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2011/01/01 本願寺派臨宗 組織制度 抜本改正へ

宗派・本山の組織制度を定める基本法規の改正を審議する浄土真宗本願寺派(橘正信総長)の第295回臨時宗会(桑羽隆慈議長)が12月17日、京都市下京区の宗務所に招集された。

抜本改正へ向け作業を進めてきた橘総長は、一体だった宗派と本山を切り離し、本山に内局を設置して独自に活動を進められるよう組織機構を改め、また、首都圏開教を強力に推進するため東京の築地別院を独自の権限をもつ「直轄寺院」とする議案5件・同意案2件を提出した。

しかし、議員からは「拙速」との意見が出た他、宗会が「代議員会」へ移行して議員の権限が縮小すること等に反発が強く、会期を延長したものの審議は終結せず、新年1月半ば以降の継続審査となった。

2011/01/01 身延山大学新学長 浜島典彦氏が就任

日蓮宗宗門校の身延山大学で、中山光勝学長が健康上の理由で退任したことに伴って12月1日、新学長に浜島典彦氏(修性院住職)が就任した。

浜島新学長は、昭和26年生まれ。59歳。三重県桑名市出身。立正大学卒。立正大学熊谷学寮寮監、立正大学講師、宗務院伝道企画課長を歴任した。

宗門の常任布教師でもある浜島新学長は、今後の方針について「現場に活かせる教学、意思の強い現場に対応できる僧侶の育成を目指したい」と抱負を語っている。

2011/01/01 BOUZ調査結果 僧侶と仏教に期待60%超

14d183397ea7e5_L1.jpg超宗派仏教青年会「BOUZ(ボウズ)」と仏教タイムス社が共同で行った「仏教界への期待度・実態調査」(第1期)の調査結果がまとまった。青年僧侶と仏教業界紙による初の街頭調査に、多くの市民の声が寄せられた。

調査は今年8~10月、都内で実施(その様子は本紙連載「BОUZ聞く」で既報)。サラリーマンが行き交う港区新橋、大勢で賑わう台東区浅草、同じく上野、〝おばあちゃんの原宿〟こと豊島区巣鴨で、「仏教・お寺・僧侶に期待することはありますか」「仏教・お寺・僧侶は期待に応えていますか」(前問で期待すると答えた人のみ)について聞いた。回答者は「YES」「NO」式で答えた。有効回答者総数は105人で詳細は別表の通り。

「YES」を選んだ理由では、「住職が魅力的」など「人格」が23%、「良い話を聞かせてくれる」など「布教」が22%で最も多く、次いで「先祖供養をしっかりやってくれる」と「供養」16%、「心の拠り所になっている」11%、「家の宗教だから」8%、「寺院建築や仏像が好き」など「文化財」8%が続いた。

「NO」では、「今まで通りでよい」など「現状維持」、「寺に行かないからわからない」など「不明」が共に20%で最も多かった。「菩提寺に後継ぎがいないから期待できない」「僧侶がサラリーマン化している」など「寺院制度に関するもの」、「菩提寺との付き合いに何かとお金がかかる」「多額の寄付をお願いされた」など「布施への不満」も共に12%だった。

仏教・寺・僧侶の中で、最も期待度が高かったのは仏教の63%。僧侶も62%でほぼ同じ。寺は57%だった。仏教と僧侶が、ほぼ同率で期待されているのが興味深い。一方、満足度になると寺が43%で最も高く、次いで僧侶36%、仏教30%と逆になった。

理由として、寺(施設)には真心のこもった葬儀・法事など供養の維持・向上が求められ、僧侶(仏教を担う人格)には布教を含めて何らかの社会活動が求められていることなどが挙げられる。

BOUZでは、より詳細なグラフや回答者のコメント一覧表なども作成。資料の申し込み・問い合わせは事務局(真宗大谷派流山開教所源正寺・不二門至浄住職・千葉県流山市三輪野山1―1102―3/Eメールshijovowz@yahoo.co.jp)まで。同会では今後もこうした調査を継続し、勉強会などのワークに活かせる素材を制作していく予定。希望する仏教青年会や各研究機関などには、積極的に提供する。参加メンバーも大募集中だ。


<調査結果ふまえ勉強会>

超宗派の青年僧侶たちが熱い議論を交わす第15回「ボーズ・ビー・アンビシャス!!」が12月3日、港区の青松寺で開催され、今回の調査結果をふまえたワークが行われた。

「お寺の期待度は低いのに、満足度が高い理由」や「居眠りしていてもお金が入ってくると誤解されている原因」など、41人がグループごとに議論。「布施は本来、自分(僧侶)の行であることが忘れられている」といった反省や、「悩み相談などを行って、お寺を社会に開いていく」などの意見が多く出された。

2011/01/13 浄土宗清浄華院 新法主に真野龍海氏

浄土宗大本山清浄華院(京都市上京区)の新法主(第82世)に大正大学元学長で現在名誉教授の真野龍海氏(東京都港区・天光院前住職)が昨年12月28日推戴された。任期は4年間。晋山式は3月24日に執り行う予定。

昨年10月26日、伊藤唯眞前法主が浄土門主・総本山知恩院門跡に上任したのに伴い、浄土門主・法主推戴委員会(委員長=里見法雄同宗宗務総長)が12月2日と24日に開かれ、真野氏を法主候補に推挙。28日に同氏の承諾を得て推戴・就任が決まった。

真野氏は大正11年3月、滋賀県生まれ。88歳。大正大学仏教学部聖語学卒。昭和46年大正大教授に就任後、同大の事務局長、仏教学部長、綜合仏教研究所長を歴任し、同63年から平成2年まで学長を務めた。

主な著書・論文に『現観荘厳論の研究』(山喜房仏書林)、「華厳経の経題について(2)」(韓国仏教学セミナー)等。

正僧正、讃教、勧学。
7日に初登嶺、14日に認証式と入山式が執り行われる。

2011/01/13 「宗教文化士」資格スタート

2011年度から始まる大学生らを対象にした「宗教文化士」認定制度。これをを運営する「宗教文化教育推進センター」(CERC/土屋博センター長)が9日に発足し、事務局が置かれる東京・渋谷の国学院大学で成果発表会と記念会が開かれた。認定制度のスタートによって、宗教文化教育の充実と宗教文化への理解が深まることが期待される。

CERCのセンター長には北海道大学名誉教授の土屋博氏、事務局長には国学院大学の井上順孝氏が就任。運営には、日本宗教学会(島薗進会長)と「宗教と社会」学会(櫻井義秀会長)が連携学会として加わるほか、国公立・私立大学で宗教文化を研究する教員らが運営委員、連携委員として参画。初年度は、宗教学関連の学部・学科等をもつ関西学院大学、皇學館大学、国学院大学、大正大学、筑波大学、天理大学、東北大学、北海道大学がパイロット校として参加する。

「宗教文化士」は、宗教の歴史的展開やその教え、文化と宗教の関わり、現代社会における宗教の役割や機能について、社会の中で活かせる知識を養っていくことを目的とし、宗教文化への理解を深めた人に資格が与えられる。制度の設置に向け、科学研究費補助金「大学における宗教文化教育の実質化を図るシステム構築」(研究代表者・星野英紀大正大学教授)で3年間にわたり研究・調査がしてきた。

認定試験は各年度2回実施。第1回の試験は6月26日、パイロット校のある東京、北海道、宮城、兵庫、奈良、三重での実施を予定している。原則として、該当科目16単位以上を取得している大学3年生以上に受験資格が与えられる。

成果発表会では、土屋センター長が「宗教文化士の目指すところは、現代の人間社会の生きた宗教的現実を、従来の宗教論につなげ、宗教教育の行き詰まりを解消していくために、一つの具体的なくさびを打ち込むこと」と指摘。井上事務局長は新たに開設されたセンターのHP上(http:www.cerc.jp)を中心にしたネットワーク構築や、動画を中心としたオンライ教材の充実化などを課題にあげ、「社会に通用する」資格としていくことを展望した。

今後の課題についても提起され、星野氏は「大学の宗教学の教育の在り方にもいい意味で刺激を与える制度になる」と期待。島薗氏は「資格制度に縛られて教育が画一化するという不安材料も考える必要がある。広い討議の場を」と要請。櫻井氏はキャンパス内のカルト問題などに言及したうえで、「宗教的な課題に囲まれながら自分の問題を考えているが、宗教文化教育がどう対応していくかは重要」と位置づけた。

2011/01/13 日本山妙法寺 藤井日達上人27回忌法要を営む

14d2ea202af301_L1.jpg日本山妙法寺大僧伽(吉田行典首座)は10日、千葉県鴨川市の清澄道場で創始者の藤井日達上人(1885~1985)の第二十七回忌法要を営んだ。約400人の参列者が国内外から訪れた。

法要は、吉田首座を導師に厳修。来賓には日蓮宗僧侶であった藤井上人を偲び、日蓮宗の渡辺照敏宗務総長の名代として古河良晧伝道部長が参列した他、大本山清澄寺の二宮日敬別当など日蓮宗僧侶も参列した。

さらにネパール大使のガネッシュ・ヨンザン・タマン氏や英国元大ロンドン市議会議長のイルティッド・ハリントン氏、広島平和文化センターのスティーブン・リーパー理事長など、海外からの来賓も多数参列し、日本語と英語の2カ国語で式典は執り行われた。

吉田首座は導師法話の中で、国内外での仏舎利塔建立や平和行脚など、藤井上人の海外布教の足跡を紹介し、「最も多くの人々の生命を奪うのが戦争です。藤井上人は不殺生、非暴力の行動を明示されました。今日、核兵器や新しい兵器の開発、天変地異は跡を絶ちません。立正安国論の諫言を世界の人々は深く受け止めねばなりません」と説示。「謙虚な心で、精進することを誓います」と世界平和に尽力することを改めて誓った。

古河部長は、「法華経布教のシンボルとして、世界各国に仏舎利塔を建立されたことは、まことに大きな功績と感ずる次第です」という総長のメッセージを代読。さらに自身の藤井上人との思い出も懐古した。

来賓の挨拶では、ハリントン元議長がテロリストの動向や核兵器の拡散状況を憂慮し、世界的な平和活動の必要性を訴えた。

リーパー理事長は最新の核廃絶交渉の見通しを報告した。「今年、どの時期になるかは分からないが、核兵器禁止条約のキャンペーンが出てくるものと思う。国レベルだけでなく、草の根レベルでも重要な動きが出てくる」と解説。「人類が滅亡する方向に進んでいる今。本当に奇跡が必要です。この場に来て、400人が唱える御題目に4万倍の力が出ているのではないかと感じた。奇跡を起こして欲しい」と宗教者の平和活動に期待を寄せた。

写真=藤井上人の尊影を前に法話を行う吉田首座

2011/01/20 第45回仏教伝道文化賞決定

(財)仏教伝道協会(沼田智秀会長、福山諦法理事長)は18日、第45回仏教伝道文化賞選定委員会(金光寿郎委員長)を開き、A項(研究・論文・著述・翻訳・踏査・出版)に仏教学者の信楽峻麿氏、C項(伝道者・実践者)にスリランカでサルボダヤ運動を広げたアハンガマゲ・テューダ・アリヤラトネ氏を選定した。

信楽氏は大正15年(1926)生まれ、84歳。広島県出身。長年、大乗仏教における浄土教研究に取り組み、親鸞思想を近代的視野で掘り下げた。現代世界における大乗仏教の意義を鮮明にした功績が評価された。
広島の浄土真宗本願寺派教円寺前住職。龍谷大学名誉教授。1989年から95年まで同学長。1996年12月から2008年3月まで、仏教伝道協会第6代理事長を務めた。文学博士。

アリヤラトネ氏は1931年生まれ、79歳。高校の理科教師を経て1958年、サルボダヤ運動を提唱。仏教精神に基づくこころの豊かさに重点を置いた農村開発の取り組みは、経済発展優先の功利主義的な従来の開発とは異なり、持続可能な開発モデルとして国内外に広まった。半世紀余りにわたって果敢に挑み続けるその活動は、大乗菩薩道に通じるものとして評価された。

これまで1969年マグサイサイ賞、1992年庭野平和賞などを受賞している。たびたび日本を訪れ、3年前のWFB世界仏教徒会議日本大会にパネリストの一員として参加した。

贈呈式は3月17日(木)、東京・芝の仏教伝道センタービルで執り行われる。受賞者には記念品と賞金300万円が贈られる。


<受賞した信楽氏のコメント>
「恐縮しています」
長く仏教伝道協会(理事長)に務めてきましたので、私なんか受けるべきでないし、若い人にと思い、だいぶ辞退したんです。しかし受賞が決まったということで、大変恐縮しています。困ったことになったなと戸惑っています(苦笑)。

2011/01/20 曹洞宗 大道貫首が退董

曹洞宗の大道晃仙管長は大本山總持寺貫首を退董することを正式に表明し、今月に入って宗務庁に伝達された。これにより4月16日退董式、翌17日晋山式の日程が確定した。横浜市鶴見区の總持寺で執行される。新貫首には江川辰三副貫首が昇住し、管長も務める。管長職は残任期間で来年1月まで。

大道管長(貫首)の退董は昨年12月頃から囁かれていた。93歳という年齢や体力などから決意したと見られる。平成14年(2002)10月に貫首となり、管長職にあった平成18年(2006)から2年間、全日本仏教会会長も務めた。

新貫首となる江川副貫首は昭和3年(1928)愛知県生まれ。總持寺監院・祖院監院などを経て、昨年3月の總持寺副貫首選挙で東隆眞氏を破り当選した。

2011/01/20 寺ネットサンガ「そうだ!お寺に行こう」 プチ修行や模擬葬儀を体験

14d37dec73042c_L1.jpg「そうだ!お寺に行こう」をキャッチフレーズに、各宗寺院でのプチ修行や模擬葬儀などを体験する企画「お坊さんと共に学ぶ仏教ひとまわりツアー」(寺ネット・サンガ主催)の第1回が、大田区池上の日蓮宗永寿院(吉田尚英住職)で開催された。一般参加者約20人が、法話や唱題行などを体験。仏式葬儀の意味や、死に装束の付け方についても学んだ。

模擬葬儀の実演は、葬儀社に10年間勤めた経験を持つ吉田健一・浄土宗浄信寺住職。純白の死に装束で登場すると、「送られ人です」と挨拶。死者の額に付ける三角形の天冠や経帷子など、死に装束について説明した。

続いて、遺体役で布団に横たわった吉田住職に、参加者代表の2人が手甲や脚絆などを装着。付け方がわからず難渋していると、死んだはずの吉田住職がむっくりと起き上がって助け舟を出す場面も。男性参加者の一人が「俺ももうすぐ寝る側だよ」と漏らすなど、楽しい(?)演習となった。

参加者の森谷博江さんは、「模擬葬儀は言葉だけの説明よりわかりやすかった。贅沢をするという意味ではなく簡単でもいいから、先祖から連綿と受け継がれてきた仏教の儀式を大切にすべきです」と感想を述べた。

今年のツアーは全5回。次回は3月5日、港区の曹洞宗正山寺。青木和広事務局長は「会場となるお寺も募集中です。お寺の歴史や活動を紹介することが活性化につながるのでは」と呼びかけている。事務局(電03―5201―3976)。

写真=参加者が遺体役の僧侶に、手甲や脚絆などを付けていった

2011/01/27 全日仏が政府に要望書 進まない遺骨返還に説明求める

(財)全日本仏教会は21日、内閣官房・外務省・厚労省に対し「朝鮮半島出身の旧民間徴用者等の遺骨の早期返還を求める要望書」を有田恵宗理事長名で提出。遺骨返還がなされていない理由の説明を求めている。

平成16年12月の日韓首脳会談において朝鮮半島の旧民間徴用者等の遺骨返還協力要請がなされ、政府から地方自治体や民間企業等に情報提供の要請が行われた。全日仏にも翌平成17年6月に依頼書が届き、これを受け加盟団体はそれぞれ調査などに着手した。

要望書ではこれらの経緯や平成18年11月に1回目の提出以来、9回にわたって担当部署である厚労省・人道調査室へ遺骨所在情報を提出してきたと説明。しかしこの間、一体も返還されていない。「政府から依頼を受けて既に丸5年を経過し、何の進展も無いこの状況を全日本仏教会は大変遺憾に思っております」と厳しく指弾している。

続けて、①朝鮮半島の旧民間徴用者等の遺骨はなぜ返還されないのか。できるだけ具体的に説明を。②遺骨返還についてどのようなスケジュール描いているのか、具体的に説明を-の2点を要望。そして2月10日、京都で開かれる「人権問題連絡協議会」で報告するよう求めている。

なお東京・祐天寺安置の遺骨(軍人・軍属)は3回にわたって返還されているが、民間に関してはなされていない。

2011/01/27 全日仏会長が提案 8月に日本仏教平和旬間を

14d412b5a2f1f6_L1.jpg(財)全日本仏教会(全日仏)の河野太通会長(臨済宗妙心寺派管長)は20日夕、都内のホテルで開かれた理事会後の恒例新年懇親会で、広島原爆投下の8月6日から終戦の15日までを「日本仏教平和旬間」にしようと提案した。

冒頭の新年挨拶で述べたもので、すでに日本カトリック教団が実行していることを紹介。「良いことは真似してもかまわないと思う」と河野会長。カトリック教団ではこの10日間を「平和を学び、祈り、ひいては行動を起こす期間にしようとしている」と解説。続けて、「日本仏教平和旬間として、平和についての行動をどうしたらできるのか考えるような期間とするよう、この機会に提案させていただく」と力強く主張した。

会場からは歓迎と戸惑いのまじった拍手が。会長提案に全日仏総局や理事会等がどう反応するかが注目される。懇親会には民主党・自民党を中心に70人の国会議員が出席したほか、加盟団体・賛助会員ら約400人が参加した。

写真=新年懇親会で「日本仏教平和旬間」を提案する河野会長

2011/01/27 浄土宗知恩院 請来法要を厳修

14d412e0111055_L1.jpg宗祖法然上人800年大遠忌正当の25日、浄土宗(里見法雄宗務総長)と総本山知恩院(北川一有執事長)は合同で上人の弟子・源智上人造立の阿弥陀如来像(重文)の請来法要を京都市東山区の同院御影堂で厳修、同像が浄土宗に戻ったことを奉告するとともに3月27日から1カ月間厳修される大遠忌法要の円成を願った。

法要は内陣御影の前に光背の付いた阿弥陀像を安置し、その前に着座した伊藤唯眞浄土門主・知恩院門跡を導師に、両内局と菅原達孝副門跡が出仕して勤めた。

伊藤門主は表白で、阿弥陀像は源智上人が法然上人一周忌の供養仏として造立し、胎内に念仏運動に結縁した人々の名前などを書いて納めたことなどその謂れを述べ、この阿弥陀仏像は「浄土宗門にとりての至宝なり」とした。また「本日厳修せし請来法要を勝縁として法然上人800年大遠忌法要を無事成満ならしめ給わんことを願う」と読み上げた。

阿弥陀経、一枚起請文を読誦し回向した後、伊藤門主は約300人の参拝者に向かって垂示。源智上人が胎内に納めた願文に「自分のためのお念仏の功徳を他の人に向ける、自利利他の功徳が網の目のようにつながって全ての者が救われていく意味合いのことが書かれております」とし、「いま無縁社会と言われる中で何をすべきかと考える時自分と他人のために尽くすことが網の目のようになって苦しんでいる人、悲しんでいる人を支えていかねばならない」と力説した。

この日午後には伊藤門跡導師で800年大遠忌祥当法要(知恩院布教師会主催)も執り行った。

源智上人造立阿弥陀像は浄土宗が大遠忌記念事業の一環として高野山真言宗玉桂寺(滋賀県甲賀市信楽町)から昨年1月譲渡を受け、京都市右京区の佛大宗教文化ミュージアムに保管していた。3月26日から5月8日まで京都国立博物館で開かれる特別展覧会「法然 生涯と美術」で公開される。

写真=垂示を述べる伊藤門主。源智上人造立の阿弥陀像(25日 知恩院)

2011/02/03 西山浄土宗講演会 梅原猛氏「共還」説く

14d4a0d23c63ac_L1.jpg西山浄土宗(伊藤隆泰宗務総長)の法然上人800年御遠忌執行本部は25日、長岡京市の総本山光明寺で遠忌お待ち受け事業の一環として哲学者梅原猛氏を招き講演会を開催。梅原氏は300人の僧侶・市民らを前に法然の利他行の教えを「共還」として説いた。

今年3月で満86歳になるという梅原氏は「私の年になるとあの世の近さをつくづく感じる。そういう時に法然はどうやって死んだらいいかを教えた。死の教師として法然の教えが心に染みるわけであります」と前置きしてから本論へ。

「四十八巻伝は法然を英雄化しすぎる」として法然の愛弟子・源智が書いた法然伝『醍醐本』に依拠して持論を展開。法然の父・漆間時国が殺された時の法然の年は通説の9歳でなく「15歳」だったと主張。またこの時母親も殺されたとした。

その父母は「押領使」という職業や出自から「悪党と言われても仕方がない人だった」とし、そうした父母を救いたいという願いが「女人や悪人も往生できるという思想を法然に唱えさせたのではないか」とした。

母親から送られた手紙が貼り付けられた光明寺の「張り子の御影」は「お母さんと一緒に極楽に往生したいという思想の表現」とも言明。

こうした共に往生することを「共往」、また共にこの世に還って衆生を救うことを「共還」と表し、法然の教えとして説いた。

写真=「共往」「共環」を説く梅原猛氏

2011/02/03 葬儀問題で横浜市仏が寺院アンケート 将来の寺檀関係に不安も

14d4a0fc1be3c6_L1.jpg2兆円産業と言われる葬儀業界。昨年9月に葬儀業界に流通大手のイオンが参入したのを皮切りに、異業種の大手企業の参入が相次いでいる。一方、仏教界の動きはどうか。昨年は、『葬式は、要らない』(島田裕巳著)やいわゆるイオン問題と相まって、お布施や葬儀に関する論点が議論を呼んだ。これに対して、全日本仏教会や各宗宗務行政機関のシンポジウムで多くの議論がなされたが、一般の寺院の声があまり聞こえてこない。一般の寺院に近い地域の仏教会が意識調査を行った。

昨年10月、横浜市仏教連合会時局対策委員会(佐藤功岳委員長)は、加盟寺院443カ寺を対象に、お布施や葬儀に関して、意識調査ためのアンケートを実施。98カ寺から回答を得た。

質問は全部で12項目(自由意見欄2項目含む)。質問項目には、イオンが参入当時にHP上でお布施の目安を明示したこと(現在では削除)に関連したものや、今後の寺檀関係の危機感を聞くものが並ぶ。

「イオンがお布施の目安を提示した事をご存じですか」との質問では、84%の寺院が「知っている」と回答。特に一般企業が布施を定額化したことについて「一連の問題に関心がありますか」という質問では、「大いにある」50%、「多少ある」33%と高い関心を示していた。

しかし、「この問題に関して、近隣や同宗派の寺院と話題になりましたか」では「大きく取り上げられた」が6%にとどまった。「まったくなかった」27%、「多少あった」67%という結果となり、一般住職の間では、それほど話題になったわけではなさそうだ。

アンケートの自由意見欄では、そうした危機感からか、世間のお布施の捉え方を批判するだけでなく、今後の寺院のあり方や、仏教界全体のこととして自らの襟を正す契機とすべしとの意見も目立つ。

回答を取りまとめた本多康興副委員長(真宗大谷派蓮光寺住職)に印象深かった回答を聞くと「〝お布施はするものが決める〟というのがあった。当たり前のことだが、ハッとしたね」と話した。日々檀信徒と接する住職の声にお布施論議の大前提が見えてくる。

自由意見では、「葬儀に関してより僧侶が指導していくべきだ。今は葬儀社が主導権を握っている」とお布施とは別の問題を指摘する意見もあった。三浦公正委員(時宗浄光寺住職)は「お布施の金額の話だけでなく、企業や葬儀社の寺院・僧侶の斡旋も問題だ。葬儀社の中には、施主に名刺を渡すのを禁止するところもあるようだ。葬儀社主導により、その場限りの葬儀が多くなるのでは」と危機感を募らせる。

寺院と檀家との将来の関係について問う項目では、「大変危機感を感じる」が25%、「多少危機感を感じる」が40%で、将来の寺檀関係に危機感を持つ住職が65%いることが分かった。この結果をどうみるか。

長年、葬儀問題を取り上げ、イオンが参入する前から現状を予測していた佐藤委員長(日蓮宗大円寺住職)は、アンケートの回収率の低さから「おそらく、仏教会全体では、まだ問題意識から危機意識へと至っていないのではないか」と嘆息。「お葬式は一番の布教の場です。それがないがしろにされる、祈ることが消される、そんな状況が現場で起きている。布教ということを真剣に考えれば答えは出てくるはずだ」と警鐘を鳴らしつつ、僧侶の自覚を促す。

なぜ今一歩危機感を持ち得ないのか。その理由を三浦委員は次のように推測する。「お寺というのは、いきなり檀家が半分になれば、皆慌ててどうにかしようと言い出すもの。しかし、(土地柄)現状ではあまり変化はない。ところが、10年経つとどうか。今は上手くいっているお寺でも、〝あれ、檀家が3分の1になった〟となりかねない。非常にゆっくりとした動きの中で事態が進んでいるのです」

同委員会ではアンケート結果を加盟寺院に配送する予定。佐藤委員長は、「危機意識を共有し、次の行動につなげたい。仏教会という地域の組織には責任がある。できれば、こういったアンケートを他の地域仏教会でも是非やってもらいたい」と語った。

2011/02/03 WCRP日本委 北東アジア会議に参画

(財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(庭野日鑛理事長)の第112回理事会・第107回評議員会が1月26日、東京・杉並区の立正佼成会法輪閣で開かれた。新年度の事業方針では、新公益法人制度に基づく公益認定財団法人への認定申請を今秋にも行い、来年4月に新体制を発足させると発表。東アジア情勢の安定化に貢献すべく、「北東アジア4カ国会議」(2月19・20日、北京で開催予定)への参画も承認された。

「北東アジア4カ国会議」(アジア宗教者平和会議=ACRP=主催)では、「東アジアにおける平和・和解」をテーマに、日本・中国・韓国・北朝鮮の宗教者がその役割などを議論。北朝鮮における平和と人道支援のための4カ国共通の課題も共有し、北東アジアの平和構築に向けた共同声明文を採択する予定。出席の際には、「日本は北朝鮮の非核化を強く訴えるべき」との意見も出された。

昨年のWCRP40周年記念行事の一環として計画されていた「東アジア青年宗教者4カ国会談」は、北朝鮮・中国の不参加により日韓両国の会談にとどまった。特に中国側の不参加には、尖閣諸島問題が背景にあるとみられている。その後、北朝鮮による韓国・延坪島への砲撃もあり、北東アジアには平和阻害要因が山積。政治レベルを超えた宗教者の活動が期待される。

来年には世界大会が開催される予定であることから、前回の京都大会で採択された『京都宣言』の「あらゆる暴力を乗り超え、共にすべてのいのちを守る」行動の強化が打ち出された。

新年度の収支予算総額は、経常部1億893万2千円、平和開発基金3741万円の計1億4634万2千円。

2011/02/10 「選挙で買収」記事に曹洞宗がコメントを発表

1月30日付『河北新報』に「曹洞宗選挙で買収 一関の住職、『有権者』に最大10万円」という見出しの記事が掲載された。昨秋の岩手選挙区の宗議会議員選挙(總持寺系)で買収行為があったという内容で、曹洞宗(佐々木孝一宗務総長)はこの記事に関してコメントを発表した。

コメントでは、「宗門として、今回、このような記事が掲載されたことにより、檀信徒をはじめたくさんの方がたにご心配をおかけしましたこと誠に遺憾に存じます」とお詫び。そして伝統的、儀礼的に「献香」として住職が寺院への訪問の際に、「ご本尊にお供えするために、線香等に代えて現金をお供えすることが慣例として存在します」と認めた。

一方で、「曹洞宗の『寺院住職』に1人当たり主に現金3万円~10万円を配ったことについて買収との表現がされていますが、配った先が『寺院住職』なのか『寺院』なのかは、当事者間のことであり、申し上げることはできません」としている。

記事には「曹洞宗の内規は選挙人に対する金銭、物品の供与と接待を禁じているが罰則はない」とあるが、懲戒規程に選挙に関する罰則規定があることなど曹洞宗の立場を説明している。同様の記事は、『東京新聞』などでも掲載された。

2011/02/10 浄土宗報恩明照会 電話相談室を開設

㈶浄土宗報恩明照会(袖山榮眞理事長)は1月27日、東京・港区の報恩明照会館で平成22年度第二回理事会・評議会を開催。新年度の活動が審議され、新事業となる電話相談室の設置を含む平成23年度の事業計画案と予算案が承認された。

同会では社会貢献を目的とした「ともいきづくり事業」と法然上人の心を伝える「ともいきがたり事業」の2本柱で活動を推進。社会貢献活動では仏教カウンセリングとして、宗内教師や寺族を対象としたカウンセリング研修会の開催や冊子制作を行ってきたが、平成23年度からは、新事業として「心といのちの電話相談室」を開設。一カ寺一奉仕運動として始まった「心といのちの相談所」事業の浸透と活性化を図る。

相談員は大本山清浄華院カウンセリング研修会の修了者有志で構成。4月4日の開始予定で、受付時間は毎週月曜日の午前10時から午後4時まで。窓口は報恩明照会館に置かれる。

相談を受けた寺院のアドバイザーとしての役割も兼ねた相談室となる。袖山理事長は「相談を受けた寺院では応対できなくとも、電話相談に取り次ぐという案はあったが、それが実を結んだ」と期待を寄せた。

ともいきがたり事業では、法然上人をたたえる会の会員による寺院や学校への「出前寺子屋」の実施、雑誌「THE法然」の無償配布を行う。また今年は同会設立100周年を迎えることから、「百周年記念誌」を制作する。

新公益法人制度に伴う、公益法人の申請は平成24年度をめざし、平成23年度中は定款変更や書類作成にあたる。

理事会では、800年遠忌後の「法然上人たたえる会」の事業やあり方、アジア仏教圏支援事業の「ミャンマー寺子屋建設」の将来などが議論された。同会ではミャンマーで年に1校学校を建設しているが、理事からは他団体によるミャンマー支援や国内の状況などを勘案し、他国への支援を含め、支援事業を検討するよう要請があった。

2011/02/10 本願寺派 議案撤回・総辞職

14d537a374ae31_L1.jpg浄土真宗本願寺派の橘(正信)総局が3日午後、総辞職した。1月31日から開かれていた第296回臨時宗会で宗法変更案をはじめ基本法規改正案が可決に必要な4分の3の賛成を確実に得られないと判断したためで、審議中の議案6件もすべて撤回した。しかし翌4日の総長選挙では大谷光真門主の指名を受けた橘総長が再び選出され、組織制度の抜本改革を目指す基本法規改正は仕切り直して再度進められることになった。

昨年12月の臨宗に提出した基本法規改正案に議員の強い反発があったのを受け、橘総長は議員の意向を汲み取り「代議員会」を「宗会」にし、また本予算議決権を「宗会」の権限とするなど原案を一部修正した修正案を提出して臨んだ。

審議のさなか再度の修正もあったが、第1法規特別委員会(中戸康雄委員長)が2日、宗法変更案など付託議案3件を可決。第2法規特別委員会(出口湛龍委員長)も賛成多数で本山典礼案など3件を可決し、あとは本会議の採決を残すのみとなっていた。

ところが、両委員長報告作成が終了した3日午後、総局がこのまま本会議の採決へ踏み込むことを躊躇。反対の姿勢を示している議員を説得するなど働き掛けたが、確実に議案が通るような状況ではないと判断したためだ。

真生会幹部議員の話では出席議員75人中賛成が56票、反対が19票で、基本法規の可決に必要な4分の3、57票にはわずかに1票足りない状況だった。

結局再開された本会議で橘総長は、修正した法規議案4件・同意案2件の撤回と総辞職を通知。橘総長は「本会議で議決を得るべく全力を傾注してまいりましたが、すべての方にご賛同を得ることができない状況になりました。このまま否決となることは再びこの案を提出できないことから、総局としては議案の撤回という決断を致しました」と撤回理由を説明し「これまでの取り組みを踏まえた上でまさに基本法規改正の実施に向けて人心一新し総辞職の決意を固めた」と、総辞職は基本法規改正へ向けて態勢を立て直すものであることを述べた。

橘総局の総辞職を受けて4日午後、門主が指名した候補者2、3人の中から新総長を選ぶ総長選挙が実施された。大谷門主は橘総長と根來泰周監正局長の2人を指名。その後の無記名による議員の投票で、投票総数69票中、橘総長が最多得票の53票を獲得して再選を果たした。根來監正局長は9票獲得、白票が7票出た。

再選された橘総長は「今後は宗法、基本法規改正実現のため、また4月から始まる親鸞聖人750回大遠忌へ向けて微力ながら全力を尽くしたい」と基本法規改正への意欲を改めて示した。

写真=再選後、宗法改正を進めていく考えを改めて表明した橘総長

2011/02/17 日蓮宗「良縁の集い」 結婚第1号夫婦が報告

伝統教団の寺院後継者不足が深刻さを増すなか、教団主催のお見合いを企画する宗派が増えている。日蓮宗総合相談所(駒野教源所長)では、3年前から寺院子弟の「婚活」支援を開始し、2年前に京都で開催された第2回「良縁の集い(お見合い会)」で知り合った男女が昨年10月にめでたくゴールイン。結婚第1号のカップルが9日、東京・大田区の宗務院を訪れ、渡辺照敏宗務総長に報告をした。

めでたく結婚をしたのは、青木三明上人(36・三重県)と牧子さん(34・奈良県)。牧子さんは菩提寺の住職に勧められてお見合い会に参加。会場ではお互いを見知っただけだったが、会の終了後に会場の前の京都国立博物館で開催中の「日蓮と法華の名宝」展で再会し、これをきっかけに連絡を取り合う仲に。約1年の遠距離恋愛で月1回のデートを重ね、共に両親が認める交際へと発展。去年の10月2日に結婚した。

渡辺総長は「まさに仏縁です。縁に始まり縁に終わるのが人間ですから、この縁を大事にして頂きたい。おめでとうございます。幸せな人生を歩んで下さい」と祝福。

〝花婿〟の青木上人は、「会ではフリートークの際に彼女を見失い、もうダメかと思ったのですが、(展示中だった)絵曼荼羅の前で彼女を見つけ、〝このままでは縁が切れてしまう〟と勇気をもって話しかけました」と当時の心境を明かした。

独身僧侶へのアドバイスを求められ、青年会の広報担当委員長でもある青木さんは「やはり全体的に男は根性がない。〝当たって砕けろ〟で勇気をもたないと」と勇ましく全国の青年僧へメッセージ。駒野総務局長が「その心情を是非、若い者に伝授してほしい」と依頼すると、青木上人は「実は自分のことで精一杯でした」と照れ笑い。7月に第一子が誕生予定でもあり、新婚夫婦の幸せな雰囲気に終始笑顔が絶えない会見となった。

駒野総務局長によると、他にも2組が交際中。またお見合い会に出た寺族女性同士が友人となり、男性を紹介し合い、結婚に向かっているケースもあるという。渡辺総長は「過去3回の開催で結果が出ず、止めようかという話もあったが、報告を受けてこれは続けようと決心した。お二人の結婚は宗派にとってのずみにもなる」と施策の継続に意欲を示した。

2011/02/17 京都・世継ぎ地蔵上徳寺 大祭に各地から参拝者 護摩木一万本焚き上げ

14d5cad02a1464_L1.jpg「京のよつぎさん」として知られる京都市下京区の世継地蔵、浄土宗上徳寺(塩竃義弘住職)で8日、大護摩供が厳修され、境内いっぱいに大勢の参拝者が集い御利益を願って手を合わせた。

同寺は江戸初期に造立された地蔵に祈願すると世継ぎに恵まれると知られ、以来「世継地蔵」と親しまれてきた寺。毎月の功徳日は祈祷会を修行するが、なかでも一億劫日の功徳日とされる2月8日は大護摩供を含む世継地蔵尊大祭を盛大に厳修している。

この日は頭襟に梵天袈裟、鈴懸姿の山伏5人が出仕し、法螺貝を吹き鳴らして修法。導師の塩竃住職が願文を奏上し、世継相続・聡明智慧・衆病悉除など十種福の成就を祈願した。

その後護摩壇に点火されるとヒバの白い浄煙が立ち昇り、炎が出たところで義明副住職ら4人の僧侶が護摩木1万本を投入し焚き上げていった。

例年同様、護摩供は京都府内はもとより近畿、北陸、東北など各地から参拝者が訪れ、手を合わせていた。護摩供に先立っては本堂で十種福祈願会を厳修。参拝者には多幸(蛸)焼き、酒粕汁が振る舞われた。

写真=大勢の参拝者が見守る中修法された上徳寺の大護摩供

2011/02/17 朝鮮半島出身者の遺骨返還事業 政府、具体案示せず

14d5cadef5655d_L1.jpg(財)全日本仏教会(全日仏)は10日、京都市内で「朝鮮半島の旧民間徴用者の遺骨返還事業の推進に向けて」をテーマに人権問題連絡協議会を開いた。

