2019年

2019/1/1 東北大学大学院 「死生学・実践宗教学」新設 2019年4月スタート

 東日本大震災後に心のケアを提供する「臨床宗教師」を養成してきた東北大学で、2019年4月より大学院文学研究科に「死生学・実践宗教学」専攻分野が新設される。

 2012年から実践宗教学寄附講座を設けて東日本大震災の被災者支援として公共空間で心のケアを提供する宗教者「臨床宗教師」を養成。研修修了者は181人を数え、多くの宗教者が医療・福祉施設などの現場で活動を始めている。龍谷大学、上智大学などの大学機関でも養成講座が開設され、2018年には全国組織(一社)日本臨床宗教師会による資格認定制度もスタートした。

 こうした取り組みを踏まえて新設される「死生学・実践宗教学」では、広く現代の超高齢多死社会における生と死を取り巻く切実な諸課題に実践的に応える道を探求。宗教の知見を学問的に探求するとともに、心のケアに関わる人材養成に取り組み、多職種の連携・協働によって成り立つ社会の実現に貢献することを目指す。

 大学院前期課程(修士課程)は2年間。死生学、宗教学、心理学等の関連科目を履修し、実践領域としてスピリチュアルケア、グリーフケア、死生観、スピリチュアリティ等を学ぶ。修了には修士論文の提出が必要。実習科目を選択し、修了した者は、日本スピリチュアルケア学会「スピリチュアルケア師(専門)」の受験資格、宗教者の場合は日本臨床宗教師会「認定臨床宗教師」申請資格を得ることができる。

 大学院後期課程(博士課程)は3年間。実習科目を選択した者は臨床におけるリーダーを目指すことができる。

 実践宗教学寄附講座は引き続き設置され、宗教者以外にも開かれた履修証明プログラム(社会人講座)で、臨床宗教師・スピリチュアルケア師の養成も行う。

2019/1/1 全日仏人権セミナー 死刑を多角的に議論 被害者の立場も研修

セミナーに参加した4氏。右から小川原氏、柴田氏、江川氏、戸松氏 全日本仏教会(全日仏)は12月11日、東京・築地本願寺で人権セミナー「死刑廃止を考える」を開催した。死刑廃止派と存置派の弁護士とこの問題に詳しいジャーナリストを招き、遺族感情や人権上の立場などから多角的に死刑制度の是非を議論した。約50人が参加した。

 日本弁護士連合会(日弁連)の死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部事務局長の小川原優之弁護士がまず死刑制度の現状について説明。内閣府世論調査(2014年11月)では国民の8割が「死刑もやむを得ない」との考えを示しているが、やむを得ないと考える人でも「将来的には死刑を廃止してもよい」と回答した人が4割いることから、必ずしも死刑存置が国民全体の大半の意見ではないと述べた。

 10月7日に日弁連代表団がバチカンに赴き、ピーター・タークソン枢機卿を通じてフランシスコ教皇に、日本国民に対し死刑廃止メッセージを求める親書を渡したことも報告。ローマ教皇庁は2018年8月に改訂されたカテキズムに「死刑はいかなる状況でも容認できない」と明記している。

 死刑存置派で、日弁連の犯罪被害者支援委員会事務局次長を務める柴田崇弁護士は日本の法制上、「犯罪被害者給付金支援法」以外に犯罪被害者を守る仕組みが欠如している点を論じた。同法は被害者遺族に約3千万円~320万円が国から給付されることを定めるが、保険金や賠償金が入ると給付金は減額されてしまう「国が個人間の賠償を吸い上げるシステム」と欠陥を指摘。ノルウェーやスウェーデンの「犯罪被害者庁」のように国が加害者の支払う賠償金を立て替え払いする制度の成立が被害者保護に重要になってくるとした。

 冤罪問題に詳しいジャーナリストの江川紹子氏は「死刑が執行されると法務大臣に抗議声明が出されることがあるが、法務大臣の気持ちで執行できたりできなかったりするのは困る。私はむしろ(死刑判決を出した)裁判所に抗議すべきだと思う」と指摘した。

 その上で「無期懲役と死刑の間にあまりにも差がありすぎる」としつつ、小川原弁護士らが死刑の代替案として考える「仮釈放なしの終身刑」についても、死刑と変わらないほど人道的に問題のある刑罰ではないかと疑義を示し、「執行猶予付き死刑」を提案。死刑判決後、一定の執行猶予期間を模範囚として過ごせば無期ないし数十年の懲役に減刑されるというシステムで、「すでに中国では導入されている。これは仏教の考えから来たものだとされています」と述べた。(続きは紙面をご覧ください)

2019/1/1 修行は修行者を増上慢にする? 修行に意味はあるのか

修行の危険性について考えた遠寿院の修法研修会 千葉県市川市の日蓮宗遠寿院荒行堂(戸田日晨伝師)は12月11日、第38回修法研修会を同寺で開催した。フォトジャーナリストとして宗教取材を手がける藤田照市氏が「修行は危険。何の意味があるのか―宗教修行の現場を歩いて」と題して講演した。取材を発端に40年以上にわたる自身の山岳修行経験を交えながら「修行が増上慢の修行者を作り出していないか」と疑問を投げかけた。

 藤田氏は、自身が気づかぬ内に増上慢に陥り行中に滑落した経験や、宗教に関連した暴力や虐待、死亡事件化した事例にも触れ、修行の危険性に言及。修行は「宗教者の増上慢を余計増長させる」「修行が金銭的な収入源となっている」と指摘し、「修行が世間を欺くのに最適なツールになっている」と分析した。

 伝統教団の場合においても、曹洞宗僧堂での暴力事件や日蓮宗加行所で死亡者が出た問題を振り返り、「その中にいると気づかないが、世間全体から見れば〝宗教はやはり危ない〟と敬意とは反対の見方をされている」と警鐘を鳴らした。

 修行は、「人格を陶冶し慈悲心を高める」ものとされるが、「修行により人間が〝魔〟と化す」場合もあると指摘。実際、オウム事件の取材で、信者幹部が親族の死にも「悲しみが入ってこなかった。修行が進んでいると思った」と述べたことや、サリン散布を指示された者が「これは修行だからと言われ、心が軽くなった」ことを紹介した。

 宗教側からは、「修行者は世俗倫理を超えている」と〝聖〟の部分を強調されることもあるが、「形は宗教的でも、行をやって宗門内の地位を上げ、金銭・地位・権力を高める。それが世俗とどう違うのか」と問いかけた。

 一方で、仏教には元々〝魔〟に陥らないための教えがあるとし、「開経偈や懺悔文は、実はすごいことを言っている。毎日唱えることの意義を考えてほしい。この日常的内面化ができていないから魔になる」と説明。過酷な修行以上に日常の中にある〝家行〟での教えの実践が重要だと説いた。

 現在、遠寿院では同寺荒行堂の改革に着手し、修行道場について議論する「行堂研究会」を設けて具体策を検討している。藤田氏は外部の識者として参加しており、戸田伝師との対談では、修行組織のあり方も議論した。

 藤田氏は修行組織のあり方について「師を選ぶこと、選ばれることの重要性」を挙げ、同時に「器にあらざる者を弟子にすることは、師も自分の悟りを遠ざける。本当の修行の厳しさは師と弟子の出発点にすでにある」と提起。戸田伝師は、明治以降に伝統的な師と弟子の関係性が失われたのではないかと述べ、「近代合理主義を行堂から排除しようと思っている。合理主義に〝近代〟がつくと損得の概念が大きく関わる。これをどうするかが僧堂でも荒行堂でも大事だと遅まきながら実感している」と応答した。(続きは紙面をご覧ください)

2019/1/1 仏教ゲーム 気軽にスマホで楽しむ 理論や仏像解説も本格化

「マーシフルガール」をプレイするオタク男性 もはや年代を問わず日常生活には欠かせないスマートフォン。時間さえあればどこでもポチポチ…もちろんゲームだって楽しめる。そんなスマホのゲームで仏教に親しむ人が増えているのはご存じだろうか。
     
 2018年9月にリリースされた「マーシフルガール」は初期仏教の教えを学べるビジュアルノベル型ゲームだ。といっても鹿爪らしい説教が垂れ流されるわけではない。美少女キャラクターが法句経や四諦八正道、欲望の愚かさなどをかみ砕いて教えてくれるのだ。

 舞台は2037年の日本、主人公は30代男性の工学技術者。高度な知性を備えた介護用アンドロイドを開発したが、会社と折り合わず現在は無職。趣味はアイドルの追っかけ。そんな主人公が開発した介護用アンドロイドはなぜか「悟って」おり、執着の愚かさや観察の重要性を主人公に説いてくれるのだ。このアンドロイド、オタク層(記者含む)のハートをがっちり掴むメイド服である。着せ替え機能もある。

 「蜘蛛は自らが作った網に住み、獲物が罠にかかるのをじっと待っていますね? しかしそのために自らが作った網の上から一歩も外に抜け出すことが出来ずにいるのです。それは眼、耳、鼻、舌、身に囚われた他の生命もまた同じなのです」
 
 こういった初期仏教の思想が美少女から語られていく。軽妙なギャグも交えるのでスラスラ読める。物語は後半、主人公の母の介護・葬儀の話になる。葬式仏教にやや批判的な文章も出てくるなど、少々耳の痛い面もあるが、「人を悼む」とは何なのかを、アンドロイドを通じ考えさせられるのには感動を覚える。
 
 製作はアプリ製作グループのRhinocerosHorn(ライノセロスホーン)。短期出家をテーマにしたゲーム「森の聖者」や、出版社のサンガとコラボしたアルボムッレ・スマナサーラ長老のカレンダーアプリ「日めくりブッダの教え」をリリースしてきた。

 代表の漁一吉氏は20歳の時に神経症になり、苦しい日々を送ってきた。「当初は、キリスト教やキリスト教文学に救いを求めたのですが、相変わらず苦しい状態が続きました。しかし30歳ごろ、スマナサーラ長老の『自分を変える気づきの瞑想法』という本をきっかけに仏教を学び始めてからは、心が軽くなってきたのを感じ、それからどんどん仏教にハマりました」と語る。仏教アプリを開発することで、自分自身の仏教の学びも深めた。
 
 「マーシフルガール」の主人公はオタク男子。そこでオタクに仏教が訴えかけるものはと漁氏に聞くと、「私はゲーム業界でプログラマを沢山見てきましたが、主人公は典型的なプログラマ気質の人間だと思います。ゲーム業界には当然ながらオタク気質の人が多いですが、プログラマ気質のオタクには、仏教の持つ論理的な面が特に響くと思います」とのこと。

 現在はサンガと共同でスマナサーラ長老の読誦アプリを開発中。近日中にリリースとのことでこちらも期待できそうだ。(続きは紙面でご覧ください)

2019/1/1 鼎談「平成仏教・宗教30年史」 釈徹宗氏・大谷栄一氏・西出勇志氏

阪神淡路大震災の復興作業(1995年撮影 神戸市中央区) 天皇陛下の退位=発言を契機に特例法が制定され、平成は31年(2019)4月末で幕を閉じ5月1日から新元号となる。平成期の30年は何があったのかを検証するため、「平成仏教・宗教30年史」を企画し、宗教学者・宗教社会学者・ジャーナリストの3氏に鼎談をしていただいた。主に、仏教・宗教文化の現象、社会活動、研究(アカデミズム)の3点を柱にしながら、自由に語っていただいた。自然災害が相次ぎ、オウム真理教事件は宗教不信をもたらした。9・11米国同時多発テロ事件以降はイスラームへの関心が高まった。そうした中で宗教は様々な場面で社会に深くコミットしていた。そのことも今回の鼎談で示された。またこの30年間の仏教タイムス紙面に掲載された記事見出しの一部を別枠で掲載した。各人の30年史の参考になれば幸いである。(鼎談進行/構成 編集部)

