗規全般を検討し直す部門、③過去に提案された宗務庁の業務提案の改変案がなぜ実施に至らなかったのか検証し、各種委員会や関連団体を抜本的に精査する部門となっている。
(続きは紙面でご覧ください)
2025/11/3
大谷派臨宗 木越渉総長を再任 正副議長に花園・坂本両氏
花園議長
坂本副議長 改選後の議会構成を決める真宗大谷派の宗会(臨時会)が15・16日、京都市下京区の宗務所に招集された。木越渉宗務総長(与党・真宗興法議員団)は宗規に則り、内局総辞職を表明。僧侶議員による宗議会と門徒議員による参議会で首班指名を受けて再選し、2期目に入った。宗議会開会式前の15日午前に正副議長選挙が行われ、議長に花園兼有議員(68・真宗興法議員団)、副議長に坂本敏朗議員(78・同)が投票総数の過半数を得て選出された。(続きは紙面でご覧ください)
2025/11/3
築地本願寺 新宗務長に尾井貴童氏
尾井新宗務長 浄土真宗本願寺派築地本願寺(東京都中央区)の竒山明憲宗務長が22日付で退任し、同日付で尾井貴童氏が新宗務長に就任した。
尾井氏は1963年2月生まれ。本願寺派財務部長、統合企画室長、本山本願寺執行、函館別院輪番などを歴任。2021年から2022年にかけ築地本願寺副宗務長を務めており、3年ぶりに東京での宗務行政にあたる。宗外では全日本仏教会事務総長、国際仏教興隆協会評議員などを務めた。自坊は兵庫県丹波市の照徳寺。
尾井氏の後任の函館別院輪番には神田憲量氏が就任した。
10月
2025/10/27
仏教書フェア 全国書店で開催中
仏書研 26年度版『仏教のすすめ』配付
優れた仏教書の普及を目指し、10月初旬から全国の書店で仏教書フェア「智慧の扉をひらく―仏教の力で明日を生きる」が始まった。東京、京都、大阪の8出版社が加盟する仏教書販売研究会が主催。開催書店では同会作成の小冊子『仏教のすすめ二〇二六年度版』(写真)が無料配布される。
同フェアでは「中村元の仏教入門」中村元著(春秋社)、「読むだけで不動明王から力をもらえる本」羽田守快著(大法輪閣)、「教行信証の哲学」武内義範著(法藏館)、「運慶」横須賀美術館・神奈川金沢文庫編(吉川弘文館)、「古典から学ぶ アーユルヴェーダ」クリシュナ・U・K著(東方出版)、「現代訳正法眼蔵[新装版]」禅文化学院編(誠信書房)等の基本図書10点に加えて、「進化する南無阿弥陀仏」平岡聡著(大蔵出版)、「茶禅閑話」青山俊董著(中山書房仏書林)等40点の計50点を展示販売。悩みや迷い、不安な心に仏教の智慧が寄り添う。紀伊国屋書店、丸善、ジュンク堂などの各支店、全国約90書店で行われる。
『仏教のすすめ』には2024年7月から2025年6月までに刊行された仏教・宗教関連の新刊452点のデータを収載。出版社の新刊書だけでなく、自費出版物や寺院発行の論集もある。また各書目にはQRコードを付した。巻頭エッセイは慶応義塾大学の鈴木正崇名誉教授の「仏教と修験道」を掲載している。
2025/10/20
全葬連・大阪で全国大会 愚直に供養 業界の使命
夏場の軽装、人口減少、移民増加 未来の諸解題を検討
パネルディスカッションに臨んだ6人の委員長 全国の葬儀社約1200社が加盟する全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)は3日、大阪市内のホテルで第69回全国大会を開催した。石井時明会長は挨拶で「東京でも火葬場の問題から私たちの業界が注目されている。何年も前から法整備について声を上げているが、業界の保身ではなく、亡くなられた方、ご遺族のために業界として何を使命とするか、深く考える時期です」と話した。
9月30日をもって三笠宮家の当主となった彬子女王殿下がメッセージを寄せ、昨年11月に死去した三笠宮妃百合子殿下の葬儀に触れ、「葬送儀礼というものは人間の心にとってとても重要な役割を果たすと感じます」とし、より良い葬祭文化の発展に期待を寄せた。
多数の来賓から6人が挨拶。うち上野賢一郎自民党衆議院議員は「ご遺体を取り扱う際にも、誰が取り扱うかがはっきりしていないと、形の見えない業者がいい加減な取扱をしてしまうという問題も都市部ではたくさん生じていると聞いている。こうした課題の解決のために登録制を前提にした法律を早く制定しなければ」とし、議員立法の検討に入ると明言した。壇上の来賓席には日本宗教連盟の宍野史生理事、全日本仏教会の和田学英事務総長も着座した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/20
動画『泥の菩薩』の配信開始 有馬実成の生涯 著者の大菅氏が語る 関係者インタビューも
配信が始まった動画『泥の菩薩』 シャンティ国際ボランティア会(SVA)専門アドバイザーで、『泥の菩薩―仏教NGOの開拓者、有馬実成』著者の大菅俊幸氏を講師にした動画「泥の菩薩」が先月から公開された。曹洞宗僧侶の有馬実成氏(1936~2000)の生涯を記録した同著のうち、第1章「発露―生い立ち」と第2章「起動―民衆と共に歩む宗教者として」の2章6本の動画を配信した。
山口県周南市のお寺に生まれた有馬氏は、父の戦病死により幼少期に住職後継を決意せざるを得なかった。長じて駒澤大学仏教学部に進み、道憲寮で過ごした。寮の先輩に当たる皆川廣義氏(駒澤大学名誉教授)が当時の様子を懐かしそうに語る。寮生たちは、岩波本『正法眼蔵』校註者で知られる衛藤即応の門下にあった。
地元で在日韓国・朝鮮人遺骨返還の運動を推進し、一方で文化活動、青年会活動に熱心に取り組む。難民支援をはじめ東南アジアの開発問題に取り組む以前の活動が中心となる。「前期有馬時代」と言っていい。「後期有馬時代」は難民支援以降である。
関係者のインタビューなどもあり、編集次第順次公開していく。さらに特別編として、宗教学者の島薗進氏と大菅氏の対談「有馬実成の思想と実践―その現代的意義」を予定している。
SVAのHP(X)から。もしくは「有馬実成 動画」で検索を。
2025/10/17
曹洞宗臨宗 ホテル閉業 継続審査 再開発計画は足踏み状態に 補正予算案、審査未了で廃案
演説する服部総長 曹洞宗の第148回臨時宗議会が8・9の両日、東京・芝の檀信徒会館で開かれた。服部秀世宗務総長が閉業の方針を示している東京グランドホテルに関し、営業終了を2027年6月末で確定しようとする議案が提出されたが、説明不十分などとして継続審査となった。また、今会の運営費などに充てる補正予算案が審査未了で廃案となった。内局が提出した全議案が賛同を得られず、再開発計画は足踏み状態となった。
服部秀世宗務総長は2月の宗議会で東京グランドホテルを閉業する意向を示し、営業終了の時期については2027年3月末をめどとしていたが、毎年6月に開催する宗議会の議場確保や再開発の想定スケジュールを考慮し、同年6月末に引き延ばした。
営業終了の確定を求める議案の一部に、ソートービル解体工事の開始時期が記載されていたことが問題視されるなど特別委員会は紛糾。予算委員会では、再開発のコンサルティングを担う企業向けに宗務庁が用意した募集要項に、「既定事項」としてホテル廃業や宿泊施設建設など未決定の事柄が盛り込まれていたことが判明し、批判が集中した。午後10時になっても決着はつかず、審議はいずれも翌日に持ち越された。
特別委員会の小島𣳾道委員長はホテルの営業終了は全員一致で認められたが、「議案と説明に対しては多くの疑義と懸念が示された」と報告。残務整理に関する計画を出していないことも問題に挙げた。さらに「宗議会議員や寺院、檀信徒など関係者に丁寧な経過説明を行い、理解を得る努力が必要だ」と指摘。その上で、「審議するには十全を期せない」として継続審査を求めた。
予算委員会の浅川信隆委員長は「今会の緊急開催について十分な説明がなされていない」などとして審査未了となったと報告。今会の運営費約1500万円を含む1700万円を増額する補正予算案は廃案となった。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/17
京都・総本山智積院 吉田宏晢化主が晋山 新義教学の研鑽と興隆誓う
秋の陽光を浴びながら、輿に乗って金堂に向かう吉田化主 真言宗智山派総本山智積院(京都市東山区)で8日、吉田宏晢(こうせき)第73世化主(同派管長)の晋山傳燈奉告法要が勤修され、宗内外の要職者や関係者ら409人が参加した。「法流相承之儀」を終えた吉田化主(90)は、本坊大玄関から輿に乗って、集議・菩提院結衆、役職者ら宗内高僧約50人と境内参道を進列。金堂に入り、本尊大日如来の宝前で、弘法大師から興教大師、玄宥僧正へと受け継がれてきた新義教学の研鑽と仏法興隆を誓う傳燈奉告文を奉読した。
式典では各山会を代表して、真言宗長者の長谷部真道・高野山真言宗総本山金剛峯寺座主(同宗管長)が祝辞。自身と同世代であることから、「猊下は戦争の悲惨を身をもって知っている最後の世代」と語りかけ、「混迷の極」にある世界情勢に言及した上で、「戦争と平和、これは人類の永遠のテーマだが、文明が進化するほど、その規模が大きくなり、命の存在は軽くなる」として、仏教学・密教学界に「輝かしい足跡」を印す吉田化主に「真言密教の教学を世界に向けて」発信してほしいと要請した。(続きは紙面をご覧ください)
2025/10/17
公明党の政権離脱を読む 兆候は9月の参院選総括あたり?
「党存亡の危機」学会も同様か
創価学会を支持母体とする公明党の斉藤鉄夫代表は10日、自民党新総裁の高市早苗氏との党首会談で連立離脱を表明した。1999年から続いた自公蜜月は26年で終わりを告げた。学会本部は正式な見解を発表していないが(14日現在)、事前に了解があったと見られる。
離脱理由は、「政治とカネ」の問題が大きいと斉藤代表は言明。高市氏が新総裁に選出された4日、公明党を訪ねた高市新総裁に①「政治とカネ」のけじめ、②靖国神社参拝と歴史認識、③外国人との共生―を要請。7日の自公政策協議でも再提示した。高市総裁とは②③について認識を共有したものの、①については隔たりがあった。10日の党首会談で具体的な回答がなかった。
あるジャーナリストは、遅くとも9月にはその兆候らしきものがあったとみる。9月11日に発表された公明党参院選挙の「選挙総括」(公明党HP掲載)である。地方から「自民党との協力関係のあり方」が提出されたことや、「現状認識と敗因の分析」では自民党支持層からの信任不足があると分析している。その上で「党存亡の危機」と厳しい認識を示した。創価・公明一体体制にあって、この「党存亡の危機」は学会組織の危機でもあると解説する。
20年前の衆院選で最多の898万票を得た公明党票は、今夏の参院選で521万票と377万票減らした。活動家会員の減少や高齢化が明らかになり、以前のような運動量は期待できなくなった。平和や福祉など自民党の政策と異にしながらも公明党が自民党候補を推薦してきたことに矛盾を感じている学会員は少なくない。それらは総括からもうかがえる。
別の識者は、学会組織の立て直しを考えてのことだろうと推し測る。学会の象徴的存在だった池田大作氏が死去してから求心力を欠き、幹部が叱咤し続けても昨年の衆院選、今夏の都議選と参院選で負けが続いた。宗教学者の島田裕巳氏は「創価学会は、その歴史的使命を終えようとしている」(『FORUM21』9月号)と分析したが、その通りだとみる。
政権与党からの離脱。公明党は政治とカネの問題が大きいと主張しているが、学会本部は組織に対する危機意識があるのだろう。今後の創価学会・公明党の宗教と政治路線が注目される。
2025/10/17
西国32番霊場 観音正寺で晋山式 新宗派「繖観世音宗」立教
参道を練り歩く岡村學導新住職 西国三十三所32番の観音正寺(滋賀県近江八幡市)で1日、岡村學導住職(前副住職)の晋山式が営まれた。同日、新宗派「繖(さん)観世音宗」の立教開宗も宣言され、岡村遍導管長(前住職)と新住職が揃って本尊千手観音に奉告の法要を行った。戦後に天台宗から独立し単立となった観音正寺だが、一宗としての歩みを新たに踏み出した。
副住職時代は少し伸ばしていた髪を剃った學導住職は、3代前の住職(曽祖父)の時代に仕立てた素絹と五条袈裟を身につけ、緊張した面持ちで参道をお練りして本堂に入った。法要は裏千家による献茶で始まり、本尊の胎内仏が取り出され、學導住職は本尊裏の宮殿の前で包みを解き奉安、読経。住職としての最初の大きな仏事となった。なお、この胎内仏は12月12日までの特別公開となる。
遍導管長は開創者・聖徳太子の肖像の前で立教開宗を宣言。「当宗は大恩教主釈迦牟尼世尊の御教えと繖山(きぬがさやま)の観音聖地、観音正寺を開かれた日本教主聖徳法王の和の御教えを宗とす」とし、原始仏典ならびに法華経・勝鬘経・維摩経を所依の経典とすること、四弘誓願を指針とすることなどを述べた。
一カ月ほど前から晋山式の儀礼の所作の練習をしていた學導住職は、「代々の住職が見えない形で後押ししてくれたと思います」と無事に奉告できたことに安堵し、体全体でこの日を記憶に残せたことと、支えてくれた信徒に感謝した。
遍導管長は立教開宗について「ブッダのお言葉を噛み締め、当宗も皆様とともに徳を積み重ね人生を歩み香りを漂わせたい。それが私どもの宗の大切な源です」としている。なお、宗教法人法上の包括法人とするわけではないという。
2025/10/14
仏教伝道協会60周年シンポジウム 古舘氏、喋る瞑想披露 「安心して不安がれる場」を提言
仏教の話三昧で90分喋り続けた古舘氏 (公財)仏教伝道協会(BDK)は9月27日、東京都中央区の築地本願寺とオンラインを併用して創立60周年記念シンポジウム「だいすき仏教」を開催。仏教好きを公言するフリーアナウンサーの古舘伊知郎氏や豪華ゲストが仏教の魅力を語り、仏教界に対して「困っている人に寄り添う」「安心して不安がれる場所を」と提言した。会場300人、オンライン200人が参加した。
釈迦の教えに魅せられたという古舘氏が特別講演。仏教について喋り続けていたため、あるスタッフから「お願いだから帰らせて下さい」と懇願されたエピソードを紹介。「人類史上初の仏教ハラスメント第一号です」と笑いを誘った。
仏教に触れるきっかけは「今も売れたいと思っている」という欲望を押さえるため。もう一つ決定的だったのが「6つ上の姉が42歳で亡くなったこと」。姉の死と向き合った父、母や自身の体験と感情を語りながら、「死ぬのが怖いと痛切に感じた」と回想した。
釈迦の悟りを「メタ認知」と表現した古舘氏は「自分を苦しめ迷わせる根本を取り除いて生きる作法を悟った」と持論を展開。諸行無常や縁起の教えなど「あられもないこの世の真理を言うのが仏教」とその魅力を示し、諸行無常や縁起の教えによって「欲望や邪悪な気持ちを抑えて良い加減になる」と仏教を活かした生き方を話した。諸法無我を説きつつ、自分自身を実況する古舘氏ならではの「喋る瞑想」を披露すると拍手が沸き起こった。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/9
ガザに食料を!即時停戦を!増上寺でキャンドルアクション
キャンドルでGAZAへ支援をアピールした パレスチナ自治区ガザを支援するNGOらが「停戦を、食料を、今すぐに」と訴え、10月4日に東京都港区の聖アンデレ教会で報告会、増上寺の境内でキャンドルアクションを行った。「Let GAZA Live」の文字と、緑と赤のライトでパレスチナを象徴するスイカのイメージをキャンドルで描き、即時の停戦と食料支援を呼びかけた。250人が参加し、犠牲者を追悼する祈りを捧げた。
報告会では国境なき医師団の中嶋優子医師が2023年11月からのガザでの過酷な医療活動を報告。「こんなにも極限の酷い状況は数カ月で終わると思っていた。2年も続くとは信じがたい。状況は悪化している」と未曾有の人道危機を訴えた。NGOからは避難が続く過酷な状況や深刻な水や食料の不足を訴える現地職員や市民の悲痛な声が伝えられた。
日本国際ボランティアセンターやアーユス仏教国際協力ネットワーク、パレスチナ子どものキャンペーンなどの12団体が共同声明を発出。ガザでの生活が破壊されて6万5千人以上が犠牲になり、今年8月には飢饉の発生が国連から発表されたことに言及。ガザへの支援物資の搬入が止められていることから、飢餓が意図的に起こされた人災であるとし、「封鎖を解除し、十分な量の食料・医療物資をガザに届けて」と求めている。
2025/10/9
庭野平和財団「社会貢献」調査 宗教への期待 全体的に減少 社会貢献認知度も低下
左から丹羽氏、寺田氏、庭野理事長 (公財)庭野平和財団の第4回「宗教団体の社会貢献活動に関する調査」の結果発表が9月26日に京都市内で開催された。庭野浩士理事長と分析を担当した寺田喜朗氏(大正大学教授)、丹羽宣子氏(立教大学助教)が出席し解説。社会からの宗教に対する期待が全面的に下がっていることが強く推定できる結果となった。
調査は中央調査社が担当。層化三段方式で、今年6月6日から16日まで全国の20歳以上の男女4千人に個別面接調査を行い1184人から有効回答を得た(29・6%)。
知っている宗教者・宗教団体の社会貢献活動についての問いでは、小中高・大学などの「教育機関の経営」が32・8%と最も高いがそれでも前回の2016年調査に比べ3・3%の減。老人ホームなど「老人の扶助事業」は高齢化社会にも関わらず11・5%(前回比6・6%減)など、社会貢献活動への認知がされていない実態が浮き彫りになった。寺田氏が懸念を示すのは「在留外国人の生活支援や交流活動」が5・1%(新設項目につき前回は質問していない)で、「もうちょっと知ってもらわなければいけない。排外的なことを言って問題が解決するわけでもないし、公共に限界がある以上、善意の機関には協力していただかなければならない」とした。
