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2023/11/23・30合併号
浄土宗 川中総長、無投票再選 開宗事業活かす布教等公約
演説する川中宗務総長 浄土宗は議員改選に伴う第131回臨時宗議会を16・17日、東山区の宗務庁に招集し、正副議長、宗務総長を選出した。総長候補者は現職の川中光敎氏のみで、無投票で当選。川中氏は4年前と同様「人々から必要とされる浄土宗」にすることを指針に掲げ、「先輩、同志、後輩の皆さんと出会うことが出来たから総長が務められた。これからも皆様のお力をお借りすることをお願い申し上げたい」と続投にあたり全議員の協力を求めた。
浄土宗の宗務総長は、議員に限らず宗内全教師に被選挙権があるが、立候補には議員15人の推薦が必要。16日午後4時までに立候補を届け出たのは川中氏のみだった。
宗制上、立候補者が一人の場合は信任投票も行われない。推薦人を代表して、茂木恵順議員が演説し、1期目の就任直後には「突然のコロナ禍に見舞われ歯痒い思いをしたかとも思います」としつつ、宗務行政を停滞させず、緊急事態規程の制定や清浄華院正常化などの実績を強調。開宗850年は川中総長が完遂してほしいと期待した。
その後、川中氏が受諾演説をした。5つの公約として①開宗850年事業の成果を活かした檀信徒だけでなく一般人への布教推進、②SNSや仮想空間なども開教エリアと捉え布教師の活躍を後押し、③多様性・機会の平等・社会的包摂を尊重した教師養成課程による教師数増加、④兼務・無住寺院対策と寺院へのサポート、⑤コンプライアンス遵守の徹底による社会からの信頼増加を挙げた。
総本山知恩院で伊藤唯眞浄土門主から認証を受けた後、16日夕方に記者会見が行われた。無投票当選には「今のところは私の4年間をお認めいただいたのでは」と安堵の色を見せた。旧統一教会をめぐる宗教界の情勢については「われわれ既成の宗派があぐらをかきすぎているのではないか」とし、伝統教団の僧侶が救いを求める人と対話できていなかったことに反省点があるとの認識を示した。
総長選挙に先立ち、全70議員による議長・副議長選挙が行われた。議長に宮林雄彦氏が53票で当選、副議長は大﨑順敬議員が50票で当選した。
2023/11/23・30合併号
全日仏 次期会長に伊藤唯眞氏 副会長、山川、佐藤、村山3氏
伊藤氏 (公財)全日本仏教会(全日仏)は13日に京都市のしんらん交流館で理事会を開催し、次期(第36期)の会長・副会長を推戴した。会長には伊藤唯眞浄土門主(総本山知恩院門跡)が就任する。浄土宗からの会長は第21期の中村康隆会長以来30年ぶりとなる。
副会長は山川龍舟氏(真言宗大覚寺派管長)、佐藤義尚氏(新潟県仏教会会長)、村山廣甫氏(大阪府佛教会会長)の3人が選ばれた。いずれも任期は2024年4月1日から2年間。2025年の大阪万博期間中に全日本仏教徒会議大阪大会が予定されている。里雄康意理事長は「大阪府佛教会で万博と関連した企画を考えていると聞いており、それが決まれば当会としても協力していく形になると思う」と語った。
会長・副会長の経歴は以下の通り。
伊藤唯眞会長=1931年3月生まれ。佛教大学教授・学長、大本山清浄華院法主などを歴任し2010年から浄土門主。仏教民俗学の権威であり、『伊藤唯眞著作集』(全4巻、法藏館)など著書多数。自坊は滋賀県湖南市の善隆寺。
山川龍舟副会長=1949年9月生まれ。大覚寺派宗会議員、財務部長、管財部長などを歴任後、2023年から管長ならびに大本山大覚寺門跡・嵯峨御流華道総司所総裁。自坊は広島県福山市の地蔵院。
佐藤義尚副会長=1965年10月生まれ。真言宗豊山派青少年教化委員、社会福祉法人芳香稚草園理事長、新潟県臓器移植ネットワーク理事長、栃尾仏教会会長などを歴任し、2021年から新潟県仏教会会長。子ども食堂などの活動にも取り組む。自坊は長岡市の寶光院。
村山廣甫副会長=1943年12月生まれ。世界仏教徒青年連盟人道奉仕常設委員会議長、国際宗教同志会会長、曹洞宗審事院院長などを歴任し2020年から大阪府佛教会会長。著書に『先祖をまつる』など。自坊は豊中市の萩の寺東光院。
2023/11/23・30合併号
草津温泉に五重塔落慶 豊山派光泉寺 地元の新たなシンボル
国内最高地点に建立された五重塔 草津温泉の湯畑を見渡す丘陵上にある古刹・真言宗豊山派光泉寺(群馬県吾妻郡草津町)で10日、令和3年11月に着工した五重塔の新築落慶法要が厳修された。日本屈指の名湯に信仰と癒しの新たなシンボルが誕生。法要を終えた鈴木賢慶(けんぎょう)住職は、「草津温泉に来た方々の安らぎになるような場所にしたい」と力強く語った。
午前10時半、本堂で法楽を捧げた僧侶約15人が慈雨に潤された境内を進列。関係者約40人と参拝者を前に、導師の鈴木住職が草津全体を守護するかのように温泉街に向かって角塔婆を加持した。