先月、全日仏は政府に対し、遺骨返還が進展しない理由の説明を求めた要望書を提出。これを受けて、政府担当官が出席し報告した。政府が把握している遺骨情報は2662体。返還に関しては日韓間で交渉中であるとし具体的な回答は一切なかった。そのため加盟団体にはいら立ちと失望感が漂った。

2011/02/24 孝道教団 『幸せの経済学』を上映 ローカル化で絆の再生を

14d65fd63e1c93_L1.jpg孝道教団(岡野正純統理)は横浜市の孝道山大黒堂会館で20日、第38回青年講座「戦争と平和について考える」を開催。世界仏教徒会議で公開されたドキュメンタリー映画『幸せの経済学』の監督で、世界のローカリゼーション運動のパイオニアのヘレナ・ノーバーグ=ホッジ氏を講師に、経済のグローバル化がもたらす構造的問題を学んだ。一般参加約50人を含め約250人が参加した。

ヘレナ氏の講演に先立ち、映画『幸せの経済学』を上映。映画は、伝統的な生活を営む人々の町ラダック(インド)を例に、グローバル化がもたらす消費文化が競争を激化させ、伝統的な生活をする人々の絆や自然との関わりを断絶させていると指摘。本来必要のない消費を促され、分散型の地域社会から一極集中する社会システムへと世界が進んでいることに警鐘を鳴らし、ローカル化を一つの処方箋だと提案している。

岡野統理は趣旨説明で、劇中の「この辺りに貧しい家はない」と答えていたラダックの青年が10年後に「先進国と比べて貧しい。援助が必要だ」と訴えたというシーンに着目。グローバル化がもたらすライフスタイルの変化が必ずしも幸福に寄与しないことを指摘した。

ヘレナ氏の講演は、岡野統理が通訳を兼ねた質疑応答で進行。ローカル化については「決して世界の人々の情報交換や文化交流を否定しているわけではない。この映画は経済的な問題で、地域に根ざした経済の発展が重要だと言いたかった」と述べ、特にローカル化で重要なこととして、「生産者と消費者の距離を縮めること」を提案。地産地消の促進を推奨した。

さらにヘレナ氏は、エコノミックリテラシー(経済を読み解く力)の必要性や仏教の縁の考え方、智慧と慈悲の教えが、物事の全体像や本質を見極めることに役立つと強調。「大企業の従業員が悪いとかではなく、大きな流れを見る目を養うことが大切」と語り、「例えば、世の中では経済成長で失業率を下げる、幸せになれるというが、本当はどうなのか。違う選択肢を選ぶことができることに気が付くことが必要。身近にいる人とより豊かな関係を築き、一緒に考えてみてほしい」と話した。

講演に続き、ヘレナ氏を囲んで茶話会も開かれた。地産地消や地域コミュニティ活動に取り組む一般参加者が多く参加し、活発な意見交換がなされた。

2011/02/24 三河仏壇振興協同組合 〝匠の技〟でお洒落雑貨

14d65ff8f3ef6f_L1.jpg江戸時代から受け継がれてきた愛知県の伝統工芸品「三河仏壇」。近年は、住環境の変化や安価な外国産の流入によって製造数は減少、厳しい状況が続いている。こうした中、三河仏壇振興協同組合青年部員を中心に、中小企業庁の「JAPANブランド」の認定を受けた「ソーゴン・スタイル・プロジェクト」が始動。産業復興へのユニークな取り組みが注目を集めている。

プロジェクトテーマは「お洒落な仏間(ZEN―Living)の開発」。リーダーの都築数明さんは「これまでの仏間は仏壇の存在感が強かった。仏壇をオブジェにみえるような新しい空間を提案したい」と「禅リビング」の姿を思い描く。現在は、「新たなビジネスモデルを作る」ため、仏壇製造の伝統技術を活かした独自の商品や、家具・玩具など他産業とのコラボレーションによる商品開発も計画中。2月初旬に東京ビックサイトで行われたギフトショーでは、第一弾としてお洒落な仏間を演出するインテリア雑貨17アイテムも発表した。

各アイテムは、木地師、錺金具師、彫刻師、塗師、蒔絵師、金箔押師といった仏壇の製造過程にある匠の技を贅沢に採用、斬新なデザインにも目を奪われる。

例えば、「ダストボックス」(30万円)や掃除用品の「コロコロ」(6万円~)は、漆のツヤが美しく、錺金具、蒔絵の装飾が麗しい。ごみ箱とコロコロなのに不思議と気品が溢れる作品だ。また、木魚を模った「ヘッドフォン」や三鈷杵の柄がついた「ペーパーナイフ」、読経用の台を思わせる「アイパッドスタンド」など、仏教的なデザインの面白さも大きな魅力。仏間のみならず、寺院にもぴったりと馴染む。伝統技術が調和した品質の良さは、さり気無いお洒落を演出してくれること間違いなし。

ギフトショーではCGパネルでスタイリッシュな「お洒落な仏間」も提案。若い世代に広がる仏像ブームのような波を、「カッコいい仏間」で呼び起こすべく、ハウス・メーカーとの連携も模索中だ。また「ZEN」が広がる海外での事業展開も視野に入れており、秋にはニューヨークでの展示も予定している。問い合わせは三河仏壇振興協同組合内(☎0564―24―7766)。

2011/02/24 国際宗教研究所シンポ 孤立者〝支縁〟を

14d66086babc10_L1.jpg人間関係のない孤立した生活や孤独死など「無縁社会」が問題となる中、㈶国際宗教研究所(島薗進所長)主催の公開シンポジウム「無縁社会と宗教者―新しいネットワークの創出」が19日、東京・豊島区西巣鴨の大正大学で開催された。自殺対策や貧困支援、地域づくりなどを行いながら、新しい人間関係の構築に取り組んでいる宗教者4氏が登壇した。

自殺対策や貧困支援を行う真宗大谷派僧侶の中下大樹氏(寺ネット・サンガ代表)は、「年間100件の生活困窮者の葬送支援を通じて見えてきたこと」を報告。自殺や孤独死の現場に立ち会い、身寄りのない人の葬儀を執り行う日々の活動から、「貧困の定義は、貧乏+孤立です。人間は、孤立が一番辛い。誰か一人でも話を聞いてくれる人がいれば救われる」と話した。自己責任論の蔓延から、「無援社会」になっていると世相を批判した。

昨年、市民有志らと新たに「絆ネットワーク」を結成。自死遺族やアルコール依存症患者、介護疲れに悩む人などの集いを定期的に開いていることを紹介し、苦しみ悩む人を一人にせず、「安心して悲しめる場をつくること」が必要だと訴えた。「できる人ができることから始めないと、ネットワークはできない」とも指摘した。

東京新教会牧師の國枝欣一氏は、教会内にNPO「オープンスペース〝Be!〟」を設立し、社会生活が困難な若者の居場所づくりと社会復帰の支援をしていることなどに言及。「彼らの苦しみを聞かせてもらうことが大切」とした。

土生神社宮司の阪井健二氏は、都市化が進む地元、大阪・岸和田市土生町での地域づくりを発表。地域の暮らしは「先人が築いた歴史と伝統に守られている」との認識から郷土史の勉強会を開いていると話し、日常の心がけとして「目の前の人にちょっと声をかけるなど、小さなふれあいを重ねることで、誰もがいつでも入ってこられる〝ふるさと〟になる」と展望した。

金光教羽曳野教会長の渡辺順一氏は、教会を地域に開放し、地元の商店とも連携して取り組む「ホームレスや自死者を生み出さない『支縁のまち』づくり」構想を披露。職と住居を失った若者らの就労支援などを行う民間の共同事業「大阪希望館」に参画していることも説明した。

コメンテーターで「宗教団体による野宿者支援」を研究テーマとしている白波瀬達也氏(関西学院大学/大阪市立大学研究員)は、日雇い労働者が集住する大阪・釜ヶ崎の問題が全国化してきたと指摘。その上で、「宗教者が担う役割」について質問した。

中下氏は例として、様々な苦悩を抱えた相談者が行政窓口で「たらい回し」になるのを防ぎ、適切な支援策にたどり着けるように導くコーディネーターとしての役割を提案。宗教者が「自分から現場に出て行く」ことの重要性を強調した。

さらに「『無縁・孤独死の何が悪い』と言う人は、いま元気だからそう言えるのではないか。自分が寝た切りになったとき、そう思えるか」と問いかけ、「人が血を吐きながら(孤独に)死んでいく。それを知った者の責任として活動している」と述べた。

司会の弓山達也・大正大学教授は「宗教者の社会貢献は宗教が核となると考えがちだが、むしろ宗教施設から出て行くことに新しいネットワークの可能性が見出せるのではないか」とまとめた。

2011/03/03 第28回庭野平和賞 タイのスーラック氏に

14d6f41633a813_L1.jpg宗教協力を通じて世界平和に貢献した個人や団体に贈られる庭野平和賞(公益財団法人庭野平和財団=庭野日鑛名誉会長・庭野欽司郎理事長=主宰)の第28回の受賞者に、タイの在家仏教指導者で「仏教者国際連帯会議(INEB)」の創設者であるスーラック・シバラクサ氏(77)が選ばれた。28日、京都市内で開かれた会見で発表された。

スーラック氏は1933年3月、バンコク生まれ。タイで教育を受けた後、英国に留学し、法律などを学んで帰国。早くから今日の社会参加仏教の概念に基づいた活動を展開してきた。

1989年に平和・人権運動など社会問題に取り組む仏教者の国際ネットワーク「仏教者国際連帯会議(INEB)」を設立。仏教の社会的実践を通して、公正で平和な世界の実現に尽力している。現在、INEBに参加する仏教徒は、アジアから西洋まで約20ヵ国・地域に及び、「青年菩薩プログラム」など若い仏教徒の育成もサポートしている。2年ごとに開かれる会議は、文化交流や多様なネットワークを構築する場となっており、仏教者の社会貢献活動を促進する役割を担っている。今年10月には、インド・ブッダガヤでの開催を予定。

さらには宗教や文化、教育、福祉、開発、環境のために活動する組織や団体の設立に数多く参加し、市民レベルの社会活動を推進。特に環境保全活動では、消費目的の開発を拒否し、地域に根付いた文化・宗教伝統に基づく発展を進める新しい開発モデルを提唱している。国際的な認知度も高く、95年には「もう一つのノーベル賞」とも称されるスウェーデンの「ライト・ライブリフッド賞」を受賞した。

常に一般市民や貧しい人々の側に立ち、人間の尊厳を脅かす問題には断固として立ち向かう。政治権力をも恐れず、為政者に直言する姿勢は、社会正義を信じる世界の人々に大きな勇気を与えている。

授賞式は5月19日午前10時半から、東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われ、賞状と顕彰メダル、賞金2千万円が贈呈される。同21日には京都市内で、スーラック氏とのシンポジウムが開かれる。

2011/03/03 浄土宗葬儀シンポ 葬儀礼の宗教性見失うな!

14d6f42a6aeece_L1.jpg浄土宗総合研究所(石上善應所長)は2月28日、東京・港区の大本山増上寺三縁ホールで公開シンポジウム「崩れゆく葬祭のこころⅡ 今あらためて意味を問う!―浄土宗の葬儀 年回法要」を開催。各宗の識者とともに葬祭の現代的意義を問い直し、葬送儀礼の宗教性を改めて議論した。

同研究所は総長要請で、教義に準拠した『浄土宗の葬儀と年回法要について』を昨年12月に刊行し、全寺院に配布。宗門として葬儀の統一的な見解を示した。

初めに同書の共同執筆者の1人で、淑徳大学准教授の武田道生氏が「浄土宗の葬儀と年回法要―改めて現代社会での重要性を考える」と発題した。

武田氏は教義に照らし、「有遠無縁の一切衆生を救う還相回向を果たすこと」と踏まえた上で、浄土宗の葬儀の現代的な意味を「葬儀は、仏教としての本当の目的を果たすために往生するという新たな生まれ変わりの儀式」であると解説。阿弥陀仏に祈りを捧げることにより、死者への回向供養が、生者と死者に関わらず、絆を深めることになるとした。

また教義を理解した葬儀には、現代にも通じる癒しの要素があるとして、「今こそ我々は、葬儀や年回法要を通して役割を果たすべきだ。強い誇りと宗教的な信念を持てば、今の状況に対応できる」と会葬者に寄り添うことを呼びかけた。

パネリスト発表では、駒澤大学の奈良康明名誉教授(曹洞宗僧侶)と月刊『寺門興隆』の矢澤澄道編集長(高野山真言宗僧侶)が登壇した。

奈良氏は、「仏教と葬祭の関係」と題して発表。前提として「仏教の本質はあくまで自己を凝視する宗教」としつつ、「葬祭は社会生活に必須の宗教的要請」であると説明。「葬祭は信仰ではなく、民俗」と明確に分類した。

ただし、悟りや往生以外は仏教とは認めず「葬式は仏教ではない」とする「悟り一点主義」については、「仏教を教理としてのみ捉えるからそうなる。民衆の間に定着している仏教を広く捉えるならば、仏教じゃないと切る方がおかしい」と展開。「民俗儀礼の救済と仏教の実存的救済と内容が違うのは事実」としながらも、「民俗が癒しの儀礼として伝承されているのも事実」と主張した。

曹洞宗の事例についても紹介。「多くの場合、曹洞宗では〝葬祭は教化の場や手段である〟と教えられるが、教化はなにも葬祭の時だけにやるものではなく、普段からやっておくべきもの」と提言。

「〝普段何もしないのに葬祭の時だけ話す〟のには疑問がある」と述べると、「葬祭は教化手段ではない。葬祭は葬祭として意味がある。教化の手段とすることは、葬祭儀礼の宗教的意味を見失っているということ。僧侶の慈悲の発露として葬祭儀礼を心からおこなっていくべきだ」と語った。

矢澤氏は、「もう一度やってほしいと言われる葬儀のために」と題して発表。25項目の『よりよい葬儀のための25チェックリスト(導師用)』を提示して、位牌や弔辞の活用など現場で出来る工夫を紹介した。

発表後は、今岡達雄主任研究員をコーディネーターに『浄土宗の葬儀と年回法要について』の共同執筆者の熊井康雄主任研究員を交え、パネル討論。参集した浄土宗教師、寺族ら200人からの質問をもとに討議を行った。

2011/03/03 浄土宗・知恩院 伊藤唯眞門主が晋山

14d6f448d500c9_L1.jpg昨年10月26日に就任した伊藤唯眞浄土門主・総本山知恩院門跡第88世の晋山式が25日、京都市東山区の同院御影堂で執り行われ、伊藤門主は全国から集った宗内外の参列者1500人の前で法灯継承を奉告し、祖山護持・宗風宣揚と法然上人800年大遠忌成満への寄与を誓った。

御影堂東側広縁での御廟遥拝後、堂内での晋山奉告法要の表白で伊藤門主は、故坪井俊映前門主の後任に推挙されたこと述べたうえ、「ただひたすら元祖歴世の冥祐、辱知有縁の提撕を仰ぎ、祖廟の護持、祖山の興隆、宗風の宣揚、元祖法然上人八百年大遠忌成満に寄与し、以て浄教の法燈を継承せんことを希い、意を決し志を新たにし、身命を抛って仕え奉らんと欲す」と決意を述べた。

2011/03/10 曹洞宗議会 「将来構想部会」で未来展望

14d78ad4e7a5a7_L1.jpg曹洞宗(佐々木孝一宗務総長)の第112回通常宗議会(荒井源空議長)は2月25日、議案18件、承認を求める件2件、報告1件の全議案をほぼ原案通りに可決・承認して閉会した。佐々木内局は「向きあう、伝える、支えあう」をスローガンに掲げ、諸施策の遂行にあたることを表明した。さらに宗門全体の見直しにも言及し、宗務総長が会長を務める企画委員会に「宗門の将来像を構想する専門部会」を設置。いわば総長直轄の委員会で、強い決意を示したものとなった。新年度予算は50億8130万円と前年度より1億2千万円増。前年度に続いて駒澤大学に1億円を支出することも決まった。

【解説】記者会見で佐々木総長が「ダラダラとした宗議会はやりたくない」と述べたごとく、總和会会長でもある佐々木総長のペースで議会は進んだと言っていい。かつて宗務総長椅子の近くまで歩み寄ったが、落選を経験。しばらくは宗政から離れたものの、平成19年9月に議員復帰後は存在感を見せた。とりわけ前・渕内局で教学部長を務め要所では指導力を発揮し、資産運用問題で揺れた駒澤大学理事長を急きょ兼任することにもなった。

また総長任期が4年制になってから有田・渕内局と続いたが、多々良学園移転に伴う追加支出と破綻、總持寺祖院復興をめぐる紛糾などがあり、中長期的な展望に立った施策が十分だったとは言えなかった。他宗派だが本願寺派の総長はこの30年間で100カ寺が廃寺になったことを議会で明らかにして、長期的戦略の必要性を訴えた。本願寺教団の見直しの背景にはこうした分野の調査結果と分析がある。
「将来構想部会」を立ち上げた佐々木内局は現状をどこまで認識し、次なる手をを打ち出せるのかが問われそうだ。会見で「私は80(歳)だ。できることからやる」と明言した佐々木総長。曹洞宗教団の未来は昭和ヒトケタ総長にかかっている。

写真=全議案を承認して閉会するに挨拶する佐々木総長と内局

2011/03/10 全日本仏教青年会 「TERRAへ祈る」開催

14d78b0232f4b4_L1.jpg発展途上国の子どもたちの状況を映像や演劇などを通して学び、日本の子どもたちに何ができるかを考えてもらおうと企画された「TERRA(テラ)へ祈る」。全日本仏教青年会(全日仏青、宮寺守正理事長)を主体とした実行委員会が主催して3日夕、都内のホールで開催された。全日仏青メンバーのほか学生や子ども、NPO関係者らが参席。途上国と先進国の間に生じている格差や南北問題を学んだ。

このイベントに協力したのはフリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ、東京都台東区)という国際協力団体。本体のフリー・ザ・チルドレンは1995年、「子どもが子どもを支援する団体」として創設。団体名の“フリー”は自由という意味だけにとどまらない。解放という意味もある。そして「①貧困や児童労働から子どもを解放する」「②子どもには社会や世界を変える力がない、という考えから子どもを解放する」という意味が込められている。一方、「テラ」は地球や大地を現す言葉。この地球が抱えている諸問題を知ることと同時に寺子屋復活も意図している。

「テラへようこそ」。進行役のアンドレオ・ポンピリオさんの発声で開幕。アンドレオさんは国際文化の架け橋を目指すパーソナリティーで、ラジオや雑誌等で活躍。小気味良い話術でイベントをリードした。

オープニングをうけて全日仏青加盟団体のトップが僧衣で登壇。主催者を代表して宮寺理事長が挨拶。「このイベントを行うにあたり、“気づく”をテーマにした。私のお寺で2年ほど前、小学3年生の男児を亡くした父親が来られた。その時の言葉が今も耳に残っている。『当たり前が一番だよな』ということでした」と体験をまじえて述べた。当たり前でなくなった時に気づく当たり前。宮寺理事長は若くして病死した井村和清医師が遺した詩「あたりまえ」を朗読して、開催意図を披瀝した。

続いてFTCJの天野フェイスさんが、FTC創設の経緯と活動を映像とスピーチで紹介。パキスタンに家が貧しく工場に売られ連日強制労働を強いられていた子どもがいた。NGOによって彼は助けられ、欧米で児童労働の不当性を訴えた。帰国後、彼は射殺された。12歳だった。このニュースを知った同じ12歳のカナダの少年は衝撃をうけて行動を始めた。FTCのルーツである。

映像の次は演劇。12歳、14歳、16歳の男女がインドの児童労働や子ども婚の問題を熱を込めて演じた。さらにFTCの運動を支えているキム・プルーズさんが体験談を講演。ストリートチルドレン、ゴミの山に住む子どもたち、食事もできず、学校に行けない子どもたちなど世界の現状を話し、「今日のことを誰かに伝えていただきたい」と身近なところからの実践を訴えた。

最後はパネルディスカッション。FTCJのメンバーやインドスタディーツアー参加者らが体験発表した。全日仏青を代表して河村泰仁氏(教化研修委員長)が加わった。河村氏は今回のイベントを踏まえ、国際問題を知る場として寺院の役割に言及。「現在のお寺は公益性がない状態とみられている。それを打破するために、地域の皆さんたちを呼んで地域貢献をはかりたい。そのためには寺子屋復活です」と主張した。

全日仏青は今後、NPOと連携し21世紀の寺子屋を模索・推進していく方針。

写真=主催者の全日仏青加盟団体代表が登壇し、宮寺理事長が挨拶した。

2011/03/10 花まつりを記念日登録 〝ロータスデー〟でブッタ誕生をアピール!

14d78b1c291df9_L1.jpg全日本仏教会と花まつりの推進をしている東映株式会社(岡田裕介代表取締役社長)は7日、東京・銀座の東映本社ビルで会見を開き、手塚治虫の名作『ブッダ』のアニメ映画化に合わせて4月8日を「ロータスデー」というネーミングで日本記念日協会に記念日登録し、認定されたと発表した。

岡田社長は「なぜクリスマスばかりで、4月8日の認知度が低くいのか。何年かかけて、『ロータスデー』として定着させ、盛り上げていきたい」と表明。さらに記念日登録に加えて、ワーナーと東映が声をかけ、各企業・団体と協力してイベント展開をすることを明らかにした。

泥の中で美しく咲く「蓮」は仏の智慧や慈悲の象徴とされる花。人々を「しあわせ」へと導くのお釈迦さまの誕生日を「し(4)あわ(8)せを分かち合い、感謝する日」として、ロータスデーの推進していく。

31日~4月17日は、東京タワーギャラリーで画家としても活躍する芸能人(石坂浩二さん、片岡鶴太郎さん、工藤静香さん、八代亜紀さん)の仏画と『ブッダ』の原画を展示する「ブッダの素顔展~手塚治虫と四大巨星」を開催。30日から4月8日まで東京タワーも蓮の花をイメージした特別ライトアップを行う。

東京タワーに近い増上寺では4月1日から9日まで、通常非公開の徳川将軍家墓所を無料で特別公開する。隣接するザ・プリンスパークタワー東京では、31日から4月9日まで最上部をロータスカラーにライトアップ。東京タワー一帯が「ロータスデー」一色になる。

JR東日本は「専用臨時列車ロータス列車成田号で行く成田山新勝寺花まつり体験」ツアーを企画。鉄道ファンにも花まつりをアピールする。飲料水メーカーの伊藤園も「ロータスティー」を発売予定。この他にも仏教界の聖日を盛り上げるべく企業・団体が次々と名乗りを上げている。

ロータスデーは「クリスマスとは違った明るい日にしたい」という岡田社長。映画『ブッダ』は5月28日に公開される。

2011/03/18 遠忌正当を迎えた京都3山 遠忌の延期などを発表

11日午後2時46分に東北地方太平洋沖地震が発生したのを受けて遠忌正当を迎えた京都の3山は被災状況の把握、救援に向けて即座に対応を開始した。うち浄土宗総本山知恩院は27日からの法然上人800年大遠忌法要を秋に延期すると発表、真宗大谷派は19日からの親鸞聖人750回御遠忌法要第1期法要を中止し、「被災者支援のつどい」を開くことを決めた。

◇知恩院 大遠忌法要を秋に延期

【浄土宗・知恩院】

浄土宗(里見法雄宗務総長)は11日に災害対策本部を設置。12日以降各教区・組長に被害の報告を求めた他、被災地の寺院へ電話を掛けて被害の把握中。岩手・宮城・福島にある10カ寺と連絡が取れず、津波にあった地域で伽藍が流された寺院もあったという。救援活動は知恩院、浄土宗青年会などと一体となって進めていく方針で、水やカイロなどを届けることにしている。

総本山知恩院(伊藤唯眞門跡)は14日、記者会見を開いて27日から始まる大遠忌法要の延期を発表。4月25日まで30日間のうち、27日から4月17日までを秋に延期し、同月18日から25日までの御忌は通常通り実施するとした。延期期日は未定。

会見には伊藤門跡が出席して「被災者の困窮を視野に入れずに、弱者に慈愛を注がれていた法然上人の法要を、すでに決定していた時期とはいえ、国を挙げて対策に奔走している中でつとめることには、宗教者の良心に苦しみが走る」「これは祖師も許して下さるであろう」「時期は遅れても災害地の人々と共に念仏が唱えられるならばこれに勝ることはない」と延期の理由を述べた。

会見には浄土宗の里見総長も同席し「私もまったくその考えに同感でありましてここは日を置いて災害地の復興を見極めた上で、秋に奉修されることはいい決断だったと考えております」と知恩院の決定に賛同した。

京都の他の3大本山、金戒光明寺(高橋弘治法主)、知恩寺(服部法丸法主)、清浄華院(真野龍海法主)も14日、それぞれ4月に予定していた遠忌法要を秋か来年に延期(期日未定)を決めた。さらに被災地に最も近い東京の増上寺(八木季生法主)は来年4月に延期することを決めた。

◇大谷派 第1期中止、集い開く

【大谷派】

真宗大谷派(安原晃宗務総長)は15日、東北地方太平洋沖地震の災害救援に宗門を挙げて取り組むため19日から28日までの宗祖親鸞聖人750回御遠忌法要の第1期を中止し、代わりに「被災者支援のつどい」を開くと発表。翌16日京都市下京区の宗務所で開いた会見で安原総長は「特に決定せざるを得ないのは原発の不安の広がりです。東北に限らず関東にまで広がってきている。まして計画停電が東北・関東一帯、東海にも広がっている。そういうことを思いますと災害救援に全力を挙げて取り組むべきとの一点に立ちました」と理由を述べた。

「つどい」では内陣の荘厳は通常通りとし、日中・逮夜の時間に執り行い、内容は門首のメッセージ、内局の表明、勤行などとする考えだ。

同派は11日の地震発生後直ちに災害救援本部(本部長=黒川紘紀参務)を設置。12日の遠忌オープニングイベント「いのちとこころの響舞台」、13日の公開講演会・シンポジウムの中止を決めたが、遠忌法要自体は「震災を共に悼む法要として一部予定を変更し厳修」するとしていた。

4月の第2期法要、5月の第3期法要については状況をみて判断することにしている。

◇本願寺派 被災地へ見舞品届ける

【本願寺派】

浄土真宗本願寺派(橘正信総長)は11日、緊急災害対策本部〈中央本部〉を設置して12日、葛谷英淳社会部長ら職員4人を第1次復旧支援隊として仙台別院へ派遣、救援を開始した。被災地の東北教務所(仙台別院内)と東京教務所(築地別院内)に現地緊急災害対策本部を設置。ここに一時見舞金として3千万円を交付した。

13日には第1次復旧支援隊が仙台別院に到着し、現地本部とともに宮城組内15カ寺へ見舞品等を届けた。同日夕には第2次復旧支援隊が派遣し、14日に被災寺院を見舞った。

同派の13日午後9時までの調査では被害が大きいとみられる東北教区所属63カ寺で、津波の被害が2カ寺あった他、本堂損傷、鐘楼全壊、山門・墓石倒壊などが61カ寺であり、全カ寺が何らかの被害を受けた。東京教区の茨城東組など73カ寺では本堂一部損傷などの被害が報告されている。

2011/03/18 東日本大震災 東北寺院を直撃

2011年3月11日14時46分ごろ、三陸沖を震源とする国内観測史上最大となるマグニチュード9・0の大地震が発生。地震に加え大津波によって甚大な被害をもたらした。15日現在、東北・関東などの死者は3100人を超え、安否不明者は1万6千人以上。避難生活者は50万人超。この東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)により、寺院も大打撃をうけた。とりわけ海側に近い寺院では、津波で寺基もろともに消失したケースもあった。各宗派・教団とも人員をおくるなどして被害状況の把握に努める一方、被災者支援に乗り出した。また被災が軽微であるため、避難場所として提供している寺院がいくつもみられた。

地震発生直後から各宗派で災害対策を設置するなどして対応にあたっている。また地震当日は首都圏の交通機関が全面的にマヒしたため、都内の増上寺や築地本願寺、護国寺などの宗教施設では“帰宅難民”に開放した。

各宗の被害や支援状況は次の通り。

【天台宗】
天台宗(阿純孝宗務総長)は12日、災害対策本部を設置し、被害状況の把握に努めており、集まった情報はHP上で報告している。被害のあった福島教区や陸奥教区などにも対策室を設置する準備が進められている。

16日には一隅を照らす運動総本部が、義援金3千万円をNHKに寄託。14日からは義援金の募集も開始しており、全寺院へ依頼するほか、HP上でも広く協力を呼びかけている。

【高野山真言宗】
高野山真言宗(庄野光昭宗務総長)では11日、宗務所に災害対策本部(本部長=庄野総長)を、東京別院に災害現地対策本部(本部長=四之宮弘孝主監)を設置。情報収集を行い、随時HPにアップしている。品川駅にほど近い港区高輪の東京別院では震災当日の11日夜、帰宅困難者数人を宿泊させた。別院に大阪からの食料2千人分と合わせ5千人分の物資を集積。速やかに配布先を決める。

同宗徳恩寺(鹿野融完住職・横浜市)と成就院(塩澤和弘住職・藤沢市)は15日午後、被災地に向け出発。福島県いわき市の同宗冷泉寺(酒主照之住職)・如来寺(安達空信住職)が避難所になっているため、まずは両寺をめざす。温かいお茶と白玉千食分、果物、菓子をはじめ、蒸しタオル2千本、水・麦茶ペットボトル500本などの提供を行う。東京別院の災害支援用備蓄品(発電機、アルファ米、水、緊急食料等)も現地に運ぶ。宮城県名取市を足がかりに協働団体と連携しながら、南三陸、気仙沼などで支援活動を行う予定(15日現在)。

神奈川青年教師会(渡井敬介会長)では、11~13日、東京、相模両青年教師会と共に緊急托鉢(JR横浜駅、市営地下鉄センター南、弘明寺商店街)を実施。浄財約50万円が寄せられ、寄付や救援活動に活用する。

【真言宗豊山派】
真言宗豊山派(川田聖戍宗務総長)では宗務所常設の災害対策室(室長=川田総長)で情報収集。宗務支所や被災寺院に電話をかけるなどして被害状況の把握に努めている。

【浄土宗】
浄土宗(里見法雄宗務総長)では、社会国際局に災害対策本部を設置。被災地域の情報収集を進めており、寺院の安否情報は確認が取れ次第、浄土宗のHP上で随時発信している。

被害の大きかった仙台市若林区の荒浜沿岸部にある浄土寺は建物が流されたものの、住職・寺族の安否は確認された。15日までの調査では、岩手教区で全寺院の無事を確認。宮城教区の気仙組、第三組、第四組、第5組、福島教区の浜通り組などで安否確認がとれていない寺院もあり、確認を進めている。

すでに義援金の募金も開始し、全寺院に協力を呼びかけている。


【曹洞宗】
曹洞宗(佐々木孝一宗務総長)は12日、宗務庁内に災害対策本部を設置し、各方面からの情報収集に努めるとともに、義援金への協力を呼びかけている。

甚大な被害を受けた宮城・岩手・福島3県に1200カ寺以上あり、被災地域にしぼっても数百カ寺に上るため、具体的な被災寺院数を特定するまでに到っていない。津波により消失したという断片的な情報もあるが、事実確認の途中だという。安否確認ができない住職・寺族もいる。

そのため対策本部としては、複数担当者を置き電話によるローラー作戦を実施している。

14日には大道晃仙管長(大本山總持寺貫首)のお見舞い文書が発表された。東北地方太平洋沖地震および長野県北部地震に対してのもの。お見舞いの中で「仏祖の御加護により一人でも多くの命が救われること念じてやみません」と述べている。

【臨済宗妙心寺派】
臨済宗妙心寺派(松井宗益宗務総長)は、11日に特別対策災害本部を設置。現地の情報収集を行うと共に、災害義捐金の受付を開始した。

岩手、宮城、福島3県の被災地域寺院では建物の損壊があったものの、住職や寺族全員の無事が確認された。現在、避難場所となっている寺院も数ヵ寺確認されており、被害状況はWEBほんじょ上にて随時報告している。また、今後の支援策を検討するため、15日には宗務本所職員が被災地に向け出発。16日朝には福島県、昼頃には仙台に入り、現地の状況を調査する。

【日蓮宗】
日蓮宗(渡辺照敏宗務総長)では、地震発生当日に災害対策本部(本部長=渡辺総長、副部長=駒野教源総務局長)を宗務院に設置。全国の支部長(各宗務所長)から緊急連絡メールによる報告を受け付け、被害状況を調査中。被災した寺院や教師、寺族の数などを確認、集計中だが、幾つかの寺院が地震・津波で倒壊し流されたことを確認している。

日蓮宗HPでは、渡辺総長による「東北地方太平洋沖地震」についての声明を発表。日蓮宗国際協力基金を通じての緊急救援募金活動も開始し、義援金の拠出も検討中。寺院や教師向けの義援金や募金については今月末をめどに開始する予定。

さらにインターネット上で全国日蓮宗青年会の災害掲示板とHPをリンクさせ、個別の安否情報や被災地周辺情報の共有化を行っている。

【立正佼成会】
立正佼成会では13日に宮城県の仙台教会に第一次調査隊を派遣し、現地の情報を収集している。

15日までに各教会長の無事が確認されたが、宮城県の石巻教会とは直接連絡がとれなかった。現地からは、教会に約100人が避難したまま孤立した状態下にあるとの情報も伝わっている。

仙台教会周辺では水道・電気が復旧しているため3千人分の炊き出しも行われた。被害の実態を調査したうえで、現地へのボランティア派遣を検討していく。

【真如苑】
真如苑は復興支援活動を行うため13日、真如苑救援ボランティア(SeRV、サーブ)チームを被災地に派遣した。そのうちの1チームは長岡市から郡山市を経由して福島市入りし、同日15時に真如苑福島支部に到着。その後、現地職員とともに浪江町の津島支所(物資供給などの対策センター)へ保存水(500ml/本)643本、保存食(わかめ御飯、五目御飯)380袋やトイレットペーパー、乾パン、カセットコンロなど救援物資を届けた。

一方、応現院(立川市泉町)から出発した2チームは、13日に新潟市に入り、新潟支部(新潟市中央区)へ到着。翌14日には仙台に向けて出発し、同日16時頃に仙台市に到着した。仙台支部(仙台市泉区)では備蓄されていた毛布などを最寄りの避難所へ届けた。

もう1チームは岩手県大船渡市に入った。被災を免れた、海岸から1キロほど入った真如苑大船渡布教所を拠点に支援活動を行う予定だ。

真如苑では、被災地支援のため1億円の義援金支出を決定。今後、被災地の受け入れ体制が整い次第、支援を実施していく方針。

【WCRP】
WCRP日本委員会は13日、東日本大震災緊急支援を開始した。加盟団体や個人などを通じて募金を呼びかけている。期間は同日から5月31日まで。アームズダウン!キャンペーンに尽力した青年部会は街頭募金に力を注ぐ予定。

2011/03/18 【地震により被害を受けられた皆さまへ】

地震により被害を受けられた皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。一日も早く復旧されますことをお祈り申し上げます。

仏教タイムス社

2011/03/24 法然上人へ大師号加諡 宮内庁が伊藤門跡へ伝達

浄土宗総本山知恩院(伊藤唯眞門跡)は16日、天皇陛下から法然上人に対し「法爾(ほうに)」の大師号が加諡されたと発表した。法然上人の大師号は江戸中期に「圓光」の号が贈られて以来8つ目になる。

知恩院は法然上人800年大遠忌を迎えるにあたり浄土宗ともども東京の宮内庁へたびたび出向き法然上人への大師号奉戴を働きかけてきた。

16日、伊藤門跡(浄土門主)が東京の宮内庁へ出向き、羽毛田信吾長官から大師号加諡の伝達を受けた。

知恩院によると、今回加諡された「法爾」は、法然上人が比叡山時代に師、叡空から名づけられた「法然」の名の由来と同様「自然法爾」から採ったものだという。

法然上人の大師号は1697年(元禄10)に東山天皇から「圓光」の大師号が贈られたのが最初で、その後の500回忌以降、遠忌ごとに加諡されてきた。

500回忌の1711年(宝永8)に「東漸」、550回忌の1761年(宝暦11)に「慧成」、600回忌の1811年(文化8)に「弘覚」、650回忌の1861年(万延2)に「慈教」、700回忌の1911年(明治44)に「明照」、750回忌の1961年(昭和36)に「和順」が加諡されている。

今回の大師号加諡を受けて知恩院は4月18日、御忌大会に併せて奉戴奉告法要を執り行う。

2011/03/24 震災七日目に「祈りと追悼」 全国の寺院と教会など同時に

14d8c5ae10cb15_L1.jpg東日本大震災を受けて、「宗教者として『祈りと追悼』の行動をともに起こしましょう」という呼びかけが、宗教・宗派を超えて広がっている。全国各地の寺院や神社・教会で「被災者とともに―生を祈り、死を悼む」を共有し、震災発生後7日目にあたる17日から7日ごとに法要や集いを営むというもの。地震発生時刻の午後2時46分には、1分間の黙祷を捧げることも提案している。