一方、期待する宗教の社会貢献については「期待する活動はない」が35・8%(前回比7・8%増)。「平和の増進に関する活動」の25・1%(前回比11・7%減)をはじめほぼ全項目で期待する人が少なくなっている。「政治への積極的な参加や発言」は2・8%(前回比1・2%減)で、寺田氏は旧統一教会の問題により政治と宗教の関わりに不信感が高まったための減少と見ている。
大規模災害における宗教者の支援活動の認知は、能登半島地震などがあったにも関わらず低下した。宗教施設が避難場所になっていたことを知っている人は18・2%(前回比8・0%減)。災害時に宗教がどのような活動をしたらいいかの問いは「義援金を集める」が微増して26・5%(前回比1・0%増)になった以外はほぼ減少し、「葬儀や慰霊」も14・7%(前回比7・2%減)となった。丹羽氏は「衝撃的だったのは北陸ブロック、東北ブロックの人々は全国平均より認知度が低く、むしろ関東圏の人のほうが宗教者・宗教団体の活動を知っている傾向があった」。被災地での認知の低さは、さまざまなことが起こりすぎていたために宗教による支援だとわからなかった可能性も考えられるという。(続きは紙面をご覧ください)
2025/10/9
浄土宗宗議会 公金不正流用の債権放棄 外部監査の指摘受け
演壇に立つ川中総長 浄土宗は9月30日から10月3日まで、第135次定期宗議会(宮林雄彦議長)を京都市東山区の宗務庁に招集し全議案が可決された。宗派のコンプライアンス向上に力を入れる川中光敎宗務総長は事務報告で、宗務庁として初めて会計士による外部監査を導入し、令和6年度決算は「概ね適正」とされた上で長期貸付金の整理など改善点も示されたとした。一般会計経常部は歳入約25億1千万円に対し歳出約22億1千万円。
このほか、京都SDGsパートナー制度に登録したことや、情報セキュリティマネジメントシステム認証取得の準備などコンプライアンス向上政策を説明。伝宗伝戒道場では総本山知恩院・大本山増上寺で身体障がい者が成満し教師資格を取得できたことに「関係各位の尽力に心からお礼申し上げ、引き続き検討していく」と述べた。
2006年に発覚した、宗務庁財務局(当時)の課長補佐による公金約7億円不正流用事件に関連し、元課長補佐が今年1月に死亡したことを受けて約1億9400万円の債権放棄の承認を求める件も上程された。吉水仙昭宗務役員は「顧問弁護士、事件対策委員会、宗内関係者の尽力で損失回復の手立てが講じられたが、すべての回復には至らなかった。残りは長期貸付金として会計処理を行った」とし、元課長補佐が返済を続けていたが、死去により債権回収の見込みが全くなくなったため放棄をすると説明。
宗議会で設置された事件対策委員会は「長期貸付金の管理は返還すべき者が生存中とし、その後は公益法人の会計として適正に処理すること」を提言していた。前述の外部監査では、回収の見込みがない巨額の長期貸付金が財務諸表に載り続けるのは不健全であるという指摘があったという。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/9
武蔵野大 「日本で学べたこと幸運」 ウクライナ避難院生が修了
今後日本で働くモルスカさん(右)と小西学長 戦火から逃れ、武蔵野大に留学したウクライナ人のリリア・モルスカさん(24)が大学院を修了し、東京・有明の同大で9月19日にセレモニーが開かれた。モルスカさんは今後、日本で広報の仕事をしながら、自身が運営するオンライン日本語教室も続ける。
モルスカさんは2022年6月にキーウ国立大を卒業。村上春樹などの小説を読んで日本に関心を持ち、大学では日本語を専攻した。大学院進学を志望していたが、ロシアの侵攻で断念。ウクライナの避難民学生受け入れを表明していた武蔵野大が使命に掲げる「世界の幸せをカタチにする。」に共感し、同大への留学を決めた。
母国で日本語学校を開く夢に向け、学内のランゲージセンターで1年間学び、2023年9月に言語文化研究科に進学。ロシア侵攻下でいかに日本語学校を運営していくかをテーマに研究を進めた。在学中にはウクライナの文化を紹介する冊子を作り、大学周辺の施設などで配布した。
前日の修了式に出席し、この日を迎えたモルスカさんは「この3年間、爆撃の音を聞かずに日本で学べたことは幸運でした」と述べ、「一人では何もできなかった。人とのつながりこそが財産だと学びました」と感謝の気持ちを語った。また、「戦争の前では自分は小さな存在でしかない。日本が再び戦争を経験しないよう心から願っています」と話した。
花束を手渡した小西聖子学長は「慣れない環境の中、国のことも心配だったでしょう。大変なところを乗り越えて大学院を修了された。強い意志と努力があったのだと思う」と祝意を伝えた。「この3年間で培った経験と行動力はかけがえのない財産になる。両国の交流に貢献してもらえたら」と激励した。
モルスカさんは今後、日本の一般企業で広報の仕事をしながら、日本に来た避難者ら向けに自身が運営するオンライン日本語教室も続ける。
2025/10/6
先進文化都市 京都に生きる(上)
門川大作氏に聞く 4期16年 前京都市長・金光教押小路教会長
観光が平和な世界を創出 戦争の反対語「文化交流」で違いを超える
市長退任後、宗教者として新たな道を歩む門川氏 世界屈指の観光地・京都の市長を4期16年間務め、昨年2月に退任した門川大作氏(74)。現在は金光教押小路教会(京都市中京区)の教会長として、宗教者の道を歩んでいる。門川氏は、「国内外から大勢が集う京都には、人々が共に生きる平和な世界を創出する文化力がある」と言う。市長在任中の取り組みや、諸政策に込めた思いについて語ってもらった。
「人類は歴史から何を学んだか。人類は歴史から学ばないことを学んだ」という哲学者の言葉がある。これは〝歴史に学べ〟という痛烈な警句だ。第2次世界大戦から80年しか経っていないのに、平和・人権・環境の世紀になると期待された21世紀が、再び戦争の世紀になろうとしている。自国中心主義が台頭し、対立や分断、環境破壊による気候危機、貧困と格差の拡大など、人類の難儀が一気に噴出している。世界各国は今、防衛費をいかに増やしていくかという流れの中にある。
SDGsに代表される共生社会を求める動きは、この潮流に勝てるのか。私は市民の皆さんと共に市長在任中、「SDGsの17目標+1(ワン)」を掲げた。国際的な基準で一人ひとりの生き方を見つめ直し、「誰一人取り残さない」と謳うSDGsは、非常に意義がある。だが、平和のために最も重要な文化が含まれていない。「文化の多様性を尊重するため」等の理由が述べられているが、納得できない。
戦争の具体的な反対語とは何だろうか。政治においては、政府間の平和外交や自治体間の都市交流がある。京都市は「世界歴史都市会議」を主催し、姉妹都市やパートナーシティの協定を1950年代から世界の各都市と結んでいる。ウクライナのキーウも半世紀以上前から姉妹都市だ。キーウには2回行ったが、京都公園と京都通りがあり、470本の枝垂れ桜が植樹されている。戦禍の中でも、きれいな花を咲かせている。私は常時、同国のバッジを胸に着け、戦争終結を祈念している。
交流で生き合う力を
市民レベルでは、文化と観光による交流がある。文化とは一人ひとりの生き方と関わり方の総体であり、文化交流とは生き合い方と言っていい。平和を築くには、文化の交流によって育まれた生き合う力が必要だ。多様性・包摂性に富む「おかげ様」「お互い様」の心は、京都の生活文化の土台だ。即ち戦争の反対語は、文化と交流。交流には観光が大きな役割を果たす。21世紀を、文化と観光で平和を維持・創出する時代にしたいものである。
ただ京都は、いわゆる観光都市ではない。京都の文化は観光のためにできたものではない。京都の人たちが1200年、大切にしてきた文化が、観光的な魅力を放っているということだ。文化なしに観光はない。京都は文化と観光で、世界の平和と人々の幸せに貢献することを目指している。
京都は精神文化に立脚した、「ものづくり都市」だと思う。仏教や神道等の精神文化が新たなものづくりを求め、優れたものづくりが精神文化を高める。その継承・発展の過程で「ひとづくり」が行われ、それが魅力的な「まちづくり」に繋がる。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/2
全日本仏教尼僧法団75周年祝典挙行
世界平和を祈願 団員物故者と災害犠牲者追悼も
世界平和と物故者追悼の法要を厳修した 全日本仏教尼僧法団(鷹司誓玉総裁、笹川悦導理事長)は9月17日、東京会館(千代田区丸の内)で結成75周年記念祝典を挙行した。団員や来賓100人が参集し75周年を祝した。
1950年に超宗派の尼僧たちが集い「釈尊在世のときのような純一清澄な尼僧の教団をつくりましょう」との呼びかけで結成された全日本仏教尼僧法団。翌年、日比谷公会堂で300余名の尼僧が集い結成式が行われた。国内外の戦災や自然災害の犠牲者追悼や支援活動、国際交流に取り組み、平成25年(2013)に公益財団法人へと以降。近年は尼僧の高齢化や団員減少があり、令和4年(2022)に理念を共にするシャンティ国際ボランティア会(SVA)と合併し法人を解散したが、現在も花まつり茶会などを行っている。
記念式典では川名観恵・浄土宗大本山善光寺大本願法主を導師に法要を厳修。結成75周年を慶祝し、世界平和を祈願すると共に団員・賛助団員物故者と自然災害犠牲物故者を追悼した。次いで青山俊董氏が記念法話を行った。
祝宴では来賓の高野山真言宗金剛院名誉住職の山田一眞氏が結成当時の思い出を披瀝し、「75年の歴史を現在に繋げていることに敬意を表します」と祝した。乾杯の発声は曹洞宗大本山永平寺の西田正法副監院。「世の中は分断と対立の様相を呈していますが、仏教徒こそが平和という確かな道を示していかなければいけない。そのなかで住持三宝の先端にいる僧宝という自覚のもと、一歩一歩自らの生き方として歩む尼僧法団のような在り方を世に示していくことが平和への確かな一歩ではないかと思います」と敬意を表した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/2
韓国統一教会 韓総裁逮捕受けて2弁護団が声明 日韓組織の実態解明要請
統一教会(現世界平和統一家庭連合)韓国本部の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁が9月23日、政治資金法違反、不正請託禁止法違反等の容疑で韓国の特別検察官によって逮捕された。これを受けて同日、全国霊感商法対策弁護士連絡会と、全国統一教会(世界平和統一家庭連合)被害対策弁護団が声明を発表した。
霊感商法弁連声明では、韓総裁逮捕にいたる経緯に言及した上で、「日本の霊感商法や違法な献金勧誘等の被害者から得た資金が韓国本部において不当な利得や私欲のために支出されてきた実態までが解明されることになると期待し、今後の捜査、公判の推移を注視していきたい」とした。
さらに日本での霊感商法や違法な献金勧誘等が40年以上にわたって行われ、多数の被害者が出ていると指摘。これらを背景に「政治家に不当な手段で影響力を行使しようとしていた実態を解明しようとするもの」と韓国当局の捜査に理解を示す一方で、日本では統一教会と自民党議員の関係について「徹底した実態解明がなされたとは到底言えない」とし、第三者機関による徹底調査を要請している。
被害対策弁護団も「韓国だけでなく、日本からの資金の流れや日本法人への指示なども含め、統一教会の日韓両組織の実態や違法・不正行為の内実についても徹底的に解明していただくよう強く期待します」と表明した。
日本の統一教会に対しては今年3月、東京地裁が宗教法人法の規定に基づいて解散命令を出した。教団側は抗告し、東京高裁で審理されている。高裁が地裁に続いて解散命令を出せば、解散手続きが始まる。
2025/10/2
宗教者核燃裁判 原発問題 裁判から学ぶ 裁判官の使命「社会の一隅照らす」こと
聖アンデレ教会で行われた学習会。井戸弁護士と樋口氏、岡田住職(右から) 全国の宗教者258人が原告となり、日本原燃株式会社を相手に青森県六ケ所村の原子力施設(再処理工場)の運転差止を求める「宗教者核燃裁判」の第8回口頭弁論が9月18日に東京地裁で開かれた。その後、聖アンデレ教会(港区)で行われた学習会では井戸謙一弁護士と元裁判官の樋口英明氏が司法の役割や裁判官の使命を論じた。樋口氏は「一つひとつの仕事が社会の一隅を照らす」とその意義を示した。
井戸弁護士と樋口氏は裁判官時代に原発の運転差し止めの判決を出し、今年6月に共著『司法が原発を止める』(旬報社)を刊行した。宗教者核燃裁判では樋口氏が差し止め判決で提起した「樋口理論」を軸に再処理工場の脆弱な耐震性を訴えている。井戸弁護士は原告弁護団の一人。
共著の刊行について井戸弁護士は「今の裁判官の在りように危機感を持った」と明かした。動機となったのが「6・17最高裁判決」。福島原発事故の国家賠償を求めた訴訟で最高裁は国の責任を認めなかった。井戸弁護士は「非常にレベルの低い判決」と批判し、「(裁判官が)大きな機械の歯車になっている印象がある」と危惧。「裁判官は裁判することで自らが裁かれる」「過去の紛争を解決することで未来のあるべき社会を示すクリエイティブな仕事だ」と矜持を示し、「意欲を持ってほしい」と現職裁判官にエールを送った。
樋口氏は同書から「裁判所に与えられた権能を行使しないことは、権能を乱用することよりさらに有害で無責任」「裁判官の本分は、その一つひとつの仕事が社会の一隅を照らすことにあるかもしれない。ごく希には社会全体が進むべき道を照らす仕事が与えられる」を引用し、「本分を尽くす」ことを求めた。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/2
日蓮宗 ハワイ別院で終戦80年法要企画 11月、アリゾナ記念館でも
日蓮宗(田中恵紳宗務総長)は11月14日、米国ハワイ州オアフ島のハワイ日蓮宗別院で田中総長導師の下、終戦80年ハワイ慰霊法要を営む。当日は真珠湾にある慰霊施設アリゾナ記念館でも慰霊法要を執り行う。協賛する日蓮聖人門下連合会や全日本仏教会の他、現地のハワイ仏教連盟加盟宗派からも代表者が参列する予定だ。
ハワイ日蓮宗別院には、太平洋戦争の口火を切った真珠湾攻撃で命を落とした日本軍兵士65人の霊簿が奉納されている。霊簿は有志により1970年代に作成された。奇襲攻撃によって差別を受けたハワイ在住日系人の感情を配慮して、現地の各宗派仏教寺院は霊簿の受け入れを拒否し、行くあてのなかった霊簿を当時の別院第10代・堀教通師が受け入れた。
霊簿には、後に1945年の静岡空襲でB29に搭乗し戦死した米兵21柱も追加されている。この米兵が付け加えられた時期などは不明だが、別院では、日本人の戦死者と共に米国の戦死者も弔い、慰霊を続けてきた。
別院での慰霊法要に加え、真珠湾攻撃で撃沈された戦艦アリゾナ(乗組員1177人の内1102人が戦死)の戦没者を追悼するアリゾナ記念館でも慰霊法要を行う。
同館は沈没した戦艦アリゾナの上に建設された国定慰霊碑。同じ湾内には日本が降伏文書に調印した際の会場となった戦艦ミズーリもあり、日本の仏教者が〝戦争の始まりと終わり〟に関わる場所で全戦没者の慰霊を行う機会となる。
終戦80年にあたる今年は、日本仏教各宗派や地域仏教会により各地で終戦80年の戦没者慰霊法要が執り行われており、日蓮宗でも毎年「終戦の日」の8月15日に東京・国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で営む法要に加え、沖縄、広島、鹿児島、長崎などで法要が営まれている。
9月
2025/9/29
真言宗豊山派 保護司と教誨師が合同研修 薬物依存からの回復 ダルクに学ぶ
豊山派保護司会と豊山教誨師会は10日、東京都文京区の真言宗豊山派宗務所で初の合同研修会を開催。NPO東京ダルク(荒川区東日暮里)の森田邦雅氏が薬物依存からの回復の取り組みを紹介。薬物依存者2人が自身の体験を語った。回復のための安全な居場所の問題について理解を深めた。
ダルク(DARC)はドラッグ(D)・アディクション(A)・リハビリテーション(R)・センター(C)の頭文字をとった名前。薬物依存者に身体・精神・社会的援助として、薬物を使わない生き方のプログラムを提供する。自身も薬物依存者だった近藤恒夫氏がアルコール依存症の自助グループやリハビリ施設での回復プログラムに学びながら、薬物依存者が安心して回復できる専門施設として1985年に荒川区で活動を始めた。今年で40周年を迎える。地域のなかで回復者が少しずつ生まれ、そうした人たちが全国各地に草の根的にダルクの活動を広げ、現在は全国各地で約60団体が活動しているという。
東京ダルクはほとんどの職員が薬物依存の回復途上者で森田氏もその一人。「回復者と言われるが過去の問題じゃない。今も薬物依存者で回復の途上者。完治はないが回復できる病気」と説明。
入寮者や通所者は午前と午後のミーティング、夜は地域で行われる自助グループでのNA(ナルコティクス・アノニマス)ミーティングに参加。これを通して「薬物を使わない生き方」への方向付けをするという。ミーティングでは「自分の人生を振り返り、自分自身の弱さや欠点を分かち合う。その中で皆で経験と力と希望を分かち合っていく」と森田氏。