鈴木住職は、職衆が待つ五重塔内に入り着座。表白で行基菩薩の開山以来1300年以上にわたって信仰されてきた温泉薬師尊による「応病与楽の法薬」の功徳を奉読し、師父である先々代住職からの悲願であった五重宝塔の建立成満に感謝した。
鈴木住職の姉である熊坂浄恵(じょうけい)前住職が新たに作詞した「光泉寺五重宝塔御和讃」を奉唱。壮麗な唱声で塔内外を荘厳し、職衆の勇壮な読経が五重塔から湯畑へと轟いた。
日本の仏塔の様式美が完成した中世の形式による五重塔は、檜造21・4㍍、延べ面積30・5平方㍍。裳階(もこし)付きの優美な姿が、落ち着いた温泉街の風情と一体化した景観を作り出している。
温泉の硫黄成分が常に薫り、国内最高地点となる標高1180㍍に建立された木造五重塔ならではの工夫も随所に施した。朱色はフッ素樹脂塗料を用い、氷点下の積雪にも耐える屋根はこけら色のチタン葺きを採用。基礎は温泉への影響を考慮して地盤を深く掘り下げる杭打ちではなく、地下2㍍に耐圧版を設置した。
日没後にはライトアップも実施。近所で暮らす女性は、「湯畑から見上げた時に五重塔も目に入る。草津の新たな魅力としてステキな景色が加わった」と喜んでいた。
2023/11/23・30合併号
超宗派有志が靖国神社参拝 拝殿で戦没者慰霊法要営む
参道を進む10宗派の僧侶ら約30人 太平洋戦争などの戦没者を慰霊しようと、10宗派の僧侶ら約30人が15日、東京・九段北の靖国神社を合同参拝した。拝殿で執り行った法要で導師を務めた山田隆章・元融通念仏宗宗務総長(大阪府八尾市・法覚寺長老)は「戦争の犠牲者のおかげで今がある。その大切な世で苦しみを抱える人がいる。すべての人が幸せに暮らせる社会となるよう願いたい」と語った。
世界連邦日本仏教徒協議会と関西宗教懇話会の共催。戦後70年となる2015年から始め、今年で9回目。コロナ禍の間も継続してきたが、参加制限なく僧侶が参集するのは4年ぶり。この日は靖国神社への参拝に先立って、千鳥ヶ淵戦没者墓苑でも慰霊法要を営んだ。
第二鳥居を出発したお練りの列が神門、中門鳥居をくぐって参道を進み、拝殿に入殿した。僧侶たちは神職による修祓を受け法要を執行。山田氏は表白で、「今日の我が国の繁栄はひとえに国難に殉じられましたご英霊各位のご献身の賜物」と報謝の念を表した。法要後、一行は本殿に昇殿し、哀悼の誠を捧げた。
山口建史・靖国神社宮司は、祀られている246万6千余柱の神霊の各家では、ほとんどが仏教によって供養されているため、「僧侶の皆さんに法要をしていただき、お喜びのことと思う。神社としてもお礼申し上げたい」と話した。
2023/11/16
仏教情報センター設立40年 築地本願寺で記念大会 苦悩に寄り添う決意 新たに
超宗派の僧侶がそれぞれの作法で営んだ記念法要 超宗派の僧侶が電話で悩みを聞く「仏教情報センター」(東京・本郷)が今年で設立40年を迎え、東京都中央区の築地本願寺で7日、記念大会が開かれた。白川淳敬理事長(本願寺派)は「和やかな生活は仏教を中心とした暮らしの中にあると、これからも伝えていきたい」と人々の苦悩に寄り添う決意を新たにした。
記念大会のテーマは「聲のちから 祈りのちから」。全日本仏教会の尾井貴童事務総長や全日本仏教婦人連盟の花岡眞理子理事長ら駆け付けた僧侶や関係者100人余りが節目を祝した。
パネル討論があり、看護師でスピリチュアルケアに携わる玉置妙憂氏(高野山真言宗)のほか、いずれも相談員の関水俊道氏(曹洞宗)と平松敬子氏(大谷派)が登壇。成田善真氏(本願寺派)が司会を務めた。
玉置氏は、スピリチュアルペインは「実存の危機」と言い換えられ、「答えがないことが特徴で、聞くことしかできない」と説明した。苦しみを巡る物語が書き換えられない限り痛みは止まないと指摘し、繰り返し語るうちに物語は少しずつ改められることから、「私たちにできることは聞くこと。それが唯一のスピリチュアルケアの方法」と強調。「同じ話を何回もできる場所は社会にそうはない」と相談員の役割に期待を寄せた。
さらに、自殺しようとする人が最後まで携帯電話を手にしていることが少なくないとの調査を挙げ、「最後に誰かとつながりたいと思っているのではないか。電話は最後の砦となる」と電話相談の意義を語った。
相談員となって25年の関水氏は、東日本大震災後に心の悩みなどの人生相談が増加したことに言及。震災前には全相談件数の半数以下だったが、現在は6割を占めるという。コロナ禍や世界中で頻発する紛争の影響でも無常観を根底とするスピリチュアルペインを抱える人が多くなったと指摘。その苦しみに向き合ったのが釈尊であり、「私たち仏教者がケアにあたる意義がある」と語った。
心の悩みを専門に受ける大谷派の電話窓口「ココロダイアル」の相談員も務める平松氏は「相談の中で、分からないことは分からないと聞く姿勢も大切。それが語ってもらうことにつながる」と提案。また宗派の電話窓口では、苦しみの相談を受けた側にも負担がかかるため、相談員自身のケアも重視されていることを伝えた。
