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2024/4/18
浄土宗開宗850年 総大本山で慶讃法要 救いの平等 今こそ
総本山知恩院「尋源培根」を再確認 大本山金戒光明寺「浄土真宗最初門」を胸に 

 
知恩院の開白。紐は外の結縁柱と結ばれている 浄土宗総本山知恩院(京都市東山区)で9日、開宗850年慶讃法要が始まった。承安5年(1175)に元祖法然上人が比叡山黒谷青龍寺で善導大師の「開宗の御文」に出会い、誰もが等しく救われる道を切り開いてからの歴史の重みに思いを馳せ、僧侶約200人、檀信徒や一般参拝者約300人が嘉辰に巡り合えた幸福を喜んだ。

 開白法要は93歳の伊藤唯眞門跡が中導師を務める予定だったが、体調を考慮して急きょ中村康雅副門跡が務めることに。左導師に丹農秀知知恩院顧問、右導師に問川良元慶讃記念事業副委員長が配され御影堂で阿弥陀経の読誦、散華。僧侶が堂内をぐるりと進列しながら念仏する「笏念仏行道」では僧侶が華やかな姿と挙措を披露し、参拝者の感興を呼んでいた。

 中村副門跡は850年前の戦乱の時代と同じく現代も苦しみが絶えないとしつつ、伊藤門跡がしばしば口にする「尋源培根」の精神に基づき、「元祖大師のお気持ちに戻って、毎日の生活をお念仏の中に過ごさせていただきたい」と世界中が平和で安心して暮らしていける日々を呼びかけた。

 御影堂門前には、堂内の法然上人像と五色の糸で結ばれた念仏結縁柱が建てられており、触れていた団参女性は「これで長生きができますよ」と微笑み、結縁に感激していた。14日の結願(一宗法要)までに約5千人が参拝した。18日から25日にかけては御忌大会が営まれ、元祖への報恩が続く。

「浄土真宗最初門」こと金戒光明寺の開白 法然上人が比叡山を下りてすぐに草庵を結んだ「浄土真宗最初門」こと大本山くろ谷金戒光明寺(左京区)では10日から14日まで慶讃法要が営まれた。開宗850年と同時に開創850年の2つの慶びが重なったことで多数の団参があり、連日、琵琶や演歌、舞楽が奉納されて盛況だった。

 初日の開白法要には約300人が参列。中導師は吉水定宏氏(慈済寺)、左導師は佐藤道明氏(阿弥陀寺)、右導師は伊藤壽彦氏(延命寺)が務めた。一同で「一紙小消息」を拝読して「天に仰ぎ地に臥して悦ぶべし、このたび弥陀の本願にあう事を」と、たとえ罪深き人間であっても必ず往生できる信心を改めて確信した。

 藤本淨彦法主は金戒光明寺を法然上人が教化の第一歩を踏み出された由緒ある地だと強調し、「その小さな山の泉がこんこんと湧き出て850年という時、場所、人の心を潤しながら今日に至った。南無阿弥陀仏のお念仏こそが、いつでも誰でもどこでも人の心を潤し、尊い命をより豊かに過ごし、私たちの行く末を迷うことなく照らし出してくれる」と垂示した。

 金戒光明寺の850年慶讃事業は重文三重塔などの文化財修復や藤本法主の書籍出版などを実施する。2026年には18年ぶりの五重相伝も行われる予定。

2024/4/18
立正佼成会 学林創設60周年式典と入林式挙行 「庭野日敬スクール」開設へ 学林ビジョン 国際的リーダー養成


学林ビジョンを発表する杉野学長 立正佼成会(庭野日鑛会長)は6日、東京・杉並の大聖堂で学林創設60周年式典と学林合同入林式を執り行った。実践的仏教指導者育成を中核とする学林の杉野恭一学長は、諸宗教対話・協力を担う国際的なリーダー養成に向けて「庭野日敬スクール・フォー・グローバルリーダーシップ」の設立などの学林ビジョンを発表した。オンラインの700人を含めて2200人が参加した。

 入林式では31人の新入生が入場。大樹(本科)61期生6人および蓮澍海潮音科31期生の代表、光澍大学科50期生の代表、芳澍31期生の代表が杉野学長の前で、力強く抱負を発表した。

 杉野学長は訓話で、「実践的仏教と諸宗教対話・協力という庭野日敬開祖の願いのもと、現在まで学林各科を合わせて2400名の仏教実践家、指導者を生み出してきた」と実績を強調。そして「感性・知性・品性を磨き人々に希望と勇気を与え、世界を創造する菩薩道の先駆者への道を喜びと誇りをもって歩んでいって下さい」と激励した。

 また学林ビジョンとして、すでに実行されている「諸宗教に開かれた学林」のほか、学林大樹の年齢上限の引き上げや非会員にも門戸を開く「多世代共創の学林」を提示。さらに「庭野日敬スクール・フォー・グローバルリーダーシップ」では、国際協力を推進するリーダーを養成していくと宣言した。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/4/18
花まつりスケッチ 東京・青松寺、尼僧法団 