多くの薬物依存者が孤独感や不安感を抱えるなかで薬物に依存し「社会からドロップアウト」してしまうが、「自分1人だけじゃない。もう1度人生をやり直そうという人たちが出会い、ミーティングで孤独や不安、弱さに気づき、あるがままの自分を受け入れていく。自分自身を大切にしていくことによって、仲間も大切にしていく。そうすることによって生き方が転換していく」とそのプロセスを提示。
森田氏は「回復は生涯続くもの。今日1日薬物を使わないような生き方をやっていく」との考え方を示し、「クリーン」になるまでには2回3回の「再発」があるが、「再発はダメじゃない。失敗を通して回復するというのが本当の姿だと思う」と実際を話した。
研修会では薬物依存者のスカイさんとシュンさんが薬物依存と回復の体験を共有した。スカイさんは「止めたいと思っても止められない」状況からダルクにつながった希望を、シュンさんは家庭内暴力を起因にする不安感や孤立から薬物依存になった体験とダルクとの出会いについて話した。
森田氏は薬物依存者だけでなく高齢者の孤独死や「トー横キッズ」など社会の「孤立」の問題を挙げ、「居場所づくり」の大切さを強調した。
2025/9/25
本願寺派 第45回千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要 門主 戦争支持を反省
六角堂の導師席に向かう大谷光淳門主 いわゆる15年戦争の導火線となった柳条湖事件(1931年9月18日)から50年となる昭和56年(1981)から東京・国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で全戦没者の追悼法要を勤めてきた浄土真宗本願寺派(西本願寺)は同日、大谷光淳門主を導師に45回目の法要を執り行った。門主は表白で「戦争を支持した宗門の歴史を深く省みて、非戦平和の願いを新たに致します」と宣明した。全国から1500人が参拝したほか、ユーチューブで同時配信された。
法要に先立ち、千鳥ヶ淵墓苑に設置された平和の鐘と各地の梵鐘が一斉に撞かれ、平和を願った。続いて園城義孝総長が今年4月14日に発表された「戦後80年にあたっての平和を願うメッセージ」を読み上げた。その中で、第2次大戦では世界各地において多くの市民が犠牲になり、日本でも沖縄の地上戦、広島・長崎の原爆、都市の空襲により凄惨な状況に陥ったことを列挙し、一方で「その戦争に協力し、戦争を賛美したことも、私たちの教団です」と戦争責任に言及した。
法要では、大谷門主が表白。「武力による争いの解決は、真の安らぎをもたらさないことを広く世界に伝えると共に、あらゆる人々が武器を取って争うことなく、お互いを認め合い、心豊かに暮らすことの出来る道を切り拓くために努力し続けなければなりません」と教団の使命を強調。そして「私たち人間の根本的な愚かさと、仏法の名において戦争を支持した宗門の歴史を深く省みて、非戦平和の願いを新たに致します」と述べた。
参拝者全員で正信念仏偈とお念仏で全戦没者を追悼した。(続きは紙面をご覧ください)
2025/9/25
各山会 代表総務が途中交代 高野山の今川執行長に
真言宗各派総大本山会は8日、京都市東山区の智山派宗務庁で常任委員会を開いた。菊入諒如事務局長が冒頭で、代表総務だった三神栄法・智山派総本山智積院寺務長が8月8日の臨時総務会で一身上の都合により任期途中で辞任したと発表。常任委を中断して別室で総務7人の互選による新代表総務の選出が行われ、今川泰伸・高野山真言宗総本山金剛峯寺執行長が就任した。任期は通常2年間だが、今回は途中交代のため前任者の残任期間で来年6月末日。
菊入局長が、「三神代表総務が辞意を表明した席上、総務も全員辞任という方向に話が行ったが、それでは今後の各山会の議事に支障を来たすということで代表総務のみの辞任が承認された」と経緯を説明。別室での新代表総務選出が終わると、「常任委員を4年間務め、(真言宗の最高厳儀である)後七日御修法の(大阿闍梨を支える事務局の最重要職)別当を経験している今川僧正が一番適任ということで決まった」と報告した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/25
全日仏青 来馬氏が新理事長に就任 〝日本と世界の仏法興隆目指したい〟
就任の挨拶を述べる来馬新理事長 全日本仏教青年会(全日仏青)は16日、さいたま市浦和区の埼佛会館(埼玉佛教会)で臨時理事会を開催。新理事長に前副理事長の来馬司龍氏(48)が就任した。第25代理事長の来馬氏は埼玉県仏教青年会所属で、同青年会からは第17代理事長の宮寺守正氏(曹洞宗)以来となる。任期は2年。
来馬新理事長は、「48歳だが、気持は青年のまま」と挨拶した。さらに「仏教離れが叫ばれている。そんな中で全日仏青は何ができるのか、そしてこの仲間たちと何を学んでいけるのか。それが大事なことだと思っている」と語った。そして「みんなで仏教を盛り上げていきたい。若い力で日本と世界の仏法興隆を目指して頑張っていきたい」と抱負を口にした。来馬氏は就任にあたり「普く等しく済(すく)う」をモットーとして掲げている。
なお、事務局長には神奈川仏青の菊池重忠氏(日蓮宗)が就任した。
【来馬司龍理事長略歴】くるば・しりゅう/1977年8月17日生まれ。立命館大卒。曹洞宗大本山永平寺安居。全日仏青事務局長、埼玉仏青事務局長などを歴任。曹洞宗第2宗務所青年会「彩青会」会長。富士見市の曹洞宗大願寺住職。
2025/9/25
WCRP理事会 資産運用着手を承認 米国の投資信託に3600万円
世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(戸松義晴理事長)は11日、オンラインで理事会を開催し、WCRPの運営改善に向けて資産運用と遺贈寄付に取り組むことを承認した。基本財産1億600万円のうち、約3分の1にあたる3600万円を運用する。
日本委はこれまで定期預金と国債で資産を運用してきたが、「元本割れを防ぐ安全性に主眼」が置かれてきた。前回の理事会で運用の見直しが決まり、事務局では外部専門家の助言を得て運用試案を策定し、今回の理事会に提出した。
運用原則として、▽安全性と効率性の確保、▽リスクの分散、▽運用対象のバランスの考慮、▽投資対象の選定はWCRPの理念や使命に反しない――を提示。その上で米国の投資信託会社「インベスコ世界厳選株式オープン」に投資するとした。これには大手銀行出身で資産運用経験が豊富な佐藤武男・立正佼成会理事と相談の上で決めたという。
3600万円(3600万口)をインベスコで運用すると、配当は1万口あたり毎月150円で、月54万円、年間648万円が配当されると試算。事務局では「安全性を確保するため、専門家と常時相談し、リスクが起きそうな場合は直ちに必要な措置を講じる」と説明した。
三宅善信理事は、日本では30年ほど金利のない状態にあり、「仮に消費者物価が毎年3%ずつ上がったら、金利が0・5%で実質マイナス2・5%。そうするとローリスク・ローリターンとは言い切れない」と資産の目減りを指摘。
事務局が相談相手としている佐藤理事が宗教法人の資産運用に際して「ミドルリスク・ミドルリーン」と発言した新聞記事を紹介。国際NGOでの自らの資産運用体験を交えて、「WCRP日本委は公益財団法人。宗教法人とは異なるものの同じ公益法人。資産運用は同様のルール(ミドルリスク・ミドルリターン)で運用して欲しい」と要請した。(続きは紙面をご覧ください)
2025/9/19
共生特集 日常を変えた温暖化 仏教の実践が未来を変える
窪川香薫(浄土宗僧侶・海洋生物学者)
とにかく暑かった今年の夏。気象庁は今夏の平均気温が平年を2・36度上回ったと発表した。毎年のように記録が更新されている。加えて日本を囲む海水温の上昇は自然災害の激甚化につながっている。温暖化を押し止めるために必要な行動とは何か、そして仏教者がどんな役割を果たせるのか。海洋生物学者で浄土宗僧侶の窪川香薫氏に提起していただく。
令和7年の夏は、前年に続く猛暑だった。9月になっても30℃を超える日が続く。身近な自然は高温のためか、アリ、蚊、クモ、セミが少ない。生活では、米、野菜、果実の不作、卵の値上げ、魚の不漁など、農家も漁師も高温と少雨に困り果てた。温暖化は、産業革命以降、豊かさを求めてきた私たちの生き様の結果であり、いつの間にか巡り巡ってきた。
平均気温の急上昇
気象庁は、令和5年以来、夏の平均気温が急上昇していると発表した。今年は歴代1位となり、猛暑日数は増え、40℃以上の地点も増え、初の41・8℃が観測された。気温上昇が直近30年を大きく上回った。特に海水温の上昇が大きかった。また、最も早い梅雨明けと7月の顕著な少雨も記録的であった。これらの要因は、地球温暖化であり、それに伴う異常気象である。日本は海に囲まれているために海水温の上昇がもろに影響する。
日常生活も変わった。節電は無理をしない冷房使用に変わり、庭木の水やりは最低限になった。水と塩分の必携も習慣化した。
毎日、暑さ指数や熱中症警戒アラートに注目せざるを得ず、温暖化は行動を制限するだけでなく生死に関わる災害になっている。さらに温暖化を起因とする線状降水帯、豪雨、竜巻、台風などの激甚化は、誰もが自然災害に遭遇する可能性を増している。少雨続きが突然の豪雨に化けた地域も少なくない。
暑さが過ぎた安堵の秋のはずが、今年は温暖化の進行を認めざるを得なかった。夏の酷暑はこれからも続く。というよりも続かない理由がない。195の国と地域が関係する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は気温上昇を1・5℃に抑えるという目標を設定しているが、これを突破してしまい2℃で考えようとの論文も出ている。突発的に気温が下がる年があったとしても温室効果ガスの排出を大幅に抑えるといった対策を取り続けなければ温暖化は抑えられない。
漁獲量減少ですすむ養殖
海には温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を吸収する役割がある。しかしその容量はとうに超えてしまい、世界の海で海水温が上昇している。温暖な黒潮が流れる日本の周辺海域は世界平均に比べて海水温が高く、それが災害級の猛暑や線状降水帯の発生につながっている。
海水の高温化で水産物の漁獲量が減少している。また北海道ではサケが減り、ブリが増えるなど、近海の魚種に変化が起きている。水産業でも高温に強い品種の開発を進めたり、川に戻る天然のサケ漁ではなく、佐渡や東北の海面養殖のサケがスーパーに並ぶようになった。温度をコントロール出来る陸上養殖も増えている。ただ、陸上養殖は電気代や餌代もかかるため、コストが高くなる。
多くの生物は私たちが思う以上に強く、将来は、高温を好む美味しい魚介類や藻類が出てくるかもしれない。しかし環境変化が速すぎて適応が追いつけない恐れが多分にある。海外では、サンゴ礁が白化して藻類が育たず多くの生物の消えた海がすでに出てきている。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/19
共生特集 山形県・源福寺 本堂で犬とふれあい会 アニマルセラピーに効果
7月27日のふれあい会の様子(源福寺提供) 山形市の浄土宗源福寺(鈴木好善住職)は本堂で「わんわんふれあい会」を行っている。仏さまに見守られた広い空間でセラピー犬と人間が遊ぶことでの解放感が大好評だ。山形アニマルセラピー協会との共催。
アニマルセラピーは国際的にも認められた医療・養育の技術で、動物と触れ合うことで闘病生活を送る人の心のケアや、日常生活の中でのストレスの解消、発達に課題を抱える子どもの成長サポートとなど様々な分野において癒しをもたらすもの。寺庭婦人の由香里さんがアニマルセラピストの資格を持っている。
「セラピストの方々も、病院やケア施設での活動だけでなく、定期的に犬と触れ合える場所があればいいと考えていたのですが、ちょうど本堂を新築したこともあり、それならお寺でやろうと思ったのです。どなたでも来られる場所ですから」と鈴木住職。2022年に開始し、ほぼ月1回開催。多い時には犬5頭、参加者30人以上が集まる。
もちろん、セラピー犬は訓練を受けているため人を噛んだりすることはない。源福寺の愛犬であるトイプードルのあずきちゃんもセラピー犬として活躍中だ。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/19
共生特集 立正佼成会 帰宅困難者の受け入れ想定 本部職員が防災訓練
訓練で止血法を学ぶ参加者 立正佼成会(東京都杉並区、庭野日鑛会長)では5日、首都直下型地震などの大規模災害時における地域住民や帰宅困難者の受け入れを想定した本部職員の防災訓練を実施した。避難者の受け入れについての座学や応急手当、初期消火等の訓練を通して災害時の役割や行動を学んだ。約150人の職員が参加した。
首都直下型地震での帰宅困難者は都内だけでも約70万人といわれ、インバウンドの約30万人を含めると100万人ともされ、一時避難場所の充実が課題だ。今年4月に東京都と東京都宗教連盟が防災力向上の連携協力を行う協定を締結した。
立正佼成会では、2015年に杉並区と「帰宅困難者一時滞在施設の提供に関する協定」を締結。大規模災害に備え、3日間1日最大500人の帰宅困難者を大聖堂と第二団参会館で受け入れる体制を整えている。
災害対策本部事務局長の三善健雄・総務グループ次長は「東京で大きな地震が起きた場合、人命救助の優先と二次被害の回避で、3日間留まることが必要です。我々本部職員も職務中にそうした災害が起きた場合は、本部に原則3日間残る必要があります」と説明。震度6弱以上の地震で災害対策本部が設置され、本部職員は家族の安否が確認でき次第、速やかに本部に参集して対応にあたらなければならない。
訓練では、止血処置やAEDの使用法など応急手当、消火栓を使った消火訓練などを実施。避難者受け入れを想定し、倉庫から水や食料を運搬する訓練も行った。
広大な普門館跡地や免震化した大聖堂について避難場所として期待の声が寄せられており、訓練後の感想では、「災害時に職員としてどう動くかイメージできた。覚悟というか、近隣の皆様をお受け入れするんだ!という気持ちにさせていだきました」との声があった。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/19
共生特集 群馬県観昌寺×高山麺業 廃棄麺を地域福祉に活用 フードロス削減、布施行の循環
中澤住職(右)から麺を受け取るむつみ保育園の林園長 群馬県前橋市の真言宗豊山派観昌寺の中澤賢正住職は、市内の製麺業者から規格外で廃棄となる「麺」を提供してもらい、自ら運転する車で福祉施設等に配っている。フードロス削減に貢献するだけでなく、活動を通じて地域社会に布施行の循環が生まれている。
8月末の暑い日。中澤住職は前橋市内にある高山麺業に到着すると、慣れた手つきで麺の入ったパレットケースを荷台に積み込む。その数約1000食分。人気の焼きそばと特産のひもかわうどん、ラーメンに蕎麦。荷物を積み終えると、支援先リストにある福祉施設や寺院の中から、その日に配る施設を選び、電話で連絡する。「今日は支援可能ですか?」
人助けの機会
檀家の1人が毎週麺を持ってきたことから、廃棄される〝麺事情〟を知り、配布を手伝ったことが始まり。自身が関係する障がい者の就労支援施設をはじめ保育園や幼稚園、地域の福祉施設や子ども食堂へのルートが出来たことで、高山麺業と直接やりとりするようになった。活動は3年以上続いている。
中澤住職(右)と高山麵業の小柳氏 提供される麺はグラム不足や、出荷許容範囲を過ぎて規格外となったものだが賞味期限内の「美味しく食べられる製品」。活動が知られるようになると「子ども食堂からも問い合わせが来て、今7、8カ所に麺を提供している」と同社取締役の小柳泰史氏は話す。飼料用に業者に引き取ってもらっていた廃棄料は大幅に減った。それだけではない。「中澤住職に色んな話を聴き、困っている方がいると知った。喜んでもらえるのは嬉しいし、人助けができるって良いことです」と地域貢献の充実感を滲ませる。「ボランティアで毎週続ける人はなかなかいない。心が豊かじゃないとできない」と中澤住職に敬意を表すが、当人は「1、2回で終わるのは嫌で、やるなら納得するまでやりたい。誰かに喜んでもらえて、心を豊かにしてくれる。機会を与えてくれて、こちらこそ感謝している」と話す。
(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/19
東北福祉大学創立150周年 南澤管長導師に記念法要 曹洞宗関係者800人が祝意
千葉学長 ウェルビーイング実現を表明
南澤管長を導師に執り行われた祝祷諷経 曹洞宗の宗門関係校・東北福祉大を運営する学校法人栴檀学園が今年で創立150周年を迎え、仙台市青葉区の同大国見キャンパスで5日、同宗管長の南澤道人・大本山永平寺貫首親修のもと記念法要が執り行われた。千葉公慈学長は現代の社会課題解決に向けた新たな挑戦として、「ウェルビーイングを実現するための大学教育を展開する」と宣言した。
1875年に宮城県曹洞宗専門学支校として創立された同大の節目に、宗門関係者約800人が祝意を捧げた。両大本山からは小林昌道・永平寺監院と渡辺啓司・總持寺監院が参列。服部秀世宗務総長ら内局や学園歴代役員のほか、駒澤大や愛知学院大など各宗門校の理事長や総長、学長、校長らも揃って参席した。