呼びかけ人は、藤澤克己(浄土真宗本願寺派)、前田宥全(曹洞宗)、吉田尚英(日蓮宗)、中下大樹(真宗大谷派)、吉水岳彦(浄土宗)、保科正和(キリスト教会牧師)の各氏。被災地への救援物資の輸送が緊急課題となる一方、被災者の「心のケアが後回しにされる」ことを憂慮して立ち上がった。落ち着いた弔いができない被災地の現状に胸を痛める吉田氏(日蓮宗永寿院住職)は、遺族の悲しみに寄り添う決意を口にする。

東京・大田区の日蓮宗大本山池上本門寺(酒井日慈貫首)では、17日午後2時半から追悼法要を厳修した。酒井貫首(同宗前管長)を大導師に、池上山内寺院や東京南部宗務所などから約50人が出仕。居合わせた参拝者ら数十人も参列した。

法華経の読誦が進む中、僧侶、参列者が焼香。地震発生時刻である午後2時46分には境内の梵鐘が鳴らされた。

同日同時刻には、日蓮宗総本山身延山久遠寺(山梨)、同宗七面山敬慎院(同)、同宗本山瑞輪寺(東京)、浄土真宗本願寺派築地本願寺(東京)、浄土宗総本山知恩院(京都)、同宗大本山増上寺(東京)、曹洞宗大本山永平寺(福井)、同宗大本山總持寺(神奈川)、同宗青松寺(東京)、真言宗豊山派大本山護国寺(東京)をはじめ、各宗各派の寺院二十数カ寺やキリスト教会などでも法要や集いが営まれた。

同法要は24日、31日、4月7日…と7日ごと(毎週木曜日)に続けられるが、各地で宗教者が定期的に集まることで情報を共有し、新たな支援活動につなげたい考えもある。

2011/03/24 名取市東禅寺 津波が直撃した寺院

14d8c5c9ada4e0_L1.jpg大津波で寺基もろとも流失した寺院があるが、残ったとはいえ直撃を受けたところもある。宮城県名取市閖上地区には3カ寺あった。写真の伽藍は東禅寺(曹洞宗)である。屋根は本堂の面影があるものの、内部は他の流失家屋からがれきなどでいっぱいだ。

隣の観音寺は影も形も見えない。墓石も散乱したままだ。

2011/03/24 真宗大谷派 被災者支援のつどい 救援に全力と表明

14d8c5d857aeb8_L1.jpg親鸞聖人750回遠忌正当を迎えた真宗大谷派(安原晃宗務総長)は甚大な被害をもたらした東日本大震災を受け遠忌法要の第1期法要を取り止め19日午後、「被災者支援のつどい」を開いた。京都市下京区の真宗本廟御影堂での「つどい」には4千人以上が参拝、大谷暢顕門首が被災者と悲しみを共にするとのメッセージを発信し、安原総長が被災者救援に宗門挙げて取り組む方針を表明した。

2011/04/07 立正佼成会 被災者施設の提供 東京都に申し入れ

立正佼成会では1日、渡邊恭位理事長と沼田雄司教務局長が都庁を訪れ、佐藤広副知事に東日本大震災の避難者を受け入れる宿泊施設と仮設住宅建設用地の提供を申し入れた。

提供を申し入れた施設は、青梅市の青梅練成道場と杉並区の第二団参会館。青梅練成道場(小曽木2―450)は2棟の居住空間(一度に計220人まで)で避難者を受け入れる施設として使用。

第二団参会館(方南2―29―25)は長期の避難所生活が続く被災者のリフレッシュのための施設(1~3泊程度)として提供される。宿泊室は116部屋(1部屋8名程度)。それぞれ会員非会員を問わず提供し、食事3食と寝具の提供のほか、入浴も可能。宿泊費、食費等は無料。受け入れ期間は平成23年9月30日までとしている。

また、青梅練成道場の敷地の一部(1万坪)を、仮説住宅建設用地として提供する準備が整っていることも伝えた。提供期間は平成26年3月31日までを予定している。

会談の冒頭、渡邊理事長が東京都の迅速な救援活動に敬意を表し、被災者支援活動の一環として今回の申し入れを行う意向を伝えた。佐藤副知事は、申し入れに謝意を表するとともに、施設の利用を前向きに検討する考えを示した。

2011/04/07 大谷派遠忌記念 人気漫画家井上雄彦さんが描く 屏風絵「親鸞」

14d9d8135f04f1_L1.jpg親鸞聖人750回遠忌記念制作として真宗大谷派(安原晃宗務総長)が依頼し、人気漫画家・井上雄彦さんが描いた屏風絵「親鸞」が3月26日、京都市下京区の真宗本廟白書院で報道陣に公開された。

漫画「スラムダンク」や「バガボンド」などで若者に人気の井上さんと同派はこれまで特に縁があったわけではないが、遠忌記念事業の一環として若手職員が企画。昨年5月、井上さんに体当たりして承諾を得た。

絵は高さ212㌢×横582㌢の屏風2枚(六曲一双)に墨で描かれている。左の屏風に衣に袈裟を付けて座り一点に視線を向ける親鸞の姿、右の屏風には苦しむ民衆と共に泥の河を渡る凛とした姿を描いている。

制作にあたっては親鸞ゆかりの地の比叡山、新潟、関東にも足を延ばし、昨年11月の本山報恩講にも参拝してイメージを形作っていった。

親鸞が民衆と共に生きた点に共感したという井上さんは「かつて生活した場に行ったことが書く上ですごい助けになりました」と話すと共に、報恩講のお斎の席で「母娘の佇まいに感動しまして、すごくいい顔をしていて、こういう方たちに親鸞が生きている、こういう方たちを描ければ半分できたようなものとその時思いました」と完成までの経過を話した。絵自体は3月に入って10日間で描き上げたという。

屏風絵は4月4日から17日まで本山大寝殿で一般公開する。宗派ではこの絵のポスター、ポストカード、ミニチュア屏風を作成して販売し、収益金全額を東日本大震災被災者支援に充てることにもしている。

(写真=大谷派が制作した屏風「親鸞」(右隻)と作者の井上さん)

2011/04/07 都の葬儀所で犠牲者を火葬 諸宗教が冥福祈る

14d9d852677aef_L1.jpg東京都瑞江葬儀所(江戸川区春江町)で1日、被災地域の自治体の要請を受けた東京都による東日本大震災犠牲者の火葬が行われ、葬儀所には江戸川区仏教会や東京都仏教連合会の僧侶をはじめ、立正佼成会やキリスト教から宗教者が集い、読経・焼香して犠牲者の冥福を祈った。

火葬協力に際しては、東京都仏教連合会などが、東京都に対し読経供養を申し入れていた。1日は、宮城県名取市から39体の遺体が搬送されたが、多くは身元が判明していない。正門を入って左手の芝生に祭壇が設けられ、宗教者のみ入場が許可された。江戸川区仏教会の真言宗僧侶35人が、1時間おきにお経をあげ供養した。

江戸川区仏教会の関康道会長(新義真言宗燈明寺住職)は「本来ならば一人ひとりの方を炉前でご回向をしたいところであるが、今はでき得る限りのことをさせていただきたい」と話した。

このほか、浄土宗大本山増上寺をはじめとする浄土宗僧侶、立正佼成会の江戸川教会・墨田教会、日本バプテスト連盟の中田義直牧師やキリスト者、日蓮宗僧侶ら、有志が集い祈りをささげた。正門前には献花台が設けられ、連日たくさんの花が手向けられた。この日参列した増上寺の田中勝道教務部長は「何ともいたわしいことで、言葉が出ない。浄土にわたられた方々に我々を見守ってほしい」と静かに語った。

瑞江葬儀所での火葬は4日まで行われ、2日には江戸川区仏教会の浄土宗僧侶、3日は各宗、4日は日蓮宗が輪番で読経供養したほか、立正佼成会やキリスト者ら諸宗教が集った。

東京都では、東北各県の自治体から要請を受けており、調整がつき次第、火葬にあたっている。遺骨は4日まで東京都で保管し、その後地元自治体に送られる。

2011/04/14 四十九日に追悼の鐘を 全日仏が呼びかけ

震災から四十九日に、追悼の鐘で追悼を――。(財)全日本仏教会(全日仏、有田恵宗理事長)は7日、東京・芝公園の明照会館で緊急理事会を開き、東日本大震災に対する今後の対応を協議した。四十九日にあたる4月28日に追悼法要執行を提案した。河野太通会長の宗派である臨済宗妙心寺派の追悼法要を、ネット上で配信することにもなった。そして各地の全国寺院には、地震発生時刻の午後2時46分に、追悼と復興の願いを込めて鐘を撞くことを呼びかけた。

2011/04/14 東京鳩居堂 銀座に息づく花御堂

14da6a9689b8f5_L1.jpgお香、書画用品の老舗、東京鳩居堂銀座本店(東京・中央区)では、例年1日から8日まで店舗の入り口に花御堂を設置。「日本の伝統文化を守り育てる」という社是の下、「流行の発信地」である銀座の地で、毎年灌仏を行っている。

日本で最も地価が高い場所として路線価調査でもお馴染みの好立地。総務部副長の高橋雄貴さんによると、例年100人ほどが誕生仏に甘茶をかけてくれるという。

東京鳩居堂では、一昨年から灌仏会を知らない人にも花御堂に説明書きを添えてアピール中だ。

「お花が華やかで灌仏会の時はお客様以外にも足を止める方が多いようです。説明を読んで、徐々に灌仏をする人が増えてきました。日本文化を伝える一助になれば、嬉しいですね」(高橋副長)

灌仏をした女性に話を聞くと「普段、薬師寺の東京別院で写経をしているので、花まつりは気になっていました。偶然、通りがかり灌仏ができて良かった。辛いニュースで少し落ち込んでいたのですが、被災した方のことを思いながら灌仏しました。なんだか穏やかに気持ちになりますね」。

別の女性は「幼稚園の時にやったことがあります。今日が花まつりなのを忘れていたけど、記憶が甦りました。懐かしい」と笑顔で思い出を語った。

灌仏した人たちは皆少し笑顔になって銀座の街を歩き始めた。

2011/04/14 全青協 第35回正力賞決まる

14da6ad50de8a7_L1.jpg本賞 禿川瑛子氏(前坊守)
本賞 鎌倉てらこや(NPO)
青年奨励賞 根本紹徹氏


仏教精神に基づく青少幼年の教化活動や文化・社会活動を通じて社会教化に長年尽力してきた個人・団体に贈られる「第35回正力松太郎賞」(全国青少年教化協議会主催)がこのほど決まった。本賞に禿川瑛子氏(浄土真宗本願寺派真行寺前坊守/福岡県香春町)とNPO法人鎌倉てらこや(池田雅之代表=早稲田大学教授/神奈川県鎌倉市)が選ばれた。今後の更なる活躍が期待される青年奨励賞には根本紹徹氏(臨済宗妙心寺派大禅寺住職/岐阜県関市)が選出された。

禿川氏は入寺以来約50年にわたり真行寺日曜学校を開催し、浄土真宗の教えに基づく青少幼年の教化活動に尽力。週一日のつどいを中心に、仏教行事やお寺での合宿を通じて子どもたちの学び場、遊び場、居場所を提供している。開設当初の児童から子、孫と三世代が学び、現在も異年齢の子どもたちが助け合い、互いに成長しあえる場として機能している。

鎌倉てらこやは、不登校・いじめなどの子どもたちを取り巻く状況を改善するため、寺社と大学、市民ボランティアの三者協働による新しい組織として03年に始動。鎌倉地域の寺社を拠点に、お寺合宿や稲作体験、陶芸体験、朗読教室、子どもの居場所「てらハウス」などを展開。子どもたちの生きる力や宗教的情操を養う場となっている。寺社・大学・地域、子ども・若者・大人を結ぶ活動は、多方面へ波及する可能性の高い活動と評価された。

青年奨励賞の根本紹徹氏はインターネットを通じて、自死念慮者の救済活動を行うほか、電話や手紙、面談など年間3千件以上の相談を受けている。自死対策のため、寺院、警察、学校、地域等との包括的なネットワークづくりと緊急時の救出保護方法を模索し、日々奔走する活動が評価された。

奨励賞2氏・3団体

また5年に一度選出となる奨励賞も発表された。受賞者は、今里晃玄氏(浄土真宗本願寺派教専寺住職/香川県坂出市)、中西玄禮氏(浄土宗西山禅林寺派管長/兵庫県姫路市)、杉の子こども会(角出好隆代表=浄土宗長泉寺住職/三重県伊賀市)、仙法志明照園日曜学校(工藤浄真代表=浄土宗専称寺住職/北海道利尻町)、アジア仏教徒教会ASIAFUND「ABAミャンマー子ども基金」(茨木兆輝代表=曹洞宗西蓮寺東堂/長崎県佐世保市)。表彰式は5月31日に港区の東京グランドホテルで行われる。

写真=建長寺で行われた鎌倉てらこやの合宿

2011/04/14 本願寺派 親鸞聖人750回大遠忌法要開幕

14da6aebaf22f0_L1.jpg浄土真宗本願寺派(橘正信総長)の親鸞聖人750回大遠忌法要が9日、京都市下京区の本山御影堂で幕を開けた。初回法要となるこの日午前は甚大な被害を出した東日本大震災を受けて「被災者の悲しみに寄り添い、思いを分かち合って」と銘打って行い、法要も華美にならないよう一部予定を変更して厳修。大谷光真門主、光淳新門は哀悼と見舞いの言葉を述べて被災者へ思いを寄せた。

写真=大谷門主が導師を務め、光淳新門が出座して厳修された大遠忌法要(9日午前、御影堂)

2011/04/21 同宗連 新議長教団に豊山派

『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議(同宗連)は14日、京都市東山区の真言宗智山派宗務庁で第31回総会を開き、2010年度の事業・決算報告、11年度事業計画・予算案を承認した他、任期満了に伴い役員を改選、第16期議長教団に真言宗豊山派、議長に小倉秀清同派教化部長を選出した。

新議長に就任した豊山派の小倉教化部長は「2年間、人権擁護のために議長としての職責を全うします。続くわれわれも皆さまと一緒に宗教者としての自覚を持ち、宗教者としての軸足を常に置きながら、皆様方加盟教団、関係団体の皆様と一緒にこの活動を進めたい」と抱負を話した。

議長教団が事務局を引き受けることで、事務局長には豊山派の内山隆康同派社会第2課長が就任した。

この他、役員教団には副議長教団(副議長)に立正佼成会、天台宗、日本基督教団の3教団、企画委員長教団に真言宗智山派、広報委員長教団に真言宗御室派、監事教団に臨済宗建長寺派と新義真言宗の2教団が就任した。

2011/04/21 大正大学 南三陸町にボランティア派遣

大正大学(東京・西巣鴨、多田孝文学長)は東日本大震災に対し、4月から被災地での支援や都内での募金といった活動を始めた。大学が掲げるTSR(大正大学の社会的責任)の具体化で、「TSRシップ 鴨台プロジェクト」と位置づけ。学生・教員・職員が一丸となって取り組んでいる。

震災の影響で入学式を4月25日に延期し、授業は5月から本格化する。大学としてこの間、学科あるいは全学共同の課題を考えていた。被災地支援を思案していたところ、大学職員の知人が宮城県南三陸町出身で復興活動に中心的な働きをしていることが判った。その縁を得て着手することになった。

4月5日、学生ボランティアを募ったところ、即座に133人が応募。これを60人に絞りこんだ(当初は50人までとしていた)。参加者は8日に事前研修会を受講。NPOによる「ボランティア活動への関わり方」心理学科教員による「被災者と接するときの注意点」、そして先遣隊の職員から現地の状況を聞いた。この日から街頭募金も始まった。

60人の学生ボランティアを4期に編制。①4月10~14日②13~17日③16~20日④19~23日。いずれも4泊5日。学生15人に教職員が加わり30人強の体制となった。

第1期は10日午前、大学を出発し、バスで南三陸町に向かった。受け入れの阿部忠義氏(入谷公民館館長)が迎えいれた。阿部氏は「まさにここで起こったこと」を認識したうえで「歴史が物語る真実」「現代、さらに今起こっていること」「これからの未来について」ともに考えて欲しい旨を述べた。

すなわち一過性の出来事としてではなく、未来を見据えた上で認識してもらいたいというわけだ。その言葉に従って一行は爪痕が残る津波現場を視察してから活動についた。南三陸町では400人以上が犠牲となり、7千人近くが避難所生活を送っている。

学生たちは、支援物資の仕分けや配布、避難者のための炊事作業、仮設トイレの清掃、ボランティアセンター登録といった作業に従事。また持参した綿菓子機での綿菓子作り、映画上映会、青空教室、サッカーなど子どもむけの活動も。綿菓子は幼児を抱える親たちにも人気だった。「子どもの明るい笑顔は被災者にとっても気持ちがいいもの」とスタッフの一人は語った。震災から1カ月を経た11日の発生時刻には、各自の持ち場で町民と共に黙祷した。

ボランティアを終えて戻った学生からは、心地良い(?)筋肉痛や再び行きたいという声があがっている。ボランティア学生はレポートを提出することになっている。

2011/04/21 曹洞宗大本山總持寺 江川貫首が晋山

14dafdb4941a2c_L1.jpg曹洞宗大本山總持寺(横浜市鶴見区)の本山独住第25世に就任した江川辰三貫首の晋山式が17日、同寺で営まれた。東日本大震災の甚大な被害を考慮して、儀礼を縮小して挙行。佐々木孝一宗務総長をはじめ、宗会議員、関係学校代表など約300人が参集。大本山永平寺の福山諦法貫首は新貫首に祝福の言葉をおくった。

晋山式は、諸疏宣読の後、江川貫首が上堂し、修行僧との問答を繰り広げた。間髪入れぬ応答に修行僧から「吉祥、吉祥、大吉祥」の大音声が響き渡った。

福山貫首は祝偈を進呈するとともに「ご活躍をご祈念致します」と期待を込めつつ、「宗門のため、永平寺にとっても願ってもやまない慶事」と祝福した。佐々木総長は「猊下のお示しされた言葉の一つに〝我逢人〟があります。分け隔てなく一つの出会いを大切になされているお姿を拝見致しております」と、出会いから生まれる縁を重んじる江川貫首の人柄を称賛した。

江川新貫首は「感謝を述べるに余りあり」と謝辞。道元禅師が念願の師に出会ったことを表した禅語〝我逢人〟の由来に触れ、釈尊の説く「一切衆生悉有仏性」の教えとともに、出会いや縁の大切さを説いた。

最後に東日本大震災の被災物故者を追悼する法要が新貫首を導師に執り行われ、甚大な被害をもたらした震災犠牲者の冥福を祈った。

【江川辰三新貫首略歴】
昭和3年3月生まれ。83歳。昭和28年に山梨県清光寺住職、同46年に愛知県宝泉寺住職に就任。同56年に曹洞宗審議院副院長を務める。平成8年に大本山總持寺監院に就任し、以後、總持寺祖院専門僧堂堂長、同寺常任顧問などを歴任。平成20年に愛知県小牧市の正眼寺住職へ。平成22年3月に大本山總持寺の副貫首に当選。大道晃仙前貫首の退董を受け、同日から貫首に就任した。


管長に就任

江川辰三貫首が17日、大本山總持寺に晋山したことにより、同日、曹洞宗管長に就任した。前管長の大道晃仙前貫首の残任期間で、明平成24年1月21日までとなる。管長就任式は通常宗議会が招集される6月20日の予定。

なお曹洞宗管長は、永平寺と總持寺両大本山貫首が2年交替で就任する。

2011/04/28 曹洞宗 津波消失37カ寺 死者・不明13人

東日本大震災による津波で消失した宗門寺院が37カ寺に上ったことが現地調査などで明らかになった。4月26日現在、宮城県で31カ寺、岩手県で6カ寺。一方、震災による犠牲者は10人、行方不明者は3人。

宗務庁に設置されている災害対策本部のスタッフが被災地をまわって調査し、集計したもの。純粋に津波で消失したのが37カ寺であり、浸水した寺院や地震による倒壊・半壊などの寺院は含まれていない。そのため大小の被害を含めると被災寺院はかなりの数にのぼる模様だ。

犠牲者は宮城県で住職5人、前住職1人、寺族4人、行方不明1人(住職)。岩手県は住職と徒弟が各1人で、ともに行方不明となっている。

2011/04/28 WCRP日本委 「会長」を新設

(財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(庭野日鑛理事長)は18日、東京・杉並の立正佼成会施設で理事会・評議員会を開き、公益財団法人移行に必要な事項を審議し、最初の評議員を選定する委員会の詳細と委員5人を選任した。新制度では評議員会が意思決定機関となり、評議員会議長が「日本委員会会長」となる。執行機関である理事会には「代表理事」が置かれ、「理事長」の呼称はなくなる。

2011/04/28 被災者ささえる住職、寺族

14db8c3381d816_L1.jpg東日本各地の沿岸地域を破壊した巨大地震と大津波。日本有数の漁業の街として栄えていた宮城県気仙沼市も壊滅的な打撃を受け、約2千人が死亡・行方不明となっている。気仙沼湾の最奥部に面する鹿折(ししおり)地区では、貯蔵タンクから漏れた重油に引火。津波に乗った炎が街を焼き尽くした。22日現在、同地区だけで10の避難所があり約500人が生活。その中に寺院も2カ寺あり、約130人が助け合いながら暮らしている。

避難所になっているのは、曹洞宗興福寺(須田玄峰住職)と浄土宗浄念寺(髙橋清海住職)。だが両寺とも、当初から緊急避難所に指定されていたわけではない。

3月11日の地震発生当日。津波で浸水した鹿折小学校では、校長はじめ教職員が児童約80人を連れて脱出。より安全な場所を目指し、近くの興福寺に逃れてきた。同寺では、そのまま自宅を失うなどした児童とその家族を受け入れた。現在9世帯50人が共同生活をおくっている。

浄念寺も同様で、次々と駆け込んできた住民百数十人に本堂を開放。今も高齢者から若者、乳幼児も含む80人が身を寄せている。

しかし避難生活は、緊急避難で想定される日数を超え長期化。その分、心身のケアの必要性も増しているが、両寺とも寺院ならではの工夫を日々凝らしており、体育館など通常の避難所にはない独特の雰囲気作りに成功している。それを可能にしているのは、住職と寺族の熱意とアイデアである。

興福寺では子どもたちの入学式や卒業式、誕生祝いなどを夕飯時に開催。母親の一人は「この前は私の誕生会をしてもらった」と話し、「(知り合ったばかりなのに)皆、大家族のようです」と笑顔を見せる。

浄念寺では避難者の心身のケアに細心の注意を払い、ボランティアの働きを最大限に活用。ある避難者は「ここでの生活に不安はありません。なかなかこういう所はないですよね」としみじみ語った。

2011/05/12 全青協 トラウマ対応講座 被災者ケア学ぶ

14dcb6e0c0d910_L1.jpg全国青少年教化協議会(全青協)は4月25日、東京・中央区の築地本願寺で災害傾聴ボランティアを養成する「被災者支援のためのトラウマ対応緊急講座」を開催。対人関係療法専門家の水島広子氏(精神科医)を講師にトラウマのケアの前提となる講義とアティテューディナル・ヒーリング(AH)を実践するワークショップを行った。

当初、定員50人を予定していた同講座は、応募が殺到。約70人が参加し、被災地でのボランティア活動に対する意識の高さを窺わせた。

講義では、トラウマ(心的外傷)を「対処できないほど大きな衝撃を受けた心の傷」と定義。特徴として①予測不能な出来事②命に関わる③自分がコントロールできない無力感等の要素があるとし、「自分だけでなく、身近な人に起こった場合(目撃や伝聞)でも、トラウマにつながることがある」と説明した。

トラウマのケアのポイントとしては、自己への信頼の回復を挙げ、①ありのままの自分を受け入れてもらえる②自分でコントロールできることを見つける③自分が「出来ている」という感覚を増すことが必要だと語った。

被災者に接する場合の注意点としては、「同じ震災でも同じトラウマとは限らない。回復にはプロセス(過程)があり、人それぞれ。本人の回復プロセスを阻害しないことが重要」と指摘した。

ワークショップでは、被災地での傾聴ボランティアを想定した実習を実施。AHの手法を使った「傾聴」の仕方を学んだ。AHとは、心の姿勢を自ら選択することで心の平和を得て癒しとする手法。「相手や自分への評価を手放す」ことで心の平和を取り戻すことができ、攻撃的な相手にも対応できるという。

例えば、話を聞いている時に人は多くの考えを思い浮かべるが、その際、過去の経験から意図せず相手や自分に評価を下していることが多い。これが傾聴や日常生活において、不安や怒り、自責の念等の否定的な感情につながってしまうことがある。

AHでは、話を聴きながら、自分の心の状態にも着目。「相手の話や自分に対して評価を下していること」に気付き、なるべく「相手の〝今〟に集中する」ことで「相手のありのままに寄り添う」ことができるようになる。

全青協の神仁主幹は「45歳を過ぎて人の話を聞くのが少し辛くなってきた。AHのやり方だと楽に聞ける」と紹介。ワークショップを終えた参加者は「これまでの聴き方だと〝相手の悩みを解決しなくては〟と頭の中が忙しく、いつのまにか相手を批判したくなっていた。AHだと話をずっと聞いていたいと思えた」と感想を述べた。

講座終了後は、神主幹を講師にボランティアを行う上でのガイドラインを講習。全青協が支援する避難所寺院でのボランティアも併せて募集され、被災者支援への協力が呼びかけられた。

2011/05/12 本生誕祭 出口教主就任10周年 信徒ら2500人が祝福

14dcb72b7f36e8_L1.jpg大本(田賀紀之本部長)は4日、京都府亀岡市の本部で平成13年4月29日に就任してから10周年を迎えた出口紅教主の生誕祭を執行。2500人の信徒らが参拝して10周年を祝い、また東日本大震災で信徒救援のため迅速な対応をしたことにも感謝した。

生誕祭の祭典は万祥殿で執り行われ、斎主の出口京太郎本部相談役が生誕祭祝詞を奏上。教主、斎主はじめ出口家、宣伝使、来賓、総代会、参拝者の各代表が玉串を捧奠し、参拝者一同で神言を読誦した。

祭典後は加部祥児・総代会議長が信徒を代表してお祝いの言葉を述べ、教主が就任時に〝型〟が出せるよう精進を求めた言葉を挙げ、「教主様のお心が少しでも和らぎますよう私どもは大和合の姿を表すべく信仰の初心に立ち返り精一杯の努力をさせていただく所存です」と決意を表明。東日本大震災での支援に対しても「教主様の真心こもるお言葉や救援物資に私どもはどれだけ勇気づけられ、心を救われたことでしょう」と感謝した。

続いて田賀本部長は教主就任後、モンゴルとブラジルに人類愛善会の拠点が発足し、また新東京本部、亀岡本部のみろく会館・大本会館の完成を経て、秋に大道場講堂が完成して世界へ教えを発信する宣教センターが整うことを述べ、神業の進展を報告した。

この後、全国愛善歌奉納大会がみろく会館で開かれ、各地の本苑・分苑・主会等の信徒ら45団体が教主の前で奉納曲を歌って10周年を祝った。

出口紅教主は昭和31年12月生まれ。出口聖子四代教主の逝去を受けて五代教主に就任した。


教主揮毫の看板を除幕

この日は開教120年記念事業のみろく・大本両会館の完成に伴い看板の除幕式も行われ、出口教主揮毫の看板が参拝者に披露された。

みろく会館の看板は1階正面入り口、大本会館の方はみろく会館へ通じる2階廊下壁面に設置された。「みろく会館」「大本会館」と記した桧の看板の除幕はそれぞれ教主が行った。

両館の完成奉告祭は生誕祭と併せて執行され、建設マネジメントを担ったNTTファシリティーズと設計施工の清水建設へ感謝状が贈られた。

2011/05/12 浅草寺 大震災四十九日法要

14dcb7dd5757c0_L1.jpg東京・台東区の聖観音宗総本山浅草寺(清水谷孝尚貫首)は午後2時から本堂で四十九日法要を厳修。清水谷貫首を導師、山内僧侶が出仕し、犠牲者の冥福を祈った。

法要後には、本堂東南の鐘楼のある弁天堂に移動。地震発生時刻の午後2時46分から7度にわたり祈りと希望の鐘が鳴り響いた。多くの参拝者で賑わっていた参道も、鐘の音を合図に静まり返り、参拝者の多くも足を止めて合掌。最後に、清水谷貫首はじめ一山僧侶が被災地の方向を向き、読経と被災者平安の祈りを捧げた。

この日は、都内在住で岩手県・大槌町出身の母娘3人も参列。家族や友人、知人の多くが被災し、行方不明の状態が続く人もいるという。その苦境に涙をたたえ、「岩手に帰りたくても叶わず、今日浅草寺で法要があると聞いて参加しました。私たちだけでは弔うことができない。今日ここに来ることができて良かったです」と話した

2011/05/12 各地で東日本大震災四十九日法要 犠牲者悼み復興祈る

14dcb78222c96f_L1.jpg3月11日に発生した東日本大震災から49日にあたる4月28日、全国各地の寺院などで祈りと希望を込めた四十九日法要が執り行われた。鐘を撞いての犠牲者追悼も。翌29日には東京・護国寺でダライ・ラマ法王を迎えての追悼法要も営まれた。全国の寺院に法要を呼びかけた全日本仏教会(全日仏)の河野太通会長(臨済宗妙心寺派管長)は、京都・妙心寺での法要に臨んだ。

チベット仏教の最高指導者・ダライ・ラマ14世法王による「東日本大震災犠牲者四十九日特別慰霊法要」(主催=ダライ・ラマ法王日本代表部事務所)が4月29日午後、東京・文京区の真言宗豊山派大本山護国寺で厳修された。法王は震災の大きさに心を痛めながら、「日本には戦後立ち上がった実績がある。皆様方は計り知れない心の力を持っている」と激励のメッセージをおくった。

護国寺の岡本永司貫首と小林大康執事長、曹洞宗大本山總持寺の江川辰三貫首(同宗管長)をはじめ、チベットの高僧10人と日本の超宗派僧侶70人が職衆を務めた。本堂と境内は、設置された2千席を遥かに上回る4千人の参列者であふれた。横綱白鵬ら各界著名人や韓国仏教・曹渓宗の参拝団など、外国からも多数参列した。

前半はチベット語、後半は日本語で般若心経などを読経。被災者の心に寄り添いながら、追悼の祈りと復興への願いを一つにした。

亡命先のインド・ダラムサラで日本の震災を知った法王は、「深い悲しみがわいた」と振り返った。すぐに現地で犠牲者追悼と被災地復興の法要を厳修し、般若心経10万遍読誦などを行ったことを明かした。

その上で「落胆し勇気を失くすのではなく、再建復興のために努力をしていただきたい。私たちもチベットという自分の国を失って以来、困難な状況に陥ったが、自分たちの精神を高めることができた。皆様方も悲劇に打ち負かされることなく、自分の内なる力を高めてほしい」と語りかけた。

岡本貫首は挨拶で、「(復興の)願いが全ての方々に届きますように」と祈念。江川貫首は、大勢が心を合わせて祈ったことを感慨深く語った。

法要を共催した「宗派を超えてチベットの平和を祈念し行動する僧侶・在家の会」の林秀穎代表(世田谷学園校長)は、「祈りは人間の熱く真摯な営みです。全ての言葉と行動を生み出す源泉です」と話し、大勢の参列に謝辞を述べた。

職衆の一人、柳下純悠氏(智山派観音寺住職)は「ダライ・ラマ法王から仏教に基づく楽観論と勇気を教わった」として、被災地支援への思いを新たにしていた。


原発20㌔圏避難者が法王に心情訴え

法要前日の4月28日、瞑想と祈りを行うために護国寺を訪れたダライ・ラマ法王に、原発半径20㌔圏内から都内に避難している佐久間拓城さん(58・福島県楢葉町)が「故郷があっても帰れません。チベットの方々と同じ心境です。被災者を救ってください!」と訴えた。

法王は「皆さんの思いを分かち合うために来ました。日本の皆さんはこの困難を乗り越える力を持っていると確信しています」と応じた。

2011/05/19 西本願寺 門前で福島県産品を販売 収益は被災地へ

14dd4e5b1d01a0_L1.jpg浄土真宗本願寺派が設立したNPO法人・JIPPO(理事長=橘正信同派総長)が東日本大震災被災地支援事業として福島県産品の販売を9日から京都市下京区の門前で始めた。

福島原発事故で風評被害を受けている福島県産品を消費してもらうことで被災地の経済復興を助けようと企画。

遠忌参拝客に京都の土産物を買ってもらおうと門前の元植柳小学校校庭に開設された「ご縁町マルシェ」の一角に揃えて開始した。

販売しているのは福島市産の柚子めん、いわき市のしそ巻き・根菜漬、喜多方市のラーメン・地鶏カレー、郡山市のあかべえサブレー、川俣町の飴など20品目。

初日は橘総長が開始式で協力を呼び掛け、また自らも売り子となって来場した参拝客に商品を勧めたりもした。

福島県産品は、ご縁町マルシェで遠忌法要期間中に販売する他、平日は本山境内のJIPPO事務所で販売。収益は義援金として被災地へ還元することにしている。

JIPPOは08年11月に設立。平和構築、貧困・環境問題と共に災害救援・復興を事業としている。

(写真/福島県産品を勧める橘総長㊧)

2011/05/19 増上寺 みうらじゅんさんが「自分なくし」を提唱

14dd4e7e0d22bf_L1.jpg浄土宗東京教区教化団は12日、東京・芝公園の大本山増上寺三縁ホールで「仏教イヴニングスクール一夜一会」を開校。イラストレーター等として活躍するみうらじゅんさんが「自分なくしの旅―本当の自分なんてない。」と題し、仏教の魅力を語った。定員を上回る321人が集まった。

幼少時代から仏像ファンだったというみうらさんは、自室を「イマジイン」と名付けて「仏像スクラップ」を制作した日々や浄土宗系の東山高校時代の寺院子弟との思い出を披歴。最近では「善導&法然を訪ねる旅」にも行き、「法然上人を真似る」ため二連数珠を購入するなど、「上人像」がブームになったと語った。

駐車場の看板「空有・空無」から、「空」の思想に目覚め、「アウトドア般若心経」を提唱。街中の看板の文字で「般若心経」を完成させる写経で、その完成版もスライド上映した。「たまたま集まって般若心経に見えるけど、ばらけると違うものになる。それが『空』なんだと思う。僕も、色々な要素が重なって僕になったが、もともと僕じゃない」。一文字を探し求める修行を回想し、空の思想と「自分なくし」を重ねた。

「この状態も少しずつ変わり最終的に死ぬらしい、と聞いている。いきなり死ぬって思うと怖いので、『死ぬらしい』くらいから始めてみる」と提案。「日々、自分を仕付け直す」ために「俺のマントラ」を唱えていることも明かし、「今日最悪だったな、と思った時に『そこがいいんじゃない!』とかぶせる。そうすると、それでいいんだという気持ちになる」と、マントラ効果を示した。

仏像を入り口に、仏教の魅力を知ったみうらさんは、「生きているって暇つぶしみたいなもの。だから楽しくつぶさないと。そのための方法が仏教。今は葬式がメインだけど、気持ちが楽になることを教えている」と語った。

(写真=浄土宗の〝ゆるキャラ〟なむちゃんにエスコートされて登場したみうらさん)

2011/05/19 第8回国連ウェーサク式典 大震災の支援に感謝

14dd4eac6b06ba_L1.jpg第8回国連ウェーサク式典が5月12日から14日までタイの首都バンコク郊外のマハチュラロンコン仏教大学(MCU)アユタヤキャンパスとバンコク市内の国連会議センターを主会場に開かれた。海外84の国と地域からの2千人を含め、約5千人が参加。国連ウェーサクの日国際委員会議長でもあるプラ・ダマコサジャンMCU学長はオープニングセレモニーで、「日本は地震と津波で多大なダメージを受けた。それにもかかわらず、参加して頂いたことに感謝している」と歓迎した。

日本からは世界連邦仏教徒協議会(叡南覚範会長)、ITRI(インナートリップ霊友会インターナショナル)、タイとの交流のある仏教者らが参加。政治的混乱により開催が危ぶまれた昨年の式典に700人もの大型訪問団を送り出し、タイ側を安堵させたITRIは今回、震災の影響で減少したものの、約400人に上った。これには宮城県の津波被災者も含まれている。

プラ・ダマコサジャン学長は、釈尊の生誕・成道・涅槃を一度に祝するウェーサクの意義や、1999年国連総会でウェーサクの日が決議された経緯、さらに式典がプミポン国王の84歳の祝福を兼ねていることを報告した。

初日はこの後、米国カリフォルニア大学バークレー校のルイス・ランカスター教授による基調講演のほか、各国の仏教徒リーダーのスピーチが行われた。その中で則竹秀南氏(臨済宗妙心寺派霊雲院住職)は、東日本大震災により死者行方不明者約2万5千人、避難者10万人以上という現況を報告しながら、「世界各地からの物質的、精神的支援、そして各地で犠牲者の慰霊法要をしていただいていることに感謝申し上げます。皆さまの祈りにより、被災地は復興できると思う」と国境を越えた支援に感謝した。