東京・青松寺 子どもたちが和太鼓で荘厳

太鼓の演奏を体験した子どもたち 東京都港区の曹洞宗青松寺で6日、花まつりが営まれた。参拝を呼び掛けた区内の小学校に通う子どもたちの家族ら約70人が、釈尊が誕生した際に宣言した「天上天下唯我独尊」の教えを胸に刻んだ。和太鼓の演奏会もあり、迫力ある音の響きで釈尊生誕の祝典を荘厳した。

 愛宕下通り沿いに建つ高さ7㍍の山門に花まつりを告げる恒例の横断幕を掲示。道行く人に釈尊降誕の日を知らせた。

 本堂での法要に際し、喜美候部鐵示住職が釈尊生誕の故事をひもといた。天地を指差す誕生仏の佇まいの由来となっている「天上天下唯我独尊」の意味を説き、「動物も植物も人間もこの宇宙の中で同じ存在として生きている。だから、心に壁をつくらず認め合おうという教えです。すべての存在が尊い生命を生きています」と伝えた。

 観音聖堂に会場を移し、プロ和太鼓チーム「暁」の演奏会を開催。コンテストで3回の日本一に輝いた迫力ある音に飛び上がって驚く参拝者の姿も。子どもたちも手ほどきを受け、太鼓の演奏を体験した。

 参拝者には外国人の親子連れも見られ、共に手を合わせた。新聞で紹介された花まつりの記事を読み、興味をもって千葉県から足を運んだ家族もいた。

 花御堂や白象が安置された境内では縁日の催しがあり、ぜんざいや甘酒が振る舞われた。シャンティ国際ボランティア会が能登半島地震や東日本大震災の被災地を支援するブースを設け、輪島市門前町の商店街の品物などを販売した。



尼僧法団 久々に大茶会

尼僧法団の花まつり茶会 全日本仏教尼僧法団(笹川悦導理事長)は7日、東京都港区の浄土宗善光寺で第38回「花まつり茶会」を開いた。境内の桜が満開となるなか、約300人がお茶席を楽しんだ。

 今年の尼僧法団席は立礼席に加えて、コロナで中止していた大茶盛(希望者のみ)を久々に再開。顔がすっぽりはまるほどの大きなお茶碗で点てたお茶を数人で廻し呑みするユニークなお茶席で、実際に目の前に大茶盛が運ばれると「おぉー」と小さな歓声があがった。

 茶席の掛け軸は「瑞草生喜運」(大徳寺378世無学宗衍)。笹川理事長は「世の中に雑草というものはない。大地から芽が出るもの全てが嬉しい、というお軸。花の種もお配りしているが、いのちを大事に育てて下さい」と語りかけた。

 濃茶席(表千家・氏井千佳子席主)、薄茶席(裏千家・新美宗修席主)も設けられたほか、本堂には花御堂が置かれ、参列者も甘茶を注いで釈尊降誕をお祝いした。シャンティ国際ボランティア会が出店し、能登半島地震支援として同地のおぼろ昆布などを販売するなど、震災支援金の協力も呼びかけらえた。

2024/4/18
ロシア・ウクライナ戦争3年目 歴史からみるロシアの政治と宗教 三宅善信氏(金光教教師・WCRP日本委理事)に直撃取材



ロシア正教会の専門家でもある三宅氏 大阪・茨木市の金光教春日丘教会長で世界宗教者平和会議(WCRP)理事を務める三宅善信氏(65)は、異能の才人である。同志社大学の大学院でキリスト教神学を学び、ハーバード大学の世界宗教研究所でも学究生活を送った。本人曰く。「寺社が甍を並べる京都でキリスト教を、ニューイングランドで仏教を学んで、大阪で金光教をやっています」。それが三宅氏の学びの系譜だが、学位論文のテーマは「正教会儀礼の機能研究」だそうだ…。3年目に突入し、終わりの見えないロシア・ウクライナ戦争の宗教的背景を三宅氏に取材した。

 「どの辺から話しましょうか?」とネイティブな大阪弁で切り出してきた。こちらの疑問は、旧ソ連の共産政権時代にさまざまな受難がありながらも生き延びてきたロシア正教会の本質についてだ。身近なところから話し出す。

 「宗教を否定したボルシェビキ革命(1917年)の時に何が起きたか? 国を追われた正教会関係者たちは世界中に亡命した。日本にもやって来た。学生時代、京都御所の南にあるハリストス正教会を訪ねた。そこで、典礼(儀式)の際に用いる祈祷書を見せてもらったら、ハリストス(「キリスト」のロシア語)や生神女(マリア)や諸聖人を崇め奉るというのはもちろんですが、『天皇陛下のために祈る』という文言があった。意外だったので司祭に尋ねると、『ロシア皇帝のために祈る』という文言があるので、それを日本では天皇に変えたというわけです。それが1980年代初めのことです」