記念法要は、各派の作法を取り入れて執行。曹済両門の椅子坐禅に続いて法要が営まれ、浄土宗が五体投地しながら念仏し、真言宗と天台宗が十三仏真言を唱え、日蓮宗が木剣修法で祈祷し唱題した。
2023/11/16
横浜清風高等学校 創立100周年祝う 仏教教育の流れ さらに大きく
伝統をさらに発展させる決意を表明する植野校長 神奈川県内の真言宗寺院が共同で経営する㈻横浜清風学園・横浜清風高等学校(横浜市保土ヶ谷区)が、創立100周年を迎えた。記念祝賀会が7日にみなとみらいの横浜ロイヤルパークホテルで開かれ、約400人が出席。植野法稔学校長は謝辞の中で100周年記念オリジナルソングを活き活きと歌う全校生徒の姿を上映し、「この(智慧と慈悲を説く仏教教育の)流れをさらに大きくしていきたい」と話した。
開会に際し、吹奏楽部約40人がパワフルな歓迎演奏。優美な装束の生徒代表6人が華麗な散華の舞を披露した。
藤井義章学園理事長は開会の挨拶で関東大震災と同年となる大正12年(1923)の開校以来の歴史を振り返り、「決して順風満帆ではなかった」と述懐。幾多の苦難や難題を克服しながら学園を維持・継承してきた先人に感謝し、「学校が栄えるかどうかは人としての道を歩んでいるかどうか。(真言宗の教えに基づく)建学の精神を教職員一同が再確認して次の100年に向けて邁進いたす所存」と表明した。
高野山真言宗の長谷部真道管長が祝辞。100年前の関東大震災からその後の戦災を経て「どん底から這い上がってきた」同学園と日本社会の歩みに言及し、弘法大師御誕生1250年の正当年に創立100周年を迎えたことを寿いだ上で、「未来に向かって(生徒一人ひとりが)自分の個性とキャリアを見つけていける教育を」と同校の今後の展開にさらなる期待感を示した。
行政や教育の各分野を代表する来賓からも祝辞。同校の「時代の変化に対応した教育」や「子どもたちが主体的に判断し実践する力を育む教育」に加え、弘法大師の綜藝種智院の伝統を汲んだ「世界平和実現への力となる教育」を称賛する声が上がった。
㈻高野山学園理事長でもある今川泰伸宗務総長が乾杯の発声。同じ真言宗系学園として「六波羅蜜の実践を教育方針とする」同校の姿勢に深い共感を示した。
PTA役員の1人は、「この学校は先生方が熱心。保護者に子どもたちの様子を伝えてくれたり、家庭と学校で連携した教育をしてくれる」と感想。「安心して子どもを任せられる」と語った。
2023/11/16
インド政府が大谷大へ寄贈 ダゴール胸像を除幕 99年前に来学 鈴木大拙が通訳務める
除幕の瞬間。胸像右が大臣、左が一楽学長 アジア初のノーベル文学賞作家である詩人のラビンドラナート・タゴール(1861~1941)の胸像が9日、インド政府から京都市北区の大谷大学(一楽真学長)に寄贈された。来日中のヴェラムヴェリー・ムラリーダラン外務担当閣外大臣は多忙なスケジュールを縫って大谷大学を訪問し、除幕式にも立ち会った。
タゴールは1924年に3度目の来日を果たし、6月16日に大谷大学・龍谷大学・仏教連合会(全日本仏教会の前身)の招聘で京都岡崎公会堂で講演をしており、その際には当時大谷大学教授だった鈴木大拙が通訳を務めた(この日聴講した荻原井泉水の日記によると、演題は「東洋の文化と宗教」)。翌17日には大谷大学で教員らと会食し交流を深めている。
こういった縁と、近年結ばれた大谷大学とナーランダ大学等との学術交流が評価され、今回の胸像贈呈となった。
ムラリーダラン大臣は日本とインドの関係を8世紀の仏僧の交流以来の「運命的な絆」とし、近代ではタゴールと岡倉天心の2人が大きな土台を築いたと評価。「来年のタゴール京都訪問ならびに来学100周年を記念し、合同シンポジウムを大谷大学で開催させていただきたい」とサプライズな提案をした。
一楽学長は昨年、2022年に大学がインド政府から仏教学振興賞を受賞されたことなどにあらためて深く感謝。「学術研究にさらに邁進してまいりたい」と語った。また一楽学長から二河白道の図が大臣に贈られた。
胸像は像高約80㌢。インドで造立され、石膏に銅像風の色彩が施されている。展示場所は今後検討するという。
2023/11/16
大本開祖大祭 センター跡地取得に感謝 連日、中東紛争終結を祈願
大勢の信徒が平和を祈願。道院やキリスト教からも参列 大本(出口紅教主)は5日、出口なお開祖(1837~1918)の遺徳を偲び全人類の救済と世界の平和を祈る「大本開祖大祭」を京都府綾部市の聖地梅松苑で執行。あわせて五穀など様々な農作物の収穫に感謝する新穀感謝祭も営まれた。約1600人の信徒のほか、台湾の提携教団「道院」ならびに岐阜道院から54人が参列した。
