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2010/01/01 大正大学 次期学長に多田孝文氏

天台宗・真言宗智山派・同豊山派・浄土宗の4宗派を設立母体とする学校法人大正大学(杉谷義純理事長・東京都豊島区西巣鴨3―20―1)は、12月8日、理事会を開催し、同大学教授会より推薦されていた多田孝文・人間学部教授(天台宗)を第33代学長予定者に選出した。

多田氏は、昭和17年1月生まれ。大正大学仏教学部卒。同大学大学院文学研究科修士課程修了、同大学大学院同研究科博士課程単位取得後退学。平成2年より大正大学専任講師。平成9年、同大学助教授、同14年、教授・人間学部仏教学科長。同15年、同大学人間学部長。同19年より同大学大学院仏教学研究科長(現職)。日本印度学仏教学会理事(現職)。自坊は神奈川県横浜市港北区の大聖院。

各学部長の選出も6月24日(仏教学部・表現学部)と12月16日(人間学部・文学部)に行われ、仏教学部長に勝崎裕彦・人間学部仏教学科教授、人間学部長に伊藤直文・人間学部臨床心理学科教授、文学部長に小此木輝之・文学部歴史文化学科教授、表現学部長に西蔭浩子・文学部表現文化学科教授の就任が決まった。

学長と各学部長からなる新執行部の任期は、平成22年4月1日より3年間。

2010/01/01 全仏婦が難民シェルターを緊急支援

難民申請中のバングラデシュのジュマ族僧侶らが居住する難民シェルター「みなはうす」(千葉県松戸市)。これを運営しているのが尼僧の平尾弘衆さんが代表を務めるNPO法人ストリートワーカーズコープ「ぽたらか」(東京都墨田区)だが、年末になり1月分の家賃を工面できなくなった。各方面に協力を呼びかけたところ、全日本仏教婦人連盟(全仏婦)が緊急支援を決めた。

昨年7月、2階建て一軒家を借りて「みなはうす」とした。改修した後アフリカとアジアの難民申請者13人が住んでいる。難民支援協会が家賃を補助してきたが12月で終了。そのため1月分家賃30万円の調達に迫られた。

以前は難民申請者に生活支援金が給付されてきたが、昨年5月から入国管理のあり方が変わり、打ち切られた。そのためホームレス化した難民が続出していた。現在は支援金が一部復活したものの難民認定の厳しさは変わっていない。

「ぽたらか」自身も生活保護を受けている人たちを抱えながら活動しているため、「みなはうす」を援助する資金的余裕がないと平尾さんは言う。

事情を聞いた全仏婦では緊急に協議し、12月18日に全額支援を決定し、翌週振り込んだ。林恵智子事務局長は、「女性だから共感できるところがありました。皆さん安心してお正月を迎えて欲しいものです」とコメントした。

2010/01/01 日蓮宗 新総長に渡辺照敏氏

日蓮宗宗議会は12月18日に第100臨時宗会を開催。任期満了に伴う総長選挙で同心会の渡辺照敏氏(法蓮寺住職)を後任の宗務総長として選出した。同月17日の第99特別宗会では、新正副議長選挙で新議長に川久保昌耕氏(妙法寺住職・同心会)、新副議長に遠藤是秀氏(大泉寺住職・明和会)が選出された。

総長選挙の結果、45票の満票で小松浄慎氏の後任として、新総長に渡辺氏を選出。過去2回の総長選挙では激戦だっただけに満票での選出は珍しい。明和会も同心会の渡辺氏に投票し、渡辺内局も小松内局と同様に連立での宗政運営となった。

宗会後、渡辺氏は「小松総長はリーダーシップと決断力に秀でた人物。宗政家として尊敬している」と述べ、今後の宗政運営については「今は責任の重さで緊張している。宗門を挙げて、発展するために力を尽くしたい」と心境を語った。渡辺新総長は12月21日から実働に入り、新内局は同月22日の認証式で顔を揃えた。

渡辺氏は昭和12年生まれ。72歳。平成9年12月に宗会議員初当選。今期で宗議4期目となる。岩間内局の際には平成16年に財務部長、平成17年に教務部長を歴任した。

新内局の顔ぶれは以下の通り。
宗務総長=渡辺照敏氏、伝道局長=関谷泰教氏、総務局長=駒野教源氏、伝道部長=古河良晧氏、教務部長=塩崎望巳氏、総務部長=梶山寛潮氏、財務部長=米田宣雄氏、宗務総長室長=渡邊義生氏、現代宗教研究所所長=三原正資氏、日蓮宗新聞社社長=草ヶ谷秀人氏。

2010/01/14 立正佼成会 新年御親教「善き友」と仏道を

14b4ed929e8a8b_L1.jpg立正佼成会(庭野日鑛会長)は7日、新年恒例の御親教式典を開催。庭野会長は聖壇に掲げられた書き初めの「善友」の意義について、釈尊が十代弟子の一人アーナンダに「善き友を得ることは聖なる道のすべてである」と答えた故事を紹介し、師を含めた善き友を得ることで仏道を歩むことができると話した。

式典は庭野光祥次代会長を導師に読経供養を営んだ後、渡邊恭位理事長が年頭挨拶。全会員家庭へのご本尊ご法号勧請7「善き友」の育成、青少年布教方針などを継続して取り組んでいくことを改めて表明した。

また対外的な行動として、▽国連経済社会理事会特別協議資格への申請、▽本部教庁が国際的な環境規格であるISO140001認証の取得にむけて外部審査が行われている、▽立正佼成会モンゴル看護師育成プロジェクト調印式を昨年12月に行い、看護師を受け入れて育成する、▽核兵器廃絶と軍縮に向け青年部がアームズダウン5千万人署名をWCRPの国際青年ネットワークをあげて実践―の4項目を取り組み目標として報告した。

庭野会長の法話では、新年に合わせて「ありがとう」「祈り」「願」の語源をたどって紹介。さらに書き初めの「善友」について、善友は大事なことを教えてくれる人であり、孫に接する中でも教えられることが多いとエピソードをまじえて話した。そしてサンガの中でお互いが善き友であることを強調した。御親教には全国から3400人が参拝した。

2010/01/14 立正大学 野球部の優勝祝う

14b4eda21c805c_L1.jpg大学野球の東都大学野球リーグと明治神宮野球大会で優勝を飾った立正大学硬式野球部(小池和彦部長)の優勝祝賀会が12月17日、東京・品川のホテルパシフィック東京で開催された。祝賀会には1200人が参集し、日蓮宗関係者やスカウトも駆けつけた。

東都大学野球は1部から4部のリーグ戦。激しい入り替わり戦の模様から「戦国東都」とも言われ、優勝は至難の業。立正大は硬式野球部創部から61年にして初の快挙を達成した。

東京六大学野球など他の大学野球リーグの優勝校が参戦する明治神宮野球大会では、東北福祉大、佛教大、上武大を下し初出場ながら初優勝。春の東都秋季リーグでは最下位だった立正大が、一転して大学野球日本一に登りつめた。それだけに関係者の喜びも格別だ。

立正大の高村弘毅学長は「監督、部員に感謝。勝った時よりも春で負けた時の気持ちを大事に、ここからまた新たなスタートを切って、来年も頑張ってほしい」と部員を激励。酒井日慈管長(立正学園総裁)は「投手力と鉄壁の守備の立正大らしい全員野球に絶えることなき精進の姿を見ました。そこには応援する人の祈りや願いがあります。おめでとう」と祝辞を贈り、張田珠潮理事が代読。喜びを分かち合った。

東都大学野球連盟の穐山幹夫理事長は「東都リーグの質の高さを日本中に示してくれた。立正大の力は本当の力」と称賛。駒澤大学野球部長の大谷哲雄氏は高村学長との談話で「これから立正大は追われる立場。共に東都を盛り上げましょう」とエールを交わした。

及川周介理事長は「奇跡じゃない。あきらめないで努力し続けたからチャンスを得た。本当におめでとう」と挨拶にきた選手らと握手を交わし、健闘を称えた。

伊藤由紀夫監督は挨拶で「選手が良くやってくれました。二度三度、優勝できるようこれからも頑張りたい」と来シーズンの奮闘を誓った。

同月19日には、部員・応援団員・吹奏楽団がJR五反田駅から大崎キャンパスまでをパレードし、大崎の街は歓喜に溢れかえった。

2010/01/14 真言各山会 後七日御修法 松長座主が大阿闍梨

14b4edb31482cd_L1.jpg平安時代から続く真言宗の伝統行事、後七日御修法(主催・真言宗各派総大本山会)が8日、京都市南区の東寺で開白した。今年は松長有慶・金剛峯寺座主(高野山真言宗管長)が大阿闍梨(写真)を務め、14日まで7日間21座の修法を勤める。

開白のこの日、勅使の北啓太・宮内庁京都事務所長らが御衣を奉持して小子坊に到着。別当役の庄野光昭・金剛峯寺執行長、砂原秀遍・東寺長者らが出迎え、唐櫃に納めてから道場の潅頂院へ上堂し、御衣伝達式が執り行われた。

潅頂院では唐櫃から出された御衣を口と手を清めた北所長が大阿闍梨の松長座主へ手渡した。松長座主はこの後一旦本坊へ戻り、各山山主・重役らが務める供僧14人と共に再び潅頂院へ上堂。大阿・供僧は朱傘を差し、一列になって歩みを進め、参道脇では各山僧侶や参拝者が合掌して見送った。

御修法は弘法大師が平安初期に宮中で始め、南北朝と明治期に一時中断したが、連綿と受け継がれている密教儀式。世界平和・国家安泰・万民豊楽などを祈願する。

2010/01/21 映画『放浪家族』浅草・長昌寺で撮影 寺院舞台に絆の再生描く

14b57fa8c6bab3_L1.jpg寺院を舞台にそれぞれに事情を抱えた人々の人間模様を通して、人や家族の絆の大切さを描く映画『放浪家族』(楠美聖寿監督)が、浅草に近い東京・台東区今戸の長昌寺(日蓮宗)で撮影中だ。

寺院を「人生の避難所」と位置づけた作品と知って、同寺院代の鈴木海光氏は撮影に全面協力することを決定。日頃から寺院のあり方を自身に問い続けていたという。

「生前師父が夫の暴力に脅える母子を3ヶ月ほどかくまったことがあった。その後その方は離婚が成立し、結果的には良かったようだ。今でも師父にお線香をあげにきてくれる。お寺の役割は法事だけではないな、と師父に教えられた」と映画の内容と自身の思いが一致しており、作品に寺院のあるべき姿を重ねている。

脚本は『引き出しの中のラブレター』の鈴木友海さんが担当。劇中の住職を「登場人物を包み込み、温かく見守る役柄」と語る。住職役の長門薫さんは「住職の重厚な部分も出せるようにしたい。楽しみです」と意気込みを話していた。

ストーリーは、今から3年後、リストラされたサラリーマン、日雇い派遣の若者、家出してきた主婦などそれぞれに事情を抱え、寺院に身を寄せる住人たち。ある日そこに赤ん坊が捨てられて…。赤ん坊を通して結ばれる絆。住人たちは寺院を出発点にやがて新たな人生の一歩を踏み出していく。

公開は今年初夏。「中野ZEROホール」、「てあとるらぽう」などで上映予定。DVDの発売も企画中だ。完成後は、地域住民・檀信徒のために同寺でも上映される。

2010/01/21 本願寺派 京都自殺防止センター開設

浄土真宗本願寺派教学伝道研究センター(浅野成海所長)が中心となって自殺防止の拠点「京都自殺防止センター」が京都市下京区の西本願寺境内に開設されることがこのほど発表された。現在は同区の同研究センター内に準備事務局を置いて4月の開設を目指して作業を進めている。

「京都自殺防止センター」開設は、自殺防止相談に実績のあるNPO法人「国際ビフレンダーズ・東京自殺防止センター」の協力を得て実施。

予定している活動は▽電話相談▽ボランティア(僧侶・一般問わず)の育成▽自死問題を学ぶ研修・講演会開催▽企業や学校向け啓発資料の作成配布▽講演等への出講▽遺族のサポート。

4月の開設以降、養成講座(週1回5時間程度)を始めてボランティアを育成し、6カ月後の10月以降、実際に電話相談に応じていく予定。電話相談は週2回ほど、行政機関の相談窓口が手薄になる午後8時から翌日早朝5時まで実施することにしている。

センターの運営資金は本願寺派の支援を受けるが、基本的に募金によって賄っていくことにしている。会員を募ることなどを検討している。同派の御正忌報恩講期間中の15日には参拝者に浄財を募った。開設後は、NPO法人格の取得手続きも進め、10月頃に取得し、独立した機関にする方針。

2010/01/21 ハイチ大地震 各教団支援に乗り出す

14b57fc4e51a72_L1.jpg中米のハイチ共和国で12日(日本時間13日)にマグニチュード7・0の大地震が発生し、甚大な被害が出ている。全日本仏教会(全日仏)をはじめ、各仏教教団が支援に乗り出している。

全日仏では駐日ハイチ大使館と日本赤十字社にそれぞれお見舞金100万円ずつを寄託。加盟団体へ救援基金への協力も呼びかけている。

浄土真宗本願寺派は一時見舞金としてハイチ大使館に100万円を持参したほか、15日から3月末まで「たすけあい運動募金」の募集を開始。

曹洞宗は19日に日本赤十字社に見舞金100万円を寄託することを決定した。

立正佼成会一食平和基金は現地で食糧支援と医療救援活動を行っている国連世界食料計画(WEP)に200万円、NPO法人アムダ(AMDA)に50万円の支援金を送ることを決定した。

日蓮宗はHP上にてお見舞文を発表した。

<智青連が街頭募金>

智山青年連合会(清雲俊雄会長)は18日、東京・港区愛宕の別院真福寺前でハイチ地震被災者救援の街頭募金活動を行った(写真)。午前11時から午後2時までで、120人超から総額8万1302円が寄せられた。浄財は、日本赤十字社を通じて被災地に届けられる。

青年僧侶10数人は街頭募金を始めるにあたり、犠牲者追悼法要を厳修。被災者救済の祈りを捧げた。今回は全国に先駆けて、事務局が実施。さらに同日、各地区の青年会に向けて活動を呼びかける案内状が送られた。

清雲会長は「災害の際には、すぐにこうした社会活動を行うという認識を、各地区の青年会と深めていければ」と話し、全国の青年僧侶に「広く社会に向けた活動の第一歩を、共に踏み出してまいりましょう」と呼びかけている。

2010/01/21 阪神淡路大震災15年 全日仏青、被災地で慰霊法要

14b57fd1cd5e52_L1.jpg阪神・淡路大震災15周年を迎えた17日、全日本仏教青年会(全日仏青、宮寺守正理事長)は被災地・神戸市長田区日吉5丁目の「あわせ地蔵」で慰霊法要を勤め、地元住民と亡くなった人を供養した。

震災後に建てられた「あわせ地蔵」では亡くなった日吉5丁目の住民27人を含め109人の犠牲者の名が書かれた名簿を前に、矢坂誠徳・元全日仏青理事長が導師を務め、僧侶15人が出仕して執行。発生時刻午前5時46分、金峯山青年僧の会の修験僧が法螺貝を吹き鳴らし、般若心経を読経。この間、僧侶、また日吉5丁目の石井弘利町会長はじめ地元住民らが焼香した。

全日仏青は震災発生の95年から08年まで毎年被災地を地元の仏青、神戸青年仏教徒会(亀山俊彦理事長)と共に慰霊行脚。昨年から行脚は取り止め、「あわせ地蔵」の他、同区海運町3丁目のカトリック鷹取教会で同教会と合同で法要を執行している。こちらにはメンバー20人が参加した。

兵庫区に自坊をもち被災した矢坂元理事長は「忘れないでと言いますが、何を忘れないかがよく分かっていないように思います。あの時みんな助け合って頑張ってきた、それが今日の復興につながった、それを忘れないでということ。死んでしまったことを悔やむより、震災を通していろんな人と出会った喜びをかみしめこれからの力にしたい」とコメント。

毎年慰霊に参加している宮寺理事長は「15年が経ち、人に例えると中学を卒業する年で、それを考えた時“震災の思い”をいつまで伝えていけるかが問われる時代になってきています。当たり前の有り難さを伝える難しさを感じております」と話した。

2010/01/28 曹洞宗 大本山總持寺副貫首選挙 江川、東氏立候補

曹洞宗(渕英徳宗務総長)の大本山總持寺副貫首選挙が今月13日に公示され、元總持寺監院の江川辰三氏(81)と金沢・大乗寺住職の東隆眞氏(74)が立候補を届け出た。選挙は3月4日に行われる。

江川氏は愛知県小牧市の正眼寺住職。駒澤大学文学部卒。平成8年1月から同12年2月まで總持寺監院を務めたほか、能登・總持寺祖院監院・堂長を歴任した。本山顧問。権大教正。

東氏は駒澤大学大学院修了。駒沢女子大学学長などを歴任。瑩山研究者として知られる。平成15年に金沢・大乗寺に晋住。本山顧問。権大教正。

總持寺副貫首選挙は三つ巴となった前回の平成15年(2003)以来。選挙の届け出にあたり、江川氏の推薦人に大田大穣氏(長崎・皓台寺)と横山敏明氏(神奈川・西有寺)が、東氏の推薦人に奈良康明氏(東京・法清寺)と萩野映明氏(埼玉・能仁寺)が名前を連ねた。

2010/01/28 東西本願寺総長 京都市長を表敬訪問

14b6159c01ed1c_L1.jpg真宗大谷派の安原晃宗務総長と浄土真宗本願寺派の橘正信総長が22日午前、京都市中京区の京都市役所を訪れ、揃って門川大作市長を表敬訪問。来年迎える親鸞聖人750回遠忌を前に、全国から僧侶・門信徒らが参拝するにあたって協力を依頼した。

市役所3階第一応接室での面談で安原総長は、平成23年3月17日から5月29日まで京都市美術館で真宗教団連合等の主催で「親鸞展」を開催するに至ったことに謝意を表明。また東本願寺で同じく来年3月から5月まで遠忌法要、11月に御正当報恩講を勤め、全国から「少なくとも35万人、多ければ4、50万人」の参拝者を見込んでいることを述べて、「格段の配慮を」と参拝者の受け入れに協力を依頼した。

本願寺派の橘総長も来年4月から翌24年1月までの遠忌法要で「40万人を予定し、一般の参拝者含めれば大変な数」の参拝者を見込んでいると述べ、「たくさんの方々が全国から参られます。どうかご協力を願いたい」と協力を求めた。

これに対して門川市長は参拝者に対して「京都市民挙げておもてなしの心でお迎えしようと、観光バスの受け入れ態勢など準備を進めていく」と市としての方針を述べ、「大遠忌が素晴らしいものになりますよう取り組んでまいりたい」とした。

両総長は両本願寺が取り組んでいる門前町の活性化についても独自に作成したマップを示しながら説明した。

表敬訪問には大谷派の岡本学・御遠忌本部事務室事務部長、本願寺派の高橋格昭・大遠忌中央法要事務所法要庶務部長が同行。京都市の水田雅博交通政策監、田辺眞人都市計画局長ら幹部とも顔を合わせた。

両派の他、京都市に本山を置く真宗では仏光寺派が5月、興正派が4月から遠忌法要を予定。また浄土宗総本山知恩院も3月、4月に法然上人800年遠忌法要を予定し約5万人の団参を見込んでいることから、京都市は来春、参拝者で大賑わいすることになる。

2010/01/28 第44回仏教伝道文化賞 功労賞に飛鳥寛栗氏、B項に佐久間顕一氏

㈶仏教伝道協会(沼田智秀会長)は20日、第44回仏教伝道文化賞選定委員会(金光寿郎委員長)を開き、B項(文芸・芸術・音楽・評論・その他)に画家の佐久間顕一氏、功労賞に浄土真宗本願寺派善興寺前住職の飛鳥寛栗氏を選定した。

佐久間氏は大正10年生まれ、88歳。京都府出身。永年にわたり「合掌童子」などの絵画を描き続け、童心と仏心を一つに表現した姿によって、現代人の心に救いと安らぎを与え、仏教に感心の薄い人々にも仏さまの世界を伝え広めたことが評価された。

飛鳥氏は大正4年生まれ、94歳。富山県出身。長年にわたり仏教音楽の研究、向上、普及に尽力。「仏教音楽コレクション・A」を創設。仏教伝道協会の世界仏教音楽祭の企画に参画するほか、浄土真宗本願寺派教学伝道研究センター顧問を務める。

贈呈式は3月18日、東京・芝の仏教伝道センタービルで執り行われる。受賞者には記念品と賞金300万円が贈られる。

<受賞者コメント>
・佐久間氏
京都に生まれ、両親が熱心な仏教徒で、更に父が美術に関係していたため、幼少より仏像・仏画に親しんで生長しました。画道に入り20年目にやっと自分の満足する仏顔が描け、合掌する姿が多いので「合掌童子」と名がつきました。以来今日まで40余年、ひたすら描き続けてきました。ひとえにみほとけのおはからいであり、両親や恩師、合掌童子を愛して下さる方々のおかげです。賞などもったいない。ただただ感謝するのみです。

・飛鳥氏
片田舎の寺の住職としてやってきましたが、この度の受賞は思いもよらず、驚いている次第です。仏教音楽が好きで、大学の時分から歌を歌い、曲集や賛歌集、音楽祭のプログラムや記事を集め、いつの間にか資料が何千という数になりました。それを自分の考えで整理、分類してコレクションを作り、さらには「日本仏教洋楽資料年表」(法藏館)にまとめました。音楽学を学んだわけではない素人の思いでまとめた不束なものでしたが、この出版が評価されたのかもしれません。仏教音楽は学問的には確立されていませんが、専門の研究者が現れてくれると嬉しいですし、その時に私のコレクションが活用されればなお嬉しいです。

2010/02/04 『三教不斉論』を発見

弘法大師空海(774~835)が唐から持ち帰った経典類や文献等の数々を記載した『御請来目録』。そのなかで実物が確認できなかった『三教不斉論』(さんぎょうふせいろん)の江戸末期の写本を高野山大学密教文化研究所委託研究員の藤井淳氏が昨秋、東京都立図書館にある諸橋轍次文庫で見つけた。1月25日、和歌山県の高野山大学での研究会で発表した。

見つかった『三教不斉論』の写本はタテ24・1㌢、ヨコ16・8㌢の和綴じ本。奥書きから阿波国(徳島)千福寺の僧良応が1861年(文久元年)に書写したことがわかる。儒教・仏教・道教を対比し仏教が優れていると説いている。空海も入唐前に『三教指帰』を著し三教の優劣を論じている。海を挟んだ両国でほぼ同時代に三教が論じられていたことになる。藤井氏は次のように解説する。

「『三教不斉論』を持ち帰った時には『三教指帰』を著しているので、直接の影響はない。しかし当時の唐でそうした論争があったであろう情報は、帰国した遣唐使船などから入唐以前に得ていたと考えられます。つまり、三教の比較をまったく独創的に考えついたのではなく、唐の状況を感知していたのだろうと思われます」

唐の最新の宗教情報を敏感に察知していたようだ。空海が入唐したのは804年(延暦23年)で帰国は2年後の806年(大同元年)。日本に密教をもたらし、作成された『御請来目録』は朝廷に献じられた。

見つかった写本に関し、25日の研究発表で新事実も出てきた。藤井氏は「ほかにも写本がある可能性が出てきました。今後も年代を遡った写本が見つかるだろうと思いますが、現在慎重に調査中です」と手応えを感じている。

『御請来目録』にはまだ確認されていない文献が多くある。その中で藤井氏はなぜ『三教不斉論』に目が止まったのか。

「『御請来目録』を見るとわかりますが、『三教不斉論』の前後にあるのは仏教のものばかり。『三教不斉論』はむしろ異質な感じがあり、ずっと私の記憶に残っていました。やはり、弘法大師が強い関心を示していたからこそ持ち帰ったのだろうと思います」

藤井氏は2年前、『空海の思想的展開の研究』(トランスビュー)という、従来の空海研究に挑戦する意欲的な研究書を上梓。今回の発見が研究に与える影響については、「これによって一部の論点は補強されたと思います」と話している。

2010/02/04 浄土宗 玉桂寺阿弥陀像を取得

浄土宗(里見法雄宗務総長)は1日、法然上人の弟子・源智上人が発願した阿弥陀如来立像(重要文化財)を取得したことを発表。所蔵していた滋賀県甲賀市信楽町の高野山真言宗玉桂寺(白井弘敏住職)から収蔵を委託した佛教大学宗教文化ミュージアム(京都市右京区)に搬送されたのを機に報道陣に公開した。同立像は来年3月26日から5月8日まで京都国立博物館で開く「法然展」で公開する予定。

法然上人800年大遠忌記念事業の一環として進めてきた「玉桂寺阿弥陀像請来」(胎内文書を含む)がようやく実現した。

2010/02/04 「宗教文化士」資格 来年5~6月頃に第1回試験

14b6a8ece78443_L1.jpg「宗教文化士」の実施に向けたシンポジウム「宗教文化教育に求められるもの―『宗教文化士』のスタートに向けて」が1月24日、東京・渋谷区の国学院大学で行われた。主催は「大学における宗教文化教育の実質化を図るシステム構築」。

「宗教文化士」は各学会や大学を母体とした組織で構成する認定機構が実施。諸宗教の基本的な事実や教えと儀礼、現代の諸問題に対する宗教の役割など、宗教文化全般の知識と意味を理解することを到達目標にしている。宗教分野での資格制度の創設により、宗教文化を学ぶ重要性が社会的に認識され、宗教教育の発展にも寄与するものと期待されている。第1回の認定試験は平成23年の5月から6月頃を予定している。

シンポでは大学・高等学校の教員や現役の学生、行政や企業といった幅広い視点から「宗教文化士」について意見を交わした。

2010/02/10 日蓮宗 学寮卒寮式「ダイヤモンドの結晶」

14b726aea952bc_L1.jpg日蓮宗宗立谷中学寮(菅野龍清寮監)は5日、第40回生の卒寮式を執り行った。今年の卒寮生は11人。卒寮生の学寮での最後の法要は、家族・来賓が見守る中、塩崎望巳教務部長を導師に厳修された。

式衆には在寮生が随喜。学寮生の万感の思いを込めた声明が本堂に響き渡った。法要後、管野寮監が一人ひとり名を読み上げると、塩崎教務部長から卒寮生に学寮過程の修了書が手渡された。

塩崎教務部長は挨拶で「僧侶としての所作はおおよそ習得したものと思う。社会に出て人々とふれあい、大人としての責任をもって、社会の安定を皆さんの力で少しでも図って頂きたい。今後は宗門の内外で活躍してほしい」と若き僧侶たちの活躍に期待を寄せた。

菅野寮監は送辞で「この場にいる11名はまさにダイヤモンドの結晶」と称え、「既に語るべきことは全て語りました。皆さんは技術だけを学んだわけではない。ここで僧侶としての胆力を磨いたと思ってもらえれば嬉しい。本日はおめでとう」とエールを送った。

日蓮宗宗立学寮には、4年前に熊谷学寮に17人が入寮したが、この日までに8名が退寮。約半数が退寮していることは、寮生活の厳しさを物語る。今期は3年時から編入した者が2人、熊谷学寮から入寮した者が9人で計11人が卒寮を果たした。

2010/02/10 本願寺派 自殺対策の現場学ぶ

14b726dce16af6_L1.jpg「京都自殺防止センター」を4月に開設するのを前に浄土真宗本願寺派教学伝道研究センター(浅井成海所長)と国際ビフレンダーズ東京自殺防止センターが共催して自殺について学びを深める「自殺対策フォーラム」を5日午後、京都市の聞法会館で開催。

大阪大学の鷲田清一総長(教授、臨床哲学)が基調講演を行い、宗教的観点からでなく日常生活の考察から「人間は生かされている」と説き、パネル討論では電話相談の実際や行政の施策、自死遺族特有の感情などが語られた。

2010/02/10 全日仏 松長会長がダボス会議出席

14b726ee741fb7_L1.jpgスイス東部のダボスで世界経済フォーラム(WEF、通称ダボス会議)の2010年次総会が1月26日から31日まで開かれた。(財)全日本仏教会(全日仏)の松長有慶会長(高野山真言宗管長)が仏教界の代表として招かれ、宗教指導者部会やパネル討論などに出席、日本仏教の先駆者の社会的な活動を紹介したほか、仏教的なものの見方などを提示した。経済の専門家たちが集まった日本部会でも、日本仏教の特色を仏教的術語によらないで平易に説明し、参加者の注目を集めた。

2010/02/18 国学院大シンポ「幽霊話の背景に軍批判も」

14b7cfdd6299f0_L1.jpg民俗的な霊魂観と戦没者慰霊の諸相について討議するシンポジウム「霊魂・慰霊・顕彰の民俗」が13日、東京・渋谷区の国学院大学で開催された。太平洋戦争の激戦地で営まれる慰霊祭の構造や、旧日本軍にまつわる幽霊話の意味などが議論された。同大学研究開発推進センターが主催し、約80人が参加した。

中山郁・同センター講師は、「戦没英霊との出会い、そして慰霊―ニューギニア慰霊巡拝にみる霊魂観」をテーマに発表。現地で営まれる複数の慰霊祭について考察した。戦友・遺族会、宗教団体を問わず、慰霊祭は「その場所に霊魂が存在していることを前提に、その霊魂に語りかける形」で営まれると指摘。「戦没者の霊を慰めつつ、自身も慰められたり、苦しい世の中を生きていく力をもらったりといった、『慰め・慰められる』という関係性が存在する」と述べた。

川村邦光・大阪大学教授は「戦死者の霊、亡霊、そして弔いをめぐって」と題して、旧日本軍にまつわる幽霊話を紹介。「八甲田山雪中行軍遭難兵士の亡霊」「本隊に帰還する亡霊」「大挙して訪れる白骨の幽霊部隊」「処刑された中国人の亡霊」などの幽霊話が発生する背景には、「日本軍への批判もあるのではないか」とした上で、「幽霊を感じるとき、異様な身体感覚に襲われる。それを引き受けることが、亡霊の弔いになっている面がある」と指摘した。

白川哲夫・京都府立大学講師は、「揺れ動く魂―慰霊施設に人々が求めたもの」について発表。「靖国との類似性も相違点も発見できる慰霊施設」として、護国神社の事例を説明し、「死者への慰霊・顕彰」「平和への祈りを表現する場」「地域の催しが行われる場」など、戦後社会における同神社の役割に言及した。

コメンテーターを務めた新谷尚紀・国立歴史民俗博物館教授は、「慰霊と追悼―民俗学の視点から」と題して発言。柳田國男の『先祖の話』の要旨を確認するなど研究史を概観した上で、「慰霊」と「追悼」の性格の違いに注意しなければならないと話した。

2010/02/18 Mottainaiのマータイさんが知恩院で植樹

14b7cffbf985d2_L1.jpgケニア出身の環境保護活動家で04年のノーベル平和賞受賞者ワンガリ・ムタ・マータイさんが15日、京都市東山区の浄土宗総本山知恩院を訪れ、世界平和と環境保全を願って坪井俊映門跡へ山桜の目録を贈呈した。この日の訪問でマータイさんは法然上人の「共生(ともいき)」も称えた。

アフリカでの植林活動の功績でノーベル平和賞を受賞し、いまは日本語の「Mottainai」を使って環境保護活動に取り組んでいるマータイさんは今回、京都府などが創設した「KYOTO地球環境の殿堂」の表彰式に出席するため来日。法然上人の「共生」精神に共感して滞在中に知恩院で植樹する運びとなった。