 そこから三宅氏の西洋史と教会史の講義が始まった。おおよそこんな内容だ。

 ――西ローマ帝国は、北欧から南下してきたゲルマン諸部族の侵入で5世紀に滅亡し、現在のドイツ・フランス・イタリアに繋がるいくつかの王国が建てられた。ゲルマン人たちはキリスト教信仰を受け入れ、カトリック教徒となった。その後、スラブ民族が東ヨーロッパに侵入してきて、現在のウクライナやポーランド辺り当たりから地中海沿岸まで達した。ユーゴスラビアというのは「南スラブの国」という意味である。その後、欧州ではいろんな王国興亡の歴史が続いたが、ゲルマン人の西欧社会とスラブ人の東欧社会という大きな枠組みは維持されてきた。それは今も同じ。プーチン大統領がしばしば言及する「西側」とか「NATOの東方拡大」という言葉に表れている。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/4/11
曹洞宗大本山總持寺 瑩山禅師700回大遠忌開幕 一味同心 能登祖院へ報恩 今月21日まで


法会の始まりを告げた迎真諷経 曹洞宗大本山總持寺を開いた瑩山紹瑾禅師の700回大遠忌本法要が1日、横浜市鶴見区の同寺で始まり、瑩山禅師を迎える迎真諷経が渡辺啓司監院を導師に執り行われた。随喜の僧侶や檀信徒ら約400人が参拝し、太祖の遺徳に手を合わせた。報恩感謝の誠を捧げ、相承を誓う法会が21日まで続く。

 渡辺監院は、宗門発展の礎を築いた瑩山禅師に感謝を込めて茶湯を献じ、「伝光赫赫道無窮 七百星霜太祖崇 嫡嫡相承輝萬世 嶽山峰頂月玲瓏」と法語を唱え、大遠忌のテーマとする「相承」の決意を示した。

 「やっとここまで辿り着いた」と法要を終えて所感を述べた渡辺監院は「21日間、山内僧侶一味同心となって全力で報恩行に徹したい。それが能登、祖院への唯一の恩返しになると信じている」と力を込め、能登半島地震の被災地と大本山總持寺祖院の復興を誓った。

 本法要に向け、昨年4~11月に国内9管区と海外4国際布教総監部管内で宗門による予修法要が執り行われた。大本山總持寺では昨年10月に10日間にわたり予修法要を営み、この日を迎えた。法会期間中、全国から随喜の僧侶約800人、檀信徒ら約2200人の参拝を見込む。

 この日は高祖・道元禅師を迎える光伴諷経も盛田正孝副貫首を導師に執行。両祖に報謝の香が手向けられ、本法要の始まりが告げられた。続く法要2座では、鶴見大学長で福昌寺(東京都渋谷区)の中根正賢住職、大雄山最乗寺(神奈川県南足柄市)の増田友厚山主がそれぞれ焼香師となり、両寺院の檀信徒らを供養する総諷経の導師を石附周行貫首が務めた。(続きは紙面でご覧ください)

2024/4/11
臨済宗妙心寺派 山川宗玄新管長が入山 一雲水に戻った気持ちで


「懐かしい」と語った山川新管長 臨済宗妙心寺派の第36代管長に就任した山川宗玄氏(岐阜県美濃加茂市正眼寺住職)の入山式が1日に京都市右京区の大本山妙心寺で営まれた。妙心寺一山など宗門要職ら約160人が参列。管長の任期は4年で、令和9年の興祖微妙大師650年遠諱は新管長の下で営まれる。

 微妙殿に上った山川新管長を迎え入れた野口善敬宗務総長は低頭し挨拶。小倉宗俊前管長の辞任後に「余人をもって代えがたく」と三顧の礼で管長就任を依頼したことを振り返った。「50年前、大師600年遠諱の際に管長をお務めになられたのは当時正眼寺住職だった梶浦逸外老大師であり、その折に隠侍をしておられたのが山川老大師。なんとも深い因縁を感じます」とし、宗内寺院3400余、花園会員36万人余の頂点として活躍することを強く期待しつつ、「激務」と言われる妙心寺派管長として健康の自愛も願った。細川晋輔宗議会議長、久下浩文妙心寺一山会会長も就任に感謝する言葉を述べた。

 山川新管長は「一雲水に戻った気持ちで、一からここで頑張りたいと思います」と挨拶し、無事に務めを果たしたいと抱負を語った。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/4/11

浄土宗大本山増上寺 開宗850慶讃会開白 徳川家康公像を開眼 平和の象徴 世界に発信


開眼された家康公像を背に垂示する小澤法主 東京都港区の浄土宗大本山増上寺(小澤憲珠法主)で2日、浄土宗開宗850年慶讃会と御忌大会が開白した。2日午後には徳川家康公像の開眼式、3日午前には増上寺・光明寺・善光寺大本願の三導師法要を厳修。9日までの会期で、法然上人の慈恩に報いる法会が盛大に営まれた。

 徳川家の菩提寺でもある増上寺に新たに徳川家康公像が安置された。静岡県出身で篤志家の伊藤明氏が、友田達祐・増上寺前執事長との縁から開宗850年慶讃記念として寄進した。