2日目(13日)は同キャンパスで「社会経済発展と仏教徒のリーダーシップ」「調和社会の構築に向けて」「環境の保全と復興」「覚醒社会のための智慧」の4セミナーと、「共通仏教経典」に関するワークショップが開かれた。

最終日(14日)は国連会議センターで記念式典が挙行された。来賓として出席したスリランカのジャヤラトナ首相は祝辞を述べると共に、2年前に終結した内戦を念頭に、「スリランカはここ数年いろいろあったが、異なる宗教の人とも友好を築こうと努力している。信仰は人権の基本と認めている」と国民融和に努力している姿勢をアピールした。

各国代表のスピーチでは、日本から叡南覚範・世連仏会長と宮林昭彦・浄土宗大本山鎌倉光明寺法主が登壇し、大震災に対する支援やお見舞いに感謝の言葉を述べた。

(写真=オープニングセレモニーで合掌する日本からの出席者たち。前列左2人目から叡南覚範・世連仏会長、浅川重美ITRI日本センター会長、基調講演者のランカスター教授 12日)

2011/05/26 本堂下に潜って- 片付けは肉体労働

14dde0157a2983_L1.jpg東日本大震災で最も甚大な被害が報告されている宮城県石巻市。死者・行方不明者は5千人を超える。大津波は人々のいのちと生活を奪い、美しかった海辺の街の景観を瓦礫と汚泥の荒野へと一変させた。

復興に向けての活動も始まっている。同市吉野町にある曹洞宗多福院(三輪宗一住職)では、瓦礫・汚泥の除去がボランティアらによって進められている。片付け作業では重機が使えず、全てが手作業。過酷な肉体労働だが、もう一度、寺院をよみがえらせたいという熱意が勝っていた。

写真=本堂の床下に潜って瓦礫を除去する僧侶ボランティア。肉体的にもハードだ。(石巻市多福院)

2011/05/26 身延山大学 学長筆頭に教職員が慰霊法要と炊き出し

14dde039692d1b_L1.jpg身延山大学(浜島典彦学長)の吉田永正客員教授(山梨県甲府市永照寺)主宰の永照寺ボランティアグループ「マイトレーヤ」が東日本を襲った大震災後のボランティア活動(総勢54名)を行っている。浜島学長を筆頭に教職員学生合わせて10名が6日から7日にかけて参加した。

初めに、宮城県仙台市若林区荒浜で、浜島学長を導師に「東日本大震災慰霊法要」を厳修。同地到着後、地震と津波で残がいが未だに多く残されている状況を見て、参加者全員が言葉を失ったが、法要では、亡くなられた方々へ回向と、復興への祈願が執り行われ、参加者全員の祈りが一つになった。

法要後、約200人が避難している若林区の六郷中学体育館と、約300人が避難している同地区のウェルサンピア仙台の2カ所に分かれて移動。炊き出しボランティアを行い被災者の心と体を温めた。

ウェルサンピア仙台では、「サンピアフェスティバル」と銘打って、近隣住民も合わせ400人以上の被災者が参加。学長自ら、ほうとう、焼きそば、たこ焼き、稲荷寿司などを配布。参加者は舌鼓を打った。

さらに子どもの遊びコーナーを設けて、絵本の読み聞かせやくじ引き、シャボン玉、レーシングカーなど様々な遊具を用意。窮屈な避難所生活を強いられている子どもたちは、久々の遊具に喜々として興じていた。

今回の活動を通して浜島学長は、「机上の学問としてではなく、仏教と福祉の実践、行動の身延山大学として、教員と学生が一体となり、東日本大震災復興支援活動を長期的に行いたい」と話している。

2011/05/26 浄土宗宗議会 被災地復興「支援惜しまない」

浄土宗宗議会(中村康雅議長)は東日本大震災を受け16・17日に開催した臨宗で被災寺院復興支援のため補正予算案などを可決・承認したのは前号で報じた通りだが、議案採決後、「被災地の復興に最大限の支援を惜しまない」とする宗議会声明を決議した。

同声明は山本正廣議員(和歌山教区)はじめ各ブロックの議員10人が発議者となり17日提出。

「浄土宗教師は被災者の方々のことを、また被災された本宗寺院のことを決して忘れてはならないし、忘れてはいないというメッセージを届け続けなければならない」との山本議員の提案理由の説明の後、全会一致で決議された。

【東日本大震災における浄土宗宗議会声明】

浄土宗宗議会は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、なくなられた多数の人々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々にお見舞い申し上げます。

東日本大震災は、自然の猛威を見せつけられた大震災でした。地震による家屋の倒壊、大津波、また、福島第一原子力発電所事故は、周辺地に甚大なる被害を呼び起こし、さらにさまざまな風評被害や人権侵害ととらえられる事態も発生しました。被害にあわれた方々の心痛は察するにあまりあります。

天災と人災が重なった、歴史に特筆されるべきこのたびの惨状は、私どもの心に大きな傷跡を残しました。

被災地や避難地での人々の悲しみと苦しみを思うにつけ、宗教者として心が痛みます。

法然上人を宗祖と仰ぐ浄土宗では、21世紀を迎えた年に『浄土宗21世紀劈頭宣言』を社会に宣言し、

「愚者の自覚を 家庭にみ仏の光を 社会に慈しみを 世界に共生を」

と具体的指針を提示しました。

すなわち「すべてのいのちはひとつに結ばれ、ともに生かし、生かされることである」として「共生」の教えを21世紀の指針と位置付けたものであります。

私たちは今回の様々な出来事を、自然界との共生・生物との共生・人々との共生など実に多岐にわたる課題について、改めて問われていることに気付かされました。

浄土宗宗議会は、すべての人々が幸福になれる世の中を建設する知恵を発信するべきであると考え、東日本大震災の被災者の皆様に、また被災地の復興に最大限の支援を惜しまないことを決議し、表明いたします。

2011/05/26 日韓で震災犠牲者を慰霊 日本側に1千万円寄託

14dde08521d25c_L1.jpg日韓仏教交流協議会と韓日仏教文化交流協議会による東日本大震災犠牲者慰霊祭が23日、日本側会長の自坊である鎌倉市の浄土宗大本山光明寺(宮林昭彦法主)で営まれた。韓国側の慈乗会長は追悼の辞で、大災害にもかかわらず毅然とした日本人の姿に感嘆して「我らは日本国民のこのような底力が今度の震災克服に多大なる力が発揮されると信じて疑いません」と励ました。また韓国側から救護金として1千万円が寄託された。日韓で約100人が参列した。

最初に日本側の法要を宮林会長を導師に厳修。読経の中を日韓参列者全員が焼香して犠牲者を回向した。会長は垂示で「有史以来の国難を迎えた。このあと(韓国側の)温かい追悼の法要が営まれる。本当にありがたい」と感謝。また「いまだに多くの行方不明者がいらっしゃる。それを思うとどう申し上げて良よいものか…。しかしこうして皆さま方からご供養ご回向をいただいた」と犠牲者を偲んだ。

般若心経を読経と外陣を練り歩く追慕黙念が日韓共同で執行。続いて韓国側の法要が営まれた。追悼の辞で慈乗会長(大韓仏教曹溪宗總務院長)は「韓国に“白紙一枚も一緒に持ち上げるとよい”という諺があります。軽い一枚の紙でも二人で持ち上げると軽くなると言う意味です。このような心で我ら韓国の仏教徒は震災復旧のために尽くしている日本国民の皆さまに助力できる小さな手を差しのべようとしています」とも述べた。

韓国側の法要の中では、銅鑼や太鼓、笛を用いた僧侶による儀礼のほか、民族服をまとった鎮魂の踊りが奉納された。

最後に日本側の藤田隆乗副会長(川崎大師平間寺貫首)が「東アジア仏教圏の黄金の絆でつながる韓日仏教文化交流協議会の皆さまの大いなる慈悲の心は、日本国民にさらなる活力を与えるものであります」と謝辞。さらに「日本国内だけでなく、東アジアの国々をはじめとする世界各地から寄せられた温かい支援に支えられ、被災地の一日も早い復興を念ずる次第です」と日本側の意志を表明した。

なお日韓・韓日仏教交流大会(第32回)は例年、この時期に開催されるが、東日本大震災のため秋に延期された。

2011/06/02 映画『ブッダ』公開記念 仏教書フェア

14de73edb2926a_L1.jpg仏教書を発行する9社(春秋社、誠信書房、大蔵出版、大法輪閣、筑摩書房、東京大学出版会、中山書房仏書林、法藏館、吉川弘文館)で組織する仏教書総目録刊行会は、いよいよ封切りとなった映画「手塚治虫のブッダ―赤い砂漠よ!美しく」を記念し、全国の有力書店約170店舗で仏教書フェアを開催している。

「ブッダの世界と仏教」と銘打った今フェアでは、26社100点が勢揃い。監修・選書協力は、映画のアドバイザーもつとめるひろさちやさん。その内容は、仏教の教えを説く入門書から、ブッダその人に焦点を当てたもの、経典や仏像まで幅広く網羅し、生きる力を与えてくれる仏教の魅力が伝わる選書となっている。

東京・千代田区の三省堂書店神保町本店では5月16日からフェアを開始。担当の福澤いづみさんによれば、ひろさちやさんをはじめ、アルボムッレ・スマナサーラ長老や若手の小池龍之介さんの著作など、「仏教思想が読み易く、わかりやすく書かれたもの」が人気という。近年では仏像ブームも起こったが、「3、4年前から仏教書の人気はじわじわときています」と福澤さん。静かなブームの中で、多くの人が求める仏教書が、著者自身の言葉で仏教を解りやすく説いたもの、というのも興味深い。書籍の動向は、布教活動にも参考になりそうだ。

三省堂神保町本店ではブックフェアに関連して13日午後6時半からひろさちやさんの講演会「お釈迦さまの教え」を開催する。入場無料。申し込みは同店(☎03―3233―3312)へ。

2011/06/02 智青連全国会議 支援を一層強化

14de740972edd5_L1.jpg智山青年連合会(智青連、喜田隆秀会長)では震災直後から災害対策本部(近藤栄祐本部長)を東京・愛宕の別院真福寺に設置し、被災寺院の復興支援に取り組んでいる。5月25日には全国各地区の青年会長ら約60人が同寺に集まり、全国会長会議を開催。被災各県の会長らによる現状報告を受け、今後の活動を協議した。

岩手教区では、陸前高田市の金剛寺が津波で全壊。同寺の復旧作業が青年会の主要な活動となっている。5月2日と同31日には、智青連と協働で片づけ作業を行った。しかし、武田秀山会長(宮古市長根寺)は、「片づけてから先が見えない。同じ場所には再建できないだろう」と嘆息する。金剛寺以外にも5カ寺が甚大な被害を受け、檀家の半数以上が犠牲となった寺院もある。

武田会長の自坊は高台にありほぼ無事だったが、檀家が多く暮らす田老地区が壊滅。武田会長は震災直後から1カ月半ほどの間、曹洞宗の青年会と一緒に火葬場での読経ボランティアに従事。火葬場には、身元不明の遺骨が相当数保管されているという。避難所で体調を崩して亡くなった人も少なくない。武田会長は現在、檀家がいる避難所などを訪れ、物資の差し入れや傾聴を行っている。

宮城教区では2カ寺が全壊し、それに近い状態が2カ寺。早坂周英会長(栗原市福王寺)は、津波による本堂流失を免れた石巻市の普誓寺で、「本堂下の泥かきや、乾かした過去帳を(別紙に)写す作業をしている」と報告。また同教区では、各寺が教区に納める宗費を義援金として集約し、被災寺院に分配することになったと話した。

福島第一原発が教区内にある福島第一教区では、地震で1カ寺が全壊、津波で5カ寺が全半壊。20㌔圏内の6カ寺は、建物は無事だったが強制避難となった。青年会では十数人が連日、いわき市内の海沿いでがれき撤去やヘドロ掃除を行っている。全国の青年会から寄せられた支援金で、土嚢袋を購入したり、トラックや重機を借りたりしている。

原発40㌔圏に自坊がある松村孝弘・智青連理事(いわき市眞光院)は、事故の収束が見えない不安や風評被害のひどさに言及。「(被災当初は)全国の青年会などから届けられた支援物資を、避難所などに運んだ。今は湯本温泉と協力して避難所で足湯をしている」と心のケア活動についても話した。

災害対策本部ではネット上に、被災教区の支援ニーズを把握するため「災害救援連絡掲示板」を開設。その情報を基にボランティア希望の青年会を割り当てるなど、〝支援のマッチング〟をしている。

喜田会長(東京都大田区密厳院)ら本部も現地入りして活動。「復興するまで、地元に必要な支援を後押ししていく」と強調した。近藤本部長(長野県松本市法船寺)も、「被災寺院支援では仏具や過去帳の取り扱いなど、僧侶でなければできないことが多くある」と語っていた。

2011/06/02 本願寺派 宗法改正案等を可決

14de7515a5ca43_L1.jpg浄土真宗本願寺派(橘正信総長)の第298回臨時宗会(桑羽隆慈議長)が5月26日から30日まで京都市下京区の宗務所で開かれ、宗法をはじめとする基本法規変更案など6件が可決された。宗派に新たに少人数の議決機関「常務委員会」を導入して迅速な議決を図り、本山も内局を設置して独自に運営することにした他、築地別院を「直轄寺院」と位置付け首都圏開教を強力に推し進めるなど組織制度の抜本改正がなった。新基本法規は来年平成24年4月に施行。今後は下部法規の整備を進める方針だ。

懸案の基本法規改正が漸く決着した。浄土真宗本願寺派宗法(以下宗法)、宗教法人「同派」宗規、本山典令(以下典令)、宗教法人「本願寺」寺法の変更・制定案4件の他、下部法規の整備方針について同意を求める案2件を提出したのは昨年12月の臨宗。年が明けて1月中旬の継続審査、同月31日からの臨宗での議案撤回・総局総辞職を経て、この件では3度目となる臨宗を招集した。

提出議案は前回臨宗で撤回した条文を整備した他、一部を修正。宗法・典令の「本山」規定を、本山の独自性を強調しつつも宗派との協力体制を強く求める条文に改め、典令だけでなく宗法にも本山からの回付金を義務付ける条文を追加するなどした。同意案では直轄寺院・築地本願寺の「宗務長」選出について、宗派総長・本山執行長と同様に規定していた門主・住職の候補者指名の条項を削除するなどした。

が、これまで一体だった宗派と本山を切り離した上、宗派議決の迅速化、本山の独自運営を図り、築地別院を拠点に首都圏開教を強力に進めるという大枠に変更はない。

初日開会式で大谷光真門主は「かつて象牙の塔と呼ばれた大学も社会の移り変わりに対応するため懸命に努力しています。大遠忌法要を機縁として私たちの宗門が一層力強くその使命を果たせることを願い賢明なご判断をされることを期待いたします」と改めて基本法規改正を求めた。

審議は初日本会議での議案説明、質疑の後、法規特別委員会(鈴木恭之委員長、委員20人)へ付託。翌27日に同委員会で6議案とも賛成多数で可決され、週明け30日の本会議で採決が行われた。

当初基本法規案4件の採決は無記名投票で行うと運営委員会で決まっており、その通り動議が出されたが、「100年の大計です。記名投票にすべき」との声が挙がるなど多くの議員が反対。結局、記名か無記名かは無記名投票で決することになり、48票対26票で、投票は記名で行うことに決まった。

この後議員73人出席のもと投票を開始。無記名投票に賛成する票が26票出て議案可決が危ぶまれたが、結果は賛成63票、反対10票(僧侶・門徒議員各5人)となり、賛成が4分の3(55票)を超えて可決された。一方、同意案2件は起立採決で行われ、こちらも賛成多数で可決された。

可決を受けて橘総長は「日本仏教そのものに対する危機感が共有されていなかった。それが臨宗2回終えて共有された。そういう思いです」と話していた。

2011/06/09 浄土宗観智院 24時間不断念仏で全震災犠牲者名を奉読

東京・港区の浄土宗観智院(土屋正道住職)は5月21日午後1時から、大本山増上寺で第6回24時間不断念仏「東京の中心で、仏の名を呼ぶ」を開催した。増上寺会場には延べ約150人が訪れ、念仏三昧の時間を過ごした。

今年の念仏会では念仏の声と共に、東日本大震災の犠牲者約1万2千人の名前を全て奉読。約9時間かけ、震災犠牲者の冥福を祈った。

念仏会は増上寺だけでなく、ハワイ・ラハイナ浄土院、浄土宗別院、コロア浄土院、ハレイワ浄土院、カアパ浄土院、台湾の慕西念仏会、慈光仏教図書館、菩提学苑、ブラジルのクリチバ日伯寺、イビウーナ日伯寺、フランスのヨーロッパ仏教センター、オーストリアのブリスベーン阿弥陀寺の12会場でも行われ、インターネット中継により、世界中で念仏の声を共有した。

22日午後1時に成満を迎え、土屋住職は世界中の参加者に謝辞。「東北地方の地震・津波の被害に世界中から心を寄せていただいている。念仏会でも例年にも増してたくさんの人が心を届けてくれた。お念仏は一人でもいい、しかし大勢の人が集まれば相助け合ってすすみます。阿弥陀さまが私たちを憐れみ、大いなる願いをかけてこの与えて下さったお念仏を申し、今後の糧としていただきたい」と語りかけた。

2回目の参加となる最年少の小学校6年生の今道優裕くんは、睡眠と食事の約5時間を除いてフル参加。「念仏は楽しいというわけではないけれど、心が洗われる気がします。来年もまた参加したい」と話した。

初参加の26歳の男性は「菩提寺が浄土宗だったので、どんな宗派かと思って来た。これでお浄土に行けるぞ、という感じです」と晴れやかな笑顔。また高野山真言宗僧侶で漫画家の悟東あすかさんも初参加で、「楽しい」との感想。「書物の上でしか知らなかった浄土宗を体験できた」と充実感を漂わせていた。

2011/06/09 全日仏 日韓仏教加盟、天龍寺派復帰

全日本仏教会(全日仏、有田恵宗理事長)は5月31日、京都市内のホテルで理事会・評議員会を開き、日韓仏教交流協議会(宮林昭彦会長)の加盟および臨済宗天龍寺派(栂承昭宗務総長)の復帰を承認した。これにより全日仏は59宗派・36都道府県仏教会・9仏教団体の104団体となった。公益法人への移行に関しては、公益等認定委員会の担当者から定款の一部を具体的にするよう求められたことから条文を見直し、理事会もこれを承認した。

日韓仏教交流協議会加盟には、天台宗と浄土宗の推薦があった。昭和47年、韓国の扶余に「仏教伝来謝恩碑」が建立されたのを機縁として昭和52年(1977)に設立。日韓仏教大会は31回に及ぶ。近年の遺骨送還に関しても連携してきた。先月には鎌倉光明寺で日韓合同による慰霊法要が営まれた。この時に韓国側から寄託された義援金1千万円(目録)が、西郊良光理事長から全日仏に手渡された。

天龍寺派は平成15年(2003)に退会したが、同じ臨済宗の妙心寺派管長である河野太通・全日仏会長や松井宗益宗務総長らによる働きかけが功を奏した。8年ぶりの復帰となった。

協議事項である公益財団化については、3月26日に内閣府公益等認定委員会に書類を提出(インターネット)。その後担当者より定款の報酬に関する規定を具体的に示すよう求められた(第27条)。そのため、理事に対しては170万円、監事に対して30万円という上限を設けた。早ければ年内に公益財団に認定され、来年4月1日から新体制に移行する。

2011/06/09 在外ベトナム僧侶が慰霊法要 日本に少しでも恩返しを

東日本大震災の犠牲者慰霊と早期復興を願い、在外ベトナム仏教徒使節団が6月1日から3日まで宮城県と福島県を訪問。被災3県及び団体等に総額1050万円の義援金を寄託した。使節団25人のほとんどがボートピープル呼ばれた難民体験があり、「国難に遭遇している日本の皆さまがどんなに苦しんでいるか理解している」と自らの過去を重ね合わせてお見舞いの言葉を寄せた。在日外国人を対象として英語での仏教普及に尽力している立正佼成会国際仏教教会(IBC)が受け入れコーディネートした。

使節団はオーストラリアやアメリカ、カナダ、ドイツ、フランスに在住する25人と在日ベトナム人の50人で構成。ほぼ全員が、インドシナ難民として難民キャンプで生活した。その際、「日本の仏教者が支援してくれた」(団員の一人)。立正佼成会もその一つで、第3国定住以降も交流が続いている。

使節団は仙台市太白区の曹洞宗福聚院に投宿。2日には津波被害の大きい荒浜地区や東松島市などを視察する一方、避難所となっている寺院を慰問し、被災者を見舞ったり慰霊法要を執り行ったりした。3日には福島県に移動し、福島市の曹洞宗円通寺でも慰霊法要を営んだ。

視察と慰問を終えたハワイ在住のティク・トンハイ(釈通海)法師は、まず「ボートピープルとしてフィリピンの難民キャンプにいたとき、恩恵に預かった。立正佼成会から仏像を寄贈いただいたのです」と感謝。3月11日の大震災の報に接して「少しでも日本の皆さまに恩返しできるようにと海外のベトナム寺院に連絡し、来日することができた」と経緯を説明した。さらに被災地の仏教者や避難所となっている寺院の働きに言及しながら、「菩薩の行いというのは、苦しい時に手を差し伸べて、少しでも苦しみや痛みを和らげることだと信じている」とその活動を讃えた。

オーストラリア在住のティク・カンバ(釈廣波)法師も難民体験をまじえて、「自分たちは難民になり、何もないところから頑張ってきた。苦しいときに本当の友だちがいることはうれしいし、希望が見出せる。いま日本は国難に直面し、どんなに苦しんでいるか理解している。わずかでも恩返しができれば」と思いを語った。

視察した複数の寺院が避難者を受け入れていることについて、「ベトナム戦争の一番激しい頃、ベトナムのお寺も門戸を開いて避難者を迎え入れていた」と述べ、かつての記憶を呼び起こしていた。「宗教には苦しい人を助けるものがある、と改めて感じた」とも話した。

実際に津波被害を目の当たりして、「(インド洋大津波の時の)タイの津波被害や自然災害を見てきたが、被害が大きいことにショックを受けた」と感想を述べた。

今回の被災地訪問にあたっては、ベトナム出身で日本に帰化した神田徹学(こうだ・てつがく)氏の呼びかけと協力があった。神田氏はIBCベトナム支部顧問だが、福島市円通寺前住職であった故吉岡棟一氏のもとで得度した曹洞宗僧侶でもある。

写真=曹洞宗福聚院の伊達廣三住職の案内で、津波で本堂が流出した浄土宗浄土寺を訪問。残されたお地蔵さまの前で慰霊と早期復興への祈りを捧げた(2日、仙台市若林区荒浜地区)

2011/06/16 豊山派中心に組合結成 原発事故から復興へ

福島第一原発事故の被災寺院17カ寺でつくる「東京電力原発事故被災寺院復興対策の会」(会長=遠藤賢明・真言宗豊山派安養寺住職)が5月31日、発足した。

原発事故で避難生活を余儀なくされている檀信徒の心の拠り所になり、協力して寺院の復興にあたっていくことが目的。お盆を前に、地元での先祖供養の存続に尽力していく方針だ。

現在の会員は、真言宗豊山派の16カ寺と同宗室生寺派の1カ寺。そのうち12カ寺が原発から半径20㌔圏内にあり、住職とその家族は圏外で避難生活をおくっている。

10㌔圏内に自坊がある林心澄・同会事務局長(豊山派清水寺住職・浪江町)は、相馬市内に避難。檀家も散り散りになっているが、一部から「お盆の問い合わせが来ている」という。原発事故の収束が見えない中、「1カ寺でやっていくのではなく、中小企業や農・漁業の組合のようにお寺も団結して活動しよう、ということになった」。

これからも超宗派で参加を呼びかけ、具体的な活動内容を決定する。東京電力への補償請求についても話し合っていく予定だ。

2011/06/16 真言宗智山派管長選挙 寺田信秀氏が当選

阿部龍文管長(87)の任期満了に伴い、32年ぶりに選挙戦に突入した真言宗智山派(岡部快圓宗務総長)の管長選挙・選挙会(選挙長=小宮一雄総務部長)が9日、京都市東山区の総本山智積院宗務庁で開かれ、新管長に寺田信秀氏(91・千葉県館山市總持院長老)が当選した。

選挙は現職の阿部氏との間で行われた。投票総数は1570票で無効投票は207票。得票数は寺田氏957票、阿部氏406票だった。

寺田氏は大正8年11月22日生まれ。任期は28日から4年間。晋山式は今秋を予定。

2011/06/16 臨海斎場で火葬協力 地元宗教者が追悼

東京都は東日本大震災犠牲者の火葬協力を3月27日から江戸川区の瑞江葬儀所で実施していたが、都内の他の火葬所へも火葬協力を要請。大田区の臨海斎場(東海1丁目3番地1号)では、4月28日から30日、5月1日・20日・25日・27日・31日の8日間、断続的に火葬を実施した。都の職員や被災地の行政担当者をはじめ、協力した臨海部広域斎場組合、葬儀社の関係者が見守る中、大田区の宗教者がそれぞれの宗教儀礼により祈りを捧げ、犠牲者の冥福を祈った。

臨海斎場に送られた遺体は、宮城県石巻市の震災犠牲者のもので、現地の僧侶が一体ずつ読経をあげ、声を枯らして送り出した。これに応える形で、蒲田仏教会(近藤隆明会長・真言宗智山派長福寺住職)、大森仏教会(中野日演会長・日蓮宗本山本行寺貫首)を中心にキリスト教各派、立正佼成会、神道各派、天理教など、大田区の宗教者が参集した。

地元仏教会は火葬棟エントランス内に焼香台を設置し、午後5時頃から遺骨を骨壺に全て納め終わる午後10時頃まで、途切れることなく読経を行い、冥福を祈り続けた。

今回の世話役を担当した蒲田仏教会の新倉善秀副会長(日蓮宗大林寺住職)は「仏教だけじゃない。大田区の宗教者の思いで〝今何ができるのか〟を考えた。自分が今できることを最大限にしたい。その意気込みでみんな集まっている」と宗教者の思いを語った。

大森仏教会の中野会長は、「今回の大震災の犠牲者の火葬をめぐっては、報道態勢を含め、何か神経質な動きがあるように感じる。公的な場で一定の宗教儀礼を用いることは当然ながら適切ではない。しかし、異常事態の中で心から犠牲者に祈りを捧げることは、人間として宗教宗派を超えた行為だ。今回のことで、地元の宗教者間で連帯を深めることができたことは、大きな成果と言える」と話した。

8日間で延べ約400人の大田区の宗教者が参加し、合計116体の遺体が荼毘に付された。遺体は埋葬許可書と共に被災地に運ばれた。

2011/06/30 全仏婦理事会 新理事長に末廣氏

全日本仏教婦人連盟は20日、東京・谷中の天台宗天王寺で理事会を開催。任期満了による役員改選で、新理事に末廣久美副会長(天台宗)が選出された。新理事はこれまでの16人が再任、前理事長の島田喜久子氏は8日の総会で副会長へ推戴された。

理事長に就任した末廣氏は島田前理事長の功労に敬意を表したうえで、申請準備が進む新公益法人への意欲を示し「新しい全仏婦として皆さんと相談しながら、若い人につなげていけるような体制を作っていきたい」とし、協力を求めた。

運動を充実するため組織改変も検討し、5大事業(写経運動、心の募金、里親運動、花の種運動、文化講座)に推進委員会(仮)を置き、担当の常務理事5人を新理事16人から選出した。常務理事の下に理事、会員を置き運動を具体的な活動として広げていく。

常務理事には河原時子氏(真言宗智山派)、岩脇孝子氏(真言宗豊山派)、本多端子氏(東本願寺派)、篠田節子氏(曹洞宗)、松井百合子氏(曹洞宗)が就任。また常務理事から末廣理事長のサポートする副理事長も決める。事務局長には林惠智子氏が再任。林事務局長は「運動担当を置くことで、会員や在家の人にどう広げていくか討議し、運動を展開していければ」と期待を寄せた。

8日に開かれた総会では新しい定款案が承認されており、新体制の下で12月の公益法人申請に向けた準備を進める。

また今年は3年に1度のチャリティーイベントとして、歌手の美輪明宏さんのコンサートを11月29日に東京・五反田のゆうぽうとホールで開く。理事会では座席割りなども検討した。

2011/06/30 曹洞宗宗議会 被災檀信徒に特別見舞金

曹洞宗(佐々木孝一宗務総長)は20日、東京・芝の宗務庁に第113回通常宗議会(荒井源空議長)を招集し、23日に全議案を承認した。東日本大震災対策として災害対策特別会計に13億円増の約22億円を計上。そのうち特別見舞金として家屋全壊・流失の檀信徒および死亡者のいる檀信徒一世帯あたり2万円、原発事故により避難している檀信徒世帯に5千円を支給する。菩提寺を通じて行われるが、宗門が被災檀信徒に現金を支給するのはきわめて異例だ。

宗門では全壊・死亡檀信徒は約1万世帯、総額2億円、原発事故避難者は5千世帯、総額2500万円と想定。政府が開示している資料や宗門の檀信徒名簿などから算出されたという。

佐々木総長は演説の中で「被災寺院と檀信徒とのこれまでの結びつきをより深いものとし、さらには今後の寺院復興にも十分寄与できる対応と考えている」と胸を張った。すでに申請があった寺院には宗務庁職員が赴き、住職に寄託し「当該ご住職からは、お檀家様も喜んでくれてるとの感謝の言葉を頂いている」と報告した。

宗門では希望する被災檀信徒には三尊仏・線香などを配布しているが、特別見舞金もこれらとセットとする方針。議会後の記者会見で佐々木総長は「三尊仏には〇〇家と書くところがある。そこに住職さんが書きいれて、お盆を迎えてくださいと。2万円はその費用」とお盆を費用であると説明した。特別見舞金は今年度いっぱいまでだが、7月11日までを当面のめどとし、寺院からの申請を要請している。6月22日までに3カ寺を通じて289世帯に支給された。

また現地対策本部からの要望でユニットハウスを設置。本堂全壊や津波による流失、納骨堂等の損壊などに対処するためで、宮城県内に15棟設置されたことも演説の中で報告された。岩手県内でも要望があり、さらに増える。設置した寺院では仮本堂や納骨堂として使用している。

また仙台市にある宗門関係校の東北福祉大学に大震災に対する特別支援金として5千万円を支出。臨時部に計上された。同大学はキャンパス内の建物にかなりの被害が生じたほか、学生3名が死亡した。家屋被災者も343名に上る。支援金は大学が実施している復旧や学業支援等に用いられる予定だ。

他方、同じく臨時部で計上されていた大本山總持寺祖院災害復興支援負担金(10年賦、総額15億円)の今年度分と来年度分は支出しないことになった。本山と祖院監院からの繰り延べ申し入れを受け入れたもので、平成30・31年度に支出される。

今回の震災後、今年度予算や事業を大幅に見直し、縮減した分を災害対策に充当。当初の災害対策特別会計は8億7千万円だったが、一般会計からの受入金2億円増の3億円をはじめ約13億増の21億9千万円に増額補正。ユニットハウスや災害見舞金、貸付金などに支出される。

さらに、申請書類や登録印鑑の特例措置の規程が新設され、被災地寺院からの書類に対して印鑑証明添付の除外などが盛り込まれた。災害復興対策の貸付金は3千万円を限度としていたが、特例により上限を5千万円とした。

2011/06/30 基地のない沖縄を! 超宗教で「集い」結成

14e0ad5c4b5778_L1.jpg「基地のない沖縄をめざす宗教者の集い」の結成集会が17日、東京・千代田区の衆議院第1議員会館大会議室で開催された。沖縄の基地問題に取り組む宗教者の各団体が一堂に集まり、仏教、キリスト教を中心に約200人が参加した。

同「集い」は、在日米軍基地の75%が沖縄にあることを憂え、普天間基地の撤去と辺野古新基地建設の中止を求める点において宗教者が協働するために結成。仏教界からの呼びかけ・世話人団体には、立正平和の会、真宗大谷派九条の会、お題目九条の会、日本山妙法寺、日本宗教者平和協議会などが名を連ねた。

共同代表の挨拶では、宮城泰年氏(聖護院門跡門主)が「現実に基地に頼らなければ生活できない人がいる」と基地問題の構造を分析。「基地をなくすとともに、経済的にも、そして沖縄の伝統、文化、歴史、宗教を含めた交流を発展させていき、元の沖縄に戻すような活動をする必要がある」と提起した。

谷大二氏(カトリック正義と平和協議会会長)は「基地建設問題を日本の宗教者がどう考えているのか。このことは国内だけでなく、諸外国からも問われている」と指摘し、「宗教者は『いのちを大切にし、平和を守る』という教え、志を共通して持っている。沖縄の声を伝え、学び、共感を持って輪を広げていきたい」と話した。

続いて沖縄からきた宗教者が現状を報告。カトリック那覇教区の押川壽夫司教は基地の騒音を「ミサの途中でよく遮られる。2,3メートルの距離でダンプカーの音がずっと鳴り続けるようなもの」と紹介。「沖縄に来る必要はない。ここで活動して下さい。無関心な皆さまの心を動かして下さい」と沖縄への関心を持つことを呼びかけてほしいと訴えた。

写真=結成集会で挨拶する宮城共同代表

2011/07/07 日本脱カルト協会公開講座 学内での対策いかに!