 ――この30年を振り返ると3氏とも平成7年(1995)3月のオウム真理教の事件が大きい出来事だと指摘されました。事件前の1月には阪神淡路大震災が発生した。一年のうちに大災害と大事件という二つの現象が起きた。

釋徹宗氏(相愛大学教授)  阪神淡路大震災で各教団が社会貢献に目覚めた。この年はボランティア元年です。東日本大震災の時にいち早く各教団が動けたのは、阪神淡路以降の蓄積があったから。例えばお寺はメンバーシップ(檀信徒)で運営されているのでメンバー内の取り組みには一所懸命。それが阪神淡路大震災に遭遇し、メンバー外にも目を向けるようになった。当時はまだまだ稚拙だったし、神戸という都市だったこともあり、宗教者の活動が高く評価されたり、取り上げられるケースはそれほどありませんでした。

 その後の中越地震や能登半島地震などで蓄積ができて東日本で動くことができた。西出さんが話されたように伝統教団が高く評価されるようにもなった。寺院がソーシャルキャピタルとして公共性を示し得たからだと思います。

 大谷 宗教の公共性ですが、オウム真理教事件もまた宗教の社会的役割や公共性とは何かが問い直される機会になったと思うんです。また2008年に施行された公益法人改革関連3法が議論される中で、宗教法人の公益性や公共性がテーマにのぼりました。つまり阪神淡路大震災、オウム真理教事件があって、2000年代初頭の公益法人見直しが取り沙汰されてから公益性・公共性が問題にされるようになった。それが今も続いていると思います。

西出勇志氏(共同通信社編集委員) 西出 明治から続いた公益法人制度の改革が始まったのは平成14年(2002)から。日本宗教連盟や全日本仏教会、新宗連(新日本宗教団体連合会)が財団法人から公益財団法人へと移行を模索する中でシンポや研修会がたびたび開かれました。それまでは税金をどうするのかといった、どちらかというと不特定多数の公益というよりも教団益や団体益を考えた研修が多かった。それが公益法人制度改革議論で、宗教団体として公益性について話し合わなければいけないね、という気運が盛り上がったのは事実ですが、とってつけたような感じは否めなかったですね(笑)。

  東日本大震災前年の2010年は伝統仏教批判の年だったんですよ。その前年の09年あたりから生まれる人よりも亡くなる人が上回った。この頃「終活」という言葉も生まれ、2010年には流行語大賞に選ばれた。日本の場合、お葬式に200万円くらいかかり、世界の平均からみても突出していた。なぜ高額なのか。葬式・戒名・お墓だということで、伝統仏教が批判を浴びた。それが大震災後には手のひらを返したように変わる。寺院が公共性を示したからであって、社会が求めているのは公共性かとお坊さんも気が付いた。

 ――オウム真理教事件後、宗教法人法改正がありました。また1995年は終戦50年でもありましたので、各教団とも戦争責任に言及したり、平和メッセージを発表したりしました。

  その辺は大谷さんにぜひうかがいたいテーマですね。ぼくが大学院生の頃は近代仏教の研究は数えるほどしかなかった。

大谷栄一氏(佛教大学教授) 大谷 戦争責任の問題ですが、宗教情報センターのサイトで研究員の藤山みどりさんによる「宗教界の歴史認識~戦争責任表明とその後」で、教団がどのようにして戦争責任を告白してきたかをまとめています。日本では、日本キリスト教団が1967年に教団として初めて戦争責任を表明するんですが、その後はなかなか出てこなかった。それが戦後50年あたりにカトリックや仏教各宗派が戦争責任であるとか、不戦決議を表明していく。戦争責任を含めて戦時中の日本仏教教団が何をしてきたのかという研究は、先駆的なものはいくつかありますが、なかなかできなかった。それは第二次世界大戦(アジア太平洋戦争)がまだ歴史化していなくて、センシティブな問題でした。それが少しずつ歴史化され研究されるようになった。皇道仏教研究は従来ほとんどできなかったけれども、最近ようやく研究が進んできた。

西出 結局、当事者が存命だと言いにくいというのはあります。ジャーナリズムの世界をみていても、戦後70年になってようやく表に出てきたというのがあるんです。作戦を立案した人たちは鬼籍に入っていますが、前線の兵士たちが語り出す。NHK特集「告白~満蒙開拓団の女たち」では、性接待というとてもつらい経験をした当事者が語り出した。死ぬ前に語り残しておこうということです。

 大谷 戦争責任で興味深いのは、戦後50年とか、戦後70年も関係すると思いますが、大逆事件に連座した曹洞宗の内山愚童や真宗大谷派の高木顕明が教団の中で復権していることです。大谷派の竹中彰元のように戦時中に反戦的な言動をしたり、部落差別に反対した僧侶が注目されてきたのも戦争責任との関連で提示されてきたと個人的に思っています。(続きは紙面をご覧下さい)

2019/1/1 2019年新春エッセイ 社会実践重んじる日本仏教を世界へ 村山博雅(WFBY世界仏教徒青年連盟会長)

昨年11月、日本で開催されたWFBY世界仏教徒青年会議世界大会。社会実践を重んじる日本仏教を世界へ発信する機会となった。写真は、閉会式で大会仏旗を返還する全日本仏教青年会。WFBY会長として、仏旗を受け取る村山会長(中央右)。 昨年11月、仏教界における平成の締め括りに相応しく、公益財団法人全日本仏教会により世界仏教徒会議世界大会が盛大に日本で開かれ、過去最大規模の全日本仏教青年会全国大会が世界大会記念事業として開催されました。大本山總持寺における、国内外約900名の代表参加者が集った記念法要と、5000名を超える一般来場者を数えた全国大会は、仏教離れが叫ばれる昨今にもかかわらず、日本仏教のパワーを再確認させてくれました。終末期医療、自死、震災などに焦点を当てた世界大会シンポジウム「慈悲の行動―生死の中に見出す希望―」は、日本仏教最大の特徴である「密接に社会に寄り添う日本仏教」の重要性と可能性を広く発信し、「仏教×SDGs」をテーマにした複合的フェスティバルとなった全国大会は、「世界平和」と「持続可能な社会」を考える貴重な機会を作り上げました。

 さて、日本全国の仏教宗派と仏教団体、一般団体が共に協力して作り上げたこの度の大会を振り返って一番印象深く思うところは、通俗性を伴いながら社会化を果たしてきた日本仏教の特殊性が持つ、大きな潜在能力についてです。ご存じの通り現代は、国際的にも仏教の社会性や将来性が危ぶまれる時代を迎えています。その話を聞いて私たちは日本仏教が一番その危機にあると考えがちですが、実は逆に海外の仏教信者の方々は日本仏教の特徴に希望を見出そうとしているのです。

 日本の僧侶は、海外では考えられないスタンスで社会に参画しています。例えば、自然災害をはじめ、自死、貧困、人権等に関する社会問題の支援に対し、少なからず俗世と乖離した僧侶としてではなく、俗世で共に悩む一個の仏教者として活動するということです。国際的には特殊であり、私たちにとって当たり前であるこの日本仏教の特徴は、宗教性に留まらず純粋に社会に必要とされる仏教を確立すると共に、仏教に関わりのない一般団体や一般企業と普遍的に協働する仏教を構築する礎になり得ます。

 実はこの特徴が、これからの仏教に求められる一つの重要な姿であるという潮流が現に海外でも沸き起こっており、多くの新しい仏教団体が生まれつつあります。僧侶自身が世間一般と同じ環境で同じ目線で共に苦悩し共に喜ぶという在り方に、仏教に対する新しいニーズと魅力を開発する力があるのではないかという希望が、古くよりその伝統を持ち続ける日本仏教への大きな期待に繋がっているのです。

 この度の世界大会では多くの成果が上がりましたが、何よりも、社会実践を重んじ密接に世間に寄り添い続ける日本仏教を、明確に世界に発信する勝縁を得たことが最大の成果と言えるでしょう。戦争、紛争、テロ、飢餓、貧困、環境、エネルギー、その他多くの地球規模の課題が山積する世界において、日本が国際仏教界と共に果たすべき役割は、さらに軽視すべきものではないと考えています。新しい年を迎え、世界より大きな期待を頂く日本仏教が、将来に向けて何を成し遂げ、どのように歩んでいくべきなのか、仏教徒としての最大の希望を携えて、共に考えて参りたいと思います。

村山博雅(むらやま はくが)昭和46年(1971)生まれ。47歳。大阪府出身。曹洞宗洞雲寺住職。慶應義塾大学環境情報学部卒。愛知学院大学大学院仏教学博士課程前期修了。曹洞宗大本山永平寺僧堂本科修了。全日本仏教会国際交流審議会委員、世界仏教徒連盟日本センター運営委員、日本仏教青年会理事長、世界仏教青年連盟WFBY副会長などを歴任した。2016年にWFBY会長代行に就任し、2018年に日本人で初めてWFBYの会長に就任した。

2019/1/10・17日合併号 コルモス 「死刑」妥当性を検討 大谷光真会長が基調講演 善悪分ける人間観 再考主張

基調講演した会長の大谷本願寺派前門主 現代社会の課題に対し、諸宗教間の対話と協力の可能性を探る「現代における宗教の役割研究会」(会長=大谷光真・浄土真宗本願寺派前門主、略称はコルモス)の第65回研究会議が12月26・27両日、京都市内のホテルで開かれた。「なぜいのちを軽んじてはいけないのか―宗教と死刑」のテーマのもと、大谷会長が基調講演を行った。

 世界で死刑廃止の流れが進む中、昨年7月、元教祖・麻原彰晃らオウム真理教の死刑囚13人の大量執行されたのを受け、生命の尊厳をめぐり、死刑制度の妥当性を検討。 歴代門主が全国教誨師連盟会長を務める浄土真宗本願寺派の門主退任後、2017年に同連盟会長を退いた大谷会長が、死刑に関して意見を述べる機会に注目が集まった。

 大谷会長は、「死刑制度がないと困るのは誰か」との問題意識を提示。また、仏教観に由来すると断った上で、「相対的な人間社会に絶対的な死刑が成り立つのか」との疑問も提起した。

 殺人が処罰の対象となっているにもかかわらず、国家による死刑は容認されていると指摘。「なぜ人を殺してはいけないのか」という根本的な問いに答えられるものでないとし、「相対的な問題となっている」と問題点を挙げた。

 死刑の議論では犯罪者や世論などが注目されがちだが、刑務官の苦悩にもっと目を向けなければいけないと主張。「矯正を志す刑務官に、死刑の執行が命じられる。非常に残酷であり、見捨てて置けない事態だ」と強調した。教誨師の実状についても問題点を指摘。執行の実務を担う刑務官の立場を尊重し、反抗しない都合の良い受刑者の育成に協力することもあるとの考えを述べた。

 一方で、死刑廃止国では犯行現場で犯人を射殺することが多く、死刑を必要としない理由になるとの見解を紹介。「死刑制度がなくても、犯罪者を処分している場合がある。存置国の日本が遅れているとは言えない」と議論を深めた。