植樹のセレモニーは女人坂中ほどの眞葛庵・鎮守八幡宮拝殿前で行う予定だったが、当日雨のため古経堂での目録贈呈に変更。マータイさんは、宗祖法然上人800年遠忌へ向かうさなかに知恩院を訪れることができたことの喜びや、上人の「共生」に共感していることなどを述べた上、坪井門跡へ植樹の山桜の目録を贈呈した。

坪井門跡は、植樹に感謝するとともに「共に世界平和のために努力したいと思います」と述べ、「歳寒松柏」(艱難に耐え固く信念を守るの意)と揮毫した色紙を贈呈した。マータイさんからはケニア産のコーヒーが贈られた。

記者会見でマータイさんは「京都は木々の緑に溢れています。たくさんある緑がある中で私も一本植えられて大変幸せです」と述べるとともに、「法然上人が『共生』を大変重要な概念として教えられたのは素晴らしいこと。それは自然と共に生きることを意味し、隣人との共生も意味していると思います。さらに平和にも言及されていましたが、これは自然との共生、隣人との共生を通して実現されることだと思います」と「共生」の教えを称え、「この素晴らしい概念を実践する上でも植林という行為は大きな意味をもっています」とした。

2010/02/18 〝宗教者九条の和〟講演会「核廃絶 勇気と真剣さを持って」

14b7d01c86ec19_L1.jpg(財)広島平和文化センターのスティーブン・リーパー理事長(62)を迎えての特別講演会「宗教者の平和責任―核廃絶に向けて」が13日、東京・青山の浄土宗梅窓院祖師堂で開かれ、200人超の宗教者や市民が聴講。同理事長は、今年5月ニューヨークで行われるNPT(核不拡散条約)の再検討会議を念頭に核廃絶への方途を提起する一方で、日本は裕福で危機感が薄いことを危惧。日本の宗教者には「勇気」と「真剣さ」をもって望むよう強く要請した。主催は「宗教者九条の和」。

リーパー氏は平和市長会議米国代表などを経て2003年に広島平和文化センター専門委員となり、07年に理事長就任。流暢な日本語による講演や執筆などを通じて被爆の実態や非核に向けた活動を続けている。

この日の講演の冒頭で「皆さんは幸せすぎる。裕福で楽しい生活をしていると、今の危機は感じにくいと思う」と発言。00年のNPT再検討会議では核廃絶に前進したかに見えたが、続く05年の会議では一転して合意形成に失敗。その後、イランで原子力発電所建設に着手。米国には核保有していると映っている。イランは平和利用であるとしているが、イランが核を持つとサウジアラビアやエジプトも持つようになるとし、中東での核拡散を懸念した。

リーパー氏は「現在の状況を日本の1935年としましょう。10年後にこの国が灰になり草を食べるようになると言っても誰も信じないでしょう。同じ現象があり、その可能性がある」と極めて切迫した事態であることを強調した。

打開策の一つはプラハで核のない世界を演説したオバマ米大統領を支持すること。これによりノーベル賞を受賞したが、アフガン戦争をしているのも事実。しかしリーパー氏は「(核廃絶で)オバマ氏よりいい人はいない。彼が失敗すれば、彼より悪い人が大統領になるだろう」。

さらに核廃絶を促進するため「外圧」が必要だと言い、特に日本の役割が重要だと指摘。「日本には広島・長崎があり、非核三原則もある。九条もある。国連でも核廃絶決議案を出し続けている」と述べ、日本がリーダーシップを発揮していけば「ヒーローになる」とした。

具体的な行動としては『ヒロシマ・ナガサキ議定書』の賛同と支持。同議定書はNPTを補完する目的で08年に発表され、2020年までに核兵器のない世界を実現するための道筋を示している。

そして宗教者には勇気と真剣さを求めた。「勇気を持ってもの言う宗教リーダーが少なすぎた。米国でキリスト教が、日本で仏教が戦争を反対していたら(第2次大戦は)なかったかも知れない」と主張。 真剣さには「運動を趣味としているようでは不十分」としてガンジーやキング牧師を例に、「行動はリスクや苦しみを感じるようでなければならない」と言い切った。

2010/02/25 浄土宗 茂木健一郎氏が講演「共生は脳科学の理に適う」

14b863960e2f5a_L1.jpg「法然共生(ともいき)フォーラムin横浜 いのちを慈しむ知恵」(浄土宗主催)が16日、横浜市西区の新都市ホールで開催され、約800人が来場した。第1部「ともいきがたり」では、脳科学者の茂木健一郎氏が講演。「他人のために何かをしたときには、脳が喜ぶ」と話し、共生が脳科学の理に適っていることを論じた。

「親と子の共生」をテーマに講演した茂木氏は、「元気のない今の日本には、〝子ども力〟が必要です」と指摘。「子どもは言うことを聞かないものです。子どもを育てるというのは、面倒くさいことを引き受けることなんですよ。法然さんも、衆生というのは罪深いものだというところからスタートされた」とし、「面倒くさいことをやるのが、脳にとって一番のアンチエイジングです」とユーモアたっぷりに話した。

「脳の健康チェック」では、「これから直面する人生の不確実性(ハプニングなど)が楽しみな人は、脳が健康。子どもはみんなそう。不安で仕方がない人は不健康です」と会場を沸かせた。

第2部は、5氏による「ともいき談義」。司会の高田公理・佛教大学教授は、「親と子の共生」から、いのちの絆を見つめ直すべきと口火を切った。
獣医で作家の竹田津実氏は、キタキツネの子育てを紹介。夫婦で役割分担しながら、「『ダメなものはダメ!』」と子どもに教え込むことなどを説明した。日本子守唄協会代表の西舘好子氏は、「子守唄を歌う母の肌の温もりだけで、子どもは安心する。そういうつながりの基本に戻っていくのが、母子の劈頭宣言です」と強調した。

鎌倉・大本山光明寺の宮林昭彦法主は、「(人生には)喜びや楽しみだけではなく、悲しみもあるということ。生老病死について、子どもたちと一緒に語らいたい」と抱負。これを受けた茂木氏は、「人間が一番学ばなければならないのは、〝自分は死ぬ〟ってことですよ。脳科学者は一人もやってない。仏教者の方に、もっと言ってほしいですよ」と歓迎した。

さらに茂木氏は、「人から人にしか伝わらないものがある。そういう場をいかに持つかが、親と子の共生ではないかと思います」と話した。

2010/02/25 東方研究会の西村氏が日本学術振興会賞を受賞

㈶東方研究会の研究員、西村玲氏が第6回日本学術振興会賞を受賞。受賞者25人のなかでも特に優れているとして、日本学士院学術奨励賞も併せて受賞した。授賞式は3月1日に東京・台東区の日本学士院で行われる。

同賞は日本学術振興会(小野元之理事長)が学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させるため、創造性に富み優れた研究能力を有する若手研究者を早い段階から顕彰し、その研究意欲を高め、研究の発展を支援していくことを目的に平成16年に創設された。

西村氏は「普寂を中心とする日本近世仏教思想の研究」で、江戸時代の独創的な仏教思想家であり実践者である普寂(1707~1781)の思想を分析。「従来の研究では形骸化した思想として軽視されがちであった近世仏教思想に対して、新たな視点からの再評価を行った」ことが高く評価された。同研究は『近世仏教思想の独創―僧侶普寂の思想と実践』(2008年/トランスビュー刊)と題した著作にまとめられている。

今回受賞した25人の研究者は、理工系が13人、生物系が8人、人文・社会系は4人。受賞者の大半は東京大学、京都大学、大阪大学などの教授、准教授が占めている。人文系の研究、かつ私立の財団法人の研究員の西村氏の受賞は快挙と言える。

東方研究会の前田専學理事長は人文系の領域で若手研究者が専任職を得られない現状のなか、同会研究者が受賞したことを受け「今回の快挙を励みとし、中村元先生の遺志を継いで、今後も若手研究者の育成と研究成果の普及、社会への還元に尽力してきたい」と語った。

西村氏は1972年東京生まれ。東北大学文学部から同大学院文学研究科に進み、2004年に博士(文学)の学位を取得。同年から東方研究会の研究員を務めている。専門は日本思想史。

2010/02/25 本願寺派定期宗会 参院選候補者の擁立見送りを表明

浄土真宗本願寺派(橘正信総長)の第293回定期宗会(桑羽隆慈議長)が18日、京都市下京区の宗務所で始まった。橘総長は、昨年から準備を進めてきた今年夏の参院選への候補者擁立について「見送るべきとの結論に達した」と断念したことを表明。これに対して議員からは、宗会で擁立の方針を示していただけに「宗会軽視」との声が挙がった。

橘総長は昨年8月の就任後、宗門僧侶の藤谷光信氏を参議院に送り出した不二川公勝前総長の方針を踏襲し、今夏の参院選に候補者を擁立する方針を決め、昨年9月下旬に候補者の公募を開始。同月の宗会では擁立の方針を明言していた。

ところが昨年12月28日、宗内の宗門特別推薦委員会で擁立見送りを突如決定。年明け宗会議員へその旨を通知し、機関紙『本願寺新報』1月20日号で公表した。

初日の執務方針演説で橘総長はこの件に触れ「来る参議院議員選挙への宗門特別推薦候補者の擁立を見送る措置を講ずることといたした」と表明。しかし、その理由については「宗門特別推薦委員会を設置し、検討を重ねてまいりましたが、宗門内外の様々な状況を慎重に勘案した結果、見送るべきとの結論に達した次第」と述べるにとどまった。

今後の取り組みについても「宗門として国政にかかわる事項は極めて重要でありますことから、慎重に対応してまいりたい」と、慎重な姿勢を見せた。

この橘総局の方針転換に対して翌19日、出口湛龍議員(大阪教区)が通告質問。「(昨年秋の)宗会で特別推薦すると答弁しました。そして今回は特別推薦しないという報告であります。報告だけでどういうことか全く報告されていません。宗会軽視、宗会無視としか私には映りません。宗会での答弁の不履行についての理由を明らかにしてもらいたい」と、擁立を見送った具体的な理由の説明を求めた。

これには担当の本多隆朗総務が答弁。しかし「宗門内外の様々な状況を慎重に勘案した結果」と総長と同様の文言を繰り返すだけだった。

このあと出口議員は橘総長に答弁を求めると、橘総長は「前回選挙を足場にし、各地の状況を調査しました。前回と変わってきたことは確か」と選挙の当落を勘案したことを示したが、これ以上の明快な理由の説明はなかった。

出口議員の質問によれば、応募した一人に見送り決定後の1月9日総局から書類が送られ、《応募いただいたお二人―民主党希望一人・自民党希望一人―を推薦した場合、宗門の組織として十分な成果が上げられないことから総合的に判断したためであります》と、そこでは総局が理由を示していたという。

候補を一人に絞り込めなかったのか。ある総務は「宗門がそんなことできない。一般のあれではないんだから」と言明。ある議員は「実際に選挙で当選できるかどうかまで考えたが、二人のどちらが出ても勝てそうにないと判断した」、別の議員は「民主党に対する風向きも変わってきた。大遠忌を控え、負ければダメージが大きい」と擁立を見送った理由を話していた。

2010/03/04 浄土宗大本山増上寺 安国殿上棟式を営む

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東京・港区芝の浄土宗大本山増上寺(八木季生法主)は2月24日に安国殿の上棟式を執り行った。安国殿は法然上人800年御忌記念事業の一環で計画された諸堂宇整備事業の一つ。早春の快晴の下、工事関係者が上棟を祝った。

上棟式の法要は、八木法主を大導師に法要が厳修された。工事を請け負った松井建設など工事関係者が参列。八木法主は上棟した安国殿を見渡すと「これから黒本尊のお守りを頂いて、多くの祈願の成就がされることでしょう。本日は天候にも恵まれ、この行事を無事にできたことを嬉しく思います」と垂辞し、上棟を祝した。

続いて、建設会社による工匠式。古式の棟上げに相当し、「ひき綱の儀」では工匠と参列者が綱を引いた。外では柱を打ち込む儀式も併せて行い、工事の進展を祈願した。

安国殿は黒本尊を安置する堂で、戦災時には、本堂裏手(東京タワーの真下の位置)にあった。戦後、仮本堂を本建築に移行する前に安国殿という名前が付けられたが、戦後すぐの木造建築ため時代とともに老朽化。耐震強度に不安があり、法然上人800年御忌に併せて、新築工事をしていた。

新築される安国殿は鉄骨木造平屋建てで、後堂が一部2階建ての構造。昨年4月から工事を開始して、8月31日に完成する予定。増上寺の諸堂宇整備事業は、他に大殿改修、圓光大師堂、増上寺学寮とあるが、いずれも昨年完成し、安国殿が諸堂宇整備事業の最後の建物となる。

2010/03/04 専門学校生が「直葬テーマに卒業発表」

14b8f791f8b297_L1.jpg駿台トラベル&ホテル専門学校ライフステージ・プロデュース学科は2月20日、東京・巣鴨の同校ホテル館で卒業研究発表会を行った。同校では毎年卒業生がテーマを決めて卒業制作を発表。今年は近年話題の「直葬」を取りあげた。

第一部では「直葬のメリット、デメリット」を寸劇で紹介。通夜、葬儀・告別式のない直葬の流れを解説した後、2つの葬儀社が一般的な葬儀と直葬のメリットなどを説明した。

直葬は「接待をしないですむ」「負担が少ない」「費用が安い」、一般的な葬儀は「社会的告知の場」「宗教的な心の支えが得られる」「グリーフケアにつながる」のメリットを列挙。費用については直葬が「棺・骨壷」「搬送・安置」「火葬」のみで「葬儀」 「おもてなし」「お布施」の費用がなくなり経済的な負担軽減が強調された。また直葬であっても、戒名を授り、火葬炉前での読経といった宗教者の関与によって「心のケア」が可能になるとの説明がされた。

第二部では参加者と学生がグループに分かれて意見交換。同学科講師の須藤大恵氏(天台宗幸福寺住職)は炉前での読経の依頼を受けた際に、火葬時間を使って引導作法などを行っていると紹介。「炉前だからと力を抜いて読経をしていれば、お寺は確実に減る。そこで精一杯の布教をする。それが僧侶の役目ではないか」と指摘。

葬祭業の杉田伊紗武氏(㈱杉田フューネス社長)は「命の大切さを再確認する場がお葬式。それがあればどんなお葬式でもいい。直葬がそうであるのかが一番問われている」と、形ではなく、その実相を問題にあげた。

2010/03/04 大阪宗教者九条ネット 平和デモに激しい妨害行為

14b8f7adc6bbaf_L1.jpg憲法9条を守ろうと宗教・宗派を超えて集まった大阪の宗教者約100人が2月27日夕、大阪・御堂筋をデモ行進していたところ、一群の男らによる激しい妨害行為を受けた。警官隊が間に入り制止するなどしたが、本町から難波までの御堂筋は一時騒然となった。

この日は、05年に発足した「大阪宗教者九条の会」が5周年を迎えたのを機に、広く他宗派の九条の会や教団と連携して活動する「大阪宗教者九条ネットワーク」として生まれ変わるため、大阪市中央区の北御堂(本願寺派津村別院)と南御堂(大谷派難波別院)で集いを開催。終了後、デモ行進を実施した。

デモ隊は南御堂を午後5時頃出発。妨害行為はこの直後から始まった。宣伝カーを先頭に宗教者がその後ろについて進むと、20人ほどの普段着の男らが突如詰め寄り、罵声を浴びせ、また男がデモ隊につかみかかろうとし、警官に制止される場面も繰り返された。

宣伝カーから「国際紛争に武器はいらない。軍隊もいらない。憲法九条を広げよう!」と呼び掛け、デモ隊がシュプレヒコールを挙げると、男らはすぐ側から「広げんでいい!」「反日分子は日本から出て行け!」「なまぐさ坊主は政治に参加するな!」「地獄へ堕ちろ!」などと激しく罵声を浴びせて妨害。小型の拡声器も使っているため宣伝カーの声もかき消されるほどだった。

歩道では「皆さん、嘘ですよ。こいつらは北朝鮮とつながっていますよ」とデマを言いふらし、なかには「南無妙法蓮華経!」と大声で唱える者もいた。数人がビデオで行動を撮影しており、組織的に行っていることをうかがわせた。

激しい妨害行為が繰り返されたため、途中からは警官隊が囲んでデモ隊を防御。妨害は終点の難波高島屋付近まで終始続けられたが、幸い怪我人などは出なかった。

デモに参加した僧侶の一人は「九条の会が各地に広がっている。それに対して向こうも脅威に思っている、それだけ運動が進んでいるということではないか」と話すとともに「向こうも指示を受けて動いている。脅すだけですよ。萎縮させるのが目的。われわれは挑発に乗らないで粛々とやるだけ」と、妨害には動じていない様子だった。

2010/03/04 第27回庭野平和賞にエラ・ラメッシュ・バットさん

14b8f7c0ea2e9c_L1.jpg宗教協力を通じて世界平和に貢献した個人や団体に贈られる庭野平和賞(財団法人庭野平和財団=庭野日鑛総裁・庭野欽司郎理事長)の第27回の受賞者に、インドで女性労働者の地位向上に尽力したエラ・ラメシュ・バット氏(76)が選ばれた(写真左)。

バット氏は1933年、グジャラート州アーメダバード生まれ。最貧層に置かれていた女性労働者の権利保護と生活改善に取り組むべく、72年に労働組合「自営女性労働者協会」(SEWA)を創設。74年には、低金利で小額の事業資金を貸し出すSEWA銀行を立ち上げた。

女性の経済的自立と完全雇用の実現に向け、妊娠・病気の際の相互扶助や子育て支援、住宅サービス、法律相談などの社会保障ネットワークを確立。識字率向上やコンピュータ操作などの教育にも取り組み、政府に対するロビー活動も行う。現在、SEWAの組合員は120万人、国内7州に姉妹団体がある。同銀行の利用者は、300万人に達している。

バット氏は、インド上院議員、インド政府政策立案委員会委員を歴任。「女性のための世界銀行(WWB)」「国際家内労働者連盟(ホームネット)」「路上行商人と非正規雇用女性のための国際組織(WIEGO)」を創立し、ロックフェラー財団の理事を10年間務めた。ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領の呼びかけで、07年に結成された「ザ・エルダーズ(賢人会議)」にも参加。

ガンジー主義に基づいた宗教精神による数々の活動で、アジアのノーベル賞とも呼ばれるマグサイサイ賞(77年)など、国際的な各賞を受賞。労働運動・協同運動・女性運動を通して社会変革を訴える姿勢から、「やさしい革命家」と慕われている。

授賞式は5月13日午前10時半から、東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われ、賞状と顕彰メダル、賞金2千万円が贈呈される。翌14日には京都で、バット氏との交流会が開かれる。

2010/03/11 立正佼成会がISO14001を認証取得

環境マネジメントの国際規格である「ISO14001」の認証取得を目指していた立正佼成会(庭野日鑛会長)は2度の審査を経て2月15日、東京・杉並の大聖堂や本部教庁などの施設が正式に認証された。3月5日の創立記念式典で渡邊恭位理事長が報告した。

平成18年の第8回WCRP世界大会で採択された京都宣言の具体化の一環で始まり、「宗教心に基づく生活実践が環境に優しい生き方であり、仏教の生活が大事と受けとめ、いのちの尊重、共生の実現、簡素なライフスタイルを基本姿勢」として教団の環境方針を内外に宣言した。

ISOについて渡邊理事長は、「判りやすく言いうと環境問題に対して団体で金メダルを獲得するようなもの。この金メダルは3年後もその団体戦を控えており、計画・実行・見直しを繰り返し、持続していくことが大事だ」と語った。

具体的には節電、ゴミの削減、コピー用紙の削減など約30項目の取り組みをルール化し、約1年にわたって実行。2度の外部監査機関による審査を受けて2月15日に「ISO14001」認証登録された。

比較的短期間で認証登録されたことについては、職員の協力と共に「宗教教団の中で世界初の認証登録をされた『生長の家』さまの全面的なご協力のおかげ」と同教団に感謝した。

宗教団体では生長の家が東京本部事務所と長崎の総本山の2事業所が01年に日本で初めて宗教法人として「ISO14001」を認証取得。さらに日本各地に散在する拠点66カ所全てが取得した。ほかにもいくつかの教団が取得している。

2010/03/11 お仏壇フェア2010 新しい祈りの空間創作

14b98b00fa064d_L1.jpg全日本宗教用具協同組合(全宗協/小堀賢一理事長)は2月23・24日、東京・中央区の日本橋プラザで「来て!見て!発見!暮らしとお仏壇フェア2010」を開催。全国のお仏壇メーカーが新たに創作した仏壇約120点が展示され、来場者の投票で決まる「第2回こんな仏壇あったらいいなコンテスト」が行われた。会場には2日間で約570人が訪れた。

お仏壇コンテストの出展作品は、現代人のライフスタイルやマンション生活にもマッチした、「都市型仏壇」や「創作仏壇」、「パーソナル供養コーナー」が多く占めた。住環境の変化や消費者のニーズに対応した業界の取り組みが示されると同時に、新しい祈りの空間が提案された。

このほか、神仏具や数珠、線香などの仏具約200点も展示。全日本ローソク工業会は、正しく安全なローソクの使い方や火を捧げる意義についてパネルを使って紹介。消費者に最新の仏壇仏具情報を発信するだけでなく、先祖供養の大切さや、日本の精神文化、仏壇文化を再認識する場にもなった。

仏壇コンテストは仏壇・仏具の2部門に分けて実施。来場者の人気投票による金賞、銀賞、特別賞をはじめ、全日本仏教会会長賞や全宗協理事長賞などあわせて10賞、仏壇仏具26作品が選出された。

仏壇部門で金賞を受賞したのは丸喜㈱の「Style cube」。コンパクトなサイズの都市型仏壇で、高級感のあるピアノ塗装が施されている。カラーは黒、白、赤、茶の4色。「祖父母が持っていた大きな仏壇を置けない人が多い。小さいものや安い仏壇も増えていますが、ご先祖様に申し訳ないという気持ちをお持ちの方もいます。ピアノ塗装をし、小さくても良い品質のものに仕上げました」と同社東京支店長の白井正氏。1年前に完成したばかりで一般販売はされていないが、今後検討していくとしている。仏具部門には㈱玉初堂の「お香 重ね」が選ばれた。

小堀理事長は「宗教や信仰の考え方が変わり、生活環境も大きく変わった。こうした背景から、今回は伝統的なお仏壇ではなく、デザイン性や機能性のある創作仏壇にあえて絞った」と展示趣旨を強調。業界全体での取り組みを今後も継続していくため、各社に協力を呼びかけた。

会場では「第2回全国おぶつだん俳句川柳コンテスト」や「ふるさとお盆の思い出絵画コンクール」(日本香堂主催)の入賞作品が展示され、平城遷都1300年祭のマスコットキャラクターのせんとくんが登場し、来場者を歓迎した。せんとくんをデザインした籔内佐斗司氏(東京藝術大学教授)の講演や薬師寺長老の安田暎胤氏の法話、仏具のおリンで作った楽器「九乗編鐘」の演奏会も行われ、多彩なイベントで来場者を楽しませた。

2010/03/11 『三教不斉論』再び脚光~最澄も持ち帰っていた!~

弘法大師空海(774~835)の『御請来目録』に記載されながらも実物を確認できず、幻の論文とされた『三教不斉論』の写本が発見されたばかりだが、伝教大師最澄(767~822)も持ち帰った『三教不斉論』の写本が、大津市の石山寺に保管されていたことが2月までに、高野山大学密教文化研究所参事・田寺則彦氏の調査で判った。

■大津・石山寺に保管■

見つかった写本は、源雅(げんが)が室町期の明応6年(1497)に書写したもの。奥書から最澄が入唐した同じ年の804年11月、龍興寺で筆写したとある。

この点について、都立図書館諸橋文庫から江戸末期の写本を発見した空海思想研究者の藤井淳氏(前出研究所委託研究員)は、「源雅は比叡山ないし坂本の経蔵の本から書写したと考えられます。このおよそ七十年後に織田信長によって焼き討ちにあって原本は焼失したと考えられますので、写本が石山寺に残されたのは大変な僥倖と言えます。また伝教大師の中国での具体的活動を記録している点で大変貴重です」と話す。

『三教不斉論』は、儒教・仏教・道教の三教を比較して仏教が優れていると説いている。天台と真言という平安仏教の2大宗派の祖師がそろって『三教不斉論』を持ち帰った。『伝教大師将来目録』にも記載されているが、両宗では伝教大師の天台宗の教学、弘法大師の真言密教とは直接関係しないために、あまり注視されてこなかったようである。いわば“外典”とされたのだろう。

一方で両祖師とも持ち帰ったということは、唐では三教比較が流行していたことになる。「空海の『三教指帰』も唐のトレンドを察知して、入唐前に日本で著されました。唐では特に道教と仏教の間の論争が激しかった。日本には道教の痕跡はあまりありませんが、唐では道教勢力が強かった。そうした背景の下で今回の『三教不斉論』は著わされています」と藤井氏。

■空海は最澄目録を見た?■

空海が『三教不斉論』を入手する経緯について藤井氏は「推測の域を出ませんが」と断った上で、こう続ける。

「空海の書簡などを集めた『性霊集』にありますが、空海が越州に立ち寄った際(806年)に地元の長官に手紙を送っています。本来なら、“仏典書写の協力をお願いします”でいいわけです。しかし空海は“三教の書写の協力をお願いします”と書いているのです。

実は1年前に最澄がこの地を訪れています。空海は最澄が書写した目録をここで見たのではないか。担当者が、“1年前にも日本の僧侶が来ました。これがその方(最澄)が作られた目録です”と。その中に『三教不斉論』があった。ですから最初に『三教不斉論』に接したのは最澄となります(実際、最澄が書写した頃、空海はまだ長安に入っていない)。

空海は経典のほとんどを長安で手に入れていますから、『三教不斉論』もそうかも知れない。しかし『性霊集』の書簡の記述から考えると、最澄の目録の存在を考えざるを得ないのです」

最澄と空海が入唐したのは延暦23年(804)。最澄は翌年、空海は2年後に帰国。ライバル同士だが、『三教不斉論』をめぐる動きから、藤井氏は「両者は帰国後微妙な関係になりますが、空海は早くも唐にいたころより最澄を意識していたと考えられます」と話す。

まさに何気ない一つの文献の背景には、壮大な歴史ドラマが繰り広げられていた。

2010/03/18 曹洞宗副貫首選 江川氏の当選決定

斉藤信義氏の逝去に伴う曹洞宗大本山總持寺副貫首選挙は3月4日の投票を経て、15日から宗務庁で選挙会(選挙長=渕英徳宗務総長が開かれ、16日、元總持寺監院の江川辰三氏(愛知県小牧市・正眼寺住職)の当選が決定した。

副貫首選挙は1月13日に公示され、江川氏と東隆眞氏(金沢・大乗寺住職)の2人が立候補していた。

投票の結果、江川氏が東氏に4千票余りの差を付けて当選。投票総数は1万2942票(投票率79・37%)。7年前の總持寺副貫首選挙では投票数1万4097票(投票率84・7%)で、投票率は5ポイント低下した。

江川氏は昭和3年生まれ、82歳。曹洞宗審事院副院長などを経て平成8年から總持寺副貫首(同11年2月まで)、總持寺祖院監院・専門僧堂堂長などを歴任した。近く總持寺に入る掛搭式が行われる。

■投票結果■(敬称略)
投票総数12,942票
江川辰三8222.5票
東 隆眞4459.5票
無効票 260票

2010/03/18 永代供養墓セミナー「お寺の魅力や布教力問われる」

14ba1ec44c19c3_L1.jpg㈱小堀と㈱寺院デザインが共催し、東京・芝の仏教伝道センタービルで10日、セミナー「10年後のお寺と納骨堂・永代供養墓の運営―経済学とマーケティングの視点から」が開催した。40人の僧侶が参加。経済学とマーケティングの視点から、寺院運営を学んだ。

初めに中島隆信氏(慶応義塾大学教授)が「お寺の経済学」と題し基調講演。中島氏は経済学の基本として「消費者主権」という考え方を示し、「お寺離れが言われるが、自分たちがどうすれば離れていく人を繋ぎとめるか、という発想に至るのが消費者主権。消費者を無視するビジネスモデルは成立しない」と論じた。

宗教活動の非営利性についても、法律上では非営利事業の規程がないため、「例えば葬儀の時に檀家さんに呼ばれてお経をあげれば請負業。遺族の方がお墓をお寺にお願いするのは不動産賃貸業」と営利事業に分類。一方で、非営利性の信仰サービスは「お金を払う側がお礼を言う」「人助けの仕事」と定義。お布施の料金提示が行われ始めているが、「料金提示は適さない」と指摘した。

今後の寺院については「葬祭サービスに限定していくと事業は縮小する。どうやって信仰マーケットを作っていくのか」と提起。「重要なニーズは心の救済」にあるとし、教えを活かした活動を寺院に求めた。

次いで、寺院デザインの薄井秀夫社長が永代供養墓をめぐる状況や実際のマーケティング手法について講義した。薄井氏は墓地募集に比べて永代供養墓の消費者が、供養などの「ソフト面」をより重視するため「ビジネスモデル的にはサービス業に近い」と指摘。そうした意味で「活動体としてのお寺を見る本当の意味でお寺の魅力や布教力が問われる」との見方を示した。

2010/03/18 宗派対抗大運動会 明日の仏教考えるきっかけに

14ba1ed31e7a74_L1.jpg超宗派で青年僧侶間の交流を深めようと、各派青年会対抗の大運動会「ブディスト・ユースカップ2010」が11日、足立区綾瀬の東京武道館で開催された。浄土宗東京教区青年会、日蓮宗東京都四部青年会、真言宗豊山派仏教青年会、浄土真宗大谷派・佛光寺派青年会から、総勢142人が参加した。

4宗派対抗の「綱引き」トーナメント。1チーム16人の誇りと意地が、真っ向からぶつかり合う。真言宗VS浄土宗、日蓮宗VS浄土真宗という夢のカードを経て、決勝は浄土宗VS浄土真宗。大谷派と佛光寺派で結成された浄土真宗チームが、激戦を制した。

大縄跳び、玉入れ、騎馬戦、借り物競走、リレーなどお馴染みの種目に加え、段ボールの中に入って転がす速さを競う「キャタピラ競走」、バットを軸に回転してから走る「ぐるぐるバット」などユニークな競技も。東京一の俊足僧侶を決める短距離走「韋駄天決定戦」では、平山晃観さん(真言宗豊山派玉善寺)が初代東京韋駄天に。総合優勝は、チーム力に勝った真言宗豊山派仏教青年会が輝いた。

実行委員長を務めた浄土宗東京教区青年会の布村伸哉会長(新宿区・専念寺)は、「個人的な意見ですが、一般社会の中で伝統仏教の基盤が弱くなっていると思います。この運動会が、そうした危機感を超宗派で考えていくきっかけになれば」と抱負。「誰もが参加でき、楽しめる交流会は、何らかの形で継続したいですね」と意欲的に話した。

2010/03/25 浄土宗 遠忌の歌 知恩院三門で熱唱

14bab25b0aeafe_L1.jpg浄土宗(里見法雄宗務総長)が法然上人800年大遠忌記念曲として制作した「いのちの理由」(作詩作曲・さだまさし)を歌いあげるチャリティーコンサートが20日夕、京都市東山区の知恩院三門前で開かれ、日本を代表するゴスペルシンガー亀渕友香さんをはじめ約100人が共に熱唱した。

歌ったのはメーンの亀渕さんの他、男女12人のコーラスグループVOJA、これに一般から募集した5歳から60代後半までの「ともいきクワイヤー」80人が加わった。

亀渕さんとVOJAが「アメージング・グレース」や「絆」など6曲を披露したあと「ともいきクワイヤー」が参加して「いのちの理由」を合唱。♪わたしが生まれたわけは父と母に出会うため…と始まり、静かに盛り上がる曲を輪唱しつつ歌いあげた。