祝祷諷経では、阿部裕二副学長や鈴木智彦同窓会長、テコンドー世界ランキング1位の岡崎陽向選手らが献灯・献華した。導師を務めた南澤管長が垂示し、戦争や災害も経験した150年の間、学園の成長に力を注いできた関係者に敬意を示した。その上で、建学の理念とする禅の精神に立ち返る大切さを説き、「苦難にあっても迷うことなく、互いの道をしっかりと歩んでほしい」と激励した。
平井正道理事長を導師に営まれた学園功労者報恩諷経では、野球部の山路哲生監督と仲宗根皐主将らが代表で焼香した。式辞を述べた平井理事長は、今年度に「共生まちづくり学部」を新設するなど福祉の領域を広げつつ発展してきた同大の歴史を振り返った。社会全体の幸せを実現する取り組みに邁進すると決意を示し、「慈悲に根差した教育と禅の精神による人材育成は不可欠。変わることなく宗門関係学校としての立場を堅持していく」と力を込めた。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/19
東叡山寛永寺・天井画 『叡嶽双龍』が点睛開眼 根本中堂の守護神に
『叡嶽双龍』に最後の筆を入れる手塚名誉教授 今年で創建400年を迎えた東京都台東区上野の天台宗別格大本山東叡山寛永寺(水上文義貫首・輪王寺門跡門主)は12日、創建400周年記念事業の一つである同寺根本中堂の天井画『叡嶽双龍』の点睛開眼式を執り行った。
『叡嶽双龍』は日本画家の手塚雄二氏(東京藝術大学名誉教授)の作で、縦約6㍍、横約12㍍の大作。制作には4年の歳月をかけ、雄壮に天空を舞う阿龍・吽龍の2匹の龍が同寺根本中堂の天井板に直接描かれている。
法要は水上貫首を導師に営まれ、徳川家の菩提寺である同寺の檀家総代・徳川家広氏(徳川家19代当主)や服部征夫・台東区区長ら約100人が参列。一山式衆による大転読般若の後、手塚名誉教授が最後の筆入れとなる「画竜点睛」を行った。
水上貫首は、今年3月に逝去した前任の浦井正明貫首が手塚氏に天井画を依頼した経緯を語り、「手塚先生が見事に応えてくれた」と感謝。「画竜点睛」の故事を紹介しつつ、「私どもは、この龍がお前たちに嫌気がさしたと昇天しないように精進し、保存に心がけてお守りしていく」と話した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/17
日本香堂 老舗酒蔵と「暁霞」を共同開発 新ブランド 高級お香と日本酒で展開
共同開発した日本酒「暁霞」とお香「羅國 暁霞」 香りの老舗の日本香堂(東京都中央区)と老舗酒蔵の宮泉銘醸(福島県会津若松市)が初タッグを組み、香りと味わいの調和を追求した純米吟醸酒『暁霞―AKIGASUMI』を共同開発した。9月15日から火入れをしたボトル商品(720ml)を「銀座らん月オンラインショップ」と「唎き酒処 酒の穴」(中央区銀座)で数量限定で販売する。
創業450年を迎えた日本香堂グループは「450プロジェクト〝聞く〜awake your spirit〜〟」を展開中で、新たな門出に立ち上げたプロジェクトブランドが『暁霞 AKIGASUMI』。暁霞とは、春の夜明けの山にかかる霧や光が折り重なる幻想的な情景をイメージした名で、今年5月1日には高級お香『羅國暁霞』を販売した。内容量は約30㌘、燃焼時間は約30分、長さ約135㍉㍑。価格は2万900円(税込)。気品ある沈香を主体に、乳香と透明感のあるバニラが絡み合い、さらにサフラングリーンと山椒の酸味と苦みが爽やかさを与え、複雑で洗練された透明感のある心地よい香りが続く。
これに続いて人気銘柄「冩樂」「會津宮泉」で知られる宮泉銘醸の協力のもと、「香りを聞く」という日本独自の感性でつながる「日本酒」を共同開発。透明感と複雑さ、重なり合う香りと余韻で「暁霞」を表現。香りの移ろいを味わえる酒を目指して設計された。原料の麹米は「福乃香」、掛米は「五百万石」(いずれも福島県産)を用い、五百万石によるキレのある淡麗な苦味、「福乃香」がもたらす透明感のある旨味とやさしい甘みが広がる一杯に仕上がった。8月上旬から東京・銀座の「銀座らん月」と「唎き酒処 酒の穴」で数量限定でも提供された。
2025/9/11
第47回全日本仏教徒会議大阪大会 「無量のいのち」と平和を発信 シンポ等で未来の仏教参究
WFB執行役員も多数参加した開会式の法要 第47回全日本仏教徒会議大阪大会が5・6の両日、大阪市のホテル日航大阪で開催された。主催は(公財)全日本仏教会(全日仏)と大阪府佛教会(府佛)。大阪万博に呼応してテーマを「無量のいのち―すべてのいのちを慈しむ」とし、諸宗教対話フォーラム・賢人とのシンポで未来社会における仏教の意義を多面的に考察。仏陀の智慧を国際社会に発信する使命を改めて確認した。約600人が参加した。
戦後80年でもあり、開会式では伊藤唯眞全日仏会長(浄土門主)を導師に世界平和祈願法要を厳修。全世界の物故者を追悼した。伊藤会長は兵戈無用に基づき「平和には武力や武器は不要であり、争いの根源は人間の愚かさにある」と力強く説き、すべてのいのちが尊厳をもって生きることができる社会の実現を呼びかけた。創立60周年を迎えた府佛の超宗派の活動にも敬意を表した。
村山廣甫府佛会長(全日仏副会長、曹洞宗東光院住職)は道元禅師が中国の景徳寺で如浄禅師と出会った時に「我逢人」と言ったエピソードを引き、「私もおかげさまで仏教会の活動でいろいろな『我逢人』と出会ってきた。これは素晴らしい宝だと思います」と、生涯をかけた通仏教、超宗教の活動で得た縁と絆に深く感謝し開会の辞とした。
全日仏も加盟する世界仏教徒連盟(WFB)のパロップ・タイアリー会長がタイから来日。今年の増上寺三大蔵のユネスコ「世界の記憶」登録をパロップ氏が強力に推進したことに対し、伊藤会長から感謝状が贈呈された。パロップ氏は「真の慈悲に満ちた世界は、性別や生い立ちに関わらずすべての人々があらゆる存在に対し尊敬、敬意、そして公平さをもって触れ合う時に実現します」と祝辞を述べた。
閉会式で清澤悟実行委員長は仏教徒としての6つの「こころがまえ」を中核とした大会宣言を発表。大会旗が府佛より全日仏に返還され、全日仏から次回(2027年)の開催地である東京都仏教連合会(東仏)に手渡された。東仏の三吉廣明理事長は今大会の盛況に「率直に、ハードルが高くなった」と苦笑しつつ、東京大会に全力で取り組む決意を示した。
2025/9/11
第47回全日本仏教徒会議大阪大会 「無量のいのち」と平和を発信 シンポ等で未来の仏教参究
WFB執行役員も多数参加した開会式の法要 第47回全日本仏教徒会議大阪大会が5・6の両日、大阪市のホテル日航大阪で開催された。主催は(公財)全日本仏教会(全日仏)と大阪府佛教会(府佛)。大阪万博に呼応してテーマを「無量のいのち―すべてのいのちを慈しむ」とし、諸宗教対話フォーラム・賢人とのシンポで未来社会における仏教の意義を多面的に考察。仏陀の智慧を国際社会に発信する使命を改めて確認した。約600人が参加した。
戦後80年でもあり、開会式では伊藤唯眞全日仏会長(浄土門主)を導師に世界平和祈願法要を厳修。全世界の物故者を追悼した。伊藤会長は兵戈無用に基づき「平和には武力や武器は不要であり、争いの根源は人間の愚かさにある」と力強く説き、すべてのいのちが尊厳をもって生きることができる社会の実現を呼びかけた。創立60周年を迎えた府佛の超宗派の活動にも敬意を表した。
村山廣甫府佛会長(全日仏副会長、曹洞宗東光院住職)は道元禅師が中国の景徳寺で如浄禅師と出会った時に「我逢人」と言ったエピソードを引き、「私もおかげさまで仏教会の活動でいろいろな『我逢人』と出会ってきた。これは素晴らしい宝だと思います」と、生涯をかけた通仏教、超宗教の活動で得た縁と絆に深く感謝し開会の辞とした。
全日仏も加盟する世界仏教徒連盟(WFB)のパロップ・タイアリー会長がタイから来日。今年の増上寺三大蔵のユネスコ「世界の記憶」登録をパロップ氏が強力に推進したことに対し、伊藤会長から感謝状が贈呈された。パロップ氏は「真の慈悲に満ちた世界は、性別や生い立ちに関わらずすべての人々があらゆる存在に対し尊敬、敬意、そして公平さをもって触れ合う時に実現します」と祝辞を述べた。
閉会式で清澤悟実行委員長は仏教徒としての6つの「こころがまえ」を中核とした大会宣言を発表。大会旗が府佛より全日仏に返還され、全日仏から次回(2027年)の開催地である東京都仏教連合会(東仏)に手渡された。東仏の三吉廣明理事長は今大会の盛況に「率直に、ハードルが高くなった」と苦笑しつつ、東京大会に全力で取り組む決意を示した。
2025/9/11
終戦80年 毒ガスの島 大久野島訪問記〈下〉
上坂氏に聞く―元忠海病院職員の半世紀 毒ガス製造に加害者意識も
大久野島毒ガス障害者の慰霊碑。手前でウサギがエサを食べている。年に一度、慰霊式典が行われる 大久野島にあった毒ガス製造工場(東京陸軍第二造兵廠火工廠忠海兵器製造所)の稼働期間は1929年から終戦までの16年。この間、5千人超が作業に従事した。広島県内はもとより岡山や四国からの臨時工員、男女学徒、女子挺身隊などが動員された。
軍の最高機密であり厳しい箝口令が敷かれた。当時動員された女子学生は、こんな証言を残している。「毒ガスを製造している建物の前に、工員さんが十姉妹(じゅうしまつ)を二羽飼っていました。『これはガスを検知するために飼っている』と教えられ、口外を禁じられた。鳥が死ぬとガスが漏れだした知らせなので、部屋の中の人が外へ避難するのだそうです」(奥村芳太郎編著『女子学徒の戦争と青春』角川書店)
30年前のオウム真理教事件で山梨県上九一色村(現富士河口湖町)の教団施設に強制捜査に入る際、鳥かごを手にした防護服姿の捜査員を記憶している人は多いはず。小鳥はカナリヤだったが、これも毒ガスを検知するためだった。
終戦時3200トン
大久野島での総生産量は6616トン。現地を取材したノンフィクション作家の梯久美子氏は「これは、兵器として使えば億単位の人を死に至らしめることのできる量だという」(岩波新書『戦争ミュージアム』)と記述。化学兵器の恐ろしさが伝わってくる。終戦時には3200トンもの毒ガスが残っていた。この大量の毒ガスは占領軍によって処理されるが、作業にあたった日本の作業者たちも毒ガス特有の症状を訴えることになる。
昭和48年(1973)から平成23年(2011)まで毒ガス障害者の指定病院である忠海病院(竹原市)に事務職として勤務した上坂久生氏(75)は、「廊下に痰壺が置いてあり、患者さんが痰を吐くときに使ってました。持ち歩くまではしていませんでしたが、診察室や病室にもありました。まるで野戦病院のようでした」と初期の驚きを口にした。頻発する痰や咳は毒ガス障害者の典型的な症状だった。呼吸器のがんによる死亡者も相次いだ。(続きは紙面をご覧ください)
2025/9/11
高野山宗会 遠忌に向けて信仰動線整備 より参拝しやすい環境に
第2次内局初陣演説を行う今川総長 高野山真言宗の第179次秋季宗会(平山真明議長)が2・3日、和歌山県高野町の総本山金剛峯寺内宗務所に招集された。今川泰伸宗務総長は第2次内局の初陣に当たり、9年後に迎える宗祖弘法大師御入定1200年御遠忌大法会に向けて具体化した「信仰の源泉・宗祖御廟奥之院」を中心とする総合(グランド)計画(デザイン)を表明。数多の至宝を収蔵する高野山霊宝館や相次いで国の重要文化財・登録有形文化財に指定された金剛峯寺の堂舎群を結ぶ高野山全体の信仰動線の抜本的再構築を志向し、国や高野町とも緊密に連携していくと述べた。
最初の御遠忌記念事業として着工した御廟拝殿・奥之院燈籠堂の改修工事が竣工。創建時の色彩と各所の輝きが甦り、新たな避難路となる非常階段が堂内最大の聖域である地下法場に設置された。玉石の洗浄や御廟周りの木柵、檜皮葺き、地下法場の荘厳などは御遠忌開白の1~2年前に施工する予定。今年から3年計画で、奥之院への車イス参拝道も整備する。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/11
武蔵野大学大学院 ウェルビーイング研究科新設 来年4月 社会人の学び直し推進
記者発表した小西学長(中央)と前野学部長(左) 浄土真宗本願寺派の宗門関係校・武蔵野大(東京都江東区)は2026年4月、大学院にウェルビーイング研究科を新設する。社会人が学び直すリカレント教育を推進し、大学の使命に掲げる「世界の幸せをカタチにする。」を目指す。
有明キャンパスで8月29日に記者発表した。創立100年にあたる2024年に設置したウェルビーイング学部に続いて開設される。
「仏教精神は現代の言葉で言えばウェルビーイングそのもの」と述べた小西聖子学長は新研究科は社会人にも開かれているとし、「どんな業種であっても自分の仕事が人のウェルビーイングにどうつながるのかを問い直すことができる」と話した。
研究科長に就任予定の前野隆司・ウェルビーイング学部長は、学部設置から2年経たずに開設した意図について、「社会人の学び直しのニーズは非常に高い。なるべく早く設置したかった」と説明し、リカレント教育に力を入れる方針を示した。
入学定員は修士課程が20人(収容定員40人)、博士後期課程が5人(同15人)。教員は哲学・科学者から実践家まで多彩な顔触れを揃える。授業は平日夜や土曜日に開講したり、オンラインで受講できたりする社会人でも学びやすい環境を整えるという。
山口県出身という前野学部長は明治維新の原動力となった人材を育てた「松下村塾」になぞらえ、「資本主義が限界を迎えた現代社会は、江戸末期と似ている。ウェルビーイングを学んだ人が世界を変えると思っている。世界の諸課題を解決するきっかけとなる場にしたい」と力を込め、「『世界の幸せをカタチにする。』という考え方が本当に必要とされる世の中になっている。ウェルビーイングを広げることによって実現したい」と意気込みを語った。
2025/9/11
大正大学 「情報科学部」来年4月開設
大正大学(神達知純学長、東京都豊島区西巣鴨)が開設を目指していた「情報科学部」が8月29日付けで文部科学大臣が認可し、来年4月から新学部がスタートする。同大にとって7学部目で、理系は初。9月1日、発表した。
情報科学部はもグリーンデジタル情報学科(定員60人)とデジタル文化財情報学科(同60人)で構成。情報科学の専門的な知時と実践的なスキルを学ぶだけではなく、幅広い教養と高い倫理観を育む。また多様な価値観を持つ人々との協働によって未来社会をデザインするための総合的な能力を養い、情報技術を使って社会の課題を解決し、新しい価値を生み出せる人材を社会に送り出す。
グリーンデジタル情報学科は、環境の保全と地域発展のために、情報技術を活用して持続可能な社会の実現をめざし、環境保全や循環型経済など社会の基盤や、自然災害対策を切り口として、「ウェルビーイングと社会インフラの創生」を支える情報技術の知識と技能を学ぶ。
デジタル文化財情報学科は、人々の「心のインフラ」とも言える有形・無形の文化財保護と環境保全を両立させることをめざし、文化財を保存・活用するための情報技術を中心に学び、博物館学芸員や自然環境保全の専門職員、関係事業に従事する職業人として必要な知識を学ぶ。
2025/9/8
立正佼成会パイプオルガン ガザの平和を願い演奏
母を亡くした子どもたち憂う
演奏中のガザヴィ氏 エルサレム出身でイスラエル国内のキリスト教会でオルガニストとして活躍しているヤクーブ・ガザヴィ氏(36)を招いての演奏会「平和を願うパイプオルガンの響き」が8月30日夕、東京・杉並の立正佼成会大聖堂で行われた。約250人が参集し神聖な音色に耳を傾けた。
昨年8月に続いて2回目の公演。ガザヴィ氏はアンコールを含めて7曲を演奏した。そのうち「トリシャの子守歌」(千住明作曲、アニメ「鋼の錬金術師」から)について特別な思いがあると演奏後に述べた。
「誰もが母を思う気持ちがある。もちろん父親も。どれだけの多くの子どもたちが母親を亡くしたことか」とガザで起きている悲惨な状況を憂慮した。
演奏会を企画した認定NPO法人聖地のこどもを支える会には、「一昨年の10月7日の数カ月後から緊急支援をしてくださった。5万5千人が援助によっていのちをつないでいる」と感謝。さらに「今日の感動や平和の心や願いを皆さんの家族や周囲に伝えていただきたい」と要望した。
ガザヴィ氏は本尊に目を移してから「ブッダは最初1人だったけれども、今ではたくさんの人が続いている。イエス・キリストもそうです」と述べ、1人からでも変化を起こすことは可能だと訴えた。
ガザヴィ氏によるパイプオルガン演奏は、9月14日まで5カ所で行われ、仏教施設では立正佼成会のみ。
2025/9/4
文化庁 記録作成の無形文化財に「真言声明」を選択
孤嶋由昌氏 関係技芸者に指名 豊山派迦󠄀陵伽聲明研究会を主宰
関係技芸者に指名された孤嶋由昌氏 文化庁は「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」に「真言声明」を選択し、その関係技芸者として孤嶋由昌氏(84、真言宗豊山派金蔵院住職=東京都小金井市)を指名したと発表した。真言声明が選択されるのは昭和53年(1978)以来3度目。文化審議会が7月18日に文化庁長官に答申した。
発表によれば、日本の「声明」において、10世紀以降に拡充整備された天台・真言両宗の声明は「講式や論義、和讃等の旋律構造や記譜法、唱法等は平家や謡曲、各種浄瑠璃などに大きな影響を与え、声明は日本音楽の源流ともいわれている」と評価。過去にも2度「記録作成」に選択されたが、「教授法や唱法、博士の解釈等の記録や、近年復活された声明曲の音声記録の作成も求められている」と今回の選択理由を解説している。