14e155305adf77_L1.jpg日本脱カルト協会(理事長=西田公昭・立正大学教授)が主催する公開講座「カルト問題から見た大学の役割」が6月25日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で開かれ、大学関係者ら150人参加し、学内でのカルト対策を学んだ。

講座では実際にカルト対策を実施している大学職員や宗教者6人がその取り組みを発表。

うち岡山大学学生支援センターの松岡洋一氏は「摂理 50大学に信者」との朝日新聞報道(06年7月30日)をきっかけにカルト対策を始め、現在は学内見回りや情報の収集と学内での共有、啓発ポスター作成、新入生オリエンテーションでの注意喚起、被害学生への支援などの対策を実施していることを紹介し、「個々の大学が個別に進めるのは限界がある。連携をとり協調する必要がある」と大学間の連携を強調した。

95年の同協会発足以前からオウム真理教問題などカルト問題に関わる日蓮宗僧侶の楠山泰道氏は高校でのカルト対策の遅れを指摘。上下関係の中で先輩に無理やり入会させられたり、高校生信者の大会が横浜で開かれ涙を流して感動している実態を報告し、信者の親に対して「子どもなんだから親のあなたが何とかしろと言っても子どもはマインドコントロールされているから親の言うことをきかない」と状況を理解した上での高校の対応を求め「大学に入ってからでは予防は間に合わない」と高校段階での予防を説いた。

この他、日本基督教団倉敷めぐみ教会牧師の高山正治氏が統一教会はじめカルト教団の内部事情を報告。同協会理事の鈴木次郎氏は子どもが親鸞会に入会して悪戦苦闘した経緯などを話した。

大阪大学学生支援ステーションの太刀掛俊之氏は「カルトという言葉もオウム真理教の地下鉄サリン事件も知らない学生が増えてきている」と事件の風化を指摘するとともに大学での入念な対策を説明した上で、「カルト予防の本質は大学の教育問題。学生支援をいかに整備していくかにかかわっている」とカルト対策の重要性を述べた。

また同大学で実際にカルト対策に取り組む真宗大谷派僧侶の瓜生崇氏は自身がカルトの元信者だった経験からカルト対策の要点を話し、「カルト対策に関わる人はカルト信者と学生に線を引かない、どちらも守らないといけない人です」と学生信者を敵視しない対応を求めた。

写真=高校からのカルト予防を説く楠山泰道氏(左)

2011/07/07 大谷派宗議会 原発声明求める野党

真宗大谷派宗議会(長久寺徳瑞議長)は6月24日に代表質問、同27日に一般質問が行われたが、福島原発事故に対する認識や宗派声明を巡る攻防が目立った。

無所属クラブを代表して質問した旦保立子議員(東京教区)は《どんなにがんばっても復興復旧を自分達の力で成し遂げることはできない》と嘆く「福島県に住む友からの便り」を紹介した上で、「今こそ、宗門は国内外に向かって、刻一刻と深刻化する福島原発のあり様、出続ける放射能、校庭に響く子どもたちの声も聞けない、悲しみと苦悩の渦巻く同朋を前に、声明を発する時剋です」「その声明を出すか否かは、この教団が宗教的生命を放棄する姿になるか否か、国策に追従するか否かにかかわると言っても過言ではない」と強く宗派声明の発信を要望。

恒沙の会を代表して質問した森島憲秀議員(富山教区)も「原発がいのちを蝕み、生きることを許さない環境を生み出し、それはまた今後長く子孫にまで影響を及ぼし続けるものであることは、この度の事故が教えてくれました。そうであるとすれば、すぐにでもせねばならないことは止めるべきであり、廃炉にすべきであると声を挙げるべきではないでしょうか」と宗派声明を求めた。

野党側はいのちに関わる原発事故を受けて宗派には原発にノーを突き付けてほしいとの考えからのことだが、これに対して安原晃宗務総長は、被災者支援のつどいや第2期、第3期遠忌法要時に「原発に依存する私たちの在り方を見直すべき」と表明をしたことを述べ、議会初日の演説でも「原発の誤謬性について申し述べたのと同時に、誰かを悪者にしなければ収まらないような状況、いわば人知をもって人知を批判する立場を離れねばならないと問題提起させていただいた」とし、「私から現段階では声明を出すつもりはございません」と突っぱねた。

その上で「被曝された方々への支援のため、故郷を追われた人々のため、原発に依存する生活を見直すために、いま私たちができること、必要なことをいち早く実践に移すことが肝要」と応じた。

安原総長は一般質問での藤井学昭議員(東京教区)の質問にも同様の考えを表明し、考え方の違いを鮮明にした。


提出議案19件
原案通り可決

宗議会は6月29日、東日本大震災で被災した仙台・東京2教区の御依頼を合計1億円減額し、復興支援継続に災害見舞費を5305万円増額した11年度同派補正予算案はじめ安原内局提出の議案19件を可決した。参議会(佐藤正四郎議長)も同日可決して議案はすべて原案通り成立した。

2011/07/07 中尊寺など世界遺産に

パリで開かれていたユネスコの第35回世界遺産委員会で6月25日(現地時間)、「平泉の文化遺産」(岩手県平泉町)の世界文化遺産への登録が決定し、同29日、正式に登録された。日本の世界文化遺産は12件目で東北地方では初。地元では「復興の光を平泉から」との声があがっている。

登録されたのは、金色堂で有名な中尊寺や浄土庭園で知られる毛越寺(もうつうじ)、山頂に経塚が造営された信仰の山・金鶏山、無量光院跡、観自在王院跡の計5資産。荘厳な建造物と豊かな自然を組み合わせた文化的景観が、仏国土(浄土)を表現していると高く評価された。

12世紀の約100年間にわたって、清衡・基衡・秀衡の奥州藤原氏三代が築き上げた壮麗な浄土教文化。地上に極楽浄土を移したかのような平泉の風光は、平安時代から今に至るまで日本人の心の原風景となっている。

文治5年(1189)、奥州征伐のため鎌倉武士を率いて平泉に入った源頼朝が、中尊寺をはじめとする諸寺院の佇まいに深い感銘を受けたというエピソードも伝わる(『吾妻鏡』)。俳聖・松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅で、落涙しつつ名句を詠んだ景観が、世界の至宝になった。

中尊寺の山田俊和貫首は同寺HPで、「東日本大震災という未曾有の事態、そしてその復興を願う世界中の人々の注目の中での登録は、東北に希望の灯が輝いた気持ちです」とのメッセージを発表した。

2011/07/14 わらべ地蔵を被災地へ

14e1e89a209f10_L1.jpg「わらべ地蔵」を被災地へ―。京都の仏師・冨田睦海氏(㈱冨田工藝)と臨済宗妙心寺派僧侶の織田宗泰氏(桂林寺副住職)が中心となり、東日本大震災で犠牲となった子どもたちへの供養として、わらべ地蔵(地蔵菩薩)を彫り被災地へ届ける復興支援が始まった。

「わらべ地蔵」は、仏師の冨田氏が仏教に携わる彫刻家として、悲しみを預ける象徴、子どもの守り本尊として信仰を集める地蔵菩薩を被災地に届け、遺族の心の支えになりたいと考案。親交のある織田副住職も賛同し、「わらべ地蔵」作りを広く呼びかけている。

冨田氏は初心者でも地蔵菩薩を彫れるカリキュラムを作成。6月11日には織田氏が所属する臨済宗妙心寺派山梨教区の僧侶が「わらべ地蔵」25体を彫像、その一彫り一彫りに祈りが込められた。

「わらべ地蔵」は来年3月11日の一周忌に併せて、被災地寺院で開眼供養を営み参列者に届ける計画。すでに、被災地にも赴き、数カ寺と話し合いを進めている。

織田氏は「被災地に直接行けなくとも参加できる支援。なるべく多くの人にわらべ地蔵を作ってもらい、それを届けたい」と話す。仏教団体や大学、各寺院での催しなどの機会に、「わらべ地蔵」の彫像を呼びかけている。材木費は一体約1800円。問い合わせは、冨田氏(冨田工藝☎075―541―0123)、織田氏(桂林寺☎0554―43―3270)へ。

2011/07/14 埼玉県佛教会 岩槻で仏教徒大会

14e1e8c0581b78_L1.jpg東日本大震災で延期となっていた「第33回埼玉県佛教徒大会(第29回岩槻佛教講演会)」が6月30日、さいたま市岩槻区のさいたま市民会館岩槻で行われた(主催=埼玉県佛教会)。「いのちをみつめる―生きてるっていいな」をテーマに、記念法楽や講演会、アトラクションが行われた。約500人が参加した。

初めに萩野映明会長を導師に記念法楽を厳修。挨拶では東日本大震災の犠牲者の冥福を祈ると共に、一日も早い復興を祈願。さらに原発事故には「人がすべてを制御できるとの錯覚に陥り、大きな過ちに発展した一つの教訓」「便利な世の中の様々なシステムを確認する必要がある」と指摘した上で、復興に向けて「手と手を取り合い、助け合い、共に生きていくこと」を呼びかけた。

続いて、真言宗智山派別格本山高幡不動尊金剛寺の川澄祐勝貫主が「いのちの限り」と題し記念講演。川澄貫主は、埼玉県秩父市の農家の二男坊として生まれ、大学時代の下宿先が寺院だったことが縁で出家。秋山祐雅前貫主の下で修行時代には、叱られる日々だったが、「叱ってもらえることは有り難いこと。叱り甲斐のない人は叱らない」と懐かしんだ。

「仏教の教えは知識ではなく智慧。体験に裏付けられた生活をする。それこそがお釈迦さまの教え」と、先代からの学びを披歴。「一年中楽しんでもらえるお寺、命の洗濯をしてもらえるお寺」をモットーとする川澄貫主は、「とにかく物事を前向きに受け取ること。仕事を楽しみ、少しでも人の為になるような、ものの考え方をしていく。これが人生を楽しく生きる秘訣です」と説いた。

アトラクションでは里見まこさん主宰の「プラーナ」インド古典舞踊研究会がインド舞踊を披露。世界最古とも言われる舞踊を表情豊かに演じた。

大会最後には次期開催地の所沢・入間東部佛教会に仏旗法輪が手渡された。挨拶に立った岩槻仏教会の上村正剛会長は「人間として生を受けたことが本当に不思議なこと。改めて父と母、ご先祖様のお蔭を再確認する時に、生きているっていいなということが見える」と語り、「生きる喜び中で、長生きしましょう」と呼びかけた。

2011/07/14 曹洞宗と韓国曹渓宗が合同法要

14e1e8f06b2801_L1.jpg韓国仏教の最大宗派である大韓仏教曹溪宗(慈乗総務院長)と、曹洞宗(佐々木孝一宗務総長)は東日本大震災発生から4カ月に迫った7月8日午前、宮城県若林区の林香院(門脇昌文住職)で東日本大震災物故者慰霊法要を執行した。両国から約100人が参列。日本側法要では曹溪宗僧侶が焼香し、曹溪宗法要では曹洞宗側が線香を立てて物故者を追悼した。

曹溪宗からは僧侶や添乗員・随行記者ら25人が来日した。曹洞宗からは佐々木総長はじめ内局部長、職員、東北管区教化センター役員、宗議会議員、宗務所長、教区長、護持会長らが参列した。

会場の林香院は仙台駅に近い寺町の一画にあり、倒れたままの石燈籠が震災時の爪痕を残している。本堂西側には韓国式の祭壇が設けられ、白木の位牌を中心に果物やお菓子などの供物がそなえられた。

最初に曹洞宗の法要を佐々木総長導師に執行。震災物故者の冥福を祈る法語を奉読し、「奥州七月鎮魂座/夏木殷森聴杜鵑」と読み上げた。そして読経の中を曹溪宗僧侶を皮切りに全員が焼香した。

曹溪宗法要は般若心経に続いて、慈乗院長が追慕の辞。「急逝された多くの霊魂の悲しみや苦しみは、言葉をもって全てを表現することはできませんが、この因縁の道理を理解し、本日この場での法要を通じて、未練を残さずに旅立たれますことを願って止みません」述べた。

韓国の文化財に登録されている「薦度齋」(チョンドジェ)という伝統的な供養儀式も行われた。死者の霊を極楽に送るための儀式で、鉦や笛、太鼓といった鳴り物に合わせて僧侶が舞ったりする。約1時間にわたって行われた後、日本側の参列者は位牌の前に線香を立て合掌した。

昼食後、曹溪宗一行は津波被害を受けた同区三本塚の昌林寺を訪問。地震直後の津波からなんとか避難した松山宏佑住職から当時の様子を聞いた。また被災した檀家たちが待つ本堂で慰霊法要を営んだ後、参列者に韓国から持参した数珠とその袋を寄贈した。さらに壊滅的な被害を受けた名取市閖上地区を視察。住職夫妻が犠牲となった東禅寺本堂にも足を運び、津波の脅威を感じ取った。

2011/07/21 智山派 岩手教区がお盆法要

14e27d81f5aa3a_L1.jpg真言宗智山派岩手教区(佐藤秀佳教区長)では旧暦のお盆に当たる14日、「東日本大震災三陸大津波物故者精霊法要並びに復興祈願法要」を厳修した。午前10時から陸前高田市の金剛寺(小林信雄住職)で営み、僧侶や地域住民ら約100人が参列。午後2時からは大船渡市の長源寺(谷山誠志住職)で営み、約50人が参列した。

金剛寺では、津波で全壊した本堂跡にテントを張り祭壇を設営。海に向かって追悼の祈りを捧げ、参列者が焼香した。さらに犠牲者の冥福を祈る光明真言を唱えながら、総本山智積院(京都市)で加持された土砂を散じた。行方不明の息子を思い、「流された自宅の跡に土砂をまいて供養したい」という女性には、袋詰めの土砂を手渡した。

本山特派布教師の松平実胤氏が法話。「お寺に来て目一杯悲しんでください。そして生きる力を見出してください」と語りかけ、「亡くなった方々は菩薩になり、極楽浄土にお戻りになった。安心してください」と強調した。参列席は号泣する声で満たされた。法話後、松平氏にお礼の言葉を伝えに行く参列者の姿もあった。

参列者の多くが家族と自宅を失い、避難所や仮設住宅で暮らしている。この日、参列者全員に仮位牌が手渡された。法要で職衆を務めた平泉町・龍玉寺の本間真悠氏は、「この法要が(被災者の)明日への第一歩になれば」と祈りを込めた。

写真=本堂跡にテントを張って営まれた追悼法要(陸前高田市の金剛寺)

2011/07/21 仏教学者と『もしドラ』著者が対談

14e27d979ad5ba_L1.jpg仏教学者の佐々木閑氏(花園大学教授)と大人気ベストセラー『もしドラ』(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)の著者・岩崎夏海氏による異色対談「釈迦とドラッカー」(新潮社・紀伊國屋書店共催)が10日、東京・新宿区の紀伊國屋サザンシアターで開催された。今回の対談は、「律」に秘められた釈尊の智慧を組織運営の観点から述べた佐々木氏の著書『律に学ぶ生き方の智慧』(新潮選書)の刊行記念として実現した。


基調講演では岩崎氏が、佐々木氏の著書にある「仏教以外でも生き甲斐や真理を探究する者は皆、出家者ではないか」という提案に「読んでびっくりした。これは僕のことを書いている。まさに僕自身が出家者ではないかと思った」と感想。「僕の真理は〝面白いとは何か〟。これを探求していた」と話した。


佐々木氏は、タイやスリランカなどの上座部の仏教僧団(サンガ)を前提に、「律」を解説。托鉢(乞食)を例に、「100人お坊さんがいて、99人が立派でも、1人だけ行儀が悪く世間のひんしゅくをかうとそのサンガは壊滅する。お釈迦さまは全員が尊敬されるような最低限の規則を作らねばならなかった」と説明し、「律は、仕事・生産活動に携わることなく、やりたいことを一生貫くための組織を社会の中でどう運営すればよいか、その智慧の集積だ」と指摘した。


対談では、2500年規則を変えずに存続するサンガに対して、「イノベーション(革新)がない組織は停滞する」という経営学の大家・ドラッカーの理論を巡って議論。佐々木氏はドラッカーの「顧客からスタートする」という理念に当てはめ、仏教の「顧客」の存在に着目。仏教の顧客とは、サンガに入る人々とお布施をする人々だと定義し、「〝顧客〟が求めているものは生老病死の苦しみから逃れること。これは社会や時代が変わっても、人間が本質的にもっているもの」とサンガ存続の理由の一つに仏教の苦と向き合う教えがあると推察した。


岩崎氏は「サンガの律はたくさんあるが非常にシンプル。変わる必要がない」と分析。変わっていくべき部分は「原理原則以外の表皮」であるとして、イノベーションに関して「ドラッカーは上っ面が変わらないところに弊害があるとしている」と解説した。


話題は昨今の日本の風潮にも及び、岩崎氏が「何かを信奉する人たちを、それは宗教じゃないかと揶揄する。〝宗教〟という言葉をそのように使うのは日本だけ。何かを信じることに対するアレルギーが本当に強い」と指摘。さらに日本が自死した人をかわいそうと思わない社会になりつつあると世の風潮を嘆いた。


佐々木氏は、「世の中になぜ仏教が必要か。それは自死者を救うこと。絶望して行き場がなくなっても、ここに入れば人生を一からやり直せる。お釈迦さまが作ろうとしたのはそういう組織」と応答。「教えや哲学はいい。人を受け入れる仏教組織が日本に存在してくれたら、お釈迦さまが仏教を作った甲斐があるのではないか」と訴えた。

2011/07/21 宗教ネット懇第1回シンポ開く 宗教間対話の「壁」問う

14e27da3719b9b_L1.jpg10年前の新宗連(新日本宗教団体連合会)50周年を契機に、宗教の枠を超えた教団や宗教者(個人)が集い発足した日本宗教ネットワーク懇談会。その第1回シンポジウム「壁は乗り越えられるのか?―対話の現場から」が9日、東京・三田の慶應大学で開かれた。宗教間対話と協力の実践者が自らの取り組みなどを報告した。約120人が参加した。

シンポは同ネットの「いま、なぜ宗教間対話なのか」シリーズの一環。最初に宗教学者の樫尾直樹氏(慶應大学准教授)が趣旨説明。「対話はなぜ成立しないのか?」と問題提起しながら、「どういう点を工夫したらできるのか。また宗教間対話の可能性と限界性を明らかにし、宗教間対話に貢献したい」と語った。シンポのほか、現場レベルのワークショップも視野においているという。 同志社大学教授(一神教学際研究センター長)の小原克博氏が「現代世界と宗教間対話」と題して基調報告。欧米と日本の政治や宗教を比較しながら、とりわけ欧米ではユダヤ教、キリスト教、イスラームが様々な面で欠かせないことから「3教の対話は歴史的必然性を有していると」と解説。具体的には「第2次世界大戦時のホロコースト」や「9・11以降のイスラモフォビア(イスラームへの憎悪感情)の拡大」といった事例を挙げた。

他方、日本の場合は「弛緩した平和を唱えるサロン的な対話」と批判的に分析。その理由として、「せっぱ詰まった事情があまりない」ことや、「声高にスローガンが述べられても実践が伴わない」など厳しい視点から検証した。

同大一神教学際研究センターでは、イスラームやキリスト教の指導者を招いて緊張感ある対話を実践していることも報告。そして21世紀の宗教間対話の課題として、具体的な課題設定や対話を求めない原理主義的グループとの対話が必要だと主張する一方で、「宗教(教団)の内部における対話」の重要さも指摘した。

2011/07/28 国と東電に要望書提出 檀家救済と寺院存続求め

福島第一原発事故の被災寺院18カ寺でつくる「東京電力原発事故被災寺院復興対策の会」(遠藤賢明会長=真言宗豊山派安養寺住職)は25日、都内に集まり、国と東京電力に対して「檀信徒の救済」と「寺院の恒久的存続」を求める要望書を同日付で採択した。福島県仏教会・全日本仏教会を通して国(文部科学大臣並びに関係省庁宛)・東電に提出される。

要望書では、警戒区域・計画的避難区域・緊急時避難区域・特定避難勧奨地域内にある各寺院が、「永年に亘り地域住民はもとより檀信徒と先祖代々強く深い絆で結ばれて」いることを強調。その上で「今般の原子力発電所の事故により、地域住民・檀信徒は全国各地に離散させられ、住職も避難を余儀なくされ、護持すべき寺院に戻れず、布教活動や宗教活動を行う事が出来ない状態です。日本古来の祖先崇拝の念をもむざむざと断たせてしまう状況が続いております」と訴え、「早急なる回答を望みます」として9項目を要望している(別掲)。

特に「4」では、檀信徒の救済に主眼を置いた。豊山派泉龍寺(南相馬市)の石川信光住職はその理由を、「きちんと先祖供養ができる環境を確保しなければいけない。原発事故で被災し、お寺やお墓にお参りに行けない檀信徒は、自分の境遇を余計に辛く感じる。避難区域内に先祖(遺骨)を置いている辛さもこれから増していく」と話す。

「7」は、宗教法人法の運用に特例を求めたもの。現行法ではたとえ20㌔圏内の寺院であっても、2年間宗教活動をしていない場合には法人格を喪失することになるため。さらに今後、被災寺院が損害賠償を請求する際、JAや漁連と同様、弁護士や公認会計士など公の第三者による被害額の算定が必要だとの認識も共有した。

【要望項目】
1、放射能漏れを早急に収束させること
2、避難区域内の治安維持のため、警備の強化などを行うこと
3、各寺院の寺宝・什物・文化財等を早急に搬出し、保管管理 を行うこと
4、①放射能汚染地域の全寺院を、安全な場所に移転させること②宗教施設・礼拝施設(本堂・お堂・全檀家の墓地等)附属施設(客殿・庫裡・寺務所等)及び境内地を各寺院従前通りの規模に基づき確保建造すること③檀信徒の布教活動・宗教活動ができるよう、早急にその手立てを講ずること④墓地については今後の使用希望者の増加を考慮し、余裕を持った墓地造成をすること
5、各寺院檀信徒への所得補償を遺漏無きよう行うこと
6、各寺院(宗教法人)の所得補償を遺漏無きよう行うこと
7、特殊事情を考慮し、宗教活動の有無だけによる存廃・整理統合の判断をしないこと
8、寺院存続に関わる行政手続きを簡略化すること
9、各寺院の恒久的な存続の為あらゆる手段を講ずること

2011/07/28 大本総代会 田賀本部長を再任

大本(田賀紀之本部長)の総代会(加部祥児議長)が10日、亀岡市の本部みろく会館ホールで開かれ、任期満了に伴い大本総局と外郭団体・人類愛善会の役員が改選された。本部長・同会会長には任期半ばで辞任した松田行彦前本部長の後任として昨年4月に就任した田賀本部長が再任された。任期は8月1日から3年。新総局・役員は次の通り(敬称略、「再」は再任、「新」は新任)。

【大本総局】
▼本部長(代表役員)=田賀紀之(再)
▼総務(責任役員)=浅田秋彦(再)、七良浴大吉(再)、四方眞人(再)、松田一(再)、松田達夫(新)、西永真(再)

【人類愛善会役員】
▼会長=田賀(再)
▼副会長=稲垣裕彦(再)、松田一(新)
▼理事=半田聖治(再)、浅田(再)、四方(新)、松田達夫(再)、野田篤文(再)、斉藤泰(新)

2011/07/28 多彩な仏がお出迎え まな板からじゃが芋まで

14e312edcd1bc2_L1.jpg第10回東方学院仏像彫刻講座・宗教画講座の研究会員の作品展が11日から17日まで、東京・九段のインド大使館地下ギャラリーで開催された。会員30人が制作した個性豊かな仏さま80点が並んだ。

円空仏をモデルに彫りあげたお像や「まな板」を素材に掘り出したお不動さま、若き日の親鸞聖人と京都へ帰洛した後の親鸞聖人を並べた展示など、作者の思いが溢れる内容となった展覧会。ちょっと変わったところでは、じゃがいも(メイクイーン)に写仏をした「じゃが地蔵」が見た目にも可愛らしく、多くの来場者が足を止めた。制作した久富幸子さんは「じっと眺めていると不思議と顔が見えてくる」と話す。「じゃが地蔵」は好評で、東京・代々木公園で行われた昨年のインド・フェスティバルで講座を開いたところ、たくさんの人が「じゃが地蔵」づくりを楽しんだという。

彫刻教室にも通っている、東方研究会の三木純子理事によれば素材選びも自由で、「女性の方はまな板を素材にする方が多いんです」とか。現在は20代から80代までの多彩な研究員が教室に通い、仏様と向き合う時間をつくっている。

同講座では最初に粘土で握り仏を、次いで誕生仏を制作した後は、「自分の好きなように、好きな仏が彫れる」というのが大きな魅力。初代講師・西村公朝師が教えた、「あなたが心を込めて作った仏像はたとえ技術が拙くとも、又、上手・下手に関係なくあなたの仏さまだよ」との言葉通り、会員一人ひとりが楽しみながら仏像制作に励んでいる。

2011/08/03 神儒仏合同講演会 「震災と企業倫理」考察

14e38f998ee4df_L1.jpg神田明神(神道)、公益財団法人斯文会(儒教)、財団法人東方研究会(仏教)は7月30日、東京・千代田区の神田明神で神儒仏合同講演会「心の通い合いを求めて」を開催した。今年は東日本大震災と福島原発事故を受け、「災害と企業倫理」をテーマに、神儒仏の立場から企業活動を真に人間の幸福のために生かす姿勢を考察した。約50人が参加した。


初めに㈱龍角散代表取締役社長で神田明神氏子総代の藤井隆太氏が発題。藤井氏は曾祖父が関東大震災に遭った教訓から、本社ビル地下に防火用水を完備。東日本大震災では被災地へ医薬品を提供したほか、社会インフラの負担軽減のため一週間の企業活動の停止を行ったと報告した。

また製薬会社として、セルフメディケーションの促進を提言。医療費の負担軽減、予防医学の側面からも健康管理の大切さを呼びかけた。家訓として伝わる「余計なお金を持たず質素に」や、利益や利便性だけでなく、「自然の恵みに感謝」する姿勢も改めて見直した。

安原和雄氏(足利工業大学名誉教授・仏教経済フォーラム副会長)は仏教経済学の視点から、日本再生と企業倫理に言及。「いのちの尊重」「知足」「簡素」「非暴力」「共生」「利他」「持続性」「多様性」のキーワードから仏教経済学を解説した。そのうえで日本再生に向けた5つの変革として、「原子力発電」から「再生可能な自然エネルギー」、「グローバリズム」から「ローカリズム」、「私利私欲型企業」から「社会的責任型企業」などを提言した。

「儒学」の視点からは瀬口龍一氏(斯文会顧問・日立建機㈱名誉相談役)が発表。瀬口氏は天災が「天命」であるとする一方で、「人災の大半は利害の対立や自己の衝突によって起こる」と指摘。「人災は人間の考え方や哲学を自ら変えないと解決しない」としたうえで、『和を以て貴しとなす』 (論語)の精神による「他者との調和」の重要性を強調した。

儒学の立場から倫理と利益の両立を掲げた渋沢栄一の理念や、日立グループが「誠」を企業理念に展開する社会貢献活動などを紹介。孔子が唱えた「忠恕」を「まごころ」と表し、これを「企業倫理の根源」と捉えた。

2011/08/03 目指すは葬送基本法 制定に向け懇談会

14e38ff719e512_L1.jpg葬送の自由を権利として明文化し、遺体や遺灰を自然に還すか、墓に埋葬するかの選択権を保障する葬送基本法の制定を目指す「公開!初の葬送基本法推進懇談会」(主催=葬送の自由をすすめる会)が7月31日、東京都千代田区の東京しごとセンターで開催された。宗教学者の島田裕巳氏が講演し、現代の葬送事情と基本法制定の問題点を探った。約80人が参加した。

安田睦彦会長は開会挨拶で、葬送基本法の制定を目指す背景を「厚労省、法務省も自然葬を追認してきたが、オーバーランする部分もあり、遺灰を撒くことに地元の反対もあった。規制をかける動きもある中で、国は墓埋法(墓地、埋葬等に関する法律)には抵触しないと言いながら、はっきりしない。葬送基本法として明文化を考える必要がある」と説明。「墓に入るも良し。土に還るも良し。葬送の自由は、憲法第13条を根拠とする基本的人権の一つだ」と訴えた。

懇談会の座長を務める山折哲雄氏(宗教学者)は、全国の火葬場が毎年排出する二酸化炭素(CO2)を吸収するには、東京23区の2倍の面積の森林が必要であることを紹介し、環境問題の面からも土葬を再評価することを提案した。

その上で東日本大震災の被災地を回った際、宮城県石巻市の仮土葬場で遺族が土葬による仮埋葬では満足していなかったことに触れ、「本当のところは、火葬にしても、土葬にしてもまだ精神の安定を得られない状況にあるのではないか」と推察。「魂が抜け出るという〝鎮魂の作法〟が現代人にはもう存在しないのでは。それが葬儀に対して不安な気持ちを抱く原因ではないか」と述べた。

島田氏は「変わる葬送―現状と問題点」と題して講演した。現代の葬送事情の論点として、宗教・宗派を問わない墓地が増加していることや、葬儀方法の多様化が進むなかで、東京周辺の葬送文化が遅れていること、大量のCO2を排出する火葬の是非や霊園の造成による環境破壊等を指摘。

さらに、「政府や自治体が老後の不安に対して考慮しても、死後の不安に対しては一切考慮していない」と分析。老後の不安の後に死後の不安がある状況を変えていくためにも、基本法制定が必要だと強調した。

懇談会での意見交換では、各委員から「法制化を目指すには永田町とのつきあいが必要になる」「国は世の中の現実を見放した状態。国が動かないなら市民が声を出すべき」「オウム事件以来、既存の宗教団体は信用できない」「仏教界はあまり積極的ではない」などの意見があった。

池田茂穂委員(元最高検検事)は、基本法の制定を「大変難しいと思っている」としつつ、震災以降の価値観の変容を踏まえ、「(法制化に)動き出すのではないか」との印象を語った。一方で、「この国はゆりかごから墓場まで、極めて精密な利権構造にある。原発問題と似ているが、色んな問題が出てくるだろう」とも指摘した。

基本法に関連する可能性のある法律ついては、宗教的感情を保護法益とする民法第897条の祭祀継承や刑法の死体損壊罪、死体遺棄罪などを列挙。弁護士の中村裕二委員は、葬送の自由を人権としてどう基本法に盛り込むかについて、「国に放っておいてもらう自由権と国に作為を求める社会権の両面で考えていくべき」とした。

同懇談会は、今後4カ月に1回のペースで開催する予定。2013年頃までに基本法の骨子をまとめ、議員立法での成立を目指しており、国会議員の参加も呼びかけるとしている。

2011/08/03 先物会社に6億円の賠償命令

浄土宗財務局の元課長補佐(業務上横領罪で服役中)が宗の積立金7億4500万円を着服して商品先物取引に注ぎ込んだ公金不正流用事件を受け、同宗が先物会社・株式会社コムテックス(本社・大阪市西区、以下コム社)を相手取り訴訟費用含め7億7770万円の損害賠償を求めていた民事訴訟の判決が7月27日、大阪地裁であった。小野憲一裁判長は、コム社社員は元課長補佐が宗の金を不正流用していたことを知っており取引は共同不法行為だとする浄土宗の主張を認め、コム社に6億1487万円の支払いを命じる判決を言い渡した。賠償には平成16年11月から支払い済みまで年5分の利息もつき、仮執行も可能とした。訴訟費用は5分の4をコム社の負担とした。

2007年2月の提訴から4年半を経ての一審判決。しかも結果は予想以上のものだった。

公金横領の事実が京都の宗務庁内で発覚したのが06年5月。その後浄土宗は京都府警へ事件を告訴。また元課長補佐を懲戒解雇した後、逮捕・起訴されるのを待たず、公金が注ぎ込まれたコム社を相手取り損害賠償を求めて提訴した。

請求の理由は、コム社の担当社員は元課長補佐が注ぎ込んだ金が不正に流用した金だと知っており、取引は共同不法行為で会社には使用者責任があるというもの。

裁判は07年4月11日に第1回口頭弁論が開かれた後、非公開の弁論準備、和解交渉が進められ長引いた。結局、和解交渉は双方の主張が大きく隔たり決裂。判決を得るべく昨年11月10日と12月1日にコム社社員と発覚時の同宗財務局長の証人尋問が行われた。

尋問では担当した社員や管理部門の社員ら計9人が出廷して証言したが、一様に「(元課長補佐の)自己資金と思っていた」と終始。しかし取引に必要な数百万、数千万円の金の授受は銀行振込でなく、すべて路上に停めた元課長補佐の車の中で現金で行っていたことや、取引の確認も「知恩院の近くの公園」で立ち話で行っていたことなど不自然な取引の実態が明らかになった。元財務局長は管理・監督責任を認めた。

一方、関係者によればこの証人尋問に先立って行われた服役中の元課長補佐に対する尋問では元課長補佐は自己資金でないことは言っていたと、また元課長補佐から2千万円を騙し取り詐欺罪で実刑判決を受けた元社員は、取引に使われた金は浄土宗の金であることは薄々知っていた、会社も知っていたはずだ、と証言していた。

裁判はこの後今年2月9日にも口頭弁論が開かれ、裁判所が金額を示して改めて和解を勧告。しかし双方が3月24日にこれを拒否して判決を迎えた。2月9日に裁判所が提示した金額は「2億円」だったという。

27日大阪地裁での判決は浄土宗の桂大瀛教学局長、小泉顕雄公室長らと共に、訴訟代理人の笠原慎一顧問弁護士ら弁護士3人が傍聴。言い渡し後判決文を持って京都の宗務庁に直行、同日開かれた事件対策委員会(鈴木研治委員長)に報告した。委員会では笠原弁護士らへ拍手が挙がった。

鈴木委員長は「安堵しました。一宗に負担をかけたくないと熱望していましたから。弁護士さんがやってくれたので嬉しく思っております」とコメント。

里見法雄宗務総長は「率直に言って想定以上の金額」とした上で「浄土宗の管理責任はあったが、しかしコムテックスは明らかに宗の公金であることを理解した上で取引した。浄土宗の過失はあってもコムテックスの犯罪性の方を高くとった」と判決を歓迎した。里見総長はコム社が控訴した場合、付帯控訴する方針も明かした。

2011/08/11 西山浄土宗次期管長 寺坂義継氏が就任

西山浄土宗の岩田文有管長(=総本山光明寺法主)が辞意を表明したことを受け、次期管長に寺坂義継氏(和歌山・檀林総持寺貫主)の就任が決まった。任期は7年。晋山式の日程は未定。総本山光明寺法主も兼ねる。


2期目となっていた岩田文有管長は宗祖法然上人800年御遠忌の成満後の5月に、体力的な問題から辞意を表明。これに伴い、7月21日に開かれた管長推戴委員会で、全会一致で寺坂氏の推戴を決定した。同26日には伊藤隆泰宗務総長が総持寺に赴いて報告、寺坂氏が管長就任を受諾した。

寺坂氏は昭和9年生まれ。和歌山県田辺市の超願寺住職、同・善徳寺住職に就任。宗会議員、宗会議長等を歴任し、平成10年からは檀林総持寺貫主を務めている。

2011/08/11 南相馬安養寺 遺骨 続々寺院に

14e4259fceaf42_L1.jpg福島第一原発から半径20~30㌔圏内でも、お盆の季節を迎えた。原発から約30㌔離れた南相馬市鹿島区の真言宗豊山派安養寺(遠藤賢明住職)は8日、盆施餓鬼法要と大震災物故者供養を厳修した。同寺では強制避難区域から檀家以外の遺骨約60柱を預かっており、仮設住宅などで暮らす遺族もお参りに訪れている。原発事故は「ふるさとで営む先祖供養」という当たり前の風景さえ奪ってしまった。

写真=20㌔圏内から預かった遺骨を供養する遠藤住職

2011/08/11 全日仏「葬儀」シンポ お布施明示対照的に

14e425d9e8dfa3_L1.jpg全日本仏教会(全日仏)は2日夕、東京・秋葉原のコンベンションセンターで、昨年に続く葬儀シンポジウムの第2弾となる「葬儀は誰のために行うのか?②―『お弔い』とは」を開催。葬儀をめぐって話題を提供している関係者を迎え、消費者からみた葬儀、お布施の明示化・料金化、僧侶の派遣といった今日の課題を議論しつつ、死者を悼む行為を問い直した。会場には350人が参集した。

約1年を経てのシンポで全日仏の戸松義晴事務総長は、昨年の議論を踏まえて普段お寺と関係のない人の葬儀をどうするのかということと、東日本大震災により家族を失った人たちが多数存在することから、「人をお送りすること、弔うということはどういうことなのかを考えたい」と二つの趣旨を説明した。

最初に日本消費者協会の佐伯美智子氏が消費者アンケートからみた葬儀事情を報告。年間90万件余の相談件数からみるとお墓や葬儀についての相談は1%以下と少なめだが、お墓については年約1500件、葬儀については600件余の相談がある。最近3年で葬儀を経験した人からのアンケートで「困ったこと」に回答したのは、「心付けやお布施の額」47・3%と金銭面が高かった。

一方で、葬儀やお墓で高額なお布施だったが、それが心の安定につながった事例を紹介し、「心の安定につながる布施の意味づけ」を仏教界が説くよう求めた。

イオンの葬儀担当者である広原章隆氏(イオンリテール株式会社)は、葬祭事業の参入から、具体的な取り組みまでを報告。ネットで明示していたお布施の目安をはずしたことについては、「一人ひとり、地域、宗派によって事情が異なることがわかり、コールセンターでお答えする方針に切り替えた」と個別対応を説明した。

現在はイオンの基準に合致した465社の特約店(葬儀社)があり、紹介対象寺院は600カ寺に上る。イオンとして「故人さまを敬う心」「ご遺族をいたわる心」「会葬者をもてなす心」という三つの心を提示し、「人と人とのつながり、絆を大切にするお葬式」を掲げていると紹介した。

僧侶派遣を事業の柱としている株式会社おぼうさんどっとこむ代表取締役の林数馬氏は天台宗僧侶で、7年前に起業。お寺は何のためにあるのかと問いかけながら、「仏教はお寺のためにあるのではない。お寺は仏教を広めるための施設」と自答。そして友人の父の葬儀で数百万円を請求された体験を話し、「私にとってその数字はまったく当たり前とは思えなかった」「医療、介護とお金を遣い果たした最後に高額な布施」と唇を噛んだ。こうした事態から、仏教はこれでいいのかと考えるようになったという。

同社の理念の一つに「明瞭で質の高い仏事サービスの提供」がある。これに即してお布施等の料金をすべて明確化。「布施には、法施・財施・無畏施があるが、金額を明示することは無畏施にあたる。畏れなくていいということだ」と説明した。

仏教情報センターの互井観章氏(日蓮宗)は、ここ10年の相談業務をもとに報告した。人生相談が高い割合を占める一方で、葬儀の相談件数は減少傾向にある。しかし直葬や生前葬、菩提寺を持たない人の相談は増えているとした。

お布施の「お気持ち」の金額を教えて欲しいという相談では、想定金額を尋ねるとほぼ同じような額を言い、「これで失礼に当たらないか」という懸念からの相談がほとんどだという。

引き続き戸松氏をコーディネーターに5人で討論。全体を通して林氏の言動に注目が集まった。林氏は経済の悪化にもかかわらず高額な布施を提示される現状を憂慮し、「金額を明示することで不安なくできますよと。目安であって、これでなければやりませんということではない」と説明。

葬儀の際の戒名・法名の必要性については、林氏は「あってもなくてもいいのではないか」と柔軟姿勢だが、互井氏は「仏式葬儀であるならば、必然的についてくるもの」と意見が分かれた。

写真=4人のパネラーと戸松事務総長が討論(2日)

2011/08/11 宗教サミット24周年 比叡山で祈りの集い

14e425f7fbed80_L1.jpg宗教・宗派を超えて宗教者がつどい共に平和への祈りを捧げる比叡山宗教サミット24周年「世界平和祈りの集い」(主催=天台宗・延暦寺)が4日、大津市の同寺一隅を照らす会館前広場で執り行われた。今年は約900人が集まり、東日本大震災犠牲者慰霊と被災地早期復興を願っての祈りも捧げた。

今年も晴天に恵まれ比叡山上にも強い日差しが照りつけた。開会にあたっては主催者を代表して天台宗の阿純孝宗務総長が挨拶。世界で「1年たりとも戦争のない年はありませんでした」とし、改めて「世界平和実現のため我々宗教者は祈りを永遠に続け積極的に行動していくことが必要」と強調した。