来場者は2回の公演のうち、1回目が約500人、2回目が約600人と大盛況。当日入場者に呼び掛けて集まった浄財は、後日ボランティア団体などへ全額寄付することにしている。

2010/03/25 BNNセミナー 「貪り」テーマに経済格差を学ぶ

14bab2f9f1bf26_L1.jpg仏教NGOネットワーク(BNN・玉川覺祥代表)は16日、東京・新宿区の曹洞宗東長寺で第17回研修セミナー「経済格差と仏教者のできること」を開催した。今回は「三毒」の中から「貪り」をテーマに僧俗併せて約70人が参加。ワークショップや講演を通し、国際経済の仕組みや心の修養について学んだ。

ワークショップは開発教育協会の中村綾乃氏を講師に実施。各グループを国に見立て、参加者が大統領や外務大臣、産業大臣、ジャーナリスト、一般国民などの役割を分担。自国がどれだけ儲けられるかを競う「貿易ゲーム」で世界経済の仕組みを学んだ。紙(資源)を決められた規格と同じ様に切り、研修スタッフが演じる世界市場に売って貨幣を稼いでいくこのゲーム。首脳同士の駆け引きや情報戦が、さながら国際会議を思わせる。

ゲームを始めてほどなく、与えられた資源や加工のために必要な定規・はさみ・コンパス(技術)が国によって違うことが他国と交渉していた外務大臣やジャーナリストの情報で判明。資源はあるが、技術がない国の参加者は自分たちが置かれた状況に愕然とした。他の国から道具を借りて型を作るなど逆転しようと知恵を絞ったが、富める国の参加者は不平等な条件を提示するばかり。

ゲーム終了後は「こんなにも不公平では話にならない」と夢中になって嘆息する人、中には憤りを感じる参加者も。しかし、まさにこれが研修の意図。中村氏は「世界経済の仕組みを実感してもらうゲーム。今日やったことを世界のことを考えるきっかけにしてほしい」と種明かし。

実は最初から国によっては途中で静観しても十分勝てる条件でスタートしていた。なぜ稼ぎ続けたのか。富める国の参加者は「自分たちが有利だと分かり、追い抜かれないようにと、もっと稼ぐことばかり考えていた」と感想。全体統括では「貪り」と向上心の関係性や互いの状況を知らないことによる不安・恐れが世界を分断し、「無知」が世界にどのように影響するのかが確認された。

その後、西川潤氏(早稲田大学名誉教授)が「経済格差と仏教者のできること~仏教と開発(かいほつ)の観点から」、角田泰隆氏(駒澤大学教授)が「道元禅師の教え」と題し講演。少欲知足の教えと仏教の智慧がどう活かされるべきかについて研修した。

2010/03/25 「ARMS DOWN!」キャンペーン 東京・銀座に広告設置

14bab308c4f6fb_L1.jpg全世界で同時展開中の署名5千万人軍縮キャンペーン「ARMS DOWN! 共にすべてのいのちを守るためのキャンペーン」の屋外広告が12日、銀座4丁目交差点そばに設置された(5月5日まで。延長有)。平和活動のPRと軍縮への世論喚起が期待される。

(財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会青年部会は14日、同キャンペーンのPR活動を、東京・銀座の松屋通りで行った。各教団から集まった30人が、世界の軍事費削減と貧困の撲滅を訴え、署名への協力を呼びかけた。

現在、各国の青年宗教者らが協働し、世界の軍事費約140兆円の10%を削減し、その分を極度の貧困やHIV/エイズ対策などに充てるよう、一斉に署名活動を行っている。日本国内の目標は、署名1千万人。

集められた署名は、国連事務総長、国連安保理常任理事国、各国の国家元首・国会議員に提出される。

2010/04/01 駒沢女子大学 日テレ・ベレーザと提携

14bb465bd10d92_L1.jpg駒沢女子大学(学校法人駒澤学園=戸田洋樹学長)は3月29日、日本女子サッカーリーグの日テレ・ベレーザ(東京ベルディ1969フットボールクラブ株式会社)と「パートナーシップ提携協定」と「ユニフォームスポンサー契約」を締結したと発表した。

これまでも駒澤学園記念講堂で実施される稲城市の成人式にJリーグ・東京ベルディの選手が出席するなど、地域貢献の観点から協力・交流してきた両者。今後は大学・サッカークラブが提携を軸に稲城市とも連携を深め、地域活性化や教育分野での一層の貢献を目指す。

戸田学長によると同大学の人間健康学部とベレーザでアスリートの栄養管理研究や学生インターンシップも計画中だという。同大学の常務理事・葛城天快氏は提携について「地元密着の学園経営を進めるのに地元に何ができるかを考えた。お互いにプラスな良い提携ができた」とコメント。

会見にはベレーザから有力選手の3人が「駒沢女子大学」のロゴが胸部に入ったユニフォームを着て登場。女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」に代表入りしたこともある大野忍さんは「支援を頂けることになり大変心強く思っています。4月4日からのリーグ戦で王者奪還を目指します」と抱負を語った。

2010/04/01 金峯山寺 五條覚堯管長が晋山

14bb466e52c880_L1.jpg吉野の桜が咲き始めた3月26日午後、昨年5月27日に就任した五條覚堯・金峯山修験本宗第3代管長(総本山金峯山寺第29世管領)の晋山・上任奉告法要が奈良県吉野町の同寺蔵王堂で、晋山・上任祝賀会が大阪市のホテルで執り行われ、宗内外からのべ1000人が参列した。五條管長は先達の苦労を忘れずに伝統を守り、宗門の一層の発展を宗内外へ誓った。

2010/04/01 全日仏 新理事長に有田恵宗氏

14bb470cf22ea8_L1.jpg(財)全日本仏教会(全日仏)は3月30日、京都市内のホテルで理事会・評議員会・参与会を開催し、4月1日から始まる新年度(第29期)の人事案等を審議し、豊原大成氏(本願寺派)の後任理事長に前曹洞宗宗務総長の有田恵宗氏を選任。曹洞宗からは森和久氏(第25期)以来となる。

組織運営の要となる事務総長には世界仏教徒連盟(WFB)執行役員でもある戸松義晴氏(浄土宗)が決まった。会長は昨年12月の理事会で河野太通氏(臨済宗妙心寺派管長)の就任が内定。これによ第29期全日仏執行部が固まり、新制度に伴う公益財団法人格の取得を目指すことになる。

【写真】第29期会長の河野氏(右)・有田理事長(左)

2010/04/08 大正大学 復活仏教学部に116人

14bbd87a211c8f_L1.jpg大正大学(多田孝文学長)は5日、東京・豊島区の巣鴨校舎(西巣鴨3―20―1)で平成22年度入学式を挙行した。本年4月から、人間学部の仏教学科を独立した学部として新設。時代のニーズ応えて、仏教精神を学び・発信する拠点として新たなスタートを切った。

同大学では、本年度から仏教学部と表現学部を新設。人間学部の仏教学科と文学部の表現文化学科を学部に昇格させた。これにより2学部6学科17コースから4学部7学科18コースへと移行した。

本年度の同大学全体の入学者数は1010人。仏教学部は116人。コース別では「仏教学コース」30人、「仏教表現コース」16人、「宗学コース」70人が入学した。

新設された仏教学部の専攻は従来の3コース制で変更はないが、同大学では約15年振りに看板学部の仏教学部が復活となった。ただし、現在の2年生から4年生は人間学部仏教学科のまま在籍する。

2010/04/08 全青協 第34回正力賞を発表

(財)全国青少年教化協議会(全青協)が主宰する「第34回正力松太郎賞」に長谷川実彰氏(愛知県知多市・真言宗智山派大智院住職・62歳)と岩国演劇研究会『劇団のんた』(藤谷光信代表=山口県岩国市・浄土真宗本願寺派教蓮寺前住職・73歳)が本賞に選出された。第3回青年奨励賞は和歌山県かつらぎ町の「子どもの寺 童楽寺」(安武隆信代表=救世観音宗童楽寺住職)が授賞。5月17日に都内ホテルで表彰式・祝賀会が行われる。

2010/04/08 四谷仏教会花まつり 雨にも負けない笑い声

14bbd8fae4f033_L1.jpg四谷仏教会(山本忠雄会長・曹洞宗全勝寺住職)は2日、東京・新宿区の曹洞宗長善寺(笹寺)で灌仏法要・花まつりを開催。あいにくの雨のため、四谷の街を横断する恒例の稚児お練り行列は見送られたが、区の内外から笹寺に稚児たちが大集結した。

61回目を数える四谷地区伝統の花まつり。戦後の荒廃の中、地域の人々の笑顔を取り戻すために始められたこの地区の花まつりは、宗派を問わず多くの家族が参加している。既に参加者も2代目、3代目の檀信徒となり、区外から参加する親子も多い。

灌仏法要は観音経が読経される中、稚児たちが誕生仏に甘茶かけ、お釈迦さまの誕生をお祝いした。山本会長は「お釈迦さまの誕生日に地域の方にご支援を頂き、たくさんの方にお参り頂いて、ありがとうございます」と挨拶。

法要の後は、僧侶でマジシャンの糸山真隆住職(芸名=松鶴家ぽん・浄土宗光照寺)がマジックを披露。子どもたちだけでなく、父母の目も釘付けに。

雨音に負けず、本堂の外にも笑い声や歓声が聞こえるほど、花まつりを楽しんでいた。

2010/04/08 大安寺で菩提僊那1250年法要を執行

14bbd8e5b213d1_L1.jpg奈良時代にインドから渡来した婆羅門僧正・菩提僊那(ぼだいせんな)の1250年御遠忌法要と御影開眼供養が奈良市の高野山真言宗大安寺(河野良文貫主)で3日、営まれた。

河野貫主を大導師に、菩提僊那と縁の深い東大寺の上野道善別当が開眼導師、霊山寺の東山光師貫主が脇導師として出仕。ベトナムやスリランカの僧侶、在大阪インド総領事のヴィカス・スワルプ氏ら来賓150人、一般参拝者230人が参列し、仏教文化と国際交流の礎を築いた菩提僊那の威徳を顕彰した。

菩提僊那は、中国僧の道璿(どうせん)、ベトナム僧の仏哲(ぶってつ)と共に第九次遣唐使船に乗船し、天平8年(736)年に来朝。天平勝宝4年(752年)には聖武上皇の勅命により東大寺大仏開眼法会の開眼導師を務めたことで知られる。天平宝字4年(760)に大安寺の僧坊で57年の生涯を閉じた。

御遠忌を記念し京都芸術大学の宮本道男教授が御影を製作した。河野貫主が密立による開眼作法を行った後に、上野別当が菩提僊那の眼に点睛し、魂が込められた。

啓白文では河野貫主が「紫髯緑目にして相貌端厳 日々華厳経を諷誦し呪術を能くすという 多くの仏舎利を請来し 陀羅尼、梵語等を伝えて弟子らを教導し 時の仏家に多大なる影響をおよぼせり 殊に空海初め後の密家に繋がる密教伝来の初祖として 我が国仏教界に与えし功績は甚だ大なりというべし」と、その遺徳を称えた。

2010/04/15 本願寺派 大遠忌へカウントダウン

14bc694834365b_L1.jpg浄土真宗本願寺派(橘正信総長)は来年4月の親鸞聖人750回大遠忌法要初日まで1年となった9日、京都市の本山でカウントダウンイベントを実施して、50年に1度の大遠忌への気運を盛り上げた。

この日午前、御影堂に参集した宗務員、念仏奉仕団、勤式指導所入所生ら約900人を前に橘総長が訓示。「親鸞聖人は人として生まれて本当によかった、この人生生きてよかった、そして死ぬのでない仏になると教えた」と述べるとともに、戦国時代の300回忌の時でさえ「実に豪華絢爛で素晴らしい法要を展開した」との先達の営為を紹介し、「お念仏を発信する、世界に発信する大遠忌の一年前だということを宣言して、皆さんと共々に高らかにお念仏を唱える教団を発信したい」と力説した。

午後5時半からは御影堂門前で「あと1年」と記した記念看板を橘総長と総務5人で除幕した他宗門校の平安高校吹奏学部と龍谷大学吹奏学部が軽快な音楽を演奏、また同大バトンチアSPIRITSが音楽に乗せて巧みな演技を披露して、大遠忌をアピールした。

御影堂門と阿弥陀堂門の扉に下り藤の紋と桜の形を浮かび上がらせるライトアップも同日開始し18日まで行われる。

2010/04/15 曹洞宗 北米新総監にルメー大岳氏

曹洞宗(渕英徳宗務総長)の北アメリカ国際布教総監部(米国ロサンゼルス市)の新総監に米国人のルメー大岳氏(60)が4月1日付けで就任した。昨秋のヨーロッパ国際布教総監部の総監に続く現地人登用で、さらなる曹洞禅発展に期待がかかる。

ルメー大岳氏は昭和25年11月米国アイオワ州生まれ。両親の仕事の関係で11歳から17歳までを日本で過ごした。帰米後はルーテル大学に進学。卒業後、一般の仕事に就いたが、それを辞して再来日。縁あって昭和53年、福井県小浜市・発心寺専門僧堂の原田雪溪住職について得度。翌昭和54年3月から平成6年3月まで約15年、同専門僧堂に安居した。

米国に戻ってから曹洞禅の敷衍に努めている。平成15年1月より国際布教師の資格を取得。同年4月からはサンフランシスコにある曹洞宗国際センター書記を務めていた。日本語には困らない。

曹洞宗教化部国際課では、「曹洞禅の敷衍はもちろんのこと、そのための新たな組織作りに際して、日本との架け橋にもなってもらいたい」と期待した。

2010/04/15 仏教主義学校連盟 花まつりに1000人

14bc697e59b0df_L1.jpg仏教を建学の精神に位置づける東京・神奈川・埼玉の私立中学高等学校17校が加盟する仏教主義学校連盟は8日、東京・世田谷の世田谷学園修道館で釈尊降誕「花まつり」を行った。今年で45回目。連盟加盟の中学高等学校の生徒や教員約千人が参加。東京都仏教連合会の山田一眞理事長も参列し、釈尊の誕生をお祝いした。

式典では鶴見大学付属高等学校の洋舞クラブによる「散華の舞」、世田谷学園の仏教青年会が献花し壇上の花御堂を荘厳。全員で三帰依文の読誦、四弘請願を斉唱した。次いで林会長、山田理事長、各校代表生徒が灌仏し釈尊誕生を祝福した。

生徒を代表して世田谷学園高等学校2年の山本基玄さんが奉賛文を読誦。「お釈迦様の教えに耳を傾け、努力していくことの尊さを自覚しこれからの時代を築いていくことを誓います」と力を込めて読み上げた。

清興の時間には世田谷学園高等学校、駒沢学園女子高等学校、立正中学高等学校立、東京立正高等学校の4校からなる「仏教主義学校連盟合同バンド」の演奏会が催された。4校は毎秋に親睦を深める音楽会を行っているが、昨年はインフルエンザの流行によって中止になっていた。

「花まつり」に合同バンドで演奏会を行うのは初の試み。メンバーは今年の2月から各校を回って練習を重ね、この日に備えてきた。演奏はオペラの名作「オペラ座の怪人」、イギリス民謡の「アメイジング・グレイス」、ロックバンド「ディープ・パープル」メドレー、人気アイドルグループ「嵐」メドレーといった多彩なプログラム。練習の成果を存分に発揮したバンドメンバーに学生たちも大きな拍手を贈っていた。

2010/04/22 中国大地震 全日仏など義援金

中国西部・青海省玉樹チベット族自治州玉樹県で14日発生した大地震による被害に対して、各教団が支援を開始している。

全日本仏教会は16日、戸松義晴事務総長が中華人民共和国大使館を訪問し、義援金100万円を寄託した。

真宗大谷派は15日までに救援金100万円を寄付することを決定した。寄付の方法については検討中。京都市下京区の真宗本廟各所に募金箱を設置し、救援募金も開始した。

浄土宗は20日に中国大使館を訪問し、お見舞金100万円を手渡した。

天台宗の一隅を照らす運動総本部は21日に災害救援支援金100万円を日本赤十字社に寄託。5月26日までの間、宗内寺院に義援金の協力を呼びかける。

曹洞宗は21日に日本赤十字社に義援金100万円を寄託した。

2010/04/22 曹洞宗 全国の伝道車にAEDを携行

14bcfff3750c65_L1.jpg曹洞宗(渕英徳宗務総長)は全国9管区の教化センターの伝道車に、地域社会における公益活動の一助としてAED(自動体外式除細動器)を携行する。これを受けて14日、東京・港区の宗務庁で各教化センター役職員や宗務庁職員約40人がAEDの取り扱い講習会を受講した。

講習会は医師でもある高岩寺の来馬明規住職を講師に、日本医科大学心肺蘇生フォーラムからインストラクターを招いて実施された。率先して寺院の禁煙化を進めることでも知られる来馬住職は、喫煙による心肺停止の危険性に触れた後、教習用教材で救助例やAEDの原理と使用方法を説明。

来馬住職は「心臓マッサージはまるで心臓に〝喝〟に入れるようなもの」「救命活動をする人は導師。お焼香する人が途切れない場合、延々とお経を唱え続けるように、専門家が来るまで絶対に休まず続けて下さい」と僧侶の所作を例に解説した。

2010/04/22 浄土宗知恩院 大遠忌導師を任命

14bd000a2e2b51_L1.jpg浄土宗総本山知恩院(坪井俊映門跡)は法然上人800年大遠忌法要で導師を務める僧侶の任命式を15日、京都市東山区の大殿で執り行い、この日出席した74人に任命書を手渡した。

知恩院は遠忌法要を来年3月27日から4月25日まで30日間奉修。このうち、布教師会など諸団体法要や浄宗会法要、また18日から25日までの御忌法要の導師を除き本廟・勢至堂、御影堂で奉修される法要44座で導師・脇導師を務める僧侶を対象に任命式を執り行った。

式には紫衣をつけた宗議会議員や教区長など104人中74人が出席。

坪井門跡が垂示で「明年の大遠忌導師を引き受けられたことは法然上人へ報恩感謝の心を捧げるということ。皆様の一座のご精進と積極的な協力で大遠忌法要が盛会に成満することをお願い致します」との言葉を贈り、「よろしくどうぞ」と一人ひとりへ声を掛けて任命書を手渡した。

2010/04/30 日蓮宗 参院選で佐藤氏を応援

日蓮宗(渡辺照敏宗務総長)は20日から22日まで東京・池上の宗務院で平成22年度全国宗務所長会議を開催。今年の参院選で立候補予定の佐藤ゆかり氏(自由民主党)を日蓮宗が挙宗体制で支援していくことが明らかになった。

佐藤氏は、東京・府中市の東郷寺(南部光轍住職)の檀信徒。05年の衆院選で岐阜1区から初当選。法華一乗会には、衆議院議員時代に参加した。09年の衆院選では、東京5区から立候補したが落選。今年2月下旬に7月の参議院選挙の全国比例区で自民党から公認され、立候補を予定している。

2010/04/30 モザイク壁画を除幕

14bda838fc6242_L1.jpg東京・文京区の天台宗の関係学校である駒込中学高等学校(末廣照純理事長/河合孝允校長)は、平成19・20年度の卒業記念として制作していたモザイク壁画の完成を受け、17日に除幕法要を執り行った。

モザイク壁画は、武蔵野美術大学の水上泰財教授の原画を基に、モザイク美術の権威である宮内淳吉同大特別講師が制作。モザイクは原石を砕く作業から始まり、これには宮内氏がアトリエをかまえる福生市民もボランティアとして参加。2年の歳月をかけて完成させた。

壁画のタイトルは「Spring Has Come」。多くの人が集まり、人力飛行機の製作に汗を流している構図で、学校に生徒や保護者などが集い、大空に夢を飛ばす「サンガ」の世界にも繋がっている。

校内サンクンガーデンで営まれた除幕法要は、坂本観晃・天台宗知行院住職が導師を務め、8人の天台宗僧侶が出仕した。天台声明と般若心経の厳かな読誦により、モザイクの一つ一つに魂が込められ、生徒たちを温かく見守るモニュメントが誕生した。

2010/04/30 半田座主が署名 目標20万人、天台宗も全国で

14bda84a8acecf_L1.jpg核兵器廃絶や世界の軍事費の1割を貧困対策などに使うことを求めて、WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会青年部会(深田良一幹事長=円応教青年会長)が展開する署名活動に賛同して21日午後、天台宗の半田孝淳座主が天台宗務庁(大津市)で署名した。天台宗は今後20万人を目標に署名活動を実施することにしている。

「ARMS DOWN!」(アームズ・ダウン=「武器を削減しよう!」の意)と呼ばれるこの運動は、06年のWCRP京都大会に先立ち広島市で開催された青年世界大会で、青年リーダーが平和のために貢献しようと企画。大会で結成された「WCRPグローバル・ユースネットワーク」が主体となって全世界で5千万人の署名を目標に昨年11月から実施している。

(写真=署名する半田孝淳座主)

2010/05/13 カリフォルニアに天台寺院 宝珠院が落慶

14bebd3b049d17_L1.jpg米国カリフォルニアに新たな天台宗寺院が誕生した。京都の古刹、赤山禅院で5年ほど修行したレアリー恵照氏(61)が開いたカリフォルニア天台モナストリー「宝珠院」として開創し、4月24日、現地で落慶法要が営まれた。

米国出身の恵照氏は、かねてから仏教に関心を持ち40代の時に来日。縁あって赤山禅院に入り、天台宗僧侶としての修行を重ねた。10年ほど前に米国にもどり布教活動にあたった。

完成した宝珠院は四間半四面の質素な護摩堂で、日本の寺院様式にのっとっている。法要導師は、恵照氏の師僧である千日回峰行者(北嶺大行満)の上原行照阿闍梨が務めた。

写真=落慶した宝珠院と参列者。中央右がレアリー恵照氏

2010/05/13 高野山真言宗 庄野総長を再選

高野山真言宗(松長有慶管長)の次期総本山金剛峯寺執行長(同宗宗務総長)候補者を決定する第138次臨時宗会(渡邊公雄議長)が4月26日、和歌山県伊都郡高野町の総本山金剛峯寺宗務所に招集され、7月4日に任期を迎える現職の庄野光昭氏(徳島県小松島市・立江寺住職)が選出された。

宗会議員37人による投票で満票を獲得。当選人確定の選挙会(5月26日)を待たずして、庄野氏の再選が確定した。

明朗で公開性のある宗団・本山運営や、合理性を追求した機構改革を推し進めてきた庄野氏は、先の春季宗会で続投の意思を表明。改革の続行に強い意欲を見せていた。

松長管長は垂示で、庄野氏の事実上の続投決定を「明るい光明」と祝福。さらなる宗団の発展に期待感を示した。

2010/05/13 日蓮宗 新管長に内野日総法主

日蓮宗(渡辺照敏宗務総長)の管長推戴委員会(小林順光委員長)は、酒井日慈管長の任期満了に伴って、第52代管長に山梨県の総本山身延山久遠寺の内野日総法主を推戴することを決定。東京・池上の宗務院で10日、管長就任奉告式が挙行された。

推戴委員会は、総長・宗会議長をはじめとする宗務役員・宗会議員・宗務顧問・祖山霊跡由緒寺院住職の他、全国檀信徒協議会の代表者27人で構成されている。

3月23日、4月2日の両日に委員会協議が行われ、委員の満票で内野法主を管長に推戴することを決定。4月3日に、小林委員長と上田尚正副委員長、宗務内局を代表して渡邉義生総長室長が身延山久遠寺を訪れ、直接就任を要請したところ、内野法主も承諾し、正式に管長就任が決定した。

内野法主は、大正15年生まれ。84歳。立正大学文学部仏教学科卒。昭和21年に山梨県身延町清水房住職、平成10年に東京都台東区瑞輪寺住職に就任。平成18年からは、総本山身延山久遠寺法主を務めている。

主な経歴として、祖山中心体制委員会委員、宗立学寮管理委員会委員、身延七面山敬慎院別当、祖山常置会常任議員などを歴任。法華経の「遠塵離苦」を信条として、「愛される身延山」「もう一度お参りしたくなる身延山」を命題に掲げ、職務に励む。

2010/05/20 仏教伝道協会 iPhoneで仏教聖典

14bf4baa83bdad_L1.jpg㈶仏教伝道協会(沼田智秀会長)が新しい仏教伝道のアイテムとして、iPhone(アイフォーン)で読む電子書籍『仏教聖典』(日本語)と『The Teaching of Buddha』(英語版)の販売を開始した。

同協会が刊行する『仏教聖典』は、現在までに46ヶ国語に翻訳され、世界各国に約780万冊を普及している。今回の電子書籍版は、インターネットやモバイル文化に敏感なiPhoneユーザーら若い世代を対象にした新しい仏教伝道アイテムだ。

米国アップル社製の携帯電話「ⅰPhone」は、インターネットやEメールのみならず、アプリケーションソフトをダウンロードすることで多彩なコンテンツを楽しむことができる多機能携帯電話として人気を集めている。アップルストアのサイトから音楽や映像、電子書籍やゲームなど様々なアイテムをダウンロードできる。

『仏教聖典』電子書籍の販売は4月後半から始まったが、日本語版、英語版共に順調で、同協会のHPへのアクセスも増加したという。日本の仏教界では初となるこうした取り組みは、各教団関係者の注目も集めそうだ。

『仏教聖典』電子書籍は600円。購入はアップルストアのサイトから。iPodtouch(アイポッドタッチ)でも閲覧可能。問い合わせは仏教伝道協会(☎03―3455―5851)まで。

2010/05/20 真言宗豊山派 全国檀信徒総代協議会「新寺建立や葬式離れで要望」

真言宗豊山派(川田聖戍宗務総長)の第62次全国檀信徒総代協議会(長島眞議長)が11日、東京・大塚の宗務所で開かれた。宗派当局による施政方針説明に続き、檀信徒総代議員から北海道での新寺建立や、寺・葬儀離れなどへの対応について要望が出された。

工藤正道議員(北海道)は、北海道での新寺建立について質問。広大な道内に豊山派寺院が18カ寺と少ないことを述べ、「小樽市周辺では密に連携できるが、他の地域は点になっている(ので交流が難しい)」と現状を報告した。

その上で、人口約190万人の道都・札幌市に「各宗派の本山別院や末寺院はあるが、豊山派の寺院は1カ寺もない」と指摘。同市在住の豊山派檀信徒も多くおり、さらに「人口の札幌集中は今後も続く」とみられることから、宗派による新寺建立の検討を要望した。髙橋秀三総務部長は、今後の重要課題として前向きに検討していくと回答した。

鈴木理吉議員(茨城・六号)は、宗教心の希薄化などによる寺・葬儀離れへの対応について質問。大越恒範教化センター長は、近く作成する「光明真言」のポスターとリーフレットを足がかりに、「檀信徒の家庭の中に(光明真言の教えが)浸透するようにしてまいりたい」と回答した。

小島康議員(越後)は、高齢社会における地域の拠点として、寺院を活用する案を提出。写経や講話など、寺院ならではの文化活動の推進を要望した。

2010/05/20 核軍縮へ行程表設定を

14bf4bd78b7a69_L1.jpgニューヨークの国連本部で開かれている第8回NPT(核拡散防止条約)再検討会議。7日には「NGOからの提言」セッションが行われ、世界宗教者平和会議(WCRP)国際軍縮安全保障常設委員会の杉谷義純委員長(天台宗宗機顧問)が登壇し、核兵器のない世界の実現のために行程表設定を訴えると共に、WCRPが世界規模で取り組んでいる軍事費削減運動「アームズダウン・キャンペーン」の取り組みを報告した。

WCRPは国連社会経済理事会協議資格を有しており、その実績によって選ばれた。日本人では被爆者のほか、秋葉忠利・広島市長、田上富久・長崎市長とともに、杉谷委員長が提言を英語でスピーチした。

宗教者そして被爆国であることを踏まえ、「核兵器は、たとえ生き延びたとしても一生涯にわたって(放射能による後遺症などで)被爆者に苦しみを与え続ける。だから核兵器はいかなる理由があろうとも、国家でも組織でもその使用はもちろんのこと、保有することは道徳的にも許されるものではない」と強く主張した。

また米ロ両大統領が核なき世界実現に動きだしていることを歓迎する一方で、核軍縮を現実化するために「目標達成に対する行程表を設定すべき」と要請。9・11同時多発テロ後に開かれた5年前の再検討会議ではまったく前進が見られなかったため、具体的な行程表を求めたものだ。

さらに世界の軍事費を10%削減し、それを貧困問題などにあてることを目的とするWCRPの「アームズダウンキャンペーン(軍縮署名活動)」が世界規模で取り組まれていることを報告した。

安全保障の立場からも、核兵器は人間をより危険にさらすものであるとし、「人間がそれぞれもつ弱さこそ、他人に対して思いやりの心で接することを可能にする」「私たちの相互依存性こそが、すべての人々や地球を守る」と述べ、協力を呼びかけた。

日本の僧侶で、しかも衣姿でスピーチした例はほとんどないようで、各国政府代表らも注目を集めた。

2010/05/27 天台宗臨時宗議会 正副議長に栢木、小川氏

任期満了に伴う天台宗宗議会議員選挙が4月9日に実施されたのを受けて第119回臨時宗議会が20日、大津市の宗務庁に招集された。宗議会は議長に5期目の栢木寛照議員(北海道・伝承法流)、副議長に3期目の小川晃豊議員(群馬)をそれぞれ選出した。

宗務総長と同様、議長も道興会と新成会が交互に出し合う慣例から、今回は“西”の議員でつくる道興会(柞原俊孝会長)から人選が行われた。

同会が前副議長のベテラン、栢木議員を推し、これに新成会も同調。選挙は投票を省き挙手で行われ、賛成多数で栢木議員が議長に選出された。栢木新議長は「阿内局の皆さんと歩調をあわせ天台宗発展、本山護持のためにこの議会が正しく運営されるよう、議長としての務めを果たしていきたい」と挨拶した。

引き続き副議長選挙が同様に実施され、総長会派で“東”の新成会(清水英雄会長)が推した小川議員(群馬)が全員賛成で選出された。小川副議長は「宗議会の円滑な運営のため身を賭していきます。皆さんの御指導をお願い致します」と述べた。

この後の本会議では、議会運営委員会9人の他、総務・法人、財務、教学、社会の常任委員会委員各7人も選出。議会構成が容易に進んだため、宗議会は会期を1日短縮し、この日で閉会した。

【栢木議長の略歴】
昭和21年(1946)3月生まれ、64歳。愛知県岡崎市・慈照院住職。平成6年から宗議会議員、現在5期目。前副議長。サイパンへの慰霊・青少年交流活動を実施して今年で32年になる。

【小川副議長の略歴】
昭和24年9月生まれ、60歳。群馬県吉岡町・常泉寺住職。群馬教区宗務所の庶務・教務・財務補佐を歴任。平成14年から宗議会議員を務め、現在3期目。地元では吉岡町教育委員も務めた。

2010/05/27 朝鮮半島出身戦没者遺骨 祐天寺から219柱返還

朝鮮半島出身戦没者遺骨を安置する東京都目黒区の浄土宗祐天寺(巌谷勝正住職)で18日、第4次の還送追悼式が韓国人遺族や日韓両政府関係者ら100人が出席して行われた。今回は、氏名の判明していない遺骨を含め219柱で、総計423柱となった。

岡田克也外務大臣は追悼の辞で、先の大戦で韓国出身の軍人・軍属が犠牲になったことに「深い哀悼の念」を捧げ、「できるだけ早くご遺族にお返しできるよう、引き続き日韓政府間で協力し、全力で取り組んでまいります」と述べた。