昭和30年(1955)は関係技芸者に真言宗南山進流の中川善教師(高野山真言宗僧侶、1907~1990)を指名(記録対象は岩原諦信師)、同53年は豊山声明の青木融光師(1891~1985)が指名され、その歌唱記録が作成された。
今回指名された孤嶋氏は青木師に師事し、迦󠄀陵頻伽聲明研究会(迦󠄀聲研)を主宰するなどして後進の育成に尽力。また国内外で数多くの声明公演を行っている。
今後は音楽研究者らによる「記録作成委員会」が発足し、音声や映像記録、活字の記録等を作成、公開する。
青木師以来47年振りに関係技芸者に指名された孤嶋氏は、発表を淡々と受け止めつつ、共に青木師に師事し、研鑽を積んだ新井弘順氏(2022年逝去)の名前をあげて、「(新井氏とは)ペアでやってきた。史料を発掘し、論文もいっぱい出されて、声明を肉付けするのが新井さん。私は導師を増やす。そう棲み分けをしてきた」と歩み振り返った。次世代育成にも尽力してきたが「若い人たちの成長を見るのは楽しい。一緒にいることで私の声明も前へ進める」と若手の存在が力になっているとも話した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/4
修行僧をわいせつで除籍 大本山永平寺 再発防止策を徹底
福井県永平寺町の曹洞宗大本山永平寺で、安居していた20代の修行僧が、6~7月にかけ坐禅などを体験する宿泊研修で訪れていた高校の女子生徒14人の尻を触るわいせつ行為があった。修行僧は8月1日付で「除籍」処分となった。
同寺によると、入室が禁じられていた女子生徒の控室で布団の敷き方などを教える際に、わいせつ行為に及んだという。研修後に女子生徒が被害を訴えていると学校から連絡があり発覚。防犯カメラを確認するなどして特定した。
修行僧はそうした指導役ではなかった。聞き取りの際にわいせつ行為を認めたことを踏まえ、僧堂役員会議で安居歴を取り消す「除籍」処分とすることを決定した。修行僧は「許してほしいとは言えない。謝罪したい」などと反省を口にしているが、2次被害を避けるため留めているという。
同寺は調査後すぐに最高責任者らが高校を訪れ謝罪。その後も女子生徒や保護者らが参加する会合で謝罪し、経緯を報告した。
再発防止に向け、性加害について全山で講習を受けるとともに、「不祥事再発防止刷新委員会」を設置。しかし、山外有識者として女性が加わっていなかったことから対策を練り直すことにし、10月まで学校や企業の宿泊研修の受け入れ中止を決めた。ただし、事情を知った上で参禅を希望する個人や団体は受け入れ、役寮が指導にあたる。
2025/9/4
終戦80年 毒ガスの島 大久野島訪問記〈上〉
広島・近代戦争の最前線だったウサギの島 国際的に規制も製造急ぐ
長浦毒ガス貯蔵庫跡。100トン入るタンクが計6基置かれていた。手前は上坂氏 瀬戸内海には大小700を超える島々がある。「ウサギの島」として人気なのが、周囲4㌔の大久野島(広島県竹原市忠海町)である。昭和38年(1963)国民休暇村となり、宿泊施設やキャンプ場、海水浴場、テニスコートなどが整っている。
だが、このリゾート島は戦前、陸軍の毒ガス製造の島だった。最高機密のため地図から消された。製造に携わったのは軍人・軍属をのぞくと地域から動員された住民がほとんど。5千人超が従事し、戦後は毒ガス障害に悩まされ死亡者も相次いだ。島内には「大久野島毒ガス障害死没者/慰霊碑」が建つ。終戦80年、原爆被害とは異なり、大久野島は日本の加害の側面を映し出す。
東広島市の日蓮宗法音寺安芸津支院の信徒で、大久野島毒ガス障害者救済制度発足後、国の指定病院となった忠海病院(現・呉共済病院忠海分院)に勤務した上坂久生氏(75)に案内していただいた。
忠海港から船で15分ほどで大久野島の桟橋に到着。夏休みとあって島内は観光客で賑わっている。子どもたちのお目当ては島内に700羽いるウサギである。しかし炎天下のため、ウサギは木々の陰に隠れている。子どもたちはエサを手にウサギを呼び寄せる。
島の面積は0・7平方㌔㍍。東京ドーム約15個分に相当する。この島をレンタル自転車で一周した。雑草に覆われたコンクリート建造物が目に入る。長浦毒ガス貯蔵庫跡である。かつて約100トン入るタンクが6基置かれていた。黒くなった壁は、戦後処理にあたり毒性を除去するため火炎放射器で焼却した跡だ。
「子どもの頃は中まで見学できたのですが、今は柵が設けられてここまでのようです」と上坂氏。小学時代は遠足地だった。
途中、数カ所に砲台跡がある。北部砲台は日清戦争後、広島側の忠海海峡と愛媛側の来島海峡のラインに設置された芸予要塞の一つ。芸予要塞は1924年に廃止された。毒ガス製造期には毒ガスタンクが置かれた。中部砲台には6門の28㌢榴弾砲が置かれ、うち2門は日露戦争での旅順攻撃に使われた。この場所も原材料置き場などになった。
風船爆弾のテスト
坂道を下った先にあるのが発電場跡。毒ガス製造の電力源だった建物は、もはや巨大な廃墟といった状態である。戦争末期、この建物では女子学生たちが特殊な任務を課せられた。風船爆弾の仕上げと気球部分の満球テストである。大久野島は、日清戦争前後から近代戦争の最前線に位置していたことがわかる。(続きは紙面でご覧ください)
2025/9/4
「摩耶の送り火」大盛況 真言宗の有志が企画 神戸の新しい行事に
老若男女が精霊船を囲んで楽しく盆踊り 神戸市灘区の摩耶山は標高700メートル。その名の通り摩耶夫人を祀る霊峰であり、かつ、神戸港を見下ろせる絶景も有名な観光スポットである。そこに建つ摩耶山真言宗大本山忉利天上寺(伊藤淨真貫主)で8月16日に行われた「摩耶の送り火」に多くの人が訪れた。神戸の風物詩である精霊送りを土台にしつつコロナ禍をきっかけに始めた新しい行事なのだが、じわじわと知名度を増し神戸市民の菩提心を育んでいる。
夕方、境内に祭壇が整えられ、「仙人来朝之庭」(法道仙人が天上寺を開いたことをモチーフにした枯山水)には電子ロウソクの乗った精霊船が置かれた。この船団を囲んでの盆踊りで送り火はスタート。浴衣姿の灘区連合婦人会や、飛び入りの老若男女が和やかな雰囲気で御霊を慰めた。ナスを使った精霊カレーやかき氷のキッチンカーも並び、ちょっとしたお祭り気分も味わえる。H1グランプリ受賞者の田中宣照氏(高野山真言宗西室院)のミニ法話もあった。
日が沈んできた頃に金堂内で伊藤貫主、真言宗有志僧侶による法要が営まれ、境内では塔婆のお焚き上げが行われ、初盆を迎えた故人の名前がひとりひとり読み上げられた。途中、摩耶山名物の霧もたちこめ、とても幻想的な雰囲気があたりを包んだ。最後は伊藤貫主を筆頭に全員で般若心経を読経。伊藤貫主は供養の根本は「見事に生き抜いた亡き人の命の尊厳を見守ること、こ゚縁の中で頂いた恩に感謝を述べること、そして安らかな仏、おおらかな御霊に見守ってほしいと願うこと」だと語り、その祈りの集まった摩耶の送り火ができたことに深く感謝した。(続きは紙面でご覧ください)
8月
2025/8/25
「話しておこう 心のこり」 フューネラルアンバサダー田村淳さん登場 文化放送
収録後の田村さんと全葬連の石井会長 全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)フューネラルアンバサダーの田村淳さんがパーソナリティーを務める文化放送「田村淳のNewsCLUB」の公開収録が7日、東京・浜松町の文化放送で「話しておこう 心のこり」と題して行われた。抽選で招待された60人が来場した。
2020年8月に他界した母の久仁子さんが生前、自らの葬儀をプロデュースしていたことをきっかけに、「最期の向き合い方」や「葬儀のあり方」を考え直すようになった田村さん。2年前の全葬連愛媛大会で講師として参加し、親と葬儀について話すことや、ハグすることを勧めた。
今回のテーマである「心のこり」について田村さんは、「母ちゃんの唯一の心のこりは、父ちゃんを一人残すことだった」と言い、「父ちゃんを寂しくさせないでよ」と子どもたちに言い遺した。こうした体験から、誰かの心のこりに触れることで、自分は心のこりがないよう前向きな気持ちになれると話した
。
事前に寄せられた来場者の心のこりに耳を傾けながらトーク。心のこりには個々人のさまざまなストーリーが組み込まれ、田村さんは体験を交えて助言した。
収録後、田村さんは全葬連の石井時明会長と並んで取材に応じた。葬儀社を選ぶポイントを尋ねたところ、「カスタマイズ(好みや必要に対応すること)してくれるかどうかだと思います」と返答。母の葬儀では、母の要望を葬儀社が聞き入れていたことから、「そうした葬儀社は増えているのではないか」と感触を口にした。(続きは紙面でご覧ください)
2025/8/22
朗読ライブ「三輪車」上演 広島出身 坂田明氏が演奏 中野区宗清寺
奏者の坂田氏(左)と朗読した辻氏 80年目の終戦の日を迎えた15日、生演奏を織り交ぜた朗読ライブ「三輪車」が東京都中野区の曹洞宗宗清寺で上演された。東京大空襲の夜に起きた少年の不思議な物語に、満堂となった本堂は祈りに包まれた。
台本は4月に亡くなったラジオプロデューサーの延江浩氏(享年67)が書いた。執筆中に急逝したが、家族がパソコンに残された原稿を見つけた。柳田國男の『遠野物語拾遺』に着想を得た作品。火事が起き、めざましい活躍で火を鎮めた小さな子どもたちが姿を消してしまうが、足跡を辿ると泥まみれの阿弥陀如来が安置された仏壇に行き着くという話だ。原爆資料館に展示される「伸ちゃんの三輪車」もモチーフとなっている。
朗読は俳優の辻しのぶ氏。今年2月に80歳となった広島県出身のサックス奏者・坂田明氏が演奏した。辻氏が、8月に寺院で2人の朗読ライブを企画していると延江氏に知らせたところ、「坂田さんは終戦の年に生まれ、原爆も身近だった。寺で公演するなら15日がいい」と、台本の執筆を買って出たという。
初上演を迎え、チケットは100席完売。仏前には第2次世界大戦の犠牲者すべてを供養する位牌とともに、延江氏の位牌が祀られた。舞台となった大間には傷ついた三輪車。迫真の朗読によって、空が赤く染まった下町を目指して三輪車をこぐ少年が見た状景が広がり、力強く抑揚のついた演奏が物語の世界に引き込んだ。関係者を含む参拝者約135人が終戦の日に思いを寄せた。
埼玉県蕨市に住む坂田氏はこの日、犠牲者を追悼する正午のサイレンに合わせ合掌した。南方と沖縄で叔父2人も亡くしている。終戦後の社会とともに年齢を重ねてきたが、「思い描いていた未来とは違う」と失意の表情を浮かべた。「私たちにできるのは祈ること。その思いを音に込めた」
辻氏は「平和という言葉は軽々しく口にできるほど生易しいものではありません。ですが、今日は祈りによって心が一つになる瞬間があってほしい。お寺という場が後押ししてくれるようです」と話した。
飯島尚之住職は「どうやって戦争を伝えていけばいいのか。私を含め参拝者はみな戦争を知らない人たち。平和について考える場として新たな試みとなったのではないか」と語った。
主催したNPO法人ビンテージエイジングクラブ(東京・赤坂)は今後、寺院での公演を検討している。問い合わせは同クラブ(メールinfo@vintageaging.com)まで。
2025/8/22
日蓮宗 千鳥ヶ淵墓苑で法要 胸に刻む〝いのちの連なり〟 終戦80年 犠牲者悼み平和を願う
戦没者の遺骨が奉安された六角堂で営まれた法要 日蓮宗は15日、東京都千代田区の国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で終戦から80年にあたる戦没者追善供養・世界立正平和祈願法要を執り行った。導師を務めた田中恵紳宗務総長は、今後もすべての戦没者の供養と世界立正平和の実現を祈念していくことを改めて誓った。
法要は、田中総長を導師、東京4管区の宗務所長を副導師に営まれ、鈴木秀行・東京南部修法師会長を修法導師に修法祈祷も行われた。祭壇脇には日蓮宗保育連盟から寄せられた千羽鶴が奉納された。
田中総長は、戦争について「戦争は正義と正義の衝突とも言える。人は自らの信念に基づく正義を疑わず、それを妄信してしまうことで、時に他者を排し、争いを招き、暴力を行使する口実と化すことがある」との見方を示し、「仏陀釈尊は〝正しさ〟とは決して他者に振りかざし、誇示するためのものではなく、冷静に物事の本質を見極めるための道しるべだと説かれた」と仏教的な「正しさ」を説いた。
その上で、「国や文化の違いを超え、人々が互いを思いやる心を持つことができたならば、恒久なる世界平和の第一歩となる」と述べ、戦没者供養が「日常が先人たちの犠牲の上に築かれた有り難き〝いのちの連なり〟によるものであることを胸に深く刻む機会」となることを願った。
国外での戦死者は240万人とも言われ、いまだ多くの遺骨が海外に遺され、現在も収骨が続く。同墓苑には遺族に引き渡しできない遺骨が納骨されており、累計37万989柱が奉安されている。
同墓苑奉仕会の保松秀次郎理事長は、「奉安されたご遺骨は海外に残されたご遺骨の代表と思っている」とし、5月に同墓苑で満開となる墓苑の花に指定した紫蘭の花言葉「あなたを忘れない」を紹介。「まさに千鳥ヶ淵墓苑に相応しい花。この花言葉の意味を肝に銘じて日々のお勤めをしております」と話した。
日蓮宗では、墓苑が創設された昭和34年以来、毎年この終戦の日に同墓苑で供養を続けている。日蓮宗檀信徒の全国組織・全国檀信徒協議会の池上幸保会長は「本日法要をしていただけるのは大変ありがたいこと。今の日本があるのは戦争で犠牲になった方々、そして戦後復興をした方々のおかげです。感謝の気持ちを常に持っていたいと思います」と語った。
2025/8/22
念法眞教 盛大に立教100周年法要 明るく社会を照らす存在に 開祖親先生追慕し精進誓う
挨拶する桶屋燈主 4月1日に立教百年大祭が開闢した念法眞教は2日、大阪市鶴見区の総本山小倉山金剛寺で立教百周年報恩大法要を勤修した。宗教界内外から約480人を祈願本堂に招待。桶屋良祐4代燈主を導師に全国支院主管者(住職)ら約70人が出仕し、大勢の信徒と共に感謝の念法眞言を唱えた。桶屋燈主は、「教えの実践活動は百周年で終わるのではなく、二百年、三百年へと現世界極楽浄土現成を目指して続けなければならない。それが教団の使命」と力強く表明した。
念法眞教は大正14年(1925)8月3日午前2時、久遠実成の阿弥陀如来が当時40歳の開祖親先生(小倉霊現初代燈主)に応現し、「信仰の立て直し、世の立て替え」をするようにと霊示を授けたことに始まる。少年期から艱難辛苦を重ねてきた親先生が、「現世界極楽浄土建設」を掲げて立教開宗してからの教団の歩みは、今年迎えた「昭和百年」と丁度重なる。
桶屋燈主は、「昭和20年8月15日、大東亜戦争が終結し、親先生は御霊示のままに日本再建に一身を捧げる決意をされ、全国各地の御巡教を始めた」と回想。立教開宗から97歳で遷化するまでの57年間にわたって法を説き続けた姿を追慕し、「私は開祖親先生の御高徳に自身の生涯と命を捧げても惜しくないと決意し、25歳で入山した。爾来50年間、親先生、2代燈主様、3代燈主様の身近に仕え、修行の日々を過ごした。4代目を相承してより今日まで、ひたすら開祖様の姿を追い求め、走り続けてきた」と想いを込めて語った。
教団代表顧問の東久邇吉子殿下が祝辞。「百年間の報恩感謝と祈りを深め、開祖様の教えに基づいて住みよい世の中を目指し、日々精進なさることを喜ばしく思う」と述べた。(続きは紙面をご覧ください)
2025/8/22
奈良の「広島大仏」で原爆忌 安堵町極楽寺 平和式典で犠牲者供養
山形、広島から極楽寺へと移ってきた広島大仏 広島原爆忌の6日、奈良県生駒郡安堵町の真言宗国分寺派極楽寺(田中全義住職)は「広島大仏」の前で平和記念式典と法要を営んだ。檀信徒や西本安博町長ら約100人が参列し、二度と原爆の惨禍を繰り返さないことを誓った。大仏殿の前では平和を願うコンサートも奉納された。
広島大仏は身の丈約4メートルの阿弥陀如来坐像。約700年前に造立されたもので、かつては出羽国(山形県)の黄檗宗寺院の本尊だったが、廃仏毀釈の時代にその寺から離れ、大正時代に広島県に写ってきた。北広島町に安置されていたため原爆の被害は免れた。これを原爆犠牲者供養のための広島供養塔の本尊にしようという動きが有志僧俗により沸き起こり、大仏奉讃会が結成された。1950年にパレードが、1955年には増田日遠日蓮宗管長を大導師に超宗派の法要が行われた記録も残っている。ところが、所有権を巡る争いなどが発生し、詳しい事情は不明なものの1960年頃に広島から姿を消した。
極楽寺の田中義邦先代住職(故人、田中住職の祖父)が知己の古美術商から譲り受けていた仏像が、調査の結果この広島大仏だと判明したのが2011年。以来15年にわたり平和記念式典を営んでいる。
広島市の松井一實市長が「ヒロシマの平和への願いの原点は、『こんな思いは他の誰にもさせてはならない』という被爆者の切なる願いです」とメッセージを寄せた。(続きは紙面をご覧ください)
2025/8/8
識者に聞く カンボジア・タイ国境で武力衝突
両国とも寺院を避難所に オンライン対話の試みが
浅見靖仁・法政大学教授
領有権を主張するタイとカンボジアの国境で7月24日、軍事衝突が発生し、両国で30人以上が死亡した。避難者は双方で30万人とされる。同28日、マレーシアの仲介で両国の停戦合意にいたった。しかしその後も攻撃があったと伝えられている。上座部仏教国に位置付けられる両国はどのような状態なのか。それぞれの国や仏教事情に詳しい識者3氏に聞いた。
両国とも寺院を避難所に オンライン対話の試みが