 松本明慶大仏師、明観大仏師、宗観大仏師の親子三代が制作を手掛け、開眼式には徳川宗家19代当主の家広氏をはじめ有縁の来賓が参列した。

 2日午後、小澤法主を導師に大殿で開眼式を執行。表千家の堀内宗完宗匠による献茶式も行われ、家康公像に茶が献じられた。

 家康公の念持仏「黒本尊阿弥陀如来」が祀られる安国殿に家康公像が安置される。小澤法主は「家康公のお像が納められることになり、(黒本尊様も)『待ってたよ』と喜んでいるのではないか」と寄進に感謝した。

 伊藤氏は徳川宗家19代当主の家広氏に「大変お喜びいただき心の底から沁みいり、安心しました」と喜んだ。尽力した関係者と共に「家康様、どうもありがとうございました」と感謝した。

 増上寺の小林正道執事長は、天災や疫病、戦乱が続く現代社会と法然上人が浄土宗を開いた850年前を重ねて、「若い方へどう時代を引き継いだら良いのか考えないといけない」と問題意識を口にした。そのうえで、「家康公は世界史的にも非常に稀な、260年にもわたる戦乱も内戦もない時代をお築きになられた世界に冠たるお方」と讃え、新たな像を祀ることで「平和の象徴として世界に発信していきたい」と展望した。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/4/11

薫香の老舗3社がコラボ 東西で「香り博」開催 日本の香り文化楽しむ 5月12日まで


日本香堂は香り袋作り体験を開く 鳩居堂製造㈱・㈱松栄堂・㈱日本香堂ホールディングスの薫香業界老舗3社がコラボレーションし、日本の香り文化を楽しむ回遊型イベント「香り博」を12日から5月12日まで、東京・京都の各3店舗(合計6店舗)で初開催する。4月18日の「お香の日」を中心にした1カ月間のイベントで、香道を体験できるワークショップやスタンプラリー等を企画。限定商品も販売される。

 薫香業界の老舗3社が初めてコラボする「香り博」のテーマは「Origin of fragrance(香りの原点)」。お香文化の足跡を知ることができる歴史資料の展示、貴重なアーカイブから限定復刻したアイテムを販売。東京・京都で3社を巡るスタンプラリーも企画し、参加者限定の景品プレゼントも用意した。

 各ブランド店舗で香りのワークショップも実施。鳩居堂の「初心者向け聞香体験(お土産付き)」、松栄堂の「匂い香づくりワークショップ」、日本香堂の「香り袋作り体験」をはじめ、「聞香」や「組香」など、世界中から注目される日本の豊かな香り文化を体験する機会を提供する。

 参加店舗は【東京】が東京鳩居堂銀座本店、松栄堂銀座店、香十銀座本店、【京都】が京都鳩居堂、松栄堂京都本店・薫習館、香十二寧坂店。散歩しながら香りを楽しめる春のマチイベント。詳細は特設ホームページ(https://www.kaorihaku.com/)から。

2024/4/4

花まつりに考える いのちと慈悲の実践 能登半島地震支援 日本笑顔プロジェクト 林映寿代表に聞く


林副住職 釈尊の生誕を祝い、全てのいのちの尊さを胸に刻む花まつりを今年も迎えるにあたり、真っ先に想起するのは被災地の現状である。

 春が訪れた能登半島の被災地では、様々な支援活動が続けられている。災害救援ボランティア団体(一財)日本笑顔プロジェクト(笑顔P)は、半島最北端の珠洲市で発災直後から重機を駆使した復旧作業に従事。代表を務める真言宗豊山派浄光寺(長野県小布施町)の林映寿副住職(47)は、被災者の心に寄り添いながら災害関連死を防ぐ活動に取り組んでいる。

 現在も大半の地域で断水が続く珠洲市では、避難所のトイレ環境の改善が喫緊の課題だ。「高齢者が多い奥能登にはバリアフリートイレが必要。片側にしか手すりがなく、不安定で段差の大きい階段を上がって利用するトレーラー型のトイレが多く導入されていますが、高齢者には危険で使いにくい。水洗や汲み取りが必要なのも断水地には不向きです」(林副住職)

 そこで長野県内のバイオトイレメーカー・コトヒラ工業㈱と共同で、被災地用のバリアフリー仮設トイレを開発。「微生物の力で分解するため、水も汲み取りも必要ない。メンテナンスもほとんどしなくてよい。トイレと言うよりファーストクラスの憩いの空間で『ラウンジ』と名付けました」

 ここまでこだわったのは、災害関連死の防止とトイレ環境の整備が密接に関係しているからだ。「被災地で一番行きたくない所がトイレ。〝臭い、汚い、暗い〟仮設トイレに行かなくて済むように、できるだけ飲食を控えるようになる。そうすると免疫力も落ち、体調が悪化する。しかし東日本大震災から13年経っても、〝トイレはあればいい。贅沢する必要はない〟が日本の常識。トイレ環境の改善は、行政任せでは進まない。だから車イスの方でも使えるバリアフリーのバイオトイレを民間の連携で作りました」