新米の俵が積まれた長生殿で、「開教131年大本開祖大祭祝詞」などを奏上。玉串捧奠では、海外参拝者代表として日本キリスト教協議会コーディネーターのアン・テレー氏が玉串を恭しく捧げる場面もあった。
出口教主が先達し、感謝祈願詞(みやびのことば)を奏上、讃美歌を斉唱した。出口教主は挨拶で、「何よりも初めに全国の信徒の皆様に心からのお礼を申し上げたく存じます」とし、長生殿前の農業研究センター跡地が8月31日に競争入札の結果大本が入手して神域となったことを「真摯な祈りと物心両面の信仰的なご支援によるおかげ」と感謝した。
出口教主は、平成13年8月30日(教主に就任して初めての神集祭の最終日)に、当時の祭務部長から、出口すみこ二代教主が「あそこは後に大本のもとになる」と言った話を聞いた。それが心から離れることはなかったが、「当時は全く現実的ではなく、遠い遠い将来のことだろうと思っていました」と述懐。22年の時を経て神域になったことに「思わず飛び上がるほど感謝と喜びで胸が一杯になりました」と笑顔を見せた。
まず同地に綾機神社を造営することを宣言。「神様から頂戴した土地ですから、何よりも一番に神様にお喜びいただけますように」としつつ、信徒や綾部市民にも喜んでもらえる場所を作りたいと決意。さらに令和7年の人類愛善会創立100周年を記念した「綾の聖地エルサレム大本歌祭」も同地で本宮山を仰ぎながら開催すると発表した。大本では「エルサレム」という言葉に天国楽土の意味を持たせている。
それだけに中東紛争には心を痛め、教団一丸となって「中東地域大規模武力紛争早期終結祈願祝詞」を毎日奏上していることも語り、「世界中の真の宗教者、信仰者はどの宗教であっても等しく真の平和を強く望んでおり、決して武力やお金や権力によって引き起こされる争いなど誰一人望んではおりません」と宗教の力に期待を寄せた。(続きは紙面でご覧ください)
2023/11/9
大荒行入行会 日蓮宗加行所54人 過去50年で最小
入行会で渾身の読経を行う入行僧ら(法華経寺) 祈祷修法を習得するために「寒一百日」間の苦修練行に籠る日蓮宗大荒行の入行会が1日、千葉県市川市の大本山中山法華経寺(新井日湛貫首)日蓮宗加行所(若松宏泉伝師)と日蓮宗遠壽院荒行堂(戸田日晨伝師)でそれぞれ厳修され、過酷な修行の日々が始まった。法華経寺での行堂一本化から50年目を迎えた日蓮宗加行所には54人が入行。この50年で最小人員での入行会となった。
日蓮宗加行所では54人(初行19人、再行12人、三行5人、四行7人、五行8人、参籠3人)が入行。昨年は116人(内初行僧64人)が入行しており、今年度は初行僧が40人以上減少した。
初行の大幅減少の背景には、新任教師数の減少やコロナ禍などの複合的な要因がある。入行僧の資質向上のため2016年に入行資格を「満23歳」から「教師認証後3年以上」とする入行資格の厳格化を実施。翌年から入行者数は一時減少した。折からの新任教師数の減少に加え、コロナ禍の間に加行所と同様に教師資格を得る信行道場も中止せざるを得なかったため、新たに入行資格を得る者が減少。再開された昨年の加行で、入行を待っていた潜在的な初行志願者の多くが入行していたものと思われる。
田中恵紳宗務総長は「昨今の人口減少社会に歩調を合わせるがごとく、宗門の教師も減少の一途をたどっている。加行僧も減少傾向が続くと思われる」とした上で、「今までにない少人数による本年の荒行堂は、未来を占うものとなり得る。すべての宗門人が注目する一百日間であると肝に銘じて入行をしていただきたい」と要望。布教の前線に立つ修法師になり、「末法の世を照らす能化となることを心から願っている」と力強く激励した。
新井伝主は、入行会や成満会を行っている祖師堂が現在改修中であり、「皆さんが成満する来年2月10日には綺麗に仕上がっていると思う。来年またこの場でお会い致しましょう」と言葉を贈った。若松伝師は「一巻、一句、一字でも多くお経を読ませていただく。大変な苦しい修行が待ち構えている。耐えて、耐えてほしい」と訓示。最後に修行僧に向け「皆さんの自由、自我、命をお預かりする。よろしいですね」と念を押すと、修行僧らは奮い立ったように「はい!」と応答した。
一方、昨年は4人だった遠壽院荒行堂には9人(初行5人、再行3人、四行1人)が入行。戸田伝師は大きな変化が起こっている日本の世相や世界情勢の中で、歴史ある遠壽院行堂で伝統を保ち行ずる意味について説き、修行に励むよう訓示を行った。
2023/11/9
全仏婦第70回記念大会 地球沸騰化に危機感 会長、具体的行動呼びかけ インド日本寺 光明施療院に活動資金贈る
東伏見会長(左)が中村理事長に写経目録を贈呈した (公社)全日本仏教婦人連盟(全仏婦/東伏見具子会長、花岡眞理子理事長)は10月27日、東京都千代田区の帝国ホテル東京で第70回記念大会を開催した。東伏見会長は「地球沸騰化の時代」の到来に危機感を示し、具体的な行動を呼びかけた。会員や関係団体から160人が集まった。