浅見靖仁・法政大学教授
両国の仏教界上層部は今回の紛争に対して沈黙しているが、僧侶たちはただ座しているわけではない。戦闘によって双方とも十数万人が自宅に滞在できなくなり、避難民となった。日本では小中学校の体育館や公民館が災害時の避難先として使われるが、両国とも国境近くの地域には大きな公民館や体育館のある学校はほとんどない。どちらの国でも僧侶が寺院を一時避難所として開放し、政府が救援物資を配布するようになるまでは食事の手配もした。
1970年代から90年代にかけて激しい内戦を経験したカンボジアでは、僧侶が平和と和解の重要性を唱えて行進するタンマイェートラという「新たな伝統」が作られたが、今回の紛争に対しても8月2日に中堅の僧侶が中心となって平和行進が行われた。ASEAN議長国マレーシアの仲介による一時停戦の合意成立を祝い、戦闘が再開されないことを祈願する行進であったが、停戦合意を実現したフン・マネット首相やフン・セン上院議長に感謝し、彼らの指導の下に国民が一致団結することを呼びかけもした。
こうした姿勢は、特定の側に肩入れすることなく、紛争の当事者双方に自制と寛容を呼びかけた内戦終結時に行われた平和行進の精神とは相容れないという不満を表明するカンボジアの仏教徒もいる。
そうしたカンボジア側の動きに呼応するように、タイ側でもカンボジアとの仏教者交流を続けてきた人たちを中心にして、相互理解と寛容の精神でカンボジアとの和解を進めるべきだという訴えをSNSで行う人が少しずつではあるが、増えてきている。タイとカンボジアの仏教者が今回の紛争についてオンラインで対話する試みも始まりつつある。
紛争発生以来、両国のネット上では、相手国は好戦的で悪意に満ちた侵略者であり、自国は常に正しく、争いは好まないが自衛のためにやむをえずに戦っているという言説に満ち溢れていた。そうした怒涛のような憎悪の感情を、両国の仏教者の訴えが少しでも良い方向に変えてくれることに期待したい。
(紙面では、東海林良昌・世界仏教徒連盟人道支援委員会委員長、小野正遠・TM良薬センター事務局長のご意見も掲載しております。ぜひ紙面をご覧ください)
2025/8/8
栴檀学園創立150年 洞門の強豪野球部が記念試合 東北福祉大 VS 駒澤大 ドラフト候補先発 序盤から点を取り合う熱戦
力を出し合った両校の選手ら(仙台市青葉区、福祉大野球場) 曹洞宗の宗門関係校・東北福祉大を運営する栴檀学園の創立150周年を記念した野球の招待試合が3日、仙台市青葉区の同大野球場で行われた。対戦したのは駒澤大。同門の強豪校同士の熱戦に、両校の関係者ら約700人が声援を送った。
6月の全日本大学野球選手権で7年ぶり4度目の優勝を飾った福祉大。対する駒澤大も今春に東都リーグ2部で優勝し、1部に復帰した強豪。同選手権では歴代2位となる6度の優勝経験を持つ。曹洞宗門校同士の対戦は、序盤から点を取り合う白熱した展開となった。試合前には両校の応援団がエール交換した。
福祉大は今秋ドラフト候補の櫻井頼之介投手、駒澤大は本間葉琉投手が先発した。一回に福祉大がDH・冨田隼吾内野手のライト前ヒットで先制。二回に駒澤大が鳥山穣太郎内野手のツーランホームランで逆転すると、福祉大が2点を返して再逆転。三、五回にも2点ずつ追加した。七回に駒澤大が2点を挙げて追い上げるも、福祉大が7対4で勝利した。
ドラフト候補に挙がる福祉大の先発・櫻井頼之介投手 ユーチューブでライブ配信され、実況席では福祉大の山路哲生監督と駒澤大の香田誉士史監督の対談もあった。
球場にはレジェンドたちも集結。福祉大OBで元メジャーリーガーの「大魔神」こと佐々木主浩氏や元阪神監督の金本知憲氏らが駆け付けた。始球式では元福祉大野球部長の大竹榮氏がマウンドに立ち、打席に入ったのは駒澤大終身名誉監督の太田誠氏。前福祉大監督の大塚光二氏が捕手役を務めた。
初めての記念試合に両校の理事長も揃って参加した。福祉大の平井正道理事長は「互いに高め合えるいい機会になった」。駒澤大の小島𣳾道理事長は「今後も続けていけたら。楽しみだ」と話した。
福祉大の千葉公慈学長は「精一杯力を出し切ることが相手の全力を引き出すことにつながる。それが互いの利益となる。本学の教育理念は自利・利他円満。自己研鑽にふさわしい試合だった」と語った。
2025/8/8
核廃絶 比叡山から世界へ サミット38周年 真の平和、慈愛社会訴える
平和の鐘の音が響く中、諸宗教者が黙祷を捧げた 超宗教で世界の恒久平和を祈る比叡山宗教サミット38周年・第39回「世界平和祈りの集い」が4日、滋賀県大津市の天台宗総本山比叡山延暦寺で開催された。各宗教から約450人が参加。広島・長崎への原爆投下から80年を迎えた今、世界では自国第一主義の台頭で対立・分断が深刻化し、再び核武装論の拡大による核の実戦使用の危機が増大。比叡山上に参集した諸宗教者は、山内に鳴り響く平和の鐘の音に乗せて「日本仏教の母山」から世界中に祈りを発信し、国境を越えた対話・協力による核兵器廃絶の道を探った。
一隅を照らす会館前「祈りの広場」で、「平和の祈り」。次代を担う若手宗教者を代表して神社神道の戸内(とのうち)結(ゆ)律子(りこ)氏と仏教の犬山空(くう)翼(よく)氏がステージに登壇し、「平和のために祈ることは、平和のために働くこと、そして平和のために苦しむことですらある」とする比叡山メッセージの全文を交互に読み上げた。
藤光賢天台座主をはじめ、仏教・神道・キリスト教・イスラム教などの各教宗派・団体の代表10氏がステージに登壇。午後3時半、文殊楼横鐘楼の「世界平和の鐘」を打ち鳴らし、参加者全員が起立して黙祷を捧げた。
藤座主は主催者代表挨拶で、「平和とは、単に戦争がないということではない。人間同士だけでなく全ての生物と慈しみをもって共生していくことが、真の世界平和と言える」と表明。終戦80年に際し、「あらゆる兵器や暴力のない、慈愛に満ちた社会の実現に邁進する」決意を新たにした。(記事全文は紙面をご覧ください)
2025/8/8
子どもの栄養失調深刻 議連総会 ガザに即時食糧を
多くの乳児が重度の栄養失調状態であることが報告された パレスチナのガザ地区で飢餓状態が深刻化するなか、超党派の人道外交議員連盟(阿部知子事務局長)は5日、国会内で緊急総会を開いた。現地で活動するNGO団体も参加し、食糧等の物資搬入や即時停戦の必要性を強く訴えた。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長がオンラインでガザの状況を報告。3月にイスラエルが食料搬入を止めてから子どもたちの栄養失調の割合が増加し、7月時点で18・5%が栄養失調の状態に。現地で働くUNRWA職員の飢えと疲弊も深刻で「崩壊が始まっている」と危惧。「ガザの外には大量の食料と医療品がある。何故それが届けられないのか」「人道支援が政治の題材にされている」と憤った。
米国・イスラエルによるガザ人道財団が設置した食料配布所は、ガザの人口200万人以上に対して僅か4カ所。配布所周辺で1400人以上が殺害されている。国連の配布所は400カ所ある。「何ができるか答えは明白。停戦と食料と医薬品の搬入。それ以外にない」と訴えた。日本国際ボランティアセンター、国境なき医師団、パレスチナ子どもキャンペーン、セーブザチルドレンジャパンも参加した。
人道外交議連は7月上旬に「パレスチナの国家承認」等を求める要望書を政府に提出している。阿部事務局長は「国家承認の迅速化、人道物資支援の搬入、医療的な避難の加速を申し入れる」と述べた。
2025/8/5
模擬原爆投下80年 恩楽寺で追悼式 長崎原爆と同型 5㌧の火薬、7人死去
門前の追悼碑には千羽鶴が供えられた 80年前の7月下旬、終戦を目前にした日本各地に「模擬原爆」が投下された。それは米軍が原爆を落とす練習のためだった―その被害を受けた大阪市東住吉区の真宗大谷派恩楽寺(乙部大信住職)で7月26日、犠牲者追悼式が営まれ、当時を知る人から小学生まで120人以上が参加した。オンラインで各地の平和団体とも繋いだ。主催は追悼実行委員会。
1945年7月26日の朝、B29は恩楽寺付近に模擬原爆を投下、急旋回して消え去った。中身は約5トンの火薬で、7人の死者を出した。外形は長崎原爆「ファットマン」と同じ。本物の原爆を投下した時に自機が衝撃波を受けないように急旋回する練習のためだったと指摘されている。恩楽寺もこの時の爆風で柱が傾いており、現在でも敢えてその傾きを残して戦争の被害を知る助けとしている。
3人が体験を語った。当時、小学校2年生だった山本悦子さんは空襲警報が鳴り響き、防空頭巾を被って路地で伏せると「とたんに爆風の凄い音がして、上から瓦とホコリが降り掛かってきた」。帰宅すると家の窓ガラスは全部割れていた。当時はもちろん模擬原爆とは知る由もなかったが、「戦後4、5年して何か怪しい爆弾だったという話を聞きました。数十年経ってやっと模擬原爆だとわかった」と回想。戦争は人間の尊厳を無視したものだと訴えた。(続きは紙面でご覧ください)
2025/8/1
自由な意思決定権を奪われた 宗教2世 旧統一教会を提訴 弁護団、教団の共同不法行為問う
記者会見する弁護団。前列中央が村越進弁護団長 旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)信者の親を持つ2世の8人が24日、教義に基づく虐待などによって精神的な自由な意思決定権等を奪われたとして教団に対して総額約3億2千万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。弁護団は教団側の民法上の共同不法行為を問うとしている。同日、全国統一教会被害対策弁護団と原告の1人が都内で記者会見した。
弁護団長の村越進氏は「2世の方が統一教会を訴えるのは初めてであり、画期的なことと考えている」と語った。訴状では、「被告(教団)が、親に対して、2世の人権よりも教義の実践を優先するよう指示した結果、2世の発達環境を著しく歪めた」と指摘。具体的には「恋愛は堕落の始まり」「統一原理に反する行動を取れば地獄に落ちる」「親や教会に背くことは神に背くこと」と教え込まれ、「人生の基礎にかかわる事柄について自由な意思決定を行うことを許さなかった」としている。
こうした2世への人権侵害に対し、民法709条、同719条に基づいて教団の故意の不法行為を問うとしている。
会見では、原告8人の被害は「驚くほど似通っている」とし、ネグレクトのような状況、教育環境が十分ではない、交遊・恋愛関係の制限、趣味・趣向の制限、幼少時から教義の教え込みを受ける、祝福によってさまざまな苦しみを受ける――といった事象を列挙。その上で「個別家庭ではなく、多くの問題が共通して起こっている。それを生み出している教団も教義で指導している。教団は組織的にそうした被害が生じうると分かった上で行為に及んでいることになり、法律的には共同不法行為にあたる」と説明した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/8/1
仏教伝道文化賞決定 本賞 河野太通氏・妙心寺派元管長 沼田奨励賞 雄谷良成氏・日蓮宗蓮昌寺住職 贈呈式は10月16日
河野太通氏
雄谷良成氏(公財)仏教伝道協会は7月24日、第59回仏教伝道文化賞選定委員会を開催し、仏教伝道文化賞に河野太通氏(95、臨済宗妙心寺派元管長、兵庫県・龍門寺先住職)を選出した。沼田奨励賞は雄谷良成氏(64、石川県・日蓮宗蓮昌寺住職、社会福祉法人佛子園理事長)に決まった。
仏教伝道文化賞は国内外で仏教関連の研究や論文、美術や音楽、仏教精神を基に活動する実践者など、幅広い分野で仏教精神と仏教文化の振興と発展に貢献した人物や団体に贈られる。今後の活動に期待ができる個人や団体に「沼田奨励賞」を贈呈している。
河野氏は太平洋戦争の激戦地の慰霊、内戦地での人道支援、震災復興支援などを長年にわたり実践し、宗教者としての生き方を身をもって示してきた功績を称賛しての授賞となった。アジア南太平洋友好協会会長、花園大学学長、全日本仏教会(全日仏)会長等を歴任。ちなみに全日仏会長時には東日本大震災とそれに伴う原発事故を受けて「原発によらない生き方を求めて」とする宣言文を発表。脱原発依存を打ち出した。
雄谷氏は特別支援学校教員、青年海外協力隊、北國新聞社勤務などを経て、祖父が創設した佛子園に戻って事業を展開。「シェア金沢」のオープン、「輪島KABULET®プロジェクト」の始動など、世代・障害・国籍の分け隔てをせず共生する福祉施設を運営。差別のない世界を目指す地道な活動が評価された。昨年元旦の能登半島地震では金沢市の自坊が被災しながら、復旧・復興活動に取り組んでいる。
贈呈式は10月16日午前11時から、東京都港区の仏教伝道センタービルで開く。受賞者には賞状と賞金(本賞500万円、奨励賞300万円)、記念品が贈られる。
受賞者の声
無文老師の志継承
河野太通氏
この度は文化賞を賜り、誠に光栄に存じます。妙心寺派山田無文老大師の志を受け継ぎ、アジア南太平洋友好協会・RACKの活動を続けてまいりました。諸仏の加護と皆様の支えに深く感謝し、今後も平和と共生のため精進いたします。
感謝の大切さ学ぶ
雄谷良成氏
能登半島地震から1年7カ月、復旧・復興活動では人と意見を交わすことが必要ですが、色々なことに向き合っています。一番必要だと思うのは、日頃から子どもも若者も高齢者も、障害のある人もない人も、外国人も、みんなが何らかの形でつながっていること。これが災害時にも大きな力を発揮します。そして感謝をする力がある人はすごく強い。災害に遭っても「ありがとう」と言える人は周りを引っ張っていく力がある。そういう人たちと一緒に、感謝する大切さを学ぶ場になっています。今回の表彰を自分のことのように喜んでくれて、お祝いをしようと考えてくれています。
2025/8/1
次期全日本仏教徒会議 2027年秋 東京で開催
東仏賛同 全日仏70周年式典も
東京都仏教連合会(東仏)は7月28日、台東区の浄土宗凉源寺で理事会を開き、全日本仏教会(全日仏)が2年後の2027年秋に開催を予定する「法人創立70周年式典・記念祝賀会」の一環として「第48回全日本仏教徒会議」の企画運営を行うことを決め、東京大会が内定した。東京大会は昭和58年(1983)10月、池上本門寺で行われて以来44年ぶりとなる。今後は実行委員会を作り、内容を検討していく。
理事会には55地区仏教会から30人が出席。三吉廣明理事長(烏山仏教会)、吉田泰樹事務局長(浅草仏教会)が全日仏から東京大会開催の打診を受けてからの経緯や、60周年大会が行われた2017年の福島大会を参考にしながら予算計画について説明した。細かな質疑の後、出席者の賛同を得て大会開催が内定した。
今後は東仏事務局・常務理事を中心にした実行委員会を組織し、仏教徒会議の方向性や具体的な内容を計画していく。また事務局は今回の理事会に参加しなかった地区仏教会に対して必要があれば説明するとしている。
全日仏はおよそ2年に一度、加盟する全国の都道府県仏教会との共催で全日本仏教徒会議を開催してきた。今年9月5・6日に第47回大阪大会が行われる。
次期大会となる2027年は全日仏の法人創立70周年と重なるため記念式典や祝賀会も開催する。全日仏からは50周年、60周年の大会が「ご縁」をテーマに行われたことを踏まえ、70周年大会のテーマも「明日へつなげるご縁の力」(案)で検討されている。開催時期は2027年10~11月頃を予定。
2025/8/1
じわり浸透 キャッシュレス 野村証券公益法人部主催 宗教法人実務者会議 物品販売に導入 トラブル減少 政府は将来的に80%目標
野村證券の塚嵜氏(左端)をモデレーターに3法人財務担当者で行われたパネル討論 野村證券㈱金融公共公益法人部主催の第2回宗教法人財務運用実務者会議が7月18日、東京・大手町の野村證券会議室で開かれた。各宗教法人から70人余りが参加し、宗教法人のキャッシュレス決済や宗教法人の資産運用について情報共有をはかった。外国人参詣者の多い観光寺社では物品販売を中心にキャッシュレス化がじわり浸透。一部の本山ではお賽銭に導入した事例もあるが、まだ手探りの状態のようだ。
パネルディスカッション「宗教法人におけるキャッシュレス決済対応の現状と課題」には3法人の担当者が登壇。モデレーターの野村證券の塚嵜智志氏が趣旨説明を行い、「政府は総決済の80%以上をキャッシュレスにしたいとしている。2024年時点でキャッシュレス決済比率は42・8%。その中で宗教界はこれをどう考えるのか」と提起した。
奈良・春日大社権禰宜の岩城隆宏財務部長は、「宗教とは切り離されたところに限って導入している」と述べ、2年ほど前から宝物殿と植物園の券売機、茶店に導入。「釣り銭が不要で計算間違いがなくなった。もちろん現金での対応も出来るようレジも設置している」と報告した。
京都・清水寺の森清顕執事(北法相宗宗務長)は所属する京都仏教会の2回(2019年6月、昨年6月)にわたる声明の意図を説明し、キャッシュレスには「情報と手数料の二つの問題がある」と指摘。情報問題とは、憲法で保障されている信教の自由には「信仰秘匿の自由」も含まれ、「キャッシュレスによって第三者が知ることになる」と警戒した。
手数料問題は、国税庁の見解ではクレジット払いの手数料に課税される可能性があった。しかし、「令和6年のガイドブックでクレジット(キャッシュレス)は非課税ですという一文が入った」と解説。宗教行為である拝観に対する料金は非課税であるべきで、その手数料が非課税だとした国税庁見解を重視したのが2回目の声明だった。