韓国側の対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会の鄭善太委員長は、従来の2組織を廃止し、業務を統合して同委員会が発足した経緯を報告。そして「長い歳月の間、我が家族だけは、必ず生きて帰ってくるという、一縷の望みを持つ遺族の方々が、近くて遠い、異国の地の納骨堂で、その燃えて残った一握りの家族の遺骨に再会する、無念な思いを、どうやって言葉で表現することができるのでしょうか」と思いやった。

日本政府からの要請で祐天寺には1125柱が安置されていた。その後の調査で韓国側が698柱、北朝鮮側が427柱であることが判明。日韓両政府の協議により返還が始まり、今回の第4次で423柱に達し、275柱が祐天寺に残る。

2010/05/27 タイに再び微笑みを

14bfe1611e491f_L1.jpg「微笑みの国タイに来て下さった皆さんによって、再びタイに微笑みをもたらしてくれたと感謝しています」。5月23日、タイのバンコク市郊外で開幕した第7回国連ウェーサク式典。その開会式で主催団体の一つであるマハチュラロンコン仏教大学(MCU)のプラ・ダマコサジャン学長(国連ウェーサクの日国際委員会議長)は世界83カ国1800人の海外参加者を前に、こう歓迎の言葉を述べた。

政治騒乱による非常事態宣言、反政府派の暴動と治安部隊の出動で一気に緊張感が高まったバンコク。釈尊の生誕・成道・涅槃を一度に祝するウェーサク式典の開催を危惧する声もあがっていたが、ホスト国である立場から同学長は、式典会場や宿泊場所がデモや集会地域からかなり離れていることや安全確保を伝えるメッセージを発していた。式典直前には夜間外出禁止令が徐々に緩和された。

そうした中で迎えたウェーサク式典開会式は、MCUアユタヤキャンパスの大講堂で盛大に挙行された。ダマコサジャン学長は、同じ主催団体である日本のITRI(インナー・トリップ霊友会インターナショナル)の協力と共に600人超の訪問団にも感謝の言葉を。そして全参加者に「皆さまの出席は仏教国タイの励みになります」と感謝した。

開会式で各国代表が次々にスピーチしたが、危機を乗り越えての開催を支持するメッセージもあった。今回のテーマは「世界の危機からの回復―仏教的視座から」(仮)。このテーマに即して「今日の世界は危機が溢れている。いかに平和的に共存するかが課題だが、文化が違っても仏教の教えは一つ。慈悲が大事である」「世界の問題は人間の問題。まず自分が慈悲の心で行動することだ」(ブラジル代表)といった意見も寄せられた。

ウエーサク式典は24日にアユタヤキャンパスでの分科会とワークショップ、25日はバンコク市内の国連会議センターで記念式典が開かれた。 日本からは、ITRI日本センターの浅川重美会長、世界連邦仏教徒協議会(世連仏)の叡南覚範会長(天台宗毘沙門堂門跡門主)及び訪問団一行が参加した。

2010/06/03 奈良・東大寺晋山式 北河原公敬第220世別当が東塔復興誓う

14c076bf68b429_L1.jpg「平城遷都1300年」で賑わう華厳宗大本山東大寺(奈良市雑司町)で、5月27日午前、北河原公敬・第220世別当(同宗管長)の晋山式が執り行われた。北河原別当は本尊・盧舎那大仏の宝前で、すべての生命の安寧を祈って同寺を創建した聖武天皇の願いを追想。現代社会に華厳の教えを生かしていく姿勢を明確にした。招待者ら約800人に加え、大勢の観光客や修学旅行生が1300年続く伝統の法儀を見守った。
一際高い須弥壇上に着座した北河原別当は、本尊・盧舎那大仏の宝前で伝燈奉告文を読誦。国内に蔓延する「人倫の喪失」や「宗教心の欠如」、国外で続発するテロや紛争を憂慮し、すべての生命の安寧を祈った聖武天皇の願い「動植咸(ことごと)く栄えんと欲す」を追想した。
さらに行基菩薩・重源上人・公慶上人ら、伽藍の造営・再興を成し遂げた歴代の勧進上人の功績を賞揚。その芳躅を慕い、「(1362年に焼失した)東塔復興の悲願成就」と「華厳の弘通」に力を尽くすことを誓った。
奈良仏教の隣山を代表して、薬師寺の山田法胤管主が祝辞。「南都七大寺とそれぞれの末寺は、根っこのところでつながった歴史と文化を持っている」としたうえで、今後も「手を取り合いながらがんばっていきたい」と要望した。
続いて、奈良県の荒井正吾知事、奈良市の仲川げん市長、信徒総代代表の辻井昭雄氏が祝辞。親交の深い歌手のさだまさしさんが、乾杯の発声を行った。

2010/06/03 臨済宗妙心寺派 河野太通管長が登座

14c076df543833_L1.jpg河野太通・臨済宗妙心寺派第33代管長(全日本仏教会会長)の晋山式が5月29日、京都市右京区の大本山妙心寺で執り行われ、宗内外から約1300人が参列して就任を祝った。

法堂での晋山式では、山内住職、僧堂老師、同派要職者、檀信徒、また臨黄各派管長や他宗派の山主・重役らが参列する中、河野管長が入堂して須弥壇に登座。

参列者を前に「風穴垂語シテ曰ク、若シ一塵ヲ立スレバ家国興盛シ一塵ヲ立セザレバ家国喪亡ス。雪竇拄杖ヲ拈ジテ云ク、還ッテ同生同死底ノ衲僧有リヤト」としたうえ、「新法山云ク、立不立ハ問ワズ如何ナルカ是レ一塵。卓拄一下 一粒粟中ニ世界ヲ蔵シ 半舛鐺内ニ乾坤ヲ煮ル」との法語を読み上げ、晋山の決意を告げた(法語引用は読み下し文)。

祝辞に立った斎藤祥見宗議会議長は「いま新管長猊下をお迎えして宗門として第一歩を踏み出すことは、一同等しく心強く感ずるところ」、高橋金兵衛全国花園会会長は「どうか世界平和の実現と人類の平和のためにご活躍をされることを」と述べて就任を祝った。続いて河野管長が復興した龍門寺のある兵庫県姫路市の石見利勝市長が、一層の活躍を祈念した。

松井宗益宗務総長は「私どもも教団も社会からその存在意義を問われております」とし、「かかる時、既に様々な分野で御活躍をいただいている又玄窟(ゆうげんくつ=河野管長室号)老大師を管長様としてお迎えできましたことは誠に法悦の極みであります。これから管長猊下のもと宗門挙げて力強く邁進していきたい」と述べた。

河野管長は昭和5年(1930)1月大分県生まれ、80歳。花園大学卒業後、祥福寺僧堂で修行。山田無門老師に参じて嗣法し、その後祥福寺僧堂師家、花園大学学長を務めた。平成16年龍門寺住職に就任し大衆禅堂場師家となる。東南アジアでの戦没者遺骨収集、難民支援などの社会活動でも知られる。

今年4月1日に妙心寺派管長に就任、同時に全日本仏教会会長にも就任した。管長任期は4年。同会長は2年。

2010/06/03 全日仏 イオン葬儀事業に関し加盟団体に情報提供を要請

小売り大手のイオンが葬儀事業に参入したことを告知したプレスリリースなどに疑問点があるため、全日仏は5月20日付けで、加盟団体に「お伺い」文書を送付。理事会でも加盟団体に対して事情等を報告し、情報提供と確認を要請した。

イオンは5月10日から葬儀事業のサービスを展開。僧侶や8宗派約600カ寺の宗教法人と連携しているとの触れ込みだ。全日仏は、営利企業が葬儀に参入することを問題としているわけではないという。

疑問視している第1点は、イオンが「読経一式+普通戒名=25万円」など複数の選択肢を設定していることに、「営利企業がお布施まで言及して、目安と言いながら料金体系化していいのか」。

第2点は「戒名を授ける資格(住職資格)を持ったお坊さんばかりです。8宗派の総本山から許可を得ており」と謳っているが、「本当に8宗派の総本山から許可を得ているのか」。

第3点はネット上で全国2000近い葬儀ホールを紹介しているが、収益事業をしていない寺院も含まれる。檀信徒以外の葬儀の場合、「席貸料」とされ、課税対象となるため注意を促している。 全日仏は、「お伺い」のなかで、イオングループの規模を考えると、料金体系化などが「一般社会から標準仕様とみなされることになりかねない」として憂慮している。

2010/06/03 青山・善光寺 山の手大空襲の慰霊法要を厳修

14c077043f4076_L1.jpg1945年5月25日の山の手大空襲から65年目にあたる先月25日、東京・港区の浄土宗善光寺(川名観恵住職)で空襲犠牲者の慰霊法要が営まれた。渋谷や新宿、中野を焦土にし、約3700人が亡くなった山の手大空襲。法要には空襲体験者ら約80人が参列し、犠牲者を追悼した。

法要は川名住職を導師に厳修。空襲を体験した高齢者も多く参列したが、一人一人が仏前に歩み寄り、焼香をして犠牲者の冥福を祈った。川名住職は「こうして生かさせていただいている事に感謝しながら、一緒にお十念を」と語りかけ、参列者全員で念仏を捧げた。

法要は戦後直ぐに青山地区の僧侶をはじめ、町内会有志によって、表参道交差点(現みずほ銀行前)で始まった。復興と開発が進むなか、昭和40年頃には善光寺境内に慰霊碑が建てられ、法要の場も善光寺に移された。三十三回忌を終えてからは、善光寺が法要を引き継ぎ毎年欠かさず執り行われている。

6、7年前には参列者が2人ということもあったが、戦後60年の際に善光寺近くの書店「山陽堂」が告知を掲示、08年には空襲の体験談をまとめた書籍『表参道が燃えた日』が刊行されたことで、法要の存在が広まり、参列者が増加した。参列者同士の交流会も行われるようになった。

今年始めて参加した82歳の女性は、17歳の時に空襲に遭遇。「必死で川へ飛び込んだ」ことを今も覚えているという。「家族が散り散りになって逃げたが、焼け跡で再会できた。その時の喜びは忘れられません」と目頭を押さえた。この日は小学校の同級生にも再会。慰霊の機会を得たことに感謝しながら、「仏さまも喜んでくれていると思います」と涙が溢れていた。

2010/06/10 仏教伝道協会 薬師寺で実践布教研究会

14c1080a35251f_L1.jpg㈶仏教伝道協会(沼田智秀会長)は2日から4日、平城遷都1300年で賑わう奈良市の法相宗大本山薬師寺を会場に、第40回実践布教研究会を開催した。超宗派の僧侶、寺族、坊守など約70人が参加し「布教伝道―日光・月光菩薩に学ぶ」をテーマに、現代に即した布教のあり方を探った。

伽藍復興のための写経勧進で知られる薬師寺。3日朝には安田暎胤・薬師寺長老が写経心を説き、参加者が実際に写経を行った。次いで、山田法胤薬師寺管主が「法相宗に学ぶ―唯識のこころ」、森本公誠・東大寺長老が「華厳宗に学ぶ―華厳のこころ」、村上太胤・薬師寺執事長が「布教伝道―日光・月光に学ぶ」と題し講話。南都仏教の教えを学んだ。

昨年に続き2度目の参加となる岡田真美さん(高野山真言宗)は「薬師寺の僧侶の話は魅力的で実践で鍛えられているという印象。他宗派の方と交流を持つことで、自分の宗派のことが違った角度から見える。刺激になります」と充実した様子。

初参加となったドイツ出身の尼僧、高津ドロテーさん(臨済宗建長寺派)は「読経の節にも違いがあり朝のお勤めは感動しました。たくさんの出会いもあり、宗派を超えたこうした活動がもっとあったらいいと思う」と話していた。

2010/06/10 真宗大谷派 KSEステップ1取得「環境宣言」も発表

真宗大谷派(安原晃宗務総長)は1日までに環境マネジメントシステム「KESステップ1」を取得、今後より一層省エネ・省資源化に全職員で取り組んでいくことを発表した。KES取得は宗教団体では初めてだという。

KESは、NPO法人「KES環境機構」(京都市右京区)が運営する環境マネジメントシステムの規格。国際規格のISOに比べ、低コストで手間もかからないため、京都の中小企業はじめ多くの企業が取得に乗り出しているという。

大谷派は、年1月に04始まった「東本願寺と環境を考える市民プロジェクト」に取り組む中でKES取得の提案を受け、環境マネジメントのマニュアルを提出し、このほど認証を受けた。

認証を機に「環境宣言」も発表。「宗務役員(職員)一人ひとりが、地球環境の保全に関する学びを深める中で、自主的且つ積極的な取り組みを行い、宗門の将来と社会(地球)の未来を創造するため、真宗大谷派宗務所を挙げて、環境負荷の低減に努力します」と「基本理念」を掲げた。

重点的取り組みとしては「電力使用量の削減(前年比1%)」「事務用紙使用量の削減(前年比1%)」「東本願寺と環境を考える市民プロジェクトを中心とした定期的な環境教育・啓発活動の実施」を挙げた。宗務所で電灯やパソコン等を使用しない時は電源を切ったり、エアコンの過度な使用を控え、コピー用紙は両面を使用したり再生紙を使うなど、できるだけ環境に負荷のかからないよう、全職員が取り組むことにしている。

こうした取り組みは同機構が毎年評価・点検し目標設定はその都度変えていく。

2010/06/10 第31回日韓・韓日仏教文化交流大会 比叡山に両国から200人集う

14c1082955d43e_L1.jpg日韓両国の仏教者が一堂に会し、平和祈願法要や学術交流大会で善隣友好の絆を深める第31回「日韓・韓日仏教文化交流大会」が、5月25日から29日まで、滋賀県大津市の天台宗総本山比叡山延暦寺を主会場に開催された。

メインテーマ「両国の仏教を学ぶ」のもと、日本側約80人、韓国側約120人が参加。根本中堂で平和祈願法要を営み、共に平和・地球環境問題などに取り組むことを盛り込んだ共同宣言を採択した。

日韓仏教交流協議会(会長=宮林昭彦・浄土宗大本山光明寺法主)と韓日仏教文化交流協議会(会長=李慈乗・曹渓宗総務院長)が主催、(財)全日本仏教会と延暦寺が後援した。比叡山での開催は初。

2010/06/17 日蓮宗 加行所正伝師に太田順道氏

平成22年度の日蓮宗加行所の正伝師に就任する太田順道氏(豊島区・玄静院住職)の辞令交付式が14日、東京・池上の宗務院で行われた。

渡邊総長から辞令を手渡された太田氏は「佐野前伝師様の全てを踏襲し、さらに行堂清規を益々遵守し、各行僧が成満できるように、任務遂行精進することをお誓い致します」と挨拶。

内局交えた談話では、渡邊総長や内局役員が先般のインフルエンザについて、加行所での迅速な対応に感謝。事前の入行考査や説明で体調を崩す者が極力減ったとの認識を示すと、極限の状況に近づく荒行での精神状態や体調管理に太田氏の経験が生かされると話した。

太田氏は「とにかく佐野伝師様の全てを受け継ぎ、入行僧に寒一百日を満行させたい。そのために自ら範を示したい」と抱負。現在の行堂については、「クリーンな行堂となっている。重要なのは、志願して入っていることを忘れないこと。自分が志願して入ってきているということを、忘れがちになる者がいると、とんでもない事故につながる」と話し、最後まで自分たちの意思で入行したことを明確にしていく指導を行うと示した。

太田氏は、昭和22年生まれ。63歳。立正短期大学宗教学科卒。昭和48年に初行入行。平成11年に五行を満行した。平成14年に加行所副伝師に就任。その後、東京西部宗務所長、国内開教対策委員会委員、教育研修委員会専門員を歴任。平成19年からは、佐野前暁正伝師のもとで加行所副伝師を務めていた。

2010/06/17 水月会 ネパール・ルンビニにシッダルタ小学校を建設

14c19d8135d9f7_L1.jpgアジアの貧困地域で教育援助を実践する超宗派の僧侶有志による「水月会」(一般社団法人/本多隆法代表理事)は、釈尊生誕の地、ネパール・ルンビニ県で学校建設事業を進めている。

水月会ではこれまで中国、ベトナム、バングラディシュ、ミャンマー、スリランカで学校建設、奨学金支援などを行ってきた。今年は初めてネパールの地で同事業を展開する。建設委員長は小原智司氏(愛知県・曹洞宗西光寺住職)。

建設地は釈尊生誕の地、ルンビニ県のルーパンデヒ市アクラアデアリ村にあるネパール日本友好ルンビニ・シッダルダ小学校。釈尊の名を冠した小学校に、小原氏も「ご縁があるなと思った」と建設に意欲を見せている。

シッダルタ小学校には175人の生徒が通い、校長先生を含む4人の先生が指導にあたっている。近隣の村民を含め生徒はヒンドゥー教徒だという。建物はレンガ造りのうえ、老朽化が進んでおり、倒壊の危険性があった。教室数も2つしかなく、雨季もある同地では非常に困難な教育環境下だった。

小原氏は昨年12月に現地調査を行い、学校再建の必要性を確認。今年4月には学校責任者と階段の上、調印を済ませた。工事は5月から着工し、10月末に竣工。建設規模は建物面積236㎡で一階建。5教室、1教員室からなる。新校舎の完成によって生徒200人の収容が可能。12月には当地で落成式を行う予定だ。

小原氏は2回の訪問の際に現地責任者に対し、事業の意図を伝えると共に、教育の重要性を再三伝えた。小原氏は「学校周辺は田園風景が広がり、本当に良い環境です。教室数が増えることで、学校に通えていない子どもたちにも、教育の機会が増えれば」と期待を寄せている。

2010/06/17 駒込高校 新入生が一日回峰行

14c19d8dd8d8f1_L1.jpg東京・文京区の天台宗関係校・駒込高等学校(末廣照純理事長/河合孝允校長)の恒例行事「比叡山研修」が、今年で20周年を迎えた。5月末、入学して間もない新1年生が2泊3日の修行合宿で、厳格な仏道生活を体験。最終日の一日回峰行では、急峻な行者道約30㌔を歩き切った。

「音を立てるな!」「(イスの)背もたれに寄りかかるな!」。食事時、僧籍を持つ同校教師と比叡山延暦寺の指導僧から、容赦のない叱声が飛ぶ。1年生の男子102人、女子98人が、一斉に威儀を正す。散漫な気持ちで食事をすることは、すなわち〝食物のいのち〟を粗末にしていることなのだ。そこから感謝の念は生まれない。

最終日の一日回峰行。これも高校生用に安全な特設コースを巡るのではなく、回峰行者と全く同じ道を歩く。「本物を体験させないと意味がない」(同校の杜多堯慶先生)からだ。

午前3時過ぎ、根本中堂に参拝。暁闇の中、生徒たちは懐中電灯の光だけを頼りに、峰中深くに分け入っていく。悪い足場のすぐ横が崖になっているなど、決して気を抜くことを許さない荒行だ。「(隊列の)間を開けるな!」「しゃべるな!」。ここでも、先達を務める僧侶の厳しさは変わらない。

こうした伝統的な修行を課す背景には、一体どのような教育方針があるのか。そして生徒一人ひとりは、そこから何を感じ、何を体得していったのか。
突然の修行生活に戸惑いながらも、懸命に取り組んでいく生徒たちに密着した。

2010/06/24 鶴見大仏教文化研究所 総持寺御移転100年シンポ

14c231a8bd1e0a_L1.jpg横浜市鶴見区の鶴見大学仏教文化研究所(木村清孝学長・所長)は同大会館サブホールで12日、曹洞宗大本山總持寺御移転100年記念公開シンポジウム「總持寺の歴史と文化」を開催。總持寺が明治時代に能登から横浜に移転して、来年で100年。地元の郷土史家など約130人が参加し、總持寺の歴史と魅力が語られた。

2010/06/24 ありがとう基金 DPAC、日本でも行動

妙智會教団ありがとう基金(総裁=宮本丈靖会長、代表=宮本けいし理事長)は今月8・9両日、スイスのジュネーブで「子どものための祈りと行動の日(DPAC)」第3回企画委員会を開いた。宮本代表はじめ、クル・ガウタム同委員会議長(前ユニセフ事務局長)、ハンス・ウコ共同議長(WCRP欧州委員会会長)、立正佼成会の国富敬二総務局副局長ら20人が参加し、11月20日のDPACについて話し合った。

はじめに宮本代表が開会の挨拶をし、昨年のDPACイベントが世界29都市で開催され、約9千人が参加したことを報告。さらにローマ教皇が一般謁見の際にDPACに言及したことや、アン・ベネマンユニセフ事務局長のイベント参加など、大きな成果を上げることができたことへの謝辞が述べられた。

そして、「今年の10月には、妙智會教団60周年の記念式典を執り行います。式典には、皆さまを招待するとともに、日本でのDPAC立ち上げの機会と位置付け、DPACのことを紹介し、参列者とともに祝いたいと考えています。また、ハイレベルパネルを開催し、日本の宗教指導者、行政機関、国連高官、メディアなどを集め、日本国内にDPACを公表することも計画しています」と、具体案を明らかにした。

2日間の会議では、「DPAC09年の報告」「2010年DPACに向けた計画」「企画委員の地域でDPACのイベントを組織する」「 妙智會開教60周年について」「DPACの3~5カ年計画」の5つ議題を取り上げ、活発な意見交換を行った。

開教60周年に関する話し合いでは、宮本代表が式典の中でDPAC紹介と祈りを行うことが提案され、今後小委員会を立ち上げ、諸宗教の祈りのあり方を計画することとなった。また日本でDPACを広く公表するために10月13日、東京でハイレベルパネルを開催することも決定した。

また11月20日に向けて企画委員が拠点としている国や地域において、何らかのイベントを開催することが同意された。

DPACの11月20日は国連総会で子ども権利条約が調印された日(1989年)によっている。

2010/06/24 浄土宗大蓮寺 「自然賞」を創設

NPOや市民と協働し人生の完成期を支援する取り組みを進めている浄土宗大蓮寺(秋田光彦住職、大阪市天王寺区)はエンディング文化の創造に寄与するNPO・個人に贈る「自然(じねん)賞」をこのほど創設、第1回「自然賞」をNPO法人エンディングセンターの井上治代理事長(東洋大学教授)へ贈ると発表した。

同賞は人生の最後を自分らしく迎えるエンディング文化に寄与するため創設。大蓮寺が02年境内墓地に建立した生前個人墓「自然」(個人が生前に契約して会員となり会員同士の交流で縁をつくり共同で供養するシステム。現在まで90人が入会)の志納金の一部をもとに運営する。

賞金は30万円。2年1回の割合で、同寺と協働して事業を進めてきたNPOや個人に贈ることにしている。

第1回「自然賞」受賞が決まったエンディングセンターの井上理事長は90年代から永代供養墓の普及に尽力。「樹木葬」や「桜葬」といった新しい葬送も提案し、社会的に定着させてきた。こうした取り組みは「従来の寺と檀家という閉じた関係からNPOが個々の市民を葬送でつなぐ斬新な転回」(秋田住職)ともなった。

秋田住職は同賞創設にあたって「これから供養は先細りの時代。その中で寺と檀家という制度の中での供養だけでなく、血縁を超えた市民が参加し、みんなで供養していく、供養のコミュニティを創っていくよすがにしたい」と話している。

第1回の授賞式は7月10日午後2時から同寺で行われる。

2010/07/02 念仏者九条の会 鈴木邦男氏が講演

浄土真宗本願寺派の僧侶・門徒らでつくる「念仏者九条の会」の第10回全国集会が6月23日、岐阜県大垣市の大谷派大垣別院同朋会館で開かれ、一水会最高顧問の鈴木邦男氏が記念講演した。国家に追随した戦前の宗教のあり方を批判する一方、日中戦争に反対して国と宗門から処罰された同派僧侶・竹中彰元を称賛した。

高校はキリスト教系の私立高校に入学したという鈴木氏は、当時からヨーロッパの宗教改革に疑問を抱いていたとし、カルバンが「どんな不正・堕落・怠慢も許されない、それが摘発されないなら正義の人が冤罪で捕まって殺されてもいい」と述べたことやルターが「ドイツ農民戦争の時、国家に逆らったものは殺せと言った」ことを紹介。

また戦前日本で「仏教界もキリスト教界も神道も戦争を支持」、「玉砕」「散華」という言葉で死を美化し、「一殺多生」と言って「戦争を煽った」ことも挙げて、歴史的事実として宗教の負の側面を強調した。

その上で「宗教は国家を超えるもの。国家が戦争をしようとしても自分達は反対だと言う。それでなかったら意味がない」「僕は天皇制は必要だと思うが宗教は天皇制を超えるもの」として国家に追随した戦前の宗教のあり方を批判した。

その反面、日中戦争に反対し、逮捕起訴され有罪判決を受け、宗門からも処分された当時の大谷派僧侶・竹中彰元を「宗教者の鑑」と述べ、その行動を称賛した。

この他、九条改正については「一度は国民投票してこれを日本の憲法と認めるか考えた方がいい。それで皆が認めようとなったら、われわれの憲法でいいのでないか。戦争だって反対ですから」と主張した。

戦前は天皇のために命を捧げろという教育によって戦争に駆り立てられたとの意見に対しては「宗教者も一般の人も頑張って死んでこいと言ったのではないか。自分達が従ったのに天皇が悪かったというのはどうか」と反論した。

翌日24日は竹中彰元の自坊、垂井町の明泉寺を訪れ事績を学んだ。

「念仏者九条の会」は信楽峻麿元龍谷大学学長を呼び掛け人代表として05年7月に発会。5年を経て賛同者は1245人を数える。今集会には60人以上が参加した。

2010/07/02 曹洞宗宗議会 単記制案否決

選挙規程改正をめぐる論戦が行われた曹洞宗(渕英徳宗務総長)の第110回通常宗議会(国安格典議長)は最終日の6月24日、賛否両者の討論を経て採決が行われ、賛成32票、反対37票で否決された。渕内局の有道会部長は賛成、總和会部長は反対した。

議会初日、有道会により議員発議で提出された選挙規程の改正案は、系別・同数を維持しつつ、選挙の際の連記制を単記制とするもの。本会議では議論を経て、同議案は特別委員会に付託された。最終日まで委員会と両会派の会合が断続的に開かれ、調整が続いた。

24日午後7時過ぎ、同議案のみ本会議の議題とし、改正反対側である總和会の水野格正氏が登壇。2日目に宮前正道氏と水野氏が詳しく反対意見を表明したことを報告して即座に降壇した。

一方、有道会側はベテランの河村松雄氏が賛成意見を述べた。自身の2度にわたる選挙体験と有道会内での検討を踏まえたながら、「選挙人の立場に立って考えた時、2名連記の投票方法は選挙人の自由な意見を侵害し、自由な投票が担保されていないと言わざるをえない」と断じた。

さらに両系別のうち、一方だけが投票になる場合は、もう一方を無投票とし、「無投票当選が担保されない」状況を解消するために単記制にすべきだと主張した。

両会派の討論を経て採決が行われた(出席議員70人)。起立方式で、賛成が有道会の32人、反対が總和会の35人と永平寺系無所属2人の37人。国安議長は採決に加わっていない。

2010/07/02 ダライ・ラマ法王 世田谷学園で記念講演

14c2d7223c33b4_L1.jpg6月下旬から来日中だったチベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ第14世法王は25日、東京・世田谷の曹洞宗関係校・世田谷学園中学高等学校(林秀穎校長)を訪問し、記念講演を行った。全校生徒1400人が体育館に参集し、智慧や慈悲を説く法王の言葉に耳を傾けた。法王はまた英語を基調とした語学の習得して、世界に目を向けるように呼びかけた。質疑では生徒からの質問を楽しむように答え、交流を深めた。法王の同校訪問は3年前に続いて2度目。

2010/07/08 浄土宗 大遠忌事業の人形劇 年内13カ所で公演へ

14c358a54e9e81_L1.jpg浄土宗(里見法雄宗務総長)が宗祖800年大遠忌を記念して制作した人形劇「ミラクル・キッズ―勢至丸と奇跡の子どもたち」の公開舞台練習が2日、大阪府岸和田市のマドカホールで行われ、里見総長、中村康雅宗議会議長はじめ同宗関係者に公開した。創作された劇の内容に注文も出たがが、全体的には好評だった。

人形劇は、浄土宗が法然上人の教えを伝えるため、1948年創立の人形劇団クラルテ(大阪市住之江区)に制作を依頼。宗内に設置した大遠忌演劇制作委員会(現在は実行委員会)も脚本作りに関わって創作した。

物語は、現代の子供たちが平安時代と現代を行き来して、少年時代の法然上人(勢至丸)と出会い友情を深め、「仇は討つな」と父親に言われた勢至丸が現代の戦火も目にして僧侶になることを決意し、「この世界のあらゆる人と共に生きる、それが人間だ」と目覚めていくという内容。巨大な紙ヒコーキが登場するなど様々な仕掛けで子どもが楽しんで見られるよう演出されている。

この日の公開舞台には4、5歳の地元保育園児も観劇に訪れ、コミカルな演出に時折歓声を挙げていた。

1時間45分の公演後は劇団側と意見交換が行われ、出来栄えを称賛する声が出る一方、「勢至丸が一人でチャンバラしたり敵討ちをしたりするのはどうかな。お母さんと一緒に悩んで敵討ちを止めていくことにした方がいいのでは」との僧侶の注文もあった。

脚本作りにも関わった演劇実行委員会の稲岡正順委員長は「なかなかいい出来になっている。劇はあくまでフィクション。史実に忠実にして高邁な物語にしてはとの意見もありますが、演劇的な感動が得られ楽しく見られるのが一番」と話した。

同委員会の樋口隆信副委員長は「演出の仕方で子どもの反応が意外と大きい。勢至丸が仇打ちに行くのは史実ではないですが、芸術としておおらかに見てほしい」と話していた。

人形劇はこの2日後の4日、滋賀県甲賀市のあいこうか市民ホールで初演。この後は、11日大阪市天王寺区のクレオ大阪中央で公演されるなど年内13カ所での公演を予定している。遠忌最終年度の23年度までに全国48カ所での公演を目指す。

2010/07/08 日蓮宗 開教師会議「すべての国にお題目を」

14c358b81b931b_L1.jpg日蓮宗(渡邊照敏宗務総長)は6月29日から7月1日まで、東京・池上の宗務院で第7回世界開教師会議を開催した。外国人開教師5人を含む18人の開教師が世界各地から参加。日本側からは、古河良晧伝道部長、及川玄一国際課課長の他、国際布教対策委員や外郭団体役員ら計18人が参集し、国際開教に携わる関係者が一堂に会した。

初日はハワイ開教区、北米開教区を中心に海外開教地の現況報告や開教布教センター(米国カリフォルニア州)の平井智親所長の基調講演が行われた。平井所長は「海外開教の現在と未来」と題し、海外布教における具体的目標の設定を提案。私案を披露した。

海外の日蓮宗の将来について平井所長は「祖願である〝一天四海皆帰妙法〟が達成された状態とはどのような状態を言うのか。どのような状態ならば、祖願は達成されたと言えるのでしょうか。具体的に考えなければならない。ゴールが設定されなくては、いつまでもたどり着けない」と明確な目標の設定を提案。

そのうえで「誰もがお題目を唱える世界を私は信じているが、それは世界の人口約60億のすべてがお題目を唱えるのが最終目標なのか。これはキリスト教、その他の宗教が消えることを意味するのでしょうか」と提起し、アフガニスタンでのタリバンの石仏破壊などを例に「世界中で宗教を原因とした争いがあり、勝者は敗者を滅亡させてきた。日蓮宗も将来的にそうした勝者になるべきなのでしょうか。私は誰もがお題目を唱える状態と他宗教が滅亡するのは同じ意味だと思っておりません」と私見を発表。