はじめに全日本仏教尼僧法団が出仕し、笹川悦導理事長を大導師に法要が営まれ、参加者全員で献花した。続いて裏千家15代で前家元の千玄室氏が「祈りの思い」と題し記念講演。100歳を迎えた千氏だが約40分間立ったまま講演した。
笹川理事長の法話では「全仏婦は社会や家庭の中に仏教精神を培い、人の気持ちがわかる人間育成を目指されている。多様化の重視された時代にそれぞれの立場でご教化をお願いしたい」と期待した。愛知専門尼僧堂の青山俊董老師の言葉「女性が本気になれば地球は安泰だ」を紹介。育児の重要性に加え、世界の紛争、国内の自死者、児童虐待等の問題を列挙し「この世が生きづらいと思う方が大勢いる。病める心に仏婦の花の種運動のように綺麗な色とりどりの花を咲かせてあげていただきたい」と念じた。
東伏見会長は会長を引き受けてからの10年で少子化や地方の過疎化が進み「全仏婦でも若い人を育て、継続していくことが課題になる」と問題意識を示した。またノーベル経済学賞に男女の賃金格差の要因等を分析したクラウディア・ゴールディン氏が授賞した話題にも触れ、「お寺における女性の役割は大変大きいと思いますが、さて、どのような賃金格差になっているのか興味があるところです」と言及した。
全仏婦は「美しい地球を未来のこどもたちに」をスローガンにしているが「地球沸騰化の時代が到来したと言われ、人間が引き起こした気候変動の重大さを認識しなければならない」と指摘。日本政府が「脱炭素」を宣言、関連サイトに具体的行動が示されていることを紹介し「皆様もその内容を広く広く発信していただきたい。次の第80回大会に向け具体的な道筋をつける活動をしなければいけない」と危機感をもって呼びかけた。
来賓挨拶では全日本仏教会の里雄康意理事長がインドの日本寺が運営する光明施療院への支援を始めとする社会貢献活動に敬意を表した。乾杯の発声は東大寺長老で日本寺竺主の北河原公敬氏。今年は日本寺開山50周年法要を12月に開催する。インドの子どもたちが日本の支援を受けながら一生懸命に過ごしていると述べ、「その姿を見ていると皆様からご支援の有難みを非常に感じている」と感謝した。
花岡理事長の挨拶では宗教の垣根を越えて結成された全仏婦の歩みや慈悲の心に基づく活動を紹介し、世界平和を願った。日本寺を運営する国際仏教興隆協会の中村康雅理事長に光明施療院の活動資金として写経目録(350万円)を贈呈した。
閉式に際して、大会実行委員長の本多端子理事が謝意を示し、「全仏婦の信条にある『集いの力』を糧にみなさまと仏法弘通に尽力したい」と抱負を述べた。
2023/11/9
智山派代表会 智積院会館の収益が大幅改善 インバウンド対応奏功
智積院会館の収益改善を説明する芙蓉総長 真言宗智山派(芙蓉良英宗務総長)の第137次定期教区代表会(深澤照生議長)が10月24・25日、京都市東山区の総本山智積院内宗務庁に招集された。昨秋からのコロナ禍行動制限緩和を受けて回復に転じた宿坊智積院会館の収益が、さらに改善。前次代表会では同館の令和4年度一般会計第2次補正予算で坊入宿泊料を2629万円増額し1億1850万円としたが、今回の決算では4822万円増えて1億6672万円となった。
智積院会館の5年度第1次補正予算では坊入宿泊料をほぼ倍に。1億556万円増額し2億2406万円を計上した。
宿泊者数の回復基調を受け、智積院から智積院会館に交付している経営助成金(繰出金)も大幅に減額。智積院の4年度一般会計決算では、補正後予算額から3千万円減額し1億円とした。5年度の同補正予算では9千万円から1千円に減額し、智積院からの助成金は事実上「なし」とした。
智積院の拝観料収入等も回復軌道に乗ったため、4年度の一般会計決算では宗派交付金を補正後予算額から6千万円減額し1億円に。5年度第1次補正予算でも1千万円減額し1億5千万円とした。
芙蓉総長は施政方針演説で智積院会館について、「近年の光熱費や食材の高騰により、やむを得ず4月1日から宿泊料を値上げし、繁忙期・閑散期(の変動料金)のレート設定も3から6パターンに細分化した」と報告。増加する外国人観光客に対応するため「館内各種案内の多言語化と機器の導入」「インバウンド受け入れ研修会の開催」等の事業も推進したとし、その結果、「令和4年度実績で1・1%、5年4~6月4・7%、7~9月15・7%と大幅に(外国人宿泊者が)と増加した」と説明した。(続きは紙面をご覧ください)
2023/11/9
高幡不動尊 髙尾山薬王院 深大寺 三山合同で密教の祈り 京王電鉄主催
三山合同で般若心経が読誦された(金剛寺大日堂) 東京都日野市の真言宗智山派別格本山高幡不動尊金剛寺の大日堂(杉田純一貫主)で10月26日夕刻から、京王線沿線の古刹、同派大本山髙尾山薬王院(佐藤秀仁貫首)と天台宗深大寺(張堂興昭住職)の三山合同による「密教の祈り」が開催された。真言声明と天台声明が響きわたり、参拝者には三山のお札やお守りが授与された。主催は京王電鉄株式会社(本社/多摩市)。