森氏は清水寺について「段階的に納経所横の物品販売のところから始めた」と述べ、本堂拝観や御朱印には導入せず、現金としているとした。(続きは紙面でご覧ください)
7月
2025/7/28
住職が語る『敵も味方もなく尊い命』刊行 墜落B29搭乗兵を弔う
戦後80年、住職が地域の戦争の記憶を語った証言記録『敵も味方もなく尊い命~米兵を弔い住民を救った僧侶』(A5判・20頁・価300円・日本機関紙出版センター)が、このほど刊行された。
終戦直前の昭和20年(1945)6月5日、米軍のB29爆撃機が京都府南部・木津川の河川敷に墜落。10人近い搭乗兵の半数以上が死亡した。現場に近い浄土宗深廣寺(城陽市)の住職がいち早く駆け付け、「憎らしい兵隊かもしれないが、人は死んだら敵も味方もない」と敵国への怒りや憎しみで興奮している住民を必死になだめていたー。
当時10歳の竹田正信・同寺前住職が目の当たりにした惨状や、「仕返しをしてはいけない」という法然上人の教えで米兵の位牌「B29搭乗五勇士英霊」を「軍に黙って」作り弔っていた父の姿、戦争がもたらす過酷な現実を証言。「寺(仏教)はどんな時も決して人に死ねとは言わない」という師父の言葉を振り返った。
戦後、占領軍が墜落事件と搭乗兵の行方を捜査。深廣寺の本堂で軍事裁判が開かれたが、日本語と英語で書かれた米兵の位牌があったおかげで、1人も捕虜虐待の罪に問われなかったという。住民たちを救った位牌は今、死亡した米兵の関係者も手を合わせる怨親平等と平和の絆になっている。
編集は原爆被害者相談員の会の黒岩晴子氏(佛教大学元教授)。綴喜京田辺戦争展実行委員会の北村武弘氏が協力、遊友画会の西村公一氏が挿絵を添えた。黒岩氏は、「世界の平和をめぐる情勢はますます厳しくなっています。戦争体験者の方々の後世への伝言をしっかり受けとめたいと思います」と述懐。竹田前住職は、「世界のどこの国の人々も子どもたちも、皆が平和で安全に生きていくことができるよう願います。ウクライナやガザでの戦闘の終結を祈って!」とのメッセージを寄せている。
2025/7/25
第47回全日本仏教徒会議大阪大会に向けて 『無量のいのち』空襲から平和を考える 戦争はしてもさせてもいけない
空襲の激しさを伝える竹林寺の「焼け地蔵」 日本中の仏教徒が集い、釈尊の教えを鑽仰して仏国土建設を目指す全日本仏教徒会議。第47回となる今年は全日本仏教会(全日仏)と大阪府佛教会(府佛)の共催により、9月5・6日の両日に大阪市のホテル日航で開催される。テーマ「無量の『いのち』―すべてのいのちを慈しむ」には真実のいのちの平等性を仏教から考える意味を込めている。もちろん慈・悲・喜・捨の四無量心が背景にある。
会議初日には、伊藤唯眞・全日仏会長(浄土門主)を大導師とし、戦後80年の全世界物故者追悼慰霊・世界平和祈願法要が営まれる。伊藤会長は滋賀県出身の94歳。学徒動員で働いていた兵器工場が滋賀空襲で壊滅した体験を持ち、平和を願う気持ちは強い。「必要なのは、いのちを尊重するという人間の基本に立ち返ること」だと、かつて浄土宗平和協会30周年大会で語っている。
村山廣甫・府佛会長(全日仏副会長/豊中市曹洞宗東光院住職)は81歳で、大阪空襲の体験者だ。天王寺区の吉祥寺に住んでいた赤ん坊の頃に母親の背中で、油脂焼夷弾が燃え上がり寺が焼けていくのを見たことを記憶している。昨年11月の大阪府佛教徒大会では「戦争はしてもいけない、させてもいけない。そのために宗教家ができることは祈りです」と呼びかけた。釈尊の「殺すなかれ、殺さしむるなかれ」(ダンマパダ)の教えは、全仏教徒共通のものだろう。
「焼け地蔵」が問う
こうした両会長の平和への強い願いもあり、仏教徒会議ではピースおおさかの協力を得て平和パネル展が開催される。戦争体験者の思いを、戦後世代、さらには平成・令和世代に伝えていく一助となるだろう。そのピースおおさかでは今年3月から7月13日まで、「大阪空襲」展が開かれていた。昭和20年(1945)3月から8月にかけ8回の大空襲で、およそ1万5千人が死亡。人間だけでなく建造物被害も甚大で、同展でもいくつかの寺院について解説されていた。
そのうちの一つが、二上寛弘・府佛事務局長の自坊である高野山真言宗釈迦院(港区)。元は難波津にあったが6月1日の第2次空襲で全焼しており、昭和27年(1952)に現在地に移転した。いわば存在そのものが戦争を伝えるお寺だ。
浄土宗竹林寺(西区)も空襲展で解説されていた寺院。墓地にある「焼け地蔵」は煤で真っ黒な痛々しい肌をしており、空襲の激しさを如実に伝える。手に持っていたはずの錫杖は鉄製だったため、溶けてなくなったという。「戦争の頃はお寺に防空壕を掘っていたそうです。それでも境内は全部焼けてしまって、阿弥陀さま(本尊)だけはなんとか守ったと伝わっています」と寺族の保阪濱子さんは話す。
大阪の寺院にこうしたエピソードは事欠かない。仏教徒会議で展示を見た人が体験や、復興の道のりなどを語り合う場面もあるかもしれない。(続きは紙面でご覧ください)
2025/7/25
ヒロシマ・ナガサキを繰り返すな! 日本山妙法寺 平和行進を開始
展示された第五福竜丸の隣で行われた出発式 日本山妙法寺は12日、核兵器廃絶・世界平和を祈念して広島・長崎へと歩む平和行進を開始した。原爆が投下された8月6日に広島、同9日に長崎で平和祈念法要を行う。東京都江東区の都立第五福竜丸展示館での出発式では約30人が集い、平和への思いを新たにした。
出発式で同寺の武田隆雄氏は「南無妙法蓮華経を唱えて平和行進を務めることは、日本山妙法寺のお師匠さまの誓願であり、私たち一人ひとりの誓願です」と述べ、「広島長崎で無残に亡くなられた方々を思い起こして少しでも祈っていただきたい」と話した。
同館を管理する(公財)第五福竜丸平和協会の市田真理事務局長は「広島・長崎、ビキニ事件は過去のことではなく、今現在の私たちの命に直結する話です。私もここで解説をしながら、共に学ぶ毎日です。皆さんの非暴力の戦いが私たちにもつながっていると確信しています。安全に行って来てください」と激励した。
当日は、米国NPO「Manabi Alliance」の体験学習に参加するワシントン州公立学校の教員7人が米国によるビキニ環礁の水爆実験で被ばくした第五福竜丸が保存されている同館を訪問。非暴力の平和への取り組みを見学したいと出発式に参加した。
ワシントン州は長崎・広島に投下された原爆やB29爆撃機が製造された州で、参加した教員の中にはこれから酷暑の中で行進する僧侶らを見て涙を浮かべる人もいた。
平和行進は、1958年から毎年実施。団扇太鼓を持ち撃鼓唱題しながら東京から岡山、広島、長崎までの道程を歩く。参加者は「ヒロシマ・ナガサキを繰り返すな!」と書かれた横断幕を手に出発し、平和を願う旅路の一歩を踏み出した。
2025/7/25
天台宗一隅運動 新会長に杉谷義純門主 利他の精神で学びながら活動
『生命(いのち)・奉仕・共生』を実践三つの柱とする天台宗の一隅を照らす運動。一人ひとりが「自身の置かれた環境で全力を尽くす」社会啓発運動であることから、「ポストにベスト」とも言われる。その理事会が9日、滋賀県大津市の天台宗務庁で開かれ、第12代会長に杉谷義純氏(妙法院門跡門主)が選任された。任期は同日から4年間。杉谷新会長(82)は就任会見で、「利他の精神が一番大事。新たな社会問題が次々と起こる現代、我々は学びながら活動していかないといけない」と表明した。
杉谷会長は、一隅を照らす運動が発足した昭和44年(1969)から現代までを概観。「発足当初は高度経済成長で物質的に豊かになった反面、物を粗末にするような時代になりつつあった。〝物で栄えて心で滅ぶ〟、そんな日本になってはいけないという危機感があった。現代は非常に閉塞感がある。〝自分の居場所がない〟など、生きづらさを感じている人が多い時代だ」と述べた。
この〝生きづらさ〟は、どこから来るのか。「居場所がなくなるとは、他者との心の交流ができていない状態のこと。社会との繋がりの断絶だけでなく、家庭内でも起こっている」と指摘し、「一隅を照らす運動は、利他の実践そのもの。(〝生きづらさ〟を解消するには)お互いに利他の精神で生きていかないといけない」と明示した。(続きは紙面をご覧ください)
2025/7/25
大本山總持寺 み霊祭りに7万人超 6年ぶりに花火が復活
やぐらに上った修行僧の掛け声で盛り上がった盆踊り 横浜市鶴見区の曹洞宗大本山總持寺で18~20日、恒例の「み霊祭り」が行われた。6年ぶりに打ち上げ花火が復活し、夜空を彩った。3日間に訪れた住民ら計7万人超が修行僧とともに盆踊りなどを楽しんだ。
み霊祭りは戦後の1947年に住民らを勇気づけようと始まり、横浜大空襲(1945年)や旧国鉄鶴見事故(1963年)の犠牲者の慰霊も続けている。今年で75回目。境内には多くの露店が並び、浴衣姿の家族連れら住民たちが夏の夜を過ごす憩いの場にもなっている。
コロナ禍の中断を経て、今年は6年ぶりに花火が復活した。最終日の20日に、大祖堂裏から打ち上げられた花火が色鮮やかに境内を照らし出した。中日の19日には渡辺啓司監院を導師に万灯供養と施食の法要があわせて執り行われ、向唐門へ続く参道は行灯の明かりに包まれた。
3日間を通して大駐車場では盆踊りが行われた。み霊祭りは總持寺の修行僧でつくる「三松会」が運営し、やぐらの上でマイクを握るのも修行僧。盛り上げ上手な僧侶の掛け声で、参拝者たちは總持寺の盆踊りではお馴染みの「一休さん」や「ひょっこりひょうたん島」の曲にあわせて踊った。
2025/7/22
〝二世の声、残さないと大変なことに〟 瓜生氏、統一教会問題考えて
二世信者と対話を重ねた瓜生氏 真宗大谷派僧侶でカルト対策に取り組む瓜生崇氏が『統一教会・現役二世信者たちの声』を法藏館から出版した。瓜生氏は6月27日、京都市下京区の法藏館でトークイベントを行った。
霊感商法など長年の所業を問題視する瓜生氏だが、「安倍首相銃撃事件は統一教会がやったわけではない、山上徹也さんがやったこと」だと確認。銃撃事件以後にインターネットで流れる統一教会論は「ほとんどヘイト」だと思ったという。
カルトからの脱会支援やを続けてきた瓜生氏は、カルトの信者一人ひとりは普通の人間だとした上で、統一教会に対するメディアの報道・評論は、「中の人たちの顔が見えていないのではないか」と指摘。信者の全員がマインドコントロールされて騙されている被害者だとする見方は行き過ぎだと懸念を示した。
そうした考えを一昨年、毎日新聞に発表したところ、二世信者からアプローチがあった。「無視するわけにもいかない」ので自坊の玄照寺(滋賀県)で面会。「めっちゃ明るい」と驚いたというが、話は盛り上がり「こういう人たちの自然な声をどこかで残さないと大変なことになる」と思ったことが、出版につながった。「お前たちはカルトだから悪い連中で、脱会するのは正義だ、という態度で相手が脱会することは100%あり得ない」とし、カルトの信仰に入った理由を知り対話することが必要だとした。(続きは紙面をご覧ください)
2025/7/22
日本仏教看護・ビハーラ学会 第21回大会「山谷まちあるきツアー」実施
高齢化進む路上生活者たち 墓友意識が生む連帯感 ケアの歴史と文化に触れる
光照院境内の「あさくさ山谷光潤観音菩薩像」を安置するお堂。墓友の参拝が絶えない 日本仏教看護・ビハーラ学会(今井洋介会長)の第21回大会は6月28・29の両日、東京・下町の南千住回向院(荒川区)と浅草寺(台東区)を会場に行われた。初日午前には、エクスカーション(体験型見学会)「山谷まちあるきツアー」が企画され、30人超が3コースに分かれ、高度経済成長を影で支えた日雇い労働者たちが居住する山谷・浅草の「地域ケア」を学んだ。この地域で炊き出しや夜回り支縁を行っているひとさじの会(社会慈業委員会)が協力。
江戸時代、小塚原処刑場だった地に建つ回向院。境内には吉田松陰や幕末の志士たちが眠るお墓が林立。なぜかプロレス界で名を馳せたカール・ゴッチのお墓まである。
隣接する延命寺も刑死者を弔う浄土宗のお寺だが、同寺には首切り地蔵尊と「南無妙法蓮華経」と刻まれた題目塔が建つ。題目塔は元禄11年(1698)に寄進され、宗派を超えた信仰がうかがわれる。
泪橋交差点を渡ると台東区に入る。簡易宿泊所が並ぶ、いわゆるドヤ街。山谷と呼ばれる地域である。一日2100~2200円ほどで宿泊できる。NPO法人「ふるさとの会」が運営するホテル三晃は日常生活支援住居施設で、一人暮らしが困難な高齢者や障がい者などを受け入れている。
ふるさとの会は台東区、荒川区、墨田区、新宿区に全26カ所の事業所を持ち、就労支援から訪問介護、給食サービスにいたるまで多岐にわたる活動を展開している。
その先には無料診療所を運営するNPO法人「山友会」、ホスピスケア施設のNPO法人「きぼうのいえ」がある。30度を超える真夏日にもかかわらず、山友会前のベンチには利用者たちが談笑中だった。きぼうのいえはキリスト教系ではあるが、礼拝堂ではキリスト教と仏教の祈りが捧げられている。
さらに進むとひとさじの会の拠点(事務局)、浄土宗光照院(吉水裕光住職)がある。副住職の吉水岳彦氏は同会事務局長で、今回のエクスカーション企画に携わった。チベット風の五色の仏旗が荘厳され来訪者を迎え入れた。墓地の一画に「あさくさ山谷光潤観音菩薩像」を安置した施設がある。“慈愛の光で心を潤わせ、共にやわらかく生きていることを願い”、そう名付けられた。
特徴的なのは観音像の胸にキリスト教のシンボルであるロザリオと仏教を示す菩提樹の実が飾られていることだ。同時にここは自死者や路上生活者支援団体に縁のあった人たちも納骨されている。超宗教の祈りの場であり、墓友として残された者が先人を偲ぶ場でもある。(記事全文は紙面をご覧ください)
2025/7/17
大谷専修学院問題 教職員5氏、京都地裁に提訴 現場復帰求める「真心の闘いになる」
真宗大谷派が運営する教師養成機関・大谷専修学院(全寮制・1年間/京都市山科区)での「不当な人事異動」をめぐって、男性教職員2人が宗派を訴えた地位保全仮処分命令申立事件。京都地裁が3月27日に配置転換命令と自宅待機命令を「人事権の濫用」「違法無効」とする決定を出したが、宗派側は不服申立を行う姿勢を見せて従っていない。そのため同じく配転命令を受けた3人が新たに加わり、教職員男女5氏(30~40代)が原告となって、専修学院への現場復帰を求める本裁判を10日に提起した。
同日、訴状提出後に京都地裁内で原告4氏と代理人の塩見卓也・諸富健両弁護士が会見。弁護士が、「大谷派は仮処分決定の後も4月1日付の2氏への配転命令を保留したまま自宅待機命令を継続し、3氏には不当な配転を行っている」と現状を説明。「配転・人事異動、自宅待機命令が違法であることの確認と共に、慰謝料の請求を求めて提訴した」と述べた。(続きは紙面をご覧ください)
2025/7/17
智山派総本山智積院 吉田化主が初登嶺 仏教が世界平和の力に
入退山の時のみ開く総門から入山した吉田化主 京都市東山区の真言宗智山派総本山智積院で8日、吉田宏晢(こうせき)第73世化主(同派管長)の初登嶺(入山式)が営まれた。吉田化主(90)は諸堂参拝後の講堂での就任式で、「弘法大師と興教大師、釈尊の教えが世界の人々を救う大きな力になる。これでなければ世界は平和にならない」と力強く垂示を述べた。
吉田化主は午前9時、宗内要職者や自坊宥勝寺(埼玉県本庄市)の法類寺院住職、埼玉第九教区住職、智積院関係者、自坊役員ら約150人の出迎えを受けて化主の交代時のみ開かれる総門から入山。智積院の三神栄法寺務長(同派宗務総長)と大本山成田山新勝寺の岸田照泰貫首から花束を受け取り、境内を進んだ。金堂をはじめ明王殿、大師堂、密厳堂など諸堂を参拝。弘法大師・興教大師・歴代先師に初登嶺を奉告した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/7/17
全一仏教運動 戦中から戦後へ ある造語の変遷<上・戦中編> 国策 宗教統制協力への意味が 大竹晋(仏典翻訳家・宗教評論家)
全一仏教運動とは全日本仏教会定款に出る語で戦後伝統仏教復興のキーワードである。ただし、この語は支那事変(日中戦争)以降の戦中に宗門にこだわらない自由仏教人によって使用され、戦後に彼らによって再利用されたものであった。
椎尾弁匡
(1876―1971)
昭和13年(1938)1月9日、椎尾は支那事変視察に飛び(『教学新聞』昭和13年1月11日3面)、24日、帰国し(同紙1月22日2面)、29日、銀座スエヒロで「北支の現状を聴く会」を開いた(同紙2月1日1面)。その時、彼は新支那仏教工作すなわち仏教による対中宣撫工作の方途として仏教全一運動を語った。
「仏教全一運動といふことが云はれる。誰いふとなき時代精神の叫びである。私が之を始めて聞いたのは、椎尾博士が事変震央地への使から還つて、新支那仏教工作の方途を語られた際の用語であつた必ずしも彼博士の造語とも考へぬこう云ふ時代指導のスローガンは誰が云ふた彼がいふたといふ穿鑿立ては無用である」(浜田本悠「全一仏教運動の立場(一)」、同紙2月26日1面。続きは同紙2月27日、3月1日、2日、4日、5日、6日各1面)
浜田本悠
(1891―1971)
昭和14年(1939)、浜田は自由仏教人の宗教的雰囲気を全一仏教と呼んだ。彼は全一仏教を国策である宗教統制に呼応させて語った。
「そこでこう云ふ、幾分かづゝ宗門からの脱走者と云ふか、そう云ふ者の間に、知らず知らず連絡が取られ、一つの紐帯が出来て来る。こうした団体に、心ある宗門人も加はつて吾が日本社会に一沫の宗教的雰囲気を醸し出して居るのが、全一仏教とも称せらるゝ者である」(浜田本悠「全一仏教と各派仏教――心ある宗門人に寄す――」、『仏教思想』昭和14年10月号25頁)