 こうした考えを述べた上で、「なぜいのちを軽んじてはいけないのか。この問題は宗教の問題であり、善人と悪人を分け、処罰する人間観を再考せねばならない」と主張した。「さるべき業縁のもよほさば、いかなるふるまひもすべし」(『歎異抄』)の一節を引き、「きっかけがあれば、誰でも同じことをする。本当にそう思う」と力を込めた。

 被害者と加害者の対立を超えた和解の可能性にも言及。「人の苦しみを理解するには、自分の心が豊かでないといけない。加害者も広い心を育てないと和解にはつながらない」と語った。

 今回の研究会議で、長年にわたって事務局長としてコルモスの開催を支えてきた佐々木正典氏(79)が退任する意向を明らかにした。「大谷会長と島薗進、氣多雅子両副会長の現体制となっていただけたのが最後の仕事。これからも宗教間対話の場となってほしい」と話した。

2019/1/10・17日合併号 西本願寺 大谷光淳門主がご消息 2023年に誕生850年法要を執行

ご消息を読み上げる大谷門主 京都市下京区の浄土真宗本願寺派本山本願寺で御正忌報恩講が始まった9日、大谷光淳門主は、宗祖親鸞聖人誕生850年(2023年)と立教開宗800年(2024年)の慶讃法要を2023年に執行すると告げるご消息を発表した。

 阿弥陀堂内陣の修復工事に伴い遷仏された本尊・阿弥陀如来像と、宗祖御真影の両像が内陣に揃って安置された御影堂で初めて迎えた報恩講に約千人が参拝した。

 法要に続いて行われた発布式で、大谷門主はご消息を読み上げ、「2023年には、宗祖親鸞聖人のご誕生850年、また、その翌年には立教開宗800年にあたる記念すべき年をお迎えするにあたり、2023年に慶讃法要をお勤めいたします」と表明した。

 親鸞聖人が執筆した根本聖典『教行信証』が成立した1224年を立教開宗の年と定めていると説明。親鸞聖人が明らかにした教えに触れた上で、「み教えに生かされ、いよいよお念仏を喜び、すべてのいのちあるものが、お互いに心を通い合わせて生きていけるような社会の実現」に向け、慶讃法要をともに迎えようと呼びかけた。

 ご消息を受け取った石上智康総長が所信を述べ、「宗門に集う者一人ひとりが深く受け止め、仏智に教え導かれ一歩ずつ力を尽くしていきたい」と強調。「心を一つにして精進し、共々に慶讃法要をお迎えいたしましょう」と決意を語った。

 境内では、東日本大震災被災地の岩手・宮城・福島3県の物産展のほか、刑務所作業製品を展示販売する矯正展といった全国教誨師連盟総裁を歴代門主が務める同派ならではの催しなども開催。報恩講期間中の16日までに約5万人の参拝者を見込んでいる。

2019/1/10・17日合併号 日本宗教学会など3学会がゲノム編集技術に声明 

 日本宗教学会理事会・日本哲学会理事会・日本倫理学会評議員会の3者は連名で、中国・南方科技大学の賀建奎副教授が「ゲノム編集技術を用いて双子の子どもを誕生させた」と発表したことを受け、12月25日に「ゲノム編集による子どもの誕生についての声明」を発表した。

 医学・倫理学上の重大な懸念があるとした上で、「遺伝子改変が世代を超えて不可逆的に子孫に伝わり、人類という種をゲノムのレベルで変えていくことの始まりになりかねない」と強く問題視。科学者や患者だけでなく、人類全体の未来に関わる重い倫理上の問題だとした。「特定の疾患の治療等のためになされることが将来ありうるとしても、それはごく狭い例外的な場合に限られなくてはならない」としている。

 その上で人間へのゲノム編集の規制について本格的に検討すべきだと提言。「規制を検討するにあたっては、その倫理的根拠について深く掘り下げ、規制の理由を明らかにしていかなくてはなりません。広く市民とともにゲノム編集や人の初期のいのちへの介入の倫理問題について考え、社会的合意を得ていく必要があります」とし、3者は合意形成を目指した討議にも積極的に取り組むと述べている。

2019/1/10・17日合併号 展望2019 僧侶の資質向上と再教育 願心のある僧侶育てよ! 松井宗益(花園学園学園長・元臨済宗妙心寺派総長) 

 「僧侶の資質向上」というテーマをいただきました。そこで何が肝要か。「願心のある僧侶」、この一語に尽きる。出家してお坊さんになろうとするのは、人を救いたいという願心があるからでしょう。

 出家の動機として、一つには自分自身が悩みや苦しみから解放され、自分の人生を意義あるものにしたいという思いもある。禅門では坐禅をして、自分とは何だろうというところからスタートする。その後はどうするのか。願わくば、より多くの人の悩みや苦しみに接し少しでも和らげてもらい、二度とない人生を有意義に生きていただきたいという願いを持つ僧侶になることです。

 私は、今の時代は、伝統教団にとって近代3回目の寺院消滅の危機だと思っています。最初は明治維新の廃仏毀釈。多くの伝統教団は伽藍を失い、仏像は焼かれた。苦難があったけれども先達によって維持存続できた。それは田んぼや畑、山林があったから。この時代はまだお坊さんも自分の修行ができた。

 しかし第2次大戦後の農地解放によって、田んぼや畑がなくなった。寺院経営にも支障をきたした。これが第2の寺院消滅。けれども住職は兼職をするなどしてなんとかお寺を維持してきた。

 そして第3の現在は、それを上回るような現象が起きている。檀家制度の崩壊、少子化、完全なネット社会――従来の価値観がものの見事に壊されてしまった。

 そんな中でお寺が残るとすれば、「このお坊さんに悩みを相談したい」「このお坊さんに葬式をして欲しい」と信頼され、存在感あるお坊さんになること。昔から付き合いがあるからとか、伽藍が立派だからとか、お坊さんならだれでもいいという時代は終わりを告げているように思います。

 ということは、本物のお坊さん、願心ある僧侶が残る時代なのです。寺院は消滅しても願心のある僧侶がいれば、仏法は残る。

 しばしば仏教界はお寺を残すことに重きを置く傾向にある。伽藍残して教えが消滅するのか、伽藍消滅しても教えを残すのか。むろん両立が一番良いのですが、現実は大変厳しい。資質向上や再教育は、建物を残すことが目的ではない。根本に立ち返り、願心のある僧侶を育成すること。まずは「人」なのです。

 総長時代、末寺は減らすな、資質も向上しろという声はありました。もちろん努力はした。しかし僧侶に向かない人はどうしても出てくる。戦後の宗教法人法の下では、すべての寺院住職は法人上、代表役員なのです。従ってそれに相応しい人物でないといけない。妙心寺派では、そこは厳しくラインを引いて試験をしている。

 例えば医師は、みんな国家試験を通っている。だから、患者は初めての病院や医師でも信頼して診察に行く。そうした信頼感や安心感を一般の人たちはお坊さんに持っているだろうか。理想を言えば、宗派は違えど、どこのお寺に行っても同じレベルの知識があり、対応ができるようになればいいと思っています。
 
共同生活で育成
 「願心のある僧侶」をどう育てるのか。世襲化が進み、なかなか願心をもちにくい環境にあるのも事実。教団として、共同生活が営めるような専門学校を作るのがいいと考えている。妙心寺派には花園禅塾があり、共同生活を送りながら大学で単位が取れる制度がある。ただし全員が入塾するわけではない。

 本来ならば、雛僧教育は師匠がすべき。師匠は親であることが多い。幼い頃からお寺で育ってきた者は毎日仏さまのご飯を頂いているわけですから、感謝しましょうねとお経を読む。それが嫌な人はやめていく。一方で、子どもたちは学校の授業に追われ、塾やスポーツと時間がない。高校や大学への進学は、偏差値を基準にして学校や塾が決めてしまう。そうなると宗教とは関係のない大学へ行く。寺で生まれながら、大学を卒業するまで教えにも触れたことのない人もいる。そうした人たちのためにも僧堂に入る前、一定期間、同じ行をするというのは大事なんです。

 スマホやパソコンが教えを説き、お経が流れるようにもなった。将来は、画面をセットして、遠隔地の菩提寺住職が引導をわたす時代が来るかもしれない(苦笑)。それでいいんですか、ということです。

 住職やお坊さんは、人と人との触れあいの中にいるもの。願心もそうした触れあいから生じてくると思います。

 すでに僧籍にある人たちの再教育ですが、妙心寺派では一定の法階に達しないと住職資格が取得できない。法階は一年ワンランクしかアップできない。法階昇叙には義務づけられている研修会に出席しなければいけない。だいたい一泊二日ですが、教区によっては複数回のところもある。

 問題なのは、法階をあげたい人だけが参加すればいいと思っている人たち。ベテラン住職も当然参加すべきです。そうすれば忘れかけた願心が少し甦るかもしれない。(談)

 まつい・そうえき/昭和22年(1947)生まれ。学校法人花園学園(花園大学)学園長。花園大学文学部卒。臨済宗妙心寺派宗議会議員、総務部長、宗務総長、花園学園理事長などを歴任。総長時代、過疎地寺院対策として先駆的な取り組みを行った。自坊は島根県の本性寺。

2019/1/24 曹洞宗とSVAが新たに相互協約を締結 ノウハウや人的交流活発に

若林会長と参与委嘱状を手にする鬼生田総長 曹洞宗(鬼生田俊英宗務総長)と(公社)シャンティ国際ボランティア会(SVA、若林恭英会長)は17日、新たに相互協力のための協約を締結した。

 協約は双方のボランティア活動を円滑に推進することを目的とするもので、曹洞宗は毎年SVAに補助金を交付するほか、義援金・募金の一部を寄贈する。SVAは曹洞宗から国内外におけるボランティア活動・緊急救援活動などで協力を依頼された場合は誠実に協力すると定めている。近年の大規模自然災害を鑑み、災害発生時には双方協力しての幅広い救援活動を実施する細則も設定された。

「曹洞宗ボランティア会」を前身とするSVAはこれまでも互いに助けあっての活動をしてきたが、相互協力が明文化されてより強固な協働ができるようになった意義は大きい。今後はSVAの持つノウハウやネットワークを宗門に伝えることや、宗侶の積極的なSVAの活動への参加などが期待されている。

 また、曹洞宗はSVAの名誉会員となり、曹洞宗代表役員(宗務総長)はSVAの参与職に就任することも定められた。参与は会長の諮問により助言、情報提供を行う。重要行事においてはSVAは参与の参加を拝請する。

 同日、港区の宗務庁宗務総長室で調印、楯の授与が行われた。若林会長は「阪神淡路大震災の日に締結できるというのは何かの縁だと思います。より一層の協力関係が新たなステージに入り、身の引き締まる思いです」と挨拶。鬼生田総長はSVA創始者の故・有馬実成氏の活動に若い頃から非常に感銘を受けたと語り、「(社団法人として)SVAができた時に『曹洞宗と縁が切れた』という議論もあり、皆さんと疎遠になったこともありました。昨今の自然災害においては皆さんの活躍は非常に目覚ましいものがあります。曹洞宗も原点に戻って皆さんと共に力を合わせてボランティアに協力していきたい」と抱負を語った。

2019/1/24 阪神淡路大震災から24年 NPOアース「1.17追悼の集い」高齢化で早朝の集い終了へ

今年で最後となった諏訪山での「早朝追悼の集い」(NPO法人アース提供) NPО法人「災害危機管理システムEarth」(アース、理事長=石原顕正・山梨県日蓮宗立本寺住職)と神戸の市民団体が共催する追悼式典「阪神淡路大震災 市民追悼のつどい」が17日、神戸市内で開かれた。現地の実行委員メンバーが高齢となったため、午前5時46分の地震発生時刻に行っていた「早朝追悼の集い」は今年で最後となり、節目を迎えた。