高幡不動尊の杉田貫主は同寺がかつて天災で損壊した際に深大寺の僧に勧進の文章を書いてもらった縁起を紐解きつつ、「江戸を過ぎてから天台声明を唱えるのは初めてだと思いますので、大日如来も非常に喜ぶと思います」と歓迎した。
深大寺の張堂山主は、高幡不動尊との正式な交流は「600年ぶり」と挨拶し、1400年代に文才として知られた長辨(じょうべん)が多摩川沿いの寺社から多くの文章を頼まれ、その一つに高幡不動尊の勧進の文章があると紹介した。天台密教と真言密教の違いを「真言宗は力強さがあり、天台密教は色んな教えと融合させた努力の跡がある」と説明。この日唱える声明は「ほとんど文言が同じ」でありながら、「二つの密教の流れを大いに象徴する旋律になっている」と解説した。
高幡不動尊と深大寺の僧侶により声明の説明がなされた後、初めにダイナミックで力強い真言声明、続いて優美な旋律の天台声明がお唱えされた。最後に三カ寺合同で般若心経が読誦された。(続きは紙面でご覧ください)
2023/11/2
高知・よしだ造佛所が企画 仏像に触れて感じる触察会 文化・信仰をバリアフリー化
竹井住職から仏像の説明を受けながら仁王像の3Dモデルを触察 高知県香南市のよしだ造佛所羽尾工房で10月5日に視覚障がい者向けの仏像触察会「仏像を〝感じる〟会」が開催され、市内で暮らす視覚障がい者や難病を持つ人が分身ロボットで参加した。手の感触や用材の香り、仏師や僧侶の話、仏像に寄せたポージングなど、視覚以外でイメージを膨らませながら仏像や仏教に親しんだ。
現在、工房では同市の臨済宗妙心寺派まきでら長谷寺(竹井玄要住職)の仁王像を修理中で、不要となった古い部材や3Dプリンタの模型を使用して触察会を行った。手に触れながら、仏像の形をイメージしたほか、参加者で像のポーズを真似ながら造形への理解を深めた。僧侶と仏師を交えた質疑応答、読経や笛の演奏による儀礼体験、短い時間ながら坐禅も行った。懇親会も開き参加者が交流を深めた。
参加者した全盲の男性は「普段は基本的に『触らないでください』と言われ、直接触れられない仁王像のパーツの質感と3D模型を合わせて触れることで、頭の中に立体的な造形を再構築することができた」と触察の体験を表現。「仏師から造仏の話、住職から仁王様の話を聞き、宗教観や歴史、造形としての仏像を見る視点が四次元、五次元、六次元…と広がり、仁王像が動き出しそうなエネルギーを感じることができた」と仏像や仏教に触れる楽しさを話した。
ロービジョンの男性は「全身で仏像と歴史を感じることが出来、素晴らしい体験」と感動を語ると共に、「目が少しずつ不自由になっていくことでだんだん行動範囲が狭まっていたが、今回参加し、素敵な方々とお会いでき、大変有り難く思います」と感謝。晴眼者からも触ることで得られる体験、貴重な交流への感謝や気づき等の感想が寄せられた。
古典技法で仏像を製作・修理する仏師の吉田安成氏が「障がいの有無・程度に関わらず、お寺や仏像に親しんでほしい」と企画。妻で元看護師の沙織さんも、終末期の患者や全盲の人に接した経験から、お寺に行きづらい人にも仏像や仏教に接してもらう機会を模索していたという。
触察会の準備を進めるなかで視覚障がい者の就労支援者からも問い合わせがあり、沙織さんは「こうした場を作ることで、もっと社会参画がしやすくなる」と手応えを話した。文化・信仰のバリアフリー化に向けた一歩となる試みとなった。
2023/11/2
仏教伝道文化賞授賞式 本賞・今枝由郎氏〝ブッダは偉かった〟と感慨 奨励賞・藤田一照氏 愉快に仏道を探求したい
受賞挨拶をする今枝氏 (公財)仏教伝道協会(BDK)が仏教精神・文化・学術興隆に貢献した人に贈る第57回仏教伝道文化賞の贈呈式が10月19日、東京都港区の仏教伝道センタービルで行われた。本賞の今枝由郎氏(76・歴史文献学者)、奨励賞の藤田一照氏(69・曹洞宗僧侶)が出席し、関係者が受賞をお祝いした。
今枝氏はフランス国立科学研究センターでチベット・ブータン歴史文献学の分野で多大な業績を上げ、国内外で最先端の仏教研究に貢献。奨励賞の藤田氏は米国での坐禅指導の経験から、英語を駆使して禅の精神を現代人に伝え、宗派を超えて坐禅を指導している。両者には木村清孝会長から賞状と賞金が贈られた。
受賞者挨拶で今枝氏は「賞を受けるのはあまり気乗りがしなかった」と率直に語り、その理由を「仏教に携わってはきたが信心ということとは縁がない人間だ」と説明した。日本人として生まれ、両親は毎日熱心に正信偈を唱えていたが、その内容を父に問うと「わからない」と言われ、「自分なりに得心を持ちたいという気持ちで一生を費やしてきた」と研究者の原点を話した。その上で、「ブッダという紀元前5世紀のインドに生きた1人の人間が色々な人に直接説いた言葉を何十年もかけて読んできたが、読み進めるほどに〝この人は偉かったんだな〟という気がしている。そういう面では仏教伝道協会から功績を認めていただいたことは光栄なこと」と感謝した。