「国家の有機的統一が高度化すればする程、雑多の宗教思想は統制せられやうとする。その時代精神の波に乗つて渡つて来た達磨が即ち吾々の時代の全一仏教である」(同26頁)(続きは紙面でご覧ください)
2025/7/17
七月一日「花岡事件」80年
大館・信正寺で慰霊祭 元華人労工の娘も参加 事件発生「6月30日」説は誤り
報告=金子博文(七月一日「花岡事件」慰霊供養の集い実行委員会)
信正寺本堂の裏側にある中国人殉難者供養塔前で記念撮影 さる7月1日と2日、秋田県大館市花岡町にある曹洞宗信正寺で、19人が参加して慰霊祭が行われた。「七月一日『花岡事件』慰霊供養の集い実行委員会」(代表・石飛仁)が主宰し、信正寺の蔦谷家住職三代目の蔦谷達徳師の協力を得て実施した。
慰霊祭には40年近く石飛仁との交流がある張兆梅と妹の張兆蓮が初めて参加。姉妹は鹿島組花岡出張所に「華人労工」として連行された張肇国の娘である。また、中国等との友好親善をすすめる(一社)国際善隣協会の井出亜夫会長、花岡事件裁判和解の偽りの実情をともに明らかにしてきた上海交通大学の石田隆至副研究員や明治学院大学の張宏波(チャンホンボ)教授も参加した。
戦時中、大日本帝国は英米との総力戦遂行に必要な物資が極めて不足。戦況の激化・拡大とともに軍事物資を生産する労働力が払底。その穴埋めとして政府は閣議決定により中国人(「華人労工」)を日本全国35企業の135事業所に移入した。その一つ鹿島組(現・鹿島建設)花岡出張所の飯場「中山寮」の中国人約800人が飢えや虐待や苛酷な労働に耐えかねて蜂起したのが「花岡事件」である。
蜂起の鎮圧過程で推定約80人が死亡。花岡出張所に送り込まれた中国人986人のうち、戦後中国に帰国するまでに419人が亡くなっている。この中国人死者を慰霊供養するため1997年に始めたのが、7月1日の慰霊祭である。
今年は1945年に起きた「花岡事件」から80年。1997年の第1回以後、毎年7月1日に行い、途中コロナ感染拡大による中止を余儀なくされたが、今年で25回目となった。
この慰霊祭はなぜ「七月一日」なのか。
それは「花岡事件」の発生日として戦後言い伝えられてきた6月30日は間違いで7月1日が正しいと判明したからだ。
記録作家の石飛仁が長年にわたり「花岡事件」の調査研究の結果、確定した〝事実〟だった。それは埋没・秘匿されていた一級資料を入手し、事件関係者を訪ね歩いて探し出し、直接証言を記録するという地を這うような努力の成果なのだ。(続きは紙面でご覧ください)
2025/7/15
都の火葬料高騰問題
公営火葬場設立求めて 東葬協が区議会に要請
6月23日に行われた東京都仏教連合会の総会・研修会で、都内の火葬場を運営する㈱東京博善の高額な火葬料問題が取り上げられた。昨年に続いて東京都葬祭業協同組合(東葬協)の濵名雅一理事(㈱オリハラ=墨田区)が報告した。
公共性が高い火葬事業は基本的に自治体が火葬場を運営し、一般的に住民は無料か1~2万円程度で火葬できる。しかし東京博善が運営する23区内にある6カ所の火葬場では値上がりが続き、現在は9万円まで上昇。先日の東京都議選の前には産経新聞でも高騰する火葬料の問題が取り上げられた。
濵名氏は都議会や各区議会を回って公営火葬場を設立するよう働きかけているとし、「特に区議会の半分位には理解いただき、議会で論議を交わしてもらっている。火葬場を作るにはどうしたらいいか真剣に考えるところまで来ている区もある。最終的に不利益を被るのは区民、都民。党派を超えて取り上げていただいている」と進捗状況を話した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/7/10
インド最高裁 7月29日最終審理 提訴から13年、ブッダガヤ大菩提寺管理権を仏教徒の手に 原告は佐々井秀嶺師 南天会、全日仏に申入書提出
南天会の佐伯氏(右)から全日仏の富岡国際部長に申入書が手渡された ブッダ成道の聖地であるインド・ブッダガヤ大菩提寺の管理権返還を求めてインド国籍の佐々木秀嶺師がインド最高裁に提訴しているが、今年5月、インド最高裁が7月29日を最終審理日とし、延期はしないと通告。これを受け6月30日、佐々井師を支援する南天会や在日インド人仏教徒らが東京・芝の増上寺会議室で集会を開くと共に、申入書を全日本仏教会(全日仏)に提出した。
集会では、南天会事務局の佐伯隆快氏(真言宗醍醐派僧侶)が佐々井師の運動と連動した裁判の概要を報告した。1949年施行のブッダガヤ寺院法は管理委員会9名の内、インド国籍のヒンドゥー教徒と仏教徒は各4名だが、管理委委員長となるガヤ地区長官はヒンドゥー教徒と規定され、実質的にはヒンドゥー教徒が優位となっている。
佐伯氏は「インド憲法を起草したアンベードカル博士が1956年、ナグプールで仏教に改宗し、それからインド仏教徒は増え続けている。そのインド憲法には、憲法制定以前の法律を審査する違憲審査制がある。ブッダガヤ寺院法は1949年の法律であり、インド憲法に反するのではないかと訴えている」と述べ、裁判の根源にアンベートカルの精神があると解説した。
佐々井師は1992年からブッダガヤ大菩提寺の返還運動を開始。2012年にはブッダガヤ寺院法の無効をインド最高裁に提訴。南天会は日本国内で裁判費用を集め送金してバックアップ。2018年には全日仏に最初の申入れをしたものの、進展はなかった。
7月29日がインド最高裁の最終審理日だが、佐伯氏は「この日すぐ判決が出るのか、別の日に出るかわからないが、良い状況にあると思っている」と手応えを語った。(続きは紙面でご覧ください)
2025/7/10
WCRP円卓会議 行動・平和構築・生命尊重・赦し― 東京平和プロセス推進
円卓会議に参加した宗教者ら(1日) 世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会、同日本委員会、国連文明の同盟(UNAOC)三者による第3回東京平和円卓会議は紛争地域のロシアとウクライナ、ミャンマーをはじめインドやトルコなど12カ国から約120人が参加(オンライン含む)し、1日から3日まで都内のホテルで開催された。中東情勢の急激な悪化によりイスラエルとパレスチナの宗教者は参加できなかったが、宗教者の行動を強く促す「東京平和プロセス」の推進を確認し合った。
ロシアによるウクライナ侵攻から7カ月後の2022年9月に紛争当事国の宗教指導者が東京に参集し、1回目の円卓会議が開かれた。2回目はハマスがイスラエルを攻撃し双方の応酬から4カ月後の2024年2月に開かれ、イスラエルとパレスチナの宗教指導者も出席した。
今回は、「戦争を超え、和解へ」をテーマに「ロシア・ウクライナ」「イスラエル・パレスチナ」「ミャンマー」の3紛争地域に絞って準備を進めてきたが、直前にイスラエルとイランの紛争が勃発した。そうした中で迎えた円卓会議の開会式で、日本委の杉谷義純会長(天台宗)は暴力が増大し、多くのいのちが犠牲になっている世界情勢を憂いながら「このような悲劇を一刻も早く止め、人々が平和と安心のうちに生きていく世界の実現を目指すのが、この東京平和円卓会議の目的である」と明言した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/7/10
日蓮宗 沖縄と広島で終戦80年法要
炎天下の中、祈りの題目を唱えて行脚する青年僧 日蓮宗では、終戦80年の節目の今年、各地で戦没者を追善供養する法要を営んでいる。6月5日、東京都大田区の大本山池上本門寺(貫首=菅野日彰管長)で宗門法要を執り行ったのを皮切りに、沖縄(23日)と広島(30日)で戦争犠牲者の慰霊と平和への祈りを込めた法要が厳修された。
沖縄戦の犠牲者を悼む「沖縄慰霊の日」の6月23日、沖縄県那覇市の日蓮宗琉球山法華経寺(伊東政浩住職)で田中恵紳宗務総長を導師に立正平和祈念法要が営まれた。約150人の青年僧による慰霊行脚も行われた。法要や行脚に日蓮宗だけでなく全日本仏教青年会(全日仏青)や世界仏教徒青年連盟(WFBY)も加わり、沖縄から宗派を超え、世界の仏教徒と連帯して慰霊と平和の祈りを発信する機会となった。
被爆証言者として講演した廣中氏 広島県広島市の本山國前寺(疋田英親貫首)で6月30日、広島県宗務所(鹿内要秀所長)管内の寺院・檀信徒でつくる護法会の広島原爆死没者追善供養並立正安国世界平和祈願法要が厳修され、270人が参列した。法要後は導師を務めた田中総長らが檀信徒と共に平和記念公園で原爆死没者慰霊碑に献花、供養塔で焼香した。
法要に先立ち、東京での宗門法要でも講演した福山市妙法寺の総代でNPT(核拡散防止条約)再検討会議派遣団の一員を務めた廣中正樹氏(86)が被爆体験を話した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/7/10
能登・大本山總持寺祖院 高円宮妃久子さまが参拝 お手植えの木が復興の希望に
鋤を手に渡辺監院とともに植樹された久子さまと承子さま 高円宮妃久子さまと長女承子さまが1日、能登半島地震被災地の石川県輪島市と七尾市を訪問され、被害を受けた曹洞宗大本山總持寺祖院(輪島市)も参拝された。境内では「ヤマボウシ」をお手植えされ、復興の希望となるよう願いが込められた。
昨年の太祖瑩山禅師700回大遠忌の際に大本山總持寺(横浜市鶴見区)に参拝されたのに続いて、祖院に足を運ばれた。
門前町の住民たちが久子さまを出迎えた。植樹されたのは山門をくぐってすぐの放生池のほとり。大本山總持寺の渡辺啓司監院とともに久子さまと承子さまが鋤を手に土をかけられた。焼香された大祖堂へ向かう参道では、被災を気に掛けられ被害や復興の状況について聞かれたという。
渡辺監院は「大きな被害を受けた開山の地をお見舞いくださり、大変ありがたいことです。門前の人たちにとっても励みになったと思います。お手植えの木が復興の希望となるよう願っています」と話した。植樹には花を咲かせる木が選ばれた。
祖院は2007年の能登半島地震で被災。14年かけて復興を遂げたが、昨年の地震でも建物41棟すべてに被害が及んだ。昨年末に国登録有形文化財の大祖堂や仏殿、山門、回廊、経蔵など16棟が重要文化財に指定され、復興に弾みがついた。
現在、2034年春の工事完了を見込む復興計画を進めている。4月には通常拝観を始め、修行僧の受け入れ再開も目指している。
2025/7/7
提言 今こそ考えるべき 介護事業とお寺の親和性 上田二郎・税理士兼僧侶(元マルサ)
葬儀の省略化が止まらない。筆者は通夜の省略化は必ず葬儀の衰退を招くと警鐘を鳴らしてきたが、もはや都内の斎場では通夜がない葬儀プランが主流になり、いよいよ寺院は消滅の危機にあるように思える。
税理士である筆者の目線からすると、観光や祈祷で潤う一部の大寺院以外の檀家寺に明るい展望は見えない。それでも檀家がある限り、そう簡単に廃寺にする訳にもいかず、次世代に継承させることもできずに頭を抱えている住職も多いのではないだろうか。
宿坊経営やホテルと一体化した本堂の建立などは、立地条件が良い極めて限られた寺院にしかできない。副業で寺院を支えるなどとは簡単に言えるが、サラリーマンになってもいつ葬儀が入るか分からず、自由に休暇を取れるような会社があるのか。リモートワークの副業で稼ごうにも、仏教系の大学卒の僧侶にそのスキルがあるのか。
そもそも副業で伽藍を維持するのは不可能で、檀家離れが進む現状に本堂の修繕費などの勧募金は期待できず、多くが伽藍の朽廃とともに消滅していく運命なのだろう。
日々悩みながら筆者が考えた寺院の生き残り策の一つは介護施設の運営だ。すでに実践している寺院もあるが、大きな寺院が中心になって介護施設を運営し、近隣寺院の後継者などを雇用すれば若手僧侶も利用者と日常的に接することができ、ホスピタリティーなど僧侶としてのスキルを活かすことができる。
そうは言っても介護施設の運営は簡単ではない。地域によって通所介護型と訪問介護型のどちらが良いのかなど、マーケティングを怠れば倒産する。(続きは紙面をご覧ください)
2025/7/3
曹洞宗宗議会 再開発でコンサルと契約 費用に補正予算5千万円 倫理規程案は継続審査
演説する服部総長 曹洞宗の第147回通常宗議会(小林孝道議長)が6月23~27の5日間、東京・芝の檀信徒会館で開かれた。東京グランドホテルの跡地再開発で、服部秀世宗務総長はプロジェクトマネジメントを担当する企業インデックスコンサルティング(東京・虎ノ門)と業務委託契約を結んだと発表した。契約の費用として5千万円の補正予算を組んだ。
東京グランドホテルは老朽化や業績不振により2027年3月末をめどに閉業する方針で、宗務庁分館など周辺の土地を含め所有不動産の再開発計画を進めている。
服部総長は、インデックス社は内局が推薦した3社の中から選ばれ、6月の責任役員会で契約が承認されたと説明。「曹洞宗所有不動産再開発推進委員会」の委員に加わり、同月に最初の意見交換を行った。契約の費用として、同委員会の予算を5千万円増額する補正予算案が提出された。
服部総長は今後について「ホテル事業の廃業時期を含め、適宜修正を加えることも視野に入れ、再開発を推進していきたい」と話した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/7/3
東京都仏教連合会総会 新会長に増上寺の小澤法主 防災協定の報告も
挨拶する小澤会長 東京都仏教連合会は6月23日に浅草ビューホテル(台東区)で総会を開催。令和7年度から新会長に小澤憲珠・浄土宗大本山増上寺法主が推戴されたことが報告された。任期は2年間。休止状態だった荒川区仏教会の再発足も報告された。
総会に出席した小澤会長は自坊の極楽寺が八王子市にあり、前々会長の山田一眞氏(高野山真言宗金剛院)と「親しくお付き合いをさせていただいた」と述べ、「会長の責務をお引き受けすることになったが、皆さま方のお導きをいただきながらお務めしたい」と抱負を述べた。
総会では令和6年度の事業・決算報告等を承認。令和7年度の事業計画・予算報告も承認された。
その他、島田昭博氏(本郷)が東京都と東京都宗教連盟(都宗連)が今年4月28日に結んだ防災協定締結について報告。防災力向上のための連携協力に関する防災協定で、宗教法人が災害時の一時滞在施設や避難所、緊急車両の駐車スペースなど、どういった支援ができるか情報提供を行い、今後詳細を決めていくと説明した。
2025/7/3
第42回韓日・日韓仏教文化交流大会 「持続可能な交流」目指す
釜山市・梵魚寺 2年後、第1回大会から半世紀 「因陀羅網」で共生和合
法要会場に向かう眞愚会長(右)と藤田会長 第42回韓日・日韓仏教文化交流大会が6月17日から20日まで、韓国・釜山の曹溪宗梵魚寺で開催された。2年後に交流50年を迎えることからテーマを「韓日・日韓仏教交流、新たな50年に向けて―持続可能な交流」とした。挨拶や学術講演会などでは過去を踏まえつつ未来を展望する発言が多数寄せられた。共同宣言では国交正常化60年にあたり、民間交流組織としての両国仏教の役割を再確認した。主催の韓日仏教文化交流協議会(眞愚会長・曹溪宗總務院長)から約120人、日韓仏教交流協議会(藤田隆乗会長・川崎大師平間寺貫首)から約40人が参加した。
中心的行事は18日。午前は梵魚寺大雄殿前で世界平和祈願法会が営まれた。両国挨拶では、眞愚会長は華厳経の「因陀羅網」を引き合いに、「韓日仏教交流の今後50年は、この因陀羅網の真理を悟り全てが共生と和合の道へ進んでいかなければならない」と述べた。一方、藤田会長は不穏な世界情勢を俯瞰した上で、「両国仏教界が未来を見据えた交流のあり方を模索し、現代社会を永く善導するべく意見を交わす好機」と今大会を位置付けた。
法要後、全日本仏教会の伊藤唯眞会長(浄土門主)の祝福メッセージを日谷照應理事長が代読。「世界平和に対する仏教の役割は大きいものがある」とし、両国仏教徒の活動に期待を込めた。(記事全文は紙面をご覧ください)
2025/7/3
念仏と笑い声でナムアミダブツ 巣鴨・眞性寺で百万遍大念珠供養
16㍍の大念珠を回して無病息災を念じた 〝おばあちゃんの原宿〟東京・巣鴨地蔵通り商店街の夏の風物詩、百萬遍大念珠供養が6月24日、江戸六地蔵尊の真言宗豊山派眞性寺(鳥居幸譽住職)で営まれた。参拝者が車座になり、鉦の音に合わせて「ナームアーミダーブツ」と大合唱し、直径16㍍に及ぶ大念珠を繰りながら無病息災を祈願した。
地蔵菩薩坐像前で法要を営んだ後に、大念珠が参拝者の前に運ばれた。鳥居住職が「「心配されていた雨の心配もなくなりました。皆さまのご祈願も叶うと思います」と挨拶。諸願成就を祈願し、鉦を打ち、お念仏を称え、これを合図に大念珠回しがスタート。上下に揺らしながら念珠を回し、ご利益があるという大念珠の白い大房が回ってくると、参拝者は不調のある身体の部位などに当てがって祈願。徐々にお念仏を唱和するボルテージが上がり、夏本番のような暑さのなか、汗をかきながら大念珠を回した。
大塚から来た60代の女性は巣鴨のお地蔵さんを縁に仲良くなった女性の誘いで初めて参加。近くに座った初対面の参拝者と笑い声をあげながらお念仏三昧。「すごく楽しかった」と笑顔で汗をぬぐっていた。
鳥居住職は「梅雨時期で、今日も雨が降っていましたが、いつも法要の時には晴れ間がでる。お地蔵様の霊験を実感します」と話した。百万遍大念珠供養は江戸後期に始まった伝統行事。コロナ禍では法要のみ行い、念珠回しは中止していたが2023年に再開された。