 アースや神戸の4つの市民団体が「早朝追悼の集い」を始めたのは、震災翌年の1996年。「神戸で天国に一番近い場所で追悼しよう」と、夜景の名所でもある市内の諏訪山公園ビーナスブリッジで集いを続けてきた。震災15年目からは、石原理事長が鋳造した「神戸・希望の鐘」を参列者とともに地震発生時刻に鳴らしている。最後となる今年の「早朝追悼の集い」には、例年の倍近い約200人の参列者が集まり、追悼の祈りを共有した。

 神戸市中央区の神戸市勤労会館に場所を移して営まれた「1・17市民追悼のつどい 声明と筑前琵琶による音楽法要」では、僧侶9人の声明と琵琶奏者の川村旭芳さんによる演奏が行われた。

 石原理事長は、震災以来神戸市民と歩んだ24年の歳月を振り返り、「謹んで全犠牲者への追悼、思慕の念を抱き、平和で安全な社会実現への祈りを捧げる」と回向。石原理事長が依頼し、仏教詩人の坂村真民の詩に川村さんが曲・節付けをした琵琶曲『つゆのごとくに』も披露され、参列者の涙を誘った。

 「早朝追悼の集い」は今年を最後に終了するが、今後も日中の「追悼のつどい 音楽法要」は、震災関係者が年に一度お互いの健康を気遣い、再会を喜ぶ貴重な機会となっており、今後も継続していく。石原理事長は「慰霊とともに、多くの人々が心待ちにしている。これからも真の救済の手立てを求め、実践していきたい」と話している

2019/1/24 大正大学 社会共生学部を開設へ 2020年4月

昨年11月2日、大正大学と京都市が協定を結んだ。大塚学長(左)と門川大作市長 大正大学(大塚伸夫学長、東京都豊島区西巣鴨)は明年(2020年)4月、「社会共生学部」を開設する(設置届出準備中)。現在の人間学部を改組したうえで、公共政策学科と社会福祉学科の2学科で構成。日本の将来を見据えた人材育成を目指す。

 大正大学は2010年に仏教学部を再開設し、表現学部を開設するなど近年、大胆な改革を進めている。また、2011年3月の東日本大震災後に宮城県南三陸町でのボランティア活動が契機となり、南三陸町をはじめとした各地域との繋がりを深めていた。2014年に地域構想研究所を設立、2016年に地域創生学部を設置した。

 大乗仏教精神を建学の精神とする大正大学。天台宗・真言宗豊山派・真言宗智山派・浄土宗の設置4宗派及び時宗が参画している。

 2020年開設予定の学部名「社会共生学部」はそうした仏教系大学としての姿勢も体現している。「共生」という言葉は、3期にわたり大正大学学長を務めた椎尾弁匡博士(1876~1971)が提唱し、実践活動を行ったのが起源で、今日では仏教界を超えて一般社会でも広く用いられている。また大学が教育ビジョンとして掲げる「四つの人となる」(慈悲・自灯明・中道・共生)にも通じる。

 公共政策学科は、少子高齢化・人口減少・雇用問題など多くの課題を抱える社会で、公共的課題を、政策という手段によって解決するための方法や手法を学ぶもの。社会福祉学科は従来通り、医療・福祉・教育など幅広い分野で支援を必要としている人の相談や援助を行うソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)を育成する。

 大学側は、「『共生マインド』を身に付け、『連携と協働』をテーマに地域の課題解決を担う人材育成を行いたい」と新学部に思いをかける。

 大正大学は、大学および地方自治体と積極的に連携、協定締結を進めており、同じ仏教系の種智院大学とは研究を主体とした学術交流が中心。地方大学との大学間連携協定は、地方創生や被災地復興に貢献できる人材育成や人材交流などに主眼が置かれている。

 現在、連携および協定関係にある自治体数は、70以上に及ぶ。昨年11月には京都市と「首都圏における京都情報の発信・地方創生の推進に関する協定」を締結。 大正大学に近い「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる巣鴨で学生が企画運営する京都のアンテナショップ「京都館すがものはなれ 座・ガモール2号店」もリニューアルオープンした。

 ちなみに東北のアンテナショップ「座・ガモール1号店」も巣鴨地蔵通り商店街にある。北宮崎地方の物産を揃える「座・ガモール3号店」はJR巣鴨駅近くのアーケード街に構える。

 大学での学びと実践体験を地方に還元することで地域創生への貢献を志向する大正大学。社会共生学部もその延長上に位置づけられる。
 
「共生」写真展も
 大正大学のキャンパス内に設置されているアートスペースでは、「共生」をテーマに巣鴨地蔵通り商店街を撮影した写真展を開催中。写真家のハービー・山口氏が撮影し、運営は仏教学科国際教養コースの学生が担当している。5月6日まで。

2019/1/24 展望2019 天皇代替わりの年を迎えて 皇室に私的儀礼化の流れ 島薗進(上智大学実践宗教学研究科特任教授)

皇居へと続く二重橋(手前) 昭和から平成への代替わりは平成元年に昭和天皇の御大葬と剣璽等承継の儀が、同2年に即位の礼と大嘗祭が行われ、およそ2年間にわたって代替わり儀礼が行われた。今回は、本年4月30日の退位の礼、5月1日の剣璽等承継の儀、そして、11月に行われる即位礼、大嘗祭と半年の間に集中して行われる。

信教の自由
 昭和天皇から今上天皇への代替わりのときには、代替わり儀礼のいくつかが神道の儀礼として行われることについて、それが日本国憲法が規定する信教の自由と政教分離に反するものでないかどうかが議論された。御大葬や大嘗祭は明らかに神道儀礼であり、国民がこれに関与を強いられるのは憲法の規定からして適切ではない。国民の象徴である天皇の儀礼行為は公衆に押し付けられることのない私的な行為であるとしても、自ずから公的意味合いを帯びる。そこで、そこに国費を投入せず内廷費で行うという形で節度を保とうとの考え方も示された。

 特定宗教の儀礼、それも明治維新後、国民を神聖天皇への死をも辞さない崇敬に引き込むような働きを担った、国体論(神聖な天皇中心の国体は世界に類例ないすぐれたものとする信念)と結びついた皇室儀礼を、国家的な儀礼として行うことには、憲法上、問題がある。多様な思想・信条をもつ人たちに、ある特定宗教の儀礼への参加を押し付けることがないようにすること、これは日本国憲法19条や20条、さらには89条の定めるところである。特定の宗教的立場や国体論的立場を人々に押し付けるような働きに皇室が深く関与しないこと、これが象徴天皇制にふさわしい。

 平成に入り、皇室も国民もこうした考え方にそって新たな歩みを進めようとしてきた。平成14年には小泉首相の下で福田官房長官によって「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」が設置され、靖国神社ではない新しい追悼施設によって戦死者の追悼を行うことが提案された。靖国神社は天皇の祈りが重要な意義をもつ国家神道の中核的施設だった。その靖国神社に国家的地位を付与しようとする国粋派の動きを封印する方向での答申である。

 平成16年には小泉首相の私的諮問機関として「皇室典範に関する有識者会議」が設置され、翌年「皇室典範に関する有識者会議報告書」が提出された。これは男系の万世一系の皇統を維持しなくてはならないという国体論の立場に対して、女系天皇の可能性を示唆する方向で政府が動いたものだ。

 皇室の国家神道的機能を縮小しようとするこうした動きはその後も続き、宮内庁は平成24年から25年にかけて「今後の御陵及び御喪儀のあり方について」の検討を行い、その結果、天皇・皇后の葬法を土葬ではなく火葬とし、陵墓は簡素なものとすることを発表した。

創出された儀礼
 これは天皇・皇后他、皇室の意向を反映したものであり、「検討に当たっての基本的な考え方」には「今後の御陵の形態、御葬送の儀式については、国民の日常生活に影響が及ぶことを極力少なくするようなあり方とする」と述べられている。

 さらに、平成30年11月30日、秋篠宮は「大嘗祭への公費支出について「(手元金の)内廷会計で行うべきだ」と異議を唱え、「身の丈に合った儀式」とするのが本来の姿ではないかとの考えを示した」(時事通信)。同日夕刻の時事通信は「秋篠宮さまが大嘗祭は宗教色が強いとして公費支出に異議を唱えたことを受け、政府内に戸惑いが広がっている。政府は支出は既に決定済みとして沈静化を待つ構えだが、方針決定に際して議論を尽くしたとは言いがたい。政教分離をめぐる論争が再燃しかねないと神経をとがらせている」と報じている。

 代替わりに典型的に現れる荘重な皇室儀礼は、明治維新以後に創出または拡充されたものが多い。敗戦後、日本国憲法が信教の自由と政教分離を明確に規定した後も、それらを廃止ないし縮小する動きは目立たなかった。これは昭和天皇が継続的に在位したためやむをえなかった面があり、平成元年の代替わりに至った。

 しかし、平成時代には次第に皇室儀礼や神道と結びついた制度を皇室の私的な儀礼とし、国家神道として機能するのを抑える方向の変化が試みられてきている。

 戦前の国家神道に郷愁をもつ日本会議や神道政治連盟の立場に近い安倍政権は、皇室も従来の自民党政権も賛同しているこの方向に逆行するような姿勢を示してきた。しかし、次の代替わりに至るまでには、この変化がさらに明確になるだろう。それは象徴天皇制の理念が、自ずから指し示す方向である。

 しまぞの・すすむ/1948年生まれ。東京大学名誉教授。宗教学。著書に『国家神道と日本人』、『近代天皇論―「神聖」か、「象徴」か』(共著)など多数。

2019/1/31 「ハンセン病と佐川修さん」宮崎駿監督が思い語る 「プロミンの光」公開

言葉を詰まらせながら、「プロミンの光」を解説する宮崎駿監督 ハンセン病資料館開館25周年を記念して27日、東京・東村山市の国立ハンセン病資料館で映画監督の宮崎駿氏(78)を迎えて講演会「佐川修さんとハンセン病資料館」が開かれた。資料館のある国立療養所多磨全生園と元入所者自治会長だった佐川さん(享年84)とのエピソードなどを披露した。

 宮崎氏はまず、「もののけ姫」を制作時の思いを語った。「日本の時代劇は侍と百姓(農民)が出てくるだけ。もっとたくさん色んな人が住んでいた。それは資料館にも展示されている『一遍上人絵伝』にも描かれている。乞食だけでなくハンセン病の人も」と解説。歴史の表面に出てこない人たちを扱ったのが「もののけ姫」だった。

 50年くらい前から毎日全生園の前を車で通るという宮崎氏は、資料館が現在の国立ではなく、高松宮記念としていた時代に初入館。「膨大な資料の量に圧倒された。とにかくここで生きてきた人たちの証拠のものが山のようにある。僕は、自分個人の問題として、疎かに生きてはいけないと本当に思った」と当時の印象を口にした。

 佐川さんとも出会い交流を深めた。園内を散策していく中で、昭和初期に建設された山吹舎の保存を働きかけた。修復によってかつての姿が甦った。ところが、「佐川さんは気に入らなかった。『あんなに立派じゃなかった』『縁側にはガラス戸はなかった』と。亡くなる直前まで言ってました。『この頑固者!』と思っていました」と話し、会場を沸かせた。

 宮崎氏は時おり言葉を詰まらせながら「大事な友人」と繰り返し、佐川さんを悼んだ。そしてスタジオジブリの吉田昇氏(美術監督)と宮崎氏が構想し吉田氏が描いた「プロミンの光」の絵が公開、展示された。