海外開教の具体的目標を、「国連加盟国192カ国のすべてに寺院を建立すること」とし、「すべての国においてお題目の声が聞こえる状態を目指す。是非この目標を達成したい」と私案を展開した。

現況報告は、ハワイと北米の開教区が取り組みを紹介。寺院経営についての悩みなども情報共有した。

2010/07/08 尼僧法団が60周年式典 仏教精神を共通の心に

(財)全日本仏教尼僧法団(鷹司誓玉総裁/川名観恵理事長は)は6月30日、東京・内幸町の帝国ホテルで、結成60周年記念式典を挙行した。団員や来賓、約180人が出席し、昭和25年に超宗派の尼僧によって結成された法団の歩みを振り返り、先達の遺徳を讃えた。

初めに鷹司総裁を導師に、60周年慶祝・世界平和祈願法要、団員並び賛助団員物故者追善法要を厳修。法要は浄土宗・吉水会流御和讃、曹洞宗・梅花流追善供養御詠歌、臨済宗・花園流御和讃といった各宗の御詠歌で荘厳された。

鷹司総裁は「約60年も以前に、全く組織力もなかった全国の尼僧様方が、宗派や地域を越え、仏教精神のみを共通の心の拠り所として法団を設立され、社会の浄化を目指して活動を始め、様々な成果を上げてこられた」と披瀝。慈母会館の建設、国際女子留学生寮の運営、戦争犠牲者の供養法要、自然災害義援金、福祉施設の援助など、法団の活動を紐解き、「個人個人の力は小さなものですが、法団としてまとまった数の力で大きな成果を上げてきて下さいました。先輩諸法尼方の意志と業績を長く継承し、社会に必要とされ喜ばれる法団であり続けますよう、共に今後一層の努力精進に務めまいりたい」と語った。

川名理事長は、昨年末に慈母会館をリニューアルして始まった月例座禅会や写経会、子ども福祉助成事業など新たな取り組みを紹介。「皆さまの温かいお気持ちを尼僧法団へお向けいただき、ご指導をいただきたい」と協力を呼びかけた。

2010/07/16 仏教伝道協会 モンゴル語聖典発刊 今年2冊目、世界46言語に

㈶仏教伝道協会(沼田智秀会長)が事業の柱としている「仏教聖典」の外国語訳とその普及事業として、このたび「モンゴル語(モンゴル文字)仏教聖典」が発刊された。今年2月には、「ブルガリア語仏教聖典」が発刊されており、この2言語を合わせてこれまで「仏教聖典」が46言語に翻訳され、世界各国に普及された。

モンゴル文字は、中国・内モンゴル自治区において約320万人が使用する言語。また、モンゴル国では「キリル文字」によるモンゴル語が使われいるが、最近では伝統的なモンゴル文字教育も復活しつつあるという。

すでに発刊されている「モンゴル語(キリル文字)仏教聖典」をモンゴル文字に翻訳。担当した桜美林大学のバイカル准教授は、近年、内モンゴルでも貧富の差の拡大などの社会不安があるとし、信仰や宗教の必要性を感じているという。一方で、仏教や宗教に関する書籍が少ない現状があるなかで、「仏教聖典」を「仏教の教えが非常にわかりやすく説かれている」と、仏教聖典の普及に期待を寄せている。

2010/07/16 日本仏教鑽仰会 今年も東京お盆まつり〝支えてくれた人に感謝〟

14c3fb573c9810_L1.jpg日本仏教鑽仰会(中山静麿理事長)主催の第68回「東京お盆まつり」が1日、中央区の銀座ブロッサムで開催され、約240人が参集した。大法要と記念法話の後、日本舞踊の献舞や津軽三味線、民謡を公演。参加者は蒸し暑さを忘れて、華麗な舞と演奏を楽しんだ。

今年で65歳になる藤城尚理事は、開会に寄せて「68回ということは、昭和16年。私が生まれる前からこのお盆祭りが続いている。当時、戦争で衰退する中、『このまま放っておけない』と初代理事長がはじめた。この場で挨拶をする感慨に浸っております」と述べた。

開会式に続き、赤羽法善寺保育園園児が献灯・献花し、お盆の歌を合唱。元気な園児の姿に、会場は声援と拍手に沸いた。
中山理事長は、お盆の由来を説明。お盆で行う供養が、普段気づかない罪にも思いを寄せる機会になることを語り、お盆の意義を確認した。

(財)全日本仏教会の三浦一実社会人権部次長も「お盆は、仏様のみ教えに触れる大切な機会」と挨拶。お盆を通じて、自分を見つめ先祖を供養し、世界の平和を思う祈りの大切さを語った。

今年の大法要は、日蓮宗大本山池上本門寺が出仕。同寺執事長の野坂法雄氏を導師に厳修された。

記念法話では、「盂蘭盆のこころ」と題して渡邉寶陽氏(立正大学名誉教授)が登壇。「誰しも知らず知らずに誰かに支えられて生きている」と感謝の重要性を説示した。「77年間知らなかった父や母の苦労を兄弟に聞き感謝したことがあった」と回想。過去に支えてくれた人と今周囲で支える人に感謝し、お盆のこころを未来につなげることが大事と呼びかけた。

清興は舞踊では、東京水木会同人による華麗な舞い。力士を模した迫力のある所作まで、惜しみなく至芸を披露し、会場は蒸し暑さを忘れる楽しい一時を過ごした。

2010/07/16 参院選 全日仏推薦16人当選

11日投開票の参院選で全日本仏教会(全日仏)は5党33候補を推薦(7月1日現在)し、16人が当選した。

民主党は19人推薦し当選8人、自民党は9人推薦し当選6人、みんなの党は3人推薦し2人当選した。立ちあがれ日本と国民新党の各一人を推薦したが当選には到らなかった。推薦者には住職2人が含まれているが、ともに落選した。

民主党候補のうち比例の6人は全員落選した。前職の松岡徹氏も6万8千票にとどまり、全体的にふるわなかった。選挙区では13人を推薦し8人が当選した。

他方、自民党は比例で3人が当選。片山さつき氏は自民党トップの30万票近くを獲得し、それに次ぐ27万票の佐藤ゆかり氏は日蓮宗の推薦を受けて奮闘した。選挙区では推薦した3人がそろって当選した。

全日仏は3年前の参院選で、自民党10人(当選5人)、民主党8人(同7人)、国民新党2人(同1人)を推薦するなど自民党に軸足を置いていた。昨年の衆院選後の政権交代の影響もあってか今回は民主党の推薦候補が多数を占めた。

立正佼成会は6年前と同様、比例で民主党現職の白眞勲氏と藤末健三氏を推薦。票が伸び悩んだものの、共に11万票以上を得て2期目の当選を果たした。

選挙区では、民主党23人、自民党4人、諸派・無所属3人の30人を推薦、民主党15人、自民党4人、が当選した。

新日本宗教団体連合会(新宗連)は比例で立正佼成会推薦の2氏に加え、同じ民主党現職の喜納昌吉氏の3人を推薦。喜納氏は7万票余で届かなかった。新宗連は3年前の参院選では自民党1人、民主党2人を推薦し、3人とも当選している。

宗教法人幸福の科学を母体とする幸福実現党は、比例で22万9千票を得た。昨年の衆院選比例は45万票で、半減した形になった。

なお選挙前の6月1日付で日本宗教者平和協議会(宗平協)は「教団ぐるみ選挙は憲法違反であり、民主主義を破壊します」とする声明を発表し、宗教教団をあげての選挙活動を批判した。

2010/07/22 ノンドナーカード 改定移植法施行で4万5千枚配布 大本が全国23カ所で

本人の意思表示がなくても家族の承諾があれば臓器提供が可能になると同時に、15歳未満の子供からの臓器提供も可能にした改定臓器移植法施行日の17日と翌18日、大本(田賀紀之本部長)と外郭団体の人類愛善会(会長=田賀本部長)は全国23カ所で「ノン・ドナーカード」約4万5千枚を配布し、かねてからの主張である脳死は人の死ではないことをアピールした。

大本は改定移植法施行前の4月25日から「ノン・ドナーカード」の配布活動を展開。「脳死は人の死ではありません。脳死状態からの臓器提供はしません。最善の救命救急治療を望みます」と表示した教団作成の同カードを京都・大阪など各地で配布した。

施行日の17日と翌18日は、田賀本部長、教団幹部・職員はじめ信徒ら計589人が街頭に出て山形市・東京都新宿区・さいたま市・川崎市・奈良市・熊本市など各都県の主要都市で配布した。

臓器移植法では脳死を人の死としているが、教団は脳死状態とされた小児が1年9カ月生き続けたことなど事例を挙げて反対。と同時に救急救命治療が十分になされない危険性や、臓器移植に代わる治療法の採用を訴えている。

2010/07/22 埼宗連 教会で「平和の祈り」

14c49565849056_L1.jpg埼玉県宗教連盟(理事長=中山高嶺・埼玉県神社庁庁長)は20日、川越市のカトリック川越教会(ワレ・ジャン司祭)で、加盟団体による『平和の祈り』を開催。新宗教、仏教、神道、キリスト教の各団体から約70人が参加し、平和な世界の実現に向け、超宗教で心を一つにした祈りを捧げた。

開会式では、埼玉県宗教連盟の三羽善次副理事長(日本基督教団)が、「平和は上から作られるものではない。一人ひとりの心の中にあるもの。宗教間の色んな争いも絶えないが、我々は共に理解し、祈りを共に分かち合いましょう」と平和への祈りを呼びかけた。

(財)埼玉県佛教会の萩野映明会長も「自分たち一人ひとりが平和を祈念しないと実現できない。心の根の中に平和を祈念して、やっていきたい」と挨拶。さらにテロや自然災害などにも祈りを捧げる意志も表明した。

「祈り」は7団体が順番で担当。埼玉県佛教会からは、9人の各宗派僧侶が出仕し、萩野会長を導師に般若心経などを読誦。一心に平和を祈念した。

立正佼成会越谷教会は、妙法蓮華経常不軽菩薩品などで読経供養。その他にも天理教、日本基督教団、さらに埼玉県新宗教連盟を代表して松緑神道大和山、解脱会、修養団捧誠会が参加。それぞれの儀礼で平和への祈りを捧げた。カトリック川越教会は、讃美歌『御手の中に』を斉唱。日本基督教団の参加者が一緒に歌う場面も見られた。

最後に行われた埼玉県神社庁青年部の祈りでは、祝詞をあげた後、玉串を奉納。会場全員で二礼二拍手一礼をするなど、各教団の儀礼を尊重した祈りの時間が持たれた。

会場を提供したカトリック川越教会のワレ・ジャン司祭(フランス)は「平和のシンボルは色々ありますが、聖書によれば、天と地を結ぶもの、和解の象徴として、虹があります。今日の祈りで私たちの心の中にまた虹がかかったと思う」と違いを超えて、平和を祈ることの大切を語っていた。

2010/07/22 葬儀参入のイオンに全日仏が意見書提出

流通大手のイオンが葬祭事業に参入したことを受けて、全日本仏教会(全日仏)は加盟団体に情報を提供すると共に、疑問点に関し情報確認を要請していたが、それらを集約する形で今月9日、イオンに意見書を提出した。

イオンは昨年9月から葬祭事業を始め、今年5月からは僧侶紹介サービスも開始し、HP上で概要を公開。全日仏側は特にお布施の目安として料金を明示していること、さらに、当初イオンのHP上で「戒名を授ける資格(住職資格)を持ったお坊さんばかりです。8宗派の総本山から許可を得ており」としていたが、本当に8宗派本山が許可したのか―の2点を問題視。5月20日、加盟団体に「お伺い」文書を配布し、情報確認を求めた上で、今月9日にイオンへの意見書提出に至った。

意見書は、仏教本来の布施の精神を護持する立場から、①HP上にある「読経一式+戒名料=〇万円」という料金体系の削除と、②8宗派許可は誤りにつき謝罪を要求している。

全日仏はこの意見書を、葬祭事業を行うイオンリテール株式会社と、本体のイオン株式会社に送付。21日現在、全日仏に回答等は届いていない。これに対してイオンは意見書の存在を認めつつ、「真摯に受けとめ、内容を検討させていただいております」(広報担当)とコメントしている。

2010/08/05 常楽寺美術館40周年 古代信濃に「法華経の光」

14c5a4bd270761_L1.jpg長野県上田市の天台宗別格本山常楽寺の境内にある常楽寺美術館(半田孝淳館長=天台座主)で、7月19日から8月8日まで、同館開館40周年記念特別展「法華経の光―天台法華宗、信濃へ」が開催されている。

同美術館は、常楽寺第55世の半田孝海大僧正が全国の寺院や旧跡を巡って蒐集した古瓦400数十点と同寺の宝物を展示するため、昭和45年に開館。今年で40周年を迎えた。

記念特別展「法華経の光」では、国宝3点をはじめ、重要文化財10点を含む計42点を展示。

第一章の「天台の法華経の美術」では、金銀の箔や砂子を散らすなどの善美を尽くした荘厳が施された『法華経(浅草寺経)』(国宝・平安時代・浅草寺蔵)、全面に仏を飾る空想上の花・宝相華を線刻し全体に鍍金、鍍銀をかけ分けた『金銅宝相華文経箱』(国宝・平安時代・延暦寺蔵)といった法華経の名品を展示。

第二章の「古代信濃の天台寺院」では、最澄が弘仁8年(817)に東山道から信濃を経て、上野・下野へ向け巡錫した記録をもとに、今も天台宗寺院の多い小県・佐久・筑摩と伊那地域に残る遺物から、古代信濃の天台寺院の表徴を探る。

信濃国分寺に伝わり平安期に遡る数少ない『十二神将像』、天台宗とも関係の深い白山神の勧請を物語る懸仏としては最初期の『金銅十一面観音懸仏』(上田市三島平自治会蔵・平安時代)などの尊像が豊かな仏教文化の実像をうかがわせる。

同展を企画した天台宗僧侶で京都国立博物館学芸員の久保智康氏は「最澄は東国布教に早い段階で出かけ、その際に信濃を通過された。そのことをきっかけに、平安前期から非常に多くの天台系の寺院が信濃の地に建った。正に法華経を広めようと東国に行かれたことで、信濃の国に法華経の光が射した」と語った。

7月18日には開会式が行われ、阿純孝・天台宗宗務総長、武覚超・延暦寺執行ら宗門関係者をはじめ、母袋創一・上田市長、小坂健介・信濃毎日新聞社社長らが出席。

母袋市長は「国家的な至宝を目の当たりにできるという夢が叶えられワクワクで感いっぱいです。上田市という世界の一隅を照らしてもらえた」と謝意。阿総長は「約40年前に宗門として『一隅を照らす運動』が始まった。社会に向かって開かれた寺にしようと美術館がおできになったのだろう」と、長年にわたる活動を讃えた。

2010/08/05 WCRP40周年学習会 核兵器のない世界を

14c5a5c55a65ce_L1.jpg(財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(庭野日鑛理事長)が主催する第37回平和のための宗教者研究集会「核兵器のない世界をめざして」(WCRP40周年記念行事学習会)が7月21日、東京・渋谷区広尾のJICA地球ひろばで開催された。先般のNPT核拡散防止条約再検討会議の成果を踏まえながら、市民団体・メディア・宗教者が取り組む核廃絶運動の現在と今後について議論。150人が参加した。

市民による平和運動を推進するNGOピースデポ特別顧問の梅林宏道氏が基調講演。NPT核拡散防止条約の3本柱として「核不拡散」「核軍縮」「平和利用」を挙げ、米国の核兵器開発研究予算額が過去最大に達するなど、「核軍縮」が極めて抽象的になっていると指摘した。

米国ニューヨークの国連本部で5月中に開かれたNPT再検討会議の最終文書に、「核兵器禁止条約への道筋」「核兵器の非人道性」が明記されたことを評価。宗教者に対して「人道的側面の普及」などを要請し、「共生社会を築くうえで、核兵器が大きな障害になっているという認識を広めていただきたい。それは、国連の理念を回復させることにもつながる」と期待した。

次いで、広島市に本社を構える中国新聞社・ヒロシマ平和メディアセンター長の田城明氏が、平和運動でメディアの果たす役割について説明。「被爆新聞社」として紙面やHPでシリーズ「核兵器はなくせる」を連載していることなどを紹介し、「『被爆体験』という日本人の実体験を、もっと世界に知らせていく必要がある」と話した。

一方、NPT再検討会議での「日本政府の影の薄さ」を懸念。「日本がアメリカの〝核の傘〟の下にあり続けていることがネック。その一方で、〝核兵器をなくしましょう〟と言っても説得力がない。日本はここから抜け出す勇気を持たなければ」と述べ、近隣諸国との間で「軍事に頼らない安全保障」を確立していかなければならないと主張した。

続いて、2氏を含む4氏がパネルディスカッションを展開。
NPT再検討会議の公式会合で、核廃絶を提言したWCRP国際軍縮安全保障委員会委員長の杉谷義純氏(天台宗宗機顧問)は、「人間は核兵器を持ったことで、地球を滅亡させられるようになった。宗教者はこの現実と核兵器の存在を許さないという視点で、社会に向かってもっと発信していかなければならない」と強調。核廃絶運動が政治・イデオロギーに支配されていた時代は過ぎ去り、「純粋に人間性の問題になった」との認識を示し、宗教者の一層の奮起を促した。

コーディネーターを務めたWCRP日本委員会軍縮安全保障特別委員の神谷昌道氏(立正佼成会ニューヨーク教会長)は、「核廃絶は自分自身の問題。(核廃絶の)価値観を共有しない人々に、どのように発信していけるか」と会場に問いかけた。

2010/08/05 真宗大谷派 本願寺維持財団を提訴

14c5a60b662c2e_L1.jpg真宗大谷派(安原晃宗務総長)は7月28日、財団法人本願寺維持財団(大谷暢順理事長)を相手取り、目的や解散後の残余財産の帰属先を変えた同財団の寄附行為の変更が無効であることの確認と信託契約の解除による信託財産200億円の返還を求める訴訟を京都地裁に起こした。

訴状等によると、同財団は大正元年(1912)11月、大谷派本願寺(真宗本廟)を維持することを目的として有力門徒から集めた寄付金10万円を基本財産にして門徒の神野金之助氏らが設立したとされるが、実質的には同派が設立。

同財団はその後も宗派から委託・譲渡された金銭や土地を管理運用し、それによって得た収益を宗派へ交付してきた。

しかし、昭和46年大谷暢順氏(大谷光暢前門首の二男)の理事長就任後、財団は同49年に宗務総長など宗派役員を理事職から排除し、宗派との関係を断絶。

同57年4月には寄附行為を変更して基本財産の処分を可能にした他、財団の目的に《納骨堂の経営》を追加した。この変更で平成4年には宗派が譲渡した京都駅前の土地9700平米を京近土地㈱に売却した。

さらに同63年5月、解散した場合の残余財産の帰属先を《目的を同じくする、又は類似の目的を有する公益法人、又は団体に寄附するものとする》と変更し、残余財産を本願寺以外に寄附できるようにもした。

これに対し大谷派は「設立者の意思に反するような変更、すなわち、寄附行為の本質的事項を変更するような変更は許されない」などと目的と残余財産帰属先の変更という寄附行為変更が無効であると主張。

また財団との「信託契約を解除する」と宣言し、これにより財団は「信託財産を返還すべき義務を負う」として信託財産である土地の売却額200億円を求めた。


提訴後、京都市の宗務所で開かれた会見で安原総長は、大谷理事長へ平成10年4月以降18回面談を申し入れたが返信がなかったこと、財団が目的を果たすべき両堂等修復で御影堂修復が完了しても改善の兆しが見られないことを挙げ「関係正常化をひたすら願ってきたがもはやこの段階は過ぎたと判断し、実をあげるための対策として本訴に及んだ」と述べた。

また「08年からの公益法人改革で維持財団が重大な岐路に立たされている。現状のまま放置することは真宗本廟護持のため集められたご懇念を雲散霧消させてしまう」と公益認定期限が迫って提訴を決断したことも強調した。

05年3月、前門首四男大谷光道氏が内事を退去して終結したとも報じられた“お東紛争”だが、安原総長は「維持財団が門徒のご懇念を占有している限り、教団問題は継続していると認識している。この問題に終止符を打つべく今日の提訴に至った」とも述べた。

(会見で提訴の理由を述べる安原宗務総長㊧)

2010/08/19 新宗連 「8・14式典」で発表 平和のたすきリレー

14c6ce86b681b7_L1.jpg新日本宗教団体連合会(新宗連)と新日本宗教青年会連盟は終戦記念日前夜の14日夕、東京・千鳥ヶ淵戦没者墓苑で第45回「戦争犠牲者慰霊並びに平和祈願式典」を挙行。親子連れや若者など首都圏から2600人が参集して平和への誓いを新たにした。

「8・14式典」として定着している新宗連をあげての式典。今年は一際厳しい残暑の中で行われた。開会にあたり岡野聖法新宗連理事長(解脱会法主)が挨拶し、式典と墓苑の由来を紐解きながら、「今こそ心を一つにして平和を祈り、現代社会に潜む危機を打開する第一歩を、勇気をもって踏み出しましょう」と訴えた。

教団別礼拝には16教団が参加。円応教から始まり阿吽阿(あんな)教団まで、それぞれの儀礼に従って執行された。

そして新宗連青年会の保積志弘委員長(大和教団)が平和へのメッセージを発表。昭和20年8月15日のほか沖縄終戦の6月23日、広島原爆の8月6日、長崎原爆の8月9日を列挙し、「その日に心を傾け明日の終戦を迎えたいと思います。あわせて本土空襲、東南アジア諸国の戦火と非常なる苦窮の日々も忘れてはなりません」と主張した。

さらに新宗連青年会の具体的な行動として、結成50周年を迎える来年、「『世界平和への道 共に手を携えて前進しよう』と大きな志を建て、全国11連盟の青年と共に北は北海道より南は沖縄から出発し、新宗連青年会が誕生した近畿連盟の地に本部を置くパーフェクトリバティー教団大本庁をゴールとして来年4月より11月26日まで、たすきリレーを実施する」と宣言した。

たすきリレーは「祈ろう つなごう 歩きだそう」が合言葉。さっそくプレたすきリレーとしてこの日の式典後から9月8日の大阪を目指して実行することも保積委員長から報告された。

2010/08/19 神田明神で三教シンポ 神儒仏から「いのち」考察

14c6ce98ad905a_L1.jpg神田明神(神道)、㈶斯文会(儒学)、㈶東方研究会(仏教)は7日、東京・千代田区の神田神社で三教合同シンポジウム「心の通い合う社会を求めて『いのちを生きる』」を開催。伝統的な三教の教えから人間の「いのち」をどう生きるかを探った。

儒教の立場から発題した加地伸行氏(立命館大学教授)は、「生」の前提として「死」を考えようと提起し、東北アジアにおける葬祭儀礼を考察。「別れられない」という悲嘆の中から「葬式」「お墓」「霊魂を呼び出して出会う」といった習俗が生まれ、「その論理を儒教が作った」とした。

また「遺体」という語が儒教では「遺された体という意味」であるとし、「己の体は父母の遺した体。父母の体は祖父母の体。この体は千年前、5千年前のどこかにいた」と明言。「孝」の教えが、「父母への敬愛」だけでなく、「祖先祭祀」「子孫一族の繁栄」の3点からなるとし、「いのちの連続のなかで生きる」儒教の生命観を解説した。先祖との絆を育み、利己主義の抑止力として「お仏壇」の重要性にも言及した。

僧侶として自死問題に取り組む篠原鋭一氏(曹洞宗長寿院住職)は、自殺問題から「いのち」を論じた。自死念慮者との対話から、「孤立な状態におかれた時に自死の念慮が始まる。苦悩を共有し、寄り添う人がいれば死への思いが生へと変わる」と指摘。自死を「追い込まれた末の死」と位置付け、「追い込んだのは我々、日本社会。自死は一緒に生きる社会の連帯責任です」と強調した。 篠原氏は「殺す、殺されるような環境を作ってはいけない」とし、いのちを守る有縁社会の実現に向けた「菩薩行の実践」への協力を求めた。

神道の立場からは三橋健氏(国学院大学客員教授)が、神前で唱える祝詞から神道の「いのち」を説示。『延喜式』にある「祈念祭」で唱えられた最古の祝詞から「命以て……依さし」を引用し、「いのち」が、神から「授けられた」ものではなく「寄(よ)さされた」とする生命観を示した。三橋氏は「いのちが神様から寄さされた以上、常に神様と深くつながっている。いのちを通して神様とつながる私たちは孤独ではない。全ての生物は神様から寄さされたものとしてみなつながっている」と述べた。

意見交換では三教の生命観や葬儀のあり方について論究。篠原氏は「自利利他 自他不二」の教えから、「自分と自分以外の人と生きて、初めていのちというものが生きる」、三橋氏は「祭」を例えに、「神輿は1人では担げない。村祭りに参加する中で、いのちがつながっているとその教えを実感する」と説いた。また加地氏は葬儀について「人の死をみなで集まって送る。これは人間の智恵です」と儀礼の重要性を指摘。「つながり」「関係性」といった共通キーワードで人間の「いのち」を探求した。

同シンポは一昨年6月に三教の地元で起きた秋葉原無差別殺傷事件を受け企画。神儒仏の思想を通して「心の社会貢献」をしようと、三教協力の取り組として始まった。

2010/08/19 比叡山宗教サミット23周年 半田座主復帰、核廃絶訴える

14c6ced6f38ae7_L1.jpg宗派を超えて宗教者が集い平和のために祈りを捧げる「世界平和祈りの集い」(主催=天台宗・延暦寺)が4日午後、大津市の比叡山延暦寺一隅を照らす会館前で開かれた。この日は病気療養から法務に復帰した半田孝淳座主も参加し、持ち前の力強い声で核兵器廃絶・軍縮を訴えた。

集いは阿純孝天台宗宗務総長の「心の中にこそ平和を保つよう努力すべき」との挨拶で開始。

昨年に引き続き透明の球体に青少年が作った青・白・緑の折鶴を入れて「地球」を形作り平和への願いを表現した後、延暦寺一山住職による法楽が行われた。

この後4月21日に軽い心筋梗塞で倒れ入院・療養しその後快復して今月1日に復帰した半田座主が平和祈願文を朗読。「今なお世界は核の恐怖にさらされている」とした上で「私たち宗教者には宗教間の対話と協力を通じて核の廃絶、軍備縮小などの真の世界平和実現に向けた積極的提言・取り組みが求められている」と訴えた。

引き続いて半田座主の他、出口紅大本教主、阿部龍文真言宗智山派管長、庭野日鑛立正佼成会会長、宮本けいし妙智會教団理事長らの他、また海外からローマ法王庁のアルベルト・ボッターリ・デ・カステッロ大司教、世界仏教徒連盟のパロップ・タイアリー名誉事務総長らが登壇し「平和の鐘」が鳴り響くなか平和の祈りを捧げた。

「平和を語る」をテーマに高見三明長崎カトリック大司教区大司教の講演、ユニセフへの募金贈呈などの後、今年は広島原爆で傷つきながらも残った被爆ピアノで「月光」「アメイジング・グレース」「赤とんぼ」3曲が演奏され、平和の尊さを感じさせた。

最後に武覚超延暦寺執行が「真の世界平和のため互いの叡智を結集して精進努力していかねばなりません」と挨拶して集いを閉じた。

集いは1987年8月比叡山宗教サミットが開かれたのを機にその後毎年8月に開催。今年も青少年を含め約千人が参加した。

2010/08/26 南米パラグアイに菩薩像 近隣の日系人のお参り続く

14c7632ea608cb_L1.jpg南米パラグアイに、日系高齢者の「心のふるさと」になっている新名所がある。

場所は同国南東部の日本人入植地「ラ・パス移住地」。同地のイサオ・タオカ氏の邸内には観音と地蔵の2躯の菩薩様が祀られており、そこに近隣の日系高齢者のお参りが絶えないという。

イサオ・タオカ(田岡功)氏は、徳島県出身の一世。14歳の時に親に連れられ同国へ移住した。ラ・パス農協の理事長やラ・パス市の市長を歴任したのち、駐日パラグアイ共和国特命全権大使に抜擢。平成17年から平成21年まで、日本とパラグアイ国の絆の強化に尽力した。大使就任時には日本国籍を離脱していたが、外国の駐日大使になった初めての「日本人一世」だ。

観音菩薩像は500キログラムあり、地蔵菩薩像は小ぶりである。台座に使われている吉野川石と仏像は、帰国の祝いとして徳島県在住の親族である田岡計男氏(共栄石材社長)から贈られたもの。昨年(平成21年)12月24日に「お披露目」を行ったところ、徐々に近隣の人々の噂にのぼるようになり、参拝者がやってくるようになった。日系高齢者は菩薩に手を合わせて故郷・日本の幼年時代を追想するほか、地域社会や家内安全を願っているとか。

タオカ氏によると、毎月24日を「おまつり」の日として決め、ささやかな集いを開いているという。宗教者は介在しない。タオカ氏は「私は特定の宗教を信じていませんが、高齢になると、お地蔵様や観音様に自然と手を合わせる気持ちになります。子供時代に仏様を拝んだことも思い出します」と述べている。

【取材・太田宏人】

写真=観音脇の短冊は、昨年の「お披露目」の際に高知県出身の移住者・秦良寺清氏が詠んだ無季俳句。「菩薩見ゆ開眼式の喜びや 土佐っ子」と書かれている。

2010/08/26 本願寺派仏教総研 「プロジェクトダーナ東京」傾聴ボランティア始動中

14c763439a0eee_L1.jpg「築地本願寺から来た江田です。よろしくお願いします」「同じく吉井です」。まずは大きな声で自己紹介をしてから、2人は二手に分かれて老人たちと話し始めた。今年1月から毎月一回訪れるデイサービスの老人介護施設。ようやく顔を覚えてもらったとはいえ、最初のひと言は緊張が走る。これをうまく切り出すことができれば、すんなりと輪にはいることができる。傾聴ボランティアの開始だ。

僧侶による介護施設訪問は、「プロジェクトダーナ東京」と呼ばれ、東京・築地本願寺内にある一般社団法人仏教総合研究所の活動の一環である。

もともとプロジェクトダーナは、ハワイのモイリリ寺院の門徒の提唱から始まった。僧侶や門徒が地域の老人介護施設や独居老人宅を訪れ、話し相手や清掃などのボランティア活動である。それを首都圏で応用したのだ。基本活動は、「最低、月に1回、1時間、寺院の近隣の人々のために時間を提供して、お話を傾聴する」。同研究所スタッフでこの事業を担当する江田智昭氏(34)は、「誰もが気軽にできるボランティアなのですが、奥が深い」と話す。

プロジェクトダーナ東京の活動は現在、首都圏6箇所の施設で11人が参加。「誰もが気軽にできる活動」であり、さらにその輪を広げていく予定だ。最近、「不明」高齢者の存在が明らかになった。ほとんどの教団は青少年教化を謳っているが、団塊世代の高齢化が現実化してきた。高齢者を視野に入れたプロジェクトダーナ活動が注目される。

写真=傾聴の前に話題を投げかける江田氏。

2010/08/26 青年僧侶が街頭へ 仏教界への期待度を調査

14c76354152573_L1.jpg「僧侶は現代社会に対して何ができるのか」という問題意識のもと、東京近郊の青年僧侶が集まり、超宗派仏教青年会「BOUZ(ボウズ)」をこのほど結成した。活動の第一歩として24日、一般市民の声に耳を傾ける「仏教界への期待度・実態調査」を〝おばあちゃんの原宿〟こと豊島区巣鴨で開始。同調査は仏教タイムス社と共同で行い、引き続き都内各所で実施される。

