南米パラグアイに、日系高齢者の「心のふるさと」になっている新名所がある。
場所は同国南東部の日本人入植地「ラ・パス移住地」。同地のイサオ・タオカ氏の邸内には観音と地蔵の2躯の菩薩様が祀られており、そこに近隣の日系高齢者のお参りが絶えないという。
イサオ・タオカ(田岡功)氏は、徳島県出身の一世。14歳の時に親に連れられ同国へ移住した。ラ・パス農協の理事長やラ・パス市の市長を歴任したのち、駐日パラグアイ共和国特命全権大使に抜擢。平成17年から平成21年まで、日本とパラグアイ国の絆の強化に尽力した。大使就任時には日本国籍を離脱していたが、外国の駐日大使になった初めての「日本人一世」だ。
観音菩薩像は500キログラムあり、地蔵菩薩像は小ぶりである。台座に使われている吉野川石と仏像は、帰国の祝いとして徳島県在住の親族である田岡計男氏(共栄石材社長)から贈られたもの。昨年(平成21年)12月24日に「お披露目」を行ったところ、徐々に近隣の人々の噂にのぼるようになり、参拝者がやってくるようになった。日系高齢者は菩薩に手を合わせて故郷・日本の幼年時代を追想するほか、地域社会や家内安全を願っているとか。
タオカ氏によると、毎月24日を「おまつり」の日として決め、ささやかな集いを開いているという。宗教者は介在しない。タオカ氏は「私は特定の宗教を信じていませんが、高齢になると、お地蔵様や観音様に自然と手を合わせる気持ちになります。子供時代に仏様を拝んだことも思い出します」と述べている。
【取材・太田宏人】
写真=観音脇の短冊は、昨年の「お披露目」の際に高知県出身の移住者・秦良寺清氏が詠んだ無季俳句。「菩薩見ゆ開眼式の喜びや 土佐っ子」と書かれている。