 不治とされたハンセン病が特効薬のプロミンによって治癒していくようになり、園の雰囲気も患者の様子も変わった。佐川さんが残したそんな言葉から生まれた。プロミンの光を包むような両手は佐川さんの手がモデルだ。近く資料館に展示される。

 佐川さんは東京大空襲を体験した後にハンセン病であることが判明し、群馬県の栗生楽泉園に入園。当時あった重監房への「メシ運び」もした。その後、日蓮宗僧侶の綱脇龍妙が開設した山梨県の深敬園に移った。お経はこの時に覚えた。それから多磨全生園に転園。外部作業で高所から転落し死線をさまよったこともあった。入所者自治会役員や資料館の運営に力を注ぎ、昨年1月24日に死去した。

2019/1/31 清浄華院 浄土宗離脱へ 法主人事巡り協議決裂

会見した清浄華院の吉川執事長 法主の人事を巡り、浄土宗大本山清浄華院(京都市上京区)は25日、浄土宗との被包括関係を解消する意向を固めた。任期切れとなっている真野龍海前法主(96)の再任が認められなければ宗派を離脱する構えで、宗務庁(同市東山区)に通知するなどの手続きを開始した。29日に開かれた次期法主を推挙する3回目となる会議でも協議は決裂した。

 真野氏の任期満了を前に、浄土宗は昨年11、12月に2回にわたって法主を推挙する会議「浄土門主・法主推戴委員会」を開催。同寺側は続投の意思を示していた真野氏の再任を求めたが、推戴委として結論が出ず、同年12月27日に任期切れを迎えた。

 同寺は再任が認められない理由が分からないとして、25日、関係寺院でつくる「浄山協議員会」と責任役員会を開き、浄土宗との被包括関係の解消を決定。手続きに従い、28日までに境内に規則変更の公告を掲示するとともに、浄土宗にも通知した。新宗派名は「浄土宗一条派」で、住職は浄山協議員会で選任するとしている。
 
 京都府に規則変更の申請をするまでに手続き上少なくとも2カ月かかる。離脱の意思を示すことで真野氏の再任を迫る決意で、3回目となる29日の推戴委に臨んだが、決裂する結果となり、委員会は解散となった。
 
 委員長の豊岡鐐尓宗務総長は、「離脱を決定した寺院の法主を推挙する意味がない」と会議の打ち切りについて説明。離脱理由の説明を受けていないと断った上で、「留まってほしい。要望があれば聞きたい」と話し合いに応じる姿勢を見せた。
 
 推戴委後に同寺で開いた記者会見で、代表役員代務者の吉川文雄執事長(70)は、「法主は高齢だが教化の最前線に立っていただけると認識している。再任の否定は受け入れがたい」と主張。「続けられる意思がある以上、念仏申す機会を奪うことは教えの理念にも反する。離脱は法主を守るための手段」と強調した。さらに、「話し合う機会があれば応じたい。離脱手続きの中止も考える」と語った。
 
 浄土宗総大本山の離脱を巡っては、1947年に総本山知恩院が離脱。浄土宗本派として活動していたが、62年に再び合同した。大本山金戒光明寺も46~77年まで黒谷浄土宗を名乗り分立していた。
 
 浄土宗は昨年10月の宗議会で、被包括関係にない寺院の代表役員就任を禁止するとともに、就任した僧侶を除籍できるよう規定を改正した。施行日は4月1日。

2019/1/31 展望2019 ひとり死社会の時代 高齢者の独居化が進行中 小谷みどり(シニア生活文化研究所所長)

 
継承者がいないお墓の無縁化が進んでいる(東京近郊の墓地) ひとり暮らしをしていない人のなかには、独居高齢者に対して、「かわいそう」「さびしい」と思う人は少なくない。高齢者は子や孫に囲まれて幸せそうに過ごすという、昔のホームドラマのイメージが、いまだに多くの人の脳裏に染みついているからだ。

 高齢者の6割
 ところがいまや、高齢者の暮らし方は、ひとり暮らしの方が当たり前になりつつある。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、65歳以上がいる世帯のうち、三世代世帯が占める割合は、1980年には50・1%あったが、2017年には11・0%にまで減少した。変わって昨今では、ひとり暮らしの高齢者が26・4%を占め、高齢者の独居化がこの40年間で急速に進んでいる。高齢夫婦二人暮らしも合わせると、高齢者の6割が、すでに独居か、独居になる可能性がある。

 しかも内閣府の2014年調査によれば、65歳以上でひとり暮らしをしている人の76・5%が、今のままひとり暮らしでよいと回答している。元気なうちはひとり暮らしの方が、家族に気兼ねしなくていいという人は多いのだろう。病院通いはしていたとしても介護が必要な状況ではなく、親しい友人や親せきが何人かおり、年金は充分ではなくても日々の生活に困るほどではなく、気ままに暮らせるのであれば、ひとり暮らしは幸せかもしれない。

 そもそもひとり暮らし高齢者は、死別による独居化が主たる原因とされてきたが、これからは生涯未婚者の高齢独居化が深刻だ。50歳時点で一度も結婚経験がない人の割合を示す生涯未婚率は、2015年には男性が23・4%、女性は14・1%だった。日本では最近まで、「男性は結婚して一人前」などと言われており、結婚しないという人生の選択肢はありえない風潮があった。現に1950年には男性の生涯未婚率は1・3%しかなかった。
1990年以降、男性の生涯未婚率が急増したが、1990年に50歳だった人は来年、80歳を迎える。言い換えると、今までのひとり暮らし高齢者には生涯未婚は少なかったが、これからは生涯未婚による独居化が増える。もっと言えば、これまで亡くなっていた人で生涯未婚はほとんどいなかったのに、これからは結婚経験のない人がどんどん亡くなっていく時代がやってくる。

しかし僧侶だけでなく、社会全体も、この事象に対する対策を講じていないのが現状だ。今までとこれからは、まったく異なる社会であることは明白なのに、である。


孤独死の場合、室内がごみに覆われているケースは珍しくない(昨年のエンディング産業展でミニチュア再現された孤独死の部屋) 先祖の墓の行方は
 特に寺院にとっては、問題は深刻だ。多くの寺院は、その経済基盤を子々孫々継承することを前提とした檀家の布施に頼っているが、生涯未婚者の増加は、近い将来、檀家が減少することを意味する。

 墓の継承者がいなくなれば、無縁化も進む。先祖の墓を片付けてしまう墓じまいも、この先、加速度的に増えていくだろう。先祖意識が薄れた結果ではなく、墓参りをする子孫がいなくなるのだから、先祖の墓の行方は無縁化か、墓じまいのどちらかしかない。

 墓じまいには批判的な僧侶は少なくないが、自分でお金と労力をかけて墓を片付けようという人は、放置して無縁化させてしまう人より、先祖を大切に思う意識が強いのではないかと私は思う。子々孫々での継承を前提としてきた墓が破たんすれば、寺院の未来も危うい。

 なぜなら、檀家と寺院は墓や葬儀、法事でつながっている関係であって、多くは、信仰でつながっているわけではないからだ。現に、「菩提寺があることは子孫にとって負の遺産だ」と、離檀したいと考える人は少なくない。

 寺院にとってもっと喫緊の問題は、配偶者や子どもがいない人の葬儀を誰がするのかということだ。国立社会保障・人口問題研究所の2017年調査によれば、65歳以上の独居男性のうち、16%が2週間のうち、一度も誰とも話さないという。家族がいないだけでなく、社会ともつながりがない人がこれだけいれば、早晩、葬儀の意義を問われる時代がやってくる。布施を払う人もいない、遺族も参列者もおらず、葬儀をする意味をみいだせない場合、僧侶はどんな対策を取るべきだろうか。

 私は、無縁死の葬送を考えるよりも、無縁死をいかにして減らせるかを僧侶は考えるべきではないかと思う。

 家族や地域との関係が希薄化し、ひとり死が当たり前になる社会においては、新たなつながりの構築に寺院が関わる余地は広がる。誰も経験したことのない社会の到来に向け、僧侶がやるべきことはたくさんある。

こたに・みどり/昨年末で25年半勤務した第一生命経済研究所を退職。シニア生活文化研究所を設立し所長に。最新著作に『没イチ』(新潮社)、その他、『ひとり死時代のお葬式とお墓』(岩波新書)など。

2019/2/7 全日本仏教会理事会 過疎問題で情報集積へ 近くネットで調査へ

新年懇親会で来年の島根大会をアピールする島根県仏教会の清水谷会長とスタッフたち 公益財団法人全日本仏教会(釜田隆文理事長)は1月30日、都内のホテルで理事会を開き、新年度の事業計画案や収支予算案などを審議し、原案通り承認した。明年10月の第45回全日本仏教徒会議島根大会への共催が決まったほか、10年後の財団創立70周年に向けた要望も寄せられた。またこの2月末から3月にかけてインターネットを活用して、過疎問題に関する調査の実施が報告された。

 過疎問題について理事会後の会見で釜田理事長は、「それぞれの宗派では色んな形の過疎の問題がある。考え方も違うと思う。そういうものを全日仏に提供してもらい、全日仏として何か方向付けができないかと考えて、理事長になって提起した。一宗派で考えるよりも、いくつかの宗派が集まって考える方がいろんな意見が出てくると思う」と意義を語った。全日仏として情報集積と意見交換の場を設けることになりそうだ。

 戸松事務総長は過疎調査に関して、 地方から東京に出た人たちを対象にするという。「もともと菩提寺がある。だけど今はお寺さんと付き合いがない方たちはどういう葬儀をされているのか。例えば(郷里の)お寺に戻って納骨をするのか。推測ではなく実態を知るべく、首都圏を中心に全国規模で不特定多数に実施する」と語った。

 全日仏は2年前、大和証券と共同で「仏教に関する実態把握調査」を行っており、今回も同様にネットを用いて実施する。7千サンプルを予定している。(続きは紙面をご覧ください)

2019/2/7 ヒバクシャ国際署名、宗教界に協力求める 全日仏や佼成会など訪問

全日仏に署名の意義を説明する川崎氏ら(右側) 世界中の核兵器廃絶を目標とする「ヒバクシャ国際署名」の協力を求めるため、ノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲国際運営委員と日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳代表委員、それに浄土宗僧侶で「ピースプラットホーム」の森俊英事務局長は1日、東京都内の教団や寺院、団体を訪問した。

 東京都杉並区の立正佼成会では川端健之理事長らと懇談。続いて訪れた港区の全日本仏教会(全日仏)では奈良慈徹社会・人権部長らの対応を受けた。川崎氏は「政治的な立場を超えて、まずは核兵器の廃絶という一点に絞って協力をしていく」と署名の目的を説明し、現在約830万筆の署名を集めているが「目標は数億筆で、まだ2桁ほど足りない状況です」と協力を切望。田中氏は「私も87歳だし、被爆者はどんどん亡くなっている。生きているうちに核兵器のない世界にしたい」と語った。

 奈良部長は、会として動くには理事会としての決定を経なければならず、すぐにというわけにはいかないと説明しながらも「実は30日の理事会でもこの署名のことが話題にされました」と明かし、前向きな姿勢を示した。この後は浄土宗大本山増上寺などを訪れた。

 全日仏は反核への取り組みを早くから行っており、1957年にはイギリスがクリスマス島で行った原水爆実験への反対声明を出し、以後も各国の核実験に抗議している。立正佼成会も加入する新日本宗教団体連合会は1982年の第2回国連軍縮会議に際して3700万筆の反核署名を集めた。こういった実績がある宗教界が反核運動に積極的に取り組むことが期待されている。

