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Domestic and Overseas

<被災地レポ―ト>
義援金寄贈と祈りの旅

豊山太鼓「千響」 師走に福島、宮城へ

立谷さん_R.JPG各戸宛の義援金の入った束を渡す木村委員長(福島県相馬市・大野台第一仮設住宅で平成23年12月20日)真言宗豊山派の青年僧侶を中心に結成された豊山太鼓「千響」(木村量興委員長)では、震災直後から各地でチャリティー太鼓公演による被災地支援活動を行っている。12月20・21両日にはメンバー20人が福島県と宮城県に赴き、市民から寄せられた浄財を被災寺院や避難檀信徒に手渡した。「『同行二人』 一緒に歩んで参りましょう」のメッセージとともに―。

 20日午後、千響一行は福島県相馬市の海沿いにある豊山派長命寺と同派摂取院を訪問。両寺で犠牲者追悼の祈りを捧げ、義援金各50万円を届けた。仮設住宅に比べ、借り上げ住宅や自宅で避難生活をおくる住民には支援情報や物資が届きにくく、支援難民化してしまう世帯も少なくない。この義援金には、菩提寺を介してそうした人々に支援が広く行き渡るようにとの願いが込められている。


 3月11日、大津波が岩子地区をのみ込むと、長命寺がある小高い丘は島のようになった。緊急避難所に指定されていた同寺には近隣住民約50人が駆け込み、3日間ほど過ごした。 檀家約50人が亡くなった。本堂には遺骨40柱が安置されていたが、訪問時には3柱になっていた。お盆からお彼岸の間に墓地を修理して納骨したり、仮設住宅に引き取ったりすることができたためだ。木村委員長(45・千葉県・永興寺住職)から義援金を手渡された茨木栄照住職(61)は、「檀家さんに行き渡るように使わせていただきます」と応じた。同市尾浜地区を襲った大津波は、高台にある摂取院の2~3㍍手前まで迫ってきた。その猛威で檀家約200人が亡くなり、8割が自宅を失った。鈴木弘隆副住職(53)は、「若い人に気持ちのこもった義援金を集めていただいた。ありがたい」と感謝。地域の復興について「家を流されているので、代替地に建てることになる。ここは原発から45㌔位離れていて漁船も残っているが、(漁業への)風評が心配」と語った。


被災住民が力合わせ 地区再起の会を結成

 続いて156戸471人が暮らす相馬市・大野台第一仮設住宅に移動。自治会の副組長である立谷幸一さん(58)らが一行を出迎えた。この大野台第一仮設を含め、6つの仮設住宅地区に470世帯が入居。長命寺と摂取院の被災檀信徒の多くも、ここで暮らしている。木村委員長は立谷さんに、一戸ごとに封筒詰めされた全世帯分の義援金を贈った。立谷さんは「震災に遭って、人は一人では生きていけないとわかったよ」と述懐。「地域のみんなと前向きにやっていくよ!」と力強く話した。
 立谷さんらは、相馬市沿岸の原釜・尾浜・松川など東部地区の被災住民で「東部地区再起の会」を結成。同地区には漁業を生業とする家庭が多く、同会事務局長で漁師の安達利郎さん(61)は「なるべく海に近い、安全な高台に住むこと」を目標に掲げる。先頃、国県市宛に町の再建計画への嘆願書を提出した。
 仮設地区には、子どもから高齢者まで皆が集う集会所がある。今回ここに、様々なジャンルの書籍も寄贈。室内に積み上げられた本の山を見た子どもたちは、「本が入るなんてすごい!」と喜んでいた。立谷さんは「本は大切。言葉っていうのはすばらしいよね。適切な言葉を知っていれば、困難な状況も変えられる。他の仮設(地区)にも本を分けるよ」


子どものケア最優先に

石巻普誓寺_R.JPG宮城県石巻市・智山派普誓寺の仮本堂で、鈴木住職から震災時の様子を聞いた(12月21日) 翌日は宮城県石巻市の真言宗智山派普誓寺を訪問。かろうじて津波による流失を免れた本堂で読経供養を厳修し、支援金を届けた。同寺では檀家230人が犠牲になった。一家全員が亡くなった世帯もある。本堂には多くの遺骨が安置されていた。鈴木聰昭住職(67)は、「子どもたちの心のケア」が復興への最優先課題だと強調。しかし、「『海を見るのは嫌だ、黒い海は嫌だ』と訴える子ども、口をきかない子ども、両親を亡くした子どももいる。どう接したらいいのか」と苦衷を明かす。街の復興には就労支援も最重要課題だが、鈴木住職は「子どもがいるから、大人も元気に働ける」と指摘した。

長命寺墓地で回向_R.JPG被害を受けた墓地で読経供養を営む青年僧ら(平成23年12月20日)一行は日和山から市内を見渡した後、全壊した浄土真宗本願寺派称法寺へ。津波でなぎ倒された数百の墓石と本堂に向かって、追悼と復興の祈りを捧げた。
 娘とお墓参りに来ていた玉江松子さん(72)は、「偶然はないって言いますけど、思いがけず皆様に拝んでいただきうれしいです。今日21日は夫の月命日。毎月欠かさずお参りしています。今年は13回忌でした」。現在は市内の仮設住宅に入居し困難な生活が続くが、「お墓の前で合掌すると気持ちが安らぎますね」。
 被災地を覆う悲しみと復興への祈り。その現状を目の当たりにした木村委員長は、「がれきが片付いている所もあれば、手付かずの所もあった。被災地支援は〝もういらないよ〟と言われるまで続けていきます!」と決意を新たにしていた。
(山崎一昭・『週刊佛教タイムス』2012年1月12日号掲載)