「BOUZ」事務局は千葉県流山市の真宗大谷派・流山開教所源正寺(不二門至浄住職)。第1回目の調査は午前11時から午後4時半まで、巣鴨地蔵通り商店街に面する真言宗豊山派眞性寺を中心に実施。僧侶6人が2班に分かれて、参拝者らに協力を呼びかけた。

調査方法は、スケッチブックの各見開きに、「お寺は(僧侶は・仏教は)必要ですか?」「お寺に(僧侶に・仏教に)期待することはありますか?」などの設問を掲げ、回答者が「YES」「NO」の欄にシールを貼っていくというもの。
この日の調査協力者は39人。大半が「必要」「期待している」欄にシールを貼ったが、その際様々な声が寄せられた。

「お坊さんに拝んでもらわないと、あの世に行けないじゃない」「お寺がなくなると、お墓がなくなるから困る」と、葬送と来世の安心のために「必要」という意見が多数。「お寺がなくなると、火葬場もなくなるの?」という難問まで飛び出した。「霊園に墓を設けたので、お寺を必要としなくなった」という趣旨の発言もあった。

「お布施」への意見も。「お布施の〝お気持ち〟が、いくらかわからないので困る」「檀家ごとにお布施の額が違う。平等にした方がいい」

「お寺(菩提寺)には年1回、お盆の時だけ行く。住職の顔も知らない」という女性は、「仏教は必要だけれど、今のままではダメ。だから(必要と不必要の)中間」と答えた。一方、巣鴨には「毎月お参りに来ている」と話し、信心深い様子だった。

「お坊さんは人の道を説くんだから、しっかり勉強していただきたい」「お坊さんはもっと親しく社会に出て行ってほしい」という辛口エールも。「お寺は〝日本の良さ〟。なくなってほしくない」という激励もあった。

調査結果は12月上旬までにまとめられ、本紙上で公表する。事務局の不二門住職は、「統計というよりも、〝僧侶が実際に街に出て聞いた市民の声〟として貴重な調査になる。それぞれの仏教青年会などの勉強会で、活用できるものにしたいですね」と意欲を見せている。

2010/09/02 高幡不動尊 大師堂・聖天堂で上棟式

14c7f5f4648503_L1.jpg東京・日野市の真言宗智山派別格本山高幡不動尊金剛寺(川澄祐勝貫主)は8月26日、再建中の大師堂・聖天堂の上棟式を執り行い、古式に則った儀式で工事の完成を祈願した。

上棟式は大師堂・聖天堂の両堂で同時に厳修。大師堂では川澄貫主を導師に、聖天堂では杉田純一執事を導師に法要を執り行い、次いで社寺建築の㈱奥谷組が古式に則った工匠式を営んだ。「曳綱ノ儀」では、綱に繋がれた棟木を「エイエイエーイ!」の掛け声と共に参列者全員で曳き上げた。「槌打ノ儀」では、棟梁が建物の永続を祈願する言葉と共に棟木が打ち固められ、工事の無事完成が祈られた。

同寺は、江戸時代の安永8年(1779)の大火で総本堂の大日堂をはじめ、一山の伽藍の多くを焼失。その後復興がすすみ、昭和62年に大日堂根本改修工事が完了したが、大師堂は昭和8年に再建されたものが老朽化、聖天堂は焼失後一度も再建されなかったが、今回の再建事業によって、230年ぶり伽藍が整う。

直会の席で、川澄貫主は「二つのお堂の上棟式を同時に行うことはなかなか経験がないのではないか」と述べ、奥谷組の協力に謝意。先代・秋山祐雅大僧正の再建事業の発願を引き継ぎ、「先代がやり残されたことが私の仕事。本当に皆さんのお力添えで事業が進められていると身に沁みて感じます」と感謝の言葉を重ねた。

さらに「先代には『なまじっかなお説教をするよりも、みなさんに気持ちよく来ていただいて、気持ちよく帰っていただく。それが本当の布施なんだ』と言われた。私流に『皆さんに1年中楽しんでいただけるお寺、命の洗濯をしていただけるお寺』をモットーにしている」とし、伽藍の復興へ意欲を語った。

大師堂には昨秋に完成した新弘法大師像を本尊として安置。一方、聖天像は聖天堂の焼失後、五重塔地階に安置されているが、再建を契機として、古くから同寺に伝わる聖天信仰の復興も期していく。両堂ともに平成23年3月竣工、同4月の国宝まつりの前後期間中に落慶法要を執り行う予定となっている。

写真=大師堂で曳綱ノ儀を行う川澄貫主(左)

2010/09/02 醍醐寺 国宝・五重塔を開扉

14c7f611d4e9ad_L1.jpg総本山醍醐寺(麻生文雄座主、京都市伏見区)は8月29日、平安中期951年に創建された国宝・五重塔を13年ぶりに開扉し、写経奉納者200人余りに初重内部に描かれた両界曼荼羅や真言八祖を公開した。

五重塔公開は11日に発表して報道されており開始の午前10時半前には連日の暑さにもかかわらず参拝者の行列ができるほど盛況となった。

開扉にあたっては同寺の仲田順和執行長はじめ山内僧侶8人で法要を厳修。その間、参拝者が五重塔の正面にあたる西側ご宝前に写経を奉納・礼拝した後、正面の他、扉が開けられた三方からも内部の壁画を見て回っていた。この日は一般参拝者とともに智山派寺院子弟で大正大学などで学ぶ修行僧も訪れていた。

10時半から約1時間の公開で、160人が写経を奉納。午後1時半からも1時間公開され、47人が写経を奉納してこの日は終了した。

開扉は、同寺が公益法人として文化財など伝承されている寺宝をできるだけ公開していこうと実施。五重塔が醍醐天皇の菩提を弔うため建立されたのにちなみ、同天皇の月命日にあたる毎月29日(2月は閏年以外28日)の午前10時半と午後1時半から約1時間、写経奉納者を対象に行うことにした。

初重内部には心柱の四面に両界曼荼羅、壁面に善無畏を除く真言八祖が描かれ、そのうち弘法大師空海の像は現存するもので最古とされる。建物と共に、壁画も国宝に指定されている。

公開に合わせて総門から西大門までの参道ではフリーマーケット「醍醐市」が新たに開かれ、手作り人形、陶芸、ガラス彫刻、バッグ、古着、山野草などを扱う露店約60店が出店して賑わった。

2010/09/09 日蓮宗中央教研 「無縁社会」を考える

日蓮宗現代宗教研究所(三原正資所長)は7・8日の両日、東京都大田区の宗務院で第43回中央教化研究会議を開催。今年1月に放送され、大きな反響を呼んだNHKスペシャル「無縁社会」を共通テーマに取り上げ、現場の取材をした板倉弘政氏(NHK報道局記者)が基調講演。改めて地縁、血縁そして社縁までもが途絶える現代の日本社会の姿を考察した。約150人の僧侶が参加した。

板倉氏の講演では、テーマとなった「無縁社会」をビデオ放映。番組では、全国1783の自治体に調査を行い、年間の自死者数に匹敵する約3万2千人の〝無縁死〟が判明。そのうち約1千人が官報に掲載される身元不明の行旅死亡人だった。

板倉氏は番組で紹介したケースを説明する中で、地縁と血縁が途絶える過程を解説。無縁死の予備軍に地方出身の単身者という共通項があり、故郷に親戚がいても、両親が亡くなった時点から地縁が途絶える例を挙げ、「地縁と血縁は密接な関係がある」と指摘した。

さらに「無縁死は貧困問題と結びつけられることも多いが、ワーキングプアを越える広がりがある」と述べ、一流企業に務めた熟年離婚者が退職と同時に無縁化するケースも紹介。「お金を沢山持ち、立派な老人ホームに住んでいるが、心には孤独感がある」と語り、無縁死は誰の心にも〝ひっかかる〟問題だと語った。

こうした状況を示すデータとして、国の人口問題研究所の人口モデルを提示。20年後には全ての自治体で、独居世帯が世帯数で一番多くなるとの試算を示し「3世代同居から核家族化、そして単身化へとすごいスピードで進んでいる」と単身化や未婚化の行き着く先を危惧した。その上で年金や介護保険を例に「人が1人で生きるのが当たり前の時代になった。しかし、国の制度はまだ同居が前提で追いついていない」と制度面でも警鐘を鳴らした。

遺体・遺骨の引き取りに関しては、親族が引き取りを拒否する問題を提起。「一番多いのは甥・姪が断る場合。取材中、最初はとんでもない親族かと思っていた」と話したが、生前交流がなかった親戚の遺体・遺骨の引き取りに、親族が躊躇することは「自分に照らしても責められない」と吐露した。

板倉氏によると、引き取り手がいない場合、遺体は自治体の手で処分される。多くは寺院の合祀墓に埋葬されるか、病院の献体になるという。番組では放送できなかったが、「取材で病院の献体を見て絶句した。まだそのままの状態で冷凍室に保存されており、その姿が今でも目に焼き付いている。人生の最後が官報の10行程の記事や病院の献体番号では、あまりに寂しい」と嘆息した。

番組中で紹介した全国から無縁仏を受け入れている日蓮宗寺院・富山県大法寺(栗原啓允住職)等の寺院の活動については、「何度か直葬などの場に立ち会ったが、非常に寂しい。(大法寺の方が)よっぽど良いと思う」と評価。番組のメッセージを視聴者に伝えるに当たり、ナレーションよりも「宗教者が語った方が、重みがあると思った」として、栗原住職のコメントを採用した理由も明らかにした。

2010/09/02 台湾、臨床宗教師の育成本格化

14c7f61b84e3f8_L1.jpg仏教看護・ビハーラ学会(藤腹明子学会長)の第6回年次大会が8月27日から29日まで、新潟県上越市で開催された。28日午後には上越教育大学学校教育実践研究センターで、国際シンポジウム「東アジアにおけるビハーラの展開と現状」が行われ、日本・韓国・台湾3国の特色や課題について、医師・ビハーラ僧・研究者らが議論した。韓国・台湾の尼僧ら15人を含む135人が参加した。

台湾・慈済大学病院の緩和ケア医である王英偉氏は、仏教の緩和ケア施設で、他宗教の患者をケアする場合などについて説明。「まず患者の宗教を学び、患者と一緒に讃美歌を歌い、祈り、患者の信仰をもう一度よみがえらせる。時にはシスターや神父につなぐ」とし、「宗教師の役割は患者の心に寄り添うこと。宗教の専門家としてではない」と述べた。

台湾大学病院のチャプレンである尼僧の宗惇法師は、「末期がん患者の全人的ケア」に、医師や看護師、心理士、宗教師などから成る緩和医療チームであたっていることを説明。「末期に近づくほど、宗教師の重要性が増す」と話し、臨終説法で患者の不安定だった感情が落ち着いていった事例も示した。

これらの背景として、「台湾社会は臨床仏教宗教師の活動に肯定的」であることを指摘。3カ月以上入院している患者98人に宗教師の役割について尋ねたところ、「病人と家族が死に直面するとき、側にいてくれる人」との答えが84・4%を占めたという調査結果を示した。

さらに台湾大学病院で00年から、臨床宗教師の育成が本格化していることを報告。医療スタッフらとチームを組み、「チームで病室に入り、会議も一緒にする」と話した。育成指導の重要な点として、①ケースレポートを継続する②読書会などで経典を読み、どのようにケアに生かすか議論する―を挙げた。

写真=日本・韓国・台湾の特色や課題が明らかになったシンポ

2010/09/09 真宗佛光寺派 門主に渋谷笑子代務 女性門主は3人目

真宗佛光寺派第32代門主(佛光寺住職)に渋谷笑子(しぶたに・えみこ=法名・釈惠照)門主代務が1日就任した。笑子新門主は、暁真前門主の母で、女性門主としては同寺開創以来3人目となる。

同派門主は、暁真前門主が平成20年5月20日に辞任して以来空席が続いていた。2年3カ月余りを経て、今月1日に開かれた住職相承委員会(委員長=大谷義博宗務総長、渋谷家や内局15人で構成)が笑子門主を推戴、門主が承諾した。

笑子門主は、大正14年5月生まれ、85歳。大阪出身。昭和23年4月に第29代真照門主と結婚。同41年4月に得度。暁真前門主辞任後の平成20年10月に門主代務に就任した。

1212年の佛光寺開創後、女性門主は第9代了明尼公(南北朝から室町期)と第12代真意尼公(幕末から明治期)の2人がおり、それ以来となる。

笑子門主は、就任にあたって2人の女性門主の存在をあげ、「お二方とも夫君のご門主様が先にご遷化され、またその跡も色々とご事情が生じて参り、その教団存続の危機にあたり、佛光寺の法灯をあくまでも絶やさないという強いご決意のもと、ご門主職に就任されたと伺っております。この上は、お二方をお手本としながら、門末のご理解とお支え、また家族の協力をも得まして歩んで参りたいと存じます」とコメントを発表した。

2010/09/09 浄土宗 坪井俊映門主が遷化 代行に服部法主就任

坪井俊映浄土門主・総本山知恩院門跡が6日午前1時50分、心不全のため京都市内の病院で遷化した。満95歳だった。通夜は8日午後7時から同市東山区の知恩院大方丈で営まれた。密葬は9日午後1時半から同大方丈で、表葬儀は10月8日午後2時から同御影堂で執り行われる。事態を受けて浄土宗では宗綱等に基づき門主代行に服部法丸大本山知恩寺法主が7日付で就任した。

坪井門主は、中村康隆前門主の辞任を受け平成19年(2007)3月25日に上任。法然上人800年大遠忌を前に全国を巡教するなどその円成に向け尽力していた。ところが、北川一有知恩院執事長によると、今年6月頃から体調を崩し左京区の自坊・長徳寺で療養。法務があれば知恩院に出てきていたが、8月頃から出られなくなった。9月2日には下京区の武田病院に入院した。

坪井門主は大正3年(1914)10月生まれ。龍谷大学研究科修了。佛教大学に就職し、昭和31年教授に就任。佛大では通信教育部長、文学部長、佛教文化研究所長を歴任した。一方、宗内では教学院理事、布教委員会委員長、勧学院勧学職などを務めた。

佛大退職後は平成6年6月大本山金戒光明寺法主に就任。同法主4期目の半ばで浄土門主・知恩院門跡第87世に上任した。

密葬・表葬儀の喪主は里見法雄浄土宗宗務総長と北川執事長、葬儀委員長は中村康雅同宗宗議会議長、橋田邦俊知恩院顧問会長が務める。

坪井門跡の遷化で知恩院が8日予定していた菅原達孝副門跡上任奉告式典・祝賀会と大遠忌200日前お待ち受け別時会は中止となった。

2010/09/17 全日仏が「葬儀」「布施」シンポ 寺院めぐる環境 厳しく

14c92c7f46dfbb_L1.jpg流通大手のイオンが葬祭業に参入し布施の目安を明示するなど、葬儀と布施の関係が注目を集めている。そうした中で(財)全日本仏教会(全日仏)は13日夕、東京・千代田区の秋葉原コンベンションホールで公開シンポジウム「葬儀は誰の為に行うのか?―お布施をめぐる問題を考える」を開催した。予想を上回る僧俗350人が出席。「葬儀=サービス業」と見られる背景として、社会変化に伴う寺檀関係の希薄化や、都市における宗教浮動層の存在が指摘された。

写真=僧俗350人が参加した「葬儀」シンポ(秋葉原)

2010/09/17 池上本門寺 多宝塔大修復法要 細部まで往時を再現

14c92c948e7d80_L1.jpg日蓮宗大本山池上本門寺(酒井日慈貫首)の多宝塔が37年ぶりに改修され、9日に日蓮大聖人御荼毘所『多寶塔大修復及び周辺整備事業』完成奉告音楽大法要が酒井貫首を大導師に厳修された。

改修された多宝塔は、同寺第47世輪成院日教が日蓮聖人代550遠忌報恩事業の眼目として、御荼毘所跡に建立。江戸時代の文政11年(1828)に上棟した。平成19年より始まった今回の改修では、多宝塔内部に安置されていた小宝塔の解体修理で、細部にいたるまで綿密な調査を行ない、材料、工法、意匠など技法的な面でも往時の姿の復元に努めている。

特に外部の塗装は研究を重ね、建立当初の漆の色あいを再現。池上の山の緑と鮮やかな朱色が華麗な印象を与えている。

総高は約17メートル。多宝塔としては、他に例を見ない規模。野坂法雄執事長は「世界的にも珍しいのでは」と感慨もひとしおだ。

多宝塔は東京都の有形文化財に指定されており、昭和48年に都の補助事業で改修が行われたが、不十分な箇所もあり、小宝塔に奉安されていた日蓮聖人の御真骨は御廟所に遷されていた。今回の改修では、御真骨に代わり、日蓮聖人が所持した水晶製の念珠を奉安している。

写真=法要で散華が舞った多宝塔

2010/09/17 大正大学 表現学部1回生の汗と情熱のねぷた制作

14c92cc8d31ba9_L1.jpg今年4月に入学した大正大学表現学部の学生159人と教員が製作したねぷたを発表するイベントが10日夕、東京・西巣鴨のキャンパスで開かれた。白い作品群に灯りがともされるとさらに淡い白光を放った。

「光とことばのフェスティバル―ウエストスガモねぷた祭2010」と銘打たれ、キャンパスと新7号館には学生と教員が制作した10作品と特別参加の2作品が展示された。木材と針金で骨格を形作り、それに白い紙を貼り付けるものだが、デザインから作業まで学生らは試行錯誤。しかも9月1日からの作業は連日の猛暑に加え、後半には台風襲来と短期間に自然の厳しさを体験することにもなった。

期間中、ねぷた製作で実績のある京都造形大学の学生と教員も応援に駆けつけた。ほとんどが発表当日に完成した。

作品群はコンテストにもなっており、最高賞に相当する学長賞には「大正ガネーシャ―エレファントthoughエレガント」が選ばれた。講評にあたった多田学長は「大正大学がこういう雰囲気になったのは初めてだと思う」とし、「言葉に言い表せないほどのうれしさです」と讃えた。

数年にわたって幼虫だったセミは、成虫になって一週間ほど寿命を終えると言われるが、学生たちの汗と情熱の10日間の作品は、2時間余のいのちの光を発した。

写真=最高賞の学長賞に選ばれた「大正ガネーシャエレファントthoughtエレガント」。新7号館内に設置された。

2010/09/30 高野山宗会 開創大法会事務局長を新設

高野山真言宗(庄野光昭宗務総長)の第139次秋季宗会(渡邊公雄議長)が8・9の両日、和歌山県高野町の総本山金剛峯寺宗務所に招集された。第2次庄野内局が迎える初の宗会。庄野総長は施政方針演説で、改めて「明朗で公開性のある宗・本の運営」に全力を注ぐ意志を表明した。「開創法会」に関する議案など、全23議案を原案通り可決・承認した。

平成27年の「高野山開創1200年記念大法会」の記念事業「中門再建」が、総事業費18億円で承認された。施工業者も㈱大林組に決定し、最大事業がいよいよ着工に入る。

「開創大法会事務局規程」を改正し、前内局時には山林部長の兼職だった事務局長職を新設。近藤本淳氏(高野山普門院住職)が就任した。

開創法会の全体計画は、内局、総監室会議、開創法会事務局で部門ごとに練り上げたものをまとめ、来年の春季宗会に提示する。

3カ年計画の奥之院参道整備工事を、9月1日から開始。10月1日から茶処で、試験的に法話を行うことも発表された。

自死問題への取り組みとして6月21日、宗派として初めての自死者慰霊法要を大師教会大講堂で営み、講演会を開いたことを報告。自死防止と、無縁社会からくる孤独死の根絶に向け、「家族・社会の絆」の再生に取り組むとした。

2010/09/30 「ARMS DOWN!」1099万人署名し目標達成

14ca44d33cb2e4_L1.jpg「世界の軍事費を10%減らし、その分を貧困・飢餓対策へ!」と求める軍縮キャンペーン「アームズ・ダウン!」が、目標の「1千万人分の署名」を達成した。その終了式典が25日、WCRP(世界宗教者平和会議)40周年記念行事の一環として奈良市で挙行され、会場となった東大寺大仏殿前に約3500人が参集した。

同キャンペーンは、昨年12月3日から始まった。WCRP日本委員会青年部会を中心に、仏教・神道・キリスト教など加盟教団の青年宗教者らが、全国で街頭署名などを展開。様々な困難を克服し、約10カ月間で国民の10人に1人に相当する数の署名を集めた。

終了式典では、署名が詰まった段ボール箱の山を盧舎那大仏の宝前に奉献し、東大寺の北河原公敬別当を導師に「平和の祈り」を厳修。約1300年前、鎮護国家の祈りのもとに行われた大仏建立の勧進と、現代の〝平和を願う署名勧進〟が響き合う、感動的な光景が現出した。

WCRP日本委員会の庭野日鑛理事長は挨拶で、「いつの世も社会や国を良い方向に変えるのは青年です」と激励。新たな取り組みにも期待感を示した。北河原別当は、「皆様方が宗教の垣根を越えて、一つの目標に向かった結果だと思っております」と祝福した。

続いて、同キャンペーンの八坂憧憲実行委員長(中山身語正宗青年本部長)らが登壇。八坂氏から、当日午後4時現在の署名総数が「1099万1069名」と発表されると、発願成就の喜びを分かち合う万雷の拍手がわき起こった。

民主党の岡田克也幹事長も来場。「1千万を超える署名が日本で集まった例を、今まで聞いたことがありません」と祝辞を述べ、市民の力の結集で「核のない世界も必ず実現できると思っています」と話した。

WCRP青年部会の深田良一幹事長(円応教青年会会長)が、閉式の挨拶。活動を振り返り、「一人ひとりの力が大きな力になると実感しました」と万感を込めつつ語った。

最後に参加者全員で「アームズ・ダウン!」と唱和。振り上げた腕を肘から降ろす軍縮ポーズで、元気に締めくくった。

写真=「アームズ・ダウン!」。唱和しながらポーズを決める青年宗教者ら

2010/09/30 世界宗教者まほろば大会 WCRP40周年記念し「まほろばの心」発信

14ca451798ff84_L1.jpg世界の宗教者が平和構築について討議した1970年の世界宗教者平和会議(WCRP)京都大会から40周年を迎え、(財)WCRP日本委員会(庭野日鑛理事長)は26・27両日、平城遷都1300年の地、奈良で、記念事業「世界宗教者まほろば大会」を開催した。15カ国400人が集い、多様性の尊重や調和などを包含する「まほろばの心」(宣言)を世界に発信した。これに先立ち京都ではイスラーム指導者会議が開かれたほか、記念シンポジウムや講演会が行われた。

40周年記念事業の中核であるまほろば大会は「世界を〝まほろば〟に―シルクロード終着の地、日本から発信する」を総合テーマに、奈良市ににある奈良県新公会堂・能楽ホールで行われた。

初日開会式では、大会に先立ち20日から3日間京都で開かれたイスラーム指導者会議と、約10カ月にわたった「アームズダウン!」キャンペーンについて、それぞれ報告なされた。

特にイスラーム会議について報告したパレスチナのムハンマド・ダジャーニ氏(アル・クドゥス大学教授)は、「まほろばの精神というのは慈悲・感謝・謙虚さ・尊重・尊敬・寛容・赦し・楽しむこと、そして他者を疑わないことなどの意味を持っていると学んだ。それと同じような価値観が聖典クルアーンにも示されている。それは預言者ムハンマドの言行に表された価値観とも同じ」とイスラームが決してテロを生みだすような、急進的な教えではないことを強調した。

基調講演は、編集工学研究所長で平城遷都1300年記念事業にも携わっている松岡正剛氏が「まほろばの心と宗教者の貢献」と題して話した。これを受けて同じテーマのもと2分科会が開かれ、それぞれ議論した。

2日目は、全体会議を経て「まほろば宣言」の最終案を全員で確認。さらに平城遷都1300年記念事業協会理事長の荒井正吾・奈良県知事を迎えて宣言の全文が読み上げられ、採択された。宣言はダジャーニ氏と庭野理事長から、荒井知事に手渡された。荒井知事は「この宣言が今、発信されたことの意味は十分ある」と賛同。過度の欲望に根ざした資本主義や地球環境問題を指摘した上で、「皆さま方の思想と発信が、これからの地球が持っている課題に向けて大きな力になると確信している」と謝辞を述べた。

宣言は、同事業協会が作成する「平城京レポート」に反映される予定。

写真=「まほろば宣言」を受け取る荒井知事(右端)。左側は庭野理事長とダジャーニ教授(奈良県新公会堂・能楽ホール)

2010/10/07 曹洞宗 總和会会長に佐々木氏

曹洞宗の宗政会派である總和会は9月30日、都内の本部で宗議会選挙後の総会を開き、新会長に佐々木孝一氏(内局教学部長)の就任を全会一致で決めた。佐々木氏は18日に招集される特別宗議会で首班指名を受け、新宗務総長になる。

当初、有力2候補による選挙かと目されていたが、佐々木氏以外に候補者は出ず、同氏が決まった。また理事長には宮下陽祐氏(内局教化部長)が就任した。
新会長の佐々木氏は昭和6年(1931)生まれ。第1区(東京)選出で、今回の選挙で6回当選。途中、新人の台頭で落選し一時宗政から離れていたが、平成19年議員に返り咲いた。現在の渕内局でも存在感を示している。多額損失を出した駒澤大学の責任問題に伴う理事長解任により、1月末より理事長を兼務している。

2010/10/07 名古屋・瑞穂区仏教会 人形供養で“お精”抜き

14cad8f63a2158_L1.jpg名古屋市の瑞穂区仏教会(蔵田邦春会長)は9月20日、所属僧侶合同による恒例の「感謝大法要」を開催した。協賛は名古屋市の大手葬儀社「三輪本店」(紫雲殿)。会場は紫雲殿堀田通斎場。

当日は、堀田通斎場のほか名古屋市内の「紫雲殿」11斎場で供養物(日本人形、ぬいぐるみ、古いアルバム、位牌等)の持ち込みが受け付けられ、各斎場で法要(お精【しょう】抜き法要)が営まれ、堀田通斎場では同仏教会による合同でのお精抜き法要が営まれた。供養料は志納だった。
供養物を持ち込んだ世帯数は約570世帯に及んだ。紫雲殿は場所と祭壇を提供した。受付は瑞穂区仏教会の僧侶たちが行った。

堀田通斎場での大法要ではまず、祖父江佳乃師による節談説教があった。祖父江師は節談説教で名を馳せた祖父江省念師の孫で、現在は真宗大谷派僧侶(名古屋市北区・有隣寺)。普段は親鸞聖人をテーマとする節談がメインだが、今回は超宗派の法要であるため、釈尊とキサーゴータミーの説話を取り上げた。
午後4時から、合同法要(人形供養)が始まった。法要には、約20人の超宗派の僧侶が出仕した。式次第は、三帰礼文、阿弥陀経、観音経。参会者は約50人だった。

同仏教会の蔵田会長によると、合同法要はもともと戦没者供養として営まれていた。「7~8年前に人形供養やお精抜き法要に変わりました。超宗派なので本尊はなく、仏旗を祭壇の中心に据えました」と蔵田会長は語った。人形を持ちこんだある主婦は「うちで処分するわけにもいかず、持ってきました。こういう法要があると助かります」と述べていた。
【報告・太田宏人】

写真=祭壇に安置された人形の数々

2010/10/07 吉野→高野山 「弘法大師の道」を調査

14cad91c4788bd_L1.jpg弘法大師空海が高野山を開創してから5年後の平成27年で1200年。大師は青年の頃、吉野から歩いて高野山を発見したとされる。記念の年を間近に控え、この弘法大師が歩いた道(以下「弘法大師の道」)を探ろうと、高野山金剛峯寺、吉野山金峯山寺と関係自治体・企業などで「弘法大師 吉野・高野の道プロジェクト」実行委員会(委員長=村上保壽・金剛峯寺執行)が発足し9月24日、第1回目の委員会が奈良県吉野町の金峯山寺で開かれた。

金剛峯寺は「弘法大師の道」の調査を平成27年の開創1200年大法会へ向けての事業として実施。村上執行と田中利典金峯山寺執行長の縁から同寺に協力を要請。奈良・和歌山両県の関係自治体・団体・企業にも呼び掛けて調査を進めることになった。

第1回委員会では《弘法大師が歩いた道を新たな地域資源とし、民間と自治体が協働して吉野・高野の両地域はもとより、弘法大師の道周辺の地域活性化に資するため必要な方策を検討する》との目的を掲げた規約を承認。委員長に村上執行(高野山真言宗教学部長)、副委員長に田中執行長が就任し、事務局は奈良県文化観光局に置くことが決まった。

実行委員会発足にいたる準備段階の調査によって「弘法大師の道」は、金峯山寺を起点に、五番関を経て洞川へ下り、天川村川合を通って天河大弁財天社付近から天狗倉山へ登り、山々の尾根伝いに高野山へ至るルートが想定されている。
弘法大師が吉野から高野へ至ったことを示す『遍照発揮性霊集』(空海著)には、〈空海少年ノ日、好ノンデ山水ヲ渉覧ス、吉野ヨリ南行スルコト一日、更ニ西ニ向ッテ去ルコト両日程、平原幽地アリ、名ヲ高野ト曰フ〉との記述があるのみで、どこを通ったかの詳しい記述や文献はないため、ルートはあくまで「想定ルート」になる模様。

委員会は12月に再度ルートを踏査するなどし、1300年前に道であったかの考古学的裏付けを行い、平成23年度以降「確定」する方向だ。 村上委員長は「懸命になって生きた1300年前の人の息づかいを少しでも感じるものにしたい」と意気込みを話した。

【実行委員会の構成団体】金剛峯寺、金峯山寺、奈良県、和歌山県、五條市、吉野町、天川村、黒滝村、野迫川村、高野町、橿原考古学研究所、奈良山岳遺跡研究会、近畿日本鉄道、南海電気鉄道。

写真=第1回実行委員会で話をする村上高野山真言宗教学部長㊨。左から2人目が田中金峯山寺執行長

2010/10/14 全青協・臨床仏教研究所 初の教化事例発表大会

14cb6c3f40caff_L1.jpg全国青少年教化協議会(全青協)と臨床仏教研究所は5日、東京・港区芝の東京グランドホテルで、「第1回仏教教化事例発表大会」を開催した。青少幼年教化活動や公益的活動を積極的に行う僧侶、寺院関係者27組が、活動内容とその理念などを発表した。大会には満員となる150人が参加。仏教精神に基づいて展開される多彩な取り組みから、寺院や僧侶のあり方が示された。

はじめに奈良康明氏(臨床仏教研究所理事)が「バラバラ社会からツナガリ社会の回復に向けて」と題して基調発題。秋葉原事件を象徴的な例に、豊かさの中にある孤独な現代人の姿を指摘。仏教が説く「帝釈天の網」の教えから「縁起の社会観」を示し、「共に働きあい、創りあっている」とする「共創」の社会観を提示した。その上で、「共創」を支える「慈悲」を「他者に対するあたたかな関心」と強調。仏教者に対し、慈悲の実践としての「草の根的お節介運動」を奨励した。

発題を受けて行われた3つの分科会では福祉、教育、環境、貧困など、現代の諸問題に向き合う27の活動が発表された。

檀信徒の放棄耕作地での「農業」を中心に、過疎化・高齢化の進む地域の再生活動(御園生亮観・天台宗東光院住職/千葉)、ひきこもりや不登校の若者を支援する「寺子屋ぷらと舎」(浅草寺福祉会館)、超宗派の僧侶による電話相談や自死問題への取り組みなど、地域の特性や個人の得意分野を活かした実践、問題意識を共有するチームでの取り組みなど多彩な事例が紹介された。