受賞挨拶をする藤田氏 藤田氏は「子どもの時に星空を見て、広大な宇宙のなかに何故僕のようなものが存在しているのか。日常の中に大きく口を開いている深淵のような謎を説きたいという気持ちがうまれた」とし、20代後半まで学者の道、その後は「修行的な生き方」をするために曹洞宗僧侶になったと述懐。現在は神奈川県葉山町で縁ある人たちと禅を学び、今年は古希のお祝いもしてもらったが、「これからゆっくりしようと思ったところに奨励賞という〝まだ足りない〟というメッセージがきましたので、ご縁がある方と愉快に仏道を探究していきたい」と抱負を語った。
祝辞では在東京ブータン王国名誉総領事館の黒木久夫事務局長が澤井一郎総領事のお祝いメッセージを代読。今枝氏がブータンの国立図書館顧問として図書館建設や同国の歴史や文化、国語であるゾンカ語の教育に尽力したことを挙げて謝意を示した。
曹洞宗宗務庁の渡部卓史人事部長は藤田氏が長年米国で国際布教師として禅の敷衍に努めたほか、語学力を駆使して国内外で禅の精神を広めてきたとし、「次世代を担う仏教指導者としてますますご活躍されること」を期待した。
2023/11/2
全日仏 犯罪被害者支援を考える講演会 「息の長い支援が必要」心のケア専門家 仏教者への期待語る
講演した小西氏 仏教者の犯罪被害者支援の可能性を探る全日本仏教会(全日仏)主催の講演会が10月25日、東京都中央区の築地本願寺で開かれた。犯罪被害者の心のケアにあたる医師で武蔵野大副学長の小西聖子氏が登壇し、虐待を受けた被害者の治療は長期間かかるため、「息の長い支援が必要になる」と述べ、利他を使命とする仏教者の姿勢に期待を寄せた。
小西氏は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療が専門で、トラウマを乗り越える治療・持続エクスポージャー法を施術できる日本でも数少ない精神科医。2021~23年には刑法の性犯罪規定の見直しを検討した法制審議会の刑事法部会の委員も務めた。
「仏教者は犯罪被害者支援にどう取り組むべきか―臨床現場からの提言」との題で講演。善し悪しを含めて宗教が関わった犯罪被害者当事者の治療例を挙げて考えるヒントを提示し、僧侶ら参加者約70人が支援の可能性を探った。
「とても印象深い宗教者の言葉がある」と小西氏。子どもの頃から虐待を受け、宗教施設に逃げ込んだ女性を連れてきた宗教者に、「よくなるまでに長い時間がかかる。困ったことが起きても捨てないでほしい」と求めると、「何ができるか分からないが、人を捨てることはしません」と述べた宗教者との会話を今もはっきり覚えているという。
回復の過程で何度も自殺未遂があり、「ここで捨てないでほしい」と念を押すと、「逆です。私たちが何度も捨てられている」との返答があり、この宗教者は人を見捨てないのだと確信した。
小西氏は「宗教者の支援なしでは難しい事例だった」と振り返り、いつでも誰にでも開いている宗教施設だからこそ被害者の異変を捉えることができたと指摘。被害者が安全な空間で宗教活動に参加することでも孤立を防止できると提案した。その上で、担当者が数年で交代する福祉行政の事情もあり、息の長い支援が大切になると強調。「長く寄り添うことができるのは宗教の特長ではないか」と述べた。
一方で、宗教の関わりが回復の妨げとなった宗教2世の女性の事例も紹介した。留学先のこの宗教の関連大学の寮で性的暴行を受け、PTSDを発症。子どもの頃から怒りを禁じる教えを母に刷り込まれたため、恐怖や怒りの感情が表現できなくなっていた。治療が困難な状態で、「唯一、改善が示せなかった例。こうした宗教は子どもにとっては虐待だ」と力を込めた。
また、家庭内暴力を受けた女性がカルトに入信しやすいことも報告。暴力が起こるのは自分の責任だと思い込む心理状態にあるため、罪悪感を植え付けるような宗教に同調する傾向があるといい、「そうではない宗教が先に声を掛けてくれたらいいのですが…」と語った。
全日仏は「死刑制度」を巡り、仏教者の立場などについて2018年から社会・人権審議会(現委員長・株橋隆真氏)で検討を続けている。2021・22年の犯罪被害者週間にあたっては、戸松義晴前理事長と里雄康意理事長が被害者支援の取り組みについて、「あまり行われていない」「不十分であったのではないか」とそれぞれ反省の言葉を述べている。
2023/11/2
尼崎市・日蓮宗広済寺 近松門左衛門没後300年祭 人間国宝が人形で焼香
人形を巧みに操り焼香する吉田和生氏 『冥途の飛脚』などで知られる芝居作家の近松門左衛門(1653~1724)の没後三百年祭・音楽法要が10月22日午前、墓所のある兵庫県尼崎市の日蓮宗広済寺(石伏叡齋住職)で営まれた。現代にも通じる人情を活写した文豪の遺徳を、多くの人が追善した。