<海外仏教者インタビュー> 
アリヤラトネ博士に聞く

世界はGNHの方向へ

スリランカ一万五千村にサルボダヤ運動

 世界経済がリセッション(景気後退)に入ったと言われ、様々な困難な問題に直面する中で、物質的な豊かさを追い求める価値観を見直す運動が世界各地で芽吹いてる。エンゲージドブディズム(社会参加仏教)で知られるスリランカの「サルボダヤ運動」は、50年以上前から仏教に基づき、精神的な価値観への意識改革を訴えて国内外に影響を与えている。提唱者であるA・T・アリヤラトネ博士に運動の特徴について聞いた。

 53年前にアリヤラトネ博士は、農村に住む国内の最貧民の生活の質を向上させるために「サルボダヤ運動」を提唱。仏教に基づく行動指針の下、自立的な農村作りを実施した。現在、スリランカ国内の1万5千もの村に広がっている。「サルボダヤ」とは、サンスクリット語で「労働の分かち合いを通した覚醒」の意味。互いの自助精神による労働から、目覚めや気付きを得ることで「意識の改革、経済の改革、政治の改革」が起こると博士は説明する。

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 人々の意識を変えるために、現在、農村での活動の他に国家レベルの覚醒運動を実施している。運動に共鳴する団体や地域が1年半の間に15回のミーティングを重ね、延べ10万人以上が参加。その半分が仏教徒以外のコミュニティから参加しているという。
 なぜ宗教を問わず仏教運動に外部の人々が参加するのか。博士はその理由を、「運動には仏教徒でなくても共通するテーマとして非暴力と地方分権がある」と分析する。長く続いた内戦や権力闘争は国民を疲弊させ、「皆が非暴力と権限の委譲が必要だと信じている。イスラム教徒やクリスチャン、ヒンズー教徒の多くも運動に参加してくれている。我々の運動の特徴的なところです」
 こうした非暴力の教えは、「サルボダヤ運動」の紛争解決の手法としても大いに活用されている。2年前に終結したシンハラ族とタミール族との内戦では、融和のための対話プログラムを実施した。「特に次代を担う若者たちの対話に力を入れ、シンハラ族、タミール族、さらにムスリム(イスラム教徒)、仏教徒、ヒンズー教徒の若い人たちの対話プログラムをずっと続けてきました」



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 対話により、内戦が宗教間の対立でなく、政治的対立であること。双方の原理主義者が互いに相手を攻撃し、対立を煽っていたことが分かった。運動で重要となるのは、「物理面だけでなく精神面の融和を目指す」こと。毎月1回7日間実施される対話プログラムには、300人が参加。現在も対話で得られる信頼を基礎に、内戦で生じた約30万人のタミール人難民が故郷への再定住ができるよう活動しているという。

子どもの頃から諸行無常教えよ


一方、世界に目を向けた時、「世界中が日本の原発問題に代表されるように環境の変化や経済のリセッションなど、困難な局面に瀕している。今こそまさにブッダが説く中道というものを大切にしながら、人々が生活していく必要がある」と危機感を募らせる。

「おそらく、米国、日本、ドイツ等の西洋の先進諸国は今のままでは成り立たなくなるだろう。実際の経済(モノ作り)よりも金融が重要視され、実体経済の100倍の大きさになってしまった」
 今、欧米各地で起こるデモは、「それに気づいた人たちが国のやり方に異論を唱え始めたということだ」と分析している。
 さらに、「これら先進国の変化は自然に起こったことで、今後は自然とGNHを標榜するブータンのような生き方に追従していかざるを得ないでしょう。これは流れとして、すでに起きていることなのです」と予測。今、博士は、これからの時代には仏教の教えに基づく人作りが最重要だと考え、14歳から25歳までの若者を対象にした教育プログラムを開催している。これには14万人の青年が参加した。

 教育が大事なのは、日本でも同様だ。毎年3万人を越える自死者を生む日本でも、仏教的なアプローチによる教育の必要性を指摘する。以前、博士がサルボダヤ運動を見にきた学生たちに「あなたたちは今まで自分自身が何者か考えたことがありますか。家族との本当のつながりを考えたことがありますか。国や世界とのつながりを考えたことがありますか。自然とのつながりを考えたことがありますか」と聞くと、何人かの女子学生が泣き出してしまったという。
 「結局今の社会は、教育の面で大きな失敗をしている。どうすればお金を多く稼げるか、心地よく快楽的に過ごせるか、多く消費することができるか、つまり〝浪費〟を教えているのです」

 しかし、仏教は人作りに貢献できる。「大切なのは、子供の頃から諸行無常をしっかりと教えること。人はいつか死ぬ。生まれてすぐかもしれないし、子どもの時に死ぬかもしれない。諸行は無常であることをしっかり伝えなければいけない」
 博士は、常に変化する自分の心を内観する必要性も説く。「人生には色々なことが起こる。物を受けたり失ったり、快楽と苦しみ、喜びと悲しみ…。それは常に変化していく。諸行無常なのです。一瞬毎に常にそれが起こっている。子どもたちにそれを伝えることが大切です。この認識に基づいて八正道を実践すれば、自殺に追い込まれることはないでしょう」

(『週刊佛教タイムス』2011年10月27日号掲載)
※WEB掲載にあたり、一部加筆修正しております