日蓮宗ハワイ企画小川師に聞く of weekly bukkyo-times website ver 2.3

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日蓮宗元ハワイ開教区長 小川如洋師に聞く 

IMG_0114.JPG日蓮宗のハワイ開教から110年。ホノルルにあるハワイ日蓮宗別院は100年を迎えた。元ハワイ開教区長で宗門のハワイ布教を統括してきた小川如洋師(元同院主任)には、長らく海外布教に従事した功績を称え、一級法功章が贈られた。小川師に海外での布教、若い世代に伝えたいメッセージを聞いた。

 小川氏は1962年にロサンゼルス身延山米国別院に開教師として赴任し、ソルトレイク教会、サクラメント教会の主任(住職)などを歴任。1977年からは北米開教総長として活躍した。1989年に日蓮宗ハワイ別院の主任、第12代ハワイ開教区長に就任。実に50年、半世紀にわたる海外布教経験を持っている。

 サクラメントに21年、ハワイは今年で23年。振り返れば、各地のメンバー(檀信徒)、同門の友人との交流、布教の思い出が去来する。初めて主任(住職)となったのは、25歳で赴任した米国本土ユタ州のソルトレイク教会だった。「最初、一生懸命に笛を吹いて皆を動かそうとしたが、なかなか上手くいかなかった」と当時を振り返る。


 日本人開教師の第一の壁は言葉。さらに、はっきりとものを言う考え方の違いなど、本当に布教ができるまでには、経験を積み、文化そのものを理解することが必要だった。開教師に必要な素養を「やはりセンスティブな人より、多少ずぶとい人がいい。あと若くて体力がなくてはね」。

009.jpg海外布教のため船出する若き日の小川師サクラメント時代、日本の棚経にあたるメンバー宅への訪問では、一人のメンバーのために200マイルも車などで移動する場合もあった。約320キロ、東京から福島までの距離を行く。さながらロードムービーの様相を呈した。「1年に1回、3州4州をまたいで回る。肉体的にも精神的にもこれはこたえました」と布教の思い出を懐かしむ。

 日本とは違い、海外ではメンバーの理事が寺院運営を行い、人事にも強い権限を持つ。小川師がハワイに来る契機となったのは、本堂建立を熱望していたハワイ別院のメンバーの要請だった。今でいうヘッドハンティングだ。小川師は10年前のハワイ開教百周年に合わせ、現在の本堂を創建。この本堂は、当時の藤井日光管長や宗門教師との絆も宿っている。

 当時、藤井管長が自ら勧募帳を作製し、勧募には海外布教後援会が大きな役割を果たした。持田貫宣氏、吉田文堯氏、及川真介氏、石井隆康氏、渡辺一之氏などが運転する車に同乗し、宗門寺院に寄付を募って回った。「あの頃の日本はバブルがはじけた不景気。申し訳ない思いでいっぱいでした。日本とハワイの勧募が実り、百周年に間に合った。今でも本当に感謝しています」。

 「一天四海皆帰妙法」。宗門の特徴である海外布教、そして平和運動がハワイの地で結実した忘れられないエピソードがある。ハワイ別院の真珠湾攻撃日本側犠牲者英霊簿の奉安だ。

IMG_0124.JPG日蓮宗ハワイ別院に伝わる英霊簿 当時はまだ、真珠湾攻撃での日本側犠牲者は英霊簿もなく供養もされていなかった。日本に住む民間人の手で英霊簿が作成されたが、ホノルル市内の各宗派の寺院は英霊簿の受け入れを拒否。真珠湾攻撃に対する現地の人々の思いは想像以上に複雑で、「地元の人々の不興を買うことはできない」実情があった。しかし、当時のハワイ別院主任の堀教通氏は敢然として英霊簿を奉安。真珠湾攻撃から50年後の1992年。ハワイ別院で日米犠牲者の追悼法要が営まれた。

 日本からは旧海軍将校とその遺族、米国からは現役将校と退役将校が参列した。「当時ハワイでは、12月が近づくと新聞でリメンバー・パールハーバーと大きく出た時代。それでは平和が進まないと思っていた」。

 小川師は法要の席で、「もうリメンバー・パールハーバーやノーモアヒロシマ、ナガサキではなく、これからはピース・フロム・パールハーバー、ピース・フロム・ヒロシマ、ナガサキです」(『日蓮宗ハワイ開教百年史』より)と法話した。 「自分たちで平和に貢献しよう。それが兵士たちへの恩返しだと話し、双方の元将校が大変喜んでくれた。彼らが仏様の前で握手をした姿が忘れられない」。

 今、海外から改めて日本の仏教界を観る小川師。海外での布教経験は日本でも有用だと信じる。「海外での経験を積み、日本で活かしていく必要があるのではないか」と考えている。

 日本の若い僧侶へは、「若い人はどんどん世界へ出るべきだと思う。仏教を盛んにするためには若い人の力が必要です。是非挑戦してほしい」と仏法、そして日蓮聖人の教えがさらなる広がりを見せることを願っている。



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