2019/2/7 アーユス・デイ 甲斐田万智子・谷山博史両氏にNGO大賞を贈る

大賞を受賞した甲斐田氏(中央右)と谷山氏(中央左) NPO法人「アーユス仏教国際協力ネットワーク」(アーユス、茂田眞澄理事長)が主催する国際協力NGOの祭典「アーユス・デイ」が1月31日、東京都品川区の日蓮宗本立寺で開催され、第6回アーユス賞授賞式が挙行された。長年にわたる功績に対して贈られるNGO大賞は、国際子ども権利センター代表理事の甲斐田万智子氏と日本国際ボランティアセンター前代表理事の谷山博史氏が受賞した。

 甲斐田氏は、1960年生まれ。長年にわたりアジア各地で暮らし、人身売買や児童労働、子どもの性的搾取の問題に取り組んだ。子どもの権利に関するNGO関係者に大きな影響を与え、多くの人材を輩出してきたことが評価された。

 受賞スピーチで甲斐田氏は、学生時代にフィリピンで出会ったスラムの子どもたちをはじめ、「多くの人の影響を受けて今の私がある」と感謝。今年は国連で子どもの権利条約が採択されて30年。SDGsでも子どもへの暴力を撤廃する目標が掲げられているが、日本でも体罰や児童虐待が続けられていると指摘し、「このような暴力をなくすためにも、あらゆる人が子どもの権利を知ることが大事」と話した。

 谷山氏は1958年生まれ。タイ・カンボジア国境の難民支援をはじめ30年以上にわたり活躍し、日本の国際協力NGOのネットワーク構築にも尽力。その現場経験に根差した非戦の精神は、国際NGOに携わる多くの人に影響を与えた。

 谷山氏はこれまでの活動を振り返る中で、「戦争は降ってくるものじゃない。作られているものだと現場の情報から訴えてきた」。紛争が続くアフガニスタンで、「対立は武力でしか解決できないと考えていた現地の男性が、NGOの活動を見て〝対話による解決しかない〟と考えを変えたことを、私は今でも心の支えにしている」と語った。(続きは紙面でご覧ください)

2019/2/7 WCRP理事会 6月にG20諸宗教フォーラム開催を承認 大阪サミットに向け成果発信

 公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会は1月29日、東京都杉並区の立正佼成会法輪閣で、今年度(18年度)の補正予算と新年度(19年度)の事業計画などを主義案とする理事会および評議員会議案説明会を開いた。6月下旬のG20大阪サミットに先立ち、京都でG20諸宗教フォーラム2019を開催することが承認された。8月にドイツで行われる第10回世界大会のテーマの訳語が「慈しみの実践―共通の未来のために」(Caring for Common Future)と決まった。

 昨秋、就任した植松誠理事長(日本聖公会)による最初の理事会。「以前、キリスト教では白柳誠一枢機卿が理事長をされたが、日本ではキリスト教はマイナー。理事長ができるかと心配しているが、優秀な評議員、理事、事務局みなさま方のお救けを得て理事長職を務めて参りたい」と決意を述べた。

 G20諸宗教フォーラムは6月11・12日、日本はじめ世界の宗教指導者や国際機関の代表者たちが参加。経済格差による貧困問題の恒常化や気候変動の悪化、核兵器禁止条約、SDGs(持続可能な開発目標)などを討議し、成果を世界に発信していく。

 ドイツのリンダウで行われるWCRP世界大会(8月20~23日)は、メインテーマのもと、「A、共通の未来のために積極的平和を促進する」「B、共通の未来のために戦争やテロ等の紛争を予防し解決する」「C、共通の未来のために公正で調和のある社会を促進する」「D、共通の未来のために持続可能な総合的人間開発のために行動する」「E、共通の未来のために地球を守る」の5つのサブテーマが設けられた。

 今回の世界大会にはドイツ政府が資金協力しており、ドイツ政府は地域ごとでの準備会議を要請。アジア地域では3月5~7日にミャンマーのヤンゴンでアジア準備会議を開催することが決まっている。(続きは紙面でご覧ください)

2019/2/14 興正寺問題 西部法照住職に聞く 裁判外和解〝間違い〟 訴訟リスク「全責任とる」

時折、怒気を帯び、独自の主張を展開した西部氏 名古屋市昭和区の高野山真言宗別格本山八事山興正寺の問題が再燃した。添田隆昭特任住職(宗務総長)による昨年5月の元住職側との裁判外和解後、再び元住職側の関係企業と係争状態に陥った。なぜ和解は崩れたのか。責任役員2氏の立ち会いのもと、西部(にしぶ)法照住職(73)に聞いた。西部氏は「内局と喧嘩をするつもりはない」とする一方、「興正寺住職として貫くべき立場がある」とし、独自の主張を展開。宗派との緊張関係を窺わせた。

西部 私の役割は興正寺の信頼と信仰を回復することに尽きる。混乱の原因がどこにあったのか、見定めることが大切だ。お寺に商業活動が立ち入る隙間は全くない。これが私の基本理念だ。

混乱の原因は何か
 私は昨年6月1日から主監に就任した。それ以前のことについて何かを言う立場にはない。ただ、梅村(正昭)住職(当時)が(寺有地売却の)礼録納付の手続きを怠ったとか、そういう表面的な問題ではない。100億円という金が消えているんだよ。もっと深い問題が隠されていると思う。だが過去に遡っての追及は私の仕事ではない。

特任住職だった添田総長から、具体的な和解内容などの引き継ぎはなかったのか。
 何もない。

引き継ぎなしの入寺に不安はなかったのか。
 私に与えられた天命だ。不安は全然感じていない。

特任住職が、責任役員が宗派に出した解任要望書を契機として昨年8月に辞任した。どう思うか。
 私の関与するところではない。

特任住職が行った裁判外和解をどう思うか。
 明確に間違いだ。だが何か深い隠れた原因があって、それによってそういう結果になってしまったのだろう。総長が判断を間違えたというわけではない。何かの力が働いて、そうならざるをえなかったということかもしれない。これは推測だ。

昨年8月に梅村元住職時代の関係企業R社から寺資産13億円超を差し押さえられた。なぜ、再び差し押さえられたのか。
 私は〝差し押さえが来る〟とか〝公正証書がある〟とか、全く知らなかった。和解内容も一度も見たことがない。和解で全部片付いたと思っていた。そうしたら8月20日に差し押さえられた。相手方は和解したように見せかけていたのだろう。こういう巧妙な戦略で初めからやっている。(続きは紙面をご覧ください)

2019/2/14 浄土宗東京教区「僧侶紹介」事業着手へ 菩提寺住職の承諾前提

紹介システム案について説明する成田氏 浄土宗東京教区は1月31日、港区の増上寺会館で浄土宗開宗850年の慶讃事業として同教区で実施する僧侶紹介システムに関する公開研究会を開いた。50人が参加した。

 離郷檀信徒や首都圏の宗教浮遊層への教化伝道、教宣拡大を目的に葬儀や法要への僧侶紹介システムの構築を目指す東京教区。教化団長の佐藤雅彦氏は事業に関する意義を「地方寺院の檀家で、東京在住の人々への浄土宗の法務提供のため」「東京近辺に在住で、霊園墓地などを保有し、『うちは浄土宗』という自覚のある人々に対する浄土宗責任遂行」と整理した。

 具体的な法務受付システム案については成田淳教氏(感応寺住職)が説明。東京教区のHPで法務を受け付けし、利用者が菩提寺の有無・日程・場所・法要内容・お布施額を選択入力し、対応可能な教区内寺院(登録制)へ情報が配信され、先着順で施行寺院を決定する仕組み。他教区の菩提寺から同システムへの紹介があった場合にはお布施の50%を「本尊前」として納めることで地方寺院運営に寄与する可能性も示した。
 
 その後、この取り組みやシステムへの活発な意見交換がなされた。特に菩提寺がある利用者の場合は「承諾を得た」ことを前提にして法務を受け付けるが、「東京都内に菩提寺があっても法要をお願いしたくない方の場合はどうするのか」「菩提寺が無いと言って、後からあったことがわかりトラブルになるケースも。その場合、責任の所在は寺院か教区か」と懸念。佐藤団長は「今現在は、菩提寺住職への断わりなしで執行することはできない」との見解を示し、今後の継続的な課題とした。

 このほか、僧侶紹介システムの認知、登録する僧侶の講習や研修会の実施、業者との関係性、住職の顔写真の掲載の有無など、多岐にわたった。

 開宗850年の正当は2024年だが、「僧侶紹介システム」は次年度から段階的に東京教区のHPで始動させる予定だ。

2019/2/14 日蓮宗荒行98人が成満 法華経寺87人が満行 遠寿院11人も4人に許証不授与

全身全霊で読経する満行僧(中山法華経寺) 
 修法祈祷を習得する日蓮宗の「寒一百日」荒行が10日に満行を迎え、千葉県市川市の大本山中山法華経寺の日蓮宗加行所(吉澤順將伝師)と、日蓮宗遠寿院大荒行堂(戸田日晨伝師)がそれぞれ成満会を厳修した。加行所は体調不良により五行僧1人が退堂し、87人が満行した。行堂改革を進める遠寿院では、気力減退で初行僧1人が退堂し、11人が満行したが、そのうち4人に「修行者として行堂清規等に反する行為があった」として許証を授与しない措置がとられた。

 法華経寺祖師堂で営まれた日蓮宗加行所の成満会では、同寺の新井日湛貫首を導師に修行僧らが全身全霊で読経。成満を待ち望む寺族、檀信徒らが見守る中、渾身のお題目が堂内に響いた。

 自身も五行成満の修法師である中川法政宗務総長は、「修法は世間に灯を点す最強の武器。修法師になった限りは一生、死ぬまで弱音を吐くことは許されない。修法師に弱音はない」と挨拶。「娑婆は平和で楽しいように見えるが、平和の中に地獄がある。それを見極め、治める力が修法にはある。全国津々浦々に救いの手を差し伸べていただきたい」と期待した。

 吉澤伝師は「大尊神さまにお預けした生命を、たった今皆さまにお返しいたします」と成満を宣言。成満後も常に感謝の気持ちを持つ修法師となるよう訓示した。

行満者に労いの言葉をかける戸田伝師(遠寿院) 遠寿院では、許証を授与しない異例の事態について、戸田伝師が挨拶の中で言及。「今回、以前とは違う行堂改革の視点で(修行僧の生活を)追ったところ、色々なことが発覚した。私の立場として、そういう者に遠寿院の許証を今渡すことはできない」と話し、該当する修行僧への許証は「伝師預かり」とすることを告げた。

背景に行堂改革の流れ

 遠寿院の成満僧は参行1人、再行6人、初行4人。許証が授与されなかった4人は、いずれも再行だった。具体的な違反内容は明かさなかったが、初行に対する先輩僧の立場を悪用した行為があり、戸田伝師は、「これまでの行堂改革の流れを含め、修行者として行堂清規等に反する行為があった」としている。

 遠寿院は、昨年修行僧を対象にしたアンケート調査をまとめ、同院内の修法研究所に行堂研究会を設けて外部の識者を招聘するなど、行堂改革を進めてきた。入行時の選考を徹底したほか、特に支配構造を生みやすい先輩僧と初行僧との関係で違反行為を戒める方針を打ち出していた。