法号「阿耨院穆矣日一具足居士」が記された位牌を前に読経供養。石伏住職は啓白文で「歌舞伎浄瑠璃の不朽の名作の数々を残す。翁は広済寺改宗開山に尽力、広済寺に度々滞在して戯曲を推敲」と、寺門興隆にも寄与した功績を称えた。人間国宝の文楽人形遣いの吉田和生氏は、人形を用いて焼香。近松研究所を擁する園田学園の齊藤悦一理事長や松本眞市長、地元出身の室井邦彦参議院議員らも参列した。
田中恵紳宗務総長は「『出世景清』をはじめとする近松門左衛門翁の作品の多くは深い学識と仏教、とりわけ法華経に対する深い造詣に裏付けられており、随所に篤き信仰心を伺うことができます」と祝電を寄せ、日蓮宗にとっても意義深い遠忌法要だとした。
法要後、本堂右手の国指定史跡「近松巣林子墓」(巣林子は別号)に移動し、参列者は灑水。吉田氏も人形を遣い注いだ。
石伏住職は「このお寺は明治時代に廃仏毀釈で妙見堂がなくなり、昭和時代には逼塞していた。先代住職が盛り立てたこのお寺で300年祭ができたことが本当に嬉しい。私一人の力でできたことではなく、檀家さんや近所の皆様、尼崎市の力です」と近松から広がった仏縁に感謝した。
午後は隣接する近松記念館で「大近松祭」として吉田氏・文楽協会による人形浄瑠璃『曽根崎心中』が上演されるなど、盛大に賑わった。
2023/10/26
奈良・大本山東大寺 開山良弁僧正1250年御遠忌法要を厳修
伎楽で良弁僧正の生涯がドラマチックに演じられた 奈良市の華厳宗大本山東大寺で14~16日、開山良弁(ろうべん)僧正1250年御遠忌法要が厳修された。秋晴れの下、大仏殿の上層から色取り取りの散華が煌びやかにまかれると、会場となった前庭には良弁僧正と聖武天皇が活躍した古代天平期の風光が甦った。
中日の15日は、聖武天皇が天平15年(743)に「大仏造立の詔」を発した日に当たる。「良弁僧正御遺徳奉賛伎楽法要」が営まれ、大仏開眼供養会後に東大寺初代別当に任じられた良弁僧正(689~773)の生涯が伎楽で劇的に演じられた。
古代律令国家黎明期の息吹を感じさせる壮麗な行道の最後に、橋村公英別当(同宗管長)が僧侶20人超と共に進列。中門をくぐると輿から降り、大仏殿前庭を進んだ。
地元合唱団と地域の小学生らが数百人規模で歌唱奉納を行い、「盧舎那仏讃歌」や「ふるさと」などを熱唱。唄匿の唱声と散華の中、献花・献茶の儀がなされた。
大仏殿前舞台に登壇した橋村別当が表白を奉読。盧舎那大仏の造顕に際し所依の経典である『華厳経』の講説を催して「本朝華厳の初祖」となり、東大寺の基礎を築いた功績を追想した。続いて聖武講の掛樋時数講社長が慶讃文を読誦。東大寺の前身である金鐘寺に入り、仏法に適った政(まつりごと)を志した聖武天皇と共に東大寺の創建に尽力した遺徳を敬慕した。
『執金剛神縁起絵巻』や人形浄瑠璃を基に創作された伎楽「良弁上人、華厳の悟り(慈悲)」を奉納上演。赤ん坊の頃に大鷲にさらわれた男児が山林修行の行者・良弁となり、獰猛な獅子の襲撃や妖艶な女たちの誘惑、しつこい酔っ払い、邪見の行者らを諸尊の加護で退けたりしているうちに聖武天皇と出会って大仏造立・開眼供養会へと展開する壮大な物語だ。
エンディングで生き別れた母と良弁が奇跡の邂逅を果たす場面では、数百人の参拝者から安堵のため息が漏れた。天理大学雅楽部とおやさと雅楽会のメンバーらが生き生きと舞い、東大寺1300年の歴史と伝統に新たな1ページを加えた。
11月16日午後6時から法華堂で「華厳経講説法要」を厳修。10月28日~11月19日、法華堂で「秘仏国宝・良弁僧正坐像特別拝観」を行う。12月21日まで、東大寺ミュージアムで特別展示「良弁僧正と東大寺」を開催中。
2023/10/26
天台宗議会 2年後、予算が非常事態 各種冥加料を増額へ
財政健全化は急務と呼びかけた阿部総長 第155回天台宗通常宗議会(細野舜海議長)が17日、滋賀県大津市の天台宗務庁に招集された。令和4年決算をはじめ全25議案を審議し、原案可決。2月議会で財政健全化を訴えた阿部昌宏宗務総長は引き続き、残り任期1年強のうちに財政健全化への道筋をつける決意を示した。
初日の執務報告で阿部総長は、過去14年間は寺院教会納金の個数を固定化し、一個数230円を堅持したとしつつ、「この間には、社会情勢は大きく変わり、消費税のアップ、物価高、人件費の高騰などを余儀なくされてきた。東日本大震災や熊本地震、台風、豪雨など気候変動による自然災害の頻発など、当然寺院収入においても変化があった」と分析。「現状の歳入歳出予算編成では、2年後には非常事態になりかねない」と危機感をあらわにしつつ、「極端な縮小予算編成では天台宗の発展未来は見えない」とも提言し、次年度の寺院収入額申告後の新基準での予算編成においては「当然個数単価を上げざるを得ない」とした。(続きは紙面をご覧ください)