この後毎年この時期開かれる「天台青少年比叡山の集い」に参加した小中学生らが作った青と白の折鶴が地球にみたてた透明の球体に入れられ、比叡山幼稚園児がひまわりの鉢植えを運んで飾り世界平和を願うデモンストレーションを行った。

引き続き同寺一山住職による法要後半田孝淳座主が平和祈願文を朗読。スマトラ沖・四川・ハイチ・東日本と相次ぐ巨大地震に言及し、「自然災害はその規模を大きくしているように思えてなりません。これらは便利さ豊かさを過度に追い求めあるべき調和と抑制を怠った我々への警鐘・試練と思われてなりせん」と警鐘を鳴らした。

そして半田座主を中央に日本宗教連盟加盟の各宗教団体連合体の代表など合計11人が壇上に登り、平和の祈りを捧げたのに続き、東日本大震災犠牲者慰霊のために黙祷した。日本仏教界から今年は松長有慶高野山真言宗管長(総本山金剛峯寺座主)が登壇した。

続いてその松長管長が「平和を語る」と題して講演。核兵器廃絶を世界に発信することが原爆の被害を知る日本人の責務だと強調した他、国家間の紛争は資源争奪や民族対立が原因になっているとし、欲望を制御し異質なものを包摂する仏教の智慧の発信を説いた。地球環境危機にも触れ「天地万物に神仏が宿るという教えをともにもつ」天台・真言両宗が輪を広げて働きかけていかねばならないと訴えた。

この後ローマ教皇庁諸宗教対話評議会のジャン=ルイ・トーラン議長と世界仏教徒連盟のパン・ワナメティー会長のメッセージが読み上げられ、ユニセフへの募金贈呈式などが行われた後、武覚超延暦寺執行が閉会の挨拶。「本日の祈りの集いを新たな出発点として真の世界平和実現のため叡智を結集し、その実現に向かって精進努力していかなければいけません。心を込めた平和への祈りと行動を進めてまいろうではありませんか」と呼び掛けた。

写真=平和の祈りの後、東日本大震災犠牲者慰霊のために黙祷する半田座主(左から2人目)はじめ代表者ら。右端が日本仏教界代表の松長金剛峯寺座主

2011/08/25 東京電力補償金仮払い 宗教法人も対象に

東京電力は7月29日、福島第一・第二原子力発電所の事故による仮払補償金の支払いを、公益法人に対しても追加決定した。宗教法人も対象となる。3月12日から5月末日までの収支差額相当額の2分の1(上限250万円)を仮払いする。「仮払補償金請求書(避難等指示区域内の中小企業者用)」に必要事項を記入の上、必要書類を同封して返送する。

原子力損害賠償紛争審査会が策定した「原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針」に基づき、中小企業者の営業被害に対して仮払補償金を支払ったが、今回、公益法人の減収等の損害も対象とされた。

問い合わせは東電・福島原子力補償相談室(℡0120―926―404)。午前9時~午後9時。

2011/08/25 妙智會青年大会 〝心のチカラ育てよう〟

妙智會教団(宮本丈靖会長)は7日、東京・代々木の本部大講堂で青年大会を開催。全国から約3千人の青年が参加し、「“心”のチカラを育てよう」を主題に研さんして、開教61年目の教団史に新たな歴史を刻んだ。

知久秀佳・青年大会実行委員長の挨拶に続いて、昨年10月の開教60周年記念式典で上映されたビデオ「祈りと実行」を放映。青年部は会員子弟がほとんどだが、多岐にわたる活動を知らない部員もいて、ビデオを通じて国内外で平和のために行動する教団の取り組みを学んだ。そのあと妙智會青年部の紹介として、青年部の平和活動や身延修行団参などスライド写真がスクリーンに映し出された。

体験発表では5人の青年がフロアから話した。仕事のことから将来の夢、家族のことなど日頃の思いを口に出した。それぞれに会場から笑いや拍手が起こり、次第に熱を帯びていった。

続いて宮本けいし理事長を導師にご祈願を執行。理事長指導では「私たちすべての人間は等しく困難を乗り越える大きな『心の力』を持っています。人間としていのちを授かった時から、あらゆる困難を乗り越えられる力を授かっているのです。それを信じてください」と力説。東日本大震災で何度か被災地を見舞った理事長は、家族を失った人や、すべてを喪失した人たちが困難から立ち上がろうとしている姿勢に言及し、「心の力」を改めて説いた。

そして「大事なことは皆さんも『心の力』を助力する役目があるということ。先祖の『心の力』を高めるのも、皆さんの重要な役目です。絆のある人たち対して、先祖に対して、愛・協力・支援を惜しみなく注いでください。そうすると皆さんの『心の力』は輝き続けるのです」と訴え、青年を激励した。

午後の記念講演では『五体不満足』の著者である乙武洋匡さんが登場。著者やジャーナリストとしての活動、教員体験などを話した。

なお青年部は開教7年目の昭和32年(1957)5月に結成され、来年55周年を迎える。

2011/08/25 青年僧ら都内を唱題行脚

14e536cf2dfa4b_L1.jpg日蓮宗東京4管区宗務所は15日、東京都千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑での法要後に、青年僧を中心に総勢約100人で行う唱題行脚を行った。今年は東日本大震災犠牲者の新盆にあたるため、戦没者供養と平和祈念に加え、震災物故者への祈りも込めて、全長約27㎞のコースを東西南北4班に分かれて行脚した。

唱題行脚は、同墓苑近くの東郷公園からスタート。東コースが東京都慰霊堂(墨田区)まで約7㎞、西コースが幸國寺(新宿区)まで約4㎞、北コースが谷中瑞輪寺(台東区)までの約6㎞を踏破した。

東京南部管区が担当する南コースは、毎年池上本門寺まで(出発地点から約16㎞)行脚していたが、相次ぐ熱中症発生のニュースと記録的な暑さのため、五反田の本立寺(品川区)までの約10㎞に予定を変更して実施。その後は、車両で本門寺へと移動した。行脚には、青年僧のみならず、東西北部の宗務所長、さらに檀信徒も数多く参加した。

当日の暑さは、出発前から滝のような汗が噴き出すほどで、参加者には熱中症対策として塩分を取れるように小分けにした食塩を配布。緊急の事態に備えて救護車も行脚隊を追走した。

出発地点では、宗務院の古河良晧伝道部長が「炎天下の中での唱題行脚は大変ご苦労なこと。皆さまのご努力に敬意を表したい」と挨拶。「我々宗教者は理想を掲げて、核のない世界、平和で誰もが幸せに生活できる世界を目指していこう。理想を掲げるのが宗教者の立場。行脚の中で志を持ってお題目を唱えていただきたい」と激励した。

今年は、宗務院伝道部で戦没者供養、平和祈念、震災物故者慰霊の思いを込めた玄題旗を製作。各コースの青年僧が高く掲げ、真夏の唱題行脚を敢行した。

2011/09/01 仏教看護・ビハーラ学会 ビハーラ僧が放談

14e5f46582dfbe_L1.jpg仏教看護・ビハーラ学会は8月27・28日、京都市の華頂大学・短期大学で第7回年次大会「ともに聴き、ともに語るビハーラ」を開催した。初日は「放談 僧侶が語る 仏教看護とビハーラ」をテーマに、NPO活動、寺院住職、医師という立場の異なる僧侶3人が、日常の活動を報告。福祉や医療と宗教をめぐる多彩な活動から、仏教者の役割やビハーラ活動の可能性が示された。

初めにNPO法人ビハーラ21事務局長の大河内大博氏(大阪・浄土宗願生寺副住職)が活動を報告。大河内氏は「仏教、仏教者が社会の中でどうあるべきか」という問題意識の中でビハーラ活動を開始。長岡西病院ビハーラ病棟でのボランティアを経て、「ビハーラ21」を設立した。

NPOでは超宗派の僧侶や神職、医療関係者やヘルパーと共に、緩和ケア病棟への訪問や介護活動など、「病老死の苦しみ・悲しみに寄り添う心のケア」を目指す社会福祉事業を実践。「『生まれきてよかった』『この私に生まれて幸せ』と思える社会やあり方を目指すことがビハーラだと思う」と持論を展開した。また自身の活動を「宗教者として生きるうえでの修行の場」と位置付けた。

寺院住職の立場からは藤塚義誠氏(長野・日蓮宗大法寺住職/日蓮宗ビハーラネットワーク世話人)が発題。檀信徒の病院へのお見舞いや傾聴活動、特養ホームへの法要ボランティアなど幅広い活動を報告し、その取り組みは「広い意味で本物の仏教者を一人でも二人でも育てるという、教化・布教伝道につながっている」とした。

血縁・地縁が希薄になり、葬儀も簡略化された現状から、「グリーフケアが一層重要になっている」と指摘。「臨終の場に素晴らしい命のメッセージがある」と強調し、「振り返る人生を肯定し、人間として生まれてきた幸せを受入れ、大いなるものに自分のすべてを委ねていく。そういう心境にお題目という杖をもって誘うことができればとの思いで向き合っている」と僧侶の姿勢を示した。

僧侶で医師の月江教昭氏(浄土真宗本願寺僧侶/あそかビハーラクリニック医師)は緩和ケアの領域では「宗教的ケアやアプローチが強く求められている」と指摘。一方で「仏教の実践として、葬式仏教があげられる。それも必要だが、現代社会の実践としては弱い。だからこそビハーラを仏教の実践と位置付けたい」と提言した。「生きる」ことを支える医療と宗教が「相互関係」にあるとも指摘。終末期の現場で使われる「スピリチュアリティ」の概念を「拠り所」とし、「宗教者が関与すべき方向性は、新たな拠り所を構築することのお手伝い」と提起した。

司会の野田隆生氏(華頂短期大学専任講師)は、「ビハーラ活動には色々な可能性がある。多くの実践によって、看取りの文化の復興にもつながる。ひいては生老病死の見つめ方を現代的に考えるよすがになるのではないか」と期待した。

2011/09/01 豊山派 大師講が福島支援 ご詠歌法具一式贈る

真言宗豊山派・豊山流大師講(小倉秀清総本部長)では先月、大震災で被災してご詠歌の法具一式を失った講員を対象に「鈴鉦・ご詠歌教典・制定念珠・講員袈裟」セット12組を贈った。

贈られたのは福島県第2号宗務支所(原啓寿支所長)の宝蔵寺(百田尊道住職・南相馬市鹿島区)。講員が出仕する同寺の盆施餓鬼法要に間に合うよう届けられた。

法具一式の要望は、現時点では同寺以外に確認されなかった。しかし、被災して県内外に避難している他寺の講員もいるため、後に同様の要望がなされた場合には検討する方針だ。

同支所内で要望の取りまとめに尽力した歓喜寺(相馬市)の氏家拡譽住職(宗会議員)は、「〝お盆にご詠歌を唱えたい〟という被災地の思いに応えていただき、ありがたい」と話していた。

2011/09/01 宗懇と中国仏教協会共催 浅草寺で震災追悼法要

14e5f49872f3aa_L1.jpg中国仏教協会の傳印会長を団長とする訪日代表団一行は8月22日に関西空港到着後、奈良・京都の寺院等を訪問、親善交流を深めたのに続いて、29日には東京・浅草寺(清水谷孝尚貫首)を参拝。日中友好宗教者懇話会(宗懇、持田日宣会長)と共催で、「日中合同・東日本大震災物故者追悼法要」を執り行った。中国側は日本とゆかりのある寺院から寄せられた義援金100万元のうち、すでに拠出された21万元を除く79万元(約940万円)を全日本仏教会に寄託した。

中国仏教協会と国家宗教事務局などで構成される訪日代表団に日本留学生が加わり25人が同日午後、浅草寺に到着。宗懇スタッフに迎えられ、雷門前から歓迎会場となる五重塔まで仲見世を見学しながら進んだ。

会場では、浅草寺の守山雄順執事長が歓迎挨拶を述べ、震災追悼法要に感謝した。これに対して傳印会長は、訪日目的の一つがこの法要であるとし、「私たちは真心を込めて亡くなった人が往生されますように、また被災者が早く安楽な日が送られるように、そして故郷が早く復興されますよう、お祈りいたします。日本の被災者の痛みを、中国仏教協会も同じように痛みを感じています」と述べた。

宗懇側35人と訪日団が本堂に移動してから、最初に日本側の法要が清水谷貫首を導師に勤修。読経の中、日中参列者はまわし焼香で物故者を回向した。続いて、中国側が傳印会長を導師に執行。外陣では、中国式の法要に一般参拝者が足を止めて合掌する姿も見られた。

2011/09/08 ITRI久保恩師120年祭挙行 原点の「法座」を確認

14e688ab872235_L1.jpgITRI日本センター(浅川重美会長)は4日、横浜市のパシィフィコ横浜国立大ホールで、「恩師久保角太郎先生生誕120年記念祭」を開催。全国から3千人の会員が参集し、在家による先祖供養を唱導した久保恩師の原点をたどりつつ、ネット時代にあって直接相まみえる法座の意義を再認識した。

ステージには10本の幟(のぼり)が林立。久保角太郎恩師(1892~1944)が獅子吼した「大日本妙法一佛國土祖先崇拝在家の叫び」である。「皇國の大恩を思うものは来たれ」から始まり、国家・社会・家庭に至るまでのスローガンが並んだ。

式典では、青経巻読誦し、東日本大震災犠牲者に黙祷を捧げた。そして記念映像では生誕や関東大震災との遭遇、法華経研究と先祖供養、霊友会創立など久保恩師の源流と展開が紹介された。

主催者を代表してITRIの松本廣代表が挨拶。直接久保恩師に接する機会はなかったが、父である故松本武也師(霊友会副会長)からしばしば、「久保は、地位も財産も名誉もいらない。この一部経(法華経)だけがあればいい」と口にしていたことを披瀝した。

そして久保恩師の教えである朝晩にお経をあげることと、法座について言及。とりわけ法座は、釈尊が初転法輪という法座を開き、2500年後に久保恩師が蘇らせたと解説した。「法座は自分の心を勇気づけるもの」と位置づけ、ネット上のツイッターやフェイスブックではなく、現実に体験し喜怒哀楽といった感情に触れあう法座の意義を強調した。

体験発表や実感発表後、浅川会長がまとめの挨拶を行った。まず生誕120年祭と式典を迎えられたことに感謝した。式典前日、600人余りが分かれて開かれた法座を観察し、「皆さん方の目が輝いていた。話している熱意に感激した」と共感。「法座はすばらしい。魂の交歓の場」とも述べ、久保恩師の原点にある法座の実践を繰り返し説いた。

2011/09/08 高野山医療フォーラム 被災地の医療と宗教を討論

14e688b7ceafbc_L1.jpg「いま、問われる命と心の絆」をテーマとする第8回「21世紀高野山医療フォーラム―生と死が手を結ぶには」(主催=同フォーラム・高野山大学)が8月27日、江東区の東京ビッグサイトで開催され、約700人が参加した。被災地での医療と宗教のあり方が話し合われた。

高野山足湯隊として宮城県南三陸町で活動する僧侶の辻雅榮氏は、相手の足を丁寧に洗う足湯を通じた傾聴ボランティアについて報告。「体が温まれば心も温まる。それから困っていることを聞く。必要に応じて各支援の専門家につなぐ」と説明し、ある被災女性から「家もないけど、あんたに足洗ってもらって心の戸口がぱあっと開いた思いがする」と言われたことが活動の原動力になっていると語った。

宮城県で在宅緩和ケアを行う医師の岡部健氏は「医療だけでは闇(死)へ下りていく道標が見えない。在宅死の現場に医療者しかいないのはおかしい」と強調し、医療と宗教の壁を取り払ったチーム医療の必要性に言及。「特定の宗教ではなく超宗派であれば」可能との認識を示した。

大震災では「発見された時には、すでに亡くなっている人が多かった。医療の限界を痛感させられた」と吐露し、遺族ケアにあたる現地の宗教者の活動を説明。宗教儀礼が最愛の人を失った被災者の気持ちを落ち着かせている事実を指摘し、患者を津波から守りながら自身は犠牲になった看護師を追想して「宗教性を持ったいのち」のあり方を述べた。

シンポジウム「危機の時代に問われる日本人の価値観、死生観」では、宗教学者の山折哲雄氏が「我々は死者との絆を回復しない限り、心のトラウマから立ち直ることは難しいのではないか」と提起。岡部氏はこれを受け、「東北の人たちは魂の行き場を知っている。亡くなった人の魂は、自分たちの非常に近いところにいる感覚を持っている」と述べた。

宗教者災害支援連絡会代表で東京大学教授の島薗進氏は、これからの被災地支援と震災前に盛んに議論されていた「無縁社会」にふれ、「伝統的な絆が壊れた仮設住宅は都市部と似ている。〝孤立〟が懸念される」と憂慮。ノンフィクション作家でシンポの司会の柳田邦男氏は、「仏教者が社会に打って出ていく姿が見られるようになり、その役割が重要になっている」と期待した。

藤田光寛・高野山大学学長は、医療分野や被災地支援での宗教者の役割を総括した上で、宗派を超えて活動できる人材の育成に意欲を見せた。

2011/09/08 浄土宗 宗門校が合同音楽法要 「いのちの理由」合唱

14e689be0868aa_L1.jpg法然上人800年大遠忌を記念して浄土宗宗立宗門学校による合同音楽法要が1日、京都市東山区の総本山知恩院御影堂であった。名古屋から西の23校の生徒・学生ら1400人が集って勤修し法然共生イメージソング「いのちの理由」を合唱した他、この曲を作った歌手のさだまさしさんがそれを含めた4曲を奉納した。

法要は浄土宗宗立宗門学校長会(会長=袖山栄眞東海学園大学学長)が主催。上宮高、華頂女子中高、京都文教高、東山中などの生徒らが御影堂外陣を埋める中、伊藤唯眞浄土門主・知恩院門跡導師のもと、東海学園大学・佛教大学など学生・生徒68人でつくる合唱団が宗歌「月かげ」や「み仏のふところに」「南無阿弥陀仏」など仏教聖歌を歌って勤めた。

またこの中で佛大の稲岡弘輝さんが代表して法然上人讃仰文を読み上げ「法然上人の御徳を称え報恩感謝の誠を捧げると共に真実に生き真理を探究する決意を新たに日々精進することをお誓い申し上げます」と誓った。

伊藤門主は垂示で「皆さん方が法然上人のみ教えを自己の生涯の中できっと思い出される時が来ると思います。それを生活の道標として進まれる時がもう来ているのではないかと思います。法然上人の念仏による生活を修めて立派な青年、成人になっていただきたい」と激励した。

引き続いて袖山会長が挨拶。伊藤門主の入堂や生徒らの献灯の際、風が吹き堂内が涼しくなったことに触れ「いかにも御前様のお徳が“極楽の余り風”になってこの蒸れ蒸れした大殿に爽やかな風が吹き通った」と述べると共に、生徒らに対して「法然上人への恩返しのつもりで皆様の爽やかな声をお聞かせ願いたい」と話した。浄土宗の里見法雄宗務総長は「仏教讃歌を通して法然上人の教え、そして心の洗濯に励んでいただきますことを」と挨拶した。その後生徒ら全員で「いのちの理由」を合唱した。

この後さだまさしさんが歌を奉納。ヒット曲の「案山子」「バースデー」「強い夢は叶う」と東日本大震災の被災地で一番喜ばれた歌だという「いのちの理由」をトークを交えながら歌った。

同様の宗立宗門学校音楽法要は6月13日にも東日本の18校約900人が集い東京の大本山増上寺で執り行われた。

2011/09/08 9.11から10年に寄せて 報復に挫折感、復興に連帯感

14e781eef575a3_L1.jpg9・11米国同時多発テロから10年。以後、テロリストを匿っているとされるアフガニスタンが報復攻撃を受けた。紛争の連鎖はイラク戦争にも及んだ。9・11に遭遇した前ニューヨーク(NY)本願寺住職の中垣顕實氏に寄稿いただいた。


報じられない平和集会
超宗教の活動が盛んに


9・11同時多発テロ事件からちょうど10年を迎えました。アメリカに25年、ニューヨークには16年ほど住んでおりますが、9・11は私にとってもやはり大きな出来事でありました。その経験は今回の私の東日本大震災の対応にも少なからぬ影響を及ぼしました。

10年前、当時のことを少し話しておきます。私はNY本願寺の住職(昨年9月末に退任)であり、同時にNY仏教連盟の会長を務めておりました。テロ事件を最初に知ったときは、戦争が始まったと思ったものでした。「何か起こったのか」また「これらどうなるのか」というところから始まりました。

非常事態の時に自分は何をすべきか、さらに宗教家として仏教僧侶として何をすべきなのか、という問いが出てきました。テロが起こったその日に、コロンビア大学で集会をしたいということで米国人の大学生がお寺を訪ねてきたのでした。その夕方にコロンビア大学で、これから何が起こるかわからない状況に宗教家たちが集まり、祈念と励ましの集会を行いました。大学の聖堂は一杯の学生が詰めかけ、聖堂の外も多くの学生達で溢れていました。混乱の中にある時こそ、精神の拠り所、心のケアを提供していくことが宗教家の使命であると感じた瞬間でした。


非暴力の教え


怨みをもって怨みに報いることは解決にならない、報復ではなく、慈悲の教えが大切であることを仏教徒として強調しました。平和な時に平和を語ることはたやすいことですが、戦争になろうという時に平和の道を説くことがこれほど勇気のいることとは思いませんでした。キング牧師が黒人解放運動を展開した時のように、非暴力は米国の歴史上大切な教えでもあり、多くのニューヨーカーたちも賛同し、共に報復反対の平和運動にも関わりました。9・11後は毎日のように様々な教会や学校、パークなどで平和集会が行われました。

ただしそのことはほとんどメディアに出ることはありませんでした。米国は報復主義というように日本では伝わっていますが、少なくとも私の前で起こっていた現実とは違います。いわゆる、メディア(?)•コントロールです。当時の詳しいことは私が書いた『マンハッタン坊主つれづれ日記』(現代書館)の「9・11の章」を読んで頂きたく思います。そういえば、最近ではビンラディンが殺害された時の米国市民の「狂喜」が報道されましたが、私の周りにいる米国人たちはそのことを遺憾に思っている人がほとんどでした。

私自身もNY仏教連盟会長としてもいろいろな追悼などの行事を企画しました。仏教徒らしい形の追悼の仕方があるであろうと思い、02年のお盆に始めたのが今年で10回目を迎えるマンハッタン、ハドソン川でのWTC追悼灯ろう流しです。

宗教間対話が

日本人や仏教徒だけの集まりだけでなく、超宗教(インターフェイス)の祈念なども入れ、宗派を超え、人種を超え、ニューヨーカーたちも参加できるようにし、同時に仏教の特徴も活かしたものがその灯ろう流しです。今では千人以上が集まる行事になりました。

9・11以降、ニュースでは反イスラムのようなファンダメンタリスト的な報道が目立ちますが、NYではそれまで以上に宗派、宗教を超えて協力することが盛んになってきています。グラウンドゼロのモスク建設の時も様々な宗教者がその建設を支援しました。私もインターフェイス、宗教間の対話に積極的に取り組んでおり、現在NY神学校で宗教間対話の博士課程を取得しています。

この10年は私にとっては大きな試練であったように思います。報復が始まった時の挫折感、また多くの命が失われることの悲しみ、同時に復興に向かう時の連帯感、さらに宗教間における協力など本当にいろいろなことがあった10年でした。10年経った今、仏教徒として、また念仏者として、一僧侶として、内外ともに命の尊厳、誤解や偏見を減らす道を探り、平和の推進に専念していきたいと思いを新たにしています。

なかがき・けんじつ/1961年大阪生まれ。龍谷大学卒。85年に海外開教使として西本願寺より北米開教区に赴任。ニューヨーク本願寺前住職。ニューヨーク仏教連盟会長、ニューヨーク日系人会理事等を歴任。著書に『ニューヨーク坊主、インドを歩く』『マンハッタン坊主、つれづれ日記』など。


写真=02年からお盆に行われているハドソン川でのWTC追悼灯ろう流し(中垣顕實氏提供)

2011/09/15 悲母観音像建立し被災地へ

14e71bd6f7c740_L1.jpg日蓮宗宗門校の身延山大学(浜島典彦学長)は、東日本大震災の罹災落命者慰霊のために、被災3県に悲母観音菩薩像を建立する。観音像が無事制作されることを願う「のみ入れ式」が11日、山梨県身延町の総本山身延山久遠寺本堂で同寺の井上瑞雄総務(同大理事長)を大導師に厳修された。

観音像建立は、同大の東洋文化研究所仏像制作修復室の柳本伊佐雄教授が発案。同大ではこれまでに、浜島学長をはじめ教員や学生が永照寺ボランティアグループ・マイトレーヤ(吉田永正代表・同大客員教授)と共に、被災地で炊き出しなどのボランティアを実施してきた。現地の悲惨な現状を目の当たりにしたことで、「自分たちに何ができるか」を自問し、不安や恐れ、悲しみを取り除くとされる悲母観音菩薩像を被災地に寄進することを総意で発願した。

「のみ入れ式」では、観音像制作の円成とともに被災地の復興と震災犠牲者の冥福を祈った。井上総務は「観音像が震災殉難者の慰霊と復興のシンボルになることを祈っています」と挨拶し、仏像制作を開始する柳本教授らを激励。使用される木材に井上総務、浜島学長、岩手県宗務所の吉家本浄副長(法泉寺住職)、吉田客員教授、柳本教授がのみ入れを行った。

式後の記者会見では、柳本教授が「吉田教授と共に被災地に3回赴いた。赤子を胸に抱きながら亡くなった母親がいることなどを知った」と語り、「被災者の方は悲しみを取り除かなくては、前に進めない。少しでも役に立てれば」と仏像制作の意図を説明した。

浜島学長も「仏像彫刻で目に見える形で被災者や諸精霊を慰めることができれば」と観音像建立の後押しを表明した。

吉田客員教授は、被災地ごとの像の足元にその土地の犠牲者の数だけ水晶の玉を供える案があることを明かし、犠牲者の慰霊と復興の願いを込めたシンボルとして、震災の記憶が風化するのを防ぐ役割も観音像に込めていることを語った。

「悲母観音菩薩像」は、高さ約3メートル、蓮華台座1メートル。伝統的な寄せ木造り工法で製作され、彩色は極彩色。年末には組み立つ予定だという。寄進先は、岩手県遠野市の法華寺(阿部是秀住職)を候補に建立地を調整中。1周忌となる平成24年3月11日に立上式、3回忌の平成25年に開眼慰霊法要を行う予定。宮城県と福島県は調整中だ。

被災3県に奉安が終わるまでには約10年の歳月が必要で、公益性のある事業の一つとして長期的に取り組むこととなる。同大では、多くの人々の思いが観音像に思いが込められるように、工房の開放や被災地で観音像の内側に墨入れ等をしてもらう構想も明らかにした。

寄進を受ける岩手県の代表として出席した吉家副長は、「被災地でお地蔵さまや観音さまが被災者に安らぎを与えている。奥にあるのではなく、皆が手を合わせて祈る対象となることを願っています」と挨拶。同郷の詩人・宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を引用し、「皆さまの思いが被災地で西に東に仏像となって出向いてくれるということ。ありがたい」と感謝を述べた。

2011/09/15 浄土宗宗議会 課金減免案を可決

浄土宗宗議会(中村康雅議長)は会期末の9日、前年度一般・特別会計決算の他、東日本大震災で被災した寺院復興支援のため通常課金の減免を含む今年度一般会計補正予算案、特別課金の減免を含む大遠忌事業補正予算案、被災寺院向けの寺院護持料・貸付金総額を修正した災害救援復興資金補正予算案など補正案4件を可決した。が、大遠忌事業予算のうち社会福祉事業費の一部528万円を被災地での活動に充てる議案は否決した。この他、提出された宗規議案4件のうち3件を可決。1件は審議途中で内局が撤回した。

否決された、大遠忌事業予算のうち社会福祉事業費の一部を被災地での活動に充てる議案は、岩手・宮城・福島の被災3県で社会福祉事業を推進するためのもので、すでに5月の臨宗で同じ趣旨で2500万円の使用が議決されており、今回残りの年度の追加支出として提案された。

しかし決算及び財政特別委員会(川中光教委員長)で「当局の説明が不十分で補正の必要性に疑義が生じ、賛同できかねる委員が多数を占め」(同委員会報告)否決。本会議も僅差で否決された。

一方、撤回したのは賦課金審議会規程制定案。付託された法規特別委員会(豊岡鐐尓委員長)で「次世代の新しい賦課金制度の全体構想を模索、検討した『寺院等級に関する制度検討委員会』の提言に基づく提案がなされるべきであるとの意見が多数を占め」(同委員会報告)たのを受け、当局は同審議会を先に立ちあげ審査手続きなどを具体的に検討して門葉の理解をえつつ進める方針だったが、委員会の考えを尊重した。

5千万円貸付
無利息は修正

この他、災害復興互助規程改正案で、第23条に定められた復興資金等の貸付に関して、無利子貸付3千万円を超えて5千万円を貸し付ける際、現行では利息を徴するとなっているところ、当局は復興支援の趣旨から無利息で貸し付けられるよう提案したが、同委員会で「第27条2項に定める資金の増殖を図ることに抵触するのではないか」(同委員会報告)との意見が出て、結局「財源確保の手立てが講じられていない現状においては、利息は現行通り」(同)とこの点は現行通り利息を取ることに修正された。

2011/09/15 霊感弁連全国集会 韓国の異端教団が日本に

カルト宗教や霊感商法の被害者救済に取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(山口広事務局長)は9日、東京・四谷の主婦会館プラザエフで第54回全国集会を開催した。韓国人牧師で日本キリスト教異端問題研究所所長の張清益氏が、韓国から日本に渡って活動を展開しつつあるキリスト教系異端教団について説明。「今は小さな組織でも数年後には手が付けられないほど大きくなってしまう」と注意を喚起した。約180人が参加した。

張氏は、「韓国系異端の悪霊論について」講演。キリスト教徒にならずに死亡した人が「鬼神=悪霊」となり様々な災いを及ぼすため、「お金を費やしてなだめなければいけない」などと脅す教義を解説した。特に悪霊論は先祖供養との関わりを強調するのが特徴で、韓国の先祖を敬う儒教的伝統を逆手に取り、聖書を神秘的・呪術的に解釈する手法などが横行しているという。代表例として金箕東の「ベレアアカデミー運動」とその系列を挙げた。

街頭での勧誘活動に力を入れる従来のカルト・異端教団とは異なり、既成教会の信者になりすまして数年後に教会ごと乗っ取る「新天地」のやり口についても解説。しかしキリスト教徒が少なく裕福な教会も多くはない日本では、「統一教会と同じように一般の若者を狙う」と述べ、警戒を呼びかけた。

カルト信者を脱会させる際、国民の3分の1がキリスト教徒とも言われる韓国の場合、もともと個人に正しい聖書理解があるため、カルトの誤りに気付きやすいという。しかし日本人の場合、「聖書との出会いがないまま統一教会に入ってしまう」ことが多く、より困難な状況になっていると分析した。

「エクレシア会」の和賀真也牧師のもとで統一教会を脱会した男性は、教団の特徴を「独善性・排他性・幼児性」と指摘。「いのちの家」の川崎経子牧師を頼って姉を脱会させた女性は、退職までして姉と向き合った日々を振り返った。川崎牧師は「統一教会が気付く前に辞めさせることができた」とスピードの重要性も指摘。「どうやって脱会していいか、わからない信者も多い」ことから、脱会活動のさらなる周知の必要性を示唆した。

2011/09/29 新宗連 被災地復興を祈念 石巻市日和山で式典営む

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東日本大震災から半年を迎えたのを受け、新日本宗教団体連合会(新宗連、岡野聖法理事長)は16日午後、宮城県石巻市の日和山公園で、「東日本大震災犠牲者慰霊並びに復興祈念祭」を営み、被災地復興への決意を新たにした。祈年祭には新日本宗教青年会連盟(保積志弘委員長)をはじめ18教団100人余が参列した。

会場の日和山公園は石巻市内と石巻湾を一望する場所で、津波発生後に市民たちが避難場所として向かったところだ。そこに「東日本大震災犠牲者之霊」と揮毫した標柱と祭壇が設けられた。

参列者を代表し、岡野理事長と深田充啓名誉理事長が献花。その後、岡野理事長が「犠牲者慰霊並びに復興記念の言葉」を述べた。その中で、地震・津波・火災と連続した惨禍に言及しつつ、「家族や友人とも引き離されてしまった皆さま方の苦しみと悲しみは、どんなにか深かったことでしょうか」と強い思いを馳せた。

そして震災以降の新宗連の取り組みを報告したうえで、「私たちは今回の大震災の惨劇を忘れることなく、これからも皆さま方の御霊の平安と遺族の方々の安心、被災各地の早期復興を祈り続け、支援の輪を広げてまいります」「皆さま方がこよなく愛された故郷がかつての姿を取り戻すとともに、町々に人々の働く喜びと笑顔が広がり、明るい声が響きわたる日が一日も早く訪れるよう、日々祈り続けてまいります」と復興への決意を表明した。

参列した18教団ごとの礼拝が地震発生時刻の午後2時46分をはさんで行われ、発生時刻には、全員で黙祷を捧げた。

また13日から福島・宮城・岩手3県の各被災地域11カ所で慰霊供養を営んできた新宗連青年会の東日本大震災犠牲者慰霊使節団のメンバーが合流、追悼祈願文を奏上した。保積委員長は当日午前まで行われた供養の概要を報告し、「新宗連と共に、私たちの祈りと実行があれば、必ずや被災地は復興すると確信します」と述べた。

2011/09/29 さよなら原発5万人集会 僧侶の参加少なく

14e819c918d762_L1.jpg脱原発を求めて作家の大江健三郎さんや澤地久枝さんらが呼びかけた「さよなら原発5万人集会」が19日、東京・明治公園で行われた。主催者発表では6万人。脱原発集会では最大規模となった。

市民団体や平和団体、労組、学生組織、一般市民らで会場は埋め尽くされたが、宗教者、とりわけ僧侶は、日本山妙法寺と共に参加した日蓮宗僧侶、原子力行政を問い直す宗教者の会のメンバーなどにとどまった。日本山の玄題旗、両脇に「欣求浄土」「無核無兵」と記された念仏の幟が翻った。

そして市民団体にまじって、菅笠に改良衣姿の禅僧が一人。「南無釈迦牟尼仏」と揮毫された手作り幟を手にして参加した。朝早く、千葉から来たという禅僧は「ブログで参加を呼びかけましたが、一人だけでした」と言い、デモ行進の隊列に加わった。

またある参加者は「なぜお坊さんの参加は少ないの。感心ないの」と僧侶に問いかけていた。僧侶側も休日にはお寺の行事が立て込んでいることなどを説明していた。

2011/09/29 本願寺派 阿弥陀仏と親鸞描く 染色作家が寄贈 仏画タペストリー

14e819f8aade3b_L1.jpg親鸞聖人750回大遠忌を記念して、阿弥陀仏と親鸞聖人を描き特別な技法で染められた仏画タペストリー2点が浄土真宗本願寺派へ染色作家・奥田祐斎さんから寄贈され、9月の大遠忌法要が始まった9日から京都市下京区の同派本山前、伝道院で展示されている。

タペストリーは縦3㍍横1㍍の大きさ。阿弥陀仏は「北斗の拳」の作画で知られる漫画家・原哲夫(象山)さん、親鸞聖人の方は画家の川内麻嗣さんが描いた。全体の染色は奥田さんが「夢黄櫨染」(ゆめこうろぞめ)という方法で担当した。

「夢黄櫨染」は布を裏側から光を当てると表から赤く見える独特の染色法で、平安初期の嵯峨天皇の時に開発されたものを奥田さんが現代によみがえらせた。タペストリーには光が当てられ変色の様子が分かるよう展示されている。

展示は来年1月16日まで(遠忌法要期間外の月・祝日除く)。この他にも100年前、50年前の大遠忌の門前町の風景を写した写真展、風景など映像でリラックスできるスペース、京都の工芸品展示などがある。

2011/10/06 「宗教者九条の和」原発テーマに第7回シンポ 風評は社会的差別助長

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「宗教者九条の和」は1日、埼玉県熊谷市の文化センターで「原発事故と平和憲法」をテーマに第7回シンポジウムと平和巡礼・イン・埼玉を開催した。基調講演者の土山秀夫・元長崎大学学長は原発事故後の風評被害に潜む人権侵害を指摘するとともに、原発依存からの脱却について話した。また原子力発電所即時停止や憲法九条の意義を盛り込んだアピール文を全員で採択し、終了後には熊谷市内を平和巡礼した。宗教者や信徒ら270人が参加した。

土山氏は医学者(病理学)だが、被爆者の立場から核兵器を中心とした安全保障や憲法問題に積極的に取り組んでいる。

講演ではまず、福島原発以後の状況と66年前の原爆投下後が類似していることを示唆。「〇〇産の野菜は放射能まみれで危険だ」とか、最近では福島で製作された花火玉が使われなかった。原爆投下後には被爆者の破談や離婚、差別が横行した。「心ない風評被害が起こっている。放射線について正確な情報が伝えられいない」と現状を憂慮した。他方、原爆では新憲法下とはいえ占領下のためプレスコードによる情報管理がサンフランシスコ平和条約(1951年)まで続いた。