また海外の事例として、ジョナサン・ワッツ氏(臨床仏教研究所)が、台湾の「終末期ケア」の活動を報告。医療者と僧侶でチームを作って行われる終末期患者ケアの実践から、「公共的仏教」として、医療の現場における宗教者の役割を提示した。

分科会後には全体会、交流会も行われ、発表者や参加者が意見交換。情報や問題意識を共有する場にもなった。参加者の一人は「活動内容に関心もあったが、何よりその活動をするお坊さんのパーソナリティにとても興味を持てた。魅力的な人柄がお寺を活性化させる原動力になっていると感じました」と刺激を受けていた。

<臨床仏教のうねりに>神仁・全青協主幹の話

イオン問題などを発端として、葬儀をめぐるテーマが大きな話題となっている今日の仏教界の中で、現場の教化を主題とした本会に30件近くの発表と150人の参加を得たことは誠に有意義なことだと感じている。

発表者の一人は「葬式法事だけやっていればいいのに、何で余計なことをするんだ」と周囲の寺院や僧侶から言われると漏らしていた。しかし、「この会に出席して全国には多くの仲間がいることを知り、とても勇気づけられた」と言う。そこからは、積極的に教化活動を展開する僧侶が、宗門や地域の仏教界に於いてなぜか異端視され、孤立している状況も伺い知ることが出来る。

今回の大会の目的は、そのような一つの点として活動する僧侶や寺院を太い線としてつなげることであり、相互の情報交換等をベースとして全国的なレベルでの協働を促進することにある。さらには、その太い線が面になり日本を覆うことによって、さまざまな社会苦に直面する現代社会に、生きることに対する安心をもたらすことを意図している。過渡期にある日本仏教の中に、現実を生きるための「臨床仏教」(エンゲイジド・ブッディズム)の大きなうねりを創り出していきたいと思う。

2010/10/14 神職が禅研修 円覚寺で坐禅や食作法など

14cb6c743557c6_L1.jpg東京都神社庁は7日、神奈川県鎌倉市の臨済宗円覚寺派大本山円覚寺で教養研修会を行い、白衣・白袴姿の神職40人がで座禅や食事作法を学んだ。

同庁ではこれまでも研修講座で他宗教との交流を図ってきた。仏教のみならず、キリスト教の教会やイスラム教のモスクなどを訪問、宗教への学びを深めてきた。今回の講座では他宗教を「体験」することを目的に、円覚寺の協力を得て座禅研修となった。

座禅指導は円覚寺派教学部長の朝比奈惠温氏。座禅の型の作り方、呼吸の整え方を丹念に指導。「できるだけ息をゆっくり吐いて吐いて吐いて・・・・これ以上出せない所まで吐く。色々な雑念も呼吸をすることに専念すれば退けることができます」と説いた。警策の音が響くなか、白衣・白袴姿の神職が、「呼吸」になりきって座禅三昧のひと時を過ごした。

昼食時には同派の修行僧と同じく、食堂での作法に則り、般若心経の読誦、米粒の施し、給仕のお役などを体験。厳しく定められた一つ一つの作法に倣い、そこに込められた禅の教えを学んだ。

午後には、国宝の舎利殿をはじめ、円覚寺の伽藍、僧堂での修行僧の生活を見学。また、今年4月、円覚寺派管長に就任した横田南嶺氏の法話にも耳を傾けた。

夕方には駆け込み寺としても有名な東慶寺を訪問し、井上正道住職との対話で親交を深めた。全日程を終えた参加者には、修了証が手渡された。

坐禅はほとんどの参加者が初めての体験。一方で、指導した朝比奈氏も企業や学生の座禅研修はあるが、「他宗教の方の指導は初めてです。先輩方に聞いても、20年ほど前にキリスト教の方がいらしたというくらいです」と話す。

神田神社(東京都千代田区)の清水祥彦禰宜は、「生死事大 無常迅速など、禅の深い心に触れることができた。神道には、生と死を突き詰めて考える文化があまりありませんが、今回の研修で、宗教の原点を学ばせてもらった気がします」と感想。また、「山川草木悉有仏性の教えなど、神社の心と近いをものも感じられました」と、意義深い研修を振り返っていた。

2010/10/14 「仏教聖典」釈尊降誕の地に

14cb6cfc28fcfd_L1.jpg㈶仏教伝道協会(沼田智秀会長)が、釈尊降誕の地ネパール王国ルンビニーに開業した「ルンビニホテル笠井」(笠井篤信社長)に「仏教聖典」「英訳大蔵経」を寄贈。1日には同ホテルでオープニングパーティーが開かれ、贈呈式も執り行われた。ルンビニーで活動するチベット仏教やテーラワーダ仏教など世界各地の僧侶や仏教徒約30人が参列した。

贈呈式では古澤勝浩事務局長が導師を務め、各国僧侶と共にパーリ語による三帰依文を勤め、次いで、日本山妙法寺、チベット仏教、テーラワーダ仏教による法要がそれぞれ営まれた。

古澤事務局長から、このたび寄贈された目録を手渡されたルンビニホテル笠井のタラ・プラサード・シャプクダ氏は、感謝の言葉を述べ、「世界平和と安全のために、この聖典を一人でも多くの人が手にとって読み、経典に書かれている通りに活動すれば、平和な世界が実現する」と期待を込めた。また、「お客様に読んでいただくだけでなく、従業員も仏教の目的を知り、仏教を伝える一助になりたい」と話した。

古澤事務局長は「世界にはたくさんの仏教宗派があるが、その根本は一つであると、沼田会長もよくおっしゃっているが、ルンビニーに来て改めて感じた」と披瀝。「五戒の最初に説く不殺生戒、すなわち殺すな、というメッセージだけでも世界に向けて発信したいという思いを深くすると共に、お釈迦さまのご出生のご恩を強く感じています」と話した。

ルンビニホテル笠井は、同地における唯一の日本企業ホテルとしてこのほど開業。快適な癒しの時間を提供しようと、日本人スタッフが常時待機しているほか、ネパール人スタッフにも日本基準のサービスを徹底している。仏教伝道協会は各客室用に和英対象訳の「仏教聖典」と世界46ヶ国語に翻訳された聖典2セットを寄贈。ホテルには今後、仏教系の書籍を置く図書室も開設される予定だ。

2010/10/21 妙智會開教60周年・ありがとう基金設立20周年 「祈りと行動」テーマに記念式典

14cc008c354d11_L1.jpg「世界平和に貢献」を掲げて妙智會教団(宮本丈靖会長)が開教して60周年。これを記念して教団の礎である宮本孝平大恩師(1891~1945)と宮本ミツ会主(1900~84)の郷里である千葉県の幕張メッセで11・12の両日、「開教60周年・ありがとう基金設立20周年式典」が挙行された。国内外の宗教者をはじめ各界の来賓が出席したほか、全国から2日間で1万1千人の会員が参集。式典テーマである「祈りと行動」にふさわしく、各宗教代表者による平和の祈りと共に、世界平和への精進を誓った。

写真=2日間で1万1千人が参集した会場の幕張メッセ

2010/10/21 国際永久平和祭典 30周年迎え区切り

14cc00a7e0214f_L1.jpg国際永久平和祈念祭典協議会(小林隆彰理事長)は19日午後、大阪市中央区のNHK大阪ホールで「国際永久平和祈念祭典‘10」を開催した。宗教間対話を通して世界恒久平和を目指し、宗教芸術で市民に癒しを提供する同祭典も今年で30周年。節目の年を迎え、恒例の声明と音楽を融合させた宗教芸術祭典に区切りをつけた。約1300人が参集した。

今年は日蓮宗の内野日総管長(総本山身延山久遠寺法主)と声明師会連合会が出仕。ハープ奏者の摩寿意英子さんとインド民族楽器のタブラーを演奏するフェリックス・マチャード大司教(カトリック)とのコラボレーションが披露され、異文化の統合が生む相乗効果が見事に表現された。

マチャード大司教が「21世紀の人類における宗教対話に対する期待」と題して記念講演。祭典の最後は、各教団の代表者が壇上に勢揃いし、同会の池長潤代表参与(カトリック大司教)が共同宣言を読み上げた。

同祭典は、昭和56年(1981)、同会の竹内日祥専務理事(日蓮宗妙見閣寺住職)の発案で開始。当初、大阪砲兵工廠慰霊祭として始まったが、以後毎年かかさず開催されている。

第10回の平成2年までは日蓮宗が式衆として出仕。その後、黄檗宗、真言宗、天台宗、浄土宗、臨済宗妙心寺派・相国寺派、神社神道、曹洞宗(永平寺・総持寺)、融通念仏宗、高野山真言宗、真言宗御寺泉涌寺派の他、キリスト教やユダヤ教なども参加。宗教・宗派を超え、開かれた市民運動として実績を重ねてきた。

竹内専務理事は、今後の方向性を「対話」をキーワードに会の運営を進めていくことを説明。「現代の日本に足りないもの」として宗教に対しての理解や対話を挙げ、①宗教間対話②家庭内の生活対話③企業内対話が必要だと解説。今後はそれらの啓蒙活動を重視して、シンポジウムやフォーラムといった開催方法を模索していくことを発表した。


2010/10/21 本願寺派宗会 門主、宗門改革の必要説く

浄土真宗本願寺派(橘正信総長)の第294回定期宗会(桑羽隆慈議長)が19日、京都市下京区の宗務所で始まった。開会式では大谷光真門主が「宗門の改革は次の代まで待つ余裕があるでしょうか」と伝統教団を取り巻く環境の厳しさに危機感を示し、基本法規改正が宗政のテーマとなる中で「基本法規の改定など緊急の対処が必要」と踏み込んだ発言を行った。橘総長も宗勢調査の結果をもとに厳しい現状を示し、基本法規整備を「現状を打破する契機としたい」と述べた。

開会式の教辞で大谷門主は「近年の開会式では決算のうち歳出について費用対効果など適切有効な支出であるか注意を払っていただきたいと申してまいりましたが、今回の決算を見ます時、まず歳入を充分に吟味していただきたく思います。しかも21年度だけでなく他年度にわたっての傾向を把握しなければなりません」と今宗会で総局が提出した前年度決算書の審議事項を教示。

その上で「伝統仏教教団を取り巻く厳しい状況を考えます時、宗門の改革は次の代まで待つ余裕があるでしょうか。意識の改革はもとより機構整備、基本法規の改定など緊急の対処が必要であると思います。決算書から事態の一端を汲み取って下さるようお願い申し上げます」と述べて、宗法など基本法規改正が目下宗政の最大のテーマとなり、かつ、改正に対しては慎重論もある中で、自らその必要性を説く異例の発言を行った。

本会議で橘総長は、門主発言を受けて「宗門は長期低落傾向にある」と2月宗会での発言を再度述べた上、昨年実施した第9回宗勢基本調査の結果として「約6割の住職・坊守の方々、さらに門徒の方々も20年後の寺院の護持運営は厳しい、もしくは全くできないと認識されています。その理由として半数近くの方々が門徒の寺院護持意識が低くなっていることを挙げられています」とし、「さらに寺院で困っていることとして門徒の減少や高齢化、寺院に人が集まらないこと、経済的な問題などが上位を占め、まさに厳しい状況であることを裏付ける結果となっています」と言明。「あらゆる面から在り方そのものを見直し改革を行っていかなければ今後の宗門や寺院は加速度的に崩壊の一途をたどることでありましょう」と述べた。

その上で「明年お迎えいたします親鸞聖人750回大遠忌法要の円成と宗門長期振興計画の推進、特に基本法規の整備を緊要事項としてかかる現状を打破する契機といたしたい」とした。

基本法規改正案は現在「成文化に向けた準備を進めて」いるところで12月中に提示する考えを改めて述べた。

今宗会への提出議案は平成21年度本願寺派決算報告など財務承認議案30件と布教使課程設置規程宗則案など法規議案2件。会期は26日まで。

2010/10/21 曹洞宗特別宗議会 新総長に佐々木孝一氏

曹洞宗は18日、宗議会選挙に伴う第111回特別宗議会(定員72名)を東京・芝の宗務庁に招集。新宗務総長に、總和会会長で教学部長の佐々木孝一氏)が選出された。佐々木新総長は就任挨拶で「前渕内局の取り組みを継承」するとし、「(問題の)一つひとつを確実に解決したい」と述べた。総長選出に先立つ正副議長選挙で、議長に荒井源空氏、副議長に児玉重夫が選出された。渕前総長は退任挨拶で、過疎地寺院対策が出来なかったことに「心残り」と述べた。

特別議会には、元議長の加藤俊雄氏(總和会)を除く71名が出席。宗務総長選挙は、渕前総長が永平寺系のため、今回は總持寺系からの選出となる。単記記名投票の結果、69票を獲得して佐々木氏が決まった(無効1票、乙川暎元氏1票)。直ちに管長辞令を受けて新総長に任命された。任期は4年。

就任挨拶で佐々木新総長はインターネットによる情報化社会に警鐘を鳴らしながら、「宗侶として、檀信徒を正しい道に導いていかなければならない」と使命に言及。具体的な施策については明言は避けたものの、「宗門もたくさんの問題を抱えているが、その一つひとつを確実に解決すべく、皆さまのご協力をたまわりたい」と要請した。

2010/10/28 日蓮宗寺庭婦人代表者会議 〝江戸しぐさ〟で寺院発の人作りを

14cc934cb25398_L1.jpg日蓮宗(渡辺照敏宗務総長)は26・27日の両日、東京・大田区池上の宗務院で平成22年度「管区寺庭婦人代表者会議」を開催した。寺院の社会教化活動の中の寺庭婦人の役割と重要性を研修。各管区の報告・情報交換や寺庭婦人が宗門運動の実践にどう関わるか討議された。64人が参加した。

初日は、寺庭婦人が取り組める宗門運動の実践として、辻川牧子氏(江戸楽校主宰)を講師に「江戸しぐさ」を通した人づくりを研修した。辻川氏は「江戸文化と寺子屋の役割~江戸しぐさを通して」と題して講演。江戸期に町人や寺子屋で伝えられていた人を思いやる〝仕草=思草〟を寺院発の試みとして現代に甦らせることを提案した。

主な〝江戸しぐさ〟として、雨の日に互いの傘を傾ける『傘かしげ』や自分が歩くのを道の3割にして、7割を他人のために空けておく『七三の道』、足を踏まれた時などに「こちらが迂闊でした」と謝り、場の雰囲気を保つ『うかつあやまり』、などを紹介。また逆にやっていけない仕草では、約束の時間に遅刻し、相手の時間を奪う『時間泥棒』、言葉で相手を傷つける『刺し言葉』などを具体例と共に解説。その他にも「働く」はお金を稼ぐ以外に「傍(はた)を楽にする」意味があるなど江戸期の文化を解説した。

企業研修の分野でも豊富な指導経験を持つ辻川氏は、「難しい試験を受けて企業に就職した若者でも、挨拶ができない方が多い」と危惧。「子どもは言ったことはしません。見たことをするのです」と指摘し、見本となる大人が現代にいない問題を提起した。

江戸期の文化では、「どんなに目下の小僧であっても、『おはようございます』と言われたら、『おはよう』ではなく、きちんと『ございます』をつけて返すのが、一人前の大人の仕草」と話し、年齢や地位に関わらず相手を敬う〝江戸しぐさ〟に込められた思いを説明した。

開会式の法要は、関谷泰教伝道局長を導師に厳修。今年は、昨年の会議で「宗門運動の内容を詳しく知りたい」との要望を受けて、古河良晧伝道部長が所管説明を行った。

古河部長は、宗門運動を貫く基本の教えとして、「但行礼拝」を紹介。単なる挨拶運動ではなく、出会う人の好き嫌いに関わらず敬いの心を込める常不軽菩薩の合掌礼の実践を呼びかけ、寺庭婦人の力に期待を寄せた。

写真=実際に職員を使って道の歩き方を示す辻川氏

2010/10/28 平泉・中尊寺様式の仏像を鎌倉の古刹で発見!金沢文庫で公開

14cc9369584f6c_L1.jpg平安後期、東北地方を支配した奥州藤原氏が、3代にわたって平泉(岩手県)を拠点に築き上げた壮麗な仏教文化。その影響を色濃く残す仏像が、鎌倉幕府の文化圏だった神奈川県横須賀市の曹洞宗大善寺で発見された。鎌倉幕府草創期の仏教文化の様相を知る、貴重な手がかりになりそうだ。

中尊寺金色堂の仏像は、平泉様式と呼ばれ、同系統の仏像が奥州藤原氏の支配地域だった東北各県に現存。その藤原氏を滅ぼした鎌倉幕府の支配領域で、平泉様式の作例が初めて確認された。

文治5年(1189)、奥州征伐で平泉に攻め込んだ源頼朝は、その文化レベルの高さに感銘。中尊寺や毛越寺を参考に、鎌倉に永福寺(廃寺)を建立するなど、その影響を強く受けたとされる(『吾妻鏡』)。今回の発見で、仏像においてもそれが裏付けられた。

発見された大善寺所蔵の伝毘沙門天立像(木像・像高92㎝)は、玉眼(水晶)が入っていることから、鎌倉初期の作と推定。躍動的な姿が特長で、平泉・中尊寺金色堂の増長天立像(国宝)と著しく一致することが、神奈川県立金沢文庫の瀬谷貴之学芸員の調査で判明した。大善寺は、鎌倉幕府の有力御家人で奥州征伐にも加わった三浦氏の居城、衣笠城(横須賀市)の近くにあり、同氏の学問所だったとの伝承がある。

鎌倉の造像はほどなく、平泉様式より鎌倉武士の気風に合った運慶ら、慶派が主流になる。大善寺像はそこに至るまでの変遷過程をうかがわせ、鎌倉文化黎明期の躍動感を今に伝えている。同像は金沢文庫特別展「仏像のみかた」で、11月23日まで特別公開。

写真=発見された横須賀・大善寺伝毘沙門天蔵(写真提供・金沢文庫)

2010/10/28 浄土門主に伊藤唯眞氏

坪井俊映前浄土門主(総本山知恩院門跡)が9月に遷化したのを受けて26日午後、京都市東山区の宗務庁で浄土門主・法主推戴委員会(委員長=里見法雄宗務総長、委員15人)が開かれ、新浄土門主に伊藤唯眞大本山清浄華院法主の就任が決まった。任期はこの日から4年間。

伊藤新門主は昭和6年3月滋賀県湖南市生まれ、79歳。佛教大学卒。同志社大学大学院博士課程修了。長く佛大で教鞭を執り、助教授・教授等を経て平成元年から同5年まで学長を務めた。

佛大退職後京都文教短期大学学長に就任し、学長時の同19年3月末、大田秀三前法主急逝を受け清浄華院法主に推戴され4月に就任した。

浄土宗史や民俗信仰の研究者として知られ、著書に『浄土宗の成立と展開』(吉川弘文館)『日本人と民俗信仰』(法蔵館)などがある。

推戴委員会では委員長の里見総長が来年3月の法然上人800年大遠忌法要を目前に控え早急に決めたい旨伝えて協議に入った。総長と副委員長の北川一有知恩院執事長ら7人で小委員会を組織して話し合い伊藤法主を選出。全体の委員会でも全会一致で承認された。

その後里見総長、北川執事長、井澤隆明公室長の3人が上京区の清浄華院へ出向き、伊藤法主に委員会の決定を伝えて承諾され、伊藤法主の推戴が決まった。

正式な日程は未定だが入山式は12月頃、晋山式は来年2月頃に執り行われることになる模様。自坊は湖南市善隆寺。

2010/11/04 醍醐寺 執行長に壁瀬宥雅氏

10月28日に就任した仲田順和・総本山醍醐寺座主(真言宗醍醐派管長)は同日、同寺執行長(同派宗務総長)に前執行(財務部長)の壁瀬宥雅氏を任命した。仲田座主はまた他の執行3人(同派各部長)も1日に任命し、壁瀬新内局が発足した。執行長・執行の任期は11月1日から4年間。

執行長の略歴と執行3人の氏名、年齢、所属寺は次の通り。
▼執行長・宗務総長=壁瀬宥雅氏。昭和23年7月生まれ、62歳。京都市出身。醍醐寺塔頭・別格本山理性院住職。同志社大学工学部、種智院大学仏教学部、同寺伝法学院卒。平成9年12月から今年10月28日まで同寺執行・同派財務部長を務めた。大僧正。

▼執行・総務部長=仲田順英氏。昭和39年5月生まれ、46歳。東京都出身。東京都品川区・別格本山品川寺住職。

▼執行・教学部長=田中祐考氏。昭和35年7月生まれ、50歳。福岡県出身。京都府相楽郡・観音寺住職。

▼執行・財務部長=浦郷宜右(うらごう・ぎゆう)氏。昭和47年2月生まれ、38歳。佐賀県出身。滋賀県彦根市・明見寺住職。

2010/11/04 築地本願寺パイプオルガン40周年記念コンサート

14cd3729d9c859_L1.jpg東京・中央区の浄土真宗本願寺派本願寺築地別院(不二川公勝輪番)で10月29日、「パイプオルガン上納記念40周年コンサート」が行われ、約900人が仏教音楽の響きに耳を傾けた。

オルガンそのものが珍しい昭和45年、㈶仏教伝道協会発願者の沼田惠範師が、仏教音楽の普及や仏教弘通を願って寄贈されたパイプオルガン。本場ドイツで製作された約2千本のパイプを持つオルガンが上納され、40年前の10月29日に落成披露式が挙行された。以来、法要や結婚式といった儀式を荘厳し、06年1月からは月に1度のランチタイムコンサートで演奏されている。今年2月にはコンサートが50回を数えた。

記念コンサートには大谷光淳新門(本願寺築地別院副住職)が臨席。大谷新門は「このパイプオルガンをご縁として一人でも多くの方に築地本願寺へお参りいただき、仏教さらには浄土真宗の教えを聞いていただきたい」と挨拶。

来賓挨拶では、仏教伝道協会の沼田智秀会長が、尊父・惠範師とオルガンのエピソードなどを述べたうえで、上納から40周年に「感慨無量です」と披瀝。「この機会に築地との出会いを親密にしていただき、仏教の平和の教えの真髄を胸に刻んでいただきたい」と願いを込めた。

コンサートには築地本願寺正オルガニストの伊藤繁氏、同副オルガニストの山本久美子氏、小島弥寧子氏、声楽家の青山恵子氏が出演。『仏教徒の歌』や『真宗宗歌』、親鸞聖人和讃から生まれた『子の母をおもうがごとくにて』『きよけきひかり』、ランチタイムコンサート50回を記念して製作された『薄紅の刻』、仏教伝道協会主催による平成17年開催の仏教音楽祭の新作公募で第一位に選ばれた『いつくしみ―ふりそそぐ光』などが演奏された。

パイプオルガンの重厚で美しい音色が聴衆の心を魅了し、仏教の教えにふれる機縁となった。

写真=2千本のパイプから美しい仏教讃歌の音色が堂内にあふれた

2010/11/04 曹洞宗・付置懇 自死問題シンポ開催 仏教界の対策強化へ

14cd374e23a522_L1.jpg仏教界の自死問題への取り組みは、現在どのように進められているのか。曹洞宗総合研究センター第12回学術大会(港区・東京グランドホテル)で10月28日、「自死(自殺)問題に関する特別部会」(教団付置研究所懇話会「自死問題研究部会」との共催)が開かれ、各宗の僧侶が活動の現状を報告した。

超宗派の「自殺対策に取り組む僧侶の会」(代表=藤澤克己・本願寺派安楽寺住職)は07年5月に結成され、会員は現在42人。「死にたい」と悩む人の手紙相談や自死者追悼法要(毎年12月1日)、自死遺族の分かち合いの集い(毎月第4木曜日)などを行っている。

自死の相談を始めることへの不安の声がよく聞かれるが、同会の島田絵加氏(浄土宗光源寺副住職)は、会員同士のサポート態勢に言及。手紙相談も3人一組で行うため、「1人で問題を抱え込まずにすむ」と話し、活動への参加を呼びかけた。

<僧侶と市民が協働で>

僧侶と市民の協働による取り組みが、本格化してきた。
今年5月、僧侶と自死遺族ら10人が共同で立ち上げた民間ボランティア団体「京都自死・自殺相談センター」(代表=竹本了悟・本願寺派教学伝道研究センター研究員)は、相談・啓発・グリーフ(悲嘆)サポートを柱に活動している。

電話相談は毎週金・土曜日午後7時~翌午前5時半。ボランティアを拡充し、24時間体制を目指している。面談や手紙による相談も行う。9月には、自死の現状や命の大切さを考えるイベントを、京都市などと共催した。

センター設立にあたり、浄土真宗本願寺派から活動拠点と資金の提供を受けた。その後は、毎月1回の街頭募金や寄付、会費で運営費を賄っている。

竹本代表は「宗教団体は信者という太いネットワークを持っている」と指摘。これを活用すれば、広範囲に活動情報を発信できると述べた。

三重県の「国際ビフレンダーズ・熊野自殺防止センター」(所長=西育範・曹洞宗萬重寺住職)も、西所長と市民ら12人で電話相談(毎週金土・午後7時~同11時)を行っている。西所長は「(訓練を受けた)普通の主婦、会社員も電話に出ている。宗教者だからといって特別に構える必要はない」と話した。

<教団内に専門チーム>

行政や専門家と連携して、教団自体が総合的な相談窓口となる取り組みも始まった。

天台宗系の在家教団である孝道教団(岡野正純統理・神奈川県横浜市)では、自死に至る複合的な悩みに対応するため、教団内にプロジェクトチームを設置。①自殺②青少年(いじめ・ひきこもり等)③雇用・職場(就職難・職場の人間関係等)④多重債務・生活保護⑤精神疾患⑥高齢者―の各問題で行政や専門家とのネットワークを構築した。 岡野氏は、「現在ある社会システムの中で、人々のつながりを緊密にしていく」ことの重要性を強調した。

周囲に「自死」と明かせないまま、葬儀を営む遺族は多い。親族や知人が参列する葬儀や法事の場では、その応対に追われ、ゆっくりと悲しめないことも少なくない。

こうした中、浄土宗青年有志でつくる東京教区教宣師会(会長=宮坂直樹・龍原寺副住職)では、自死者追悼法要「倶会一処―ともに生き、ともに祈る」を毎年6月10日に厳修。宮坂会長は参列した遺族から、僧侶の活動への安心感を伝えられたと明かした。

さらに秋田県曹洞宗青年会の自死者供養「祈りの集い」、曹洞宗総合研究センター有志の「祈りの集い―自死者供養の会」の報告もなされた。

コメンテーターの蓑輪顕量・東京大学教授は、「僧侶の活動は、在家の人々との関係抜きには語れない」と指摘。「慈悲の世界をもう一度考え直す」ことを提案した。

写真=各宗・団体の取り組みが報告されたシンポ

2010/11/11 第1回「宗教と環境」シンポ 温暖化地獄の前に行動を

14cdb9b3a6b532_L1.jpg環境問題に対し、宗教者の役割と可能性を問うシンポジウム「宗教と環境―地球社会の共生を求めて」が6日、東京・文京区の東洋大学で開催された(宗教・研究者エコイニシアティブ、東洋大学共生思想研究センター共催)。工学博士でエコ運動を推進する山本良一氏(東京大学名誉教授)が宗教者の具体的な行動を呼びかけたほか、宗教教団の実践が報告された。宗教関係者や研究者ら170人が集まった。

基調講演1では、山本氏が「自制心の全く働いていない科学・技術・経済は宗教・道徳・倫理の支援を必要としている。宗教界は個々人の人生だけでなく、生命圏の存続に力を尽くすべき時代が到来した」と宗教者の行動を呼びかけた。

山本氏は、地球の平均気温が産業革命以前に比べて2℃上昇することで帰還不能の「温暖化地獄」が始まるとし、早ければ2032年にも突破するとの試算を提示。既に始まっている、グリーンランド氷床の溶解、アマゾンの森林伐採、北極海氷面積の激減、水不足や飢餓、気候戦争の危機など、危機的状況を訴えた。

温室効果ガスの削減に向け迅速な行動が求められるが、「日本には豊富な技術や人材があるが改革が進まない。それは私たちの心がその方向に向かっていない」と指摘。「精神革命を伴わなければ低炭素革命はできない」と強調したうえで、「環境コンセプトの内容を豊にし、新たなものを作り出してほしい」と要請すると共に、環境マネージメントの実践、グリーン購入の実行、教義に基づいたファンド創り、政府への働きかけといった、宗教界の具体的な取り組みを要望した。

基調講演2では薗田稔氏(京都大学名誉教授・秩父神社宮司)が「日本人の伝統的環境観―神・人・自然のつながり」と題し、環境問題へのアプローチとして日本人が持つ生命観に言及。「諸虫供養」や「草木供養」といった習俗から「人間だけの生命ではなく万物にあるいのちへの配慮が現存している」と指摘し、「生きること、死ぬこと、同時に殺さなければ生けないという矛盾を含んだ主体的ないのちの捉え方」を示した。

続いて、原井慈鳳氏(法華宗本門流)、深田伊佐夫氏(立正佼成会)、山岡睦治氏(生長の家)、桑折範彦氏(徳島大学名誉教授・日本聖公会会員)、内藤歓風氏(日蓮宗朝善寺住職)が、環境問題への具体的な取り組みを報告。

環境マネージメントの国際規格ISO14001を取得した「生長の家」の山岡氏は、教団の環境方針の基本に立教以来の「天地の万物に感謝せよ」との教えがあるとし、「宗教の根幹は共通しているはず。それを環境方針に盛り込むことで、協力して行ける」と宗教界の協働を呼びかけた。

生活レベルの取り組みとしてシンプルライフの啓蒙と普及を行う内藤氏は、「少欲知足」の教えを強調した。

2010/11/11 総本山醍醐寺 仲田新座主が入山

14cdb9dab71369_L1.jpg10月28日に就任した仲田順和・真言宗醍醐派総本山醍醐寺座主(同派管長)の入山式が7日、京都市伏見区の同寺金堂で執り行われ、仲田新座主が本尊薬師如来に法灯継承を奉告し、一宗一山の護持に邁進することを誓った。

入山式は、今年7月に修理を終え黒漆と紋様の金箔が鮮明な同寺三宝院の唐門から出て、金堂へお練り。田中祐考執行を先頭に式衆僧侶らが続き朱傘をかざした仲田座主が最後部に従った。

金堂での法要には親族、自坊品川寺(東京都)の檀信徒、法類、醍醐寺関係団体代表ら約100人が参列。仲田座主は「茲ニ末資順和図ラズモ一宗一山ノ選ニヨリ当山第百三世座主ノ法脈ヲ継グ」と法灯継承を奉告し、「報恩ノ行ヲ為サント欲シ、衆生ト共ンジテ国家・社会・人心ノ和平ニ努メンコトヲ期ス」と表白を述べて、職責全うと社会への貢献を誓った。

この後、醍醐寺一山を代表して壁瀬宥雅執行長が「思えば猊下は25年の長きにわたり醍醐寺執行長・宗団の宗務総長として醐山の隆盛と宗団の発展のために寄与されてこられました。そして本日、座主猊下として改めてご入山され、私どもを変わらず御指導いただきますこと、まことに有り難きこと」と歓迎の辞を述べた。

同寺座主推薦委員会代表の高畑隆憲・菩提寺住職は「本日醍醐寺座主として長い道のりを走破されました。そのご苦労を知る私たちにとりましてこの本堂でご尊顔を拝しこれまでのことを思い返し、ただ頭の下がる思いと喜びでいっぱいです」と祝った。