 遠寿院での修行経験がある僧侶の一人は「異例の事態に驚いた。戸田伝師が目指す行堂改革に反する行為があったのだろう。伝師も相当な覚悟があるはず。賛否はあると思うが、行堂改革は支持したい」と話した。

2019/2/21 曹洞宗宗議会 鬼生田機構改革スタート 宗制を全面的見直し 


答弁する鬼生田総長。後方は須田孝英議長 第132回曹洞宗通常宗議会が18日、東京都港区芝の檀信徒会館に招集された。鬼生田俊英宗務宗長就任後最初の通常宗議会で、目玉施策として宗務庁内に「宗制調査室」(総務部)、「過疎対策準備室」(伝道部)を設置する案を上程。スローガン「竿頭の先に未来をひらく」を掲げ、100年後を見据えた教団のための「鬼生田機構改革」の幕が切って落とされた。

 鬼生田総長は施政方針演説で、「宗務運営の効率化と体制強化を図るため、組織の機構改革・事務分掌等の見直しを、現在内局において検討を重ねている」と述べ、宗制を見直し抜本的な組織改革に繋げたい考えを示唆した。過疎対策準備室の設置はその改革の一環であり、将来的には「過疎地域等における宗門寺院の問題に関する対策室」に発展させる意向。また曹洞宗総合研究センターについては「その活動が広範囲に渡っているため、各研究活動において、充分な成果が提示されていない場合も見受けられる」とし、シンクタンクとしてさらなる活躍ができるよう「大胆な構造改革」に着手すると表明した。

 議案説明で橋本壽幸総務部長は宗制調査室について、宗制を時代に即応するよう全面的に見直すための設置だと述べた。設置期間は2023年までの時限立法で、鬼生田内局の4年間で宗制の矛盾点や合理的でない点を徹底的に洗い出す。調査室と過疎対策準備室の今年度の予算は各100万円が計上されている。(続きは紙面をご覧ください)

2019/2/21 浄土宗全国女性教師の会 「ふたはたの会」発足 困難さ共感し合える組織に  


増上寺で開かれた第1回集会に20人が参加した 有志の浄土宗女性教師が準備を進めてきた「ふたはたの会ー浄土宗全国女性教師の会」が発足し、第1回集会が12日、東京都港区の増上寺慈雲閣で開催された。全国各地から約20人が参集。会長には女性宗会議員の稲岡春瑛氏(東京都・林宗院)が就いた。

 同会は「宗祖法然上人立教開宗の精神に基づいて、女性教師及び教師を目指す女性の研鑽と親睦を図り、全国の浄土宗女性教師の連絡提携及び社会教化に尽くすこと」を目的に発足。この日の第1回集会では初めに別時念仏を営み、その後の会議では会の名称、会則、役員などを決めた。

 「ふたはたの会」の名称は、法然上人の誕生時に、生家の木に「二幡」がなびいてきたという伝承にちなんだもの。将来的に男女差別がなくなれば「浄土宗全国女性教師の会」の名称を外す予定だ。会長には稲岡氏が就任。年々増加する女性教師の研鑽と親睦を図ろうと昨年から稲岡会長をはじめとする9人が発起人となり、全国の女性教師に賛同を呼びかける文書を送るなど準備を重ねてきた。

 会議では参加者が自己紹介を兼ね、これまで女性教師として感じた差別や困難な体験を交えて会への期待を語った。

 稲岡会長は自身の家事・育児・介護の体験を踏まえながら、「女性が外で活動するのは難しいとつくづく感じている。それを共有できるのが同じ女性教師」と述べ、「女性ということで降りかかって来る肩の荷の重さもあると思うが、私たちは決して一人ではない。思いを共感し合い、仲間がいることを知ることで、元気になり、頑張ることができる会にしたい」と挨拶した。

 養成道場の面接時に「なぜ女なのにやるのか、(教師をサポートする)助教師でいいんじゃないのか、と言われた」という会員は「こんなことをお坊さんが言うのか、ということがある。この会があって心強い」と吐露。住職のサポートのために僧籍を取った会員は「女性教師の場合は法務があるだけでなく妻や母としての仕事もあり、自分の仕事が倍になってしまった」と様々な役割への対処といった課題の意見交換を求めた。「教師だけでなく寺庭という形で都合のよい扱い方をされている方もたくさんいらっしゃる。変わっていくための第一歩になれば」と、寺庭の立場も念頭にした意見も上がった。

 会員数は現在のところ約50人。第2回集会は4月15日に行い、活動方針などを検討する。(続きは紙面をご覧ください)

2019/2/21 真宗大谷派 経典中の女性差別のパネル 総長判断で差し替え 

シンポでパネル差し替えに抗議した源氏 真宗大谷派解放運動推進本部主催の人権週間ギャラリー展「経典の中で語られた差別 『是旃陀羅』問題と被差別民衆の闘い」(12月6日~2月15日・東本願寺参拝接待所ギャラリー)で、展示予定だった「経典に表われた女性差別」に関するパネル3枚が直前で差し替えられていたことがわかった。京都市下京区の同派宗務所で14日、同展の公開シンポジウムが開催され、監修者として同パネルを担当した源淳子・世界人権問題研究センター嘱託研究員が抗議の意見表明を行った。約120人が参加した。

監修者、シンポで抗議表明
 差し替えになったパネルは、①女性は梵天王・帝釈天・魔王・転輪聖王・仏になれないとする「女人五障」の教え②女性は一度男身になってから成仏するという「変成男子」の思想③浄土真宗の聖教である『女人往生聞書』『御文』『親鸞聖人正明伝』等の中で「罪深い存在とみなされた女性」の3枚。

 源氏は「経典に表われた女性差別の核心・根幹の意味を持つ」とし、「但馬弘宗務総長の判断でパネル3枚が外されたとの報告を解放運動推進本部から受けた。思いもよらないことで、納得できなかった」と振り返った。

 本願寺派寺院の出身でもある源氏は、「経典や祖師の論釈は時代的な制約の中で作られたものである」とする一方、「檀家制度下で、女性は罪深い存在と説かれてきた。伝統・文化・宗教のキーワードの中では、女性差別は中々差別として受け止められない」と警鐘。特に親鸞聖人の『浄土和讃』中の「弥陀の大悲ふかければ 仏智の不思議をあらはして 変成男子の願をたて 女人成仏ちかひたり」を挙げ、「親鸞の言葉として(変成男子が)出ているにもかかわらず、どうして外されたのか、いまだに解せない。親鸞は〝女性だけが罪深い〟とは考えていなかっただろう。現代は人権や差別が議論できる時代なのだから(しっかりと議論すべきだ)」と提起した。

 源氏はシンポ後、「浄土真宗はあまり〝穢れ〟を言ってこなかったと思うが、〝穢れ〟だから排除するというのは日本の差別の特徴だと思う。部落問題とも重なる。しかし排除だけでなく、必要な時は利用するという差別構造も持っている」と指摘。経典や聖教類の中にある女性差別問題に取り組む必要性を語った。


「残された課題―日本文化の中の女性差別」に差し替えられたパネル 問題究明、不十分
 パネル「経典に表われた女性差別」は「残された課題―日本文化の中の女性差別」に変更され、大相撲や修験道の聖地の「女人禁制」などが代わって展示された。

 草野龍子・解放運動推進本部長は開会挨拶で、経典中の女性差別問題について「宗門として教学的に、解放運動の学びの中で問題性を究明できておらず、十分な啓発もできていない」と説明。「今展を大切な機会と捉え、問題に真摯に向き合ってまいりたい」と表明した。

 但馬総長は公開シンポ後、以下のコメントを発表した。「性差別に関する取り組みは、今までも女性室を設置し、公開講座や女性会議などに取り組んできました。当然、今後もその歩みを止めるつもりはありません。/しかしながら、現段階で宗派として経典における女性差別に関して正式な見解が出し得ていない状況において、参拝接待所ギャラリーにおいて展示することを差し控えさせていただきました」

2019/2/21 第36回庭野平和賞決まる 米国のレデラック博士に 紛争を和解に独自プログラム


庭野平和賞を受賞したレデラック博士 宗教協力を通じて世界平和に貢献した個人や団体に贈られる(公財)庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長・東京都新宿区)主宰の第36回庭野平和賞受賞者に、米国の国際平和構築学者、ジョン・ポール・レデラック博士(ノートルダム大学クロック国際平和研究所名誉教授・63)が選ばれた。「紛争自体をより良い変化に向けての〝贈り物〟として捉える」独自の和解プログラムを用い、世界各地で「紛争・衝突」を「平和・和解」に変容させてきた功績が評価された。

 レデラック博士は1955年、インディアナ州生まれ。キリスト教プロテスタントの一派で平和主義と無抵抗を主張するメノナイト(メノー派)の信者。大学在学中から国際平和構築活動に取り組み、ニカラグアやコロンビア、ネパール、ソマリア、フィリピン、北アイルランドなど35カ国以上の紛争地域で「紛争の変容・変革」という概念に基づく独自の調停を命がけで遂行してきた。

 紛争や衝突を和解・平和に至るための必然のプロセス、すなわち「贈り物」として前向きに捉え、相反する勢力を「心からの和解」に導く理論は16の言語に翻訳されている。選考過程では40年以上にわたる数々の平和構築活動に加え、「次の世代の活動家を育成していること」も評価された。

 レデラック博士は受賞受諾メッセージを寄せ、「今日、私たちの地球で橋の上に壁を作るような、恐れから頻発する憎悪を元にした排他的政治の台頭に、私たちは再び直面している」と憂慮。「愛だけが恐怖を変革することができる」と断言し、今回の受賞が「憎しみ、分裂、そして排除を超えて、本当の癒しをもたらす絆を創るための大きな励ましを与えてくれる」とした。

 庭野理事長は18日、京都市内で開かれた記者発表会で、「(博士が)紛争地域で脈々と受け継がれてきた美に気付くために俳句を重視している」というエピソードを披露。特に松尾芭蕉の『奥の細道』に造詣が深く、自身で句作もする一面を紹介した。

 贈呈式は5月8日午前10時半から、東京都港区の国際文化会館で挙行され、賞状と顕彰メダル、賞金2千万円が贈呈される。同13日には京都市内で記者懇談会を予定。受賞者は125カ国・約600人の識者に推薦を依頼し、宗教者9人の国際委員から成る選考委員会で決定される。

2019/2/28 10回目の東京禅僧茶房 古民家でお坊さんを身近に

青年僧とざっくばらんに楽しく会話 曹洞宗総合研究センター教化研修部門「Shojin-Project」の青年僧による「東京禅僧茶房」が22~24の3日間、東京都文京区の健康古民家かのうで開催された。今回で10回目。

「お坊さん的人付き合いのススメ」をテーマに、僧侶とお茶を飲みながらのおしゃべりや坐禅、写経などでほのぼのとした心を集った人にもたらした。

「あきらめる」ことについてパネル展示。変わっていくことや分からないこと、理想が全てではないことを諦めるのが実は人間関係を楽にするコツだとする教えが説かれた。不要になった雑誌を切り貼りして自分なりのつながりを表現するアートワークショップや、心を落ち着かせるお香作り体験もあった。

 フェアトレードのコーヒーやお茶を飲みながら、僧侶と座談を楽しむひとときも。「お坊さんって修行中の買い物はどうしてるんですか?」「どうしてお坊さんになったんですか?」といった素朴な疑問にホンネで答え、距離がグッと縮まった模様。プロジェクトが駒澤大学で行っている坐禅教室の常連メンバーも多数訪れた。