土山氏は「風評被害による社会的差別で、現地の人たちをいかに追い込んでいるかを考えなければならない」と主張し、正確な情報に基づいた冷静な判断を求めた。同時に平和主義・国民主権・基本的人権の尊重という日本国憲法の3本柱に言及したうえで、特に基本的人権の意義を力説し、「心ない風評をたてた人たちが、もう少し憲法の理念に触れていたら、対応が違っていたかも知れない」と顔を曇らせた。

また核アレルギーを持っていた被爆国の日本が、原子力開発に取り組んでいく背景に米国の主導があったことや、そこには政・財・官・学・マスコミの連携があることを詳細に報告した。

ドイツが原発から脱却し2022年までに自然エネルギーに転換する政策を表明していることにも言及し、「国家にやろうという意志があり、民間の知恵を借りたいという雅量の広ささえあれば、官民あげて(日本も)達成できる」と脱原発の可能性を提示した。

シンポでは、立正大学教授の清水海隆氏(日蓮宗教師)を司会に3氏が発表。小久保彰田氏(天台宗常光院住職)は人間の内なる平和を説くと共に、地元熊谷市が8月14日深夜から未明にかけて日本最後の空襲に遭ったことを紹介。戦争の悲惨さを話した。原子力行政を問い直す宗教者の会に参画する内藤新吾氏(ルーテル教会牧師)は中部電力浜岡原発をめぐる被曝労働の実態と原子力平和利用の問題点などを指摘。谷大二氏(カトリックさいたま教区司教)は今夏の節電からカトリックが説く「清貧」を示し、モノやお金に支配されない生き方の必要性を訴えた。

この後、アピール文が読み上げられ、全員が拍手で採択。引き続き、100人以上が市内を平和巡礼。原発事故の収束や震災犠牲者への祈りを捧げると共に、九条護持を訴えながら行進した。

アピール文の要旨は以下の通り。

▽日本政府への要望 原発停止と代替自然エネルギーの開発、除線および事故の収束、原発輸出停止。▽日本人への訴え 九条は「世界の宝」であり、これを護り広めることが被爆国日本の使命である。▽世界の人々に呼びかけ 日本国憲法九条は人類全体の平和と安寧を実現する理想の規範である。この精神を各国で採用し、地球から戦争をなくそう。

2011/10/06 豊山派宗会 福島被災寺院の宗費を免除

真言宗豊山派(川田聖戍宗務総長)の第127次宗会通常会(鈴木常英議長)が9月27・28両日、東京・文京区大塚の宗務所に招集され、全4議案を可決・承認した。津波・原発事故で被災した福島県下寺院の今年度の宗費賦課金を免除。各被災寺院に対して年内中に災害復興支援金と義援金を交付する予定であることが発表された。

川田総長は施政方針演説で、大津波と福島第一原発事故で被災した福島県第2号宗務支所下全21カ寺と同中部宗務支所下1カ寺に対して、平成23年度の宗費賦課金・共済会会費を免除することを発表。被災寺院と被災檀信徒の復興支援のために海外も含む宗内外から寄せられた義援金の総額が、3億504万8039円(1741件・9月14日現在)に達したと報告した。

これとは別に福祉基金で勧募した救援金が、総額492万3796円(268件・同)であることも話した。

宗務所常設の災害対策室(室長=川田総長)では、被災寺院から提出された「被害調査票」の確認作業が進行中。同室が行った現地視察の見分もふまえた上で災害復興支援金と義援金を按分し、年内中に交付する予定であると明かした。

災害復興支援金は、平成19年秋の第117次宗会で宗費賦課金報奨金を廃止し、その財源4500万円を「災害対策引当資産」として毎年積み立てているもので、現在約1億7千万円。

按分の基準は平成19年の新潟県中越沖地震時を参考にし、自治体による家屋の被害調査の4区分「全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊」をふまえつつ「被害調査票」「罹災証明書」等の申告をもとに判断する。

しかし東日本大震災では、この4区分に当てはまらない事例や東北3県以外でも損壊寺院の数が非常に多いため、柔軟に対応する方針だ。

一方、義援金は、津波で多くの檀信徒が犠牲になった寺院や原発事故で避難生活を余儀なくされている住職・寺族・檀信徒を抱えた寺院に重点的に交付される。

平成22年度決算額は、当期収入が9億4041万5224円(対予算比101・68%)、当期支出が9億4356万7266円(対予算比92・06%)。

平成23年度補正予算額は9億2329万円(当初予算額8億9121万円)。新たに「東日本大震災災害対策室関係費」として1601万円を計上。宗会臨時会開催予定などに伴い、「宗会費」を当初予算額より155万円増額し1264万円に補正した。

津波・原発事故被災寺院への復興支援策について、高梨良興議員(山形・法音寺)が代表質問。支援策を要望する関連質問も続き、氏家拡譽議員(福島・歓喜寺)は被災地の現状を訴える演説を行った

2011/10/06 浄土宗総本山知恩院 大遠忌法要が開白

14e8d64fd4e829_L1.jpg浄土宗総本山知恩院(伊藤唯眞門跡=浄土門主)の元祖法然上人800年大遠忌法要が2日午後、京都市東山区の同院で始まった。御影堂での開白法要では、伊藤門跡が中、安井昭雄出雲教区東林寺住職が左、井原善昭山口教区瑞相寺住職が右の導師を務め、水冠に七条袈裟の僧侶約130人も出仕して、念仏による万人平等救済の教えを説いた法然上人に報恩感謝の誠を捧げた。

大遠忌法要は当初、御忌大会を含め3月27日から4月25日まで予定されていたが、直前の3月11日東日本大震災が発生して延期していた。

開白にあたっては法然上人が修行した比叡山青龍寺で採った法灯を僧侶が念仏行脚で運び、御影堂に献灯して執行。

法要では法然上人御影が安置されている厨子を開扉し献華・献香・献茶等が行われた後、左導師の安井東林寺住職が「吾等迷倒の凡愚、今當に生死の苦海を脱して、安養の彼岸に登ることを得るは、一に大師上人が慈訓の賜物にあらずや(略)毎日各座の法要を修し以て聊か広大慈恩の萬一に酬い奉らんとす」と表白を読み上げた。

阿弥陀経読経、散華等に続き、水冠の僧侶らで堂内を練り歩く笏念仏が行われた後は右導師の井原瑞相寺住職が「祈るらくは念仏の一行とこしなえに遐代を益し梵風遠く吹いて五悪の迷雲たちまち散じ法水雨ぎて三毒の猛焔ことごとく滅び」と念願する宣疏を読み上げた。十念も授けられた。

法要後、古経堂で左右の導師を務めた安井・井原両住職の寺院檀信徒らを前に伊藤門跡が垂示。募財への協力に感謝の言葉を述べた他「一向に念仏すべしという念仏の力が私どもに生きる力を与えてくださっております。また念仏は生きている間はその功徳が積もるし、お迎えがある時はお浄土の方から仏様のお迎えを得て問題なくお引き取りくださいます」とし、念仏の相続を願った。

御影堂と共に本廟でも同時刻に北川一有知恩院執事長が導師を務めて法要が奉修された。

初日は合わせて2500人が参拝。大遠忌法要は25日まで勤められ、期間中、様々な行事が境内各所で営まれる。

2011/10/13 日蓮宗同心会 漁船4隻を岩手の漁協へ

14e96bd863870c_L1.jpg震災で被災した岩手県の漁協組合に対して、漁船を贈呈する復興支援を日蓮宗宗政会派の同心会(小林順光会長)が実施している。三陸やまだ漁業協同組合の山田町大沢倉庫で21日、漁船の贈呈式が開かれた。

同会OBの川名義顕氏(法華寺住職)が被災地での支援活動の際、被災地の漁港で漁船が95%も失われている惨状を知り、漁船贈呈事業を発案。現地の漁師からも「生活復興のために漁船が必要です。なんとかなりませんか」との要望を受け、小林会長が「地域の復興なくして寺院の復興なし」との方針を打ち出し、会派として支援に取り組んでいる。

同会による漁船贈呈は2回目。1回目は7月に大船渡市漁協へ2隻の漁船を贈呈し、今回は三陸やまだ漁協に漁船4隻と船外機2機を贈呈した。

同会では、全国寺院のネットワークを駆使し、各地の漁協に不要な漁船を募集するなど協力を要請。集められた漁船の中から、現地の漁法や地域性に合った漁船を選定し、ペンキを塗り直す等の補修を施して漁に出られる状態で贈呈している。

今回の支援では、伊豆下田漁協が漁船の提供に協力。9月20日に伊豆で出発式を行い、翌日贈呈式を受け入れ先の漁港倉庫で開いた。贈呈式は、漁協関係者約30人、地元の僧侶5人、同会の宗会議員9人が参集。物故者の慰霊、復興祈願、漁業作業の無事や豊漁を祈念する法要が小林会長を導師に厳修された。

漁船の提供を受けた三陸やまだ漁協組合の生駒利治組合長は、「漁協はまだコップに灰がかかったような状態です。ステップ・ジャンプにはまだまだ遠く、ようやく湾内のがれき撤去が終了し、これから新たな施設を設置する段階です」と厳しい現状を報告した。

その上で支援に対して「アワビ漁が進めば、ステップの段階に行ける。日蓮宗の方々、また、地元寺院のお上人には大変感謝しています。このご恩を生かして、漁業関係者一同、努力していきます」と感謝を述べた。

当日はNHKをはじめ、地元マスコミ、漁船提供元の静岡県の地元紙など約10社が取材。支援は大きな反響を呼んだ。同会では、今後も漁船贈呈事業を通して、自立的な生活復興に念頭においた支援を継続していく方針だ。

(写真=贈呈された漁船4隻。漁法にあった船が選定されている)

2011/10/13 本願寺派都市開教 埼玉に布教所開設

14e96bf4a8f686_L1.jpg埼玉県比企郡吉見町に浄土真宗本願寺派の新寺院「吉見布教所淨泉寺」(福井学誠専従員=住職)が開設され、5日に開所式が営まれた。首都圏都市開教対策本部の山内教嶺本部長、埼玉組の藤井壽雄組長(清浄寺住職)をはじめ親族・法類が集い福井住職と坊守・桂さんの新たな門出を祝った。

同派は首都圏に同派寺院が少ない現状から、都市開教に取り組んでいる。吉見町の借家に開設した淨泉寺は同派埼玉組内の35カ寺目の寺院。本尊・阿弥陀如来が祀られる8畳の仏間で正信偈が唱えられ、小さなお寺が産声をあげた。

山内本部長は「如来さまのお慈悲をいただき、仲間が集まり励まして下さることで、芽が出て根が張っていく」と激励。藤井組長も「お念仏の花を咲かせてほしい」と歓迎した。

福井住職は関東で布教に専心した親鸞聖人の生涯に思いを馳せ、「救世観音のお気持ちを一切群生に聞かしめる。このお気持ちを750回の大遠忌の年にいただき、開所させてもらった」と、喜びと強い決意を示した。

福井住職は富山県淨泉寺に生まれ、宗務所職員として奉職するなかで都市開教を志した。吉身町は富山県からの離郷門信徒の一人が吉見町の土地寄付を申し出たことで縁が結ばれた。「今は支援者の方を信徒さんにしたい」と福井住職。大きな信頼を寄せる坊守(妻)の桂さんは在家出身で「戸惑いだらけです」と語る一方、ヨガのインストラクターとして既に近隣でヨガ教室も開講。「色々な方と一緒に大きくなっていきたい」

すでに寺報を2回発行。今月から「はじめての歎異抄講座」もスタートする。「ご信心をとってもらいたい」。念願の寺院での二人三脚が始まった。

2011/10/13 曹洞宗国際シンポ 海外に専門僧堂を

14e96c1e5999b8_L1.jpg曹洞宗国際センター(藤田一照所長)は4日、東京・芝の東京グランドホテルで、海外4総監を迎えて国際シンポジウム「進一歩 未来への道をひらく曹洞禅」を開催した。1世紀を超える曹洞禅国際布教の歴史に学びつつ、将来を展望した。現地の言語に適応した人材養成や、「身近に修行でき資格具備できる施設、専門僧堂の設置が急務」(采川道昭・南アメリカ総監)という具体的な要望も寄せられた。会場には満員となる210人が詰めかけた。

最初に『がんばれ仏教』の著者で文化人類学者の上田紀行氏(東京工業大学准教授)が基調講演。グローバル化と仏教、そこから日本仏教は何を学んだらいいのか、そして東日本大震災と仏教という3つの観点から話した。

パネル討論では、司会の藤田所長が国際布教の歴史と海外僧侶数などを報告しながら、今後の課題等について質問。駒形宗彦(ハワイ国際布教総監)、ルメー大岳(北アメリカ国際布教総監)、采川道昭(南アメリカ国際布教総監)、フォルザーニ慈相(ヨーロッパ国際布教総監)4氏がこれに応答した。

ハワイの場合、「乳母車から棺桶まで」(駒形総監)と誕生・結婚・葬儀、病院訪問、私立小学校の運営など、僧侶があらゆる活動に関わっている。その上で駒形氏は「これら僧侶やお寺の役割を考えると、いかにして優秀な布教師を探し、現地で経験を積ませ育てるか。真剣に考えていかなければならない」と人材育成を訴えた。

北アメリカでは、寺院建立に尽力した高齢日系人は日本人と同じ感覚を寺院に持っているが、英語世代の3世、4世はそれほどでもなく、「先祖崇拝への関心が薄い」(ルメー総監)。一方で、日本文化に関心をもつアメリカ人が集まるようになった。「先祖崇拝に重きを置く人、禅修行を求める人、文化的コミュニティーとして集まる人。このような人たちとの調和をはかることが非常に重要で、国際布教師が抱える課題でもある」とした。

南アメリカは檀信徒や僧侶が増加傾向にあるという。非日系僧侶は曹洞宗を名乗らず、意識的に登録を避けている人たちもいる。「それらの人に登録をすすめ、資格を具備してもらう必要がある」。しかし、時間や距離、費用等の面から訪日修行が困難なのが現実で、采川総監は「この問題を解決するには、身近に修行し、資格具備できる施設が必要だ。すなわち専門僧堂の設置が急務である」と海外僧堂の設置を要望した。

ヨーロッパのフォルザーニ総監は、「正伝の仏法」継承において、「血脈としてつながっている師匠と弟子の関係」が大きな役割を果たしていると言及。しかし文化的類似性をもつ中国と日本ではなく、キリスト教文化を背景とするヨーロッパでは、信徒と神との関係が絶対的であるごとく「師弟関係が間違った理解をされることがある」。あたかも神の代理人のように扱われたりするため「こうした危険性を回避するために、文化や精神性の違いを十分に学ぶ必要がある」と主張した。

【曹洞宗国際布教の現況】明治36年(1903)、ハワイや南米の移民を対象に始まる。現在はハワイ(ホノルル)・北アメリカ(ロサンゼルス)・南アメリカ(ブラジル)、ヨーロッパ(フランス)に国際布教総監部を置く。外国籍の僧侶は600人以上。そのうち一定の資格を有している国際布教師はハワイ6人、北アメリカ57人、南アメリカ9人、ヨーロッパ29人。このほか2人がオーストラリア。

平成21年11月、外国籍で初めてフォルザーニ慈相氏(イタリア)がヨーロッパ総監に就任。翌22年4月にはルメー大岳氏(アメリカ)が北アメリカ総監に就いた。

2011/10/20 新宗連結成60周年集会「いのち尊ぶ世界」誓う

14e9fbcab0cca6_L1.jpg戦後の日本の宗教協力をリードしてきた新日本宗教団体連合会(新宗連、岡野聖法理事長)は17日、東京・渋谷公会堂で結成60周年記念集会を開いた。「60年の絆―新たなる誓いを」をテーマに、先達への感謝と東日本大震災犠牲者追悼のための祈りを捧げた。岡野理事長は「『すべてのいのちを尊ぶ世界』の実現にむけて努力していく」と宣言した。また公益財団化について来年4月1日に移行することも発表された。

【新宗連】昭和26年〈1951〉10月17日結成。初代理事長は、宗教弾圧を経験したパーフェクトリバティー(PL)教団の御木徳近。以後、庭野日敬(立正佼成会)田澤康三郎(松緑神道大和山)深田充啓(円応教)庭野日鑛(立正佼成会)と続き、岡野聖法理事長(解脱会)は6代目。新宗教に対しては誤解や偏見があったため、信教の自由と政教分離を当初から唱えていた。この精神は今日に継承され、「信教の自由を守ろう」「宗教協力を進めよう」「世界の平和に貢献しよう」として掲げられている。昭和28年に財団法人となり、来年4月には公益財団に移行する。現在は70教団が加盟。

2011/10/20 日蓮宗 携帯メールで安否確認

14e9fc222806d5_L1.jpg日蓮宗災害対策支部連絡会議が5日、東京・大田区の宗務院で開催された。各管区の宗務所長や防災担当者が集い、メールを使った安否確認システムの使用法や災害対策実施要項が示された。

災害対策本部の渡辺照敏本部長(宗務総長)は挨拶で、義援金が目標を超える勢いで寄せられていることを報告し、引き続き被災地支援への協力を呼びかけた。

各支部から「被災地への救援活動や被災した場合にどう動きべきか」との問い合わせが多く寄せられたことから、現在でも支援活動行い、被害が甚大であった地域と宗内のボランティアとの間をコーディネートしている西山文生氏(遠野市智恩寺)が講演。震災直後からの活動を紹介した。

震災直後は、停電により携帯電話、テレビが使えず、ラジオが唯一の情報源であったことを明かし、公衆電話にアンテナ電源を持つPHSや非常時のための衛星電話が有効であることを指摘。

さらに今後の課題として、各支部から支援を出す場合や受ける場合に備え、コーディネーターや防災担当者となる人材を各支部に最低2人以上置くことを提案した。

続いて対策本部から各支部との緊急連絡態勢について説明がなされた。支部長を兼務する宗務所長の多くが5月に改選したため、昨年から稼働している携帯電話のメールを利用した災害時緊急通報安否確認システムの使用方法を講習した。

東日本大震災では、発生直後に電話やFAXと併せ、同システムで各支部にメールを一斉送信した結果、当日に6割強の返信があった。被害が甚大であった被災地域でも数日中に拠点との連絡が取ることができた。

さらに今後は、本部と支部との双方向のやり取りにも活かし、メディアに報道されていない段階であっても甚大な被害が出た場合に、本部へ通報する等の活用を展望している。

防災アドバイザーの山村武彦氏(防災システム研究所所長)が監修した宗門の災害対策実施要綱も配布。山本氏から初動においての行動基準や組織構成について説明があった。

災害対策要綱では、各支部の備蓄資機材について目安も提示。福祉共済課の橋本浩久課長は最低3日間の食料を備蓄することを推奨した。対策本部では、今回の災害対策要綱を叩き台に、さらに具体的な行動指針を検討していく方針だ。

2011/10/20 真言宗智山派総本山智積院 寺田管長が晋山

14e9fc30c2086d_L1.jpg真言宗智山派の寺田信秀管長・総本山智積院化主第70世の晋山傳燈奉告法要が11日、京都市東山区の総本山智積院で営まれた。戦後、教育界に身を置き、千葉県の中学校教頭や小学校校長などを歴任した指導力や、宗内では安房第2教区長(4期)として、長きにわたって布教教化を推進してきた人徳に期待の声が寄せられた。

大玄関から輿に乗って境内をお練りし金堂に入った寺田管長(91)は、宝前で傳燈奉告文を奉読。豊臣秀吉の紀州・根来攻めによる兵火を避けて京で学山智山を興した智積院中興第1世・玄宥僧正の生涯に言及し、艱難辛苦を乗り越えて「済世利人」に生きた遺徳を追慕した。

その上で、東日本大震災の被災者に思いを馳せ、「これを救済せずして何の仏法たるや」と強調。宗門をあげて復興に取り組むことを誓った。

式典では、真言宗各派総大本山会・真言宗長者である南揚道・総本山仁和寺門跡が祝辞。まず、新義真言の法門を開いた興教大師が少年時代に仁和寺で修行していた史実にふれ、智積院への親近感を披瀝した。

そして大震災で智山派寺院と檀信徒が被災したことにお見舞いの言葉を述べ、「どうか猊下には、困難の最中にある多くの被災者の皆様方の心の拠り所・安寧の場になっていただきますよう」と懇請した。

続いて、小野塚幾澄・真言宗豊山派管長が祝辞。根来山の新義の法脈につながる智豊両山が兄弟宗派である歴史をふまえ、寺田管長の就任を「我が豊山派にとりましても、まことに喜ばしい」と祝福した。

既成の価値観が変革されていく現今の社会情勢にもふれ、「伝統仏教教団にとっても、緊急不可欠の重要な課題を提起しております」と指摘。宗内外で人材育成に尽力してきた寺田管長の功績に敬意を表した上で、その教導に期待感を示した。

智山派教区代表会の飯島俊勝議長は寺田管長の指導のもと、教区代表会として「真言宗智山派、総本山智積院の護持発展のために努力精進」すると力強く祝辞。さらに智積院総代の一色吉雄氏、寺田管長の自坊・總持院(千葉県館山市)総代の後藤右左司氏が祝辞を述べた。

岡部快圓宗務総長が謝辞。日本中が震災復興に向かう今、「檀信徒の救いのため、宗門の繁栄と総本山護持興隆のために新しい化主猊下のご提撕を賜りながら、日々精進してまいる所存であります」と語った。

2011/10/27 全仏婦新理事長 抱負は「社会に貢献」

14ea91b01d62d2_L1.jpg全日本仏教婦人連盟(大谷貴代子会長/末廣久美理事長)は18日、都内ホテルで第58回大会を開催した。東日本大震災の復興や印度日本寺へ支援金を贈ったほか、末廣新理事長が社会貢献活動への意欲を語った。来賓、会員合わせて約120人が集まった。

初めに全日本仏教尼僧法団名誉会長の鷹司誓玉・浄土宗大本山善光寺大本願を大導師に団員出仕のもと法要を営み、東日本大震災犠牲者並びに全仏婦会員の物故者を追善供養した。鷹司氏は垂辞で震災からの復興を念じ、「平和世界を建立し、少しずつでも尽くしたい。み教えを共にする全仏婦の明日への目標としていただき、共に前進させていただきましょう」と呼びかけた。

来賓挨拶では、戸松義晴・全日本仏教会事務総長、里見法雄・浄土宗宗務総長、桶屋良祐・念法眞教教務総長が全仏婦の福祉事業への尽力に敬意を評し、更なる活躍に期待を寄せた。

次いで写経運動で集まった写経1500巻が国際仏教興隆協会の正本乗光事務総長に手渡された。写経1巻につき千円の浄財が送られ、インドの日本寺に併設される無料医療施設「光明施療院」の医療費に充てられる。

第2部では末廣新理事長が挨拶。島田喜久子前理事長の功労を称えたうえで、「これまでの活動をよりしっかりとしたものにしていくことが務め」と抱負。震災を受け、「仏教婦人のネットワークがあれは、より社会に貢献できるのではないかとしみじみ感じた」と披瀝し、「私たち自身も研修を重ねて重ねて、社会のために貢献したい」と強い決意を示した。

懇談の席では恒例となった「心の募金」が集められ、約16万円が寄せられた。心の募金と浄土宗傳通院の婦人会からの寄付金10万円が、震災の復興活動を行う被災地NGO恊働センターの村井雅清代表に手渡された。また全仏婦会員の中村つぢ子さん(90)が、冬を迎える被災地のために編んだ毛糸の靴下200足も贈られた。

閉会の挨拶では林惠智子事務局長が青少年のおかれた孤独な現状に言及したうえで「人の心の中に響く声が必要。宗教界は新たな局面に対峙しているが、相手の身になって考えることが要求されている」と提起。その上で「心ひとつに活動に励み、充実させていきたい」と意欲を語り、締めくくった。

2011/10/27 MCUアユタヤ校舎 浸水

14ea91cc3435a5_L1.jpg日ごとに厳しい状況が伝えられるタイの大洪水。古都アユタヤ周辺にある、日本企業が集中する工業団地一帯が冠水したが、アユタヤの仏教寺院や遺跡も水に浸かった状態が続いている。また国連ウェーサク祝典の会場となったマハチュラコン仏教大学(MCU)アユタヤキャンパスも洪水のまっただ中にある。

今月14日まで同キャンパスを訪れていた国連ウェーサク祝典実行委員会スタッフの豊田信雄氏によると、その頃はまだ同キャンパスには水が来ていないため、王室から依頼を受けて、一千名規模の避難者を受け入れる準備を進めていた。しかし16日頃からキャンパスも浸水し始め、資料や経典類など全てを階上の図書館に移動させた。

「現在、アユタヤキャンパスは首まで水に浸かる状態だとのことです。ボートがないと行き来できません。学長を含め役員は泊りこみで仕事をしており、職員は大部分が避難しています」と最近の状況を豊田氏は説明する。一部の近隣住民は同キャンパスで避難生活を送っている。

24日現在、バンコク市内へも水が流入し、市内を流れるチャオプラヤ川は土地よりもすでに水位は高くなっている。今月末には大潮となるため、川の水が逆流して危険も指摘されている。

バンコクのクロントイ地区に現地事務所を置くシャンティ国際ボランティア会(SVA)も緊急時の避難者を受け入れられる態勢を敷いている。同事務所も浸水する危険性があるため1階図書館の書籍などは階上に移動。またアユタヤでは今月20日から緊急救援パックの配布など支援を始めている。

2011/10/27 醍醐寺103世 仲田順和座主が晋山

14ea91e8f70a76_L1.jpg昨年10月28日に就任した仲田順和・真言宗醍醐派総本山醍醐寺第103世座主(同派管長)の晋山式が22日、京都市伏見区の同寺で盛大に執り行われた。宗内僧侶・檀信徒はじめ真言宗各山・修験本山の山主など宗教界来賓を含め約800人が随喜・参列する中、仲田座主は社会や人々の心の和平に努めることを誓った。

この日、仲田座主らは三宝院の唐門から仁王門を通って金堂へお練り。金堂で仲田座主導師のもと法要を営んだ。麻生文雄前座主、開祖が醍醐寺で出家得度して縁の深い真如苑の伊藤真聰苑主も参列する中、仲田座主は表白で本尊薬師如来に第103世の法灯継承を奉告した上、「衆生ト共ンジテ国家・社会・人心ノ和平ニ努メンコトヲ誓ウ」と述べた。

祝辞には真言宗長者の南揚道仁和寺門跡が立ち、仲田座主の宗内外での数々の活動歴を挙げ「縦横無尽のご活躍をされ、まさしく宗門のオーソリティー」と称えた。「仲田猊下には今まで培われてきた広い国際的感覚および国際的認識・学識・叡智をいかんなくご活用願い、今日の宗門を取り巻く数々の困難な諸問題に柔軟に対処し、醍醐内にとどまらず広く宗門の護持発展にご尽力されますよう願ってやみません」とこれからの活躍も期待した。

仲田座主は、様々な師僧・先生らとの出会いなど僧侶として成長した歩みを述べて感謝し、「これからは醍醐寺の座主として法灯を継承していくと同時に、やはりその醍醐寺にございます文化財は僧侶によって磨かれ、僧侶によって守れてきたものです。その心を大切に活かされてこそ文化財ということを念頭に置いて今後また皆様のお力をいただきながら、広く国内のみならず海外にも日本の文化・伝統を広げてまいりたく、心を念じているものであります」と抱負を話した。
この後霊宝館を会場にして祝賀会を開いた。

仲田座主は昭和9年(1934)4月生まれ、77歳。自坊は東京都品川区の別格本山品川寺。大正大仏教学科梵文学卒、同大学院博士課程退学。醍醐寺東京宗務出張所長、同寺執行(醍醐派総務部長)を経て昭和60年12月に同寺執行長(同派宗務総長)に就任し、25年その職を務めた。宗外では全日本仏教青年会理事長、日本テレビ「宗教の時間」制作委員、世界宗教者倫理会議議題委員長、真言宗京都学園理事・評議委員、日本女子大学講師などを務めて活躍した。

麻生前座主の辞任に伴い平成22年10月26日、座主推薦委員会が開かれて推戴され、同月28日に第103世座主・大本山三宝院第52世門跡・醍醐派第11代管長に就任した。昨年11月7日の入山式を経て晋山式は当初4月23日の予定だったが3月11日の東日本大震災発生で延期していた。

2011/11/03 曹洞宗が原発に対し見解発表 是非に踏み込まず

曹洞宗(佐々木孝一宗務総長)は1日、「原子力発電に対する曹洞宗の見解について」を発表。東日本大震災による原発事故の深刻さに言及する一方で、即時の原発停止は問題が多いと両論を併記しつつ、「現時点で原子力発電の是非について述べることは非常に難しいのではないでしょうか」と明言を避けている。

見解では、日本のエネルギー自給率とCO2削減が期待されていた原子力政策が、「今回の事故で絶対的な安全はないということが明らかになり、ひとたび事故を起こすとその被害、影響は計り知れないものであることがわかりました」と指摘。しかし、「現状において即時に全ての原子力発電を停止し、再生可能エネルギーに転換することは不可能」とし、具体的な課題を列記した上で「解決しなければならない問題は多岐にわたる」としている。

また地震大国であることや地球環境を考慮すると、「再生エネルギーに移行」が望ましいと理念を提示しつつも、改めて「是非について述べることは難しい」という立場を明示。

そして「私たちは、発電の背景には多くの問題や課題があり、それに携わるたくさんの人びとがいるということを認識しながら、一人ひとりが自分の問題として向きあうことが大切だと考えます。日々の生活の中で使う電気を無駄に消費していないか点検することもその一つです」と身近なところからの取り組みを呼びかけている。

2011/11/03 チベット僧焼身自殺 有志が弾圧を非難

14eb0f2968c8c1_L1.jpg中国政府の僧院弾圧に抗議するためにチベットで続発している焼身自殺を憂慮し、宗派を超えてチベットの平和を祈念し行動する僧侶・在家の会(スーパーサンガ、代表=林秀穎・曹洞宗常林寺住職)は10月27日、東京・有楽町の外国人特派員記者クラブで緊急記者会見を開催。中国政府によるチベット僧院弾圧を避難する声明を発表した。

声明文は、中国政府による僧侶や住民への監視と弾圧によって、国際社会に訴える術をもたないチベット人が焼身自殺という抗議行動を起こしていることを指摘。特に東チベットのアムド、ンガバ地区のチベット人と同地区にあるキルティ僧院への継続的弾圧に対して非難を強めている。

同会によれば、3月16日のンガバの青年僧侶の焼身自殺を機に弾圧が強化され、以後少なくとも10月20日までに9人が焼身自殺での抗議を実行したという。

現地では、多数の人々が拘束される状況が続き、一般市民の生活も自由が著しく制限されており、「特に僧院は食料も制限された過酷な状況下で、ダライ・ラマ法王を批判する〝愛国再教育〟が行われている」と批判。

声明は、①自殺を図った僧侶の状況の公表、拘束者の釈放②ンガバの人々への弾圧を即刻停止すること③キルティ僧院から武装警察・軍隊を直ちに撤退させること④チベット人の信仰や僧侶の伝統的な修行に一切干渉しないこと⑤チベット全土に中立的な国際メディアの取材や国際人権団体の調査を認めること等を中国政府に強く要求している。

会見には、四方僧伽といった超宗派僧侶団体の代表の他、懸野直樹・野宮神社宮司が参加。懸野宮司は「今のチベットの問題は、仏教だけの問題ではない。すべての宗教にとって大事なことだ」とし、宗教を超えて訴える必要があることを強調した。

チベットからは、チベット僧のラマ・ツェワン氏と在日チベット人会のロサン・イシ代表が参席。「チベット問題をもっと世界中の人に知ってもらいたい」と強く訴えた。

同会は記者団との質疑応答で、「訴えの方法としては、非常に衝撃的な方法ではないか」との質問に「チベットの人は法王の写真を持つのも元々皆命がけ。すべてに命がけでやっている」「それだけ厳しい制限を受けているということ」と説明。敬虔な仏教徒であり、非暴力の教えを守るチベット人はテロに訴えることなく、中国政府や国際社会に訴える手段として、止むなく焼身自殺で抗議しているとの認識を示した。

同会では、今後、他団体へも取り組みを働きかける他、国会議員にもチベット問題を訴えていく方針だ。

2011/11/03 後楽園でお寺プロレス 雫あき(僧侶修行中)が女王に挑む

14eb0f5e6bba2c_L1.jpg埼玉県越谷市の浄土宗安國寺(町田唯真住職)が推進している社会貢献プロジェクト「お寺プロレス」。学生プロレスのメンバーらと共に2年前に立ち上げ、地域の夏祭りで興行。乳児院への募金を呼びかけ、全額を寄付するなどの活動をしている。町田住職の娘でアマチュアレスリング全日本準優勝の実績を持つ千明さん(僧侶修行中・リングネーム雫あき)が代表を務めている。

その「雫あき」に、人気プロレス団体スマッシュが参戦オファー。10月28日、格闘技の聖地・東京・水道橋の後楽園ホールで初代ディーバ王者・華名選手と対戦した。

試合は、王者をあと一歩のところまで追い込むも逆転負け。しかし王者に、「うわさ通り、やるやんけ!ありがとう」と言わしめたほど。雫選手も「これからも頑張ります。華名さん、ありがとう」と爽やかに応じた。

毎月観戦に訪れている男性は、「雫選手を初めて観たが、レスリング技術が相当凄い!」と絶賛。お寺プロレスの慈善活動についても、「仏教は崇高なものだとは思っていたが、普段の生活で接点がなかった。大好きなプロレスを通して、お寺を身近に感じることができた」と興味津々だった。

グッズ販売スペースでは、Tシャツなどを販売。雫選手とお寺プロレスメンバーらが、「収益は全額、乳児院に寄付します!」と協力を呼びかけた。試合後、販売スペースに現れた雫選手のもとにファンが殺到。ポートレートを中心にグッズが飛ぶように売れていた。

2011/11/10 東洋文庫ミュージアム開設 国宝や経典も展示

14ebb7d9148fce_L1.jpg世界有数の東洋学図書館である(財)東洋文庫(文京区本駒込2―28―21)はこの10月20日、館内に展示スペースを設け「東洋文庫ミュージアム」を開設した。現在、記念展示「時空をこえる本の旅」を開催中。来年2月26日まで。入場料は大人880円。

目玉は国宝『史記』(1145年書写。12月28日以降は国宝『文選集注』に展示替え)だが、日本初の印刷物として名高い奈良時代の「百万塔陀羅尼」や、江戸時代の釈尊伝「しゃかの本地」、鎌倉時代の「梵網経盧舎那仏説菩薩心地戒品」、チベット版「妙法蓮華経」等、貴重な仏教展示もある。その他、「ラーマーヤナ」といったインド文献や、キリスト教、明治維新期資料など。辛亥革命100周年を記念した企画展示もある。一部を除いて写真撮影可能(フラッシュ不可)。

東洋文庫ではチベットやモンゴルの仏教資料も収集しており、今後はこれらも展示していく予定。藤代和卓学芸員は「仏教関係者にもぜひ来館してほしい」と期待を見せる。問い合わせはミュージアム(電話03―3942―0280)。

(写真=日本初の印刷物として名高い「百万塔陀羅尼」)

2011/11/10 大本山永平寺が原発シンポ いのちと生き方を問う

14ebb804aaf9df_L1.jpg曹洞宗大本山永平寺の「禅を学ぶ会」は2日、福井県永平寺町緑の村ふれあいセンターでシンポジウム「いのちを慈しむ―原発を選ばないという生き方」を開催した。原発事故で被災した福島県飯舘村の酪農家・長谷川健一氏が原発災害の深刻な現状を報告。福井県小浜市で脱原発に携わってきた中嶌哲演氏(真言宗御室派明通寺住職)は一人ひとりの「生き方」を問うた。

高速増殖炉「もんじゅ」や新型転換炉「ふげん」(廃炉準備中)など原発15基が立地する福井県下でのシンポジウムに大きな注目が集まり、県内外から300人が参加した。西田正法布教部長は冒頭で、シンポ開催によって「脱原発」の印象が先行したことについて、「いのちについて見つめる中で、原子力発電について皆さんがどのように考えるか。こちらが結論を導くものではない。いのちや生き方を考えてほしい」と開催趣旨を述べた。

長谷川氏は、酪農を休止せざるを得ない状況に置かれ、涙を流して牛を処分した村民たちの姿や、「原発さえなければ」と自死した友人、「結婚なんてできない。怖くて子どもも産めない」と話す女子高生らの声を伝えた。原発災害がもたらした過酷な現況に悲憤を滲ませながら、「子どもたちが差別を受けない社会づくり」「風化させない」ことを強く求めた。

中嶌氏は40年間で47万7千人に上る被曝労働者、巨額の交付金漬けによる立地県の原発依存の構造、発電によって生成される放射性廃棄物の処理問題など原発行政の問題を列挙。広島の被爆者との出会いから原子力問題に「開眼させられた」自身の体験と重ねながら、「ご自分の頭とハートでよく考えてほしい」と呼びかけた。

さらに原発の「必要神話」の淵源にある「便利で豊かな現代文明」「滅公奉私」の再考を求めたうえで、「少欲知足」の生き方を提起した。

(写真=原発が抱える諸問題が提起されたシンポ)

2011/11/10 ダライ・ラマ14世が被災地入り 被災者と直接触れ合い激励

14ebb8334b3d45_L1.jpg東日本大震災の復興祈願のため、来日中のチベット最高指導者・ダライ・ラマ14世は5日午前、宮城県石巻市の浄土宗西光寺(樋口隆信住職)を訪れ、石巻仏教会主催の慰霊法要に臨席。「一人の人間として一緒に悲しみや痛みを分かち合いたい」と被災者の思いに寄り添った。午後は仙台市若林区の日蓮宗本山孝勝寺(谷川日清貫首)で復興祈願法要と講演(仙台仏教会主催)。両寺には約2500人が訪れ、復興に寄せた力強いメッセージに耳を傾けた。

西光寺では、地元の幼稚園児や被災者が合掌で歓待。ダライ・ラマ14世は、被災した子どもたちの悲しみに寄り添おうと名前を尋ね、額を付き合わせて抱きしめるなど、被災者と直接触れ合う機会を持った。法要は地元超宗派僧侶による般若心経の読経後、随行したチベット僧と共にチベット語の真言を唱えて、復興を祈願した。

約1千人の被災者を前に、「本当に苦しんでいる皆さま方のことを知った途端、是非皆さま方を慰めたいという気持ちが起こりました。日本は仏教国であり、同じ仏教徒としても強い気持ちが湧き起こりました」と挨拶。

堂内での挨拶の後、「直接、皆さまのお顔を見ながらお話がしたい」と猊座を降りて本堂の入り口に移動。自身が亡命した際に困難を乗り越えた経験や戦後の広島、長崎の復興に触れ、「日本の皆さまは、勇気や勤勉さ、お互いを助け合う協調性など、素晴らしい心の力を持っている。美しい街が必ず復興できる」と立ったまま、被災者を励まし続けた。

会場の西光寺は日和山を背にした場所にあり、津波の時には、膨大な量のがれきが押し寄せた。伽藍の一部は損壊、本堂には汚泥が残り、スコップでかき出せるほどだった。現在、がれきはすっかりなくなった。片づけられた境内に設けられた特別席で、市民らは法要の様子を見守った。

ダライ・ラマ14世は仙台に移動し、孝勝寺での復興祈願法要に続いて「今、逆境を乗り越えるために必要なこと」と題して講演。約1500人の聴衆から時間の許す限り、質問を受け付け、それに答えた。

講演では、仏教における業(カルマ)や輪廻について解説。悲しみや苦しみを少しずつ緩和する方法として、「実体のある自分が実体のある苦しみを味あわなければならないと思うことで、実体以上の苦しみを受けてしまう」と負の感情に囚われすぎないよう「空」の教えを説明した。

質疑応答では、「突然悲しみが湧いてしまうことがある。どうすればよいか」との質問に、「困難な道でも、悟りのための手段とすることができる」「起きてしまったことを活用する方向へ、苦しみの捉え方を変えて苦しみの本質を考える」と教示。「苦しみを忘れるのではなく、その〝あり様〟を変えること」が大切だと語りかけた。

(写真=被災した市民と握手し励ますダライ・ラマ14世)

2011/11/17 レポート もんじゅ・ふげん 命名に僧侶は関わったのか?