地元代表の村井信夫・醍醐十校区自治町内会連絡協議会長、友人代表の湯本良一・港南ロータリークラブ会長が、新座主の功績を称え就任を祝ったのに続き、品川寺一山・法類等を代表して実弟の麻生弘道・高野山真言宗太融寺住職が挨拶。「私は順和和上と一緒に昭和15年この総門を潜らしていただきました。それからちょうど70年の今日、座主猊下と一緒にこの総門を潜らしていただきました。ご開山理源大師様の不思議な心の縁を感ずるものであります」とし、「山内のみなさまどうぞよろしくお願い致します」と述べた。

仲田座主は「思いますれば(岡田)戒玉、(細川)英道、(仲田)順海、(麻生)信雄、(麻生)文雄各座主にお仕えし、ご提撕を賜ってまいりました」と振り返り「伝承の重さをひしひしと感じております」と現在の心境を吐露。

その上で醍醐小学校5年生の女子児童が作った醍醐寺文化財を守る標語《千年の醍醐を見つめる五重の塔》に言及して「この句に私は強く打たれました」とし、「(醍醐の)里の力がなければこの寺は守り続けてくることはできなかったのだとの思いを致しました。これからも十二分に里を大切にする、その心を持ちまして、一宗そして一山の護持に邁進いたします」と改めて決意を述べた。

2010/11/11 80年ぶりに首都圏御開帳

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曹洞宗大雄山最乗寺(石附周行山主、神奈川県南足柄市)の御開山である了庵慧明禅師(1337~1411)の600回大遠忌を記念して、最乗寺に祀られている十一面観音の化身とされる道了大薩埵の出開帳が3日、東京・両国国技館で盛大に行われた。4千人が参拝した。

道了大薩埵は、「道了尊」や「道了さま」の呼称で親しまれている。熊野三山で修行の後、大雄山開創に際して空を飛んで了庵禅師のもとに参じたといわれる。

了庵禅師遷化後、〈道了大薩埵は「以後山中にあって大雄山を護り多くの人々を利済する」と五大誓願文を唱えて姿を変え、火焔を背負い右手に拄杖左手に綱を持ち白狐の背に立って、天地鳴動して山中に身をかくされた〉(最乗寺サイトより)と伝えられている。以後、庶民の信仰を集め、講組織などが各地にできたりした。

昭和5年(1830)以来、80年ぶり5度目となる今回の「大雄山首都圏御開帳」。早朝から熱心な信者が国技館周辺に参集し、午前10時半からのお練りを待った。木遣り衆が先導して白木の下駄の僧侶、山伏らのお練りを信徒らは小旗を振って歓迎。道了尊を奉安したきらびやかな御輿や石附山主の乗った駕籠が館外周辺を一周した。

午後からは道了尊を安置した特設宝前で世界恒久平和と現代世相の安寧を祈願する大祈祷会が営まれた。

続いて石附山主が法話。道了尊の出開帳史を紹介し、最初は天明4年(1784)で天明の飢饉の時。2回目は文政2年(1819)で日本文化が華やかな時。3回目は明治4年(1871)の廃仏毀釈。4回目は昭和5年で、関東大震災後の東京復興の時期だった。「日本が変わる時にご開帳が勤まってきた」「80年前の時には昭和恐慌にもあたり、皆さんの心を励ます役割があった」と説いた。

終了後には、加山雄三さんのコンサートが開かれた。祖母が熱心な大雄山の信仰者で、自らの芸名もそれに由来しているとカミングアウトし、会場を沸かせた。

またコンサートの合間に石附山主とミニトークも。共に昭和12年(1937)生まれで意気投合。加山さんは4月、石附山主は5月で加山さんが「1カ月先輩」だった。さらに石附山主が群馬県曹洞宗青年会会長時代に加山さんを迎えてチャリティーコンサートを実施したことを懐かしんだ。

2010/11/18 新宗連理事会 岡野理事長を再任

(財)新日本宗教団体連合会(新宗連)は先月27日、北海道で理事会を開き任期満了に伴う理事長等の新人事(第26期)を審議し、岡野聖法氏(解脱会法主)を再任した。

理事29人および監事2人が決まり、理事の中から副理事長4人、常任理事11人が選出された。新理事には眞塩陽一郎(七曜会理事長)山本行徳(宝生教教会長)力久道臣(善隣教教主)の3氏が加わった。同じく新副理事長には宮本けいし氏(妙智會教団理事長)が就任した。

来年結成60周年を迎える新宗連は、発会日にあたる来年10月17日に、東京・渋谷で記念集会と祝賀会を催す。記念誌等の出版が予定されている。

第26期の理事長・副理事長・常任理事は次の通り(敬称略)。

理事長=岡野聖法(解脱会法主)

副理事長=御木貴日止(パーフェクト リバティー教団教主)力久隆積(善隣教聖主)保積秀胤(大和教団教主)宮本けいし(妙智會教団理事長)

常務理事=吉岡優(祖神道教団祖神)出居茂(修養団捧誠会総裁)榊原法公(法公会会長)江口陽一(大法輪台意光妙教会理事長)田澤清喜(松緑神道大和山教主)石倉寿一(大慧会教団次代会長)新井光興(救世真教会長)岡田光央(崇教真光三代教え主)宮尾早雄(妙道会教団常務理事)渡邊恭位(立正佼成会理事長)赤銅重夫(円応教理事長)

理事・監事以外の役職者は次の通り(敬称略)。

名誉理事長=深田充啓(円応教教主)

特別顧問=宮本丈靖(妙智會教団会長)庭野日鑛(立正佼成会会長)

顧問=新井三知夫(救世真教顧問)佐原慶治(妙道会教団会長)

2010/11/18 浄土宗 伊藤唯眞門主が入山「身命を賭して尽くす」

14ce4c6d53d201_L1.jpg10月26日に就任した伊藤唯眞・浄土門主(総本山知恩院門跡第88世)の入山式が15日、京都市東山区の知恩院で執り行われた。伊藤門主は「身命を賭して尽くす所存」と述べ、目前に迫った法然上人800年大遠忌法要をはじめ職責を全うする旨表明した。

入山式は里見法雄宗務総長はじめ宗の内局、また総本山、法主を務めた大本山清浄華院の内局が出仕するなか三門前での開門式から開始。扉が開けられて門を通り、女坂を登って八幡社、続いて阿弥陀堂で法楽を勤めて御影堂へ向かった。

御影堂では東側広縁で御廟に向かって一枚起請文を唱えた後、正面から入堂。伊藤門主は「祖廟の護持、祖山の興隆、宗風の宣揚、元祖法然上人800年大遠忌円成、成満に寄与し、以て浄教の法燈を継照せんことを希い、意を決し志を新たにし、身命を抛って仕え奉らんと欲す」と表白、職務に全力を傾注する決意を述べた。

垂示では「今や仏教の必要性が叫ばれつつも、なお充分でない面が言われております。念仏によって人々が和み、お念仏の輪によって人々が繋がって、家庭や地域や世界が丸くお数珠の如く一本の糸がお念仏というものに考えてもらえるならすべてが繋がっている、そういう世界になっていくことを念願するわけであります」とし、「そのために私は出来るだけのことを身命を賭して尽くす所存でございます」と改めて決意を表明した。

体調不良のため欠席した北川一有知恩院執事長に代わって友田達祐大遠忌局長が執事長謝辞を代読。伊藤門主の指導を受けつつ諸事業完遂に邁進することを伝えた。

伊藤門主は昭和6年3月生まれの79歳。9月6日坪井俊映前門主が遷化したのを受け、10月26日に開かれた浄土門主・法主推戴委員会(委員長=里見総長)で推戴され就任した。任期は4年。なお晋山式は来年2月頃になる模様。

写真=知恩院三門を通る伊藤唯眞門主

2010/11/18 全日仏栃木大会 「社会参加仏教」シンポ

14ce4c8f7d6938_L1.jpg(財)全日本仏教会・栃木県仏教会主催の第41回「全日本仏教徒会議栃木大会」で9日、シンポジウム「社会参加仏教の課題と展望」(会場=宇都宮グランドホテル)が開催された。新宗教教団の実践例をふまえながら、様々な社会問題に対して仏教徒はどのような活動をしなければならないのか議論した。約400人が参加した。

シンポジウムのコーディネーターで高野山大学の山口幸照准教授は、社会福祉などを柱とする国内外の新宗教教団の実践活動に「伝統仏教教団が学ぶ」必要性を強調した。

宗教団体の社会活動を研究している2氏が、基調発題。インド・デリー大学のランジャナ・ムコパディヤーヤ教授は、日蓮宗法音寺と立正佼成会の事例を中心に説明した。

明治42年に「仏教感化救済会」として創立された法音寺が、ハンセン病患者の救援や児童福祉など社会的弱者の救済事業に取り組みながら、日本福祉大学を設立していった過程を解説。教団による社会活動と教育活動の両立を指摘した。

立正佼成会の諸活動からは、信者と市民が参加する地域密着の「明るい社会づくり運動」などを紹介した。

天理大学の金子昭教授は、世界最大の仏教系社会貢献事業団体(NGO)である台湾・仏教慈済基金会について詳説。在家ボランティアが災害現場などで行う救援活動を紹介し、「助けられた人が(次には)助ける側に加わる『善の循環』」を台湾社会に根付かせていると説明した。

「会員制度のため、他宗派・他宗教の人も入会しやすい」ことや、教勢拡大を目的としていないことなどにも言及した。

コメンテーターの山折哲雄氏(宗教学者)は伝統仏教界に対して、「在家主義の原点に立ち返るべき」として「人々のニーズに応えるような形での教団・寺院の再編成」を提言。兼務・無住寺院の増加と「人生80年時代、定年後に宗教的な世界で生きたいという人はたくさんいる」ことに注目し、「住職の一般公募・選抜」制の導入を呼びかけた。

また、女性が社会的に大きな働きをしている現代にあって、女性の活動を生かす仏教界のあり方が重要だと説いた。

後半はパネルディスカッション。
ランジャナ氏は社会活動を行う教団の信者に共通する心理として、「(教団の教えに)自分自身が救われたという経験が、社会活動に踏み出すきっかけになっている」と指摘。「社会福祉はいつの時代も必要とされる分野」としたうえで、「労働問題・女性問題・子どもの問題などに取り組むことで、近代の宗教教団が築かれてきた」歴史を述べた。

金子氏は寺院が地域社会で発揮できる伝統の力に着目し、「新宗教は(地域向けに)会合を開こうにも『信者にされるのではないか』と警戒される(場合がある)。伝統仏教にはそれがなく、宗教の言葉を使った活動がしやすい」と分析。「自ら持っている潜在的な力に気付いて、現代の寺子屋を実践していただけたら」と提案した。

シンポ前の開会式では、今大会大会長で栃木県仏教会の菅原栄光会長(天台宗・日光山輪王寺門跡)を導師、全日本仏教会の河野太通会長(臨済宗妙心寺派管長)を副導師に法要(三帰依文)が営まれた。

主催者挨拶に立った菅原会長は、大会テーマ「社会参加仏教」を、「自分の身を忘れ他者に尽くす」という伝教大師の「忘己利他」の教えと共に紹介。仏教徒の社会貢献について話し合う今大会の成功を祈念した。

写真=パネリストのランジャナ、金子両氏(左側)とコメンテーターの山折氏

2010/11/25 豊山教育財団解散へ

真言宗豊山派(川田聖戍宗務総長)の第125次宗会通常会(鈴木常英議長)が18・19の両日、東京・文京区大塚の宗務所に招集され、平成21年度決算など全8議案を可決・承認した。川田総長は施政方針演説で、新公益法人制度下での(財)豊山教育財団の進路について、解散の方向であることを発表した。

川田総長は今年6月の財団理事会で、理事長として「解散」の方向性を明示。今後は所轄庁である東京都との折衝を重ねながら、宗団内部の準備態勢を整えていく。

100年の歴史を有する同財団は、宗門校である大正大学の経営補助や同大の宗派学部生・大学院生への学資金支給(給与・貸与)、宗派教師らへの研究費助成、豊山学会等各学会への補助金支出などを行ってきた。今後、これらの業務を宗派に移管するための検討・協議が本格化する。

村瀬和夫議員(東京一号・多聞院)は代表質問で、同財団の平成22年3月31日付財産目録を挙げ、「正味財産51億4千万円。そのうち金融資産32億6千万円。それ以外は土地と建物。まことに立派な基本財産であり、まさに豊山派の宝」と称揚。その上で、解散方針の決定に至った理由などについて質した。

粕谷利通教務部長が答弁に立ち、公益財団法人への移行を選択した場合、税制面での優遇措置がある一方、大正大学への助成に困難が生じると指摘。

東京都からは、「大正大学という特定の学校法人への助成だけが事業ということでは、豊山教育財団が公益目的事業を行っているとは認めにくい」として、「他の教育機関や一般社会を対象としなければ公益認定は難しい」との見解を示されたことを明かした。

財団の役員に宗外の第三者を入れることで生じる、「財団と豊山派の距離」にも言及した。

一方、解散する場合は、所轄庁から離れ、宗派内の事業として自由な運営が可能になるとしたが、その際、財団の全財産を、そのまま宗派に繰り入れられるのか、現段階では不透明だとした。

村瀬議員は、布教機構改革の進捗状況も質問した。同派では全国49支所(行政区域)に教区(布教区域)を並置しているが、前・浅井内局では指揮系統の明確化や業務の効率化を図るため、「宗務支所・布教区の一本化」を指向。「教区長制度の廃止と支所組織への布教事業の組み入れ」「布教師会組織の改編」などを重点的に検討したが、早急な改革は困難であるとして見送られた経緯がある。

小倉秀清教化部長は、
各地方・教区の布教師会から得た現状報告書の分析結果をふまえ、「支所と教区の関係は(地域ごとに)多様で個性的であり、同一の形態には収められない」と説明。「宗務支所・布教区の一本化」ではなく、既存の中央・地方(都道府県)・教区の各布教師会と支所を有機的につなぐ改革に転換したことを示唆し、中央布教師会に布教活動の充実を図る委員会の設置を検討中だと述べた。

平成21年度決算額は、当期収入が8億5327万9439円(対予算比101・83㌫)、当期支出が8億8460万3857円(対予算比91・26 ㌫)。

2010/11/25 カトマンズ本願寺完成 世界平和の発信拠点に

14cee00cf484bb_L1.jpg仏教の非暴力・絶対平等の教えを発信する世界平和の一大拠点とするため、釈尊生誕の国ネパールで04年から建設が進められていた浄土真宗本願寺派ネパール開教地・カトマンズ本願寺(ソナム・ワンディ・ブティア開教使・ネパール開教事務所所長)がほぼ完成し、10月29・30の両日(現地時間)、ネパール人のための入門式とオープニング式典が盛大に営まれた。日本側僧侶9人と米国人門徒2人を含む300人超が参加した。来賓としてチベット仏教の高僧10人、ネパール政府を代表して前副首相らも参列した。

同寺の建立は、福岡県北九州市の真宗門徒・故向坊弘道氏(平成18年死去、67歳)が発願。建設費等は、本願寺派九州各教区の寺院や門信徒らが中心となって支援した。

向坊氏は東京大学在学中の20歳のとき、自動車事故に遭い全身不随に。しかしそれが縁で念仏と出遇い、世界に阿弥陀如来の救いを伝道することを決意。1992年にNGO「グリーンライフ研究所ネパール」を設立し、釈尊生誕の国で社会福祉活動を開始した。

他宗教の信者だったソナム開教使は98年、釈尊成道の地であるインド・ブッダガヤで向坊氏と出会い、他力の教えに感動。ほどなくして浄土真宗に転向し、向坊氏と共にネパールで伝道活動に取り組むようになった。同時に日本から送られた古着の配布や献血・無料健康診断など、社会福祉活動も展開した。

04年には、念願の寺院建立に着手。資金難や土地確保など幾多の苦難に見舞われながらも建設を進め、06年7月、本願寺派から正式な認可を受けるに至った。そしてこのほど、本堂や諸施設がほぼ完成し、名実ともに本願寺派寺院としての環境が整った。

現在、日本人僧侶はいないが、ネパール人青年僧4人、インド人青年僧2人が同寺を拠点に開教活動を推進。社会福祉活動をはじめ、3村の小学校の運営サポートなども行い、開設している日本語教室と浄土真宗勉強会では、市民ら約300人が学んでいる。

同寺建立委員の一人として10月29日に入門式を行った「ネパール本願寺ブディスト・ソサエティ」(現地法人名)の国際アドバイザー、白山大慧浄運寺住職(福岡県春日市)は、「熱意のある現地の人々の伝道によって、着実に念仏の教えが広まっています」と感激した様子で話していた。

明年3月5日(現地時間)には、「親鸞聖人750回大遠忌お待ち受け法要」として日本人向けの記念式典も現地で開催される予定だ。

2010/11/25 世界仏教徒会議 スリランカで第25回大会

14cee03fae7544_L1.jpg第25回世界仏教徒会議(WFB)スリランカ大会が11月13日から17日まで同国のコロンボ市内で行われ、加盟する世界各センターから400人が参加した。執行役員に中国代表が初めて入ったほか、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)から4人の代表団が出席し注目を集めた。また著名なパーリ語学者であるスリランカのマララセーケラ博士(1899~1973)の提唱によってWFBが結成されて60周年を記念する祝典も催された。

前回の日本大会以来2年ぶりとなる今大会は「仏陀の教えによる社会的和解」がテーマ。期間中のシンポジウムなどで、各国代表が仏陀の思想を基調とした平和構築や社会実践などをスピーチした。

執行役員の改選では、無投票となり8人が決まった。日本の戸松義晴・全日本仏教会事務総長(浄土宗)は再選された。中国仏教協会の代表が執行委員に初選出されたこともあり、近い将来中国でWFB大会が開かれる可能性もある。

一方、WFB60周年式典は16日夕、市内のスタジアムでWFB参加者および地元の生徒ら5000人が出席して行われた。発祥地である同国のラージャパクサ大統領ほか閣僚などが臨席した。祝典ではWFB会長名代のパロップ・タイアリー事務総長が会長メッセージを読み上げ、60周年を祝福した。

WFB最高顧問である河野太通・全日本仏教会会長(臨済宗妙心寺派管長)も出席し、祝辞を述べると共にWFB人道支援基金に対し500万円を寄託した。

またステージでは釈尊の生涯を踊りなどで表現したパフォーマンスが繰り広げられた。

次回大会は2012年に韓国で行われる予定。

(写真=スリランカで行われたWFB大会。右後方に60周年のマークが見える・全日仏提供)

< インドや東南アジアの仏教に詳しく、今大会にオブザーバーとして参加した佐藤良純・大正大学名誉教授の話>

約30年にわたるタミル人とシンハラ人との内戦が昨年終結しましたが、国土の復興に際して仏教を国教化しようという動きがあります。60周年祝典を主催した全セイロン仏教会がそれを推進しています。国教化を盛り上げるための60周年行事という感じがありました。一方で治安の回復をピーアールして、観光客を呼び込みたいという狙いもあるようです。

WFB(1950年創立)を提唱したマララセーケラ博士には1960年代にお会いしました。パーリ語の権威で分厚い『仏教固有名詞辞典』を編纂されていましたから、当初はパーリ語研究について話し合いました。そしてWFBについてお聞きすると、一つひとつが力を持っていてたとしてもバラバラでは効果は期待できない。仏教世界が結集すべきだということを強調されていました。おそらくマララセーケラ博士がいなければ、WFBのような世界的な仏教組織は出来なかったでしょう。

アカデミックな世界にいましたが、仏教の社会的な役割に対する眼があったのだと思います。

2010/12/02 大正大学現役OB8選手 カバディ銅メダル

11月、中国の広州で行われたアジア大会のカバディ競技で、日本が初めて銅メダルを獲得した。チームの主力は大正大学出身者。監督は天台宗僧侶の井藤圭順氏(高家寺)で、キャプテンは弟の井藤光圭選手だ。今回のメダル獲得に関係者も沸き立っている。

カバディはインド発祥の伝統スポーツ。1チーム7人で戦う。息継ぎなしで「カバディ、カバディ」と連呼して相手陣営に攻め入るのだが、相手チームはつかまえたりして阻止する。相手との衝突は格闘技に近い。

アジア大会では1990年の北京大会から正式種目となった。広州大会に同行した全日本OBの西郊良貴氏(天台宗僧侶、大正大学出身)が歴戦を解説する。

日本は予選リーグで3試合を戦った。第1試合はバングラデシュ戦で、13対15で日本勝利。「これまで予選リーグでは第3試合にバングラデシュとあたることが多かったが、第1試合だったのが良かった。勝てたことで勢いが付いた」(西郊氏)

第2試合は前回銀メダルのパキスタン戦。28対11で敗れたものの、第3試合のマレーシア戦は17対48で勝利した。マレーシアとは“因縁の対決”だった。「02年の釜山大会では、勝つとメダル(銅)というところで負けて悔しい思いをした。その時の3選手が頑張ってくれたので勝てた」(同)

予選リーグを2勝1敗で終え決勝リーグに進出したことでメダルは確定。11月25日、最強国であるインドと対戦し、52対17で敗れた。「力の差が歴然としていた。しかし課題がなんであったか12名の選手は見えたはず」「次のアジア大会(韓国・仁川)にはその上のメダルを目指すことになるだろう」(同)

全日本チームを率いる井藤監督と藤井玄コーチはともに大正大OB。選手12人のうち8人が同大出身(現役1人)。今回は応援だが、常に選手と共にいた西郊氏は「北京アジア大会から20年経ってやっとメダルが取れた。大学や寺院の関係者など色んなご協力をいただいた」と関係方面に感謝する。

大正大では12月中に祝勝会を予定している。

2010/12/02 11万5千人が応募 炎天寺一茶まつり「全国小中学生俳句大会」

14cf7543d8b2a0_L1.jpg小林一茶ゆかりの東京都足立区・真言宗豊山派炎天寺(吉野秀彦住職)で11月23日、第49回一茶まつり「全国小中学生俳句大会表彰式」が盛大に執り行われた。関東地方を中心に遠隔地からも入賞した小中学生が出席し、境内の一茶像や本堂前の福蛙像と念願の対面を果たした。

今年も約11万5千人が応募。見事大賞に輝いた句は、「うえきばちかれてる花も夏の花」(東京都足立区立中川小6年・戸高美侑)「万緑のそこだけ色ぬく大文字」(東京都八王子市立中山中3年・関屋祐希)だった。

「雨上がり金木犀の香りかな」で入選した千寿本町小5年の居波圭起くんは、「旅と鉄道が趣味」で「短歌やことわざ、古典も大好き」だという本格派。一昨年の秀逸受賞に続く入賞だ。句作のポイントを尋ねると、「季節感とひらめきを大事にして、季語がだぶらないように気をつけています。ここが難しいんですよ!」と教えてくれた。

審査委員長の吉野住職は、「小学生は落ち葉や雲の気持ちになりきって詠める。中学生は自分の言葉で、自分の気持ちを表現できる。毎年レベルは上がっています」と今大会の印象を語った。

老若男女を問わず大勢が集まる「一茶まつり」。境内の神楽殿では、小学生から大人まで参加する「六月囃子連中」が、笛や太鼓、鉦で奉納演奏するなど、地元の伝統も再確認。地域のつながりを再興する鍵は、日本の伝統文化の中にありそうだ。


2010/12/02 大阪府仏が徹底討論 それでも葬式は不要か

14cf75628bd2cc_L1.jpg大阪府仏教会(増田貞圓会長)と大阪府仏教青年会(村山博雅会長)が主催する第45回大阪府仏教徒大会が11月29日、大阪市中央区のホテル日航大阪で開かれ、葬式不要論をテーマにしたパネル討論が行われた。討論では、葬式まで子や孫に面倒をかけまいとする親の考え方を戒め、葬式も介護も親が子に要求すべきことなどが語られた。

宗教学者の島田裕巳氏が『葬式は、要らない』を著して葬儀の是非についての議論を引き起こしたのを受け、テーマを「それでもお葬式は不要ですか」に設定。

司会は例年通り増田会長が務め、浄土真宗本願寺派僧侶で関西学院大学教授(宗教社会学)の大村英昭氏、ジャーナリストの川崎泰資氏、大阪市仏教会会長の白井忠雄氏の3者がパネリストになって意見を述べあった。

島田氏の本が売れた背景について大村氏は、高齢社会になって「90歳の親を60歳の子が送る」葬式が増えたことを指摘。自身が高齢の母親を在宅介護の末送った経験も踏まえ「悲しいよりほっとする」死となって葬式に充分な意義を見出せない状況を挙げた。

かつて墓は要らず散骨を希望していたという川崎氏は、直葬や家族葬が増えてきたのは仏教界が信頼されながらも「死の問題にまともに考えてこなかった。全く機能してこなかったのが問題」と言明、変化に応じて対応することを求めた。

一方、白井氏は葬式や墓に対する親の考えかたを批判。「子どもに迷惑掛けるから墓は先に買っておくというが、子どもに迷惑かけるのは当たり前。今まで育ててもらったのだからそれだけの恩返しはせねばいかん。この頃の親は子に気を使い過ぎ」と戒め、「親としたら親の葬式は子どもがすると、常日頃から印象づけないといけない」と主張した。

この発言を受けて大村氏は高齢者介護に言及。「子や孫に面倒を掛けたくないから国がちゃんとしろと言う。だが実際は自分の子や孫を使わず人様の子や孫を使おうということ。しかも安く。こんな不埒な考えがありますか」と厳しく批判。「人様の子や孫に面倒を掛けたくないからあなたが面倒をみろと言う。それが親の見識」と厳しく述べた。

葬式の是非については大村氏は「伝統的な型に乗ることが心の安定にいい。ちゃんとした方が心が慰められる」とした。一方、真宗以外の没後作僧の葬式は「生前に納得しているならいいが」とし、「高い戒名料は反省すべき」とも述べた。

2010/12/09 庭野平和財団 公益財団に移行

庭野平和財団(庭野欽司郎理事長)は11月18日に公益財団法人の認定を受け、12月1日から「公益財団法人庭野平和財団」に移行した。

庭野財団は立正佼成会創立40周年事業の一環として1978年設立。宗教的精神を基盤に平和に尽くした功績者への褒賞(庭野平和賞)や、平和を醸成する活動や研究に助成してきた。

昨年3月の理事会・評議員会で公益財団法人への移行を決定。今年7月7日に公益等認定委員会に申請し、先月18日に総理大臣名で認定された。今月1日に登記を完了した。

2年前の12月、公益法人制度改革3法が施行され、これまでの公益法人制度が大幅に変更。従来、法人設立と公益の判断は主務官庁に委ねられていた。新制度では、「一般社団法人」「一般財団法人」の設立は容易だが、税制面での優遇措置を受けられない。優遇を受けるには公益認定等委員会での審査を受けて、「公益社団法人」「公益財団法人」に認定されなければならない。

(財)全日本仏教会、(財)新日本宗教団体連合会、(社)全日本仏教婦人連盟などの法人が公益法人への移行を目指している。

2010/12/09 日蓮宗女性教師の会 現代の〝戒〟を模索

全国日蓮宗女性教師の会(伊藤美妙会長)は3日、東京・池上の宗務院で公開講座「現代における僧侶の戒律とは?」を開催。結婚・肉食・有髪・飲酒など世間一般と変わらぬ生活を僧侶が送っている点を視野に置きつつ、日本の現代仏教における「戒」とは何かを議論した。

伊藤会長は冒頭の趣旨説明で、正木晃氏(慶応義塾大学非常勤講師)の言葉「今日の三離れ(寺離れ・葬式離れ・墓離れ)の一因は、仏教や寺や葬式そのものにあるわけでない。僧侶離れである」(『日蓮宗伝道企画会議ノート』)を引用し、「僧侶の生活のあり方や行動が社会の人々から不審の目で見られ、信頼を失っているのではないか」と提起した。

講師の正木氏は、イスラム教やプロテスタントを例に「妻帯をする出家主義でない宗教も世界には多い。どっちがいいと言ってもしょうがない話。一番重要なのは、聖職者としての自覚だ」と意見。「僧侶の品格」として5条件①聖職者の自覚を持つ②修行に完成はなく、自分はまだ途上である自覚を持つ③地域との関わりを大切にし、地域の精神的指導者としての自覚を持つ④檀信徒に分かるやさしい言葉で仏教が語れること⑤金銭や物質的な欲望に執着しないこと――を挙げた他、妻帯する僧侶が多い現代では、浮気・不倫をしないことなどは最低限の戒となることを説示した。

古河良晧伝道部長は、「まず現実を受け入れ、現状の肯定から議論を始めたい」と前置き、「明治5年の太政官布告の〝肉食妻帯勝手たるべし〟から後継者の確保など、現実重視の傾向が強まった」と解説。日本仏教が世俗化・在家仏教化の傾向を強めた経緯を踏まえながら、「このような潮流にある日本仏教は、堕落、衰退したのではなく、時代の変化に応じて変容、発展した仏教であると考えるべき」と語った。

さらに日蓮聖人が戒をどう捉えていたかを考察し、「聖人は、末法無戒の立場に立って、妙法五字の受持即持戒を説いた」と紹介。その上で、日蓮聖人の生涯を振り返り、「どんな戒を持つことよりも、まさに日蓮聖人のご生涯を通して実践されたあの生き方の方が厳しいものがある。我々は末代の弟子であり、このことを忘れてはいけない」と宗祖の生き方に学ぶことを呼びかけた。

岡田真美子氏(兵庫県立大学教授)は、現代の戒律を「目標に向かって、適切に生活を律していくことができる規律」とし、河崎俊宏氏(元全国日蓮宗青年会会長)は「信仰と僧侶としての自覚」と定義した。

伊藤会長は、閉会の挨拶で「こうした場では建前が優先し、本音の話があまり出ないもの。それでは本質は出てこない。今日は本音の部分で話し、いい会にできた」と総括し、感謝の言葉を述べた。

2010/12/09 浅草寺で大営繕完成法要

14d007bd4999ce_L1.jpg東京・台東区の聖観音宗浅草寺(清水谷孝尚貫首)が、昨年2月から着工した「平成本堂大営繕」が11月末に完了し、6日に完成報告法要が営まれた。

「平成本堂大営繕完成奉告法要」は、檀信徒をはじめ、大営繕の寄進者などが参列するなか営まれ、導師の清水谷貫首が本尊・観世音菩薩に大営繕完成を奉告。参列者も香を手向けるなどし、「観音様との結縁」に感謝した。

清水谷貫首は、「先日来、ご参詣の方々に『実に立派にきれいにできましたね』とお言葉を頂きました。我々一山の僧侶は心を致して守っていきたい」と話すと共に、「観音様とご縁を結んでいただいたこと、厚く御礼申し上げます」と謝辞を述べた。

浅草寺は、昭和20年の戦災によって旧本堂を焼失。昭和33年に現在の本堂が再建された。度々補修がなされてきたが、50年の歳月を経て老朽化したことから、大営繕に着手。平成21年2月から開始した工事では、本堂の屋根瓦を全て葺き替えたほか、外壁塗装等を含めた耐震改修が施された。

屋根工事では、本瓦約7 万3千枚を1枚ずつ手作業で取り外し、瓦の下に敷かれていた葺き土も除去。建物の耐震性能を向上させるため、本瓦に替わって、チタン製屋根瓦に全て葺き替えた。チタン材は耐久・耐候性に優れており、永く美しさを保つことができる。また、濃淡3色のチタン瓦を使うことで、本瓦の風合いを再現している。

これにより、屋根全体が荷重が約930tから、約180tに軽減。5分の1にまで軽量化されたことで、建物の耐震性が大きく向上した。

工事期間中は、参拝者の経路を確保し、安全な参詣を可能にするため、素屋根も架設。これにより、天候に左右されることなく工事が進行し、今年11月末に無事竣工した。施行は清水建設、チタン瓦は屋根メーカーのカナメが開発した。

正月3箇日には200万人を超える初詣客で賑わう浅草寺。今年は大営繕を終えたばかりの本堂で参詣者を迎える。