 今回の大地震では、携帯電話の基地局がダウンして通信不能状態に陥った。その苦い経験から衛星Wi-Fiも装備。通信手段を確保し、「トイレでありながらシェルターの機能も持たせました」。

 発災1週間後から、お風呂支援も開始。昨夏から作り始めていた笑顔Pオリジナルのドラム缶風呂を初めて使用した。「湯を沸かす熱で暖も取れるし、調理もできる。ソーラーパネルや発電機も搭載し自家発電が可能。携帯電話はもちろん、電動車イスの充電もできます」

倒壊家屋で被災者の思い出の品を探す笑顔Pメンバー バリアフリートイレ「ラウンジ」に、このドラム缶風呂もセット。今月中に珠洲市内にある天台宗翠雲寺の境内に、第1号を設置する予定だ。

 思い出の品を一つでも

 元旦の発災を受け、2日に情報収集と準備。3日早朝には小型のダンプに重機を積んで、小布施町から被災地に向かった。「被災状況が一番悪い所の支援に入ろう」と奥能登の北端を目指し、救援車両等が通行できるように重機を使って道路の土砂を撤去した。

 「1月3日の時点では道路状況が非常に悪く、自衛隊の重機が大き過ぎて現場までたどり着けないという事態に遭遇しました。我々の重機は小型で運搬も容易なので、自衛隊と協力して道を開きました」。警察官や救助犬と一緒に、行方不明者の捜索も行った。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/4/4
能登半島地震3カ月 輪島市・朝市周辺ルポ 15カ寺すべて甚大被害 3カ月経っても手つかず


火災により灰燼に帰した蓮江寺伽藍 復興は遠い道のりをゆっくりと進むしかないのか。元日夕方に発生した震度6強の地震と、それが誘発した大火災により激しい被害を受けた石川県輪島市中心部、朝市周辺の15カ寺を3月25日に訪れ、そう痛感した。あれから3カ月が経つが、全壊した寺院はそのままで、ほとんど何も手がつけられていない。住職や寺族の多くも避難し、復旧・復興への道のりは遠そうだ。(越高陽介)

 金沢市と輪島市を結ぶ北陸鉄道の特急バスは1月25日に復旧した。片道3時間の道のりだ。金沢から内灘の市街地は震災の影響はほとんど見られない。ところが羽咋、穴水と北上するに従い、道路状況の悪化や家屋の被害が大きくなっていくのがわかる。

 バスの終点「道の駅輪島」の土産物屋は営業していた。しかし歩き出すと、輪島塗の大きな店舗がひっくり返ったままになっているのがまず目に飛び込んだ。ひび割れた道路や通行止めの橋も修復できていない状態で、ボランティアや重機作業員が入ることも難しいのか、人の姿は多くはなかった。

 観光客で賑わう朝市は地震発生直後から火災が発生し、約200棟を焼き尽くして一帯を灰燼に帰した。この朝市に最も近い寺院の曹洞宗蓮江寺は、前田利家の正妻・まつの開基。歴史ある伽藍だったが本堂・庫裡は全焼し、鐘楼のほか街のシンボル的な山門も倒壊。瓦が散乱し、手つかずのままの本堂跡地はむごたらしい。

「いずれ輪島に戻ります」と告げる善龍寺 その近くの真宗大谷派善龍寺は鐘楼の柱が根本から折れてぺしゃんこ。かろうじて立っている本堂も瓦が剥げ落ち、内部もぼろぼろになって立ち入りは困難な様子だ。庫裡も潰れている。かろうじて残った石柱には、住職が市外に二次避難していることを示す貼り紙が。「いずれ輪島に戻ります」と、自分自身を鼓舞するように書いてあった。

 大谷派圓龍寺も本堂・庫裡が全壊。本堂の屋根が完全に崩落しており、仏事も生活も難しい状況が察される。寺が運営する和光幼稚園の園舎は数年前に新築したばかりだったこともあってか無事で、電気と水道が復旧した後の3月11日から園児の受け入れを再開した。ただし、職員も避難している人が多く、従来通りの開園にはもちろん至っていないようだ。通園用バスも激しく損傷している(3月に新潟県の寺院から1台寄贈があったという)。河原田川を渡った新橋通にある大谷派長楽寺も胸が苦しくなるほどの全壊で、何層にも積み上がった木材はどこから撤去すればいいのかわからない。

 川を上った宅田町地区にも寺院がある。大谷派真照寺は境内に被災した家具や本が積まれており、処分するしかないようだ。鐘楼は完全倒壊、石の門柱も折れて真っ二つに。向かいの大谷派照念寺も屋根にブルーシートが張られておりダメージは大きい。戸には板が打ち付けられ、連絡先の携帯番号がマジックで書かれていた。やはり避難中のようだ。古い柱に書いてあった「命を大切に」という標語が重い意味を投げかけていた。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/4/4