今月2日、曹洞宗大本山永平寺の「禅を学ぶ会」がシンポジウム「いのちを慈しむ―原発を選ばない生き方」を開いた。マスコミの関心も高く、各紙で報じられた。

シンポ開会にあたり、松原徹心監院が高速増殖炉「もんじゅ」と新型転換炉「ふげん」の命名について永平寺との関わりを述べた。

〈発案者である動力炉・核燃料開発事業団(当時)の清成迪氏(故人)が「文殊の智慧、普賢の慈悲をいただき、理想的な原子炉ができるよう願った」とし、「時の永平寺禅師様に伝えたところ『それはいいことだ』と仰られたと聞いている」と説明した。〉(仏教タイムス前号)

一方、東京新聞には次のようにある(11月3日付け)〈永平寺によると、動燃(当時)の理事長が同寺を訪れ、禅師に「菩薩様の知恵と慈悲にあやかろうと命名した」と報告。禅師は「それは良い」と答えたという。「寺がお墨付きを与えたのでは」との記者の質問に松原実行委員長は「そうはとらえていない」と否定。その上で「永平寺は原子力に関しては何もしてこなかった」と認め、「原発は地球上の生命の理論には合わないと知らされた」と繰り返した〉

命名に永平寺の禅師が関係したようなやりとりだが、もんじゅとふげんの命名に僧侶が直接関係したような形跡はない。昭和45年(1970)6月6日付け仏教タイムス1面に「原子力と仏教」「『文殊』『普賢』と命名」という見出しで、命名者である故清成迪氏(当時、動燃事業団副理事長)が由来を寄稿している。清成氏自身、原子力の恐ろしさをよく認識した上で命名していることや、仏教に高い関心を持っていることを窺わせる内容となっている。また「命名にあたっては」という記述があり、昭和45年時点で“お墨付き”を得ている様子はない。
当時の寄稿を掲載する。

◇ ◇ ◇
原子力というものは、人類が発見した画期的なものであるが、その用い方によっては恐るべき災害をもたらす。命名に当っては、このことを念頭においた。

まず高速増殖実験炉の「常陽」は、その設置場所の茨城県=常陸の国を江戸時代「常陽」とよんでおり、大洗はまさしくその名にふさわしい、わが国最東端の明るく雄大な地形にある。またここには常陽明治記念館があって、明治天皇の尊像をはじめ、維新回天の大業をなしとげた志士たちの遺墨が多数展示されている。ちなみに、その思想の中心となった水戸学は決して偏狭な国粋主義ではなく、物に対して心を中心とした人間としての学問であって、その意味からも、ここに「常陽」の名を冠することによって、科学万能の風潮に対する大いなる警鐘としたいと思う。

次に高速増殖原型炉「もんじゅ(文殊)」と新型転換原型炉「ふげん(普賢)」命名の趣旨は、釈迦如来を中心に文殊菩薩は左の脇士で〝知慧〟の象徴であり、獅子に乗っておられる。また普賢菩薩は同じく右の脇士で〝慈悲〟を象徴し、六牙の象に乗っておられるが、この獅子も象も、ひとたび怒れば百獣を慴伏させ、万木を蹂りんする恐ろしいエネルギーを秘めている。これを知慧と慈悲とをもってコントロールしているのが、文殊と普賢の両菩薩である。

いまや人間は、月から火星へと大宇宙の彼方まで探求を進めて、一方では原子核から素粒子へと、微塵際の解明をなしとげようとしている。この自然科学の驚異的な発展に対し、これと車の両輪ともいうべき人間教学、すなわち科学と技術に真の目的ないしは価値を与える人間の心の学問は、すでに二千年以上も前の釈迦・基督・孔子以来とくに見るべき進歩はなく、あまつさえ自然科学の偉容に眩惑されて、現代人は人間としての心の面を見失っているようにさえ思われる。もし、このようなアンバランスがこのまま推移するならば、ついには人類の破滅をきたすおそれなしとしない。

コントロールされない学問は、それが自然科学であれ、他のいかなる学問であっても、かえって人間にとって不幸の源泉となるものであり、ことに原子力エネルギーにいたっては、それがどのような結果をもたらすかは、いまさら説明の要もないであろう。

このような人間の心と物、すなわち科学との調和両立を念じて、このたびの新型動力炉の命名となったわけである。

◇ ◇ ◇
科学者として、原子力の恐ろしさを認識するがゆえの謙虚さが窺える。だが40年余を経て清成氏の危惧したごとく原子力エネルギーの不幸が現実のものとなった。また文脈からみても氏が信念をもって命名したもので、僧侶から聞いた雰囲気はない。結びにある「調和」が問われている。

2011/11/17 智山保護司連盟 50周年式典を挙行

14ec4b70493b63_L1.jpg真言宗智山派・智山保護司連盟(小林聖仁会長)の創立50周年記念式典が10日、東京・愛宕の別院真福寺で開かれ、宗内外から51人が参加した。小林会長(長野南部・甲立寺)は式辞で、犯罪・非行からの立ち直りと社会復帰の援助、犯罪防止などの活動を振り返り、僧侶保護司としての原点である先達の言葉「保護観察対象者と立ち向かう保護司は、常に人格を磨き続けよ」を確認。「上求菩提、下化衆生を旨として更生保護活動を通じ、社会の浄化に一層の精進を誓」うと宣言した。

同連盟は昭和36年10月20日に発足。2年後に第1回大会を別院真福寺で開催した。それから50年。小林会長は自然災害や不況による社会不安の拡大を懸念し、「家族関係や地域の絆の希薄化が進み、無職者や高齢者による犯罪が年々増加し」ている現状を指摘した。

先頃発表された2011年版「犯罪白書」(法務省)では、再犯者率が43%で14年連続の増加、少年再非行も32%で13年連続の増加となり、過去最悪を記録した。また被災地では多くの建物が倒壊し、保護観察の生活指導を行う場所がない地域も少なくない。保護司自身も被災している。

再犯率の高さや更生保護活動を行う場所の不足に鑑み、地域の寺院施設の重要性も増している。特に、神仏の前で自身の罪と向き合う宗教施設での生活指導は、効果が高いと指摘する声もある。同派では現在、約140人の保護司がおり、その活動への期待も高まっている。

式典では寺田信秀管長からの祝辞を、岡野忠正教化部長が代読。重大犯罪の増加や犯罪の低年齢化・高齢化の背景を「宗教心の低下により社会倫理が崩壊しているためであることは、明々白々」と分析、更生保護活動を「済世利人の菩薩行」と位置付け、今後の活躍を祈念した。

法務省保護局の青沼隆之局長の祝辞を、更生保護振興課の板谷充課長が代読。50年の長きにわたり地域の安心・安全な暮らしを支える同連盟の働きに敬意を表し、再犯防止のために「引き続き官民の一層緊密な協働態勢」を要請した。

さらに板谷課長は、保護司適任者の不足や成り手の減少が課題となっている現状から、仏教者に強い期待感を表明。「保護司の中で宗教者の占める割合が昭和30年代の18%から平成21年では11%まで減っている」と指摘した上で、宗教者が更生保護制度の礎を築いた歴史にも言及した。

式典に先立ち、岡部快圓宗務総長を導師に記念法要を厳修。大震災犠牲者の回向も併修された。

2011/11/17 本願寺派 大震災総追悼法要営む

14ec4b9c2303b6_L1.jpg浄土真宗本願寺派(橘正信総長)は8日、京都市下京区の本山阿弥陀堂で大谷光真門主親修のもと東日本大震災総追悼法要を営んだ。法要には被災した岩手・宮城・福島の僧侶・門徒ら270人が参拝。門徒の代表者は宗門の支援に感謝し、これから地域の復興に努力することを誓った。

法要は橘総長が「今を生きる私たちが被災された方々の悲しみに寄り添い、その思いを分かち合うことを願いとしてお勤めさせていただきましょう」と述べてから、被災門徒の代表8人が献灯献花し、大谷門主親修のもと、光淳新門が出座して執り行われた。

導師の大谷門主は「今ここに私たちは亡くなられたすべての方を思い、哀悼の誠を表わし、阿弥陀如来の慈悲につつまれ、残された方々に寄り添い、共に支えあい、苦難を切り開いていく念仏者でありたいと志し、精進致したく存じます」と表白を読み上げ、参拝者と阿弥陀経を読誦した。

その間、臨席した範子裏方はじめ橘総長、桑羽隆慈宗会議長、普賢晃壽勧学寮頭、竹田空尊総務ら総局員に続き、被災地の僧侶・門徒らが焼香。引き続き被災地の僧侶・門徒を代表して東北教区相馬組常福寺門徒で南相馬市に住む八津尾初夫さんが「追悼のことば」を読み上げた。

水稲・ブロッコリーなどを栽培する専業農家だった八津尾さんは、津波で妻を失ったことを述べ「結婚を機に妻と二人で築きあげてきた機能的な農業経営、目標の形も道筋がつかめた矢先の出来事でした。家もビニールハウスも農機具もそしていろいろな記憶、思い出の品もすべて流されました」と無念さを吐露。

しかし被災後宗門内外から物心両面の支援を受けたことに感謝し「今回のスローガン『世の中安穏なれ』『あらゆるものがつながっている』。親鸞聖人が伝えてくださったみ教えを今回の震災でその心に触れたような気がします」と述べた。そして「残された私たちに対し、先にお浄土へ逝ってしまった家族の思いは何か。仏様となって私たちに何を望んでいるかと考えると、それは現実を受け止め一日も早く元気を取り戻し力強く歩んでいくことではないか」とし、「阿弥陀様の光の中で私たちは力強く歩みだし地域の復興・再生に努力していく」と誓った。

本願寺派東北教区(東北6県)では本堂全壊17カ寺・半壊21カ寺など94カ寺が被災。門徒では家屋全壊921軒・半壊117軒、349人が死亡し、行方不明者が多数出た(10月26日現在)。

一方福島原発事故では沿岸部の相馬組で警戒区域(20㌔圏内)に5カ寺、緊急時避難準備区域(20~30㌔圏内)に2カ寺、計画的避難区域(飯館村)に2カ寺が所在し、僧侶・門徒らの避難生活が続いている。

2011/11/24 大谷派親鸞聖人750回遠忌 御正当報恩講 厳修

14ece03180de1a_L1.jpg真宗大谷派(安原晃宗務総長)の宗祖親鸞聖人750回遠忌御正当報恩講が21日午後、京都市下京区の本山御影堂で始まった。大谷暢顯門首が出仕して法要が営まれ、僧侶・門徒ら約3500人が参拝した。報恩講は28日の結願日中まで21座の法要が勤められる他、漫画家・井上雄彦さんが描いた屏風「親鸞」の公開など境内各所で様々な催しも行われる。東日本大震災発生後継続している被災者支援のための物資受付も始まった。

大谷派は親鸞聖人750回遠忌正当年の今年、3月・4月・5月(各19日~28日)に遠忌法要を予定。3月は大震災で中止にしたが4月・5月は内容の変更はあったものの遠忌法要を厳修し御正当報恩講が遠忌の掉尾を飾る法要となる。幕開けの21日初逮夜は、大谷門首、鍵役はじめ僧侶約200人が出仕して法要を勤め、声高らかに念仏・和讃を唱えた。

御正当報恩講でも春の遠忌法要で行った被災者支援の取り組みを継続。あらかじめ団体参拝者へ救援物資の米と飲料水を依頼し、団参の本山到着時に御影堂門前などで受け取りトラックに積み込んだ。境内テントでは汚れのある書籍やビデオを半額で販売し売上を救援金に充てるチャリティー・ブックフェアも開催。さらに宗門関係校の大谷高校(京都市)生徒が門前で募金を行った。

期間中を含め29日までは春の遠忌法要時に人気を博した屏風「親鸞」を渉成園で公開すると共に、円山応挙や徳川慶喜らの書画も展示。震災支援の取り組みを紹介する「復興の歩み」展も阿弥陀堂素屋根で開催している。8日間で一般含め5万人の参拝者を見込む。被災地・仙台教区からも約千人が参拝する予定。


◇ ◇ ◇
御正当報恩講に先立つ19日午後と20日午前には春の遠忌法要で執行する予定だったが大震災で中止した750回遠忌讃仰音楽法要を厳修した。

音楽法要曲は750回遠忌を記念してその作品が内外で高い評価を得ているという作曲家の新実徳英・桐朋学園大学院大学教授が作ったもので19日が初披露。

安原総長が「この音楽法要が全国各地で勤められるとともに讃仰音楽法要に参拝する私たち一人ひとりにとっての勝縁となることを」と挨拶して開演した。

この日は武内和朋さん(日豊教区長福寺住職)が指揮を執り、大谷派合唱連盟に加盟する各地の合唱団のメンバー男女約200人が、オルガンの荘厳な調べにのせて伽陀・三帰依文・和訳正信偈・念仏和讃・回向文を、参拝者とともに歌った。

20日は武田龍太郎さん(北海道教区大成寺住職)指揮のもと同様に勤め、両日で約4000人が参拝した。


写真=御正当報恩講に先立って厳修された讃仰音楽法要で新しい音楽法要曲を歌う合唱団(19日 御影堂)

2011/11/24 豊山派臨宗 災害復興に1億3488万円拠出

真言宗豊山派(川田聖戍宗務総長)の第128次宗会臨時会(鈴木常英議長)が22日、東京・文京区大塚の宗務所に招集され、災害復興支援金として1億3488万円を年度内に拠出することを決定した。また被災寺院と被災檀信徒の復興支援のために寄せられた義援金3億円超の配分も決まり、年内をめどに交付されることになった。

川田総長は宗内の被災状況について、全壊・大規模半壊・半壊が30カ寺、一部損壊が約280カ寺と報告。福島第一原発を管内に含む福島県第2号宗務支所では原発至近距離に4カ寺、警戒区域内に6カ寺、計画的避難区域に4カ寺、緊急時避難準備区域に2カ寺、30㌔付近に2カ寺、圏外に4カ寺あることを述べ、避難生活や不自由な生活を余儀なくされている寺院住職と寺族、檀信徒に思いを寄せた。

災害復興支援金は、災害対策引当資産約1億7千万円を取り崩したもので、平成19年秋の第117次宗会で廃止された宗費賦課金報奨金の財源4500万円を毎年積み立てているものだ。

五十嵐賢二財務部長は議案説明で、「堂宇の損壊復興を目的とする支援金。檀信徒一人一人の心の拠り所として菩提寺を一日でも早く復興していただきたい」と願いを込めた。これにより平成23年度第2次補正予算額は10億5817万円(約14・6%増)となった。

配分の基準は自治体による家屋の被害調査の4区分「全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊」に基づき判断。宗務所常設の災害対策室(室長=川田総長)で被災寺院から提出された「被害調査票」「罹災証明書」等を確認し、現地視察の見分もふまえた上で決定した。

海外も含む宗内外から寄せられた東日本大震災義援金3億1522万7543円の配分も、すでに決定。こちらは、津波で多くの檀信徒が犠牲になった寺院や原発事故で避難生活を余儀なくされている住職・寺族・檀信徒を抱えた寺院に重点的に交付される。

小野塚幾澄管長が開会式で訓示。大震災からの復興に向け、「今こそ、我々は宗祖弘法大師の鎮護国家・済世利人のみ教えを体して、その使命を全う」しなければならないと説いた。

2011/11/24 浄土宗臨宗 新総長に豊岡鐐尓氏 「復興局」新設を表明

任期満了に伴う宗議会議員選挙を受けて浄土宗の第104次臨時宗議会が17・18日、京都市東山区の宗務庁で開かれ、新しい宗務総長に元総長公室長の豊岡鐐尓議員(70・伊賀教区上野組念佛寺住職)が選出された。豊岡新総長は東日本大震災復興支援策として「復興局」の新設や教師・寺族の意識改革、寺院が運営する社会福祉事業への支援を実施していきたい考えを表明した。

臨宗での宗務総長選挙は初日午後に実施。里見法雄総長が規定に従い辞職願を議長に提出して受理された後、立候補の届出が行われた。

滋賀教区の横井皎因議員を推薦人代表として宗政研究会の議員らが一議員となった里見前総長を候補者として届出。一方、三河教区の木村昭玄議員を代表に〝反里見派〟の議員らが豊岡議員を候補者として届け出て両者の一騎打ちとなった。

選挙はまず両陣営の推薦演説。豊岡陣営は推薦人代表の木村議員が行い、「総本山知恩院の大遠忌法要が円成し、一宗はいま大きな節目を迎えている。これからの浄土宗が進む道筋をいかに定めるか、一宗行政の舵取りはいかに行うべきか、一宗の将来を左右する岐路に立たされている」とした上で「一宗の置かれた状況を総合的に見渡し、誤りなく政策を実行していくには経験豊かで見識と企画力、政策立案能力を備えた豊岡候補が最も相応しい」とアピール。

一方、里見陣営は福島教区の時田敏孝議員が演説。里見前総長の任期を振り返り「一戸の住宅を建てるのに場所を探し、宅地を求め、設計図を描かなければならない。この2年10カ月はその段階だったのでは」とした上で、里見前総長は「誠実で実直で信念を持った男」「気力胆力を備え何よりも若さがあります」とし「若いエネルギーを燃やして浄土宗の明日を築いてくれる」と訴えた。

この後両候補が許諾演説を行って支持を要請。豊岡候補は当選時の施策として「全日本仏教会との協調復興も視野に入れ、宗務庁内に復興局などを新設して震災復興に全力を投入したい」とした他、「教師・寺族に対する徹底した資質向上により意識改革をし、宗門人が常に問題意識を共有しビジョンに向かって前進すること」と、「浄土宗における慈悲の活動でもある社会福祉に対し社会に役立つ浄土宗を目指し組織的に改革をし臨んでまいります」と述べ、一般寺院の福祉事業を支援する考えを示した。

里見候補は浄土宗の大遠忌記念事業への取り組み、大震災での救援活動や復興への取り組み等をアピールした他、前回総長選挙で公約した「児童虐待防止」を再び取り上げ、任期中ポスターを作成して全寺院に配布・周知し、専門家から話を聞いて対応を協議した「成果」を挙げた。その上でこの間の経験から教えの宣布と社会への貢献のため「宗門においては宗学者の育成が肝要であり責務」であるとし「大正大学・佛教大学との連携を強化、助成金を増額する方向性も含め教線の拡充に努めてまいりたい」などとした。

この後投票が実施され、投票総数69票中、豊岡候補が過半数の36票を獲得して当選。里見候補は32票で、4票差で敗れた(無効1票)。

翌18日、浄土門主から認証を受けた豊岡新総長が就任の挨拶。豊岡総長は「初めに皆さん方にお詫び申し上げなければならない」と切り出し、06年5月に発覚した公金不正流用事件について当時の水谷内局の一員(総長公室長)として「管理・監督責任は当然私にもあるわけでして」と述べ陳謝した。その上で「誠心誠意、一生懸命取り組んでまいりたい」と抱負を述べた。

2011/12/01 全青協グリーフケア講座開く 悲しみの擬似体験も

14ed714762bade_L1.jpg財団法人全国青少年教化協議会(全青協)は11月24日、東京・中央区の浄土真宗本願寺派本願寺築地別院で「被災者支援のためのグリーフケア入門講座」を開催した。東日本大震災で大切な人を失った被災者が、自らの悲嘆(グリーフ)や孤独に向き合う苦しみを和らげる支援者を育てるための講座で、宗教者・一般から35人が受講した。

講師は上智大学グリーフケア研究所所長の髙木慶子氏。カトリックのシスターである髙木氏は阪神淡路大震災をはじめ福知山線脱線事故、東日本大震災にいたるまで、数多くの被災者や遺族の苦悩に寄り添ってきた。こうした体験事例を紹介しながら、「人の話をしっかり聴くことが大切。傾聴をするとか言いながら、根掘り葉掘り聞いてはいけないことまで訊ねて心に傷を負わせて、その人をダメにしてしまったり、自殺にまで追い込んでしまう人もいます」と中途半端な知識での傾聴に注意を促した。

また遺族が「あいつ、ぶっ殺してやりたい!」「もう死にたい!」といった剣呑な発言があっても、「そこで否定してはだめです」と忠告。「そうなの、殺してやりたいのね!」「なるほど、死にたいのね!」などと、「全力で対等のエネルギーで返してあげてください」と訴え、そこから踏み込んだ関係が築かれていくと説明した。

一方、「グリーフケアを一番やりやすいのはお坊さんじゃないでしょうか。人の家に堂々と入り、祈りを捧げることができる。それは、私たちキリスト者にはなかなか難しいことなんです」と、日本のキリスト教人口がおよそ80万人ということも踏まえ、仏教界の活躍を期待した。

実際に「大切なものを失った時の悲しみ」を疑似体験するためのジャンケン大会も行った。参加者が5枚のカードを持ち、そのカード1枚1枚が自分の1番目から5番目までの「大切なもの」だと考え、ジャンケンで負けるごとにそのカードを勝者に渡す、という思考実験ゲームだ。

「家族」や「愛情」を仮託したカードが手元から離れていく中、「仮のカードでさえ無くなると切ない気持ちになる。本物の大切なものが失われた人の悲しみはどれほどでしょうか」と受講者は語った。

修了後、傾聴ボランティア「被災者こころといのちの相談員」に登録する人も数多くいた。

来年1月24日には仙台サンプラザホテルで、同じく髙木氏を講師に迎えて講習会を行う予定。申し込み・問い合わせは全青協(03―3541―6725)まで。

(写真=大切なものの喪失を擬似体験するためのジャンケン大会)

2011/12/01 炎天寺で第50回一茶まつり 小中学生俳句大会12万人超が応募

14ed715c087d4b_L1.jpg小林一茶ゆかりの東京都足立区・真言宗豊山派炎天寺(吉野秀彦住職)で11月23日、第50回一茶まつり「全国小中学生俳句大会表彰式」が開催された。関東を中心に遠方からも入賞した小中学生が出席し、境内の一茶像や福蛙像と対面した。

今年も12万2千人超が応募。大賞は「二階から頭かさねて見る花火」(和歌山大学教育学部附属小5年・薮下佳音)「炎天を苔に納める三千院」(神奈川県川崎市立菅生中3年・石垣志織)だった。「お父さんのセーターを着た津波の日」(宮城県石巻市立釜小5年・吉田妃那)は、東京都足立区長賞に選ばれた。

東京都足立区教育委員会賞「せみが鳴く福島県もカタカナに」(広島県福山市立中央中1年・和田卓)について審査委員長の吉野住職は、「広島もカタカナで呼ばれている。その広島の子が『広島も復興したよ』と福島に呼びかけているような気がしました」と講評。「被災地の子どもたちからは〝がんばろう〟という句が多かったが、〝心の中に雪が積もっている〟と悲しみを表現した句もあった。今の感情を文字にすることで、それが他の力に変わっていく。そんなことを祈っています」

秀逸句の中には、「浴衣着て去年の平穏懐かしむ」(福島県会津坂下町立第2中3年・鈴木沙野)「たんぽぽが根をはり地面に立っている」(福島県新地町立尚英中1年・泉田桐子)なども。「にんげんのえがおはいいなすてきだな」(宮城県石巻市立蛇田小2年・千葉蓮)が印象に残った。

今年、半世紀の歴史を刻んだ一茶まつり。吉野住職は「お檀家さんと地域の方々が2代、3代にわたって支えてくれたおかげです」と感懐を込めて振り返った。

(写真=入賞者に賞状を授与し、言葉をかける吉野住職)

2011/12/01 第32回韓日・日韓仏教文化交流大会 震災支援で深まる「絆」

14ed71740024de_L1.jpg第32回日韓・韓日仏教交流大会が11月15日、両国から300人の代表が集い韓国ソウル市の天台宗観門寺で開催された。今年は韓国側の韓日仏教文化交流協議会(会長=慈乗・曹溪宗総務院長)が主催。「宗教間の和合問題」をテーマに、国内外の宗教間の対話と相互理解が訴えられた。また東日本大震災で韓国仏教界から多大な支援があったことに日本側は感謝を示し、「このことは今日までの日韓の絆があったればこそ」(西郊良光・日韓仏教交流協議会理事長)と長年の交流実績を口にした。韓国側も「両国仏教界は、これを契機に、相手にさらに手助けとなる同伴者という事実を今一度確認することができた」(慈乗会長)とした。

(写真=世界平和祈願法要に先立ち献花する信徒)

2011/12/08 日蓮宗第2次渡辺内局スタート 4人が初入局

日蓮宗(渡辺照敏宗務総長)は6日、東京・大田区の宗務院で宗務役員退任・就任認証式を執行した。渡辺内局発足から2年、任期4年の折り返し地点で内局改造を実施。日蓮聖人御降誕800年に向け、第2次渡辺内局が船出した。

第1次内局役員は内局改造のため、辞表を提出。第2次内局に留任する者も新任として再就任する形をとった。

今回の内局改造は、日蓮聖人御降誕800年に向けて、宗内の才能を活用し、後進の人材育成を行う意図があったとされる。伝道部長、教務部長、総務部長、財務部長の4人が初入局。総長室長、現代宗教研究所所長、参与は変わらず、日蓮宗新聞社社長は新人事が発表された。

新宗務役員は以下の通り(初は初入局、同は同心会、明は明和会)。

宗務総長=渡辺照敏氏(同)、伝道局長=齊藤憲一氏(元伝道部長・明)、総務局長=塩崎望巳氏(前教務部長・同)、伝道部長=中井本秀氏(初・同)、教務部長=川口久雄氏(初・明)、総務部長=池田弁岳氏(初・明)、財務部長=川口智康氏(初・同)、宗務総長室長=渡邉義生氏(同)、現代宗教研究所所長=三原正資氏、日蓮宗新聞社社長=村上佼正氏。

式典では、内野日総管長が大震災の被災者と犠牲者へお見舞いとお悔やみを述べ、勇退する役員が震災対応で尽力したことに感謝。新内局役員へは、「職務の遂行に多大なる期待を申し上げる」と就任を祝した。

渡辺総長は、退任する役員へ「思い起こされるのは突如として起こったあの大震災のこと。未曾有の大被害に対して、迅速な行動を起こし、適切な対応して下さった」と感謝の言葉を述べ、「この2年間の尊い経験をどうか宗門のために活かしてほしい」と挨拶した。

続いて退任する各役員が挨拶。駒野教源前総務局長は、「免辞令をいただいた時、万感胸に迫るものがありました。職員はじめ、全国の方々に支えていただいた。是非、第2次内局におかれましては、益々の宗門の興隆と御降誕800年のご指導をお願いしたい」と御礼の言葉を述べた。

渡辺総長は新内局役員への挨拶で、「宗門は今、多くの問題を抱えています。一致団結をして宗務に励んでほしい。就任後、早速、毎日のように内局会議が始まります。滅私奉公の覚悟で遂行していただきたい」と切望。

新役員を代表して齊藤伝道局長が挨拶し、「不惜身命の赤誠を持って、責務を全うしてまいります」と職務精励を誓った。

2011/12/08 全日本仏教会 次期会長に半田天台座主

全日本仏教会(全日仏、有田恵宗理事長)は1日、都内のホテルで理事会・評議員会・参与会を開き、河野太通会長(臨済宗妙心寺派管長)の後任となる次期(第30期)会長に半田孝淳天台座主(94)のほか、5人の副会長就任を承認した。任期は来年4月から2年。

会議では、会長・副会長推戴委員会の庄野光昭委員長(高野山真言宗宗務総長)が推戴経過を報告し、候補者を発表。その結果、満場一致で決定した。

副会長は、北河原公敬(華厳宗管長)横田南嶺(臨済宗円覚寺派管長)萩野映明(財団法人埼玉県佛教会会長)前田定戒(和歌山県仏教会会長)宮林昭彦(日韓仏教交流協議会会長)の5氏。次期会長をおくる天台宗の阿純孝宗務総長は「私よりもお元気で、2年間がんばれると思います」と述べつつ、宗派としても「全日仏がますます活性化するよう努力したい」とバックアップを表明した。

全日仏は来年4月1日から新公益財団制度に伴う公益財団法人に移行する。すでに理事長には常務理事の小林正道氏(浄土宗)の就任が確定。これから事務総長と共に第30期の屋台骨を担う。

2011/12/08 回想2011 この世の火宅無常性と煩悩性に気づかされる(山崎龍明)

14ee1ce3aa93bd_L1.jpgこの1年間をふり返ってみると、あらためて、この世の火宅無常性と人間の煩悩性に気づかされる。

2011年度から「宗教文化士」の認定制度が始まった。大学生などを対象に、宗教文化への理解を深めた人に与えられる資格である。宗教教育の行き詰まりの打開のためとされる一方、制度に縛られて宗教教育が画一化されるのではという懸念もよせられているという。

第45回仏教伝道文化賞が、信楽峻麿氏(元龍谷大学学長)とアリヤラトネ氏(サルボダヤ運動提唱者)に決定した。贈呈式は当初3月17日に予定されていたが、大震災のため10月12日に行われた。1月17日、阪神淡路大震災から16年がたち、17回忌法要が神戸市仏教会によってつとめられ、6434人の犠牲者を追悼した。16年たっても震災で被災した人々の経済的問題、身体的苦痛は今も続いていることを銘記したい。

同20日全日本仏教会は来年4月の公益財団移行に関し理事20人、監事3人を選定して以降に臨むこととなった。26日WCRP40周年式典が盛大に挙行された。アームズ・ダウンキャンペーンでは国内で1000万、全世界で2000万人を超える署名が集められたことは特筆すべきことである。

2月3日西本願寺の総局が総辞職し、翌日前総長が再選された。宗法改正に必要な4分の3の賛成に自信がなく、解散して体制を立て直すための辞職である。時代即応の教学の確立、東京特区構想等が骨子としてあるが、宗門内の僧侶、門徒には反対意見も多い。

法改正しても、法規を運用する人間の自己改革がなければ、何も変わらないというのが、私が取材した反対集会での門徒の発言であった(5月30日可決)

第28回庭野平和賞がタイのシワラック氏らに贈られた。仏教者国際連帯会議の創設者の一人として、また、一連の社会貢献活動が評価された。

3月11日午後2時46分、東北、関東地方を大地震が襲った。マグニチュード9・0。大津波で流出した寺院もでた。各宗派が支援を開始。義援金を送り、ボランティアに僧侶の多くが駆けつけた。本紙3月17日号一面には「東北地方を直撃」「京都三山大遠忌、延期(知恩院)、第一期中止(大谷派)、被災地へ見舞金(本願寺派)」と記されている。西本願寺は予定通り(4月9日~)大遠忌法要を勤修すると発表。地震による福島原発の爆発により多量の放射能が飛散し、その被害は広範囲に及び、今もってとどまるところを知らない。安全神話を作り出した人間の虚仮不実の姿をここにみる。

4月13日同宗連(『同和問題』にとりくむ宗教者連帯会議)の30周年式典が京都で開催された。4月下旬、各地で東日本大震災四十九日法要がつとめられた。東京護国寺ではダライラマ法王を迎えて法要が勤修された。6月17日超宗教で「基地のない沖縄を目指す宗教者の集い」が結成される。

大谷派の宗議会は震災で被災した教区の懇志依頼を、1億円減額し、見舞金を増額することを決定した(6月29日)。時宜にかなう施策である。中尊寺が世界遺産に(同25日)。原発事故被災寺院復興対策の会は檀家救済と寺院の存続を求め国と東電に要望書を提出すると発表した(7月25日)。浄土宗不正流用事件訴訟で先物会社に6億円の賠償命令が下り、浄土宗側の主張が認められた(同27日)。

日蓮宗が終戦66年にあたり53回目の千鳥ヶ淵法要をつとめた(8月15日)。全日本仏教会は「葬儀は誰のために行うのか」を開催。お布施の明示化、僧侶の派遣等について議論した。350名が参加。浄土宗宗議会は被災48カ寺の課金を減免(9月6日)。9月12日、WCRP平和大学講座が開催され「現代文明に宗教者はどう関わるか―原発問題を契機として―」と題して東京外大の西谷修教授が講演し、続いてシンポジウムがもたれた(名古屋市熱田神宮)。

千鳥ヶ淵で本願寺派の戦没者追悼法要がつとめられ秋葉前広島市長が講演した(9月18日)。10月2日、知恩院大遠忌法要が開白。法然上人八百回大遠忌として、盛大に勤修された。「法然共生」を合言葉として、み教えを発信。10月17日新宗連結成60周年宗会が東京・渋谷公会堂で盛大に行われた。10月25日から12月4日まで「法然と親鸞―ゆかりの名宝展」が上野の国立博物館で開催され盛況をきわめた。12月1日までに20万人以上が展覧した。重厚な図録が刊行された。

11月21日、オウム真理教をめぐる刑事裁判が終結し、13人の死刑が確定した。これでオウム事件は終わったわけではない。むしろこれからが始まりだと考えている。

本年は法然上人八百回大遠忌、親鸞聖人七五〇回大遠忌で京都は賑わった。しかしなんといっても3月11日の大震災、原発事故が人々を深い悲しみにおとしいれた。天災(火宅無常性)と原発事故(煩悩性)という人災の狭間にあって人間そのものがあらためて問われた年であった。経済成長しか考えてこなかった人間につきつけられた、重い宿題である。

今、仏法の本来性である、少欲知足の経済学が求められている。目さきの安穏を願うことより現実を直視する仏の智慧をたまわりたい。そこから光が差し込んでくるであろう。

やまざき・りゅうみょう/1943年生まれ。武蔵野大学教授。仏教学者。WCRP平和研究所副所長。著書多数。浄土真宗本願寺派法善寺住職(小平市)。

(写真=津波で流出した観音寺跡地。がれき撤去がすすむ中で、塔婆や遺骨が安置されていた。名取市閖上地区。7月撮影)