 代表の本田真大氏は「少しでもお坊さんを身近に感じてもらえればいいなと思って」と、敢えて大会場ではなく小ぢんまりとした古民家で開催したことに手ごたえを感じていた。

2019/2/28 詩集『つぶやき』が大反響 詩人・たにともこさん こと 林惠智子さん(全仏婦顧問)

詩集『つぶやき』を手にする林惠智子さん「反響が大きくてびっくりしています。130通以上ありました。面識のない方からの感想もありました。これからゆっくりしようと思っていたら、それどころじゃなくなりそうです」

 笑みを浮かべてこう語るのは詩人のたにともこさん、こと全日本仏教婦人連盟(全仏婦)顧問の林惠智子さんである。

 昨年12月、『たにともこ詩集「つぶやき」』(コールサック社)を上梓した。年末から新年にかけてハガキや年賀状、手紙などが多数届けられた。地方紙に紹介されたことも大きかった。

『つぶやき』は全47の短編詩で構成。巻頭の「電車の中」は「その一」から「その十一」までの連作。こうした連作も特色の一つだ。そのため、手紙には「その二」が良いとか、具体的な詩編を示して感想を綴ってくるという。中には「ボランティアをしている養護施設で朗読させていただいています」という報告まであった。

「テレビより」と題した詩も6編からなる連作。その六。〈まあーまあー 仕方ないから/お笑い番組か/笑って過ごせれば楽しいか/これが平和な世の中か/何かむなしさだけが胸をつく/戦争、戦後を生きてきた/私には何かが違って/見えるだけ〉

 林さんは3年前に編集・発刊された『少年少女に希望を届ける詩集』に、約200人の一人として「ひとすじの涙」を寄稿。戦争や食糧難を乗り越えてきた亡き母に感謝の言葉を贈っている。

 昭和9年(1934)山形県生まれの林さんは、戦前と終戦直後の空気を知っている。そのため同世代以上からの感想が多い。「上は90歳以上、下は50歳代もいますが、圧倒的に70歳以上ですね」と林さん。「本当にそう思います」「もっともだと感じました」「大きく頷きました」「懐かしいです」といった共感の言葉が相次ぐ。

 林さんは昭和30年(1955)東洋大学を卒業後、全日本仏教会(全日仏)事務局に就職した。20年近く勤めた後に全仏婦理事に就任し、平成26年(2014)事務局長を最後に退職した。全仏婦時代の活躍は周知の通りである。この間、WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会婦人部会にも籍を置き、難民キャンプ視察や国際会議のため各国を訪問してきた。そうした体験も詩作に活かされている。

 次は詩編か仏教界ウラ話か。創作意欲は満々で、林さんは、いたずらっぽく笑う。

2019/2/28 宗議会シーズン 天台宗・高野山真言宗・真言宗智山派・臨済宗妙心寺派・曹洞宗

天台宗 機構改革に強い意欲
 天台宗(杜多道雄宗務総長)の第144回通常宗議会(中村彰恵議長)が19日から21日まで滋賀県大津市の宗務庁に招集され、平成31年度通常会計歳入歳出予算など全議案を原案通り可決して閉会した。代表質問で機構改革について問われた杜多総長は、予定を1年繰り上げ「宗務庁機構の改革だけは、私の任期中にぜひとも実現致したい」と強い意欲を示した。(続きは紙面でご覧ください)

高野山真言宗 駐車場収入で高野山学園維持
 高野山真言宗(添田隆昭宗務総長)の第161次春季宗会(安藤尊仁議長)が26日、和歌山県高野町の宗務所に招集された。添田総長は高野山内9カ所の金剛峯寺駐車場を来年4月から有料化し、収益を経営難の高野山学園(大学・高校)への新たな助成金に充てると発表した。駐車料金は一律千円で午後5時から午前8時までは無料とし、経営は業界最大手の企業に5年契約で委託する方針。金剛峯寺の収益事業とし、企業から毎年定額1億3900万円が支払われるという。(続きは紙面でご覧ください)

真言宗智山派 宗祖誕生1250年に向け29億円勧募へ
 真言宗智山派(芙蓉良英宗務総長)の第128次定期教区代表会(19~22日、池田英乘議長)で、4月から平成35年(2023)に迎える「宗祖弘法大師ご誕生1250年」の奉修事業費29億円超の浄財勧募が始まるのを受け、その詳細が発表された。末寺(約2900カ寺)の志納金納付期間は2024年3月までで10期間に分割して納付。「宗費4カ年分相当」(『宗報』)の負担となる。(続きは紙面でご覧ください)

臨済宗妙心寺派 前堂職取得に学習会義務化
 臨済宗妙心寺派の第136次定期宗議会(松浦明恭議長)が20~22日、京都市右京区の宗務本所で開かれた。住職の登竜門となる法階「前堂職」の取得に、試験を伴う宗学の学習会受講を義務化する制度を導入することが決まった。現行の教師検定制度で無試験検定の対象外となる法階ができるのは初めて。花園大に設置した僧侶育成課程に続き、栗原正雄宗務総長は僧侶の資質向上に向けた施策を打ち出した。新制度は2020年4月から開始する。(続きは紙面でご覧ください)

曹洞宗 有道会議員が僧堂改革を要望
 第132回曹洞宗宗議会は22日、全議案を原案通り可決して閉会となった。鬼生田俊英内局で初の通常宗議会ということもあり19人が通告・文書質問をするなど盛況だったが、波乱・延長はなく平穏な議会の運びとなった。
 有道会議員は釜田隆文会長(前宗務総長)を中心に取り組む僧堂改革について相次いで質問・要望を出した。藤間良信議員は、高齢者が教師資格を取得する際の規定の柔軟化を要望。(続きは紙面でご覧ください)

2019/2/28 立正大学公開講座 オウム事件から今後の社会を考える 伝統仏教は反省が必要

左から登壇した西田教授、原田教授、貫名住職 立正大学は17日、東京都品川区の同大品川キャンパス石橋湛山記念講堂で公開講座「オウム事件から考える我々と社会」を開催した。教祖ほか13人の死刑執行で区切りを迎えたオウム事件について、事件の当事者に関わった心理学者、カルト脱会支援に携わる僧侶が事件を振り返り、今後の社会をどう考えるか語り合った。

 地下鉄サリン事件に関わるオウム信者を東京拘置所で面接した原田隆之・筑波大学人間系教授(犯罪心理学)と立正大学心理学部の西田公昭教授(社会心理学)が講演し、その後に日蓮宗宗教問題検討委員会委員長の貫名英舜常泉寺住職を交えて議論がなされた。

 原田教授は、「教祖と信者、事件を分けて考えるべきだ」として、教祖の麻原彰晃と信者を犯罪心理学の観点から分析。麻原については、「反社会的パーソナリティー」が強く、「冷淡性」「病的な虚言癖」「自分の行動に対する責任を感じない」等のサイコパスを定義づける要因と麻原の行動との共通点が多いことから「鑑定や記録を読む限りでは、サイコパスと考えられる」と語った。

 一方で、拘置所で原田教授が面接したオウムの〝次官〟クラスの信者たちは、「普通の人」。意外にも教団の教義を深くは理解しておらず、「教団の生活は非日常的だった。惰性でやっていた。命令されただけだ」と話していたという。

 ユダヤ人虐殺に関わったナチス将校の死刑執行までの記録『エルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告』の「自分の昇進には恐ろしく熱心だったということのほかに彼らには何らの動機もなかった」との考察に触れ、加担したオウム信者にも「想像力の欠如と無思想性に同じ構図を感じた。悪の凡庸さという言葉が当てはまる」とした。

 実行犯の林郁夫や高橋英俊らは「なぜ自分は存在するのか」「人生の意味はあるのか」との問いを持って教団に入信。「自らの人生の中で答えをつかみ取るのではなく、教団に答えを求めた」。(続きは紙面でご覧ください)

2019/3/7 平等思想からLGBT考える 衆生救済「性」問わず 当事者僧侶もスピーチ

LGBTの当事者や支援者らが課題などを考えた 浄土宗総合研究所は2月25日、東京都港区の大本山増上寺で公開シンポジウム「法然上人にみる平等思想ーLGBTを考える視座として」を開催した。L(レズビアン)G(ゲイ)B(バイセクシャル)T(トランスジェンダー)の生きづらさを知り、共に社会を生きていく方法を考えるために企画された。宗教者の当事者や支援者が、宗教的な課題と重ねながら活動や問題意識を話した。

 基調講演では林田康順氏(大正大学教授)が「法然上人にみる平等思想」について概説。釈尊の「家柄を問うな、行状を問え」(スッタニパータ)の教えに仏教の平等思想を確認し、「変成男子」などの女性差別がある一方で、法然上人の『選択集』「念仏往生願」による一切衆生の救済を「絶対的平等の確立」と位置づけ、「救いの働きを受け止められた念仏者は、悩みや悲しみの解決のために努力する姿勢が自ずと育まれるのであり、それこそが進むべき道」と示した。

 次いで、LGBT当事者でメークアップアーティストとして世界で活躍する浄土宗僧侶の西村宏堂さんがスピーチ。高校時代に孤独感を感じていたこと、アメリカ留学中にLGBTのイベントに参加したことや、浄土宗の加行の際に「生きている価値を感じられたこと」などを回想。同姓愛者であることに罪悪感を持つルームメイトの男性に、「私の宗教では皆が平等で性別や性的指向は全く関係なく全ての人が救われる教え」と伝えたことも振り返り、「そういったメッセージを浄土宗を通して世界に発信していこうと思います」と主張した。

 パネルディスカッションでは当事者や支援者が発題。牧師(日本キリスト教団)の中村吉基氏は宗教教団のLGBT研修のサポートや教団内の当事者の支援などを行う「宗教とLGBTネットワーク代表」の取り組みを紹介。同性愛者でもある中村氏は、同性パートナーを亡くした男性の「葬儀のような結婚式を行った」ことや、日本では同性婚が認められないために同姓カップルが医療・住宅・社会保障などで直面する諸問題も列挙した。

 浄土真宗本願寺派布教使の中平了悟氏は自坊で社会課題を語り合うイベント「テラハ」でLGBTをテーマにした。当事者の言葉「ほかの誰でもない、わたしはわたし」に、浄土真宗と同じメッセージを受け取り、「関わりのなかで、自分が育てられてきた教えの味わいや可能性を知った。自分自身が拡げられていくような感覚がある」との学びを披瀝。さらに自身の経験から「良かれと思ったことが相手を傷つけることがある」とも語り、「共に生きる」という課題に対し「すれ違いや意見の違いがあっても一緒にいる、という関係をどう作るのかという問いを共有したい」と話した。

 昨年に総研叢書『それぞれのかがやきLGBTを知る』を担当した浄土宗総合研究所研究員の石田一裕氏は、「仏教は平等や自由、平和を説くという。しかし、差別戒名、ハンセン病、戦争協力の問題などもあった」と提起。「仏教者が実践して初めて仏教が平等を説くと証明される」とし、その実践は「智慧=慈悲にもとづいて行われるべきもの。知ることが、平等を実践する大切な一歩」と呼びかけた。

2019/3/7レポート 日蓮宗荒行 痛み伴う行堂改革  

 日蓮宗の祈祷修法を習得する荒行で異変が起きている。毎年入行者が100人を超える大本山中山法華経寺の日蓮宗加行所では、一昨年から修行僧が大幅に減少した。遠寿院大荒行堂では、今年成満した11人の修行僧の内、4人に許証を授与しないという異例の措置がとられた。両行堂の異変の背景には、痛みを伴う行堂の改革があった。(続きは紙面でご覧ください)