能登半島地震3カ月 七尾市妙国寺・安楽寺ルポ お寺が物資配付、避難所に

 
宗派や一般ボランティアから妙国寺に届いた生活支援物資 石川県七尾市の山の寺寺院群の一つである日蓮宗妙国寺(鈴木和憲住職)には震災直後から生活支援物資が搬入され、地域に配布された。街中にある浄土真宗本願寺派安楽寺(相川秀住職)は近隣住民の避難所となった。両寺ともに、救援の拠点となったことで被災者同士が不安や心配事を「話す」ことができたことが力になったと語る。(棚井里子)

 高台にある妙国寺は津波の避難所に指定されているため、発災後に近隣の40人ほどが避難してきた。余震を警戒しながらお寺にある毛布やカイロを提供して寒空の下で警報が解除されるのを待った。4,5日すると日蓮宗や一般ボランティアから生活支援物資を届けたいとの連絡が入り、境内や本堂を片付けて物資の受入を始めた。

 妻の淳子さんが食料品の品目、離乳食、生理用品、カイロなど細かに書き出し、町会や子ども会のグループLINEに投稿、「取りに来て下さい」と呼びかけた。この動きが知られると、大阪大学の稲稲場圭信教授や真如苑救援ボランティア(SeRV)等の支援グループとつながり、続々と物資が届いた。東日本大震災で被災した福島県相馬市の家族からの炊き出し支援も受けた。妙国寺は井戸水があったため、これも住民に開放した。

 物資の配布は、震災後の体験や安否の確認、思いを分かち合う大切な機会になった。「話すということが大事でした。被災者同士、地震の恐怖やこれからの不安をうち開けることで、私自身も気持ちが楽になりました」と鈴木住職。新潟や宮城の被災地で傾聴活動をした経験もあり、日頃から相談を受ける立場だが、「会話することで共感が生まれた。被災者同士でお互いに慰め合い、お互いに和らぎ合ってきた」と思いを話す。

 妙国寺も塀垣や浄行堂が倒壊、地割れが起き、本堂も傾いたが、「奇跡的」に倒壊を免れたことで支援物資を配ることが出来た。それが炊き出しや子どもの遊び場作りにつながった。「崩れていたらできなかった。自分からやろうというより、仕事を与えられた気がします。大変な状況ですから、心を病むこともある。けれども、励まされることもある」。

 鈴木住職には小学3年生の娘がいる。被災のショックは大きく「食欲がなくなっていた」というが、友だちと遊んだり、食事を共にすることで元気を取り戻していった。大阪大学の支援チームが子どもたちのための遊ぶ会を企画したことも大きい。「がれきの片づけをしていても、子どもたちが遊んでいる声が聞こえると心地がいい。近所の人たちも元気になると言われました」。震災後、静かになった町を子どもの声が明るくしてくれる。

震災直後、本堂が避難所となった 街中にある安楽寺は震災後の5日間、避難所として被災住民が身を寄せた。当日、坊守のとし子さんは、津波警報の直後にご近所さんと一緒に近くのマンションに避難。夜になり皆で相談して安楽寺に避難することを決めた。近くに暮らす元アーユス仏教国際協力ネットワーク職員で現在は民生委員を務める三村紀美子さんも合流、8人が避難生活を送った。

 安楽寺には布団も飲食物もストーブもあり、タンク式のトイレも使えたため、温かく快適な避難所だったと言われた。ただし、市役所で生活物資の配布が始まり、私設避難所へも物資を回してもらうよう相談したが、断られたという。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/4/4
身延山久遠寺 日産と連携協定結ぶ EV活用し地域貢献 脱炭素促進や災害時の電源に


本堂で行われた協定締結式 日蓮宗総本山身延山久遠寺(山梨県身延町)は3月26日、脱炭素化や地域強靭化を図るため、日産自動車株式会社などと「電気自動車を活用した脱炭素化及び強靭化に関する連携協定」を締結した。電気自動車(EV)を導入し、脱炭素化の促進や災害時の電源等に活用する。日産自動車では同様の協定を自治体等とも結んでいるが、宗教法人との締結は初という。

 同寺と協定を結んだのは、日産自動車、甲斐日産自動車、日産プリンス山梨販売の3社。連携協定により、同寺は4月以降にまず電気自動車1台を導入する予定で、軽自動車「サクラ」の導入を検討している。今後は締結した4者で、電気自動車の活用を通じて地域活性化や住民の環境意識の向上、観光施策の実施に取り組む。

 身延山久遠寺では、「共に生きる。共に栄える」をスローガンとする共栄運動を展開中で、SDGsの推進や地球環境保護に取り組んできた。

 本堂での締結式で署名した久遠寺の青山泰謙・法務部長は「より具体的な取り組みにつなげるために協定を締結した。いつ何時起こるかもしれない災害で全国から来られている参拝者の安全安心を守ることや、地球環境のための脱炭素化に取り組み、全国の日蓮宗寺院の手本となるよう努めたい」と話した。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/4/4
立正佼成会 病院、杏林大に事業譲渡 4月から付属杉並病院


 宗教法人立正佼成会(熊野隆規理事長)が運営するは佼成病院(東京都杉並区)が3月31日、学校法人杏林学園(東京都三鷹市)に事業譲渡された。4月1日から「杏林大学医学部付属杉並病院」として新たなスタートを切った。

 佼成病院は昭和27年(1952)8月10 日、庭野日敬開祖の「心の病は法座の指導で治し、肉体の病は医者にゆだねる」という考えのもと、中野富士見町駅近くの中野区弥生町に開設された。法華経にある「真観」(正しくみて、正しく手当てする)を理念とし、社会や時代の要請に応じて専門性を高めてきた。

 平成 26 年(2014)には現在の杉並区和田に移転。併せて杏林学園と医療連携を結び、東京都災害拠点病院としての役割なども担いながら、開設から70年以上にわたり会員や地域住民の健康を支えてきた。

 一方で医療を取り巻く環境が次第に複雑化し、専門的なかじ取りが求められるようにもなり、それに伴い、経営的な困難を抱えてきた病院状況を受け、立正佼成会の理事会において、今後も安定的な医療を提供していくには、業務の運営主体と経営主体とが分離した状態では難しいと判断。その後、10年間にわたる医療連携協定先である杏林学園に事業の譲渡を相談し、決定にいたった。

 病床数23床でスタートした「交成病院」(当時)は、本館落成後には300床を超える総合病院となった。庭野日敬開祖は平成11年(1999)10月4日、同病院で最期を迎えた。

2024/4/4
仏教情報センター 3宗派僧侶が「仏談噺」 1人約20分 本堂で法話リレー


 超宗派の僧侶たちが電話で悩みを聞く「仏教情報センター」(東京・本郷)による伝道活動の新企画「仏談噺」が15日夕、東京・神宮前の浄土宗長安寺本堂で開かれた。順々に演壇に立った宗派の異なる3人から、参加者約30人が三者三様の法施を受け取った。

 白川淳敬理事長(東京都世田谷区・浄土真宗本願寺派正法寺住職)は「それぞれ違う味わいの話を聞いていただけたら」と挨拶。鬼頭広安事務局長(東京都町田市・曹洞宗宗保院住職)も「法話のフルコースを楽しんで」と話した。

中山氏 登壇したのは日頃電話相談を受けている都内の僧侶たち。1人20分程度の法話リレーに臨んだ。トップバッターは臨済宗妙心寺派圓光寺(台東区)の中山宗祐副住職。講話者唯一の禅僧として「挨拶」や「玄関」といった禅語を通して説いた。 中でも自身が最も好きな言葉は「自由自在」だと紹介。自らを由りどころに在れとの教えを伝えた上で、「生活の中にはたくさんの禅語があふれている。禅の言葉に触れたときは心を調えるチャンスです」と話した。

青龍寺氏 続いて真言宗智山派仙蔵寺(台東区)の青龍寺空芳住職が登壇。今春に小学生となった難聴を抱える長男の子育てを通して、自身の未熟さに気づいたと打ち明けた。「息子にとって耳が聞こえにくいのは普通のこと。不安に駆られるのは親のエゴだった」と吐露。釈尊の「正見」の教えに導かれ、偏見から離れられたと語った。「皆さまも悩み苦しむときがあると思う。そのときは仏教情報センターを頼ってほしい」と述べ、「仏さまの力を借りながら乗り越えていきましょう」と呼び掛けた。

布村氏 トリを務めたのは浄土宗専念寺(新宿区)の布村伸哉住職。「『明けない夜はない』のは本当でしょうか」と語り始めた。煩悩を捨て切れず、苦しみに満ちた無常の世界に生きる私たちにとって、夜は長く感じるものだと強調。しかし世は移ろいゆき、世界は元々苦しいとの教えが仏教だから、「仏さまの加護でこの程度で済んでいるのかもしれません。明けない夜は険しくつらいが、なるようになると信じていれば光が見えるはず」と語った。


 会場となった長安寺の石川隆信住職が挨拶し、「同じ仏教でも、宗派が異なれば違う宗教かと思うところもある。『仏談噺』は仏教情報センターならではの企画。いろいろな切り口の法話を聞いていただけたのでは」と話した。

2024/3/28
兵庫区佛教会×地元警察署 特殊詐欺防止で協定結ぶ 花まつりで啓発劇上演 政令指定都市では初か


仏旗が掛けられた署長室でサインと押印(兵庫警察署) 兵庫県神戸市兵庫区の83カ寺が加盟する兵庫区佛教会(会長=田民俊英浄土宗長福寺住職)は14日、兵庫県警兵庫署と「特殊詐欺被害防止協定」を締結した。仏旗が掛けられた署長室で、田民会長と三木一也署長が締結書に署名し交換した。地区仏教会と警察がこうして特殊詐欺撲滅に取り組む協定は珍しく、会によると、政令指定都市の仏教会では初めてではないかという。

 三木署長は「警察署においても日夜、犯罪抑止のために頑張っていますが、特殊詐欺に関しては主犯者を検挙できない状況がある」と話す。署でも対策チームを作っているが昨年は35件、今年は2月末日時点で既に15件の特殊詐欺被害が管内で発生していると、卑劣な犯罪への憤りをにじませた。1千万円級の被害を受けた事件もあったという。

 三木署長は区内の浄土宗願成寺の濱田賢時住職と懇意で、その縁で佛教会に特殊詐欺防止への協力を依頼したところ快諾があった。すでに各寺院では檀家への啓発チラシの配布など予防活動に取り組んでいるが、「こうして締結することでさらに色々な協力活動ができる」と三木署長は期待感を示した。

 田民会長は「兵庫区にも一人暮らしの檀家さんが多くおりますが、昨今は地域、隣近所の繋がりも薄くなってきているのが現状。不審な電話や強引な勧誘の相談が多くあると(他の住職から)聞いていますし、私も相談を受けています」とし、警察との緊密な連携で少しでも特殊詐欺撲滅の一助になりたいと話した。月参りがしっかりと行われている神戸では高齢者と住職が触れ合う機会が多く、地域資源としての月参りを活かす取り組みとも言えそうだ。

 さっそく、この協定に基づく啓発活動がある。兵庫区佛教会が加盟する神戸市佛教連合会は4月8日午後1時から神戸文化ホール(中央区楠町4―2―2)で花まつり祝賀市民大会を開催。この中で兵庫県警察音楽隊によるコンサートと、県警による「特殊詐欺撲滅寸劇」が上演される。その後は落語家の露の團姫さんと太神楽芸人の豊来家大治朗さんの講演、市民による合唱コンサート。

2024/3/28
アーユス賞2023授賞式 大賞はコリアNGO代表 〝苦悩に向き合い育てられた〟


今年のアーユス賞受賞者、中央が郭氏 アーユス仏教国際協力ネットワーク(松本智量理事長)は12日、東京都品川区の日蓮宗本立寺で、功績のある国際協力NGOを表彰するアーユス賞の授賞式と記念パーティーを開催。大賞受賞のコリアNGOセンターの郭辰雄代表理事をはじめ各賞受賞者や関係者が集い授賞をお祝した。

 NGO大賞受賞の郭辰雄氏は大阪生まれの在日コリアン3世で、在日コリアンの人権問題や韓国市民社会との連携、北朝鮮人道支援事業に取り組み、民族教育やヘイトスピーチ根絶、大阪コリアンタウンで多文化多民族共生をテーマにした研修事業等を実施している。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/3/28
宗会シーズン 真言宗醍醐派、真言宗大覚寺派


醍醐派宗会 宗費改革で財政再建へ 宗制・規則見直しに着手

 真言宗醍醐派の第76次定期宗会(岩鶴密雄議長)が14・15両日、京都市伏見区の総本山醍醐寺内宗務本庁に招集された。1月に就任し初の宗会を迎えた大原弘敬宗務総長は施政方針演説で、「大きな目標として醍醐寺・醍醐派の改革」を表明。「変革」を強調し、専門委員会の新設と制度審議委員会による宗制・規則の見直しや宗費の抜本的な再検討を含む財政再建に着手すると述べた。(続きは紙面でご覧下さい)


大覚寺派宗会 嵯峨御流に青年部創設 宗門大学の定員増やす 

 真言宗大覚寺派の第73次定期宗会(谷亮弘議長)が6日、京都市右京区の大本山大覚寺内宗務庁に招集された。伊勢俊雄宗務総長は施政方針演説で、華道いけばな嵯峨御流の活性化策として全国の各司所から部員を募り青年部「SAGAS」(サガス)を4月に創設すると発表。「全国の若手同士の勉強・交流の場としたい」と述べた。(続きは紙面でご覧下さい)

2024/3/28
新連載 瑩山禅師700回大遠忌シリーズ 瑩山禅師からみた道元禅師 曹洞禅の継承者にして流布者① 宮地清彦・曹洞宗総合研究センター常任研究員


 『伝光録』第五十一祖 永平元和尚章
 
 曹洞宗太祖瑩山紹瑾禅師(1264?/8?~1325。以下瑩山)の『伝光録』は大乘寺における提唱録であり、一巻五十三章、釈迦牟尼仏章からはじまり第五十二祖永平奘和尚章で締めくくられている。

 光、即ち真実の仏法を伝えていく歴史の流れ、インド、中国、そして日本と続く流れを表す『伝光録』には、当然、法を授ける師と受ける弟子が存在し、この両者が種々の機縁によって出会い、法の伝授によって一体となっていく様子を、瑩山は分りやすく説いている。

 永平奘和尚、つまり孤雲懐奘禅師(1198~1280。以下懐奘)は瑩山の師・徹通義介禅師(1219~1309。以下義介)の嗣法の師であり、瑩山にとっても出家得度の結縁の師であったわけだから、『伝光録』最終章に懐奘章を置き、締めくくりとしたことに、瑩山の先師を思う気持ちの強さを感じずにはいられない。さらに、その思いが永平道元禅師(1200~1253。以下道元)へと遡っていくことは明らかである。

 そこで、『伝光録』第五十一祖永平元和尚章を中心とし、同書にて瑩山が何を大事にしていたのだろうか。(続きは紙面でご覧下さい)